定款に書く項目|必ず書くことと書いてもよいこと


この記事のポイント
- ✓必ず書く項目・書かないと効き目が出ない項目・書いても書かなくてもよい項目の3つに分かれます
- ✓会社法と公証人連合会の記載をもとに
- ✓5つの必須項目の書き方
定款の内容を調べている人の多くは、ひな型を前にして手が止まっています。項目がずらりと並んでいて、どれが法律で決まっていて、どれが自由に決めてよいのかが見分けられない。まず、安心してください。定款の中身は3つのグループに分かれていて、その見分け方さえ覚えれば、ひな型のどこを自分の会社に合わせて直せばよいかが一目で分かるようになります。
結論から書きます。定款の項目は、書かないと定款そのものが無効になる項目、書かないとその決まりの効き目が出ない項目、書いても書かなくても定款の効力には関係しない項目、の3つです。会社法が「必ず書け」と名指ししているのは5つだけで、残りは会社の作りに合わせて選ぶものです。この5つを外さなければ、公証役場で門前払いされることはありません。
この記事では、その3つのグループを一つずつ見ていきます。5つの必須項目それぞれに、どう書くか、どこまで細かく書くべきか、迷いやすい点は何かを添えました。あわせて、認証にいくらかかるのか、作ったあとに直すときにどれだけ手間がかかるのかも、公証人連合会と法務省の公表内容に沿って整理します。
定款は3つのグループでできている
定款とは、会社の決まりを書いた文書のことです。会社の名前、何をする会社か、どこに置く会社か、誰がいくら出したか。こうしたことを1つの文書にまとめ、会社の中でも外でも「これがこの会社の決まりです」と示すために使います。
その中身は、法律上の扱いで3つに分かれます。
1つめが絶対的記載事項です。1つでも欠けると定款そのものが無効になります。会社法第27条が5つを名指ししていて、逃げ道はありません。
2つめが相対的記載事項です。書かなくても定款は有効ですが、書かないとその決まりが効き目を持ちません。たとえば株式の譲渡に会社の承認を必要とする決まりは、定款に書いて初めて効きます。書き忘れると、株主が誰にでも自由に株を売れる会社になります。
3つめが任意的記載事項です。書いても書かなくても定款の効力には影響しません。事業年度、取締役の人数、定時株主総会をいつ開くかといった項目がここに入ります。会社法に反しない限り、何を書いてもかまいません。
この3つの区分は、会社法第29条が根拠になっています。同条は、第27条各号と第28条各号に挙げた事項のほか、定款の定めがなければ効力を生じない事項、およびその他の事項でこの法律に違反しないものを記載できると定めています。つまり「必須の5つ+効き目のための定め+自由な定め」という構造が、条文そのものに書かれているわけです。
ひな型を見るときは、この3層で色分けするつもりで読むと整理できます。直してはいけないのが1層目、自分の会社に効かせたい決まりがあるかを考えるのが2層目、運営しやすさで決めるのが3層目です。
必ず書く5つ|1つでも欠けると受理されない
会社法第27条は、株式会社の定款に記載しなければならない事項として次の5つを挙げています。目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所。順に見ていきます。
目的|あとで足すと1件3万円かかる
目的とは、その会社が何をする会社かを書いた項目です。会社は、ここに書いた範囲でしか事業をしないのが建前になります。
実務上いちばん大事なのは、いま始める事業だけを書かないことです。目的は登記される項目なので、あとから足すには変更の登記が必要になります。登録免許税法の別表第一が定める税額では、登記事項の変更の登記は申請1件につき3万円です。司法書士に頼めばその報酬も別にかかります。1年後に始めるつもりの事業があるなら、最初から書いておくほうが安上がりです。
一方で、際限なく並べればよいわけでもありません。目的欄は誰でも見られる登記事項なので、業種が散らかっていると取引先や銀行から「結局何の会社なのか」と見られます。許認可が要る事業では、行政庁が目的欄の文言を確認するので、その事業が読み取れる書き方になっているかも見ておく必要があります。
最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文を置くのが通例です。これを入れておくと、本業に付随する細かい仕事のたびに悩まずに済みます。
商号|使える文字と使えない文字がある
商号とは、会社の名前のことです。株式会社であれば、前か後ろに「株式会社」を必ず入れます。
使える文字には決まりがあります。漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字のほか、アンパサンド、アポストロフィ、コンマ、ハイフン、ピリオド、中点といった符号が使えます。符号は字句を区切るためのもので、先頭と末尾には使えません(ピリオドは省略を示すため末尾に使えます)。
同じ住所に同じ商号の会社がある場合は登記できません。それ以外の場合は、同じ市内に同名の会社があっても登記自体は通ります。ただし、有名な会社と紛らわしい名前を付けると、不正競争防止法や会社法上の請求を受ける余地が残ります。候補が決まったら、法務局の登記情報や検索サイトで同名の会社を一度は調べておくのが安全です。
本店の所在地|最小行政区画までか、番地までか
本店の所在地とは、会社の住所のことです。ここには書き方の選択肢があり、どちらを選ぶかで後々の手間が変わります。
定款には「東京都渋谷区」のように最小行政区画まで書く方法と、「東京都渋谷区○○一丁目2番3号」のように番地まで書く方法があります。最小行政区画までにしておくと、同じ区内で引っ越したときに定款を直す必要がありません。番地まで書いてしまうと、区内の移転でも定款変更の手続きが必要になります。
創業期は事務所を移すことが多いので、最小行政区画までにしておくのが実務では一般的です。登記のほうには具体的な番地まで載りますが、それは定款とは別の手続きなので混同しないようにします。
なお、本店をどこに置くかは認証を受ける公証役場も決めます。定款の認証は、本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人しかできないと定められており、管轄外の公証人がした認証は無効になります。ここは間違えると作り直しになるので、先に管轄を確かめてください。
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
会社を作るときに、いくら出すかを書く項目です。「価額」を書く方法と「最低額」を書く方法があり、どちらでもかまいません。
ここで気をつけたいのは、この金額が認証手数料の金額を決めるという点です。定款に資本金の額等が書かれていない場合は、この「設立に際して出資される財産の価額」が基準になります。そして「最低額」の形で書いた場合は、手数料がいちばん高い区分に入る扱いになります。手数料を抑えたいなら、金額をはっきり書くほうが得です。
もうひとつ、出資が現金以外の場合は扱いが変わります。パソコンや車のような現物で出資するときは、会社法第28条が定める変態設立事項として、出資する人の氏名、その財産と価額、割り当てる株式の数を定款に書かなければ効力が生じません。金額が大きいと検査役の調査が必要になり、手続きが一気に重くなります。創業時は現金で出資し、備品は会社が買う形にするほうが簡単です。
発起人の氏名または名称および住所
発起人とは、会社を作ろうとする人のことです。定款を作り、署名または記名押印をします。氏名と住所は、印鑑登録証明書の記載どおりに書きます。番地の表記が1文字違うだけで直しになるので、証明書を見ながら写すのが確実です。
発起人の本人確認には印鑑登録証明書を使います。公証人連合会は、この証明書について発行後3か月以内のものに限ると案内しています。会社設立の準備は思ったより時間がかかるので、早く取りすぎると期限切れで取り直しになります。
会社が発起人になることもできます。その場合は代表者の印鑑登録証明書に加えて、その会社の登記事項証明書が必要です。さらに、新しく作る会社の目的が、発起人になる会社の目的の範囲内である必要があります。
書かないと効き目が出ない項目
相対的記載事項は数が多く、会社の作りによって必要なものが変わります。創業期の小さな会社で実際に検討することになるのは、だいたい次の4つです。
株式の譲渡制限は、株式を他人に譲るときに会社の承認を要するという決まりです。これを入れた会社を「公開会社でない株式会社」と呼び、役員の任期を最長10年まで伸ばせる、株主総会の招集通知を1週間前までにできるなど、運営上の負担が軽くなる扱いが多く付いてきます。創業期の会社はほぼ例外なくこれを入れます。
役員の任期も定款で決めます。原則は取締役が2年、監査役が4年ですが、譲渡制限のある会社であれば定款でそれぞれ最長10年まで伸ばせます。任期が来るたびに役員の変更登記が必要になり、登録免許税が資本金1億円以下の会社で申請1件につき1万円かかるので、1人会社なら10年にしておくと手間も費用も減ります。ただし、共同創業で将来もめる可能性があるなら、任期を短くして交代しやすくしておくという逆の考え方もあります。
公告方法は、法律で決められた事項を世の中に知らせる方法です。官報に載せる、日刊新聞紙に載せる、自社のサイトに載せる(電子公告)の3つから選びます。定款に書かなかった場合は官報になります。決算の公告を毎年出すことを考えると、電子公告を選ぶ会社も増えていますが、電子公告には調査機関の調査が必要になる場面があるので、決める前に費用を比べておきます。
株主総会や取締役会の決まりも相対的記載事項です。取締役会を置くか置かないか、代表取締役をどう決めるか、株主総会の議長を誰にするかといった項目が該当します。
書いても書かなくてもよい項目
任意的記載事項は、会社法に反しない限り自由に書けます。よく入るのは次のような項目です。
事業年度は、決算をいつ締めるかの決まりです。多くの会社が定款に書きますが、法律上は定款の必須項目ではありません。法人税法第13条は、事業年度を「法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるものに定めるもの」と定義しており、定款に書けばそれが事業年度になります。
取締役の人数は「取締役は3名以内とする」のように上限や下限を決めます。人数を固定すると、1人辞めただけで欠員になり登記が必要になるので、幅を持たせて書くのが実務では安全です。
定時株主総会の時期は「毎事業年度の終了後3か月以内に招集する」といった形で書きます。
最初の事業年度も定款に書くことが多い項目です。設立の日から最初の決算日までの期間を定めます。
任意的記載事項の扱いで注意したいのは、いったん定款に書くと、変えるときは定款変更の手続き(株主総会の特別決議)が必要になるという点です。書かずに取締役会や株主総会の決議だけで運用できる事項なら、定款に書かないという選択もあります。定款に書くかどうかは「毎年変えたいか、10年変えないか」で判断すると迷いません。
発行可能株式総数は「必須ではないが、結局は要る」項目
5つの必須項目に入っていないのに、事実上は書かざるを得ない項目があります。発行可能株式総数です。会社が将来発行できる株式の上限を決める数字で、登記される項目でもあります。
会社法第37条は、発起人が発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって定款を変更してこの定めを設けなければならないとしています。つまり、最初の定款に書かなくてもよいが、会社が成立するまでには必ず決めなければならない、という作りです。それなら最初から書いておくほうが手間がありません。
数字の決め方には1つだけ縛りがあります。同条は、設立時に発行する株式の総数は発行可能株式総数の4分の1を下ることができないとしていて、ただし設立しようとする株式会社が公開会社でない場合はこの限りでないとしています。株式の譲渡に会社の承認が必要な会社、つまり創業期のほとんどの会社では、この4分の1の縛りがかかりません。設立時に100株発行して、発行可能株式総数を10,000株にすることもできます。
では、どのくらいの数字にしておくのがよいか。ここは「あとで増やすと1件3万円かかる」という一点で考えると決まります。発行可能株式総数を増やすのは定款変更にあたるので、株主総会の特別決議に加えて変更の登記が必要になり、登録免許税が3万円発生します。将来の増資や、役員や協力者に株式を渡す可能性まで含めて、設立時に発行する株式数の10倍程度を入れておく会社が多いのは、この費用を1回で済ませるためです。
逆に、桁を大きくしすぎても実害はほとんどありません。登記に載る数字が大きいだけで、税金が増えるわけではないからです。迷ったら大きめにしておいて差し支えありません。
電子定款にするかどうかは、印紙代4万円で決まる
定款の作り方には、紙で作る方法とPDFで作って電子署名をする方法の2つがあります。中身の書き方は同じで、違うのは形式と費用です。
紙の定款には収入印紙を4万円分貼ります。これは印紙税という税金で、文書を紙で作ったことに対してかかります。電子定款はその文書が電子データなので、印紙税がかかりません。この差だけで4万円です。
ただし、自分で電子定款を作ろうとすると準備が要ります。PDFに電子署名を付けるためのソフト、電子証明書(マイナンバーカードなど)、そして電子署名を読み込める環境。1回しか使わない設備を揃えると、4万円の節約分がほとんど消えます。設立を専門家に頼む場合や、設立支援サービスを使う場合は、その側が電子定款で処理してくれることが多いので、印紙代4万円が丸ごと浮きます。
判断の目安はこうです。設立を全部自分でやるつもりで、電子証明書もソフトも持っていないなら、紙で作って4万円払うほうが早く終わります。どこかに一部でも頼むつもりなら、電子定款に対応しているかを最初に聞いてください。対応していないところに頼むと、報酬に加えて印紙代4万円を払うことになります。
認証後の定款は、どこにあってどう取り出すか
認証を受けた定款は3か所に残ります。公証役場の保存用原本、会社の保存用原本、そして登記申請に使った謄本です。会社の保存用原本は、会社が自分で保管します。
問題は、これを紛失したときです。会社の原本を失くしても、公証役場に保存されている原本から謄本を取ることができます。公証人連合会は、嘱託人やその承継人、利害関係人が、定款認証をした公証役場で保存する定款およびその付属書類の謄本を請求でき、閲覧もできると案内しています。手数料は謄本が1枚につき250円、閲覧は1回200円です。
ただし取れるのは、認証を受けた時点の定款です。そのあと株主総会で変更した内容は公証役場には届いていないので、現在の定款を復元するには、変更のたびの株主総会議事録が要ります。つまり、定款の原本と、その後の変更にかかる議事録一式をセットで保管しておかないと、いつの間にか「いまの定款が何なのか分からない会社」になります。
これは実際によくある事故です。銀行の融資審査や、補助金の申請、取引先の与信調査で「現行定款の写し」を求められたときに、手元にあるのが設立時の定款だけで、その後の変更を反映した文書がどこにもない。作り直すには議事録を全部集めるところから始めることになります。定款を変えたら、変更後の全文を1つのファイルにまとめ直して保管する。この習慣だけは、最初の1回から付けておく価値があります。
株式会社と合同会社では、手続きそのものが違う
定款の3層構造は、株式会社でも合同会社でも共通です。ただし決定的に違う点が1つあります。公証人の認証が要るかどうかです。
定款の認証とは、公証人が、正当な手続きにより定款が作成されたことを証明することをいいます。 次のような法人の設立をするときには、公証人の認証を受ける必要があります(ただし、公証人の認証を受ける必要があるのは、設立当初の定款だけで、その後定款を変更するときは必要ありません。)。 出典: koshonin.gr.jp
同じページは、いわゆる持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の定款については公証人の認証を必要としないとも説明しています。理由も書かれていて、株式会社は経営と責任が分かれて不特定多数の人が関わる設計なので、設立後の紛争予防や不正防止の必要性が特に高いから、とされています。
ここを知っているかどうかで、設立にかかる費用が変わります。合同会社なら認証の手数料も謄本の手数料もかかりません。設立の登録免許税も、株式会社が資本金の額の1000分の7(15万円に満たないときは15万円)であるのに対し、合同会社は同じ1000分の7でも下限が6万円です。1人で始めるなら合同会社で十分という判断は、ここから来ています。
認証にいくらかかるかを、先に計算しておく
株式会社を作る場合の定款まわりの費用は、公証人連合会が具体的な金額を公表しています。
認証の手数料は、資本金の額等が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外なら5万円です。これに加えて、登記申請に使う謄本の手数料が1枚につき250円かかります。定款はおおむね8枚前後になるので、謄本代は2,000円程度が目安です。
紙で作った定款には、収入印紙を4万円分貼ります。ここが電子定款との分かれ目です。PDFで定款を作って電子署名をする電子定款であれば、この印紙は不要になります。差額が4万円あるので、電子定款の代行を頼んでも多くの場合は安く収まります。
まとめると、株式会社の設立では認証手数料3万円から5万円、謄本代2,000円前後、印紙代4万円(電子定款なら不要)、設立登記の登録免許税15万円または出資額の1000分の7のいずれか高いほう、という並びになります。ここに代表者印の作成費用と印鑑登録証明書の取得費用が乗ります。
費用の内訳は、公証人連合会の定款認証のページに一次情報としてまとまっています。金額が動くことがあるので、実際に作る直前にもう一度見ておくのが安全です。
なお、定款のひな型そのものも公証人連合会が定款等記載例として公開しています。民間のテンプレートを探す前に、こちらを起点にするほうが早く、間違いも少なくなります。
書き方でつまずきやすい箇所
実際に定款を作った人がつまずく箇所は、だいたい決まっています。
用紙と綴じ方です。紙で作る場合はA4用紙に片面横書きで記載し、表紙、本文、裏表紙の順に綴じて袋とじにするか、ホチキスで綴じます。定款の原本には発起人が署名または記名押印し、ページごとに契印を押します。袋とじにした場合は、つなぎ目に契印を押すだけでかまいません。
通数も間違えやすい点です。認証を頼むときは定款の原本2通を公証人に提出します。1通は公証役場の保存用、もう1通が会社の保存用です。設立の登記申請には認証を受けた謄本が1通必要になるので、実務では3通を持ち込むことになります。
訂正の仕方にも決まりがあります。定款の中に挿入や削除があるときは、その字数と箇所を記載し、作成者全員が訂正印を押す必要があります。訂正のための捨印があると、公証役場でのやり取りが楽になります。
言語は日本語です。英語やドイツ語が併記されている定款でも、日本語の部分が正式な定款で、外国語の部分は翻訳として扱われます。
事前確認を飛ばさないことです。公証役場に定款の案を先に送って内容を見てもらえば、当日の差し戻しがほぼなくなります。予約なしで持ち込んでその場で直すのは、いちばん時間を失う進め方です。
作ったあとに直すときのことを、作る前に考える
定款は作って終わりではありません。事業が育つほど、直す場面が出てきます。
ただし、2回目以降に公証人の認証は要りません。公証人の認証が必要なのは設立当初の定款だけだからです。定款を変えるには株主総会の特別決議が必要で、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で決まります。
ここで費用が分かれます。定款を直しただけで済む項目と、登記まで必要な項目があるからです。目的、商号、本店の所在地、発行可能株式総数、公告方法は登記事項なので、定款を直したうえで変更の登記もします。一方、事業年度や取締役の人数の上限は登記事項ではないので、株主総会の議事録を残せば手続きは終わりです。
登記が必要な場合、法務省は変更の登記について次のように案内しています。
会社等の設立に当たって登記した事項に変更が生じたときは、2週間以内に、その本店又は主たる事務所の所在地において 、変更の登記をしなければなりません(会社法第915条第1項、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」といいます。)第303条)。 また、会社法等の規定による登記をすることを怠ったときは、登記の申請を怠った代表者等は裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法第976条第1号、一般法人法第342条第1号)。 出典: moj.go.jp
2週間という期限は、申請までの期限であって完了までの期限ではありません。窓口に申請書を出せば義務は果たしたことになります。とはいえ、決議したまま放置すると期限を過ぎるので、決議の日にそのまま申請の準備に入るのが安全です。
条文そのものを確かめたいときは、e-Gov法令検索の会社法で第27条から第29条を読むのが早道です。民間の解説を何本も読むより、5つの項目を条文で1回見ておくほうが記憶に残ります。
会社の書類仕事を、誰がやるかという問題
20年この市場を見てきた立場から言えば、1人や2人で会社を始めた人がいちばん削られるのは、事業そのものではなく周辺の書類仕事です。定款、登記、税務署への届出、社会保険の手続き。どれも1回きりの作業なのに、慣れていないと1つあたり数日を持っていかれます。しかも、その数日は売上を生みません。
長く続いている会社ほど、この部分の扱い方が上手です。共通しているのは、判断が要る部分だけを自分で握り、手を動かす部分を早い段階で外に出していることです。定款でいえば、目的に何を書くか、役員の任期を何年にするかは経営の判断なので自分で決める。一方、ひな型に沿って文書に整える作業や、公証役場とのやり取りは、慣れた人に任せたほうが速くて確実です。
ここで効いてくるのが、仲介の手数料がどれだけ乗るかという問題です。業務委託で書類仕事を頼むとき、間に入るサービスの取り分が大きいほど、同じ予算で頼める量は減り、受ける側の手取りも薄くなります。手数料0%で直接やり取りできる形は、依頼する側が同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手取りが厚くなるという意味で、両方に効きます。運営者として見てきた限りでは、この形で続いている関係ほど、単発の作業依頼ではなく「この人に任せると楽」という関係に育っています。
会社の設立まわりの書類を扱える人材は、意外とフリーランス側にもいます。士業の資格が要る部分(登記の代理など)は専門家に頼むことになりますが、その前段の資料づくり、議事録の整形、社内規程の文書化といった作業は、文書を扱う仕事の延長で受けられます。こうした文書作成の仕事がどう値付けされているかは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっています。職業分類ごとの実際の水準が見られるので、依頼する側の予算感を作るのにも使えます。
自社の業務の中で何を外に出せるかを考えるとき、フリーランスに任せられる仕事の種類を一覧で見ておくと発想が広がります。たとえばAIコンサル・業務活用支援のお仕事は、社内の定型業務を洗い出して自動化の道筋を作る仕事で、書類仕事の削減とそのまま重なります。開発まで踏み込むならアプリケーション開発のお仕事のように、社内の手続きを仕組みに置き換える発注の仕方もあります。エンジニアに発注するときの相場感はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確かめられます。
書類を扱う人を選ぶときの目安として、資格を見るのも1つの方法です。文書の作り方そのものを問うビジネス文書検定は、契約書や議事録を扱う業務で持っていると話が早くなります。技術系の業務を任せるならCCNA(シスコ技術者認定)のように、扱える範囲がはっきり分かる資格を手がかりにできます。
発注する側に回ったときに効いてくるのが、契約の条件をどこまで先に決めておくかです。フリーランスに仕事を出す会社には下請法(取適法)の規制がかかる場面があり、発注書に何を書くべきかが決まっています。この点はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに必須項目がまとまっています。定款を作る段階で会社の形を決めたら、次に整えるのは発注の型です。
お金を払ったのに納品されない、納品したのに払われないという場面に備えるなら、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で回収の手順と費用の相場を見ておくと、契約書に何を入れるべきかが逆算できます。会計まわりを誰に頼むかで迷っているなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に、専門職が副業でどこまで受けられるかが整理されています。
定款の内容を詰める作業は、会社の骨格を決める作業です。5つの必須項目を外さないこと、あとで直すと3万円かかる項目を先に見ておくこと、そして手を動かす部分を抱え込まないこと。この3つを押さえれば、設立の手続きで止まる時間はかなり短くできます。
よくある質問
Q. 定款に必ず書かなければならない項目はいくつですか?
株式会社の場合は5つです。目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所で、会社法第27条が定めています。1つでも欠けると定款が無効になり、公証役場で認証を受けられません。ひな型を使う場合も、この5つが自分の会社の内容に置き換わっているかを最後に確認してください。
Q. 定款の認証にはいくらかかりますか?
公証人連合会の案内では、認証の手数料は資本金の額等が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円です。これに謄本の手数料が1枚250円(おおむね8枚で2,000円程度)加わります。紙の定款には収入印紙4万円が必要ですが、電子定款なら不要です。合同会社は認証そのものが要りません。
Q. 事業年度は定款に書かなければいけませんか?
法律上の必須項目ではありません。書いても書かなくても定款の効力には影響しない任意的記載事項です。ただし法人税法は、定款に定めた会計期間を事業年度として扱うと定めているため、多くの会社が定款に書いています。定款に書いた場合、決算月を変えるには株主総会の特別決議による定款変更が必要になります。
Q. 設立後に定款を直すとき、また公証人の認証が要りますか?
不要です。公証人の認証が必要なのは設立当初の定款だけで、その後の変更には要りません。定款を直すには株主総会の特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席分の3分の2以上の賛成)が必要です。目的や商号のように登記されている項目を変えた場合は、あわせて2週間以内に変更の登記を申請します。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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