安全データシート(SDS)の翻訳費用|化学物質表示の言語別料金相場 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
安全データシート(SDS)の翻訳費用|化学物質表示の言語別料金相場 2026

この記事のポイント

  • SDS翻訳費用の相場を1製品あたりの単価・言語別の価格差・依頼先ごとの違いから解説
  • 仲介会社経由とフリーランス直接依頼のコスト差
  • 失敗しない発注の進め方まで

先日、化学メーカーの海外営業担当の方から相談を受けました。「輸出先がEUに変わったので、SDSを英語とドイツ語に翻訳しないといけない。見積もりを3社取ったら、1製品あたり2万円台から8万円台までばらついていて、何を基準に選べばいいか分からない」と。

結論から言うと、SDS翻訳の費用は「誰に頼むか」で3倍近く変わります。つまり、同じ品質でも仲介の階層をいくつ通すかで金額が変わってくるということです。この記事では、SDS翻訳の費用相場、価格が変わる要因、依頼先ごとの違い、そして失敗しない発注の進め方を、発注者の立場から具体的に解説します。

SDS翻訳費用の市場動向とマクロ視点

化学物質を輸出入する企業にとって、SDS(安全データシート)の翻訳は避けて通れない業務です。GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)の国際的な普及に伴い、輸出先の言語でSDSを作成することが法律上または取引先の要求として求められるケースが増えています。

日本国内でも、労働安全衛生法に基づき一定の化学物質を扱う事業者はSDSの交付が義務付けられています。輸出となると、EU向けであればREACH規則に基づく現地公用語での作成義務があり、中国向けであれば中国語簡体字での作成が求められます。つまり、輸出先の数だけ翻訳言語が増えていくということです。

経済産業省や中小企業庁の発表資料でも、化学物質関連の輸出手続きの複雑化が繰り返し指摘されており、中小の製造業者ほど翻訳コストの負担感が大きいという声が現場から上がっています。

実際の翻訳料金は翻訳会社により幅広く設定されています。 SDSの翻訳については下記の2とおりで翻訳サービスを提供する翻訳会社が多くなっており、それぞれ料金は異なります。

この引用にある通り、SDS翻訳の料金体系は業者によって大きく異なります。1つは製品1件あたりのパッケージ料金で提示する方式、もう1つは文字数や単語数に応じた従量課金方式です。どちらの方式かによって、見積もりの比較のしかたも変わってきます。

市場全体で見ると、SDS翻訳の依頼件数は化学メーカーの海外展開の増加とともに緩やかに拡大している一方、翻訳会社の人材不足や専門性の高さから、単価自体は下がりにくい傾向にあります。「つまり」という言葉をよく使う私ですが、ここで言えることは、SDS翻訳は一般的なビジネス文書翻訳と違い、専門知識を持つ翻訳者の絶対数が少ないため、価格競争が起きにくい分野だということです。

SDS翻訳費用の相場と内訳を理解する

1製品あたりの費用相場

SDS翻訳の費用は、対象言語・分量(16項目すべてを含むかどうか)・専門性の要否によって変動しますが、おおよその目安として以下のレンジで理解しておくと見積もり比較がしやすくなります。

・英語への翻訳: 1製品あたり2万円〜5万円程度 ・欧州言語(ドイツ語・フランス語・イタリア語等)への翻訳: 1製品あたり3万円〜7万円程度 ・中国語・韓国語などアジア言語への翻訳: 1製品あたり2万5,000円〜6万円程度

これはあくまで目安であり、SDSの記載内容が化学物質の混合物で成分が多岐にわたる場合や、GHS分類の再確認作業が必要な場合は、上振れすることが珍しくありません。

翻訳会社によっては1製品あたり70,000円以上の料金が設定されている一方、個人で自宅でやっていらっしゃる翻訳者であれば2万円台での対応も見られます。 出典: tiners-p.com

この価格差、実は本当に大きいんです。同じ品質を求めているつもりでも、依頼先の階層構造が違うだけで金額が2倍以上変わってくる。ここが発注者にとって一番の落とし穴になりやすいところです。

価格を左右する4つの要素

SDS翻訳の見積もりが業者ごとにばらつく理由は、主に次の4つの要素に集約されます。

1. 対象言語の専門翻訳者の希少性

英語やドイツ語のように翻訳需要が多い言語は比較的単価が抑えられる傾向がありますが、東南アジア言語や北欧言語のように専門翻訳者が少ない言語は、単価が高くなりがちです。

2. GHS分類の確認作業の有無

単純な文言の翻訳だけでなく、輸出先の国のGHS分類基準に照らして分類区分を再確認する作業が必要な場合、専門知識を持つ翻訳者や化学の有識者のチェックが入るため、費用が上乗せされます。

3. 成分数と混合物の複雑さ

SDSの3項目「組成、成分情報」に記載される成分数が多いほど、翻訳対象の専門用語も増え、作業時間が長くなります。

4. 納期の緊急度

通常納期(1〜2週間程度)に対して、特急対応(3日以内など)を求める場合、割増料金が発生するのが一般的です。

見積もり時にチェックすべき項目

見積もりを比較する際は、単純な総額だけでなく、以下の項目が含まれているかを必ず確認してください。

・16項目すべての翻訳か、一部項目のみか ・GHS分類の再確認・妥当性チェックが含まれるか ・成分のCAS番号(化学物質を識別する番号)の照合作業が含まれるか ・修正・校正の回数に上限があるか ・納品後の追加修正が有償か無償か

これらの条件を揃えずに総額だけを比較すると、「安い方に頼んだら追加費用が次々と発生した」という事態になりかねません。

依頼先の種類と費用の違い

SDS翻訳の依頼先は、大きく分けて3つのタイプがあります。それぞれの特徴と費用感を整理します。

翻訳会社(仲介型)

大手・中堅の翻訳会社に依頼する場合、プロジェクトマネージャーによる進行管理、複数人によるチェック体制、品質保証の仕組みが整っている点がメリットです。一方で、営業担当・コーディネーター・翻訳者・チェッカーという複数の役割を経由するため、その分の人件費が料金に上乗せされます。

当社は翻訳会社であると同時に原稿作成会社であり、ビジネスやアカデミアに関する多岐にわたる原稿作成も手掛けています。 その中で、SDSはもちろん、論文のアブストラクト(抄録)の翻訳など、専門性が高い翻訳を行っており、その経験の蓄積によって、高い翻訳能力を有しています。

このように、翻訳会社は原稿作成のノウハウも含めた総合力を強みにしていますが、その分の付加価値が料金に反映されている点は理解しておく必要があります。

SDS作成代行サービス(専門特化型)

SDSの作成そのものから請け負う専門業者もあります。翻訳だけでなく、GHS分類の判定、SDSのフォーマット作成まで一括で対応してくれるため、化学物質の知識が社内に乏しい企業には心強い選択肢です。ただし、パッケージ料金であることが多く、翻訳だけを依頼したい場合には割高になることもあります。

フリーランス翻訳者への直接依頼

化学・薬学のバックグラウンドを持つフリーランス翻訳者に直接依頼する方法です。仲介会社を通さないため、中間マージンが発生せず、その分費用を抑えられるのが最大の特徴です。

翻訳会社経由で1製品7万円かかる案件が、同等の専門性を持つフリーランス翻訳者への直接依頼であれば手数料0%の直接取引を活用することで3万円台に収まるケースもあります。もちろん、フリーランスの場合は品質のばらつきや進行管理の手間が発生するリスクもあるため、実績や専門分野の確認は必須です。

SDS翻訳で失敗しないための発注プロセス

ステップ1: 対象言語と項目数を確定する

まず、輸出先の国・地域ごとに必要な言語を洗い出します。EU向けであれば現地公用語、中国向けであれば中国語簡体字というように、国によって求められる言語が異なるため、複数国への輸出がある場合はまとめて依頼したほうが効率的です。

ステップ2: 複数業者から見積もりを取る

最低3社程度から見積もりを取り、前述の「見積もり時にチェックすべき項目」を揃えた上で比較します。総額だけでなく、対応範囲・納期・修正回数を横並びで確認することが重要です。

ステップ3: 過去の実績を確認する

SDS翻訳は専門性が高いため、化学物質関連の翻訳実績があるかどうかを必ず確認してください。一般的なビジネス文書の翻訳実績しかない業者に依頼すると、GHS分類の解釈違いなど、後から修正が必要になるリスクが高まります。

ステップ4: 校正・チェック体制を確認する

翻訳者1人だけが対応するのか、別の担当者によるダブルチェックが入るのかを確認しましょう。特に人命や安全に関わる書類であるSDSは、誤訳が重大な事故につながる可能性があるため、チェック体制の有無は費用と天秤にかけてでも確認すべきポイントです。

失敗事例: 見積もり比較で安さだけを見て後悔したケース

私自身、行政書士として独立した直後、事務所のWebサイト翻訳を海外の格安フリーランスに依頼したことがあります。見積もりの安さだけで選んでしまい、納品されたものを確認したら専門用語の訳がずれていて、結局別の翻訳者に校正を依頼する二度手間になりました。「安ければいい」という判断基準だけで発注すると、後から余計な費用と時間がかかる。これ、知らない人が本当に多いんです。

SDS翻訳のように専門性と正確性が求められる分野では、なおさら価格だけでなく実績と専門知識の有無を優先して選ぶべきです。※化学物質の分類判断が絡む複雑なケースでは、翻訳会社だけでなく化学物質管理の専門家(化学物質管理士等)への相談も併せて検討してください。

外注先の選び方と直接依頼のメリット

SDS翻訳を外注する際、多くの企業がまず翻訳会社に問い合わせますが、コストを抑えたい場合はフリーランスの専門翻訳者への直接依頼も選択肢に入れるべきです。

直接依頼の最大のメリットは、仲介マージンが発生しない点です。翻訳会社を通す場合、営業担当者の人件費、プロジェクトマネジメント費、複数人によるチェック体制の費用がすべて料金に含まれます。これらは品質担保のために必要なコストである一方、フリーランスへの直接依頼であれば、翻訳者本人のスキルに対して直接対価を支払う形になるため、同じ予算でより高品質な翻訳者に依頼できる可能性が高まります。

もちろん、フリーランスへの直接依頼にはデメリットもあります。進行管理を発注者側が担う必要があること、翻訳者が体調不良や繁忙で対応できなくなった場合のバックアップ体制がないこと、契約書や秘密保持契約(NDA)の締結を自社で用意する必要があることなどです。

こうしたリスクを軽減するには、フリーランス翻訳者とのマッチングを仲介するサービスを活用し、契約周りの手続きを簡略化しつつ、直接取引のコストメリットを享受する方法が現実的です。

翻訳を依頼する際に合わせて確認しておきたいのが英語・多言語翻訳のお仕事で、化学・医薬・法務などの専門分野に強い翻訳者がどのような業務範囲で対応しているかを知ることができます。また、SDSのように専門性の高い分野ではJTF翻訳品質認証を保有する翻訳者かどうかも、品質を見極める1つの判断材料になります。

独自データ考察:発注者が見落としがちな費用対効果

化学メーカーの海外展開が進むにつれ、SDS翻訳は一度きりの業務ではなく、製品ラインナップの追加や輸出先の拡大のたびに繰り返し発生する業務になります。つまり、単発の見積もり比較だけでなく、継続的なパートナーシップを前提にした発注戦略が重要になってきます。

20年フリーランス・在宅ワーク市場を運営してきた立場から言えば、単発の安さだけで発注先を選ぶ企業ほど、翻訳者との関係が長続きせず、毎回ゼロから信頼関係を築き直すコストを払っています。逆に、長く同じ翻訳者に継続依頼している企業ほど、専門用語の統一や過去のSDSとの整合性チェックがスムーズになり、結果的にトータルコストが下がっているケースを数多く見てきました。

運営者として見てきた限りでは、SDS翻訳のように専門性が高く継続発生する業務ほど、「この人に任せると楽」という関係を築ける翻訳者を見つけることが、単価交渉以上に費用対効果を高める近道です。中間マージンが乗らない直接取引は、同じ予算で発注者側はより多くの案件を依頼でき、受注する翻訳者側は手取りが厚くなるという、双方にとって得な構造を生みます。手数料0%の直接取引の強みは、単に金額が安いということではなく、浮いた予算を翻訳者への適正な対価や、継続依頼による品質向上に還元できるという「質」の面にあります。

また、化学業界の輸出企業を見ていると、翻訳費用を単発コストとして経理処理するのではなく、輸出戦略全体の投資として捉えている企業ほど、結果的に翻訳トラブルによる出荷遅延や取引先とのトラブルが少ない傾向があります。SDSの誤訳は、最悪の場合、現地での通関拒否や事故につながるリスクがあるため、費用を抑えることだけを目的にせず、専門性と実績を見極めた上でコストを比較することが、遠回りに見えて最も確実な進め方です。

契約関係で不安がある場合は、海外取引で失敗しない!英文契約書のリーガルチェック費用と翻訳相場も参考にしてください。海外の翻訳者や取引先との契約書を交わす際の注意点を、費用相場とあわせて解説しています。翻訳者のスキルを客観的に判断する材料としては、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のような専門職の単価データも、専門性の高い業務の適正価格を考える上での参考になります。

法律はあなたの味方です。SDS翻訳を発注する際も、契約内容や責任範囲を曖昧にせず、書面できちんと取り決めておくことが、後々のトラブルを防ぐ最大の武器になります。

公的機関・関連参考情報

本記事の内容に関連する公的機関や信頼できる情報源は以下の通りです。最新情報は公式サイトで確認してください。

よくある質問

Q. SDS翻訳の費用は1製品あたりいくらが相場ですか?

言語や項目数によりますが、英語で2万円〜5万円、欧州言語で3万円〜7万円程度が目安です。GHS分類の再確認作業が加わると上振れすることがあります。

Q. 翻訳会社とフリーランスどちらに依頼すべきですか?

進行管理やチェック体制を重視するなら翻訳会社、コストを抑えたいなら実績のあるフリーランスへの直接依頼が向いています。専門分野の実績確認は両方とも必須です。

Q. 見積もりが安い業者を選んで失敗しないコツはありますか?

総額だけでなく、16項目すべてを含むか、GHS分類の再確認が含まれるか、修正回数の上限を確認してください。安さだけで選ぶと追加費用が発生しやすくなります。

Q. 複数の輸出先がある場合、まとめて依頼したほうがいいですか?

はい。言語ごとに業者を分けるより、複数言語をまとめて発注することで進行管理の手間が減り、用語統一もしやすくなります。継続依頼できる翻訳者を見つけることが費用対効果を高めます。

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この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月16日最終更新:2026年9月5日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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