ウルドゥー語のECの商品説明と越境


この記事のポイント
- ✓ウルドゥー語ができる人が越境ECの商品説明や問い合わせ対応を副業にするための実務ガイド
- ✓定型化できる作業とできない判断
- ✓契約で確認すべき条項までを在宅の視点で整理します
ウルドゥー語が読み書きできる。それだけで、越境ECの現場では十分に仕事の入口になります。ただし入口の形が、多くの人が想像している「翻訳の仕事」とは少しずれています。ウルドゥー語 翻訳 EC 副業という検索でこのページにたどり着いた方は、おそらく語学は持っていて、それをどう案件に変えるかで止まっているはずです。結論から書くと、越境ECの領域でウルドゥー語ができる人に回ってくる仕事は、原稿を訳す作業そのものよりも、「この表現でパキスタンやインドの買い手に通じるかどうかを判断する役」であることが圧倒的に多い。これ、知らない人が本当に多いんです。この記事では、その判断役の仕事を具体的な作業単位まで分解し、定型化して単価を安定させられる部分と、どうしても人の判断が要る部分を切り分けて整理します。
越境ECの現場でウルドゥー語がどう扱われているか
まず市場の位置づけを冷静に見ておきます。ウルドゥー語はパキスタンの国語であり、インドの一部の州でも公用語として扱われています。話者数の規模は大きい一方で、日本語との組み合わせで実務ができる人材は極端に少ない。翻訳会社の言語紹介ページでも、この言語は南アジア全域での共通語としての位置づけで説明されています。
ウルドゥー語はパキスタン、インドのジャンムーカシミール州の公用語で話者数は約6千万人。インドやバングラディシュ、ネパールなど南アジア全域において実用的な共通語として広く流通しています。インドの公用語であるヒンディー語と同系の言語。インターブックスでは東京都歴史財団などのアジアおよび欧米の多言語サイト翻訳など文化的価値の高い、高品質な翻訳を手掛けています。 出典: interbooks.co.jp
ここで押さえておきたいのは、ヒンディー語と同系という点です。文法構造が近く、話し言葉のレベルでは相互に通じる部分が広い。一方で表記はアラビア文字系のナスタアリーク体を使うため、書き言葉としては完全に別物として扱われます。越境ECの現場では、この「話し言葉は近いが表記は別」という性質が、そのまま仕事の需要になります。インド市場向けに作ったデーヴァナーガリー文字の商品ページを、そのままパキスタン市場に流用できない。ここに人の手が必要になるわけです。
越境ECのプラットフォーム側の動きも見ておく価値があります。多言語対応は、いまや大手モールの標準機能ではなく、出店者側が個別に整えるものになっています。クラウドソーシング大手の案件カテゴリにも、ECサイトの多言語対応という区分が独立して存在します。
ECサイト・多言語対応の仕事・案件一覧ページです。クラウドソーシング・アウトソーシングに強いランサーズでは、ECサイト・多言語対応の仕事情報の検索から納品、報酬の受け取りまで、すべて完結します。時間や場所にとらわれず、在宅や副業などさまざまな働き方を実現可能です。24時間365日のサポート体制をご用意しています。仕事、業務委託/副業案件、求人をお探しのフリーランスの方はまず会員登録がおすすめです。 出典: lancers.jp
つまり、EC多言語対応という仕事の枠自体は既に市場にある。問題は、その枠の中でウルドゥー語という希少言語がどこに置かれるかです。英語や中国語の案件は競合が多く、単価は買い叩かれやすい。対してウルドゥー語は、募集が出た瞬間に応募できる人が数人しかいないという状況が普通に起きます。競合が少ない市場では、価格の決定権が受け手側に残りやすい。これが希少言語の構造的な強みです。
商品説明の仕事は「訳す」ではなく「書き直す」
越境ECの商品説明でウルドゥー語の担当者に求められる作業を、実際の工程順に並べてみます。
第一に、原稿の受け取り。日本語または英語の商品説明が渡されます。ここで渡される原稿は、日本市場向けに書かれたものであることがほとんどです。素材、サイズ、生産国、使用上の注意といった情報が、日本の消費者が読む順番で並んでいます。
第二に、情報の取捨選択。日本市場では強い訴求になる情報が、パキスタンやインドの買い手にはほとんど意味を持たないことがあります。逆に、日本語原稿には一行も書かれていない情報が、現地では購入判断の中心になることがある。たとえば食品や化粧品では原材料の由来に関する記述、衣料品では丈やサイズ感の基準、電化製品では電圧とプラグ形状。ここを補うかどうかは、翻訳の範囲を超えた判断です。
第三に、文章としての再構成。ウルドゥー語は右から左に書く言語であり、文の組み立て方も日本語とは順序が違います。修飾関係をそのまま直訳すると、読める文字列にはなるが商品説明としては機能しない文章ができあがります。売る文章として成立させるには、原文の情報を保ったまま構造を組み直す必要があります。
第四に、表記の統一。数字の表記(アラビア数字と東アラビア数字の使い分け)、通貨の書き方、単位系。ここが揃っていないページは、現地の買い手から見ると素人が機械翻訳をかけただけのページに見えます。
この四工程のうち、単純に置き換えられるのは第一と第四だけです。第二と第三には判断が入る。だから「翻訳」という言葉で発注される仕事でも、実態は書き直しに近い。見積を出すときにここを説明できるかどうかで、単価は倍近く変わります。
定型化できる部分とできない部分を切り分ける
在宅で継続的に受けるうえで最も重要なのが、この切り分けです。定型化できる部分は用語集とテンプレートに落として時間を圧縮し、できない部分に時間を寄せる。これができると、時間あたりの実入りが上がります。
| 作業 | 定型化の可否 | 具体的な進め方 |
|---|---|---|
| 商品名・型番・素材名 | 定型化できる | 用語集に登録し、次回以降は流用する |
| サイズ表・スペック表 | 定型化できる | 表のテンプレートを1つ作り、数値だけ差し替える |
| 配送・返品ポリシー | 定型化できる | 出店者ごとに1回作れば全商品で使い回せる |
| キャッチコピー | 定型化できない | 商品ごとに訴求点が変わるため毎回書き下ろす |
| 使用シーンの説明 | 定型化できない | 現地の生活習慣に合わせて書き換える判断が入る |
| 問い合わせへの返信 | 半分は定型化できる | よくある質問はテンプレ化し、個別事情だけ書き足す |
この表を見て気づいてほしいのは、定型化できる作業が全体の分量では大きな割合を占めるという点です。商品点数が100点を超える案件では、スペック表とポリシー文だけで文字数の半分以上になることも珍しくありません。ここを毎回ゼロから訳していると、単価は上がらない。逆に用語集を持っていれば、2件目以降は同じ報酬で作業時間が3割から5割短くなります。
用語集の作り方は難しく考える必要はありません。表計算ソフトで、日本語、英語、ウルドゥー語、備考の4列を作る。備考には「この訳語は化粧品向け」「この訳語はパキスタン国内向けで、インド向けでは別語」といった条件を書いておく。この程度で十分に効きます。表計算の操作に不安がある方は、MOS Excel(Microsoft Office Specialist)の資格ガイドで扱われている範囲、つまり関数や表の整形の基本を押さえておくと、用語集の管理が一段楽になります。資料作成まで頼まれるケースを見据えるならMOS PowerPoint(Microsoft Office Specialist)の内容も参考になります。
商品登録やEC運用まで含めて受けると単価が変わる
越境ECの案件で見落とされがちなのが、翻訳の前後にある作業です。訳した文章を誰がECサイトに入れるのか。画像の中に入っている文字は誰が差し替えるのか。カテゴリの割り当ては誰がやるのか。この部分を出店者が自分でやれないケースが、実はかなり多い。
ここを引き受けられると、案件の性質が変わります。文字単価で見積もる翻訳から、作業一式の業務委託になる。報酬の形も、文字数ではなく商品点数や月額での契約になりやすい。EC運用の作業内容を体系的に押さえておきたい方は、EC運用代行・商品登録のお仕事の解説が参考になります。商品登録、在庫管理、受注処理といった、翻訳の周辺にある定型作業がどう発注されているかが整理されています。さらに販売戦略の側まで関わる案件を狙うなら、EC/D2C・店舗運営コンサルのお仕事で扱われている業務範囲を知っておくと、提案の幅が広がります。
ただし、範囲を広げるときは注意が要ります。作業一式で受けた結果、翻訳以外の雑務が際限なく増えて時間単価が下がる。これは実際によくある失敗です。契約時に「何をどこまでやるか」を文書で確定させておくこと。この点は後述します。
文章を書く力そのものを商品にする道もあります。ウルドゥー語での商品説明が書けるということは、日本語で書かれた情報を読み解いて再構成できるということです。この能力は語学案件の外でも通用します。翻訳・ライティングレッスンのお仕事では、翻訳と執筆を組み合わせた仕事の受け方が紹介されています。文章を書く職種の報酬水準を客観的に知りたい場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場のデータが判断材料になります。ECサイトの改修や自動化まで踏み込む案件では技術者と組むことになるため、ソフトウェア作成者の年収・単価相場も見ておくと、チームで動くときの費用感がつかめます。
問い合わせ対応をセットで受けるときの設計
商品説明を訳した先には、必ず問い合わせが来ます。サイズが合うか、いつ届くか、返品できるか。ここでウルドゥー語の担当者に対応を頼みたい出店者は多い。ただし、この仕事は設計を誤ると生活が壊れます。
理由は時差です。パキスタンと日本の時差はおよそ4時間。日本時間の夕方から深夜が、現地の日中にあたります。何も決めずに引き受けると、夜通し通知を見続けることになる。
対応範囲は、契約前に次の三つを数字で決めておくべきです。
一つ目は、対応する時間帯。「日本時間の18時から22時のあいだに、まとめて返信する」というように、拘束される時間を区切ります。即時対応を求められる案件は、その分だけ報酬に上乗せしてもらう。
二つ目は、返信までの猶予。「受信から24時間以内」と決めておけば、常時待機する必要がなくなります。
三つ目は、判断できない問い合わせの扱い。返品可否、値引き、クレームの一次対応。これらは出店者の判断が要る領域です。「この種類の問い合わせは翻訳して出店者に回す。回答は出店者が決める」と線を引く。ここを曖昧にすると、権限がないのに責任だけ負う状態になります。
具体的な運用の型は、多言語カスタマーサポート全般の実務と共通します。チャット対応を在宅でどう組み立てるかはカスタマーサポートの在宅ワーク|チャット対応で稼ぐ方法で詳しく整理されているので、シフトの組み方の参考になります。
契約書で確認しておく条項
ここからは、法務の観点で必ず確認してほしい部分です。越境ECの案件は、発注者が個人事業主や小規模法人であることが多く、契約書が用意されていないまま口頭やチャットで始まるケースが目立ちます。これがトラブルの温床になります。
先日、越境ECの商品説明を請け負った方から相談を受けました。200点分の商品説明を納品したあと、出店者から「現地の知人に見せたら表現が硬いと言われた」という理由で報酬を減額されそうになったという内容です。結論から言うと、こういう主張が通る余地は原則ありません。2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注者が受領した給付について、責めに帰すべき理由がないのに報酬を減額することを禁止しています。つまり、「イメージと違った」「知人がこう言った」は減額の正当な理由にはならない。同法は、発注者に対して給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う義務も課しています。
この法律の条文は、e-Gov法令検索で確認できます。相談を受けるとき、私はいつも条文そのものを一緒に見てもらうようにしています。法律の名前だけ知っていても交渉では使えません。条文の番号と文言を示せると、相手の態度が変わります。
契約前に確認しておく項目を挙げます。
・業務の範囲。翻訳のみか、サイトへの入力まで含むか、画像の文字差し替えを含むか ・分量の数え方。原文の日本語文字数で数えるか、訳文のウルドゥー語の語数で数えるか ・修正の回数。何回までが報酬に含まれるか。それを超えたら追加費用が発生するか ・検収の基準と期限。いつまでに、どういう基準で受け取りが確定するか ・報酬の支払期日。受領日から何日以内か ・権利の扱い。訳文の著作権を譲渡するのか、利用許諾にとどめるのか ・秘密保持。発売前の商品情報を扱う案件では必須です
修正の回数は特に重要です。ウルドゥー語のように発注者が訳文を読めない言語では、「現地の誰かに見せる」という工程が必ず入ります。その第三者の主観で修正が無限に発生する構造になりやすい。「修正は2回まで。3回目以降は1回あたり実費」と書いておくだけで、この構造は止まります。
※ 減額や支払遅延で相手が応じない場合、金額が大きいケースでは弁護士への相談を検討してください。少額であれば、公正取引委員会や中小企業庁が設けている相談窓口を利用する道もあります。制度の入口は公正取引委員会や中小企業庁のサイトから確認できます。
実績がない状態から案件にたどり着く順序
ウルドゥー語で実務経験がない状態から始める場合、順序があります。
最初にやるべきは、翻訳会社への登録です。ウルドゥー語の対応をうたっている翻訳会社は日本国内に複数あり、登録翻訳者を常時募集しています。ここでの案件は単価が高くないことが多いのですが、実務経験の記録が残る。この記録が次の交渉材料になります。
次に、サンプルの作成です。実在する越境ECサイトの商品説明を勝手に訳して公開するのは権利上の問題があるため、自分で架空の商品を設定してサンプルを作ります。日本語原稿、ウルドゥー語訳、そして「なぜこう訳したか」の説明を1枚にまとめる。この「なぜ」の部分が、他の応募者との差になります。発注者は訳文の良し悪しを判断できません。判断できるのは、説明の筋が通っているかどうかだけです。
三つ目に、隣接する分野を押さえておくこと。越境ECの案件では、SEOの知識が求められることがあります。商品ページを現地の検索でどう見つけてもらうかという話です。SEO対策・MEO対策の副業で稼ぐ方法|必要なスキルと案件相場で扱われている基本を知っていれば、キーワードを意識した商品名の付け方を提案できます。他言語の翻訳副業がどう組み立てられているかを知るのも有効です。英語翻訳の副業ガイド|TOEIC何点から仕事ができる?と中国語翻訳の副業ガイド|需要が高いジャンルと単価の目安には、案件の探し方や単価交渉の型が言語を問わず使える形で書かれています。
なお、ウルドゥー語ができるというだけでは案件は取れません。発注者は日本語で指示を出し、日本語で納品物の説明を求めます。日本語で仕様を読み、日本語で報告を書く力が同時に要る。ここが弱いと、語学力があっても継続受注にはつながりません。運営者として見てきた限りでは、希少言語の案件で長く続いている人は例外なく、日本語側の説明が丁寧です。
資格や在留資格まわりで断定してはいけないこと
越境ECの周辺では、ウルドゥー語ができる人に対して、翻訳以外の相談が持ち込まれることがあります。技能実習や特定技能に関する書類、在留資格の申請書類、輸出入の通関に関する書類。ここは慎重に扱う必要があります。
行政機関へ提出する書類を、報酬を得て他人のために作成する業務は、行政書士法によって行政書士の独占業務とされています。翻訳者が原文を訳すこと自体と、申請書類を作成することは別の行為です。どこまでが翻訳でどこからが書類作成にあたるかは、個別の事情によって判断が分かれます。「翻訳だからいいだろう」と自己判断で線を引くのは危険です。この種の依頼が来たら、行政書士や弁護士に確認したうえで受けるかどうかを決めてください。
同様に、通訳としての立ち会いを求められる場面でも、法的な助言にあたる発言をしないよう気をつける必要があります。訳すことと、助言することは違います。
資格については、ウルドゥー語には英検やTOEICのような広く認知された日本国内の検定が存在しません。だからこそ、発注者に語学力を示す手段を別に用意する必要があります。この点は資格をポートフォリオに活かす方法|クラウドソーシングで選ばれるプロフィール術で扱われている考え方が応用できます。持っている資格をそのまま並べるのではなく、案件で何ができるかに翻訳して見せるという発想です。
商品ジャンル別に、訳文で気をつける点
越境ECの商品説明は、扱う商材によって注意すべき箇所がまったく違います。ここを知らずに一律の訳し方をすると、後から差し戻しが増えます。ジャンルごとに整理しておきます。
食品の場合、原材料の記述が最も重い。パキスタンやインドのイスラム教徒の買い手にとって、原材料に何が含まれるかは購入判断そのものです。日本語原稿では「動物性油脂」とだけ書かれている箇所を、そのまま訳して終わりにすると問い合わせが集中します。かといって、原稿にない情報を勝手に断定して書くのは論外です。正しい進め方は、出店者に「この項目は現地で必ず聞かれるので、由来を明記できるか確認してほしい」と先に伝えること。訳す前に情報を取りにいく動きができるかどうかが、この分野の実力差です。
化粧品も似た構造です。成分表示に加えて、肌の色調に関する表現が問題になります。日本市場向けの原稿には、日本人の肌を前提とした色名や効果の記述が入っています。これを直訳すると、現地の買い手には意味が通じないか、誤解を招きます。色名は現地で流通している呼び方に置き換える。効果の記述は、薬機法にあたる規制が輸出先にも存在する可能性があるため、原稿より強い表現に踏み込まないこと。訳文で表現を盛るのは、翻訳者がやってよい範囲を超えます。
アパレルは、サイズ表記が中心課題です。日本のS、M、Lという表記は、そのままでは通用しません。センチメートル表記の実寸を併記するのが実務上の標準です。着丈、身幅、肩幅、袖丈を数値で出す。これは定型化できる作業なので、テンプレートを作れば商品点数が増えても負担は増えません。
電化製品では、電圧とプラグ形状の記載が抜けていると返品につながります。日本国内向けの商品は100V仕様であることが多く、パキスタンの一般的な電圧とは異なります。この情報が商品ページにないまま販売されると、届いてから使えないことが判明する。訳文を作る段階で、この記載の有無を確認して出店者に指摘できると、それだけで信頼されます。
書籍や文具のように規制が薄い商材は、比較的取り組みやすい分野です。最初の案件をここから始めるという選び方も現実的です。
機械翻訳をどう使うか
ウルドゥー語でも機械翻訳は使えます。ただし、越境ECの商品説明においては使い方を限定すべきです。
使ってよいのは、下訳と用語の候補出しです。日本語原稿の構造を大まかにつかむ、あるいは訳語の候補を並べる用途では十分に役に立ちます。作業時間は確実に縮みます。
使ってはいけないのは、出力をそのまま納品することです。理由は二つあります。一つは品質で、ウルドゥー語の機械翻訳は英語や中国語ほど精度が安定しておらず、商品名や固有名詞で崩れます。もう一つは契約上の問題で、案件によっては機械翻訳の使用そのものが禁止されている場合があります。秘密保持契約を結んでいる案件で、発売前の商品情報を外部の翻訳サービスに入力する行為は、情報の外部送信にあたる可能性があります。これは実際に問題になりやすい点なので、契約書に機械翻訳やAIツールの利用に関する条項があるかどうかは必ず確認してください。条項がない場合でも、先に出店者に確認を取っておくほうが安全です。
見積の出し方を具体的に組み立てる
見積で失敗する典型は、文字単価だけを提示して工数を説明しないことです。発注者はウルドゥー語を読めないので、渡された金額が高いのか安いのか判断できません。判断できないものは、比較検討の場でとりあえず安いほうが選ばれます。
そこで、見積は次の三段構成で出します。
一段目は、作業の内訳です。原稿の読み込み、用語の確認、訳文の作成、表記の統一、納品形式への整形。この工程を並べるだけで、単純な置き換え作業ではないことが伝わります。
二段目は、数量と単位です。日本語原文の文字数、商品点数、想定作業時間。どの単位で数えるかを明示します。文字単価で受ける場合でも、スペック表のように文字数が多くて作業が軽い部分と、キャッチコピーのように文字数が少なくて作業が重い部分は、単価を分けて提示するほうが実態に合います。
三段目は、含まれない作業の明記です。サイトへの入力、画像の文字差し替え、納品後3回目以降の修正、公開後の問い合わせ対応。これらを「別途見積」と書いておく。ここを書かない見積は、あとから作業が膨らむ入口になります。
なお、翻訳会社の料金体系では、少額案件に最低料金を設定しているケースが一般的です。文字数に単価をかけた額が一定に満たない場合は、最低料金を適用するという考え方です。個人で受ける場合も、この発想は取り入れる価値があります。商品1点だけの依頼に、原稿の読み込みから納品までの一連の工程を通すと、文字数に対して手間が大きすぎるからです。「1件あたり最低5,000円から」というように下限を決めておくと、採算の合わない依頼を自然に選別できます。
最初の3か月をどう組み立てるか
ここまでの内容を、時系列の行動に落とします。
1か月目は、土台づくりに充てます。翻訳会社の登録翻訳者募集に応募する。同時に、架空商品を3点設定して訳文サンプルを作る。1点は食品、1点はアパレル、1点は雑貨というように、ジャンルを分けておくと応募先を選ばずに使えます。用語集の枠組みもこの時期に作ります。
2か月目は、応募の段階です。クラウドソーシングの多言語対応カテゴリを定期的に確認し、ウルドゥー語を含む案件が出たら即座に応募する。希少言語の案件は募集期間が短いことが多く、見つけてから準備を始めると間に合いません。サンプルが手元にある状態で待つ、という順序が重要です。この時期に、単価が低い案件でも1件は通しておくと、実績欄が空白でなくなります。
3か月目は、受けた案件を型にする段階です。使った訳語を用語集に記録し、作った表をテンプレートに残す。同じ出店者から次の依頼が来たときに、初回より短い時間で納品できる状態を作ります。ここまで来ると、時間あたりの実入りが上がり始めます。
この3か月で意識してほしいのは、収入の額ではなく、繰り返し使える資産をどれだけ作れたかです。用語集、テンプレート、そして「この人に頼めば話が早い」と思ってもらえる関係。この三つが揃うと、以降の案件は同じ労力で済むようになります。
運営者から見た希少言語案件の実態
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、希少言語の案件には特徴的な動きがあります。
一つは、募集が不定期であることです。ウルドゥー語の案件は、毎月安定して出るものではありません。ある月に3件出て、次の2か月はゼロという動き方をします。だから、その言語だけで生活を組み立てようとすると苦しくなる。長く続いている人は、ウルドゥー語の案件を主軸に据えず、周辺の作業と組み合わせて土台を作っています。
もう一つは、一度つながった発注者との関係が長く続くことです。代わりが見つからないからです。英語の案件なら、単価が合わなければ発注者は次の人を探せる。ウルドゥー語ではそれが難しい。運営者として見てきた限りでは、この市場で長く続く人ほど、単発の作業をこなすことではなく「この人に任せると楽だ」という状態を作ることに時間を使っています。納期を守る、質問をまとめて一度に送る、判断が要る箇所を先に指摘する。地味な積み重ねですが、これが継続受注の実体です。
そして単価の話。仲介手数料の有無は、同じ案件でも手取りを大きく変えます。発注者が支払う金額は同じでも、間に入る事業者が20%を取れば、受け手の手元に残るのは8割です。手数料0%で直接つながる形であれば、同じ予算で依頼者はより多くの分量を頼めるし、受け手の手取りは厚くなる。どちらか一方が得をする話ではなく、双方の取り分が同時に増える構造です。希少言語のように単価の絶対額が動きにくい領域ほど、この差が実感として大きく効いてきます。
最後に、この分野に入る人へ現実的な見通しを書いておきます。ウルドゥー語のEC案件は、始めた月からまとまった収入になる仕事ではありません。翻訳会社への登録、サンプルの整備、最初の1件の納品。ここまでで数か月かかるのが普通です。ただし一度実績ができると、代替が効かない立場になります。競合が数人しかいない市場に、資格試験も学習期間もなしで、すでに持っている語学力だけで入っていける。この構造は、他の在宅ワークにはあまりない優位です。
よくある質問
Q. ウルドゥー語の商品説明の翻訳は、どのくらいの単価が目安ですか?
希少言語のため英語や中国語より高めに設定されるのが一般的で、日本語原文1文字あたり15円から30円程度の提示を見かけます。ただし越境ECの案件では文字単価ではなく商品1点あたりの定額や月額で契約するケースも多く、その場合は商品点数と修正回数の上限を先に決めておくと採算が読めます。
Q. ヒンディー語ができればウルドゥー語の案件も受けられますか?
話し言葉のレベルでは共通する部分が広いものの、表記体系が異なるため書き言葉の案件をそのまま受けるのは危険です。ECの商品説明は書き言葉なので、ナスタアリーク体での読み書きができることが前提になります。逆に両方書けるなら、インド市場とパキスタン市場を一人で担当できる強みになります。
Q. 翻訳の実務経験がまったくなくても案件は取れますか?
取れますが順序があります。まず翻訳会社の登録翻訳者に応募して実務の記録を作り、並行して架空商品を設定した訳文サンプルを用意します。サンプルには訳文だけでなく「なぜこの表現を選んだか」の説明を添えてください。発注者は訳文の質を判断できないため、説明の筋が通っているかどうかで選びます。
Q. 商品説明を納品したあとに報酬を減額されたらどうすればよいですか?
発注者側に責任のない理由での報酬減額は、フリーランス保護新法で禁止されています。同法は受領日から60日以内の支払いも発注者に義務づけています。まず契約時のやり取りを時系列で整理し、法律名と条文を示して支払いを求めてください。応じない場合は公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口を利用し、金額が大きいときは弁護士への相談を検討してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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