議事録は誰が作って誰が押印するのか|署名が要る人の範囲

丸山 桃子
丸山 桃子
議事録は誰が作って誰が押印するのか|署名が要る人の範囲

この記事のポイント

  • ✓株主総会議事録の作成者は誰か
  • ✓署名や押印は誰がするのか
  • ✓会社法と法務省令の条文

株主総会議事録の作成者は誰にすればよいのか。この疑問が出てくる時点で、たいていは議事録の末尾に名前を並べる段階まで来ています。結論から書くと、作るのは取締役です。そして署名や押印は、会社法の上では義務ではありません。それでも実務で押しているのは、登記の場面で別の規則が印鑑を求めることがあるからです。この記事では、名前を載せる人の範囲と、印鑑が要る場面の線引きを、条文と法務局の記載例に沿って分けていきます。

作るのは取締役。法務省令が名前を残せと指示している

株主総会議事録に何を書くかは、会社法ではなく会社法施行規則という省令に並んでいます。その中に、こういう項目があります。

六 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 出典: laws.e-gov.go.jp

この一行が、作成者に関する唯一の直接の手がかりです。読み取れることは3つあります。

第一に、議事録を作る職務を担うのは取締役だということ。経理の担当者でも、総務の社員でもなく、取締役の氏名を書くことになっています。第二に、その氏名を議事録の中に記載しなければならないということ。名前を書かずに済ませると、記載事項が欠けた議事録になります。第三に、1人と決まっているわけではないこと。条文は「取締役の氏名」としか書いておらず、複数人が関わったなら複数人の名前を書いても問題ありません。

取締役が1人しかいない会社では、悩む余地がありません。その1人が作成者です。取締役が3人いる会社なら、誰が作るかは会社の中で決めます。法律は誰を選べとは言っていないので、代表取締役でも、それ以外の取締役でも構いません。実務では、議長を務めた代表取締役がそのまま作成者を兼ねる形が最も多く見られます。

法務局が公開している記載例も、その形になっています。出席役員を並べる欄に「出席取締役 ○○○○(議長兼議事録作成者)」と書かれていて、議長と作成者を同じ人が務める前提で組まれています。1つのかっこ書きで、法務省令が求める議長の氏名と作成者の氏名の両方を満たせるので、無駄がありません。

手を動かす人と、名前が載る人は別でよい

ここが実務でいちばん誤解されるところです。「取締役が作成者」と書いてあるからといって、取締役が自分でワープロを打たなければならない、という意味ではありません。

法務省令が求めているのは「議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名」です。作成という職務に責任を持つ取締役が誰かを示せ、と言っている。実際の入力作業や体裁の調整を、総務の社員や外部の事務スタッフが担っても、議事録としての効力には影響しません。

この整理は、日常の書類づくりに置き換えると分かりやすいです。請求書を作るのは経理担当者ですが、内容に責任を持つのは会社です。議事録も同じで、下書きは誰が書いてもよく、内容を確認して名前を載せるのが取締役だ、という役割分担になります。

ただし、任せきりにしてよいという話ではありません。議事録は、その場で何が起きたかを固定する書類です。会議に出ていない人が伝聞だけで書くと、発言していない内容が入り込んだり、実際には賛成が割れていたのに満場一致と書かれたりします。事実と違う記載は過料の対象に挙がっているので、名前を載せる取締役が最後に読み合わせる工程は外せません。

下書きを外に出す場合は、渡す材料を揃えておくと精度が上がります。定款、登記事項証明書、株主名簿、決算書、前回の議事録。この5点があれば、日時と数字と氏名の大半は埋まります。判断が要るのは、議案ごとの議事の経過をどこまで書くかという一点だけになります。

株主総会議事録に、署名も押印も法律上の義務はない

ここから印鑑の話に入ります。まず押さえてほしい事実があります。会社法にも会社法施行規則にも、株主総会議事録に署名または記名押印をしなければならない、という規定はありません。

会社法施行規則が並べている記載事項は、日時と場所、議事の経過の要領とその結果、一定の場面での発言の概要、出席した役員の氏名、議長の氏名、作成に係る職務を行った取締役の氏名。この6つです。署名も押印も出てきません。

つまり、誰も押していない株主総会議事録であっても、会社法の要求は満たしています。この点を知らずに「全員の実印がないと無効なのでは」と不安になる人は多いのですが、無効にはなりません。

なぜこんな作りになっているのか。株主総会は株主が決める場であって、取締役が決める場ではないからです。取締役が何かを保証する必要がない。だから記名押印の義務も置かれていない、という整理です。

取締役会の議事録とは扱いがまったく違う

同じ「議事録」でも、取締役会の議事録は扱いが正反対です。

取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。 4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

取締役会議事録には「しなければならない」と明記されています。出席した取締役と監査役の全員が対象です。データで作った場合は、署名または記名押印に代わる措置、つまり電子署名をとることまで求められています。

株主総会議事録には、この規定が対応していません。会社法施行規則が電子署名の対象として列挙している条文の中に、株主総会議事録の条文は入っていない。取締役会議事録の条文は入っている。この差は条文の並びを見れば一目で分かります。

なぜ取締役会だけ厳しいのか。取締役会の決議に参加した取締役で、議事録に異議をとどめていない者は、その決議に賛成したものと推定される、という規定があるからです。署名や押印は、その推定の土台になります。誰が賛成したことになるのかが後で争われる場面があるので、名前と印鑑を残させている、という構造です。

2つの議事録を同じルールだと思い込むと、株主総会議事録に過剰な印鑑を集めたり、逆に取締役会議事録の押印を省いたりします。取締役会議事録の押印漏れのほうが深刻なので、そちらを先に確かめてください。

それでも押印する場面がある。理由は登記にある

会社法が求めていないのに、実務で押印が話題になるのはなぜか。商業登記規則という別の規則が、登記の申請書に添付する議事録について、押した印鑑の証明書を要求することがあるからです。

該当するのはこの規定です。

代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。 一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑 出典: laws.e-gov.go.jp

条文が長いので、条件を分解します。

まず、対象は「代表取締役の就任による変更の登記」です。取締役が変わっただけ、監査役が変わっただけ、という登記はここに当たりません。次に、「株主総会の決議によって代表取締役を定めた場合」という限定が付いています。取締役会で代表取締役を選んだ会社は、この号の対象外です。そして、必要になるのは「議長及び出席した取締役」が押した印鑑の証明書です。監査役や株主は含まれていません。

最後にただし書きがあります。押された印鑑が、変更前の代表取締役が登記所に届け出ている印鑑と同じなら、証明書は不要です。

押印と印鑑証明書が本当に要るのは、この組み合わせのときだけ

条件を順に並べると、次の3つが同時に成り立つときだけ、印鑑証明書まで踏み込む必要が出ます。

  1. 取締役会を置いていない会社である
  2. その株主総会で代表取締役を選んだ
  3. 前任の代表取締役が、その議事録に登記所へ届け出ている印鑑を押していない

3つ目が抜け道になります。前任の代表取締役が総会に出席していて、会社の実印(登記所に届け出ている印鑑)を議事録に押しているのなら、ほかの出席取締役の印鑑証明書は要りません。

法務局の記載例にも、この条件がそのまま注記されています。取締役会を設置していない会社で新たに取締役または代表取締役を株主総会で選定した場合は、議長および出席した取締役が議事録に押した印鑑について市町村長が作成した印鑑証明書の添付が必要になる。ただし、変更前の代表取締役が株主総会に出席し、登記所に提出した印鑑を議事録に押している場合には、議長および出席取締役の印鑑証明書は不要である。こう書かれています。

社長が続投する、あるいは前の社長が総会に出席して次の代表を選ぶ。この形であれば、会社の実印を1つ押すだけで済みます。逆に、前の代表取締役がすでに辞めていて総会に来られない、というときは、議長と出席取締役の全員が個人の実印を押し、それぞれの印鑑証明書を用意することになります。人数が多いほど手間が増えるので、段取りの段階で気づけると楽です。

印鑑証明書には期限があります。登記の申請で使う印鑑証明書は、作成後3か月以内のものが求められます。総会の前に取っておいて、申請までに期限が切れるという失敗が起きやすいので、取る順番に注意してください。

取締役会設置会社の記載例は「記名する」で終わっている

比べてみると、違いがはっきりします。

法務局が公開している役員変更の記載例のうち、取締役会を設置していない会社の株主総会議事録は、結びがこうなっています。「上記の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長、出席取締役及び出席監査役がこれに記名押印する。」そして氏名の横に印鑑の印が並んでいます。

一方、取締役会を設置している会社の記載例は、同じ位置がこうです。「上記の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長、出席取締役及び出席監査役がこれに記名する。」印鑑の印は付いていません。

同じ公的機関が出している記載例で、末尾の文言が書き分けられている。これが、押印の要否が会社の形で変わることの何よりの証拠です。自分の会社がどちらなのかを先に確かめてから、どちらの記載例を骨にするかを決めてください。

取締役会を置いているかどうかは、登記事項証明書を取れば分かります。取締役会設置会社である旨が登記されていれば、代表取締役は取締役会で選びます。その場合、印鑑証明書が問題になるのは取締役会議事録のほうで、株主総会議事録ではありません。

なお、取締役会議事録についても同じ逃げ道があります。代表取締役が登記所に届け出ている印鑑を取締役会議事録に押していれば、ほかの出席者の印鑑証明書は不要です。押されていない場合は、出席した取締役と監査役の全員が実印を押し、全員分の印鑑証明書が必要になります。

就任承諾を議事録で代用するときは、押す印鑑が変わる

もう一つ、押印の話が絡む場面があります。就任承諾書です。

役員を選んだら、選ばれた人が就任を承諾したことを示す書面が要ります。ただし、議事録に「被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した」という一文があれば、その記載を使って就任承諾書の添付を省けます。申請書には「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する。」と書きます。書類が1枚減るので、実務では広く使われています。

ここに条件が付きます。取締役会を置いていない会社で、新しく就任する取締役の就任承諾書について議事録の記載を援用する場合は、その人が市町村に登録した印鑑、つまり個人の実印を議事録に押し、印鑑証明書を添える必要があります。援用するということは、その議事録が就任承諾書の代わりになるということなので、就任承諾書に求められる本人確認の水準が議事録側に移ってくる、という理屈です。

新しく就任する人が誰もいない、全員が再選で重任するだけ、という場合はこの話が出てきません。新任者がいるかどうかで必要書類が変わるので、選任の議案を書く段階で仕分けておくと迷いません。

新任の取締役や監査役で印鑑証明書を出さない人については、本人確認証明書が別に必要になります。住民票記載事項証明書や、運転免許証の両面のコピーに本人が原本と相違ない旨を記載して記名したもの、といった書類です。印鑑証明書を添付する人は、その印鑑証明書で足ります。

監査役や会計参与、株主は押すのか

名前を載せる範囲の話に戻ります。

法務省令が氏名の記載を求めているのは、株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人です。株主の氏名は、記載事項として求められていません。出席株主の人数と議決権の数を書けば足ります。

押印については、商業登記規則が名指ししているのは「議長及び出席した取締役」だけです。監査役の印鑑証明書を求める規定はありません。ただし法務局の記載例では、出席監査役も議長や取締役と並んで記名押印する形になっています。慣行として揃えて押しているもので、登記の審査で監査役の印鑑証明書を求められる場面はありません。

会計参与が法人である場合は、名称の書き方に決まりがあります。記載例では「出席会計参与 税理士法人法務会(代表社員○○○○)」のように、法人名と代表社員の氏名を並べる形が示されています。

株主が押す必要は基本的にありません。例外は、株主リストという別の書面のほうです。こちらは代表者が証明する書面なので、会社の代表者が押します。株主本人の押印は要りません。

記名と署名、実印と認印の違いを整理する

言葉の使い分けでつまずく人が多いので、まとめておきます。

署名は、本人が手書きで名前を書くことです。記名は、それ以外の方法で名前が記されていることを指します。印字でも、ゴム印でも、他人が書いたものでも記名です。だから「記名押印」は、印字した名前の横に印鑑を押す形を指します。

株主総会議事録は、そもそも署名も記名押印も法律上は不要なので、名前が印字されているだけでも問題ありません。取締役会議事録は「署名し、又は記名押印しなければならない」なので、手書きで名前を書くか、印字した名前に印鑑を押すか、どちらかを選びます。印字した名前だけで印鑑が無い状態は、どちらにも当たりません。

印鑑の種類も3つに分けて考えます。会社の実印は、登記所に届け出ている印鑑です。法務局に印鑑届書を出して登録してあるもので、登記の申請書に押すのはこれです。個人の実印は、市区町村に登録してある印鑑で、印鑑証明書が取れます。認印は、どこにも登録していない印鑑です。

商業登記規則が印鑑証明書を求める場面で必要になるのは、会社の実印か個人の実印です。認印では足りません。逆に、登記に出さない社内保管用の議事録なら、認印でも押さない選択でも構いません。

データで作ったとき、誰の電子署名が要るか

株主総会議事録は、書面でも電磁的記録でも作れます。会社法施行規則が、書面または電磁的記録をもって作成しなければならない、と定めています。データで作る場合、社内で保存する分には電子署名を求める規定がありません。押印義務がないので、それに代わる措置の義務も置かれていない、という流れです。

ただし、登記の添付書面としてデータを出す場合は話が変わります。商業登記規則は、申請書に添付する電磁的記録について、法務大臣の指定する方式に従った電子署名と、それを確認するための電子証明書を記録しなければならないと定めています。誰の電子署名かは、その書面が本来誰の押印を要するかに対応します。

紙で作ってスキャンした画像を添付する、という扱いはできません。紙は紙のまま、データはデータのまま、それぞれの形式で求められる要件を満たす必要があります。オンラインで登記申請をする会社が増えていますが、添付書面だけ紙で郵送する、という組み合わせも認められています。慣れないうちは、議事録は紙で作って押印し、申請だけオンラインで行う形が扱いやすいです。

電子契約サービスを使う場合は、そのサービスの電子署名が法務局の求める方式に対応しているかを事前に確かめてください。社内の合意形成には十分でも、登記の添付書面としては使えない形式もあります。

会議を開かずに決めたとき、名前を書くのは誰か

株主全員が書面などで同意して、会議を開かずに決議したことにする方法があります。このときの議事録は、書く中身が入れ替わります。

記載するのは、決議があったものとみなされた事項の内容、その提案をした者の氏名または名称、決議があったものとみなされた日、そして議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名。この4つです。

注目したいのは、4つのうち1つが作成者の氏名だということです。通常の議事録では6項目のうちの1つでしたが、こちらでは4項目のうちの1つになります。議長も出席役員も出てこない分、作成者の氏名の比重が上がります。書き漏らすと記載事項の半分が欠けたことになるので、より目立ちます。

提案をした者の氏名も忘れやすい項目です。誰が言い出したのかを書く。取締役が提案したなら取締役の氏名、株主が提案したなら株主の氏名を書きます。

同意書そのものも保管します。決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置くことになっています。議事録と同意書は別の書類なので、どちらかだけ残す運用にしないでください。

名前と印鑑で止まりやすい場面

最後に、実際につまずきやすい箇所を並べます。

作成者の氏名が抜けている。これがいちばん多い形です。日時、出席者、議案と結果までは書けているのに、末尾の作成者だけが落ちる。議長のかっこ書きに兼務であることを書く形にしておけば、まず抜けません。

出席していない取締役の名前が並んでいる。テンプレートを使い回すと起きます。前回は3人出席だったが今回は2人だった、という差分を反映し忘れる。事実と違う記載は過料の対象なので、ここは毎回目視で確認してください。

印鑑証明書の期限が切れている。総会の2か月前に取った印鑑証明書を、登記申請の直前に出そうとして期限を過ぎているケースです。作成後3か月以内のものが求められます。

会社の実印ではなく認印を押している。前任の代表取締役が押した印鑑が登記所届出印でなければ、ただし書きの適用を受けられません。出席取締役全員の印鑑証明書が必要になり、そこから集め直しになります。

取締役会議事録の押印を省いてしまった。株主総会議事録には押印義務がないと知った直後に、取締役会議事録も同じだと思い込む。この取り違えが最も影響が大きい部分です。取締役会議事録には明確な義務があります。

議事録はいつ作るのか。日付の付け方で迷わないために

作成者を決めたら、次に迷うのが日付です。議事録の末尾に書く日付は、総会を開いた日にするのか、書き上げた日にするのか。

法務局の記載例では、閉会の一文のあとに日付を置き、その下に会社名と役職、氏名を並べる形になっています。この日付は、総会を開催した日と同じ日付が入っています。議事録は総会の記録なので、開催日を書くのが素直です。

では、実際に書き上げたのが総会の3日後だった場合はどうか。開催日を書いて差し支えありません。議事録は開催日の出来事を記録した書類であり、いつ清書したかを示す書類ではないからです。ただし、何か月も経ってから作るのは避けてください。株主や債権者は営業時間内であればいつでも閲覧や謄写を請求できると定められていて、請求があったときに「まだ作っていません」では応じられません。

登記に使う場合は、もう一つ気をつける点があります。役員変更の登記には期限があります。決議した日から2週間以内に登記を申請するのが原則で、遅れると過料の対象になります。議事録が仕上がらないせいで登記が遅れる、という順番は避けたいところです。総会の当日か翌日には形にして、押印まで済ませておくのが安全です。

作成者の氏名を書く欄と、記名押印する欄は別物である点も押さえておいてください。出席役員を並べる冒頭のブロックで「議長兼議事録作成者」と書き、末尾でもう一度、議長と出席取締役として名前が並ぶ。同じ人の名前が2か所に出ますが、これは重複ではなく、法務省令が求める記載事項と、慣行としての結びの記名押印が、それぞれ別の役割を持っているためです。

作った議事録を、誰がどこに置くか

名前と印鑑が揃ったら、置き場所を決めます。会社法は、株主総会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければならないと定めています。支店がある会社は、その写しを5年間、支店に置きます。

備え置くというのは、すぐ取り出せる状態で保管するという意味です。株主と債権者は、会社の営業時間内であればいつでも、書面の閲覧または謄写を請求できます。正当な理由なく拒むと、過料に処すべき行為として挙げられています。

管理の責任も、実質的には作成者が負うことになります。作った本人が置き場所を知らない、という状態が最も危ない。ファイル名に開催日を入れてデータを保存し、紙の原本は総会の年度ごとに綴じる。この2つを決めておくだけで、数年後に探せなくなる事態を防げます。

データで作った場合、支店への写しの備置きは、支店で閲覧の請求に応じられる措置をとっていれば不要になります。支店が複数ある会社では、紙の写しを配るより、データで一元管理したほうが手間が少ないことがあります。

登記に使った議事録の原本は、法務局に提出すると戻ってきません。手元に残したい場合は、原本と相違ない旨を記載した写しを一緒に出して、原本の還付を請求します。この手続きを知らずに原本を渡してしまい、手元に何も残らないという失敗は珍しくありません。申請の前に、コピーを取る一手間を入れてください。

議事録づくりの担当をどこに置くか

ここからは、社内の体制の話です。

議事録の作成者は取締役でなければなりませんが、作業そのものは分けられます。年に1回か2回しか発生せず、間違えると登記と税務で止まる。この性質の仕事は、担当を固定して手順書を残しておくと、翌年の負荷が劇的に下がります。

在宅で働く事務系の人材に、議事録の下書きと体裁づくり、必要書類の洗い出しを任せる会社は増えています。判断を伴う部分、つまり議事の経過をどう書くか、誰の印鑑証明書が要るかは取締役と専門家が決め、それ以外の定型作業を外に出す。この分け方であれば、責任の所在がぶれません。

文書の体裁を扱う力は、資格の形でも測れます。ビジネス文書検定は、社内外でやりとりする文書の構成や敬語の使い分けを扱う試験で、議事録や通知文の型を身につける入口になります。外部に依頼するときの目安としても使えます。

文書作成を受ける側の報酬水準は、職種別のデータから掴めます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場には、文章を扱う職種の単価がまとまっていて、外注費を見積もるときの基準になります。社内の担当者が半日かけて調べ直す時間と比べて、どちらが合理的かは会社ごとに変わります。

電子署名や電子申請まで含めて仕組みを整えるなら、セキュリティと業務設計の両方を見られる人が要ります。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、こうした領域で在宅・業務委託の形で関わる仕事の内容が紹介されています。

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、この種の年次業務を外に出せている会社ほど、同じ人に毎年頼む形に落ち着いています。去年の議事録を知っている人が今年も作る。この継続が、確認の手間をいちばん減らします。そして仲介の手数料を何段も挟まない直接の取引であれば、発注側は同じ予算でより多く頼め、受ける側の手取りも厚くなる。手数料0%の取引が効くのは金額の派手さではなく、この続けやすさのほうです。

議事録の作成者は取締役、という一行は法律が決めてくれています。決まっていないのは、その取締役が何を自分でやり、何を人に任せるかだけです。

よくある質問

Q. 株主総会議事録の作成者は誰にすればよいですか?

会社法施行規則は記載事項として「議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名」を挙げているため、作成者は取締役です。誰を充てるかは会社が決めてよく、法務局の記載例では議長を務めた代表取締役が「議長兼議事録作成者」として兼ねる形が示されています。取締役が1人の会社ではその1人が作成者になります。

Q. 株主総会議事録に押印しないと無効になりますか?

無効にはなりません。会社法にも会社法施行規則にも、株主総会議事録への署名や記名押印を義務づける規定はなく、記載事項として求められているのは氏名までです。ただし取締役会議事録は別で、出席した取締役と監査役が署名または記名押印しなければならないと明記されています。

Q. 印鑑証明書まで必要になるのはどんな場合ですか?

取締役会を置いていない会社が株主総会の決議で代表取締役を定め、その就任による変更登記を申請する場合に、議長と出席取締役が議事録に押した印鑑の証明書が必要です。ただし前任の代表取締役が登記所に届け出ている印鑑を議事録に押していれば不要になります。印鑑証明書は作成後3か月以内のものを用意します。

Q. 議事録の下書きを社員や外部の人に任せてもよいですか?

問題ありません。法務省令が求めているのは作成という職務に責任を持つ取締役の氏名であり、入力作業や体裁の調整まで取締役が行う必要はありません。ただし事実と違う記載は過料の対象に挙がっているため、名前を載せる取締役が内容を確認する工程は省けません。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月2日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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