定年前に早期退職を考えるときのポイント


この記事のポイント
- ✓定年早期退職を検討するときの判断材料を整理しました
- ✓退職金の割増と税金の計算
- ✓応募前に確認する7つのステップ
定年を前に早期退職の募集が出たとき、判断の材料になるのは感情ではなく数字です。退職金がいくら増えるのか、手取りはどうなるのか、健康保険と年金はどう変わるのか、退職後に何で収入を作るのか。この4つを計算しないまま決めると、金額の大きさに目を奪われて、その後の20年を苦しくしてしまいます。この記事では、募集が出る背景から、メリットとデメリット、税金と保険の実務、応募前に確認する7つのステップ、そして退職後の進路の選び方までを順に書きます。
早期退職の募集が出る背景を先に知る
判断の前に、なぜ今その募集が出ているのかを理解する必要があります。ここを知らないまま応募すると、会社の事情を自分の都合として引き受けることになります。
早期退職の募集は、大きく2つに分かれます。ひとつは業績が悪化して人件費を削るための募集、もうひとつは業績が良いうちに年齢構成を調整するための募集です。前者は条件の上乗せが小さく、募集の規模が大きい。後者は条件の上乗せが大きく、対象が絞られています。どちらなのかは、直近の決算と募集の人数を見れば見当がつきます。
実際のところ、早期退職を実施する企業の状況については、こう指摘されています。
早期退職を導入・検討している企業は、業績不振の企業が中心です。実際には、募集企業の半数以上が、赤字となっています。 出典: osoujihonpo-fc.com
これは大事な情報です。募集企業の半数以上が赤字だということは、「残ったほうが安全」という前提が必ずしも成立しないという意味でもあります。応募しなかった場合に、数年後に同じ会社でどうなっているのかを想像する必要があります。事業が縮小すれば、残った人の仕事が増え、待遇が下がり、次の募集がより悪い条件で来ることもあります。逆に、業績が好調な企業の年齢構成の調整であれば、残るという選択に十分な合理性があります。
背景を確認する方法は3つあります。決算の資料で直近3年の営業利益の推移を見る、募集の対象年齢と人数を確認する、そして過去に同じ募集があったかを調べる。過去に何度も実施している企業は、今回が最後の募集ではない可能性が高い。逆に初めての募集なら、条件が最も良いのは今回である可能性があります。
もうひとつ見落とされがちなのが、自分の部署の位置づけです。会社全体が黒字でも、自分が所属する事業が縮小方向なら、残っても異動になります。異動先が自分の経験を活かせない部署なら、残るメリットは小さい。全社の話ではなく、自分の事業の話で判断してください。
早期退職のメリットを4つに分けて整理する
メリットを感情ではなく項目に分けます。数えられるものと数えられないものを混ぜないことが大事です。
メリット1 退職金が割増される これが最大の金銭的なメリットです。通常の自己都合退職と比べて、月給の数か月分から数十か月分が上乗せされる例があります。上乗せの額は企業によって大きく違うので、募集要項の金額を必ず自分の場合で計算してください。「月給の24か月分」と書かれていても、基準になる月給が基本給だけなのか手当を含むのかで金額が変わります。
メリット2 雇用保険で有利に扱われる 早期退職の募集に応じた場合、雇用保険では会社都合に近い扱いになることが多く、自己都合退職のような給付制限の期間なしに基本手当を受け始められます。所定給付日数も長くなります。たとえば45歳以上60歳未満で被保険者期間が20年以上ある場合、最大330日という日数が設定されています。自己都合で辞めた場合と比べると、受け取れる総額の差は大きい。ここは応募を検討する段階でハローワークに確認しておく価値があります。
メリット3 時間が手に入る 金額では測れませんが、最も大きな変化はここです。週に40時間以上使っていた時間が自由になります。この時間をどう使うかで、その後の収入が決まります。参考として、こう整理されています。
退職することで自由な時間が増えるので、新たなキャリアチャンス、やってみたかった趣味にチャレンジすることも可能になります。時間を上手に活用するほど、有意義な時間を過ごすことができるでしょう。 出典: osoujihonpo-fc.com
ただ、正直に書きます。時間ができても、使い方を決めていない人は何もしません。退職してから半年、生活のリズムだけが崩れて何も進まなかったという話は珍しくない。時間がメリットになるのは、退職前に使い道を決めてある人だけです。
メリット4 定年まで待つより選択肢が広い 50代前半であれば、転職市場でまだ選考の対象になります。60歳を過ぎると、同じ職種でも書類の通過率が明確に下がります。動くなら早いほうが選択肢が多いというのは、数字で見ても正しい。定年後の再雇用で給与が大きく下がるのを待つより、今の経験が評価されるうちに動くという判断には合理性があります。
デメリットと見落とされがちな注意点
メリットの倍の分量でデメリットを書きます。ここを軽く見た人が後悔します。
まず収入の断絶です。退職金は一時金なので、毎月の収入がゼロになります。基本手当が出るとしても、現役時代の給与の何割かです。しかも支給には日数の上限があり、切れた後に収入がなければ貯蓄を取り崩します。ここで計算すべきは、「退職金を含めた資産が、何か月分の生活費に相当するか」です。この月数が、次の仕事を選ぶ余裕そのものになります。
次に社会的な信用の低下です。住宅ローンの借り換え、カードの新規発行、賃貸の契約。これらは在職中のほうが圧倒的に通りやすい。退職を決めたなら、必要な手続きは在職中に済ませてください。退職後に「審査が通らない」と気づいても手遅れです。
3つめは、再就職が想定より難しいことです。50代の転職では、これまでの役職がそのまま引き継がれることは少ない。管理職として20年やってきた方が、次の職場では現場の担当者から始めるケースもあります。年収も下がるのが一般的で、退職金の割増分を数年で使い切ってしまうと、結果として損になります。
4つめは、退職を決めた理由が「今の職場が嫌だから」になっているケースです。これが一番危険です。嫌な理由から逃げる形で決めると、次の職場も同じ理由で嫌になります。判断の基準は「辞めた先に何をするか」であって、「今から離れたいか」ではありません。
5つめは、家族との合意です。配偶者に相談せずに応募して、後で大きな問題になる例があります。家計の設計が変わる話なので、募集要項を見た時点で共有するべきです。反対されたなら、その理由が家計の不安なら数字で解消できます。数字を出さないまま説得しようとすると、必ず揉めます。
最後に、応募には期限があるという点です。募集の期間は短いことが多く、数週間で決めなければならない場合があります。だから、募集が出てから考え始めると間に合いません。募集が出る可能性がある年齢に入った時点で、後の章で書くステップを先に進めておくのが現実的な備えです。
退職金の割増と税金の計算をしておく
金額の判断で一番大事なのがここです。割増された金額の全部が手元に残るわけではありません。
退職金には退職所得控除という仕組みがあります。勤続年数が20年以下の部分は1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円が控除されます。たとえば勤続30年なら、800万円に10年分の700万円を足した1,500万円が控除額です。退職金がこの金額以下なら、所得税は課されません。
控除を超えた部分についても、課税されるのは超過分の2分の1だけです。つまり退職金は税制上かなり優遇されています。この優遇を受けるには、退職する年に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しておく必要があります。提出しないと一律の税率で源泉徴収され、確定申告で取り戻す手間が発生します。制度の詳細は国税庁の案内で確認できます。
住民税についても注意が必要です。住民税は前年の所得に対して課税され、退職した翌年に請求が来ます。現役時代の高い所得に対する住民税が、収入が減った年に届くという構造です。ここを想定していないと、退職後1年目の家計が崩れます。退職金の一部は住民税のために取り分けておいてください。
計算の実務としては、次の順で出します。第一に割増を含めた退職金の総額、第二に退職所得控除の額、第三に課税される金額と税額、第四に手元に残る額、第五に翌年の住民税の見込み額。この5つを紙に書き出して、最後に「手元に残る額を月々の生活費で割った月数」を出します。これが最も重要な数字です。
会計や家計の計算に不安があるなら、生活設計の基礎を学べる資格が役に立ちます。FP技能士3級は年金、保険、税金、資産運用の基礎を体系的に扱う試験で、学習期間は2か月程度が目安です。自分の家計を自分で設計できるようになるという意味で、退職を考える時期に最も実用的な学習だと考えています。
保険と年金の手続きで損をしないための選択
退職の翌日から、健康保険と年金が自分の手続きになります。ここで選択を間違えると、年間で数十万円の差が出ます。
健康保険の選択肢は3つです。1つめは在職中の健康保険を任意継続する方法で、原則2年間続けられます。ただし在職中は会社が半分負担していた保険料を全額自分で払うため、金額は概算で2倍になります。2つめは国民健康保険で、保険料は前年の所得で決まります。現役時代の所得が高い方は、退職した年の保険料が想像以上に高くなります。3つめは配偶者や子の被扶養者になる方法で、収入の条件を満たせば最も負担が小さい。
どれが有利かは前年の所得と家族の状況で変わるので、必ず両方の金額を出して比べてください。市区町村の窓口で国民健康保険の試算をしてもらい、勤務先で任意継続の保険料を確認する。この2つを並べれば答えが出ます。任意継続は退職日の翌日から20日以内という申し出の期限があるので、退職前に決めておく必要があります。
年金は、60歳未満で退職した場合は国民年金の第1号被保険者になります。保険料は月額17,000円前後です。収入が減って払えない時期は、免除や納付猶予の申請ができます。未納のまま放置すると将来の受給額が減るだけでなく、障害年金の対象から外れる場合もあるため、払えないなら必ず申請してください。制度の要件は日本年金機構で確認できます。
もうひとつ、失業給付と年金の関係を知っておいてください。65歳未満で受け取る特別支給の老齢厚生年金と、雇用保険の基本手当は同時に受け取れません。どちらかを選ぶ形になり、通常は基本手当のほうが額が大きいので基本手当を選びます。ただし個別の事情で逆になる場合もあるので、年金事務所で自分の場合を確認してください。
これらの手続きは退職から2週間から1か月の間に集中します。転職活動と並行すると必ず抜けるので、退職が決まった時点で手続きの一覧を紙に書いて、期限を横に書いておく。それだけで漏れがなくなります。
応募する前に確認する7つのステップ
ここからは手順です。募集要項を見てから決断までの期間が短いので、順番を決めて機械的に進めます。
ステップ1 募集要項の金額を自分の場合で計算する(1日) 上乗せの基準になる月給が何を含むのかを人事に確認し、自分の退職金の総額を出します。口頭ではなく書面で確認してください。
ステップ2 手元に残る額と、それが何か月分かを出す(1日) 退職所得控除、課税額、翌年の住民税を引いた後の金額を、月々の生活費で割ります。この月数が判断の中心になります。
ステップ3 健康保険と年金の金額を比べる(3日) 任意継続と国民健康保険の保険料を両方出します。年金の切り替えも確認します。
ステップ4 残った場合の3年後を想定する(1日) 自分の事業の方向、異動の可能性、次の募集の有無。残る選択の損得も同じ精度で計算します。
ステップ5 家族と数字を共有する(1日) 出した数字を全部見せて話します。感情ではなく数字で話すと、合意が早い。
ステップ6 退職後の収入の当てを1つ作る(2週間) 転職先の内定でも、業務委託の1件でもいい。応募を決める前に、次の収入の形を1つだけ確定させます。ここを飛ばした人が一番苦しくなります。
ステップ7 在職中にできる手続きを済ませる(1週間) ローンの借り換え、カードの発行、健康診断、必要な資格の受験。在職中のほうが有利なものを先に済ませます。
この7つは全部で約1か月です。募集期間が3週間なら、ステップ3と6を並行させてください。逆に、ステップ1と2を飛ばすと判断そのものが成立しません。
退職後の進路は3つに分かれる
退職を決めた後の進路を整理します。参考として、こう整理されています。
早期退職後は、主に3つの選択肢が考えられます。1つめは経験を活かして転職、2つめは個人で独立開業、3つめはフランチャイズに加盟して独立開業です。それぞれの特徴をご紹介しますので、早期退職を検討している方は参考にしてください。 出典: osoujihonpo-fc.com
この3つに、私はもうひとつ足したいと考えています。業務委託で複数のクライアントから仕事を受ける形です。開業のように店舗や在庫を持たず、雇用のように1社に縛られない中間の形で、退職後の入口としては最もリスクが小さい。
転職を選ぶ場合、年収は下がる前提で条件を見てください。事務系や管理系の職種の相場を知っておくと、提示額の判断ができます。総合事務員の年収・単価相場に全国平均と都道府県別の水準がまとまっているので、面接の前に確認しておくと交渉の基準が持てます。定年前の独立を具体的に考えている方には50代からフリーランスで独立|定年前に準備すべき5つのことに、在職中にやるべき準備が順番に整理されています。
業務委託で始めるなら、これまでの職務経験がそのまま商品になる分野を選んでください。管理部門の経験がある方なら、書類の作成や規程の整備を請ける仕事があります。内容はビジネス文書・契約書作成のお仕事で確認できます。総務や庶務の経験が長い方には、企業の事務作業を遠隔で請ける形が向いています。仕事の範囲と進め方はオンライン秘書・アシスタントのお仕事にまとまっています。役職定年の後に在宅で始める選択肢を広く知りたい方は55歳 在宅 副業|役職定年後のセカンドキャリアとして始める仕事が参考になります。
開業を選ぶ場合、私が一番伝えたいのは「同じ業種で1年働いてから決める」ということです。アパレルの分野で、退職金を使って店舗を出して、在庫と家賃で行き詰まった例を見てきました。原価率と回転率の実感がないまま数字を作ると、計画がほぼ必ず甘くなります。1年働けば、仕入れの条件も客の動きも見えます。その1年の遅れは、失敗の金額よりはるかに安い。
断るという選択も同じ精度で計算する
最後に、応募しないという選択について書きます。早期退職の記事は「辞める前提」で書かれているものが多いので、ここは意識的に書きます。
残るという判断が合理的なのは、次の場合です。自分の事業が成長方向にある、定年後の再雇用の条件が明示されていて許容できる、住宅ローンの残りが大きい、子どもの教育費のピークが数年内にある、そして次の収入の当てがない。このいずれかに当てはまるなら、条件の良い募集でも見送る価値があります。
見送ると決めたなら、やるべきことがあります。次の募集が来ることを前提に準備を始めることです。募集が一度出た会社は、数年内に再度出す可能性があります。次に来たときに、収入の当てを持った状態で判断できれば、選択の質が上がります。準備とは、在職中に副業として業務委託を小さく始めることです。
私自身、勤めながら夜と週末に受託の仕事をしていた時期があります。最初の案件は報酬が小さく、作業量のほうが多かった。ただ、その期間に「会社の看板なしで自分に何が頼まれるのか」が分かりました。案の定、最初は要望の解釈を間違えて作り直しになりました。その失敗を在職中にできたのは、大きかったと思っています。辞めた後にする失敗は、生活に直接響きます。
キャリアの相談を受ける仕事そのものを選ぶ人もいます。長く働いてきた経験があるからこそ書ける助言には需要があります。どんな依頼があり、どう進めるのかはキャリア・副業・人生相談のお仕事で確認できます。
早期退職と希望退職と退職勧奨の違いを押さえる
言葉の整理をしておきます。似た言葉が並んでいて、条件も法的な扱いも違うのに、同じものとして語られていることが多いからです。
早期退職優遇制度は、会社が恒常的に設けている制度です。一定の年齢や勤続年数を満たした人が申し出れば、退職金の割増を受けて辞められます。募集期間があるわけではなく、いつでも使えるのが特徴です。ただし割増の率は、後述の希望退職の募集より低く設定されているのが一般的です。
希望退職の募集は、期間を限って行われるものです。人数の目標があり、条件の上乗せが大きい。早期退職優遇制度と比べると、同じ勤続年数でも受け取れる額が大きくなることがあります。ここで注意したいのは、会社側が人数を確保できなかった場合、次に来るのが退職勧奨だということです。
退職勧奨は、会社が特定の個人に対して辞めることを勧める行為です。募集ではなく個別の面談で行われます。応じる義務はありません。断ることができます。ただ、断ったうえで職場に残る場合の人間関係を考えると、実際には応じる人が多い。ここで大事なのは、勧奨に応じる場合でも条件の交渉ができるという点です。会社は退職の合意が欲しいので、上乗せの額や退職日、有給休暇の消化について交渉の余地があります。何も言わずに提示された条件で署名する必要はありません。
整理解雇は、会社が一方的に雇用契約を終わらせるものです。法律上の要件が厳しく、要件を満たさない解雇は無効になり得ます。ここまで来ると個人で判断する話ではないので、労働局の相談窓口や専門家に相談してください。制度の概要は厚生労働省の案内で確認できます。
この4つのどれに当たるのかを確認する意味は、交渉できる範囲が違うからです。希望退職の募集は条件が一律で交渉の余地が小さく、退職勧奨は個別なので交渉ができます。自分が今どこにいるのかを把握してから動いてください。
退職の1年前からやっておくとおすすめの準備
募集が出てから考え始めると間に合わないという話を何度か書きました。ここでは、まだ募集が出ていない段階で何をしておくべきかをまとめます。
まず、職務経歴書を作ってしまうことです。募集が出てから書くと、焦って中身が薄くなります。時間があるうちに、担当した業務、扱った金額の規模、関わった人数、改善した内容を数字付きで書き出しておく。これは転職に使うだけでなく、業務委託で仕事を受けるときの自己紹介にもそのまま使えます。
次に、収入の2本目を小さく作ることです。金額は月に1万円でも構いません。重要なのは金額ではなく、「会社の看板なしで対価を受け取る経路が自分にある」という状態です。この経路があるかないかで、募集が出たときの判断がまったく変わります。当てのある人は条件を冷静に計算でき、当てのない人は金額の大きさだけで決めることになります。
3つめは、固定費を1つ減らすことです。通信費、保険、使っていない会費。月に1万円減らせれば、年間で12万円分の余裕が生まれます。退職後に収入が減る局面で、この差が選べる仕事の幅になります。収入を増やすより固定費を減らすほうが、確実で速い。
4つめは、在職中しかできない手続きを終えることです。住宅ローンの借り換え、カードの発行、賃貸の契約、健康診断や治療。在職中は審査が通り、退職後は通らないものが多い。私の周りでも、辞めてから借り換えができないと気づいた例があります。
5つめは、家族との会話を先に始めることです。募集が出た段階で初めて話すと、相手は準備なしで大きな判断を求められます。「数年内にこういう選択があり得る」という話を早めにしておくと、実際に来たときの合意が早い。
この5つは、募集が出るかどうかに関係なく、やって損がありません。募集が来なければ、副収入と固定費の見直しが手元に残るだけです。損をしない準備なので、迷っているなら始めてください。
20年市場を見てきた立場からの観察
在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた立場から、2つ書きます。
1つめは、退職後に仕事が続く人の共通点です。専門性の高さではありません。続く人は、依頼者の手間を減らす動き方をしています。質問をまとめて一度に投げる、納品に判断の根拠を1行添える、期限の前日に進捗を送る。長く会社にいた方は、この段取りが身についているので、実は最初から評価されます。逆に、技術は高いのに連絡が遅い人は、品質に関係なく依頼が減ります。会社員として当たり前にやってきたことが、そのまま強みになるという点は、もっと知られていいと思っています。
2つめは、手取りの構造です。仲介の手数料が乗る取引では、依頼者が払った金額と受け手が受け取る金額が一致しません。中間マージンが乗らない直接の取引なら、依頼者は同じ予算でより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の仕組みが効いてくるのは、単価の大小の話ではなく、双方が無理をしなくて済むという質の話です。退職後の収入を積み上げる時期には、この差が生活の余裕に直結します。
観察してきて確信しているのは、早期退職で結果が分かれるのは条件の良さではないということです。同じ条件で辞めた人の中で、退職前に次の収入の形を1つ作っていた人はうまくいき、金額の大きさだけで決めた人は数年後に苦しくなっています。差は、退職金の額ではなく、退職の前に手を動かしていたかどうかです。
今日できるのは、ステップ2の計算だけで構いません。手元に残る額を月々の生活費で割る。その月数が、自分に残された判断の猶予です。数字が出れば、辞めるか残るかは自然に決まります。
よくある質問
Q. 早期退職に応募すると、雇用保険では自己都合退職になりますか?
早期退職の募集に応じた場合は会社都合に近い扱いになることが多く、自己都合退職のような給付制限なしに基本手当を受け始められます。所定給付日数も長くなります。ただし判断はハローワークが行うため、応募前に自分の場合を窓口で確認してください。
Q. 割増された退職金に税金はどのくらいかかりますか?
退職所得控除があり、勤続20年以下は1年あたり40万円、20年超の部分は1年あたり70万円が控除されます。勤続30年なら1,500万円です。控除を超えた部分も課税されるのは2分の1だけなので、税制上かなり優遇されています。
Q. 退職後の健康保険はどれを選ぶのが得ですか?
前年の所得と家族の状況で変わります。在職中の保険を任意継続する場合は会社負担分も自己負担になるため概算で2倍、国民健康保険は前年所得で決まります。両方の金額を出して比べてください。任意継続は退職日の翌日から20日以内という期限があります。
Q. 早期退職を見送るべきなのはどんな場合ですか?
自分の事業が成長方向にある、定年後の再雇用の条件が許容できる、住宅ローンの残りが大きい、教育費のピークが数年内にある、次の収入の当てがない。このいずれかに当てはまるなら見送る価値があります。見送るなら、次の募集に備えて在職中に副収入を小さく作り始めてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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