株主総会の議事録に必ず入れる項目|抜けると法務局で止まる

丸山 桃子
丸山 桃子
株主総会の議事録に必ず入れる項目|抜けると法務局で止まる

この記事のポイント

  • 株主総会議事録の記載事項を
  • 法律が求める6項目から登記実務で追加される数字まで順に整理した
  • 決議を省略した場合の記載事項

株主総会議事録には決まった書式がない。だからこそ「何を書けば足りるのか」が分からなくなる。ひな形を埋めたつもりでも、法務局に持っていったら差し戻された。そんな経験をした人も多い。この記事では、議事録に必ず入れる項目を法律が求めている順に並べ、そこに登記の実務で追加される数字を重ねる。あわせて、抜けやすい項目と、抜けたときに何が起きるかを具体的に示す。最後に提出前のチェックリストを置く。

書式は自由だが、内容は決まっている

はじめに全体像を押さえる。会社法は議事録の様式そのものを定めていない。縦書きでも横書きでも、Wordでも手書きでも、内容さえ満たしていれば議事録として成立する。定めているのは「これを内容として含むこと」という項目のほうだ。

株主総会議事録とは、株主総会の決議事項などを記載した書類です。会社法で作成・保存義務が定められており、株主総会が開催された日時・場所・決議内容・取締役氏名などの事項を記載しなければなりません。

株主総会議事録は、税務調査や登記の際に必要であるため、ルールに則り、取締役が適切に作成・保存してください。作成・保存義務に違反すると、100万円以下の過料が科される可能性があります。 出典: freee.co.jp

条文そのものはe-Gov法令検索で読める。会社法の本体には「法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならない」とだけ書いてあり、具体的な項目は法務省令のほうに並んでいる。

ここで注意したいのが、記載事項には2つの層があるという点だ。ひとつは法律が求める項目で、これは会社の中に保管するだけの議事録にも必要になる。もうひとつは登記の実務で求められる情報で、法律の項目には入っていないが、書かないと法務局で決議の成立を確認できなくなる。

書式が自由であることと、中身が自由であることは違う。ここを混同すると、体裁は立派なのに項目が抜けた議事録ができあがる。

法律が求める6つの項目

法務省令が挙げている項目は6つだ。専門用語を外して並べ直す。

1つ目は、開催された日時と場所。 何年何月何日の何時何分に、どこで開いたかを書く。ここには「その場にいなかった取締役や株主が、どうやって出席したか」も含まれる。テレビ会議やオンライン会議で参加した人がいるなら、その方法を書き添える。

2つ目は、議事の経過の要領と、その結果。 「要領」とはあらすじのことだ。発言を一字一句書き起こす必要はない。議長が議案を出し、説明し、賛否を諮り、可決した。この流れが読み取れれば足りる。結果とは、可決したのか否決したのか、どれだけの賛成があったのかを指す。

3つ目は、決まった場面で述べられた意見や発言の概要。 法律は、特定の場面で出た意見については記録を求めている。たとえば、監査役が辞任の理由を総会で述べた場合、会計参与が計算書類について意見を述べた場合などだ。小さな会社ではこの場面に当たらないことがほとんどで、当たらないなら書かなくてよい。

4つ目は、出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名または名称。 株主ではなく役員の名前を書く欄だ。役職と氏名を並べる。法人が会計参与になっている場合は、法人の名称と代表社員の氏名を書く。

5つ目は、議長がいるなら、議長の氏名。 多くの会社は定款で「代表取締役社長が議長になる」と定めている。その場合は「定款の定めにより代表取締役◯◯◯◯は議長席につき」と書くと、なぜその人が議長なのかが読み手に伝わる。

6つ目は、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名。 誰が作ったかを残す。ひとり会社なら代表取締役本人がこれに当たり、4つ目、5つ目、6つ目がすべて同じ名前になる。それで問題ない。

この6つが、会社の中に保管するだけの議事録にも共通して求められる内容だ。逆に言えば、これ以外の項目は法律上の必須ではない。

登記に使うなら、数字も書き足す

法律の6項目には、株式の数や議決権の数が入っていない。それでも登記に使う議事録には、冒頭にこれらの数字を並べるのが一般的だ。

理由は、決議が有効に成立したことを法務局が確認できるようにするためだ。議案ごとに必要な賛成の量は決まっている。通常の議案なら、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決まる。定款の変更のような重い議案なら、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要る。

この条件を満たしていたかどうかは、数字がなければ判断できない。そこで、法務局が公開している商業・法人登記の申請書様式の記載例では、冒頭に次の項目が並んでいる。

・株主の総数 ・発行済株式の総数(自己株式があればその数も) ・議決権を行使することができる株主の数 ・議決権を行使することができる株主の議決権の数 ・出席株主数(委任状による者を含む) ・出席株主の議決権の数

これらは法律上の必須項目ではないが、登記に出すなら実質的に必須と考えてよい。書いていなくても即座に却下されるわけではないが、決議の成立を確認する材料がないため、補正の連絡が来る可能性が高くなる。

自己株式とは、会社が自分で持っている自分の株式のことだ。自己株式には議決権がないため、持っている場合は総数とは別に書き出しておくと、議決権の数との対応が読み手に伝わる。

もうひとつ、登記の場面で書いておくと1枚書類が減る記載がある。新しく役員を選んだ議案で「なお、被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した」と書いておけば、就任承諾書を別に作らずに済む。その場合、登記申請書に「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する」と書き添える。重任ではなく新任の人がいる場合は、その人の住所も議事録に書いておく必要がある。

会議を開かずに決めたときの記載事項

株主が少ない会社では、実際に集まらずに決めることが多い。会社法は、取締役または株主が議案を提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面または電子データで同意したときは、その提案を可決する決議があったものとみなす仕組みを置いている。

この方法を使った場合、議事録の記載事項がまるごと入れ替わる。会議を開いていないので、開催の日時も場所も議事の経過も存在しない。代わりに書くのは次の4点だ。

・株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容 ・その事項の提案をした者の氏名または名称 ・株主総会の決議があったものとみなされた日 ・議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

ここでよくある誤りが、開催していない総会の日時と場所を書いてしまうことだ。同意書を集めた方法で決めたのに、議事録には「当会社の本店において開催した」と書いてある。この状態は事実と食い違うので、あとから決議の有効性を問われたときに不利に働く。会議を開いたのか、同意で決めたのか、どちらの形を使ったかを先に決めてから書き始めたい。

報告事項についても同じ仕組みがある。取締役が株主全員に報告すべき事項を通知し、報告を要しないことについて株主全員が書面または電子データで同意したときは、報告があったものとみなされる。この場合に書くのは、報告があったものとみなされた事項の内容、みなされた日、議事録を作った取締役の氏名の3点だ。

集めた同意書そのものも保存が必要になる。同意の書面または電子データは、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く。議事録を作ったから同意書は捨ててよいということにはならない。

抜けやすい項目と、抜けたときに起きること

実務で抜けやすい項目は、だいたい決まっている。

最も抜けるのが、議事録を作った取締役の氏名だ。 末尾に代表取締役の署名があるので作成者も書いたつもりになるが、署名は決議の内容を確認したという意味で、作成者の記載とは役割が違う。ひとり会社なら出席取締役の欄に「◯◯◯◯(議長兼議事録作成者)」と併記しておけば、1行で両方を満たせる。

次に抜けるのが、閉会の時刻だ。 開会の時刻は冒頭に書くので忘れないが、末尾の「午前◯時◯分閉会した」を書き落とす。議事録を短く済ませようとするほど起きやすい。

3つ目は、出席方法の記載だ。 オンラインで参加した役員がいるのに、場所として本店だけを書いている。その場にいなかった人がどうやって参加したかは、法律が求めている記載の一部にあたる。

4つ目は、決議の結果を示す表現だ。 「議案について話し合った」で終わっていて、可決したのか否決したのかが書かれていない。結果は法律が求める項目なので、必ず結論まで書く。

これらが抜けたとき、何が起きるか。会社の中に保管するだけなら、すぐに何かが起きるわけではない。問題が表面化するのは、外に出すときだ。

登記に使う場合は、法務局から補正の連絡が来る。申請そのものが却下されることは多くないが、書類を作り直して再度持っていく手間が発生する。役員変更の登記には事項の発生から2週間以内という期限があるので、補正のやり取りで期限を過ぎると、代表者に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性が出てくる。

税務調査の場面では、役員報酬や退職金の根拠を示す書類として提示を求められることがある。決議の結果が書かれていない議事録では、いくらに決めたのかを示せない。個別の扱いは金額や事情によって変わるため、判断に迷う場合は税務署か税理士に確認する必要がある。

株主や債権者からの閲覧請求に応じる場面でも、項目の抜けはそのまま会社の管理体制への評価になる。

記載事項とセットで確認したい押印と添付書類

記載事項がそろっていても、押印や添付書類でつまずくことがある。議事録の中身と連動する部分なので、あわせて整理しておく。

押印については、会社の中に保管するだけの議事録に法律上の義務はない。押印が問われるのは登記に出すときで、しかも場面が限られる。取締役会を置いていない会社が株主総会の決議で代表取締役を決めた場合、議長と出席取締役が議事録に押した印について、市区町村長が作った印鑑証明書を添えることになる。ただし、その印が前の代表取締役が法務局に届け出ている印と同じであれば、添付は要らない。

添付書類でセットになるのが株主リストだ。2016年10月1日以降の登記申請では、登記する事項について株主総会の決議が必要な場合に添付が求められる。書くのは、議決権の多い上位10名の株主か、議決権の割合を上から足して3分の2に達するまでの株主か、少ないほうについて、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合の5点で、これを代表者が証明する。書式とExcelの記載例は法務省のページから入手できる。

株主リストと議事録の数字は一致していなければならない。議事録に書いた議決権の総数と、株主リストの総議決権数が違っていると、どちらかが誤っていることになる。作る順番としては、議事録を書いてから株主リストを作り、最後に両方の数字を突き合わせるのが確実だ。

会議を開かずに全株主の同意で決めた場合も、株主リストの添付対象に入る。この場合は株主全員について、氏名または名称、住所、株式数、議決権数の4点を書く。議決権の割合は不要だ。

保存についての記載事項ではない決まり

記載事項そのものではないが、作ったあとの扱いも法律で決まっているので押さえておく。

株主総会議事録は、本店では10年間、支店では写しを5年間保存することが義務とされています。ただし、議事録を電子データで作成し、支店においてそのデータを閲覧できるようにしている場合には、支店での備え置き義務はありません。

違反すると、取締役、監査役などに100万円以下の過料が科される可能性があります。 出典: freee.co.jp

「備え置く」という言葉には、請求があったら見せられる状態にしておくという意味が含まれる。倉庫の奥に積み上げたまま、どこにあるか誰も分からない状態は備え置いているとは言いにくい。事業年度ごとにファイルを分け、背表紙に年度を書いておくだけでも、必要になったときの手間が変わる。

電子データで作る場合、会社の中に置いておくだけなら電子署名は必須ではない。一方、登記をオンラインで申請し、その添付書類として電子データを使うなら、決められた形式の電子署名が要る。紙で窓口に出すのか、オンラインで出すのかによって準備するものが変わるので、作る前に申請方法を決めておきたい。

税務の側からも保存が求められる。国税庁の帳簿書類等の保存期間によれば、法人は帳簿と取引に関する書類を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する。欠損金が生じた事業年度については10年間だ。決算書類と議事録を同じファイルにまとめておけば、どちらの要請にもまとめて応えられる。

10年を過ぎれば法律上の保存義務はなくなるが、廃棄する理由はほとんどない。過去の決議が争点になったとき、証拠として出せるのは残っている場合だけだ。

議案の種類ごとに書き足す内容

6項目は、どんな総会にも共通して求められる土台だ。そのうえで、議案の種類によって「議事の経過の要領と結果」の中身が変わる。代表的な議案について、何を書けば結果が特定できるかを整理する。

役員を選ぶ議案。 選ばれた人の役職と氏名を書く。新任の人がいる場合は住所も書いておくと、就任承諾書を省く際に役立つ。選び方を議長の指名に一任したなら、その経過も残す。末尾に「被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した」と入れておくのが実務の定番だ。

役員報酬を決める議案。 金額と、いつから適用するかの両方を書く。「取締役の報酬を月額金◯円とし、令和◯年◯月分から支給する」という形になる。総額の上限だけを決めて配分を取締役に任せる場合は、上限の額と、配分を委ねる旨を書く。金額をぼかした議事録は、支払った額との対応がつかなくなる。

定款を変更する議案。 変更後の条文を丸ごと書き写す。「第◯条を次のとおり変更する」と書いたうえで、新しい条文の全文を並べる。「商号を変更する」とだけ書いた議事録は、変更後の名前が特定できないため登記の根拠にならない。

計算書類を承認する議案。 承認の対象を列挙する。貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つだ。監査役がいる会社では、監査役が調査の結果を報告した旨も書く。

事業報告。 これは承認ではなく報告なので、「報告した」と書く。「承認可決した」と書くのは誤りだ。取り違えている議事録は多く、書類の整合性を見られる場面でつまずく原因になる。

配当を決める議案。 配当する財産の種類と総額、株主への割当てに関する事項、効力が生じる日を書く。1株あたりいくらかが読み取れる形にしておく。

いずれの議案でも共通するのは、「読んだ人が、何がどう決まったかを一意に特定できるか」という基準だ。この基準で自分の書いた文章を読み返すと、足りない箇所が見つかる。

議事の経過はどこまで書けばよいか

記載事項のうち、いちばん判断に迷うのが「議事の経過の要領」だろう。どこまで詳しく書けばよいのかに正解の分量はない。目安を3段階で示す。

最も簡素な形は、1議案につき3行だ。 議長が議案を付議したこと、説明したこと、諮った結果の3つだけを書く。反対がなく、質疑も出ず、単に承認しただけの総会ならこれで足りる。株主が少ない会社の臨時株主総会は、ほとんどこの形になる。

中間の形は、説明の中身を1段落足すやり方だ。 なぜその議案が必要になったのか、どういう理由でその内容にしたのかを、議長の説明として記録する。定款の変更や役員の入れ替えのように、あとから「なぜこの時期にこの決定をしたのか」を問われる可能性がある議案では、この形にしておくと説明の材料が残る。

最も詳しい形は、質疑応答まで残すやり方だ。 株主が複数いて意見が分かれた、反対した株主がいた、といった場合に使う。誰がどういう趣旨の発言をし、それに対して議長がどう答えたかを要約して残す。決議の有効性が争われる可能性がある場面では、この形が会社を守る材料になる。

判断の基準は、「あとでこの決定を誰かに説明する必要が出そうか」で考えるとよい。出そうなら書く。出なさそうなら3行で足りる。

ここで注意したいのは、書きすぎにも副作用があることだ。細かく書けば書くほど、記録と記憶の食い違いが生まれる余地が増える。発言の趣旨をわずかに取り違えて書いた一文が、あとから矛盾として指摘される材料になりうる。要領を残すという法律の言い方は、そのあたりの加減を織り込んだ表現だと考えてよい。

分量としては、A4で1枚から2枚に収まるのが普通だ。長いほど信頼される種類の書類ではない。

提出前に通すチェックリスト

議事録を書き終えたら、外に出す前に次の順で確認する。この順番で見ると、抜けと矛盾の両方を拾える。

まず、法律が求める6項目がそろっているか。開催の日時と場所、議事の経過の要領と結果、決まった場面の意見の概要、出席した役員の氏名、議長の氏名、作成した取締役の氏名。指で数えながら本文を追う。

次に、登記に使うなら数字がそろっているか。株主の総数、発行済株式の総数、議決権を行使できる株主の数と議決権の数、出席株主の数と議決権の数。書いたうえで、株主リストの数字と一致しているかを突き合わせる。

3つ目に、数字と結論がかみ合っているか。冒頭に書いた出席株主の議決権の数で、その議案の決議が成立するか。定款の変更のような重い議案なら、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成があったことが読み取れるか。

4つ目に、日付に矛盾がないか。開催日、就任承諾の日、作成日、登記の申請予定日。前年の議事録を土台にした場合は、年の数字が残っていないかも確認する。

5つ目に、自社に存在しない機関や役職が登場していないか。監査役を置いていないのに監査役の報告が書かれている、取締役会を置いていないのに取締役会の記述がある、といった食い違いは、ひな形を流用したときに起きやすい。

最後に、押印と添付書類。誰が押すのか、印鑑証明書が要る場面か、株主リストは作ったか。この5点と押印まで通れば、差し戻される余地はかなり減る。

取締役会を置いている会社は、議事録が2つになる

取締役会を設置している会社では、株主総会議事録とは別に取締役会議事録を作る。名前が似ているので同じ作り方だと思われやすいが、記載事項も押印の扱いも別に決まっている。

いちばん大きな違いは署名だ。

取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

株主総会議事録には、この署名の義務がない。押印が問われるのは登記に出す一部の場面だけだ。取締役会議事録は、社内に置いておくだけでも出席した取締役と監査役の全員が署名または記名押印をする。1人でも欠けていると、法律が求める形になっていない議事録になる。

記載事項も入れ替わる。法務省令が取締役会議事録について挙げているのは、開催された日時と場所、議事の経過の要領とその結果、決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役がいるときはその氏名、定められた場面で述べられた意見や発言の概要、出席した執行役と会計参与と会計監査人と株主の氏名、議長がいるときは議長の氏名だ。

ここで気づいておきたいのは、出席した取締役の氏名が記載事項に挙がっていないことだ。株主総会議事録では出席した役員の氏名を書くのに、取締役会議事録では求められていない。署名のほうで担保されているからで、署名欄に並んだ名前が出席者の記録になる。だからこそ、署名の漏れがそのまま記載の漏れになる。

閲覧の扱いも違う。取締役会議事録は取締役会の日から10年間、本店に備え置く。株主が閲覧や謄写を求めるとき、監査役を置いている会社では裁判所の許可が必要になる。株主総会議事録より閲覧のハードルが高く設定されているのは、取締役会が経営の判断そのものを話す場だからだ。

決議を省略した場合の記載事項も別に決まっている。定款に定めを置いた会社で、議決に加わることができる取締役の全員が書面または電子データで同意したときは、決議があったものとみなされる。この場合の議事録に書くのは、みなされた事項の内容、提案をした取締役の氏名、みなされた日、議事録を作った取締役の氏名の4点だ。株主総会の決議を省略したときの4点と形が似ているので、並べて覚えておくと迷わない。

全文の例で、記載事項の置き場所を確かめる

項目の一覧だけでは、どこに何を書くのかが掴みにくい。株主が2名、取締役が1名の会社が、臨時株主総会で取締役を1名増やした場合の例を並べる。会社の実情に合わせて言葉を入れ替えて使う。

臨時株主総会議事録

株主の総数 2名 発行済株式の総数 200株 議決権を行使することができる株主の数 2名 議決権を行使することができる株主の議決権の数 200個 出席株主数 2名 出席株主の議決権の数 200個

開催日時 令和◯年◯月◯日 午前10時00分 開催場所 当会社本店会議室 出席役員 代表取締役 ◯◯◯◯(議長兼議事録作成者)

議長は定款の定めにより代表取締役◯◯◯◯が議長席につき、上記のとおり定足数にあたる株主の出席があったので本総会は適法に成立したことを述べ、開会を宣した。

第1号議案 取締役1名選任の件

議長は、業務の拡大にともない取締役を1名増員したい旨を述べ、その選任の方法を諮ったところ、出席株主全員の賛成をもって議長の指名に一任することに決した。議長が次の者を指名し、その可否を諮ったところ、出席株主の議決権の全数の賛成をもって承認可決された。

取締役 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号 ◯◯◯◯

なお、被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した。

議長は以上をもって本総会の目的事項を全部終了した旨を述べ、午前10時30分閉会を宣した。

上記の決議を明確にするため、本議事録を作成し、議長がこれに記名押印する。

令和◯年◯月◯日 ◯◯株式会社 臨時株主総会 議長 代表取締役 ◯◯◯◯ 印

この例のなかに、法律が求める6項目が全部入っている。開催の日時と場所は冒頭、議事の経過の要領とその結果は第1号議案の段落、出席した役員の氏名と議長の氏名と作成した取締役の氏名は「議長兼議事録作成者」の1行で3つを兼ねている。決まった場面の意見は今回は生じていないので書かない。

冒頭の6行が、登記のために書き足す数字だ。この例では株主が2名しかいないので、200個の議決権で決議が成立していることが一読で分かる。株主リストを作るときは、この200株と200個をそのまま転記して数字を合わせる。

分量の目安としては、これで A4 の用紙1枚に収まる。議案が3つ4つに増えても、議案ごとの段落を足していくだけなので2枚を超えることは少ない。

合同会社に株主総会議事録はない

会社の形が合同会社なら、そもそも株主総会が存在しない。株主がおらず、出資した人が社員として直接会社を動かす仕組みだからだ。株主総会議事録の記載事項という問いそのものが当てはまらない。

代わりに残すのが総社員の同意書だ。業務執行社員を加入させる登記でも、商号や目的を変えるための定款の変更でも、法務局に添付するのはこの1通になる。株主リストも要らない。

書く内容は、同意した事項と、同意した日、そして社員の署名または記名押印だ。法務局が示している記載例では、加入への同意と、それに合わせて定款のどの条項をどう書き換えるかを、同じ書面のなかに並べている。合同会社は社員の氏名と出資の価額が定款に書かれているため、人の出入りがそのまま定款の書き換えになるからだ。

株式会社から合同会社に変えた会社、あるいはその逆の会社では、この違いを取り違えて書類を作り直すことがある。自社がどちらの形なのかは登記事項証明書の表題で分かるので、書き始める前に1度確認しておくと確実だ。

書類の型を持つことが、そのまま信用になる

在宅で働く人や小さな会社を長く見てきた立場から言えば、記載事項を毎回調べ直している会社と、自社用のひな形を1つ持っている会社とでは、同じ手続きにかかる時間が桁で違う。前者は毎回半日を溶かし、後者は数十分で終える。差が出るのは知識量ではなく、型を作ったかどうかだけだ。

運営者として見てきた限りでは、長く続く事業者ほど、この種の書類を「面倒な義務」ではなく「あとで自分を助ける記録」として扱っている。新しい取引先が会社の体制を確認したがる場面で、必要な書類がすぐ出てくるかどうかは、それだけで相手の判断材料になる。

文書の型そのものを体系的に学び直したい人には、文書の構成や通知文の作法を扱うビジネス文書検定の学習範囲が、実務のチェックリストとして使える。議事録に限らず、報告書や契約関連の文書まで同じ考え方で通る。

事務を自分で抱えきれなくなったときは、外に出す選択肢もある。文書の作成や編集を仕事にしている人の単価の目安は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認でき、依頼するときの予算感を作る材料になる。業務システムの内製や委託を考えているならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になる。

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20年この市場を見てきて確かなのは、中間業者を挟まない直接の取引では、同じ予算でも依頼側はより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなるということだ。手数料0%という条件の値打ちは、金額の多寡よりも、双方が納得して関係を長く続けやすいという質にある。記載事項を欠かさず残している会社は、その関係を支える信用の土台を同時に積み上げている。

よくある質問

Q. 株主総会議事録に決まった書式はありますか?

書式は自由です。縦書きでも横書きでも、WordでもPDFでも手書きでも構いません。決まっているのは内容のほうで、開催した日時と場所、議事の経過の要領と結果、決まった場面で述べられた意見の概要、出席した役員の氏名、議長の氏名、作成した取締役の氏名の6項目を含める必要があります。

Q. 株式数や議決権の数は書かなくてもよいですか?

法律が求める6項目には含まれていません。ただし登記に使う議事録では、決議が有効に成立したことを法務局が確認できるよう、株主の総数、発行済株式の総数、議決権を行使できる株主の数と議決権の数、出席株主の数と議決権の数を冒頭に並べるのが一般的です。株主リストの数字とも一致させます。

Q. いちばん抜けやすい記載事項は何ですか?

議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名です。末尾に代表取締役の署名があるため書いたつもりになりますが、署名とは別の項目です。出席取締役の欄に「氏名(議長兼議事録作成者)」と併記すれば1行で満たせます。閉会の時刻や、オンライン参加の方法も抜けやすい項目です。

Q. 会議を開かずに決議した場合は何を書きますか?

記載事項が入れ替わります。開催の日時や場所、議事の経過は書かず、決議があったものとみなされた事項の内容、提案をした者の氏名または名称、決議があったとみなされた日、議事録を作成した取締役の氏名の4点を書きます。集めた同意書も10年間、本店で保存する必要があります。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月3日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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