法務局に出す議事録で気をつけること|原本を返してもらう方法


この記事のポイント
- ✓株主総会議事録を法務局に出すときの注意点をまとめました
- ✓株主リストとの組み合わせ
- ✓登記すべき事項との突き合わせ
株主総会議事録を法務局に出すことになった。まず、落ち着いて大丈夫です。議事録そのものの書き方は法務局が記載例を公開していて、そこに穴を埋めていけば形になります。つまずきやすいのは議事録の本文ではなく、その周りです。一緒に出す株主リスト、登記すべき事項との突き合わせ、印鑑証明書が要るかどうか、そして出した原本が戻ってくるのかどうか。この記事では、その周辺を順に片づけていきます。
社内に置く議事録と、法務局に出す議事録は見られ方が違う
同じ議事録でも、用途によって求められる水準が変わります。
社内に備え置く議事録は、会社法と会社法施行規則が求める記載事項を満たしていれば足ります。日時と場所、議事の経過の要領とその結果、出席した役員の氏名、議長の氏名、議事録を作る職務を行った取締役の氏名。この並びを埋めれば、法律上は完成です。
法務局に出す議事録には、もう1段の要求が乗ります。登記官が見るのは、「その登記をしてよい根拠が、この書面から読み取れるか」という一点です。決議の内容が登記しようとしている事項と一致しているか。決議が成立する数に届いていたか。誰が代表者として選ばれたのか。これらが議事録の文面から追えなければ、記載事項が揃っていても登記は通りません。
だから、社内用に作った議事録をそのまま出して止まる、ということが起きます。「役員を改選した」とだけ書いてあって、誰が選ばれたのか氏名が書いていない。「定款を変更した」とあるが、どの条文をどう変えたのかが書いていない。こうした省略が、社内では通っても登記では通りません。
先に結論を言うと、法務局に出す予定がある議事録は、最初から法務局の記載例を骨組みにして作るのが一番早いです。書き直しが発生しません。
どの登記で議事録が要るのか
株主総会の決議が必要な登記であれば、議事録が添付書面になります。中小企業でよく出てくるのは次の4つです。
1つ目は役員変更です。取締役や監査役を選び直す、途中で辞めた人の後任を選ぶ。取締役会を置いていない会社では、代表取締役も株主総会で選ぶことがあります。登録免許税は、資本金の額が1億円を超える会社で3万円、1億円以下の会社で1万円です。
2つ目は商号の変更です。会社名は定款に書いてあるので、変えるには定款の変更が必要になり、株主総会の決議が要ります。登録免許税は3万円です。
3つ目は事業目的の変更です。これも定款に書いてある事項なので、同じく株主総会の決議が要ります。
4つ目は本店の移転です。定款に本店の所在地をどこまで詳しく書いているかで扱いが変わります。市区町村まで書いてある会社が同じ市内で移る場合は定款変更が不要ですが、別の市に移るなら定款変更が必要で、株主総会の決議が要ります。
商号を変える場合は、決議の前にやっておくことがあります。同じ商号で同じ本店の会社がすでに存在すると、登記ができません。法務局の記載例にも、定款の変更を行う前に本店を管轄する登記所で確認するよう注記があります。調査は無料でできます。総会で決めてから使えないと分かると、もう一度総会を開く羽目になります。
議事録には必ず株主リストが付いてくる
法務局に出すとき、議事録は単独では出しません。株主リストという書面がセットになります。
平成28年10月1日以降、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合には、添付書面として株主リストが必要になりました。根拠は商業登記規則61条の2項と3項です。決議を省略して書面で決めた場合も、株主リストの添付が必要です。
書く内容は決まっています。株主総会の決議を要する場合は、議決権数の上位10名の株主か、議決権割合を多い順に足していって3分の2に達するまでの株主か、人数の少ないほうについて、次の5点を並べます。
・株主の氏名または名称 ・住所 ・株式数 ・議決権数 ・議決権数の割合
この5点を会社の代表者が証明する形をとります。法務局は簡易書式から複雑なパターンまで、書式例と記載例をExcelとPDFの両方で公開しています。自分で表を組むより、配布されているファイルを落として埋めるほうが確実です。
株主リストでつまずくのは住所です。株主名簿を長く更新していない会社だと、株主の現住所が分かりません。相続で株式が移っているのに名簿が古いまま、というケースもあります。総会の前に名簿を点検しておくと、リスト作成でつまずきません。
法務省は、株主リストが必要になる場面を次のように説明しています。
株主リストの添付は、次の2つの場合に必要となります。 1 登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合 2 登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する場合 出典: moj.go.jp
株主が1人だけの会社なら、リストは1行で終わります。それでも省略はできません。
株主リストの作り方でもう一つ注意したいのは、数え方です。上位10名で作るか、議決権割合が3分の2に達するまでで作るか。どちらか人数の少ないほうを選びます。株主が5人しかいない会社なら、10名には届かないので全員を書くことになりますが、上位2人で議決権の3分の2を超えているなら、その2人だけで足ります。少ないほうを選べるので、まず割合を足してみるのが得策です。
議決権を行使できない株式を持つ株主は、数から除きます。自己株式が典型です。一方で、総会を欠席した株主や、議決権を行使しなかった株主は含めます。「出席した人のリスト」ではなく「議決権を持っている人のリスト」だという点を取り違えないでください。
本店移転は、定款をどう書いているかで手順が変わる
本店を移すときの議事録は、事前に定款を確かめてから作ります。
定款に本店の所在地を「東京都渋谷区」のように市区町村までしか書いていない場合、同じ区の中で移るのであれば定款の変更は不要です。この場合、株主総会の決議は要らず、取締役の決定または取締役会の決議で移転先を決めます。添付するのは株主総会議事録ではなく、取締役の決定書や取締役会議事録になります。
定款に番地まで書いてある場合や、別の市区町村に移る場合は、定款の変更が必要です。ここで初めて株主総会の決議が登場します。定款変更は出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な決議なので、議事録に書いた出席株主の議決権の数から、その水準を満たしていたことが読み取れるようにします。
管轄の法務局が変わる移転かどうかでも、手続きが分かれます。同じ法務局の管轄内なら申請は1件で済みますが、管轄をまたぐ場合は旧本店の所在地を管轄する法務局を経由して2件分の申請をします。登録免許税も2件分かかります。移転先を決める前に、管轄がどうなるかを確かめておくと予算がずれません。
補正の連絡が来たとき、取り下げるとき
出した書類に不備があると、登記官から補正の連絡が来ます。慌てる必要はありません。
補正は、その場で直せる程度の不備について、申請を生かしたまま修正する手続きです。電話で連絡が来て、窓口に行って直すか、不足している書類を追加で出すかで済むことが多いです。補正に応じれば、最初に申請した日付が生きます。
直しようのない不備、たとえば決議そのものが成立していなかった、というような場合は、申請を取り下げることになります。取下書という書面を出して、申請を引っ込めます。法務局の商業・法人登記の申請書様式のページには、取下書の様式も掲載されています。
取り下げた場合、収入印紙で納めた登録免許税は再使用の証明を受けて次の申請に回せることがあります。ただし手続きが必要なので、取り下げを決めた時点で窓口に確認してください。
補正の連絡が来たときに一番困るのは、連絡先が通じないことです。申請書の連絡先の電話番号欄には、日中に確実につながる番号を書いてください。代理人に頼んでいるなら代理人の番号で構いませんが、自分で出す場合は携帯電話の番号を書いておくほうが早く片づきます。
議事録の記載と、登記すべき事項がずれると止まる
登記の申請書には「登記すべき事項」という欄があります。ここに書いた内容が、そのまま登記簿に載ります。そして、その内容の根拠が議事録です。この2つがずれていると、補正の連絡が来ます。
よくあるずれを挙げます。
氏名の表記ゆれです。戸籍上は旧字体なのに、議事録では新字体で書いている。登記は戸籍の表記に合わせるので、議事録も合わせておくほうが揉めません。
住所の書き方です。新しく就任する代表取締役の住所は登記されるので、住民票のとおりに書きます。「○丁目○番○号」を「○-○-○」と略すと、登記簿の表記と食い違います。法務局の記載例では、住民票記載の住所をそのまま正確に記入するよう注意書きが添えられています。
日付です。議事録の開催日と、登記すべき事項に書く「原因年月日」が一致している必要があります。重任の場合は総会の終結と同時に任期が満了して再び就任するので、原因年月日は総会の日です。
決議の数です。定款変更のように、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な決議があります。議事録に書いた出席株主の議決権の数から、その水準に届いていたことが読み取れる必要があります。数字を省略して「満場一致で可決」とだけ書くと、母数が分かりません。
就任承諾書を議事録で代用できる条件
役員を選任する登記では、選ばれた人が就任を承諾したことを示す書面が要ります。ただし、議事録の中に「被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した」という一文があれば、その記載を使って就任承諾書の添付を省けます。申請書の添付書類欄には「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する。」と書きます。
法務局の記載例にも、この方法が注記されています。被選任者が席上で就任を承諾し、その旨の記載が議事録にある場合には、申請書に別途就任承諾書を添付することを要しない、とあります。重任でない場合は、被選任者の住所の記載も必要だと補足されています。
書類が1枚減るので、使わない手はありません。ただし条件が付きます。取締役会を置いていない会社で、新しく就任する取締役について議事録の記載を援用する場合は、その人が市区町村に登録した印鑑を議事録に押し、印鑑証明書を添える必要があります。議事録が就任承諾書の代わりを務める以上、本人確認の水準も引き継ぐ、という考え方です。
全員が再選で重任するだけなら、この話は出てきません。新任者がいるかどうかで必要書類が変わるので、選任の議案を書く段階で仕分けておいてください。
印鑑証明書と本人確認証明書、どちらが要るか
添付書類の中で最も混乱するのがここです。順に整理します。
印鑑証明書が必要になるのは、代表取締役の就任による変更登記で、株主総会の決議によって代表取締役を定めた場合です。このとき、議長および出席した取締役が議事録に押した印鑑について、市区町村長が作成した証明書を添付します。
ただし逃げ道があります。押された印鑑が、変更前の代表取締役が登記所に届け出ている印鑑と同じであるときは、証明書は不要です。前の代表者が総会に出席して会社の実印を押していれば、それで足りるということです。
取締役会を置いている会社は、代表取締役を取締役会で選ぶので、この規定の対象外です。印鑑証明書が問題になるのは取締役会議事録のほうで、こちらも代表取締役が登記所届出印を押していれば、ほかの出席者の証明書は要りません。
本人確認証明書は、新しく就任する取締役や監査役について必要になります。住民票記載事項証明書や、運転免許証の両面のコピーに本人が原本と相違ない旨を記載して記名したものなどです。印鑑証明書を添付する役員については、その印鑑証明書で足ります。
再任だけの場合は、本人確認証明書は要りません。新任か再任かで分かれる、と覚えておくと整理しやすいです。
出した原本は返ってくるのか
ここが本題です。結論を先に言うと、返してもらえます。ただし、黙っていると返ってきません。請求する必要があります。
登記の申請人は、申請書に添付した書類の還付を請求することができる。 2 書類の還付を請求するには、登記の申請書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本をも添付しなければならない。 3 登記官は、書類を還付したときは、その謄本、登記の申請書又は還付請求書に原本還付の旨を記載して押印しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
この仕組みを原本還付と呼びます。読み取れることは3つあります。
第一に、請求できるのは申請人です。何もしなければ、添付した書類は法務局に綴じ込まれたまま戻りません。第二に、請求するには写しを一緒に出す必要があります。原本の代わりに綴じ込むものが要る、という発想です。第三に、その写しには「原本と相違がない旨」を記載します。
株主総会議事録は、会社が10年間備え置かなければならない書類です。原本が手元に無いと、この備置きの義務を果たせません。だから、登記に使った議事録は原本還付を請求するのが原則的な進め方になります。
原本還付の手順を具体的に
手順そのものは難しくありません。
まず、返してほしい書類のコピーを取ります。議事録が複数ページなら、全ページをコピーします。
次に、コピーの余白に「この写しは原本と相違ありません」と書きます。手書きでもゴム印でも構いません。その下に会社名と代表取締役の氏名を書き、登記所に届け出ている印鑑を押します。
コピーが複数ページになる場合は、ページのつづり目に契印を押します。契印は、書類が途中で差し替えられていないことを示すためのものです。押す印鑑は、原本と相違ない旨に押したものと同じにします。
そして、原本とコピーの両方を申請書に添えて提出します。窓口でも郵送でも、やり方は同じです。窓口で出す場合は、原本還付を希望する旨を伝えると案内してもらえます。
登記が完了すると、原本が返却されます。郵送で返してほしい場合は、返信用の封筒と切手を同封します。窓口で受け取る場合は、完了予定日以降に取りに行きます。完了予定日は、申請したときに窓口で教えてもらえますし、法務局のサイトでも公表されています。
なお、その登記の申請のためだけに作成した書類は、還付の対象として扱われないことがあります。委任状などが典型です。印鑑証明書についても、扱いが登記所によって案内が異なることがあります。返してほしい書類がある場合は、申請の前に管轄の法務局に電話で確認しておくと確実です。確認は無料ですし、電話で済みます。
申請書そのものの作法も押さえておく
議事録だけ完璧でも、申請書の作り方でつまずくことがあります。
収入印紙は、収入印紙貼付台紙という紙に貼ります。割印はしないでください。法務局の記載例には、消印作業の都合上、右側に寄せて貼ってほしいという依頼まで書かれています。細かい話ですが、窓口の作業を考えた案内なので従っておきます。
申請書が収入印紙貼付台紙を含めて複数ページになる場合は、各ページのつづり目に契印が必要です。契印に使う印鑑は、申請書に押した印鑑と同じものを使います。代表取締役が申請するなら登記所に届け出ている印鑑、代理人が申請するなら代理人の印鑑です。
申請書に押す印鑑は、登記所に提出した印鑑です。まだ印鑑を提出していない会社は、印鑑届書を一緒に出します。印鑑届書の様式も、法務局の商業・法人登記の申請書様式のページに掲載されています。
代理人に申請を委任する場合は、委任状が要ります。委任状には登記所に届け出ている印鑑を押します。この場合、申請書への代表取締役の押印は不要です。
期限は2週間。遅れると過料の対象になる
登記には期限があります。会社法は、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地において変更の登記をしなければならないと定めています。
役員を選び直したなら、総会の日から2週間です。商号を変えたなら、決議の日から2週間です。この期限を過ぎると、登記を怠ったこととして、100万円以下の過料の対象になります。対象は会社ではなく代表者個人です。
実務では、数日から数週間の遅れで即座に過料になることは多くありません。ただし、何年も放置していた分をまとめて登記するようなケースでは、裁判所から過料の通知が届くことがあります。取締役の任期が切れているのに選任の登記をしていない、という状態が一番危ないパターンです。
任期は原則として取締役が2年、監査役が4年ですが、公開会社でない会社は定款で最長10年まで伸ばせます。10年にしている会社は、10年に一度しか登記の機会がないので、忘れる確率が跳ね上がります。定款で何年にしているかを一度確かめて、次の期限をカレンダーに入れておいてください。
オンラインで出すという選択肢
紙で作って窓口に持ち込む以外の方法もあります。
登記・供託オンライン申請システムを使えば、申請書をオンラインで送れます。添付書面については、すべてをデータで出す方法と、申請だけオンラインで行って添付書面は別途郵送する方法があります。後者のほうが、電子署名の準備が要らない分だけ取りかかりやすいです。
QRコード付き書面申請という方法も用意されています。申請書をオンラインで作成し、QRコードが印字された申請書を印刷して、添付書面と一緒に郵送または持参する形です。手書きの申請書で起きがちな記載ミスが減ります。法務局の記載例にも、この方法の案内と操作手引書へのリンクが付いています。
添付書面をデータで出す場合は、法務大臣が指定する方式に従った電子署名と電子証明書が必要です。市販の電子契約サービスの署名が、この方式に対応しているとは限りません。使う前に確認してください。
初めての登記であれば、紙で作って窓口に持ち込むのが結局いちばん早いことが多いです。その場で形式を見てもらえて、足りないものがあれば教えてもらえます。
出す前の最終確認
提出の直前に、次の項目を上から順に見てください。
議事録の日付と、登記すべき事項の原因年月日が一致しているか。氏名の字体が戸籍のとおりか。新任者の住所が住民票のとおりか。就任承諾の一文が入っているか。株主リストの合計が議決権の数と合っているか。株主リストに代表者の記名と押印があるか。印鑑証明書の作成日が3か月以内か。収入印紙の額が正しいか。つづり目に契印があるか。原本還付を請求するなら、写しに原本と相違ない旨の記載と押印があるか。
この10項目を紙に書き出して、鉛筆で消しながら確認する。地味ですが、補正で往復するより早いです。
法務局の商業・法人登記の申請書様式のページには、登記の目的ごとに申請書の様式と記載例が並んでいます。自分のケースに当てはまるものを1つ選んで、その記載例を横に置きながら作れば、ほとんどの落とし穴は避けられます。
任期切れを何年も放置していた場合に、まずやること
相談として多いのが、役員の任期がとっくに切れていたと後から気づいた、というケースです。落ち着いて順に片づければ戻せます。
まず、登記事項証明書を取って、現在の登記上の役員と就任した日を確かめます。次に定款を開いて、取締役と監査役の任期を何年に定めているかを確認します。この2つが揃うと、いつ任期が切れていたかが計算できます。
期限の根拠はここにあります。
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
切れていた分について、さかのぼって決議したことにする議事録を今から作るのは、事実と違う記載になります。実務では、過去に総会を開いていた記録が残っているならその日付で議事録を整え、記録が無いなら改めて選任の総会を開く、という進め方になります。どちらが適切かは事情で変わるので、司法書士か管轄の法務局に相談してください。
過料の通知が来るかどうかは、遅れの長さと経緯によります。何年も放置していた場合は通知が届くことがありますが、届いたからといって登記ができなくなるわけではありません。放置を続けるほど不利になるので、気づいた時点で手を付けるのが最善です。
もう一つ、放置には別の危険があります。会社法は、株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものを休眠会社と呼び、法務大臣が官報で公告したうえで2か月以内に事業を廃止していない旨の届出をしないときは、その期間の満了の時に解散したものとみなすと定めています。登記所からは通知も発せられます。任期を10年に設定している会社は、この12年という線に近づきやすいので注意してください。届出をするか、期間内に何らかの登記をすれば、みなし解散は避けられます。
議事録の写しは支店にも置く
本店に備え置く話は知られていますが、支店の扱いを見落としている会社があります。会社法318条2項は、株主総会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければならないと定めています。そして3項で、株主総会の日から5年間、議事録の写しを支店に備え置かなければならないとしています。
ただし3項にはただし書きがあり、議事録を電磁的記録で作成していて、支店で閲覧や写しの請求に応じられるようにする措置をとっている場合は、写しを置かなくてよいとされています。社内の共有フォルダに置いて支店から開けるようにしてある会社は、この形に当てはまります。
備え置く理由は、閲覧の請求があるからです。同条4項により、株主と債権者は会社の営業時間内であればいつでも、議事録の閲覧や写しの請求ができます。書面で作っているなら書面かその写しの閲覧、電磁的記録で作っているなら表示したものの閲覧です。
登記のために原本を法務局に出して、そのまま返してもらわなかった会社は、この10年の備置きを果たせません。原本還付を請求するのは、法務局に気を遣う話ではなく、会社の側の義務を守るための手続きだということです。
還付が思ったとおりにいかなかったとき
原本還付の流れは決まっていますが、うまくいかない場合の扱いも定めがあります。
申請が却下された場合は、請求の出し方が変わります。商業登記規則49条2項のただし書きは、登記の申請が却下された場合において書類の還付を請求するには、還付請求書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本を添付して、これを登記所に提出しなければならないとしています。申請書に添えるのではなく、還付請求書という別の書面を出す形です。
代理人に頼んでいる場合は、もう1枚要ります。同条4項は、代理人によって還付の請求をするには、申請書にその権限を証する書面を添付しなければならないとしています。登記の申請を委任する委任状とは別に、還付の請求についても権限があることを示す必要があるという読み方になります。司法書士に依頼している場合は事務所が処理するので気にする場面は少ないのですが、身内に頼んで出す場合は抜けがちです。
還付されたことの記録も残ります。同条3項は、登記官は書類を還付したときは、その謄本、登記の申請書または還付請求書に原本還付の旨を記載して押印しなければならないとしています。返ってきた書類と一緒に、この記載がある写しが綴じられていると分かれば、還付が正式に処理されたということです。
取り下げるか、還付だけ請求するか迷う場面もあります。判断は事情で変わるので、窓口に事実を伝えて聞くのが早いです。電話で済みます。
書面で決めた場合に何を出すか
総会を開かずに決めることもできます。会社法319条1項は、取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合に、その事項について議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすと定めています。
この場合、法務局に出すのは開催した総会の議事録ではありません。決議があったものとみなされた事項について作った議事録と、全員の同意を示す書面または電磁的記録が根拠になります。株主リストの添付も必要です。決議を省略した場合も株主リストが要る点は、開いた場合と変わりません。
原因年月日の考え方も押さえておきます。同条5項は、定時株主総会の目的である事項のすべてについて可決する旨の決議があったものとみなされた場合には、その時に定時株主総会が終結したものとみなすとしています。役員の任期はこの時に満了するので、重任の原因年月日は、決議があったものとみなされた日になります。全員の同意が揃った日がいつなのかを、書面の日付で追えるようにしておいてください。
同意の書面は、決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置く義務があります。開いた総会の議事録と同じ扱いです。
費用を一覧にしておく
どの登記で何円かかるかを、登録免許税法の別表に沿って並べます。いずれも申請1件あたりの額です。
・役員に関する事項の変更 3万円。資本金の額が1億円以下の会社は1万円 ・本店の移転 1箇所につき3万円。管轄をまたぐ移転は2件分になります ・商号の変更、事業目的の変更 3万円。これらは別表で個別に挙げられていない登記事項の変更にあたります ・登記の更正 2万円 ・登記の抹消 2万円
証明書の手数料は登記手数料令が定めています。登記事項証明書は窓口や郵送の請求で1通600円、オンラインで請求して窓口で受け取ると490円、郵送してもらうと520円です。会社の印鑑証明書は1件500円で、オンラインで請求すると420円、郵送を求めると450円です。登記簿の附属書類を閲覧する場合は、一事件に関する書類につき500円です。
同じ総会で役員の改選と商号の変更を決めた場合、議事録は1通で足りますが、登録免許税は区分ごとに計算されます。まとめて出せば税額が1回分になるわけではありません。まとめる意味は、法務局へ行く回数と書類を作る手間が減ることのほうにあります。
誰が手を動かすかを決めておく
ここからは体制の話です。
会社の登記は、頻繁には発生しません。役員の任期を10年にしている会社なら、10年に一度です。そのたびに、前回のやり方を思い出すところから始まります。この「たまにしか来ないが、間違えると過料の対象になる仕事」を、社内の誰が持つのかを決めていない会社が多いです。
司法書士に頼めば確実です。一方で、書類を揃える作業そのものは、手順さえ分かっていれば事務の経験がある人がこなせます。判断が要る部分と、作業で済む部分を分けて、後者を在宅の事務系人材に任せる会社は増えています。
文書の体裁を扱う基礎は、資格の形でも測れます。ビジネス文書検定は、社内外でやりとりする文書の構成や表現を扱う試験で、議事録や申請書類の型を身につける入口になります。
外部に頼むときの費用感は、職種別の単価データから掴めます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場には、文書を扱う職種の報酬水準がまとまっていて、見積もりの基準に使えます。
オンライン申請や電子署名まで含めて仕組みを整えるなら、システム面を見られる人が必要になります。アプリケーション開発のお仕事では、業務の流れを踏まえて仕組みを作る仕事の内容が紹介されています。
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、この種の年次業務は、同じ人に続けて頼めている会社ほど負荷が低くなっています。去年の申請を知っている人が今年も作る。去年つまずいた箇所を覚えている。この積み重ねが、確認の往復をいちばん減らします。そして、仲介の手数料を何段も挟まない直接のやりとりであれば、頼む側は同じ予算でより広い範囲を任せられ、受ける側の手取りも厚くなります。手数料0%の取引が効いてくるのは、金額の派手さではなく、この続けやすさのほうです。
法務局に出す議事録は、公開されている記載例のとおりに作れば通ります。難しいのは書類ではなく、誰がいつやるかを決めておくことのほうです。
よくある質問
Q. 法務局に出した株主総会議事録の原本は返してもらえますか?
返してもらえますが、請求が必要です。商業登記規則は、申請人が添付書類の還付を請求できると定めており、請求するには原本と相違がない旨を記載した写しを一緒に添付します。写しには会社名と代表者名を書き、登記所に届け出ている印鑑を押します。複数ページなら、つづり目に契印も押します。
Q. 議事録のほかに必ず必要な書類は何ですか?
株主リストです。登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合は、議決権数の上位10名か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主のうち人数の少ないほうについて、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合を代表者が証明する書面を添付します。法務局が書式例と記載例を公開しています。
Q. 登記はいつまでに申請すればよいですか?
登記事項に変更が生じた日から2週間以内です。役員を選び直したなら総会の日から2週間、商号を変えたなら決議の日から2週間が目安になります。期限を過ぎると登記を怠ったこととして100万円以下の過料の対象になり、対象は会社ではなく代表者個人です。
Q. 印鑑証明書はどんなときに必要ですか?
取締役会を置いていない会社が株主総会の決議で代表取締役を定め、その就任による変更登記を申請する場合に、議長と出席取締役が議事録に押した印鑑の証明書が必要です。ただし前任の代表取締役が登記所に届け出ている印鑑を議事録に押していれば不要になります。作成後3か月以内のものを用意してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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