公務員を辞めるのはもったいないと言われる理由|根拠を数字で検証する

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
公務員を辞めるのはもったいないと言われる理由|根拠を数字で検証する

この記事のポイント

  • 公務員を辞めるのはもったいないと言われる理由を
  • 福利厚生といった根拠ごとに検証しました
  • 後悔する人と納得している人の違い

公務員を辞めたいと相談すると、ほぼ確実に「もったいない」と言われます。結論から書きます。この言葉には具体的な根拠が5つあり、そのうち3つは数字で検証できます。検証すると、「もったいない」が当たっている部分と、思い込みで言われている部分がはっきり分かれます。この記事では、根拠を1つずつ分解し、辞めて後悔した人と納得している人の違い、年齢別の判断基準、そして辞める前に試せることを整理します。決めるのは自分ですが、材料は数字でそろえるべきです。

「もったいない」と言われる5つの根拠

まず、何を指して「もったいない」と言われているのかを分けます。曖昧な言葉のまま反論しても話が進みません。

1つ目は、雇用の安定です。公務員は民間企業と違い、業績悪化による解雇や倒産のリスクが実質的にありません。景気が悪くなっても給与は支払われます。

2つ目は、退職金です。勤続年数が長くなるほど支給率が上がる設計になっており、定年まで勤めた場合の額は民間の平均を上回ることが多いです。途中で辞めると、この支給率の上昇分を丸ごと放棄します。

3つ目は、年金と共済です。厚生年金に加えて年金払い退職給付の仕組みがあり、長く勤めるほど積み上がります。

4つ目は、社会的信用です。住宅ローンの審査、賃貸の契約、クレジットカードの発行。公務員という身分は、これらの審査で明確に有利に働きます。

5つ目は、福利厚生と休暇制度です。育児休業、介護休業、病気休暇の日数と取得しやすさは、民間の中小企業とは比較になりません。

この5つを並べると、「もったいない」と言う人が漠然と何を心配しているのかが見えます。そして重要なのは、この5つのうち自分にとって本当に価値があるのはどれかを選ぶことです。全部を等しく重く見る必要はありません。子育てを終えた人にとって育児休業の制度は価値になりませんし、住宅を取得済みの人にとってローン審査の有利さは過去の話です。

退職金と年金を実額で確かめる

もったいないと言われる根拠のうち、最も数字にしやすいのが退職金です。

退職金は、勤続年数に応じた支給率で決まります。途中で辞めると支給率が低くなるため、勤続20年と25年では金額に大きな差が出ます。ここで大事なのは、「いくら損をするのか」を実額で出すことです。人事担当や共済の窓口に依頼すれば、現時点で辞めた場合の額と、定年まで勤めた場合の見込み額の両方を試算してもらえます。差額が分からないまま辞める判断はできません。

同じ悩みは、定年の直前でも起きています。

教員の退職金について 経験者の方教えて下さい。 59歳での退職と60歳の退職。 1年違うといくら違いますか? 実は、59歳で退職し、翌年から全く別の仕事をしようと考えています。5時間ぐらい働き、月12万程度の仕事です。 収入が全く変わってしまうので、1年だけ頑張る方がいいのか、悩んでいます。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

1年の差でいくら変わるのかという問いは、まさに検証すべき論点です。そして、この問いには答えがあります。支給率の表は条例や規程で公表されており、自分の号給と勤続年数を当てはめれば計算できます。感覚で「損する」と言うのではなく、金額を出してから判断してください。

年金についても同じです。公務員を辞めて民間に移る場合、厚生年金は継続します。つまり、年金が一気に減るわけではありません。影響が出るのは年金払い退職給付の積み上がりと、給与水準が下がった場合の将来の受給額です。自営業になる場合は国民年金だけの期間が生じるため、影響はより大きくなります。ねんきんネットで、辞めた場合の見込み額を試算してください。

社会的信用は「いつ」必要かで変わる

住宅ローンの話は、もったいない論の中でも実務的に重い部分です。

公務員は返済能力の評価が高く、借入可能額と金利条件の両面で有利になります。民間に転職した直後は勤続年数が短くなるため、審査で不利になります。自営業になった場合は、確定申告を2年から3年分そろえるまで審査が通りにくくなります。

ここから導ける結論は単純です。住宅を取得する予定があるなら、公務員の身分があるうちにローンを組むべきです。転職を予定している人が住宅購入を先に済ませるのは、順序として正しい判断です。逆に、住宅を取得済みで借り換えの予定もないなら、信用の有利さは今の判断材料としては軽くなります。

賃貸の契約やクレジットカードについても同様です。転職の前に更新や申し込みを済ませておけば、影響を小さくできます。つまり、社会的信用の問題は「辞められない理由」ではなく「順番の問題」です。ここを混同したまま「信用がなくなるから辞められない」と言うのは、正直なところ思考の停止だと思います。

辞めた人が挙げる理由

もったいないと言われながらも辞める人は、何を理由にしているのでしょうか。実際に移った人の経歴を見ると、収入の減少を受け入れた上で環境を変えている例があります。

sawada|市役所に15年以上勤務後、35歳でIT企業へ転職。年収200万円ダウン、1社目6ヶ月退職を経て、現在は在宅Webマーケターとして勤務しています。公務員時代の経験と2回の転職体験をもとに、同じ悩みを持つ方へ判断材料をお届けしています。 出典: cityhall-exit.com

注目すべきは、転職1社目を6カ月で辞めているという点です。公務員から民間への移動は、1回で着地しないことがあります。これは失敗というより、市場での自分の位置を測り直す過程だと考えられます。

辞める理由として挙がるものを整理すると、次の4つに集まります。

第一に、仕事の内容が合わないことです。前例と手続きを守る仕事が中心で、自分で企画して動かす余地が少ない。この性質は組織の性格そのものなので、部署を変えても大きくは変わりません。

第二に、人間関係と組織文化です。異動で環境は変わりますが、年功による序列や合意形成の重さは組織全体の特徴として残ります。

第三に、住民や保護者からの対応負担です。福祉、税、教育の現場では、感情的な対応が日常的に発生します。これが積み重なって体調に影響が出る人は少なくありません。

第四に、給与の上がり方です。年功で着実に上がる一方、成果で大きく変わることはありません。専門性を高めても報酬に跳ね返らない構造は、上を目指す人には物足りなく映ります。

そして、定年後に「残ったけれど満たされない」という声も存在します。

公務員35年勤務、早期退職し現在は「お役所」で会計年度勤務 年収270万 経済的に働かなくても良いけれどマグロ体質 家にいると腐ってしまうので外に出てます 会計年度を2年やってみて どうしても物足りない・・・と感じてしまいます 部外者扱い、外野感が強くて疎外感です 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

定年まで勤めれば満足が得られるとは限らない、という事実もここにあります。安定という言葉は、満足を保証しません。

辞めて後悔する人の共通点

後悔している人の話を集めると、原因は3つに集約されます。

1つ目は、辞めることが目的になっていた場合です。次に何をやるかを決めず、現状から逃れることだけを目的にすると、移った先でも同じ不満が出ます。公務員特有の不満だと思っていたものが、実はどの組織にもある不満だったと気付くのは、移ってからです。

2つ目は、収入の下落幅を把握していなかった場合です。民間の中小企業に移ると、賞与の水準と各種手当の差で年収が大きく下がることがあります。住宅ローンや教育費の支払いが決まっている状態でこれが起きると、生活が回りません。移る前に、転職先の年収から手取りを計算し、現在の支出と並べる作業が必要です。

3つ目は、市場価値を測らずに辞めた場合です。行政での経験は、そのままでは民間の職務要件に合いません。何ができる人として売るのかを決めないまま応募すると、選べる求人が絞られます。測り方は簡単で、辞める前に応募して面接まで進んでみることです。書類が通るか、どんな質問が来るか、提示される条件はどの水準か。これを実測すれば、判断が推測から事実に変わります。

辞めて納得している人の共通点

逆に、移ってよかったと言う人にも共通点があります。

第一に、辞める前に次の収入源を作っていることです。転職先の内定を取ってから辞める、あるいは副業として小さく始めた仕事を本業に切り替える。無収入の期間を作らない設計が、精神的な余裕を生みます。

第二に、収入が下がる前提で生活を組み替えていることです。移動の初年度は下がることが多いため、支出を先に見直した人は耐えられます。

第三に、専門性を持ち込んでいることです。行政で扱っていた分野そのものが価値になる場合があります。福祉分野の経験は介護や医療の事業者で、税務の経験は会計事務所で、用地や建築の経験は不動産や建設で評価されます。分野を捨てずに業種を変える形は、年収の下落幅が小さくなります。

第四に、辞めた理由を人に説明できることです。面接でも家族への説明でも、「何から離れたいか」ではなく「何をやりたいか」で語れる人は、移った後の迷いが少ないです。

年齢別に何を優先すべきか

同じ「もったいない」という言葉も、年齢によって重みが違います。

20代の場合、失うものは小さいです。退職金の支給率はまだ低く、やり直しの期間も長い。民間で働いた経験がないまま公務員を続けると、40代で選択肢がなくなります。動くなら早いほうが有利です。

30代の場合、市場価値がまだ評価される時期です。民間の求人でも実務経験者として扱われ、転職市場では動きやすい年代です。ただし、住宅と子育ての支出が重くなる時期でもあるため、収入の設計が必須になります。

40代の場合、判断が難しくなります。転職市場では管理経験や専門性を求められ、行政の経験をそのまま持ち込める領域は限られます。ここで動くなら、業種を絞って専門性を売る形が現実的です。同時に、退職金の支給率が上がってきている時期なので、放棄する額も大きくなります。

50代の場合、計算がすべてです。定年まで残る場合の総収入、早期退職した場合の退職金、年金の支給開始までの空白。この3つを並べると、答えは人によって明確に分かれます。加えて、体力と健康の見通しも判断材料になります。長く働ける仕事に移るという選択は、この年代では合理的です。

民間に移ったときの年収をどう見積もるか

年収の見積もりは、希望ではなく相場で行ってください。

まず、狙う職種の相場を調べます。公的統計を基にした年収データベースで、職種別の水準を都道府県別に確認できます。事務系を狙うなら総合事務員の年収・単価相場、文章を扱う仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように、自分が応募する職種の水準を先に押さえます。この数字と現在の年収を比べれば、下落幅の目安が出ます。

次に、手取りで比べます。公務員の給与明細には各種手当が含まれており、額面の比較では実感とずれます。共済の掛金、住宅手当、地域手当を確認し、手取りベースで並べてください。

そして、交渉できる部分を把握します。転職時の年収は、提示された金額で確定するものではありません。実績と相場を並べて提示する交渉の型は、転職エージェント経由の年収交渉術|50万円アップの方法【2026年版】に整理されており、公務員から民間へ移る場合にも同じ考え方が使えます。何も言わずに提示額を受け入れる人と、相場を示して交渉する人では、初年度の年収が変わります。

辞める前に試せること

辞めるか残るかの二択で考えると、判断が極端になります。間にある選択肢を先に試してください。

第一に、異動の希望です。仕事の内容が原因なら、部署を変えることで改善する場合があります。福祉から管理系へ、窓口から企画へ。庁内の人材公募制度がある自治体なら、これを使えます。ただし、組織文化そのものが原因なら異動では解決しません。原因の切り分けを先にしてください。

第二に、休職や休暇です。体調に影響が出ている場合、判断能力そのものが落ちています。追い込まれた状態で人生の決定をするのは危険です。制度を使って一度離れ、回復してから考えるほうが結果は良くなります。

第三に、副業の確認です。公務員には副業の制限がありますが、許可を得られる範囲は職務内容によって異なります。人事担当に確認し、認められる範囲で収入の柱を増やせるかを検討してください。制度を確認せずに諦めるのは損です。

第四に、資格や知識の準備です。民間で評価される資格を先に取っておくと、移るときの選択肢が増えます。労務や社会保険の分野なら社会保険労務士、家計や資産の相談ならFP技能士2級が、行政での経験と組み合わせやすい資格です。在職中に取るほうが、時間の確保という点で有利です。

辞めるなら、この順番で準備する

判断が固まった人向けに、順番を置きます。

最初にやるのは、数字の確定です。現時点で辞めた場合の退職金、定年まで勤めた場合の見込み額、年金の見込み、月々の生活費。この4つを実額で出します。

次に、市場での位置の確認です。求人に応募し、書類が通るか、面接でどう評価されるかを実測します。内定が出るかどうかまで確かめれば、判断材料はそろいます。

三番目に、収入源の準備です。転職なら内定を取ってから退職します。独立や在宅の仕事を考えるなら、在職中に小さく始めて需要を確認します。行政での知見を文章にして提供する仕事は需要があり、SEO記事・ブログ・コピーライティングのお仕事を見ると、どんな専門性が求められているかが分かります。キャリアの相談を扱う分野ならキャリア・副業・人生相談のお仕事のように、経験そのものが商品になる領域もあります。

四番目に、家族との合意です。数字を見せ、撤退ラインを決めます。「1年後に想定の6割に届かなければ再就職する」といった基準があると、家族は不安を管理できます。

最後に、退職の手続きです。年度末に合わせる形が一般的で、引き継ぎの負担が小さくなります。健康保険と年金の切り替え、住民税の納付方法の変更も同時に確認してください。

公務員の経験が評価される部分と、されない部分

「公務員は民間で通用しない」という言い方も、「公務員は優秀だから大丈夫」という言い方も、どちらも雑です。評価される部分とされない部分は、はっきり分かれます。

評価されるのは、まず法令と規程を読んで当てはめる能力です。許認可、補助金、契約、個人情報の取り扱い。民間企業でも法令対応の担当は不足しており、条文を読める人は重宝されます。次に、文書を正確に作る能力です。決裁文書や議会答弁を作ってきた人は、根拠を示して筋の通った文章を書けます。民間では驚くほどこれができない人が多いです。さらに、関係者の調整です。庁内の合意形成、住民説明、他機関との連携。利害の異なる相手を動かす経験は、営業や企画の現場でも使えます。そして、公的な制度の知識です。補助金の申請支援、福祉や医療の事業者向けの業務、建設業や不動産の許認可。行政の内側を知っている人は、事業者から見れば貴重な人材です。

一方、評価されにくい部分もあります。第一に、成果を数字で示した経験の乏しさです。民間の面接では「何をどれだけ改善したか」を聞かれます。行政の仕事は成果が数字になりにくいため、ここを準備せずに臨むと答えられません。処理件数、期間短縮、経費削減など、数字に直せる要素を掘り出しておく必要があります。第二に、費用対効果の感覚です。予算執行と利益追求は考え方が違います。民間では、その仕事にかけた時間が売上にどうつながるかを常に問われます。第三に、意思決定の速度です。合議に慣れていると、「今日決めて明日動く」というテンポに戸惑います。

つまり、通用するかどうかは能力の差ではなく翻訳の差です。行政の言葉のまま持ち込むと評価されず、民間の職務要件の言葉に置き換えれば評価されます。

早期退職の制度と辞める時期

辞める時期には、制度上の分かれ目があります。ここを知らずに辞めると、受け取れるものを取り逃します。

多くの自治体と国の機関には、早期退職募集制度があります。一定の年齢以上を対象に募集が行われ、応募して認定されると退職手当が割り増しされる仕組みです。年齢の要件や募集の時期は実施主体ごとに異なり、毎年募集があるとは限りません。40代後半から50代で退職を考えているなら、この制度の有無と要件を人事担当に確認してください。自己都合退職と早期退職募集への応募では、手当の額が変わります。

もうひとつ、退職の時期そのものも影響します。年度末の退職は、引き継ぎがしやすく、次の就職先の年度替わりにも合わせやすい形です。ボーナスの基準日を過ぎてから辞めるかどうかも、金額に直結します。基準日と支給日、在職要件は規程に書かれているため、確認してから退職日を決めてください。数週間ずらすだけで受け取れる額が変わることがあります。

住民税の扱いも見落としがちです。給与から特別徴収されていた住民税は、退職後に普通徴収へ切り替わり、自分で納付することになります。前年の所得に対して課税されるため、収入が下がった年に前年分の請求が来ます。この負担を見込んでいないと、辞めた年の資金計画が崩れます。

失業給付についても確認しておきます。公務員は雇用保険に加入していないため、原則として基本手当を受け取れません。ここを民間の転職と同じだと思っていると、退職後の収入計画が狂います。代わりに退職手当があるという整理ですが、金額の性質が違うことを理解しておいてください。

在宅で収入の柱を先に作る

辞めるかどうかを迷っている段階で、最も有効な行動は「小さく試すこと」です。転職先を探す前に、自分の経験が外でいくらになるのかを確かめられます。

具体的には、在宅でできる業務を副業として受けてみる形です。公務員の場合は副業の制限があるため、まず人事担当に確認し、認められる範囲を把握してください。許可が得られない場合でも、退職後の選択肢として検討する価値はあります。

需要が大きい領域を挙げます。文章を書く仕事は、専門分野を持つ人が有利です。行政の制度に詳しい人が書く解説は、外部のライターには書けません。資料や文書を作る仕事も同じで、正確さを求められる業務は経験が直接評価されます。データを整理して集計する仕事、問い合わせに対応する仕事も、在宅で完結する形が増えています。

こうした業務の実態を知るには、発注される内容と求められる水準を具体的に確認することが早道です。何が求められているのかを読んで、自分の経験と重なる部分を探してください。重なりが見つかれば、それが辞めた後の選択肢になります。見つからなければ、その分野は候補から外して別を探すだけです。

私が編集の仕事を始めた頃、最初に受けた案件は自分の得意分野とまったく関係のないものでした。結果として時間がかかり、報酬に見合わない働き方になりました。この失敗から学んだのは、経験が重なる領域から始めるべきだということです。ゼロから新しい分野を覚えながら稼ごうとすると、学習と収入の両方で苦しくなります。

そして、小さく試すことの最大の価値は、判断の精度が上がることです。「民間でやれるかどうか分からない」という不安は、実際に1件受けてみれば事実に置き換わります。もったいないかどうかを議論する前に、確かめられることを確かめてください。

周囲の反対にどう答えるか

家族や同僚から「もったいない」と言われたとき、感情で返しても平行線になります。数字で返してください。

「退職金は現時点でいくら、定年まで勤めた場合はいくら、差額はいくら」。「転職先の年収はいくらで、手取りの差は月にいくら」。「生活費は月いくらで、何カ月分の貯蓄がある」。この3点を示せる人に、正面から反対する材料はほとんどありません。

逆に、数字を出せない状態で反対されているなら、それは相手が正しい可能性があります。私自身、勢いで動いて後から条件を計算し、順番を間違えたと気付いた経験があります。感覚で決めた判断は、うまくいかなかったときに次の手を打てません。

そして最後にもう1点。安定という言葉は、収入の安定だけを指すものではありません。働き続けられる体と、続けたいと思える仕事も安定の要素です。残ることが安全だと決めつけるのも、辞めることが前進だと決めつけるのも、どちらも思い込みです。5つの根拠のうち自分にとって重いものを選び、数字を出し、そのうえで決めてください。

判断を1枚の表にまとめる

最後に、決め方の手順を置きます。もったいないかどうかは、議論ではなく表で決まります。

縦に3つの選択肢を並べます。「今の職場に残る」「民間へ転職する」「独立または在宅の仕事に移る」。横に7つの項目を置きます。手取りの月額、年間の休日数、退職金の見込み、年金の見込み、働き続けられる年数、体力と健康への負担、家族の生活への影響です。

この表を埋めると、自分が何を捨てて何を得るのかが一目で分かります。そして、埋められない欄が必ず出ます。そこが調べるべき項目です。退職金は人事担当に、年金はねんきんネットに、転職先の水準は求人と相場データに、休日数は募集要項に書かれています。推測で埋めた表には意味がありません。

表を埋めたうえで、優先順位を決めてください。20代で自由な時間を優先する人と、40代で家族の生活を優先する人では、同じ表から違う答えが出ます。それは矛盾ではなく、条件が違うだけです。

ひとつ注意したいのは、「もったいない」と言う人の多くが、この表を作っていないという点です。悪意があるわけではなく、公務員という職業に対する一般的な評価をそのまま口にしているだけです。だから、反論する必要もありません。数字を示せば会話は終わります。示せないなら、まだ判断の材料が足りていないということです。

そして、表を作ったあとに残る不安は、数字では消えません。新しい環境でやっていけるのか、自分の経験が通用するのか。この不安に対する答えは、試すことだけです。副業として1件受けてみる、求人に応募して面接まで進んでみる。行動すれば、不安の一部は事実に置き換わります。残った不安は、そのまま抱えて決めるしかありません。どんな選択にも、消えない不安は残ります。

よくある質問

Q. 公務員を辞めるともったいないと言われる根拠は何ですか?

雇用の安定、退職金の支給率、年金と共済、住宅ローンなどの社会的信用、福利厚生と休暇制度の5つです。このうち退職金と年金、そして信用については実額や条件を確認できます。自分にとって重い項目だけを選び、数字を出してから判断してください。

Q. 退職金はどれくらい変わるのですか?

勤続年数に応じた支給率で決まるため、辞める時期で大きく変わります。人事担当や共済の窓口に依頼すれば、現時点で辞めた場合と定年まで勤めた場合の両方を試算してもらえます。感覚で損得を語らず、差額を実額で把握することが判断の出発点です。

Q. 辞めて後悔する人の特徴はありますか?

次に何をやるか決めずに辞めた人、収入の下落幅を計算していなかった人、市場価値を測らずに辞めた人の3つに集中します。特に3つ目は在職中に応募して面接まで進めば実測できます。書類が通るか、提示条件がどの水準かを確かめてから決めてください。

Q. 辞める前に試せることはありますか?

異動の希望を出す、休職や休暇で一度離れる、副業が認められる範囲を人事担当に確認する、在職中に資格や知識を準備する、の4つです。仕事の内容が原因なら異動で改善する場合があり、体調に影響が出ているなら回復してから判断するほうが結果は良くなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月20日最終更新:2026年9月24日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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