社会福祉士の講師・講座の仕事


この記事のポイント
- ✓社会福祉士の資格を持つ人が講師・講座の仕事を副業で受けるための実務ガイド
- ✓オンライン講座という4つの入口ごとに
- ✓契約で確認する点を整理します
社会福祉士として現場に立ってきた人が、次に増える仕事として「教える側」を考えるのは自然な流れです。相談援助で積み上げた判断の型は、そのまま人に渡せる形になっているからです。
結論から書きます。社会福祉士の講師・講座の仕事は、入口が4つあります。国家試験の受験対策講座、事業所向けの法定研修や職員研修、教材や添削の制作、そして自分で組み立てるオンライン講座です。この4つは求められる準備も報酬の決まり方も違うので、どこから入るかを最初に決めたほうが早く進みます。
この記事では、試験の勉強法や資格の取り方は扱いません。すでに登録を済ませている人が、持っている知識を講義という形の仕事に換えるまでを扱います。
教える仕事の入口は4つに分かれる
まず全体像を押さえます。同じ「講師」でも、募集の出どころと単価の決まり方がまったく違います。
国家試験の受験対策講座
社会福祉士や精神保健福祉士の国家試験対策を扱う予備校、専門学校、通信講座が講師を募集する枠です。科目単位で担当することが多く、一部科目だけの契約も成立します。
実際の募集内容を見ると、報酬の水準と業務の幅が具体的に分かります。
社会福祉士・精神保健福祉士試験対策講座の講師・教材制作スタッフを募集します。受験生のためにあなたの経験を活かし、講義や教材制作に携わっていただきます。講義は関東LEC各本校および中野本社での通信用収録があり、一部科目のみの担当も相談可能です。講師経験や実務経験を考慮し、概ね時給4,000円~5,000円で、教材制作は別途請負単価が定められています。指導経験者や受験生の立場に立った親身な指導ができる方を歓迎します。弊社の受験指導ノウハウ取得のための講師研修制度もございます。 出典: 求人ボックス
注目すべき点が3つあります。1つ目は、講義の時給と教材制作の請負単価が別立てになっていること。2つ目は、一部科目だけの担当が相談できること。3つ目は、通信用の収録があること。収録型の講義は、本業を持ちながらでも日程を合わせやすい形です。
時給4,000円から5,000円という水準は、講義時間だけを指しています。準備の時間は含まれません。初回に担当する科目は、講義1時間あたり準備に3時間から5時間かかると見ておくのが現実的です。同じ科目を2年目に担当すると準備時間が一気に減るため、継続を前提に考える仕事です。
受験対策の講師で求められるのは、知識の量よりも「落とし方」です。受講者は働きながら勉強している人が中心で、時間が限られています。科目の全体を丁寧に説明するより、出題されやすい論点と、受験者が毎年つまずく箇所を先に示すほうが評価されます。
現場経験が長い人ほど、逆に注意が必要な点もあります。実務の感覚で「実際にはこうしている」と話すと、試験の正解とずれることがあるからです。試験対策の講義では、実務の話は理解を助ける補助として使い、答案としての正解は制度の規定に沿って示す必要があります。この切り替えができるかどうかで、受講者の満足度が変わります。
事業所向けの法定研修と職員研修
介護保険や障害福祉のサービス事業所は、運営基準で職員研修の実施が求められている項目があります。虐待の防止、身体拘束の適正化、感染症対策、業務継続計画といった領域です。事業所の中に講師役を置けない場合、外部に依頼が出ます。
この枠は、社会福祉士として現場を経験している人と相性がいい仕事です。制度の条文だけを説明しても現場には届かず、事例に落として話せる人が求められます。
ただし、研修によっては実施主体や講師の要件が制度側で定められている場合があります。介護保険法や障害者総合支援法に基づく基準、都道府県が実施する研修の運営要綱などで扱いが異なるため、「社会福祉士だから誰でも講師になれる」と考えないでください。依頼を受けた時点で、その研修が何を根拠に実施されるものかを発注元に確認する必要があります。
教材制作と添削
講義には立たず、教材や問題、解説、添削だけを引き受ける形です。在宅で完結する割合がもっとも高く、時間の融通も利きます。
報酬は請負単価で決まることが多く、問題1問あたり、解説1本あたり、添削1件あたりという計算になります。講義の時給に比べると1件の単価は小さく見えますが、慣れると処理速度が上がるため、時間あたりの実入りは講義に近づいていきます。
実習指導とスーパービジョンという枝
4つの入口とは別に、教える仕事に近い領域として実習指導とスーパービジョンがあります。
社会福祉士の養成課程には実習が組み込まれており、実習を受け入れる施設側には指導を担当する職員が必要になります。この実習指導者には、実務経験の年数と、都道府県などが実施する講習会の修了が要件として置かれているのが一般的です。要件の内容は制度改正で見直されることがあるため、担当を打診されたら最新の要綱を確認してください。
スーパービジョンは、経験の浅い相談員の相談に乗り、事例の見立てや対応の組み立てを一緒に整理する役割です。個人契約で引き受ける形と、法人が外部のスーパーバイザーを置く形があります。オンラインで実施できるため在宅と相性がよく、月1回、60分から90分という頻度で継続する契約が多い領域です。ただし、教える立場としての訓練を受けているかどうかが問われるため、いきなり入口にするのは難しい枝です。
自分で組み立てるオンライン講座
企業や学校を通さず、自分で講座を作って売る形です。実務者向けの記録の書き方、面接技術、事例検討の進め方といったテーマが扱われています。
この形は、集客をすべて自分で背負うため、他の3つとは性質がまったく違います。最初の入口としては勧めません。受験対策講座や事業所研修で登壇の実績を作ってから、その実績を材料に自分の講座へ広げるほうが、無理がありません。
名乗り方の線引きを最初に確認する
講師の仕事を受けるとき、見落としやすいのが名乗り方です。
社会福祉士は名称独占の資格です。社会福祉士及び介護福祉士法には名称の使用制限が置かれており、登録を受けていない人が社会福祉士を名乗ることはできません。試験に合格しただけで登録が済んでいない段階では、肩書きとして使えない点に注意が必要です。
一方で、講義をすること自体に社会福祉士の資格が要求されるわけではありません。ここが誤解されやすい部分です。資格があるから講師ができるのではなく、「社会福祉士として現場を知っている人」という属性が評価されて依頼が来ます。
さらに気をつけたいのが、講義の中で個別の相談に踏み込む場面です。受講者から「うちの利用者のこのケースはどう進めればいいか」と聞かれることは頻繁に起こります。制度の説明と一般的な考え方を示す範囲であれば問題になりにくいものの、書類の作成そのものを代わりに行う、あるいは特定の法律事務に踏み込むといった行為は、行政書士法や弁護士法など他の法律が定める範囲と関係してきます。どこまでが講義の範囲でどこからが別の業務になるのかは、依頼元と事前に確認しておくべきです。関連する資格の業務範囲は行政書士のガイドでも整理されているので、線引きが曖昧なまま引き受けないでください。
事業所研修で扱われるテーマと、講義の組み立て方
事業所向けの研修は、依頼のテーマがある程度決まっています。何が出るのかを知っておくと、準備の順番を決められます。
よく出るのは次の領域です。高齢者虐待や障害者虐待の防止、身体拘束の適正化、感染症の予防とまん延防止、業務継続計画、個人情報の取り扱い、認知症の理解と対応、看取りへの向き合い方、そして接遇とハラスメントの防止です。事業所の種別によって重みは変わりますが、この範囲から外れる依頼はあまりありません。
依頼を受ける側から見ると、この一覧は準備の投資先の一覧でもあります。頻度の高い3つから4つのテーマについて資料を仕上げておけば、依頼が来たときの立ち上がりが速くなります。
90分をどう配分するか
事業所研修は60分から90分で組まれることが多い形式です。90分の場合の配分の目安を書いておきます。
制度と根拠の説明に15分。事例の提示と解説に40分。参加者が手を動かす演習に25分。質疑に10分。この配分にすると、受講者の集中が最後まで持ちます。
失敗しやすいのは、制度の説明に時間を使いすぎる組み立てです。条文や通知の読み合わせは資料を配れば済みます。研修に人を集める意味があるのは、事例を扱う部分と、手を動かす部分です。事業所の担当者が期待しているのも、そこで職員の反応が変わることです。
事例の作り方には注意が要る
講義で使う事例は、自分が関わった実際のケースをそのまま持ち出さないでください。守秘義務の問題があるだけでなく、受講者が個人を特定できてしまう危険があります。
実務では、複数のケースの要素を組み替えて架空の事例を作る方法が使われます。年齢、家族構成、居住地、疾患名といった特定につながる要素をずらし、論点だけを残す形です。この作業をしておくと、同じ事例をどの事業所でも使い回せるという実務上の利点もあります。
オンラインで講義するときの実務
在宅で講師の仕事を続けるなら、オンライン配信の作法を押さえておく必要があります。ここで評価が分かれます。
配信の形は2つです。会議システムで受講者と同時につなぐ同時配信と、事前に撮った録画を配信する収録型です。同時配信は質疑や演習ができる代わりに、日程が固定されます。収録型は日程の自由度が高い代わりに、受講者の反応を見ながら調整することができません。
機材で最初に投資すべきなのはマイクです。映像の画質より、音声の聞き取りやすさのほうが受講者の負担に直結します。ノートパソコンの内蔵マイクは、話す位置が少し動くだけで音量が変わるため、外付けのマイクを用意してください。カメラは内蔵のもので足ります。
資料の作り方も対面とは変えます。受講者はスマートフォンやタブレットで見ていることがあるため、文字は対面の資料より大きくします。1枚のスライドに載せる情報は1つに絞り、枚数を増やすほうが伝わります。
演習をオンラインで行う場合は、小グループに分ける機能を使うか、チャットに書き出してもらう形にします。何も指示せずに「では考えてみてください」と言うと、画面の向こうでは何も起きません。時間、書く場所、書く量を具体的に指定してください。
在宅でできる範囲と、できない範囲
講師の仕事を副業として考えるとき、在宅で完結するかどうかは重要な判断材料です。整理すると次のようになります。
在宅で完結しやすいのは、教材制作、添削、オンラインの同時配信講義、そして自分で作る講座です。オンライン配信は、会議システムを使って受講者と同時につなぐ形と、事前に録画したものを配信する形があります。どちらも自宅から実施できます。
在宅で完結しないのは、教室での対面講義、通信教材用のスタジオ収録、事業所に出向いて行う集合研修です。収録は1日にまとめて何コマも撮ることが多いため、月に1回か2回の外出で年間分をまかなえる場合もあります。
現場に近い仕事も募集の形は多様です。同じ「教える」でも、講座形式ではなく個別の学習支援として出ている募集があります。
八王子市からの受託事業で、生活困窮世帯や不登校などの小中高生に向けた家庭訪問型の学習支援員を募集しています。1コマ(130分)あたり4,000円(時給換算約1,846円)の高水準報酬で、週1日・午前中の短時間勤務が可能です。学習支援やコミュニケーション、外出同行支援などを通じて子どもたちの成長をサポートします。社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、臨床心理士、教員免許をお持ちの方、または学習指導や子ども支援の実務経験6ヶ月以上の方が対象です。キャンセル時も給与全額保証があり、安心して働けます。 出典: 求人ボックス
この募集で注目したいのは、キャンセル時の給与保証が明記されている点です。単発で人を呼ぶ仕事は、直前のキャンセルが起きます。保証の有無を契約前に確認する習慣をつけておくと、稼働の見通しが立てやすくなります。
値付けをどう決めるか
講師の仕事で最初に迷うのが値付けです。基準を持たずに交渉に入ると、相手の提示額をそのまま受けることになります。
講義は「拘束時間」ではなく「準備込み」で計算する
講義90分の依頼が来たとき、90分の対価だけを考えると赤字になります。資料の作成、リハーサル、移動、当日の質疑対応まで含めて、実質何時間を使うのかを先に出してください。
初めて扱うテーマなら、90分の講義に対して総投入時間が8時間前後になることは珍しくありません。提示された謝礼をこの総時間で割ると、実際の時間単価が見えます。この計算をしたうえで、資料の再利用ができるテーマなのか、その1回きりで終わるテーマなのかを判断します。
教材制作は「1本あたり」と「改訂の扱い」を分ける
教材や問題の制作は、1本あたりの単価で決まります。ここで確認すべきなのは、制度改正が入ったときの改訂を誰が担当し、その対価がどう扱われるかです。福祉分野は制度の見直しが頻繁に入るため、改訂作業が無償で回ってくる契約になっていると、後から負担が増えます。
研修1本の値付けは「初回」と「2回目以降」を分ける
事業所研修を引き受けるときに使える考え方があります。初回と2回目以降で値付けを分けることです。
初回は資料をゼロから作るため、投入時間が長くなります。ここを標準の単価だけで受けると、時間あたりの実入りが極端に低くなります。一方、同じ資料を使う2回目以降は準備がほとんど不要です。この差を最初から相手に説明し、初回の資料作成分を上乗せするか、あるいは複数回の依頼を前提にした金額で合意する形にします。
年間を通して複数回の研修を実施する事業所であれば、1本ずつの単発ではなく年間契約の形にできる場合があります。年間4回や6回をまとめて受ける契約は、日程を早い段階で押さえられるという利点もあります。
交通費と資料代を分けて書く
見積もりを出すとき、講師料の中にすべてを含めてしまうと、後から負担が出ます。移動が発生する研修では交通費を別立てにし、資料を印刷して持参する場合は資料の実費も分けて記載してください。この2つを分けておくと、遠方の依頼が来たときに金額の調整がしやすくなります。
相場の考え方
講師や執筆に近い仕事の報酬水準を考えるとき、隣接する職種の相場を見ておくと基準が作りやすくなります。文章や教材を作る仕事の単価感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっており、時間あたりでどのくらいの水準が成立しているのかを把握する材料になります。
研修や講座を含むコンサルティング寄りの案件がどう募集されるかはITコンサルティング・講師のお仕事に整理されています。分野は違っても、講師案件の契約の建て付けや報酬の書かれ方は共通する部分が多いので、募集文の読み方の参考になります。
最初の1本をどう取るか
実績がない状態から講師の依頼を受けるには、順番があります。
最初にやるのは、自分が話せるテーマを3つに絞ることです。「社会福祉全般」では依頼が来ません。「高齢者虐待の早期発見と初期対応」「支援記録の書き方と情報共有」「生活困窮者の相談の受け方」というように、90分で話し切れる粒度まで落とします。
次に、その3テーマそれぞれについて、目次だけの資料を作ります。スライドを完成させる必要はありません。何を何分で話すのかが分かるA4で1枚の構成表があれば、依頼元は判断できます。
そのうえで、募集に応募します。応募先は、受験対策を扱う学校や通信講座、研修を外注している事業所、地域の社会福祉協議会や自治体の講座、業務委託のマッチングサービスの4系統です。同時に、勤務先の中で研修の講師役を引き受けておくと、そこが最初の実績になります。所属先での登壇であっても、テーマと対象者と時間を記録しておけば、外部への応募材料として使えます。
実績を書くときは、金額ではなく内容を書いてください。「どの層に」「何を」「何分で」話したのか。依頼する側が知りたいのはこの3点です。
キャリアそのものを扱う相談や講座の建て付けを知りたい場合はキャリア・副業・人生相談のお仕事も参考になります。教える仕事と相談を受ける仕事は、依頼元の探し方が近い領域です。
本業との両立で先に確認すること
副業として講師を始める前に、所属先との関係を整理しておく必要があります。ここを飛ばして進めると、依頼が決まってから引き受けられないという事態が起こります。
確認するのは就業規則です。副業が禁止なのか、許可制なのか、届出制なのかをまず読みます。次に、同業に関する制限があるかを見ます。福祉分野の講師は、勤務先と同じ領域を扱うことになるため、競業に関する条項が関係する可能性があります。3つ目は、勤務時間外の活動に関する定めです。
公務員として勤務している人は、扱いが違います。地方公務員法には営利企業への従事等の制限が置かれており、報酬を伴う仕事を引き受ける場合の手続きが定められています。国家公務員も同様の制限があります。講演や研修の謝礼がこの制限にどう当たるかは、勤務先の任命権者が定める運用によって判断が分かれる領域です。自己判断で受けず、必ず所属先に確認してください。
社会福祉法人や医療法人に勤めている人は、法人の内規で外部講師の受託について定めがある場合があります。特に、勤務先が研修事業を行っている場合は、外部で同種の研修を引き受けることが問題になり得ます。
もうひとつ実務的な点として、稼働時期の偏りがあります。事業所研修は年度末と年度初めに集中し、受験対策講座は試験前の数か月に集中します。本業の繁忙期と重なるかどうかを、引き受ける前にカレンダーで確かめておいてください。
契約で必ず確認する4点
講師の仕事は、口頭やメールのやり取りだけで進みやすい仕事です。次の4点は文面で残してください。
1つ目は、資料の権利の扱いです。作成したスライドや教材の著作権が誰に帰属するのか、他の場所で使い回せるのかを決めておきます。自分の資産として蓄積したいなら、権利を渡さない形での合意を目指すことになります。
2つ目は、録画と二次利用です。講義が録画される場合、その録画がいつまで、どの範囲で使われるのかを確認します。録画が繰り返し配信されるのに報酬が1回分だけ、という条件は珍しくありません。
3つ目は、キャンセルの扱いです。日程が押さえられた後に中止になったとき、どこまで支払われるのかを決めておきます。
4つ目は、支払いの時期です。実施月の翌月末なのか、翌々月なのか。研修は年度末に集中するため、入金が数か月先になる案件もあります。
あわせて、報酬から源泉徴収されるかどうかも確認しておいてください。個人に対する講演料や原稿料は源泉徴収の対象になる扱いがあり、手取りの金額が見積もりと変わります。徴収された分は確定申告で精算する形になるため、支払調書を受け取れるかどうかも聞いておくと、年明けの作業が楽になります。制度の詳しい取り扱いは国税庁の案内で確認してください。
依頼が来る導線を、細くても1本つくる
応募を続けるだけでなく、向こうから声がかかる導線を持っておくと、稼働が安定します。
もっとも効くのは、扱えるテーマを公開の場に書いておくことです。プロフィールのページでも、業務委託のマッチングサービスの自己紹介欄でも構いません。「社会福祉士です」だけでは検索にかかりません。「高齢者虐待防止の職員研修、90分、オンライン対応可」という粒度まで書いておくと、探している側が見つけられます。
次に、登壇した実績を記録に残すことです。日付、依頼元の業種、対象者の人数と職種、テーマ、時間。この5項目を表にしておけば、次の応募のときにそのまま貼れます。依頼元の名称を出せない場合でも、業種と規模を書けば十分に伝わります。
もうひとつ、受講者アンケートを自分でも受け取れるようにしておくと材料が増えます。多くの事業所は研修後にアンケートを取っているため、集計結果を共有してもらえないかを依頼時に伝えておくだけです。数字と自由記述は、次の交渉で強い材料になります。
運営者として見てきた、続く人と止まる人の差
フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた立場から、講師の仕事で続く人の特徴を書いておきます。
続く人は、講義を1回ごとの単発ではなく、資料の蓄積として捉えています。同じテーマを3回登壇すれば、資料は明らかに厚くなり、質疑で出た論点も蓄積されます。4回目からは準備時間が半分以下になり、時間あたりの実入りが変わってきます。逆に、毎回違うテーマを引き受け続ける人は、いつまでも準備に追われたままです。
もうひとつ観察として書いておくと、講師の仕事は紹介で広がる割合が高い分野です。事業所研修を1本やると、その事業所と同じ法人の別施設、あるいは同じ地域のネットワークから次の話が来ます。この連鎖が起きるかどうかは、講義の内容そのものよりも、事前のやり取りの丁寧さで決まっているように見えます。日程調整、資料の事前送付、当日の機材確認といった段取りの部分です。
そして、単価が積み上がっていく人は、仲介の手数料が乗らない形で依頼元と直接つながる経路を早い段階で確保しています。手数料0%で取引できる経路は、同じ予算でも受け手の手取りが厚くなり、依頼する側から見れば同じ金額でより多く頼めることになります。この構造は金額の差以上に、関係が続きやすいという形で効いてきます。長く続いている人ほど、依頼元の数を増やすのではなく、少ない相手と長く付き合う方向に時間を使っています。
社会福祉士として現場で扱ってきた判断は、教材にすると価値が明確になります。持っている資格を教える仕事に換えるまでの距離は、思われているほど遠くありません。
よくある質問
Q. 社会福祉士の資格があれば、講師の仕事はすぐ受けられますか?
資格そのものが講師の要件になっているわけではありません。依頼元が評価するのは、現場を知っている人が話せるという点です。ただし、社会福祉士を名乗るには登録が必要で、社会福祉士及び介護福祉士法に名称の使用制限が置かれています。また、制度に基づく研修は講師の要件が定められている場合があるため、依頼を受けた時点で発注元に根拠を確認してください。
Q. 講師の報酬はどのくらいが目安になりますか?
受験対策講座の募集では、講師経験や実務経験を考慮して概ね時給4,000円から5,000円という水準が示されています。教材制作は別途の請負単価で計算されるのが一般的です。ただしこの時給は講義時間のみを指し、準備時間は含まれません。初めて扱うテーマは準備が講義時間の3倍から5倍かかると見て、総投入時間で実質の単価を計算してください。
Q. 在宅だけで講師の仕事は完結しますか?
教材制作、添削、オンラインの同時配信講義、自分で作る講座は在宅で完結します。一方、教室での対面講義、通信教材用のスタジオ収録、事業所に出向く集合研修は外出が必要です。収録は1日にまとめて複数コマを撮ることが多いため、月1回程度の外出で年間分をまかなえる案件もあります。
Q. 実績がない状態から最初の依頼を取るにはどうすればよいですか?
話せるテーマを3つに絞り、それぞれA4で1枚の構成表を用意してください。90分で話し切れる粒度まで狭めるのが要点です。応募先は受験対策を扱う学校や通信講座、研修を外注している事業所、社会福祉協議会や自治体の講座、業務委託のマッチングサービスの4系統です。勤務先の内部研修で登壇し、対象者とテーマと時間を記録しておけば最初の実績になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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