パソコンのタイピングを上達させる練習法


この記事のポイント
- ✓パソコンタイピングを上達させる手順を
- ✓公的試験の基準をもとに整理しました
- ✓ホームポジションの覚え方
パソコンタイピングを速くしたい、と思って練習サイトを開いたものの、三日で飽きてしまった。そんな経験を持つ人は多いはずです。結論から書くと、タイピングが伸びない原因のほとんどは練習量ではなく、順番を間違えていることにあります。正しい順番は「今の速さを数字で測る」「ホームポジションを固定する」「短時間を毎日続ける」の3つで、この順に進めれば1か月で体感が変わります。この記事では、公的な検定試験が示している合格基準を物差しにして、初心者がどこまで打てれば実務で困らないのかを具体的な数字で示し、そこへ最短で届く練習法を順番に解説します。
パソコンタイピングに求められる水準は、公的試験の基準ではっきり決まっている
タイピングの話は「速い人はすごい」「自分は遅い」という感覚論になりがちです。しかし実務でどのくらい打てればよいかは、実は公的な検定試験がはっきり数字で定めています。日本商工会議所が実施している「キータッチ2000」と「ビジネスキーボード」がそれです。どちらも商工会議所法という法律に基づいて全国統一の基準で行われる公的試験で、合否ではなく「何字打てたか」で技能を証明する点に特徴があります。
キータッチ2000は、画面に出たアルファベット、数字、記号あわせて2,000字を10分間で入力する試験です。間違えるとカーソルが次に進まない仕組みなので、速さと正確さが同時に測られます。受験料は2,200円(税込)で、10分間で2,000字すべてを打ち終えた人にはゴールドホルダー認定書が発行されます。
ビジネスキーボードのほうは、日本語、英語、数値の3科目を合計25分で入力する試験です。こちらは採点の仕方が厳しく、行単位で数えたうえで、その行に1文字でも誤りがあると、その行の入力文字数はまるごと0字として扱われます。評価はS、A、B、C、Dの5段階で、日本語科目なら900字でS評価、800字から899字でA評価、600字から799字でB評価、400字から599字でC評価です。そして公式ページは、ビジネス実務で求められる技能の目安をC評価以上としています。
つまり、日本語を400字から599字打てれば実務の入り口には立てる、という基準が公に示されているわけです。世の中には「1分間に100字打てないと話にならない」といった根拠不明の目標が出回っていますが、正直なところ、これはどうかと思います。まずは公的な基準を物差しに置くほうが、自分の現在地を冷静に測れます。
| 試験名 | 試験時間 | 課題 | 受験料(税込) |
|---|---|---|---|
| キータッチ2000 | 10分間 | アルファベット、数字、記号の2,000字 | 2,200円 |
| ビジネスキーボード | 25分間 | 日本語、英語、数値の3科目 | 3,300円 |
どちらも各地のネット試験会場が試験日を決める方式なので、決まった試験日に合わせて申し込む必要がありません。腕試しの区切りとして使いやすい制度だと言えます。詳しい仕様は日本商工会議所のキータッチ2000のページで確認できます。
練習を始める前に、今の速さを数字で測る
タイピング練習が続かない最大の理由は、伸びが見えないことです。逆に言えば、最初に数字を取っておくだけで続きやすさが変わります。測り方は難しくありません。適当な文章を用意して、10分間で何字打てたかを数えるだけです。1分あたりに換算したい場合は10で割ります。
目安として押さえておきたいのが、日本商工会議所が公開しているタッチタイピング上達法のページに書かれた基準です。
文書作成には、10分間で1000字くらい打てるとよいでしょう。 出典: kentei.ne.jp
10分で1,000字という数字は、1分あたり100字です。原稿用紙2枚半を10分で打ち切る計算になります。最初に測ってみて300字だった人でも、落ち込む必要はありません。この記事で扱う順番どおりに進めれば、多くの人は数週間で500字前後まで届きます。
測るときに気をつけたいのは、誤字を「打てた字」に数えないことです。ビジネスキーボードが1文字の誤りでその行を0字とみなすのは、実務では打ち直しの手間が速さを帳消しにするからです。誤字を含めて数えると、自分の実力を過大評価したまま練習を続けることになり、いつまでも仕事の速度が上がりません。数えるのは「直さずにそのまま使える文字数」だけにしてください。
もう1つ、測定は同じ条件で繰り返すことが大切です。キーボードを変えたり、文章の難易度を変えたりすると、比べられなくなります。週に1回、同じ文章、同じキーボード、同じ時間帯で測る。これだけで、自分の伸び方が折れ線として見えるようになります。伸びが見える状態を先に作ることが、練習を習慣に変える一番確実な方法です。
ホームポジションを固定する。これが最短の遠回り
手元を見ないで打つ技術をタッチタイピングと呼びます。ここを飛ばして速さだけを追うと、必ず途中で頭打ちになります。理由は単純で、手元を見ている間は画面を見られず、打ち間違いに気づくのが1行分遅れるからです。
ホームポジションとは、親指を除いた両手の8本の指を、左手はA、S、D、F、右手はJ、K、L、;の8つのキーに置いた状態を指します。FキーとJキーには小さな突起が付いているので、目を閉じたままでも指先の感触だけで位置が分かります。この2つの突起を探して指を置く動作を、パソコンの前に座るたびの習慣にしてください。
日本商工会議所のページは、上達のポイントを3つに整理しています。
キーボードを見ないで打つように心掛け、キーとキーの距離感を指に覚え込ませましょう。 毎日、練習を続けることがポイント(30~60分)。まとめて長時間の練習をするより、毎日の持続が大切です。 出典: kentei.ne.jp
実際の運指では、上段や下段のキーを打ったら必ずホームポジションに指を戻します。この「戻る」動作が面倒に感じるうちは、まだ指が位置を覚えていません。戻る動作を省いて近くの指で代用すると、その場は速く打てますが、指の担当がずれて誤字が増えます。遠回りに見えても、担当の指で打って戻る形を崩さないほうが、3週間後には確実に速くなります。
姿勢も軽視できません。背筋を伸ばし、肘を自然に曲げて手首が下がらないようにし、指先は卵を軽く握るように丸める。これが公式に示されている姿勢です。手首を机に付けて打つ癖がある人は、長時間の作業で手首が痛くなりやすいので、早いうちに直しておくほうが安全です。ただし、痛みやしびれが続く場合は自己判断で対処せず、医療機関に相談してください。
1日どのくらい練習すればいいのか
練習量の目安は、公式ページの記載どおり1日30分から60分です。重要なのは合計時間ではなく、毎日続けることのほうだと明記されている点です。週末に3時間まとめてやるより、平日に20分ずつのほうが伸びます。指の動きは知識ではなく運動の記憶なので、間隔を空けると戻ってしまうためです。
とはいえ、30分を毎日確保できる人ばかりではありません。その場合は、もっと短い単位から始めて構いません。
ブラウザ上で手軽に利用できる質の高いサイトも多いため、まずはご自身が継続しやすいと感じるものを選び、1日5分程度の短い時間からでも習慣化していくことが上達への近道です。 出典: mouse-jp.co.jp
1日5分でも、30日続ければ150分になります。何より、毎日触れることで「キーボードの前に座ったらホームポジションに指を置く」という動作が自動化されます。この自動化が起きたあとは、練習時間を増やすほど素直に伸びるようになります。
続けるための具体策を3つ挙げます。1つ目は、時間ではなく回数で区切ること。「10分やる」より「3セットやる」のほうが終わりが見えて始めやすくなります。2つ目は、練習の記録を1行だけ残すこと。日付と文字数だけで十分です。3つ目は、仕事の一部を練習に変えること。メールの返信やメモ書きのときだけ手元を見ないと決めれば、練習時間を別に確保しなくても運指は鍛えられます。
逆に避けたいのは、速さを競うタイピングゲームだけで練習を済ませることです。ゲームは短い単語が中心で、句読点や記号、変換操作がほとんど出てきません。実務で時間を食うのはむしろそちらなので、ゲームと実文章の練習は分けて考える必要があります。
つまずきやすい記号キーと日本語入力のコツ
アルファベットが打てるようになったあと、多くの人が止まるのが記号と変換です。キータッチ2000の出題範囲は、小文字と大文字のアルファベット、0から9の数字、そして記号が対象で、記号には感嘆符、二重引用符、番号記号、ドル記号、パーセント、アンパサンド、丸括弧、等号、ハイフン、アットマーク、コロン、セミコロン、プラス、アスタリスク、ピリオド、カンマ、スラッシュ、不等号、疑問符、円記号が含まれます。
これらは日本語配列のキーボードで、数字段と右手側に散らばっています。覚え方のコツは、記号そのものを暗記するのではなく「どの指で、どの方向に伸ばすか」で覚えることです。たとえばアンダースコアは右手小指を右下へ、アットマークは右手小指を右上へ、といった具合に方向で覚えると、記号の数が増えても混乱しません。
日本語入力で効くショートカットも押さえておきましょう。変換中にF7を押すと全角カタカナ、F8で半角カタカナ、F9で全角英数、F10で半角英数に一発で変換できます。ノートパソコンでFキーが使いにくい場合は、Ctrlキーと組み合わせた操作でも同じことができる入力システムが多いので、お使いの環境の設定画面を一度確認しておくと手が止まりません。
| 場面 | よく使う操作 | 効果 |
|---|---|---|
| カタカナに直したい | 変換中にF7 | 全角カタカナへ一括変換 |
| 英字に直したい | 変換中にF10 | 半角英数へ一括変換 |
| 変換を区切りたい | 変換中に左右の矢印キー | 文節の区切り位置を変更 |
| 直前の変換に戻したい | 変換確定後に再変換の操作 | 打ち直さずに候補を出し直す |
もう1つ、ローマ字入力とかな入力のどちらを選ぶかという悩みがあります。これから覚えるのであればローマ字入力で問題ありません。覚えるキーの数が少なく、英数字の入力と運指が共通するためです。すでにかな入力に慣れている人が無理に乗り換える必要はありませんが、記号や英単語を打つ機会が多い仕事では、ローマ字入力のほうが手戻りが少なくなる傾向が見られます。
練習に使う教材とサイトの選び方
タイピング練習サイトは無料のものが多く、選択肢は豊富です。ただし、目的によって向き不向きがはっきり分かれます。選ぶときの軸は3つです。
1つ目は、実文章が出てくるかどうか。単語だけを打つサイトは初期の運指固めには向きますが、句読点や変換の練習になりません。ある程度打てるようになったら、まとまった文章を打つ形式に切り替えてください。たとえばマイタイピングのように、漢字を含む実際の文章を題材にした練習が用意されているサイトは、変換操作の練習にもなります。
中学生で習う漢字を集めてみました! 大人は間違って覚えてないか、実際に入力して確認してみよう! よく見かける漢字ばかりなので、小学生の高学年の方にもオススメです。 出典: typing.twi1.me
2つ目は、結果が数字で残るかどうかです。前述のとおり、伸びが見えないと続きません。打ち終わったあとに文字数や正確率が表示され、履歴が残る形式を選んでください。
3つ目は、自分が普段打つ内容に近いかどうかです。経理の仕事が多いなら数値入力、英文メールが多いなら英字入力、日本語の文章作成が中心なら和文の長文。ビジネスキーボードが日本語、英語、数値の3科目に分けているのは、この3つで求められる技能が別物だからです。自分の仕事で使う科目を重点的に練習するほうが、実務での効果は早く出ます。
有料の教材にも触れておくと、キータッチ2000には公式のトレーニング教材と関連書籍が用意されています。無料サイトで飽きてしまう人は、区切りのはっきりした教材を1つ買って最後までやり切るほうが続くこともあります。無料か有料かではなく、自分が終わりまで進められる形式かどうかで選んでください。
4週間の練習メニューに落とし込む
やることが分かっても、いつ何をやるかが決まっていないと続きません。ここまでの内容を4週間の順番に並べると、次のような形になります。1日の所要は20分から30分を想定しています。
| 週 | 主な練習 | その週の到達点 |
|---|---|---|
| 1週目 | ホームポジションの固定。左手のA、S、D、Fと右手のJ、K、L、;だけを繰り返す | 目を閉じてFキーとJキーの突起を探せる |
| 2週目 | 上段と下段のアルファベット。打ったら必ずホームポジションへ戻る | 手元を見ずにアルファベット全26字を打てる |
| 3週目 | 数字と記号。方向で覚える。日本語の短文も混ぜる | 句読点と長音符、括弧を見ずに打てる |
| 4週目 | まとまった日本語文章。変換操作と文節の区切りを含めて通しで打つ | 10分間の測定で1週目の1.5倍前後の文字数になる |
1週目でありがちな失敗は、8つのキーだけの練習に飽きて2週目の内容に手を出してしまうことです。ここで急ぐと、指の担当が曖昧なまま先へ進み、3週目で必ず詰まります。退屈に感じても1週目の内容は1週間やり切ってください。
2週目からは、打ち間違えたときに「どの指がどこへ行ったか」を確認する習慣を付けます。間違いには癖があり、同じキーの組み合わせで繰り返し間違えることがほとんどです。間違えた組み合わせを3つだけ書き出し、その組み合わせを重点的に10回ずつ打つ。これだけで誤字率は目に見えて下がります。
3週目の記号と数字は、正直なところ最もつまらない工程です。ただしここを飛ばすと、実務でメールアドレスやファイル名、金額を打つたびに手が止まります。数字段は小指と薬指の担当が広く、指を伸ばす距離も長いので、他の段より時間がかかるものだと割り切って進めてください。
4週目に測定をして、1週目の数字と比べます。1.5倍に届かなくても問題はありません。大切なのは折れ線が右上がりになっていることで、傾きの大きさは個人差が大きい部分です。この4週間が終わったら、以降は実務の中で手元を見ない習慣を維持するだけで、速度は緩やかに伸び続けます。
速度が頭打ちになったときの切り分け方
ある程度打てるようになると、必ず伸びが止まる時期が来ます。このとき「練習量が足りない」と結論づけて時間を増やすのは、たいてい遠回りです。原因は3つに切り分けられます。
1つ目は、指の動きではなく変換操作で止まっているケースです。打鍵そのものは速いのに、変換候補を選ぶために目と手が止まる。この場合は、文節を短く区切って確定する癖を付けると解決します。長い文をまとめて変換しようとすると候補が増え、選ぶ時間が伸びるためです。
2つ目は、視線の往復で止まっているケースです。原稿や資料を見ながら打つとき、紙とディスプレイの間で目が往復します。この往復が多いほど、打ち始めるまでの待ち時間が積み上がります。資料を画面の横に並べる、原稿を音声で読み上げて打つ、といった工夫で往復そのものを減らすほうが、打鍵速度を上げるより効果が出ます。
3つ目は、考える時間と打つ時間が混ざっているケースです。文章を書く仕事では、実は打鍵していない時間のほうが長いことが珍しくありません。この場合、タイピングを速くしても総作業時間はほとんど変わりません。先に構成をメモしてから一気に打つ、という手順に変えたほうが効きます。
どれが原因かを見分ける方法は簡単です。すでに完成した文章をそのまま書き写して10分測り、その数字が自分の普段の作業速度より大幅に速ければ、ボトルネックは打鍵ではありません。書き写しの速度と実作業の速度が近ければ、打鍵そのものが足を引っ張っています。この1回の測定で、次にどこを練習すべきかがはっきりします。
練習と実務の環境を整える
道具は後回しでよいと先に書きましたが、運指が固まったあとは環境の影響が出てきます。整えておくと効く項目を挙げます。
キーボードの配列は、日本語配列と英語配列で記号の位置が変わります。仕事で使う端末と練習で使う端末の配列が違うと、記号を打つたびに迷いが生じます。どちらを使うにしても、練習と実務で配列をそろえてください。ノートパソコンと外付けキーボードを併用している場合も同じで、キーの間隔が大きく違うものを行き来すると、指の距離感が安定しません。
画面の高さも見落とされがちです。画面が低いと視線が下がり、自然と手元も視界に入ってしまいます。手元が見える位置にあると、つい確認する癖が抜けません。画面を目の高さに近づけるだけで、手元を見る回数が減る人は多くいます。
キーボードショートカットの習得も、実質的には入力速度の一部です。文字の選択、コピー、貼り付け、元に戻す、保存といった操作をマウスに持ち替えずに行えるだけで、作業の流れが途切れません。タイピングの練習と同じで、最初の数日は不便に感じますが、1週間で手が覚えます。
最後に、練習の音について。打鍵音が大きいキーボードは、家族と同じ部屋で作業する人や、オンライン会議が多い人には向きません。在宅ワークでは、速さと同じくらい「どこでも使えるか」が実用性を左右します。道具を選ぶ段階になったら、速度だけでなく、自分の作業環境に置けるかどうかも判断材料に入れてください。
初心者がやりがちな3つの失敗
編集部が在宅ワークを始めたばかりの人に話を聞いていると、つまずき方には共通の型があります。
1つ目は、速さを先に求めてしまうことです。正確さを犠牲にして速く打つ癖が付くと、あとから直すのに倍の時間がかかります。最初の2週間は、速度を捨てて「見ないで、間違えずに」だけを目標にしてください。速さはあとから勝手に付いてきます。
2つ目は、キーボードを買い替えて解決しようとすることです。道具で解決する発想そのものは悪くありませんが、優先順位としては後回しで構いません。打鍵が軽いキーボードに替えると指の疲れは減りますが、運指が固まっていない段階では上達の速度はほとんど変わりません。まず指の位置を固め、そのうえで長時間打って疲れる箇所が分かってから道具を選ぶほうが、選択を間違えません。
3つ目は、測らずに練習することです。ある在宅ライターの方は、毎日30分の練習を2か月続けたのに手応えがないと話していました。記録を残していなかったため、実際には打鍵速度が3割上がっていたことに本人が気づいていなかったのです。伸びているのに気づけないのは、練習をやめる理由としては最ももったいない部類に入ります。
4つ目として挙げておきたいのが、練習と本番を同じ基準で見てしまうことです。練習サイトでは打てたのに、実際の仕事では遅い。これは当たり前に起きます。練習で出てくる文章は読みやすく整っていますが、実務で打つのは自分の頭の中にあるまだ形になっていない文だからです。練習の数字が上がったのに仕事が速くならないと感じたら、それは練習が無駄だったのではなく、測っている対象が違うだけです。仕事の速度を測りたいなら、実際の仕事の所要時間を記録してください。
もう1つ付け加えると、タイピングの練習を「いつか役に立つ投資」として捉えるとまず続きません。今日の仕事のメールが5分早く終わる、という短期の見返りに結び付けたほうが続きます。練習と実務を切り離さない。これが続けるための現実的な設計です。
音声入力が普及しても、タイピングが要らなくならない理由
音声入力の精度が上がり、話すだけで文章が作れる場面は確実に増えました。では、これから練習する価値はあるのか。結論を書くと、置き換わるのは一部で、残りはむしろタイピングの比重が上がります。
音声入力が強いのは、長い文章をゼロから口述する場面です。逆に弱いのは、細かい修正です。「3行目の『しかし』を消して」という操作を声で伝えるより、カーソルを動かして打ち直すほうが速い。文章づくりの時間配分は、書く時間より直す時間のほうが長いことが多いので、修正が速い人ほど全体が速くなります。
固有名詞や記号、英数字の混在も音声入力の苦手分野です。型番、ファイル名、メールアドレス、金額。在宅ワークの実務ではこの種の文字列を扱う機会が多く、ここは手で打つほうが確実です。ビジネスキーボードが数値入力を独立した科目として設けているのも、日本語の文章とは別の技能だと位置づけているからです。
また、音声入力は使える場所を選びます。家族のいる部屋、共有スペース、オンライン会議中。声を出せない状況でも仕事を進められるのは、キーボードだけです。在宅ワークで働く時間帯を自分で決められることが強みだとすれば、その強みを支えているのは、いつでもどこでも使える入力手段を持っていることだと言えます。
現実的な使い分けとしては、下書きを音声で作り、修正と仕上げをキーボードで行う形が扱いやすくなります。この形を取るには、修正のための運指とショートカットが手に入っていることが前提です。つまり、音声入力を活かすためにこそタイピングが要る、という関係になっています。
タイピング速度が効いてくる在宅ワークの場面
タイピングは、それ単体では単価につながる技能ではありません。しかし、時間あたりの生産量を決める土台にはなります。同じ原稿を書くのに3時間かかる人と2時間で終わる人とでは、1日に受けられる仕事の数が変わります。
影響が特に大きいのは、文章を扱う仕事です。ライティングや編集の実勢を知りたい人は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場に職種別の水準がまとまっています。入力速度が直接の評価軸になることはありませんが、納期の守りやすさという形で受注のしやすさに効いてきます。実際の受注に進むときの準備は、Webライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】が具体的な作り方を扱っています。
事務やデータ入力の分野では、正確さのほうが速さより重く評価されます。ビジネス文書の書式や敬語の型をあわせて身につけたい場合は、ビジネス文書検定が出題範囲の目安になります。タイピングと文書作成の知識は、同じ「書類を作る速度」に効く組み合わせです。
エンジニア寄りの仕事では、タイピング速度はコードを書く速度そのものより、検索と試行の回数に効いてきます。手が遅いと試せる回数が減るからです。単価の相場感はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっており、仕事の中身はアプリケーション開発のお仕事で具体的に見られます。AIツールを使った業務改善の領域に広げるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のような相談型の案件もあります。
文字単価を上げていく段階では、速さよりも提案の中身が効きます。その道筋はWebライターが文字単価を上げる方法|1円→5円にステップアップする戦略【2026年版】にまとまっています。
現場の観察から見えること
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言うと、入力速度そのものを売りにして仕事を得ている人はほとんどいません。それでも速く打てる人が結果的に長く続いているのは、速度が「返信の早さ」に変わるからです。
運営者として見てきた限りでは、発注する側が次の仕事も同じ人に頼む理由の上位は、品質よりも先に「やり取りが速い」「聞いたことにすぐ返ってくる」です。ここでいう速さは、徹夜で頑張るという意味ではありません。質問への返信を5分で書ける人と、30分かかる人の差が、1か月積み重なると印象の差になるという話です。タイピングは、その差を生む地味な土台のひとつになっています。
もう1つ、手取りの構造についても触れておきます。仲介手数料が差し引かれる取引では、同じ報酬額でも受け取る側の手取りは目減りします。手数料0%の直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。20年この市場を見てきて実感するのは、この差は金額の大小より「同じ仕事量でどれだけ残るか」という質の違いとして効いてくる、ということです。入力速度を上げて処理量を増やす努力は、手取りの厚い取引の形と組み合わせたときに、はじめて生活の変化として表れます。
在宅ワークの職種別の内訳や、どの分野で継続的な依頼が生まれているかは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のような職種ガイドで確認できます。タイピングの練習は、そこに乗るための最初の一段にすぎません。ただし、この一段を飛ばした人が途中で苦しくなる場面を、市場を見てきた立場としては何度も目にしてきました。
よくある質問
Q. パソコンタイピングは1日どのくらい練習すればいいですか?
日本商工会議所のタッチタイピング上達法は、1日30分から60分を目安とし、まとめて長時間やるより毎日続けることが大切だとしています。時間が取れない場合は1日5分からでも構いません。毎日触れることでホームポジションに指を置く動作が自動化され、そのあとの伸びが素直になります。
Q. 実務で困らない入力速度はどのくらいですか?
日本商工会議所は、文書作成の目安を10分間で1,000字程度としています。またビジネスキーボード試験では、ビジネス実務で求められる技能の目安をC評価以上とし、日本語科目のC評価は400字から599字です。まずはこの水準を目標に置くと、現在地を客観的に測れます。
Q. タイピングの検定を受ける意味はありますか?
キータッチ2000とビジネスキーボードは、日本商工会議所が商工会議所法に基づいて実施する公的試験で、合否ではなく入力文字数で技能を証明します。受験料はキータッチ2000が2,200円、ビジネスキーボードが3,300円(いずれも税込)です。試験日は各ネット試験会場が決めるため、区切りとして使いやすい制度です。
Q. ローマ字入力とかな入力はどちらがいいですか?
これから覚えるならローマ字入力が扱いやすいです。覚えるキーの数が少なく、英数字や記号の入力と運指が共通するためです。すでにかな入力に慣れている人が無理に乗り換える必要はありませんが、英単語や記号を打つ機会が多い仕事では、ローマ字入力のほうが手戻りが少なくなる傾向があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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