定款認証をオンラインで終わらせる手順

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
定款認証をオンラインで終わらせる手順

この記事のポイント

  • ✓定款認証はオンラインで完結します
  • ✓ウェブ会議での面前審査が原則になり
  • ✓48時間特別処理と72時間処理も全国で動いています

結論から書きます。株式会社の定款認証は、いまオンラインで完結します。公証役場に出向く必要はありません。

これは運用の例外ではなく、原則がそう変わったということです。日本公証人連合会は、2024年3月1日から全国すべての公証役場で、電子定款の認証における面前審査について、利用者から特段の希望がない限りウェブ会議で実施することを原則とする運用を開始したと公表しています。対面を選ぶこともできますが、選ばなければウェブ会議になります。

それでも「定款認証 オンライン」と検索する人が多いのは、必要な機材や手順が分かりにくいからです。マイナンバーカードは要るのか。専用ソフトは何を買うのか。申請してから何日かかるのか。この記事では、準備するものから認証済みデータの受け取りまでを順番に並べ、48時間特別処理と72時間処理という2つの早期処理の条件まで具体的に書きます。

オンライン化がどこまで進んだのかを年表で押さえる

まず現状の整理です。定款認証まわりの制度は、ここ数年で立て続けに変わりました。時系列で並べると理解が早くなります。

2023年12月26日、日本公証人連合会が法務省の協力の下で定款作成支援ツールを公開しました。小規模でシンプルな形態の株式会社をスピーディーに設立したいというニーズに応えるためのもので、プルダウンで項目を選んでいくと定款案ができあがる仕組みです。発起人1名用と発起人3名以下用の2種類が用意されています。

2024年1月10日、東京都と福岡県で48時間特別処理の試行が始まりました。このツールを使って作成した定款については、原則として48時間以内に認証手続を完了させる運用です。同年2月1日には利用要件が緩和され、委任状を書面で作成した場合も対象に加わり、事業目的の入力欄が5項目から15項目に拡張されました。

2024年3月1日、ウェブ会議原則が全国すべての公証役場で始まりました。面前審査のためだけに役場へ出向く必要がなくなったのは、この日からです。

2024年9月20日、48時間特別処理の対象地域が埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府に広がり、同時に72時間処理が始まりました。公証役場と法務局が連携して、定款認証と設立登記を合わせて原則72時間以内に完了させる運用です。

2025年3月3日、48時間特別処理が全国の公証役場に展開されました。地域によって使える使えないという差は、この時点で解消しています。

正直なところ、この変化の速さに解説記事が追いついていません。検索で出てくる記事の中には、ウェブ会議原則より前に書かれたものがかなり混ざっています。「公証役場に行かなければデータを受け取れない」と書いてある記事を見かけたら、書かれた時期を疑ってください。

合同会社を選ぶなら認証そのものが要らない

ここで前提を1つ確かめておきます。この記事で扱っているのは株式会社の定款認証です。合同会社を選ぶなら、この手続きは丸ごと不要になります。

日本公証人連合会は、いわゆる持分会社、つまり合名会社、合資会社、合同会社の定款については公証人の認証を必要としないと明示しています。株式会社の定款に認証が求められるのは、経営と責任が分離されて不特定多数の者が関わる設計になっており、設立後の紛争予防や不正防止の必要性が特に高いからだと説明されています。

認証が不要ということは、公証人手数料もかからず、ウェブ会議の日程調整も要らず、実質的支配者の申告も発生しないということです。電子定款にすれば印紙税4万円もかかりません。設立の法定費用は登録免許税だけになり、その下限は6万円です。

株式会社と合同会社のどちらを選ぶかは、対外的な信用、出資の受け入れやすさ、将来の株式発行の可能性などを含めて決める話なので、費用だけで決めるものではありません。ただ、手続きの重さという意味では明確な差があります。「定款認証をオンラインでどう通すか」を調べる前に、そもそも認証が必要な形態を選ぶのかを一度確かめておくと、無駄な調べ物をせずに済みます。

オンライン認証の全体像は5つの工程

手続きの流れは5つに分かれます。法務省と日本公証人連合会が示している手続きのイメージも、この並びです。

1つ目が定款の作成です。ワープロソフトなどで定款を作り、PDFにします。定款作成支援ツールを使う場合は、この工程がツールの操作に置き換わります。

2つ目が事前チェックです。定款や必要資料を公証人にメールで送り、内容を見てもらいます。日本公証人連合会は、電子公証を利用するときは必ず事前に公証役場へ連絡して担当者と打合せをするよう求めており、特に定款認証については内容に不備があると設立登記ができなくなるおそれがあるため、申請前に公証人の事前審査を受けるよう案内しています。

3つ目が申請です。事前チェックが済んだら、PDFに電子署名をして、登記・供託オンライン申請システムから送信します。指名する公証人を指定して送ります。

4つ目が面前審査です。ウェブ会議で公証人とつなぎ、電子署名が本人によるものであることの確認と、本人確認を受けます。

5つ目が受領です。認証済みの定款データをオンラインで受け取ります。

この5つのうち、家を出る必要がある工程は1つもありません。強いて言えば、返信用のレターパックを郵便局で買って送る手間が残るくらいです。

順番の話をもう1つ。事前チェックより前に電子署名をしてはいけません。日本公証人連合会は、一度電子署名をした電子文書は字句の訂正や変更ができず、訂正が必要になった場合は元文書を修正して改めて電子署名を行い、再度送信しなければならないため手間と時間を要すると注意しています。署名は「内容が確定してから」の作業です。

何をそろえればオンラインで出せるのか

準備物を具体的に挙げます。ここが最初の関門です。

必要なのは、マイナンバーカードと、その署名用電子証明書と、カードを読み取る機器と、PDFに署名できるソフトと、登記・供託オンライン申請システムの利用登録です。

マイナンバーカードの署名用電子証明書は、カードを受け取るときに設定した6文字から16文字の暗証番号を使います。これを忘れていると、まず市区町村の窓口で再設定することになります。設立の日程を切っているなら、ここは最初に確かめてください。

カードリーダーは、マイナンバーカードに対応した機種を用意します。スマートフォンで読み取る方式に対応している手続きもありますが、PDFへの署名ではパソコンにつなぐ読み取り機器を使うのが確実です。

ソフトについては指定があります。日本公証人連合会は、定款や委任状のPDFファイルには法務省が提供するPDF署名プラグインを使用して電子署名をする必要があるとして、対応するアドビ製品をAdobe Acrobat Pro DCの32ビット版日本語版とAdobe Acrobat Standard DCの32ビット版日本語版と明示しています。無料版の閲覧ソフトでは署名できません。ここが見落とされやすく、そして費用がかかる部分です。

申請の側では、登記・供託オンライン申請システムの申請者情報登録と、申請用総合ソフトのダウンロードが必要です。なお、このシステムの申請者情報は1年間利用がないと自動的に削除されます。以前に不動産登記などで登録した覚えがあっても、そのまま使えるとは限りません。

利用できる時間にも差があります。登記・供託オンライン申請システムは平日8時30分から23時00分まで、休日は8時30分から18時00分までですが、電子公証システムの事務取扱時間は月曜日から金曜日の8時30分から17時00分までです。年末年始は12月29日から1月3日まで止まります。夜に送信しても、公証役場側の処理は翌営業日になります。

定款のファイルそのものにも条件がある

ソフトと機材が整っても、ファイルが条件を満たしていなければ止まります。日本公証人連合会が示している条件は次のとおりです。

認証の対象となる電子文書はPDF形式に限られます。大きさは10メガバイト以下です。ファイル名は全角なら15文字以内、半角なら31文字以内で、使える文字は全角と半角の英数字および各種記号、カタカナ、ひらがな、日本産業規格の第1水準と第2水準の漢字に限られます。

ファイル名の制限は、実務でいちばん引っかかる箇所の1つです。日付やバージョン番号を付けた長い名前を付けていると、それだけで送信できません。短くして、使えない記号を外してください。

申請の入力項目にも注意点があります。株式会社、一般社団法人および一般財団法人については、嘱託人の氏名のほかに、実質的支配者となるべき者の氏名と読みを入力しなければなりません。これは平成30年11月30日から始まった取り扱いで、マネー・ロンダリング対策として実質的支配者を把握する目的があります。一人で設立する場合は自分自身が該当しますが、出資の構成によっては誰を書くかの判断が必要になります。

そして、公証人であれば誰でも電子公証を扱えるわけではありません。対応できるのは法務大臣によって指定された指定公証人だけです。加えて、定款の認証は会社の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人でなければできません。日本公証人連合会は、管轄区域外の公証人がした定款の認証は無効になるとして、必ず本店の所在地の公証役場で認証を受けるよう注意しています。オンラインだからどこでもよい、とはなりません。

ウェブ会議の当日に何が行われるのか

面前審査と聞くと構えてしまいますが、内容は確認です。

日本公証人連合会は、テレビ電話を利用して電子定款の認証を受ける場合について、嘱託人またはその代理人が公証役場に出向く必要はないとしたうえで、公証人がテレビ電話により、電子定款にされた電子署名が嘱託人本人によってされたものであることを確認するとともに、嘱託人の本人確認を行うことによって認証を行うと説明しています。

つまり、聞かれるのは「この署名はあなたがしたものか」と「あなたは本人か」の2点です。定款の中身について口頭試問を受けるわけではありません。内容の確認は事前チェックの段階で済ませてあります。

代理人を立てる場合も、いまはウェブ会議を使えます。日本公証人連合会は、ウェブ会議の利用要件を緩和し、代理人により面前審査を行う場合にもウェブ会議を利用できるようになったと案内しています。ただし、定款作成代理人が嘱託する場合は、あらかじめ公証役場に対して、発起人等から代理人への電子委任状をオンラインで送信するか、紙の委任状を印鑑登録証明書付きで郵送する必要があります。

日程についても1つ。48時間特別処理を利用する場合、日中に都合がつかないときは平日夜間の20時までウェブ会議による審査が可能とされています。日中は本業があるという人にとっては、この時間帯の選択肢が効きます。

認証済みデータはどうやって受け取るのか

受け取り方も変わりました。

従来は、登記・供託オンライン申請システムなどからダウンロードする方法が基本でしたが、日本公証人連合会は、ウェブ会議を利用した場合の認証済み定款データの受領方法を拡充し、メールで受領する方法も選択できるようになったと案内しています。

データ以外に届くものもあります。ウェブ会議で認証を行った場合、認証後に返信用のレターパックで申告受理および認証証明書が送られてきます。嘱託人の請求があれば、同一の情報の提供の書面も同封されます。希望すれば、あらかじめ郵送した電子媒体に認証済みの電子文書を格納して返送してもらうことも可能です。

この「同一の情報の提供」は、認証を受けた電子文書と同一である旨を証明した書面のことです。手数料は700円で、書面による交付の場合は1枚につき20円が加算されます。

ここは必ず取っておくことをすすめます。日本公証人連合会自身が、近時、銀行等の金融機関では紙ベースの定款を求める運用もなされているとして、謄本を請求する場合は必ず書面で交付を受けるよう案内しています。登記はデータで通っても、法人口座の開設で紙を求められる。オンラインで完結したはずなのに紙が要るというのは、正直なところ間の抜けた話ですが、現実にそうなっています。

48時間特別処理を使うための条件

早期処理の仕組みを2つ見ていきます。まず48時間特別処理です。

対象になるのは、日本公証人連合会が公開している定款作成支援ツールを使って作成した定款です。利用にあたっては、定款に電子署名をし、オンラインで申請する必要があります。つまり、紙での申請では使えません。

起算点の決め方に癖があります。48時間の起算点は、必要な資料がすべて公証役場にメールで到達したときです。申請を送った時点ではありません。そして48時間の算定には土曜日、日曜日、祝日を含みません。金曜日の夕方に資料がそろった場合、48時間の期限は翌週の火曜日ごろになります。紙の委任状などを郵送または持参で提出する場合は、算定方法が異なります。

資料に不備があれば、当然ながら時間はかかります。48時間という数字は「不備なく資料がそろえば」という前提つきです。この前提を外して「必ず2日で終わる」と読むと、日程が崩れます。

定款作成支援ツールには使える範囲の制限があります。発起人3名以下、取締役会を置かないといった、小規模でシンプルな会社を想定したものです。複雑な機関設計をしたい会社は、このツールの対象から外れるので、48時間特別処理も使えません。

ツールそのものについても、日本公証人連合会は注意書きを添えています。このツールで作成された定款案は小規模でシンプルな形態の会社の一例にとどまること、定款に定めを設けた場合はその内容に従って事業を運営することが求められ、違反すれば法的な責任が問われることもあること、設立後に定款を変更するには株主総会の特別決議など所定の手続が必要になることです。手軽に作れるからといって、中身を読まずに送るのは危険です。

定款認証と設立登記を合わせて72時間で終わらせる

もう1つが72時間処理です。条件が5つあり、すべてを満たす必要があります。

  (1) 48時間特別処理の対象であること。   (2) 定款認証後1週間以内にオンラインで設立登記を申請すること(※2)。   (3) 設立登記申請の添付書面情報(定款、発起人の同意書、就任承諾書等)が全て電磁的記録(PDFファイル    等)により作成され、申請書情報と併せて送信されていること(完全オンライン申請)。   (4) 登録免許税が電子納付されること。   (5) 補正がないこと。 出典: koshonin.gr.jp

条件(3)が一番きついところです。オンライン申請であっても、添付書面を法務局に持参または送付する場合は72時間処理の対象になりません。定款だけでなく、発起人の同意書も就任承諾書も、すべてPDFで作って電子署名を付ける必要があります。紙を1枚混ぜた時点で外れます。

条件(4)の電子納付にも注意が必要です。日本公証人連合会は、電子納付が遅れると登記の完了が遅くなる可能性があるとしています。申請を送ってから納付までの時間も、実質的には日程に乗ってきます。

条件(5)の補正とは、申請の不備を登記官からの連絡に基づいて事後的に直すことです。1か所でも直しが入れば72時間からは外れます。

なお、定款認証後から設立登記の申請をするまでの時間は72時間に含まれません。ここは利用者側で詰められる部分なので、認証が下りたらすぐ登記を申請できるよう、添付書面のPDFを先に作っておくのが現実的です。

条件を並べると厳しく見えますが、裏を返せば、完全にオンラインで組み立てられる会社なら3日で設立まで終わるということです。従来の感覚からすると、かなり速い。

申請が止まりやすい場面と、その直し方

実際に手を動かすと止まりやすい場面がいくつかあります。原因と対処を並べます。

電子署名が付かない。原因の多くは、署名に使っているソフトが対応版でないことです。日本公証人連合会が示しているのはAdobe Acrobat Pro DCとStandard DCの32ビット版日本語版で、法務省が提供するPDF署名プラグインを併用する前提になっています。無料の閲覧ソフトや、対応外のPDF編集ソフトでは通りません。

署名はできたが受け付けられない。ファイルの条件を外している可能性があります。PDF形式であること、10メガバイト以下であること、ファイル名が全角15文字以内または半角31文字以内であることを順に確かめてください。図や画像を多く貼った定款は容量が膨らみやすく、10メガバイトを超えることがあります。

暗証番号が通らない。マイナンバーカードの署名用電子証明書の暗証番号は、一定回数間違えるとロックされます。ロックされた場合は市区町村の窓口での手続きが必要です。設立の期日が迫っている状況でこれをやると痛いので、余裕のあるうちに一度試しておいてください。

公証人を指名できない。電子公証を扱えるのは指定公証人だけで、かつ本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人でなければ認証できません。名簿を見て近い役場を選ぶのではなく、本店の所在地から逆算して選びます。

送ったのに動かない。電子公証システムの事務取扱時間は平日の8時30分から17時00分までで、17時00分でシステムが止まります。終業間際に送った案件は当日中に処理されない場合があります。夜間や休日に送信しても、処理は翌営業日以降です。

どれも、事前の打合せの段階で確かめておけば潰せる項目です。手続きが1日で終わるかどうかは、当日の操作より前の準備で決まります。

手数料はいくらかかるのか

金額を整理します。オンラインにしたから安くなるものと、変わらないものがあります。

定款認証の手数料は、公証人手数料令で資本金の額等に応じて決まっています。100万円未満が3万円、100万円以上300万円未満が4万円、それ以外が5万円です。加えて、資本金の額等が100万円未満で、発起人の全員が自然人かつ3人以下であること、定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があること、定款に取締役会を置く旨の記載がないことのすべてに該当する場合は1万5,000円になります。この軽減は2024年12月1日から施行されています。

登記申請用の謄本の手数料は1枚につき250円で、おおむね8枚で2,000円ほどです。電磁的記録の保存は300円、情報の同一性に関する証明は700円、同一の情報の提供は700円で、書面による交付の場合は1枚につき20円が加算されます。

設立登記の登録免許税は、資本金の額の1000分の7か、それが15万円に満たないときは15万円です。合同会社は同じ1000分の7で下限が6万円ですが、そもそも合同会社の定款には公証人の認証が要りません。

オンラインで効いてくるのは印紙税です。紙の定款なら収入印紙4万円が必要ですが、電子定款にはかかりません。手数料の体系そのものはオンラインでも対面でも同じなので、金額面の差はこの4万円と、役場までの交通費と時間です。

一方で、初期投資はかかります。PDFに署名できるアドビ製品の費用と、カードリーダーの費用です。1回の設立のためだけに買うと、4万円の節約分をどこまで回収できるかは微妙な線になります。この計算が合わないと感じるなら、設立を専門家に依頼して電子定款で処理してもらう選択肢も比較対象に入れてください。

オンラインで出すことの利点と弱点をフェアに見る

比較記事として、両側を書いておきます。

利点は4つあります。移動が要らないこと、印紙税4万円がかからないこと、48時間特別処理と72時間処理という早期処理が使えること、認証済みデータをそのまま登記の添付書面に回せることです。特に4つ目は効きます。紙で認証を受けると、登記のために謄本を持ち込む工程が挟まりますが、データならそのまま送信できます。

弱点も4つあります。初期の機材とソフトに費用がかかること、電子署名の環境構築で手間取りやすいこと、署名後は訂正が効かないこと、公証役場側の対応時間が平日の日中に限られることです。

とりわけ2つ目は軽く見ないでください。署名用のソフトを入れ、プラグインを入れ、カードリーダーをつなぎ、暗証番号を入れる。この一連が一発で通ることは、あまりありません。設立の期日を切っているなら、定款の文面を書き始める前に、適当なPDFに一度署名してみて環境が動くかを確かめておくと安全です。

3つ目の弱点は運用でしか防げません。署名前の版を公証人に見てもらい、直しがゼロになってから署名する。この順番を守るだけで、やり直しはほぼ消えます。

認証が終わったら設立登記に何を添付するのか

認証はゴールではなく通過点です。次は法務局への設立登記の申請になります。

商業登記法第47条第2項は、設立の登記の申請書に添付する書面を列挙していて、その第1号が定款です。このほか、定款に現物出資などの記載があるときの調査報告書、払込みがあったことを証する書面、設立時代表取締役を選定したときの書面、設立時取締役などが就任を承諾したことを証する書面などが並びます。

72時間処理を狙うなら、これらをすべて電磁的記録で作り、申請書情報と併せて送信する必要があります。定款だけPDFにして、就任承諾書は紙で持参する、という組み合わせでは対象になりません。

設立登記の申請には期限もあります。会社法上、設立時取締役などによる調査が終わった日または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に申請することとされています。認証を取ってから悠長に構えていると、この期限に当たります。

登記が完了すると会社が成立します。そのあとに、代表者の電子証明書の発行請求、印鑑カードの発行請求、実質的支配者リストの保管および写しの交付の申出といった手続きが可能になります。法人口座の開設や各種の届出は、登記事項証明書が取れるようになってからです。

順番を頭に入れておくと、どこまで進んだら次に何ができるのかが分かり、待ち時間を無駄にせずに済みます。

設立に伴う届出もまとめて出せる

定款認証と設立登記の先にも手続きが続きます。税務署への法人設立届出書、都道府県と市区町村への届出、年金事務所への社会保険の新規適用届、労働保険と雇用保険の手続きなどです。

これらをまとめて出せる仕組みが法人設立ワンストップサービスです。マイナンバーカードを使って、法人設立に関連する手続きをオンラインでまとめて申請できます。質問に答えると必要な手続きがリストアップされる問診の機能もあり、何を出せばよいか分からない段階でも使えます。入口は法務局の商業・法人登記のページから辿れます。

登記そのものは登記・供託オンライン申請システムから申請します。Webブラウザから使える「かんたん登記・供託申請」は一部の手続きに限られるため、設立の登記では申請用総合ソフトを使います。

定款作成支援ツールや48時間特別処理の資料は、日本公証人連合会のスタートアップ支援のための、定款認証に関する新たな取組についてにまとまっています。利用マニュアル、ツール本体、マイナンバーカードでPDFに電子署名する手順まで、ここから取れます。

手続きを自分で通せることが仕事の幅になる

ここからは、この手続きを自分でやる意味の話をします。

設立の手続きを一度自分で通すと、行政の書類の読み方の勘が付きます。どこに条件が書いてあるのか、どの語が要件でどの語が例示なのか、当たりを付けられるようになる。この感覚は、そのまま仕事の書類に効きます。

運営者として在宅とフリーランスの市場を20年見てきた立場から言えば、継続して仕事が回ってくる人は、成果物の質が高いだけでなく、書類のやり取りで相手に手間をかけさせない人です。見積の出し方、検収の条件の詰め方、請求のタイミング。ここでつまずかない人に、次の依頼が集まります。書類を扱う力そのものを底上げしたいなら、ビジネス文書検定の学習範囲が実務にそのまま重なります。技術系で受注の幅を広げたいなら、CCNA(シスコ技術者認定)のような認定が発注側の判断材料になります。

法人にすると取引の形も変わります。一定の規模以上の発注元は、継続的な業務委託の相手を法人に限っていることがあります。開発の規模が大きくなるほどこの傾向が強く、アプリケーション開発のお仕事の分野では契約の相手方に法人を求められる割合が上がります。近年はAIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事でも同じ動きが見られます。

判断の足場として、自分の職種の単価の水準を知っておくと迷いが減ります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場には公的な統計をもとにした分布が、文章を扱う仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場に同様のデータがあります。

もう1つ、額面と手取りの差にも目を向けてください。仲介を挟む取引では報酬から手数料が引かれます。法人を持つと固定費が発生するので、同じ売上でも手元に残る額の差がそのまま経営に響きます。運営者として見てきた限りでは、長く続いている人ほど早い段階で直接つながる取引の割合を増やしています。手数料0%で直接つながる仕組みなら、同じ予算で発注側はより多く頼めて、受け手は手取りが厚くなる。この構造は、器を持ったあとほど効いてきます。

契約書のやり取りも増えます。発注書と契約書に入れるべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに、報酬が支払われないときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にまとめてあります。決算まわりを外部に頼む選択肢を検討するなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にこの分野の働き方があります。

定款認証のオンライン化は、手続きの手間を減らすだけの話ではありません。会社を作るまでの距離が縮んだということです。準備の順番さえ間違えなければ、思っているより短い時間で終わります。

よくある質問

Q. 定款認証は本当に公証役場に行かずに終わりますか?

終わります。2024年3月1日から全国すべての公証役場で、電子定款の認証における面前審査は、利用者から特段の希望がない限りウェブ会議で実施することが原則になりました。認証済みの定款データもオンラインまたはメールで受け取れます。申告受理および認証証明書は返信用のレターパックで届きます。

Q. オンラインで定款認証をするのに何が必要ですか?

マイナンバーカードと署名用電子証明書、カードリーダー、PDFに署名できるアドビ製品、登記・供託オンライン申請システムの申請者情報登録と申請用総合ソフトです。署名にはAdobe Acrobat Pro DCまたはStandard DCの32ビット版日本語版と、法務省のPDF署名プラグインを使います。

Q. 48時間特別処理はどうすれば使えますか?

日本公証人連合会が公開している定款作成支援ツールで定款を作り、電子署名をしてオンラインで申請することが条件です。48時間の起算点は必要な資料がすべて公証役場にメールで到達したときで、土日祝は算定に含みません。2025年3月3日から全国の公証役場で利用できます。

Q. 認証手数料はオンラインだと安くなりますか?

手数料そのものは変わりません。資本金の額等が100万円未満で3万円、一定の要件を満たす場合は1万5,000円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外で5万円です。安くなるのは印紙税で、紙の定款に必要な4万円が電子定款ではかかりません。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月7日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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