定款認証の手数料|資本金と発起人の人数で変わる

丸山 桃子
丸山 桃子
定款認証の手数料|資本金と発起人の人数で変わる

この記事のポイント

  • 電子定款の認証費用を内訳ごとに整理します
  • 認証手数料は資本金の額で3段階に分かれ
  • 条件を満たせば1万5,000円まで下がります

電子定款の認証費用を調べると、3万円と書いてある記事、5万円と書いてある記事、1万5,000円と書いてある記事が並んで出てきます。どれも間違いではありません。金額が資本金の額と発起人の人数で変わるからです。

結論を先に置きます。株式会社の定款認証の手数料は、資本金の額等が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外なら5万円です。さらに、資本金の額等が100万円未満で3つの条件を満たす場合に限り、1万5,000円まで下がります。

この記事では、認証手数料の3段階と軽減の条件を最初に整理したうえで、謄本代や同一の情報の提供といった付随する費用、紙の定款との差額である印紙税4万円、そして登録免許税まで含めた設立費用の総額を、資本金のパターン別に計算します。費用を先に見積もっておくと、資本金をいくらにするかの判断も変わります。

電子定款の認証費用は4つの部品でできている

まず全体の構造を押さえます。電子定款の認証にかかるお金は、次の4つに分かれます。

1つ目が認証手数料です。これがいちばん大きく、金額が変動する部分です。2つ目が謄本の手数料で、登記申請に使う分を請求します。3つ目が電子公証に固有の手数料で、電磁的記録の保存や同一の情報の提供にかかります。4つ目が印紙税ですが、電子定款ならここがゼロになります。

日本公証人連合会は、電子公証の手数料を公証人手数料令に基づく金額として一覧で示しています。

<電磁的記録の保存> ⇒ 300円 <情報の同一性に関する証明> ⇒ 700円 <同一の情報の提供> ⇒ 700円(書面による交付の場合は、1枚につき20円を加算) 出典: koshonin.gr.jp

この4つに加えて、設立まで進めるなら登録免許税がかかります。定款認証の費用だけを調べている人も、資本金を決める段階では登録免許税まで一緒に見ておいたほうが判断を間違えません。

そして、費用の話をするときに見落とされがちなのが、電子定款を作るための環境費用です。手数料には出てきませんが、実際には財布から出ていきます。これも後半で具体的に扱います。

認証手数料は資本金の額で3段階に分かれる

本題です。認証手数料の金額は公証人手数料令で決まっています。

資本金の額等が100万円未満である場合は3万円です。100万円以上300万円未満である場合は4万円です。それ以外の場合は5万円です。

この3段階は、もともとあったものではありません。日本公証人連合会は、株式会社または特定目的会社の定款の認証手数料について、これまで5万円であったものが令和4年1月1日から資本金の額等に応じた3段階に改められたと案内しています。2022年より前の情報を見ていると、資本金にかかわらず5万円と書いてあるので注意してください。

判定の基準にも癖があります。定款に資本金の額等が記載されていない場合は、設立に際して出資される財産の価額が基準になります。ここで「設立に際して出資される財産の最低額」という書き方をしていると、3段階のうち上の2つのいずれにも当たらないことになり、5万円の区分に入ります。

これは覚えておく価値があります。資本金を50万円にするつもりで「金50万円以上」と最低額の形で書いた場合、実際の出資が100万円未満でも手数料は5万円になるということです。確定額で書くか最低額で書くかという、たった1行の書き方の違いで2万円変わります。

一般社団法人や一般財団法人などの定款の認証は、資本金という概念がないため一律5万円です。株式会社とは扱いが違います。

1万5,000円になる3つの条件

2024年12月1日から、もう1段下の区分ができました。これが記事によって金額が食い違う最大の原因です。

日本公証人連合会は、公証人手数料令の一部を改正する政令が令和6年11月22日に公布され、同年12月1日から施行されたことを公表しています。

  1.現行手数料令第35条第1号の規定が改正され、3万円と定められていた資本金の額等が100万円未満の株式会社の定款の認証手数料について、次の(1)から(3)    までのいずれにも該当する場合にあっては、1万5,000円とされました。     (1) 発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が3人以下であること。     (2) 定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。     (3) 定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと。 出典: koshonin.gr.jp

3つの条件を分解します。

(1)の「自然人」とは、人間のことです。法人が発起人に入っていると該当しません。そして人数は3人以下。一人で設立する会社は当然に満たします。

(2)は、発起設立であることを意味します。発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける、つまり外から出資を募る募集設立ではない、ということです。小規模な設立ではほぼ必ずこの形になります。

(3)は、取締役会を置かないことです。取締役会を置くには取締役が3人以上必要になるので、一人や二人で始める会社では最初から置きません。

つまり、一人または少人数で小さく始める会社は、資本金を100万円未満にするだけで3つとも自然に満たすことが多い。3万円が1万5,000円になるので、差は1万5,000円です。

経過措置にも触れておきます。日本公証人連合会は、定款認証の嘱託時が令和6年11月30日以前である場合は従前の例によるとして、電子定款は登記・供託オンライン申請システムにより受付処理された時、紙定款は認証当日に公証役場の窓口で嘱託の受付がされた時を基準にすると説明しています。いまから設立する人には関係のない話ですが、古い記事が3万円と書いている理由の1つがこれです。

資本金を100万円未満にすると本当に得か

ここで冷静に考える必要があります。手数料を下げるために資本金を100万円未満にする、という判断が常に正しいわけではありません。

たしかに、資本金100万円未満にすれば認証手数料は1万5,000円か3万円に収まります。300万円以上との差は3万5,000円です。設立登記の登録免許税も、資本金の額の1000分の7で計算するので、資本金が小さければ下限の15万円で収まります。入口の費用だけ見れば、資本金は小さいほうが安い。

ただし、資本金は登記されて外から見える数字です。取引先が登記事項証明書を取れば、資本金がいくらかは分かります。金融機関の融資審査でも見られます。創業時の融資を考えているなら、自己資金をどれだけ入れたかが判断材料になるので、極端に小さい資本金はプラスに働きません。

許認可が必要な事業では、資本金の額そのものが要件になっていることもあります。一般建設業や、労働者派遣事業、旅行業などが代表例です。設立してから許可を取ろうとして資本金が足りず、増資して登記をやり直す。この手戻りのほうが、認証手数料の差額よりはるかに高くつきます。

正直なところ、認証手数料の1万5,000円を取りに行くために事業の設計を曲げるのは本末転倒です。資本金は、初期費用に運転資金の数か月分を足した金額を基準に決めて、結果として100万円未満に収まるなら軽減を使う。この順番で考えるのが健全です。

なお、資本金1,000万円以上にすると設立初年度から消費税の課税事業者になります。1,000万円未満であれば、他の要件によりますが免税事業者になれる可能性があります。この差は認証手数料より桁が大きいので、資本金を決めるときはここも一緒に確認してください。個別の判定は事情で変わるので、税務署か税理士に確認するのが確実です。

謄本の手数料は枚数で決まる

認証手数料の次に必ずかかるのが謄本代です。

日本公証人連合会は、通常は登記申請用の謄本を請求することになり、その手数料は謄本1枚につき250円であるとして、株式会社設立に最低限必要な費用の目安として謄本手数料はおおむね8枚で2,000円くらいと示しています。認証文も同じように枚数へ計算します。

枚数の数え方にも決まりがあります。定款の表紙は表も裏も原則として枚数に入れませんが、訂正印により本文の訂正がされているときは本文の記載と同じものとして扱い、枚数に入れます。訂正が多いほど謄本代が上がる、という理屈です。

枚数は定款の分量で変わります。条文を詰め込んだ定款は枚数が増え、そのぶん謄本代も上がります。とはいえ1枚250円なので、数枚の差で数百円の違いにしかなりません。ここを削るために定款を薄くするのは意味がありません。

むしろ実務で気をつけたいのは、必要な部数を最初に請求しておくことです。あとから追加で取りに行くと、そのたびに手間がかかります。

電子ならではの手数料と、紙との4万円の差

電子定款に固有の手数料を見ます。

電磁的記録の保存が300円、情報の同一性に関する証明が700円、同一の情報の提供が700円で、書面による交付の場合は1枚につき20円が加算されます。日付情報の付与は700円です。金額としては小さいのですが、同一の情報の提供は取っておくことをすすめます。

理由があります。日本公証人連合会は、法務局に認証済みの定款を提出して会社登記をする場合は電子文書の形で受け付けてもらえるとしたうえで、近時、銀行等の金融機関では紙ベースの定款を求める運用もなされているとして、謄本を請求する場合は必ず書面で交付を受けるよう案内しています。法人口座を開くときに紙が要る、という話です。

そして、電子定款の最大の金額的なメリットが印紙税です。国税庁の印紙税額の一覧表では、定款は第6号文書として1通につき4万円と定められています。対象は株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本です。

ただし非課税文書の定めがあり、株式会社または相互会社の定款のうち、公証人法の規定により公証人の保存するもの以外のものは非課税とされています。つまり、紙で作った場合に4万円の印紙を貼るのは公証人が保存する原本1通だけで、会社が持ち帰る原本や謄本には貼りません。

そして電子定款は紙の文書ではないため、この4万円がかかりません。日本公証人連合会も、電子定款の場合は収入印紙を貼付する必要がないと明示しています。紙と電子の費用差は、実質この4万円です。

電子定款にするための環境費用を計算に入れる

ここが、費用比較でいちばん抜け落ちる部分です。

電子定款を自分で作るには、マイナンバーカードと署名用電子証明書、カードを読み取る機器、そしてPDFに署名できるソフトが必要です。日本公証人連合会は、対応するアドビ製品としてAdobe Acrobat Pro DCの32ビット版日本語版とAdobe Acrobat Standard DCの32ビット版日本語版を挙げています。無料の閲覧ソフトでは署名できません。

アドビ製品はサブスクリプションが基本で、年間の利用料がかかります。カードリーダーは数千円程度です。この2つを足すと、4万円の節約分のうち相応の割合が消えます。もともと仕事でアドビ製品を使っている人なら追加負担はカードリーダーだけで済みますが、設立のためだけに一式そろえるなら計算が変わります。

選択肢は3つあります。1つ目は自分で環境をそろえて電子定款にする方法。2つ目は紙の定款で作って4万円の印紙を貼る方法。3つ目は設立を専門家や会計ソフトの設立支援サービスに任せ、向こうの環境で電子定款にしてもらう方法です。

3つ目は、代行の報酬がかかる代わりに印紙税4万円が浮きます。報酬が4万円を下回るなら、自分の手間をかけずに紙より安く済む計算になります。実際、この差額を前提に価格設定をしているサービスが複数あります。

数字で比べると判断が早くなります。自分でやる場合はソフトとリーダーの費用と、環境構築にかかる時間。代行なら報酬。紙なら4万円。この3つを並べて、いちばん小さいものを選べば済みます。

設立費用の総額を資本金のパターンで計算する

認証費用だけでなく、設立までの総額を出します。登録免許税を含めます。

国税庁の登録免許税の税額表では、株式会社等の設立の登記について、課税標準を資本金の額とし、税率を1000分の7として、15万円に満たないときは申請件数1件につき15万円と定めています。合同会社は同じ1000分の7で、6万円に満たないときは1件につき6万円です。

3つのパターンで計算します。

パターン 認証手数料 謄本代 印紙税 登録免許税 合計
資本金50万円・発起人1名・電子定款・軽減あり 1万5,000円 約2,000円 0円 15万円 約16万7,000円
資本金300万円・電子定款 5万円 約2,000円 0円 15万円 約20万2,000円
資本金300万円・紙の定款 5万円 約2,000円 4万円 15万円 約24万2,000円

資本金を1,000万円にすると、登録免許税は1000分の7で7万円となり下限の15万円を下回るため、15万円のままです。登録免許税が15万円を超えるのは、資本金がおよそ2,143万円を超えてからです。

この表から分かることは2つあります。1つは、認証手数料の差より登録免許税のほうが大きいこと。もう1つは、紙か電子かの4万円が、認証手数料の3段階の幅とほぼ同じ大きさを持つことです。費用を抑えたいなら、まず電子定款にする。それが一番効きます。

このほか、代表者印の作成費用と印鑑登録証明書の取得費用がかかります。募集設立の場合は払込保管証明書の費用として約2万5,000円が加わりますが、小規模な設立で選ばれるのは発起設立なので、通常は発生しません。

認証の前後にかかる費用も見積もりに入れる

手数料の表に載らない費用があります。設立の予算を立てるなら、ここも足してください。

発起人の印鑑登録証明書が要ります。定款に記載された発起人の住所、氏名、押印の正確性を確認するために提出するもので、発行後3か月以内のものに限られます。1通あたり数百円ですが、発起人が複数いれば人数分かかります。会社が発起人になる場合は、代表者の印鑑登録証明書に加えて会社の登記簿謄本も必要です。

会社の実印、いわゆる代表者印の作成費用もかかります。銀行印と角印をセットにしたものが一般的で、素材によって数千円から数万円まで幅があります。設立登記の申請で印鑑を提出する場合に必要になるほか、取引先との契約でも使います。

資本金の払込みそのものは費用ではありませんが、タイミングの制約があります。払込みは定款の作成後に行い、払込みがあったことを証する書面を登記の申請に添付します。手元の資金を一度動かす必要があるので、資金繰りの計画には入れておいてください。

設立後にも費用が続きます。登記が完了したら登記事項証明書を取得しますが、これは書面請求で1通600円、オンライン請求して郵送で受け取る場合は520円、オンライン請求して窓口で受け取る場合は490円です。印鑑証明書は書面請求で1件500円、オンライン請求で郵送なら450円、窓口交付なら420円です。これらは令和8年4月1日からの金額です。法人口座の開設や各種の届出で複数通必要になるので、まとめて取っておくと手間が減ります。

こうした周辺の費用を足すと、認証手数料の1万5,000円の差は相対的に小さく見えてきます。全体を並べてから、どこを削るかを考えてください。

合同会社なら認証費用そのものがかからない

費用の観点で外せないのが会社形態の選択です。

日本公証人連合会は、いわゆる持分会社、つまり合名会社、合資会社、合同会社の定款については公証人の認証を必要としないと明示しています。株式会社の定款に認証が求められるのは、経営と責任が分離されて不特定多数の者が関わる設計になっており、設立後の紛争予防や不正防止の必要性が特に高いためだと説明されています。

認証が不要ということは、認証手数料も謄本代もかからないということです。電子定款にすれば印紙税もかかりません。残るのは登録免許税だけで、下限は6万円です。

株式会社の最小構成である約16万7,000円と比べると、10万円以上の差が出ます。入口の費用で見れば、合同会社が圧倒的に軽い。

ただし、この差だけで会社形態を決めるのは危険です。取引先によっては株式会社でないと口座を開かない、大手の取引に入れないといった話が残っています。将来的に出資を受けて株式を発行する予定があるなら、最初から株式会社にしておくほうが手戻りがありません。合同会社から株式会社への変更は可能ですが、組織変更の手続きと費用がかかります。

費用は判断材料の1つであって、判断そのものではありません。

株式会社以外の法人はどうなるか

ここまで株式会社を中心に書いてきましたが、認証が必要な法人はほかにもあります。費用の扱いが違うので整理します。

日本公証人連合会は、公証人の認証を必要とする定款として、株式会社のほか、一般社団法人および一般財団法人、税理士法人や司法書士法人や行政書士法人などの士業法人、特定目的会社、相互会社、金融商品会員制法人、信用金庫などを挙げています。

一般社団法人と一般財団法人の定款の認証手数料は、資本金の額等による3段階の区分ではなく、一律5万円です。これらの法人には資本金という概念がないためで、株式会社のような軽減の仕組みもありません。

印紙税の扱いも違います。日本公証人連合会は、会社であっても電子定款による場合や特定目的会社の定款については収入印紙を貼付する必要がなく、社団法人の定款や信用金庫の定款についても収入印紙は貼付しないと説明しています。つまり一般社団法人は、紙で作っても印紙税がかかりません。

法人の種類によって、費用の構造そのものが変わるということです。株式会社の記事を読んで一般社団法人の費用を見積もると、印紙税4万円を余計に計上してしまいます。

逆に、持分会社である合名会社、合資会社、合同会社は認証が不要ですが、紙で作れば印紙税4万円はかかります。認証がないから印紙も不要、ではありません。ここも混同されやすいところです。

自分が作ろうとしている法人がどの区分に入るのかを最初に確かめると、費用の見積もりがずれません。

支払いのタイミングと税務上の扱い

最後に、実務的な話を2つ。

支払いのタイミングです。日本公証人連合会は、手数料の予納が必要になる場合があるとして、必ず請求する公証役場へ事前に連絡するよう求めています。事前審査の案内とあわせて手数料の支払方法についても案内するとされているので、最初の打合せのときに確認してください。当日に現金を持参する運用か、事前に振り込む運用かは役場によって違います。

税務上の扱いです。定款認証の手数料は、国等が法令に基づいて行う一定の事務に係る役務の提供として法令に基づいて徴収される手数料にあたるため、消費税の非課税取引として扱われるのが一般的です。印紙税や登録免許税も税金そのものなので、消費税はかかりません。

会計上の勘定科目については、会社の設立のために支出した費用として創立費に計上する扱いが一般的です。ただし、どこまでを創立費に含めるか、いつ償却するかは会社の状況によって判断が分かれるので、決算の前に税理士か税務署に確認してください。

なお、会社法第28条第4号は、株式会社が負担する設立に関する費用を定款に記載しなければ効力が生じない事項としていますが、定款の認証の手数料その他会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものは除かれています。認証手数料については、定款に書かなくても会社が負担できるということです。

変更定款の手数料にも触れておきます。設立後に定款を変更した場合、公証人の認証は不要です。日本公証人連合会も、公証人の認証を受ける必要があるのは設立当初の定款だけで、その後定款を変更するときは必要ないとしています。例外的に認証が必要な場面では、手数料は手数料令に定めがないものの、1件について私署証書の認証に準じて6,500円となり、収入印紙は貼付しないと説明されています。

設立時の定款の謄本が後から必要になった場合は、認証をした公証役場で請求できます。手数料は謄本が1枚につき250円、閲覧が1回200円です。認証した電子文書は20年間保存されます。

費用まわりでよくある勘違い

調べているとよく出てくる誤解を、先に潰しておきます。

1つ目。認証手数料は資本金から出せない、という誤解です。会社法は、株式会社が負担する設立に関する費用を定款に記載しなければ効力を生じない事項としていますが、定款の認証の手数料その他会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものは除外されています。認証手数料は、定款に書かなくても会社の負担にできます。

2つ目。資本金は使ってはいけないお金だ、という誤解です。資本金は会社の元手であって、凍結される預金ではありません。設立後は事業のために使えます。ただし、決算では資本金の額が貸借対照表に残り続けるので、使い切っても数字としては残ります。

3つ目。定款を変更するたびに公証人の認証が要る、という誤解です。日本公証人連合会は、公証人の認証を受ける必要があるのは設立当初の定款だけで、その後定款を変更するときは必要ないとしています。変更は株主総会の決議で行い、登記事項に該当する項目だけ変更登記を申請します。

4つ目。電子定款なら全部安くなる、という誤解です。安くなるのは印紙税の4万円だけで、認証手数料も謄本代も登録免許税も、紙と同額です。電子にすることで増える費用(署名環境)があることも、前の節で見たとおりです。

5つ目。手数料は交渉できる、という誤解です。公証人の手数料は公証人手数料令という政令で定められているので、役場によって金額が違うということはありません。安い役場を探す意味はなく、そもそも本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人でなければ認証できません。

6つ目。認証を受けたあとに定款を直せる、という誤解です。会社法は、公証人の認証を受けた定款は株式会社の成立前は原則として変更できないとしています。限られた例外はありますが、基本は直せないと考えて、認証の前に内容を固めてください。

初期費用を抑えることと、稼ぎ方を設計すること

ここまで費用の話をしてきましたが、視点を1つ変えます。

設立費用は、多くても20万円台です。事業を始めれば数か月で回収できる規模の金額です。ここを1万円削ることに時間をかけるより、会社を作ったあとに何で稼ぐかの設計に時間を使ったほうが、金額的なインパクトははるかに大きい。

運営者として在宅とフリーランスの市場を20年見てきた立場から言えば、法人化の前後でつまずく人には共通点があります。器を作ること自体が目的になってしまい、受注の見通しを立てないまま固定費を抱えるパターンです。法人を維持すると、赤字でも法人住民税の均等割が発生し、決算と申告の手間が乗ります。設立費用より、この年間の維持費のほうが効いてきます。

一方で、法人にしないと入れない仕事があるのも事実です。一定の規模以上の発注元は、継続的な業務委託の相手を法人に限っていることがあります。開発の規模が大きい案件ほどこの傾向が強く、アプリケーション開発のお仕事の分野では契約の相手方に法人を求められる割合が上がります。近年はAIコンサル・業務活用支援のお仕事AI・マーケティング・セキュリティのお仕事でも同じ動きが出ています。

判断の足場として、自分の職種の単価の水準を知っておくと迷いが減ります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場には公的な統計をもとにした分布が、文章を扱う仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場に同様のデータがあります。年間の売上の見込みと、法人の維持費を並べて比べれば、設立の時期の判断はかなり具体的になります。

もう1つ、額面と手取りの差です。仲介を挟む取引では報酬から手数料が引かれます。法人を持つと固定費が発生するので、同じ売上でも手元に残る額の差がそのまま経営に響きます。運営者として見てきた限りでは、長く続いている人ほど早い段階で直接つながる取引の割合を増やしています。手数料0%で直接つながる仕組みなら、同じ予算で発注側はより多く頼めて、受け手は手取りが厚くなる。この構造は、器を持って固定費を抱えたあとほど効いてきます。

法人になると書類のやり取りも増えます。発注書と契約書に入れるべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに、報酬が支払われないときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にまとめてあります。書類を扱う力そのものを底上げしたいならビジネス文書検定の学習範囲が実務に直結しますし、技術系で受注の幅を広げるならCCNA(シスコ技術者認定)のような認定が発注側の判断材料になります。決算まわりを外部に頼む選択肢を考えるなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にこの分野の働き方があります。

費用の内訳が分かれば、あとは資本金と会社形態を決めるだけです。手数料の区分は金額で機械的に決まるので、迷う余地はありません。迷うとしたら、それは費用の問題ではなく、どんな会社にするかの問題です。

よくある質問

Q. 電子定款の認証費用は結局いくらですか?

資本金の額等が100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外で5万円です。資本金100万円未満で、発起人が全員自然人かつ3人以下、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があり、取締役会を置く旨の記載がない場合は1万5,000円になります。これに謄本代が約2,000円加わります。

Q. 電子定款にすると紙よりいくら安くなりますか?

印紙税の4万円が丸ごと不要になります。定款は印紙税法の第6号文書で1通4万円ですが、課税されるのは公証人が保存する紙の原本だけで、電子定款には印紙税がかかりません。ただし電子署名の環境を自分でそろえる場合は、ソフトとカードリーダーの費用が別途かかります。

Q. 認証手数料に消費税はかかりますか?

かかりません。国や公共法人などが法令に基づいて行う登記、登録、証明などの事務について法令に基づいて徴収される手数料は、消費税の非課税取引とされています。印紙税と登録免許税も税金そのものなので消費税はかかりません。会計処理は創立費に計上するのが一般的ですが、詳細は税理士か税務署に確認してください。

Q. 合同会社の定款にも認証費用はかかりますか?

かかりません。合名会社、合資会社、合同会社の定款は公証人の認証が不要です。電子定款にすれば印紙税もかからないため、法定費用は設立登記の登録免許税だけになります。合同会社の登録免許税は資本金の額の1000分の7で、6万円に満たないときは6万円です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月28日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方