定款変更にかかるお金|登記が要る場合と要らない場合

丸山 桃子
丸山 桃子
定款変更にかかるお金|登記が要る場合と要らない場合

この記事のポイント

  • ✓定款変更費用は「文書を直す作業」ではなく「登記が要るかどうか」で決まる
  • ✓登録免許税3万円がかかる変更と1円もかからない変更の境目
  • ✓自分で申請した場合と専門家に頼んだ場合の総額

定款変更費用を調べると、「無料」と書いてあるページと「3万円かかる」と書いてあるページと「10万円は見ておくべき」と書いてあるページが並んで出てくる。どれも嘘ではない。定款を直す作業そのものと、直した結果として法務局に届け出る手続きが、まったく別の費用体系で動いているからこうなる。

結論を先に置く。定款を書き換えること自体には、お金は一切かからない。お金がかかるのは、変えた項目が登記簿にも載っている項目だったときだけで、そのときは国が決めた登録免許税が必ず発生する。金額は変更の種類ごとに決まっていて、値切ることも交渉することもできない。

つまり用意すべき金額は、「何を変えるか」が決まった時点でほぼ確定している。この記事では、登記が要る変更と要らない変更の線引き、変更の種類ごとの登録免許税、自分で申請した場合の実費の内訳、専門家に頼む場合の相場、そして期限を過ぎたときに何が起きるかを、法務局と国税庁と公証役場の資料で確かめた内容だけで並べていく。

定款とは何か。そして直すこと自体は無料である

定款とは、会社の決まりを書いた文書のこと。会社の名前、何の事業をやるか、本店をどこに置くか、株式をどう扱うか、株主総会をどう開くかといった基本ルールが書いてある。会社を作るときに必ず作り、作ったあとも会社の中に保管しておく。

この文書を書き換えることを定款変更という。株式会社の場合、書き換えは株主総会で決める。会社法という法律が、会社が成立したあとは株主総会の決議によって定款を変更できると定めている。つまり必要なのは、株主が集まって決めることと、決めた内容を議事録に残すことであって、どこかにお金を払う手続きではない。

ここで多くの人がつまずくのが、会社を作ったときに払った公証役場の手数料の記憶である。株式会社を設立するときは、最初の定款に公証人の認証という手続きが要る。資本金の額に応じて3万円から5万円を払った覚えがある人は多い。あの手続きが変更のたびに発生するのではないか、と身構えてしまう。

そうはならない。日本公証人連合会が、認証が要るのは設立当初の定款だけだとはっきり書いている。

次のような法人の設立をするときには、公証人の認証を受ける必要があります(ただし、公証人の認証を受ける必要があるのは、設立当初の定款だけで、その後定款を変更するときは必要ありません。)。 出典: koshonin.gr.jp

設立のときに認証を受けた定款を原始定款と呼ぶ。原始定款は公証役場にも保管されるが、あとから会社が自分で書き換えた定款を改めて公証役場へ持ち込む義務はない。株主総会で決めて、議事録を作って、会社の中の定款ファイルを差し替える。ここまでが定款変更であり、ここまでなら支払いは発生しない。

なお、変更したあとの定款をあえて公証人に認証してもらうこともできる。取引先や金融機関に対して内容の正しさを示したい場合などに使う手で、日本公証人連合会はその手数料を1件6,500円としている。これは義務ではなく、頼んだ人だけが払う任意の費用である。

お金が動き出すのは「登記簿にも書いてある項目」を変えたとき

定款に書いてある項目のうち、一部は法務局の登記簿にも載っている。登記簿とは、会社の基本情報を国が管理している台帳で、誰でも手数料を払えば内容を見られる。取引先が相手の会社を調べるとき、銀行が口座を作るとき、役所が許認可を出すときに参照されるのはこの登記簿である。

だから、定款と登記簿の両方に載っている項目を変えたときは、定款を直しただけでは終わらない。登記簿も直さなければ、外から見える情報が古いままになってしまう。この登記簿を直す手続きが変更登記で、ここに国が決めた税金がかかる。

登記簿に載る項目は法律で決まっている。会社に関係が深いものを挙げると次のようになる。

・目的(どんな事業をやるか) ・商号(会社の名前) ・本店および支店の所在場所 ・会社の存続期間や解散の事由を定款で定めているときは、その定め ・資本金の額 ・発行可能株式総数(発行できる株式の上限数) ・発行する株式の内容(譲渡に会社の承認が要る、といった定めを含む) ・単元株式数を定めているときは、その数 ・発行済株式の総数 ・株券を発行する会社であるときは、その旨 ・株主名簿管理人を置いたときは、その名称と住所 ・新株予約権を発行したときは、その内容 ・取締役や監査役などの役員の氏名 ・公告方法(決算などを世間に知らせる方法)

一方、定款には書いてあるが登記簿には載らない項目もある。こちらを変えても登録免許税はかからない。代表的なものを挙げる。

・事業年度(決算期) ・株主総会の招集時期や議長の決め方 ・取締役の員数の上限や下限 ・取締役の任期(ただし任期の伸長に伴って役員の登記が動く場合は別) ・株主総会の議事録の作り方に関する定め ・役員報酬の決め方に関する定め

事業年度の変更がその典型で、決算期を3月から12月に動かしても、法務局へ出す書類は発生しない。株主総会で決めて議事録を残し、そのあと税務署と都道府県と市区町村へ異動届出書を出す。税務署への届け出は必要だが、そこに手数料はかからない。

言い換えると、定款変更費用の話は「定款をどう直すか」ではなく「登記簿が動くかどうか」の話である。ここを分けて考えると、金額の見積もりは一気に楽になる。

変更の種類ごとの登録免許税

登録免許税の金額は、国税庁が税額表として公開している。会社の商業登記に関する部分から、定款変更でよく登場するものを抜き出すと次のようになる。

変更の内容 登録免許税
目的、商号、公告方法など登記事項の変更 申請1件につき3万円
本店または支店の移転 1箇所につき3万円
支店の設置 1箇所につき6万円
取締役・代表取締役・監査役などの変更 申請1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円)
資本金の増加 増加した資本金の額の1000分の7(3万円未満のときは3万円)
登記の更正または抹消 申請1件につき2万円

表のうち、定款変更で最も出番が多いのが1行目である。国税庁の税額表では「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」という区分になっていて、目的の変更も商号の変更も公告方法の変更も、この区分に入る。金額は申請1件につき3万円で固定されている。

法務局が公開している目的変更の申請書の記載例を見ると、登録免許税の欄にそのまま「金3万円」と印字されている。自分で金額を計算して当てはめる必要はなく、様式の通りに収入印紙を貼れば足りる形になっている。

資本金の増加だけは計算式になっている点に注意したい。増やした資本金に1000分の7を掛けた額で、たとえば500万円増資したなら3万5,000円になる。計算した結果が3万円を下回るときは3万円になるので、少額の増資でも3万円は見ておく。

役員変更は資本金の額で金額が変わる。中小企業の多くが当てはまる資本金1億円以下の会社なら1万円で、それを超えると3万円になる。

同じ日にまとめて決めると、どこまで安くなるか

ここが定款変更費用でいちばん差が出るところである。

登録免許税は「申請1件につき」いくら、という決まり方をしている区分がある。目的の変更も商号の変更も公告方法の変更も同じ区分に入るので、同じ株主総会でまとめて決めて、ひとつの申請書で法務局へ出せば、この区分の税金は3万円で済む。目的だけを先に変えて、半年後に商号を変えると、3万円を2回払うことになる。

一方、区分が違うものは合算されず、それぞれかかる。役員の変更は別区分なので、資本金1億円以下の会社が目的の変更と役員の変更を同時に申請すると、3万円と1万円で合計4万円になる。本店の移転も別区分で、1箇所3万円が別途かかる。

区分の当てはめに迷ったときは、申請書を出す前に管轄の法務局に電話で確認するのが早い。金額が足りなければ補正の連絡が来るので取り返しはつくが、多く貼ってしまった収入印紙は手続きが増える。

実務で効いてくるのは、変更したい項目が複数あるとわかった時点で、株主総会を1回にまとめる判断である。役員の任期が切れる時期が近いなら、そこに合わせて目的の追加も一緒に決めてしまう。この程度の段取りで、支出が3万円単位で変わる。

自分で申請した場合の総額を、内訳で出す

目的を1つ追加するケースで、自分で法務局へ申請した場合の総額を出してみる。

費目 金額の目安 内容
登録免許税 3万円 収入印紙を台紙に貼って納める
株主総会議事録の作成 0円 自社で作る。紙代のみ
株主リストの作成 0円 自社で作る。紙代のみ
変更後の定款の作り直し 0円 自社で作る。認証は不要
登記事項証明書の取得 数百円 取引先や銀行に見せる分だけ
郵送費 数百円 郵送で申請する場合

合計はおよそ3万1,000円前後に収まる。登録免許税が支出のほぼ全部で、それ以外は端数と言っていい水準である。

登記事項証明書の手数料は、窓口で受け取るかオンラインで請求するかによって額が違い、オンラインのほうが安い。必要な通数が決まったら、管轄の法務局で確認して請求すると無駄がない。

収入印紙の扱いには細かい決まりがある。法務局の記載例には、印紙を貼る台紙をつけて、割印をしないで貼ること、申請書が複数ページになるときは綴じ目に契印をすること、契印には登記所に提出した印鑑を使うことが注記されている。ここを外すと補正の連絡が来て、提出し直しの手間が増える。

収入印紙又は領収証書で納付します(→収入印紙貼付台紙へ貼付)。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

専門家に頼む場合の相場と、頼んだほうが結果的に安い場面

登記の申請を代理できるのは司法書士である。定款変更に伴う変更登記を依頼した場合の報酬は、事務所によって差があるが、目的変更や商号変更のような単純な1件であれば3万円から5万円程度を提示する事務所が多い。登録免許税は別途実費としてかかるので、総額は6万円から8万円あたりに着地する。

報酬額は法律で決まっているわけではなく、事務所ごとに自由に決められる。だから見積もりを2、3件取って比べることに意味がある。比べるときは、報酬額だけでなく次の点を確認するとよい。

・登録免許税や証明書代が報酬に含まれているか、別請求か ・議事録や株主リストの作成まで含むか、会社側で用意するのか ・許認可の担当官庁への確認まで見てくれるか ・完了までの日数の見込み

自分でやったほうが安いのは間違いない。それでも依頼したほうがよい場面はある。

ひとつは、許認可と紐づいている変更のとき。建設業、宅地建物取引業、人材派遣、古物商などの許認可は、定款の事業目的の書きぶりを行政庁が見る。ここで文言を外すと、登記は通ったのに許認可の申請で差し戻される事態が起きる。登記と許認可の両方を見てもらえる相手に頼む価値がある。

もうひとつは、変更が複数の項目にまたがるとき。本店を別の法務局の管轄へ移しつつ役員も入れ替える、といった案件は、申請書が複数通になり、出す順番と出す窓口が決まっている。自力でやると補正が重なり、結局は時間で損をする。

三つ目は、期限が迫っているとき。次の節で触れるが、登記には2週間という期限がある。

2週間の期限と、遅れたときに起きること

登記簿に載っている項目に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならない。期限の起算点は株主総会で決議した日である。決議した日から数えて2週間なので、議事録を作って満足していると簡単に過ぎる。

期限を過ぎたらどうなるか。法務局が、申請が受け付けられなくなるわけではないこと、ただし代表者が過料に問われる可能性があることを明記している。

登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合 であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはありませんが、会社・法人の代表者に対して、 裁判所から100万円以下の過料に処される可能性 があります。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

過料は会社ではなく代表者個人に対して科される。金額は裁判所が事情を見て決めるもので、遅れた期間が長いほど重くなる傾向があるとされる。100万円という数字は上限であって、数週間の遅れで上限まで科されるわけではない。とはいえ、防げる支出であることに変わりはない。

もうひとつ、放置が長引いたときのリスクとして、最後の登記から12年が経過した株式会社は、みなし解散の対象になる。役員の任期が来ても登記を出さないまま何年も走っていると、ある日、解散したものとして扱われる手続きが始まる。定款変更をきっかけに登記簿を一度点検しておくと、こうした地雷を先に片づけられる。

ケース別の総額早見

よくある変更について、自分で申請した場合のおおよその総額を並べる。いずれも登録免許税に数百円の実費を足した水準である。

ケース 登録免許税 備考
事業目的を1つ追加する 3万円 目的は変更部分だけでなく、変更後の全項目を書く
会社名を変える 3万円 同じ申請で目的も変えるなら3万円のまま
目的と商号を同じ日に変える 3万円 同じ区分なので1件分
同じ法務局の管轄内で本店を移す 3万円 定款に番地まで書いてある場合は定款変更も要る
別の管轄へ本店を移す 6万円 旧所在地宛てと新所在地宛てで3万円ずつ
公告方法を官報から電子公告に変える 3万円 電子公告の場合は掲載するURLも登記する
発行可能株式総数を増やす 3万円 資本金は増えないので定率課税ではない
資本金を500万円増やす 3万5,000円 増加額の1000分の7
目的の変更と役員変更を同時に行う(資本金1億円以下) 4万円 区分が違うので合算される
事業年度を変える 0円 登記事項ではない。税務署などへの届け出は要る

本店移転のうち、別の管轄へ移すケースだけ金額が倍になる理由を補足しておく。法務局の記載例では、移転前の本店を管轄する登記所宛ての申請書と、移転後の本店を管轄する登記所宛ての申請書を2通作り、両方を移転前の登記所へ同時に出す形になっている。申請が2件になるので、3万円が2回分かかる。

なお、定款に本店の所在地を「東京都目黒区」のように市区町村までしか書いていない会社は、同じ区の中での引っ越しなら定款変更そのものが不要になる。それでも登記簿には具体的な番地が載っているので、本店移転の登記は必要で、3万円はかかる。定款変更と登記が別々に動くことがよくわかる例である。

支出を減らすために、着手前にやっておく5つのこと

金額そのものは値切れないので、減らせるのは「回数」と「やり直し」である。順番に見ていく。

1つ目は、今の定款と登記簿を並べて見ること。会社の中にある定款と、法務局の登記簿の内容が食い違っている会社は珍しくない。過去に登記だけ出して定款を直し忘れているケースがあるからだ。先に両方を突き合わせておくと、今回の変更でまとめて直せる項目が見つかる。

2つ目は、変えたい項目をすべて洗い出してから株主総会を開くこと。前述の通り、同じ区分の変更は1件にまとめられる。「あとで考える」を1つ残すと、そのために3万円をもう一度払うことになる。

3つ目は、許認可を持っている会社なら、目的の文言を担当官庁に先に見てもらうこと。登記を出してから文言不足がわかると、目的の変更をもう一度やることになる。

4つ目は、法務局の申請書様式をそのまま使うこと。ゼロから作ると記載漏れが出る。様式には注記が入っていて、どこに何を書くかが全部書いてある。

5つ目は、オンライン申請を検討すること。法務局は電子証明書を持っていない会社向けに、二次元バーコードをつけた書面申請の方法も案内している。郵送や窓口に行く時間が減る分、実質的なコストは下がる。

見落としがちな「登記のあと」にかかる費用

登録免許税だけを見積もって安心していると、登記が終わったあとに小さな支出が続けて発生することがある。会社名や本店を変えたケースでは特に多い。

・銀行口座の名義変更に伴う、登記事項証明書の取得(複数通) ・会社印や角印の作り直し ・名刺、封筒、契約書ひな形、請求書テンプレートの差し替え ・ウェブサイトの表記と特定商取引法に基づく表記の修正 ・取引先への通知 ・許認可を持っている場合の変更届(官庁によっては手数料がかかる)

これらは1つずつは小さいが、合計すると登録免許税と同じくらいの額になることがある。会社名の変更を検討している段階で、この分まで含めて判断したほうがよい。

事業目的の追加だけなら、こうした付随費用はほとんど発生しない。登記簿の目的欄が増えるだけで、会社の名前も住所も変わらないからである。費用対効果で見れば、目的の追加はかなり安い部類の手続きになる。

現場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと発注企業の間を20年近く見てきた立場から言うと、法人化したあとに定款変更でつまずく人には共通点がある。設立のときに「あとで使うかもしれない事業」を目的に入れておかなかったケースと、逆に入れすぎたケースの両極に分かれるのである。

入れなかった側は、新しい仕事の依頼が来たときに登記簿を見られて止まる。大きめの会社ほど、取引の前に相手の登記簿を取って、目的欄に該当する事業が書いてあるかを確認する。書いていないと、その場で契約が進まない。ここで3万円と2週間を使うことになる。

入れすぎた側は、金融機関の評価で説明を求められることがある。目的が20項目も並んでいて、実際にやっている事業が1つだけだと、何の会社なのかが伝わらない。定款変更費用を惜しんで最初に全部盛り込む戦略は、意外と後ろで代償を払う。

運営者として見てきた限りでは、3年目か4年目に一度、目的欄を見直している会社がいちばん安定している。実際に始めた事業と、これから半年以内に着手する見込みのある事業だけを載せ、要らなくなったものは削る。回数は増えるが、1回あたりの判断が速くなるぶん、やり直しが減る。

もうひとつ、額面と手取りの話をしておきたい。法人化する人の多くは、報酬の額面が上がることを期待して会社を作る。ところが実際に手元に残る額を押し上げるのは、単価そのものよりも、間に入る手数料が乗らない取引の比率であることが多い。仲介手数料が差し引かれない直接の取引は、同じ予算でも依頼する側はより多く頼めるし、受ける側は手取りが厚くなる。手数料0%で取引できる場を持っているかどうかは、定款変更の3万円を何回払えるかという足元の体力に直結する。

職種別に見た、定款の目的欄を整える意味

法人化して受注する側に回ると、登記簿の目的欄はそのまま営業資料の一部になる。どんな仕事を受けられる会社なのかが、第三者に確認できる形で書いてあるからだ。

たとえばシステム開発を受ける会社なら、受託開発だけでなく保守運用や技術支援まで目的に含めておくと、契約の幅が広がる。どういう案件が実在するかはアプリケーション開発のお仕事にまとまっていて、発注側が何を頼みたがっているかを見ながら目的の文言を決められる。単価の水準を確認したいならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になる。

生成AIまわりの支援を事業に加えるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、実際に募集されている業務の名前を拾っておくとよい。目的の文言は、自分の頭の中の言葉ではなく、市場で使われている言葉で書いたほうが通じる。

文章を書く仕事を事業の柱にする場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で報酬の相場感を押さえたうえで、編集、制作、企画といった周辺業務まで目的に含めるかを決める。書類のやり取りが増える法人では、ビジネス文書検定のような文書作成の基礎を持っている人が社内にいると、議事録や株主リストを自分で作る負担が目に見えて軽くなる。技術系の会社ならCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、目的欄に書いたネットワーク関連事業の実体を裏づける材料になる。

目的を1つ追加する会社の、決議から完了までを日付順に並べる

費用の内訳がわかっても、いつ何をするのかが見えていないと期限に間に合わない。目的を1つ追加するだけのケースで、やることを日付の順に置いてみる。

1日目、追加したい事業の文言を決める。許認可がからむ事業なら、この段階で所管の官庁に文言を見てもらう。ここを飛ばすと、登記が通ったあとに許認可の窓口で文言不足を指摘され、もう一度3万円を払うことになる。

2日目から4日目、今の定款と登記事項証明書を取り寄せて並べる。定款の目的の条文と、登記簿の目的欄が一致しているかを確認する。過去の変更が片方にしか反映されていない会社は、この機会にまとめて直す。

5日目、株主総会の招集を決める。全株主の同意があれば招集の手続きを省略できるが、その場合も決議した記録は残す。株主が少ない会社は、書面で全員の同意を取って決議に代える方法も使える。

6日目、株主総会を開く。目的の変更は定款の変更なので、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要る。議事録はその日のうちに作る。

7日目、株主リストを作る。議決権数の上位10名か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主のうち、少ないほうについて作る。書面で同意を取って決議に代えた場合も株主リストは必要になる。

8日目、申請書を作る。目的の欄には、追加した部分だけでなく変更後の目的を全部書く。収入印紙3万円を台紙に貼り、消印は押さずに出す。総会の日から2週間以内に出すので、ここまでに片付けておけば余裕がある。

9日目から16日目、登記が終わるのを待つ。この間はその会社の登記事項証明書と印鑑証明書が出ない。取引先に謄本を出す予定があるなら、この期間を避けて組む。

17日目以降、登記事項証明書を取って目的欄を確認する。許認可の窓口への届出があればここから動く。会社の中の定款ファイルも、変更後の内容に差し替えて保管する。

帳簿にどう書くか

登録免許税と専門家の報酬は、帳簿の扱いが違う。ここを混ぜると消費税の計算と源泉徴収の両方がずれる。

自分で申請して、収入印紙3万円を買って納めた場合の仕訳は次のようになる。

・租税公課 30,000/現金 30,000

登録免許税は税金なので租税公課で受ける。消費税はかからない。

司法書士に頼んで、報酬4万円、消費税4,000円、立て替えてもらった登録免許税3万円、合計7万4,000円の請求書が来た場合は、源泉徴収が入る。国税庁は司法書士等に支払う報酬の源泉徴収について、同一人に対して1回に支払われる金額から1万円を差し引いた残額に10.21パーセントを乗じて計算するとしている。報酬4万円なら、4万円から1万円を引いた3万円に10.21パーセントを掛けて3,063円になる。1円未満は切り捨てる。

司法書士等に支払う金銭等であっても、支払者が国等に対し登記、申請等をするため本来納付すべきものとされる登録免許税、支払手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなものについては、源泉徴収をする必要はありません。 出典: nta.go.jp

つまり、立て替え分の3万円は源泉徴収の対象に入れない。請求書で報酬と立替金が分かれて書かれているかを確認する。仕訳は次のようになる。

・支払手数料 40,000/現金預金 70,937 ・仮払消費税等 4,000/預り金 3,063 ・租税公課 30,000

預り金として引いた3,063円は、原則として支払った月の翌月10日までに納める。源泉所得税の納期の特例を受けている会社は、1月から6月までの分を7月10日、7月から12月までの分を翌年1月20日までに納める。ここを忘れると、金額は小さいのに不納付加算税の対象になる。

なお、どの科目で受けるか、どの事業年度の費用にするかは、会社の状況によって扱いが変わることがある。締めの処理に入れる前に、税務署か顧問の税理士に確認してほしい。

勘違いしやすい5つ

1つ目は、定款を直すたびに公証人の認証が要ると考えること。認証が必要なのは設立当初の定款だけである。

2つ目は、変更後の定款を法務局に提出しなければならないと考えること。目的の変更で添付するのは株主総会議事録と株主リストで、定款そのものは通常添付しない。書き換えた定款は会社の中に保管する。

3つ目は、目的を2つ追加したら登録免許税が2倍になると考えること。登記事項の変更は申請1件につき3万円で、同じ申請で何項目変えても金額は変わらない。

4つ目は、事業年度を変えたら登記が必要だと考えること。事業年度は登記事項ではないので、法務局への手続きは発生しない。税務署と都道府県と市区町村への異動届出書だけである。

5つ目は、定款に市区町村までしか本店を書いていない会社なら、同じ区の中の引っ越しで手続きが何も要らないと考えること。定款変更は不要でも、登記簿には番地まで載っているので本店移転の登記は必要で、3万円はかかる。

数字で見る、定款変更費用の全体像

ここまでの内容を、支出の性質で3つに分けて整理する。

1つ目は、必ずかかる税金。登録免許税で、金額は国が決めている。目的や商号の変更なら3万円、資本金の増加なら増加額の1000分の7である。ここは削れない。

2つ目は、選べる費用。専門家への報酬がこれにあたる。自分でやれば0円、頼めば3万円から5万円程度。判断材料は金額ではなく、案件の複雑さと期限までの日数である。

3つ目は、失敗したときだけかかる費用。期限を過ぎたときの過料、文言が足りずにやり直す2回目の登録免許税、許認可が通らずに生じた機会損失。この3つ目を0円に抑えられるかどうかで、同じ変更をしても総額が倍近く変わる。

支出を管理するという意味では、1つ目は計算するだけ、2つ目は見積もりを取って決めるだけ、そして手間をかける価値があるのは3つ目の予防だけ、ということになる。

契約や書類のトラブルを避ける発想は、法人の手続きに限った話ではない。取引先との条件をどう固めるかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されていて、発注書に何を書いておけば後で揉めないかがわかる。万一回収でつまずいたときの費用感は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が詳しい。会計まわりを自社で回すか外に出すかを考えている段階なら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】で、専門家側がどういう働き方をしているかを知っておくと依頼の仕方が変わる。

なお、税務上の取り扱いについては、会社の規模や事情によって判断が変わる部分がある。登録免許税を経費としてどの科目でいつ計上するかといった点は、一般には支払った事業年度の損金として扱われるが、金額や状況で扱いが変わることがあるので、税務署か顧問の税理士に確認してから処理してほしい。

最後にもう一度だけ整理しておく。定款変更費用は、定款を直す作業に対して発生するのではない。登記簿が動いたときにだけ、国が決めた額で発生する。だから見積もりの第一歩は、変えたい項目が登記簿に載っているかどうかを確かめることである。ここさえ押さえれば、数字は自動的に決まる。

よくある質問

Q. 定款を変更するだけなら、本当に費用はかかりませんか?

かかりません。株主総会で決議して議事録を残し、会社内の定款を差し替えるところまでは支払いが発生しません。日本公証人連合会も、公証人の認証が必要なのは設立当初の定款だけで、その後の変更には不要だと明記しています。費用が発生するのは、変えた項目が登記簿にも載っていて変更登記が必要になる場合です。

Q. 事業目的を2つ同時に追加したら、登録免許税は2倍になりますか?

なりません。目的の変更は申請1件につき3万円という区分なので、同じ株主総会で決めてひとつの申請書で出せば、追加する目的が何個でも3万円です。ただし、目的の変更と役員の変更のように区分が違うものを同時に申請する場合は、それぞれの金額が合算されます。

Q. 司法書士に頼むと総額でいくらくらいになりますか?

目的変更や商号変更のような単純な1件であれば、報酬が3万円から5万円程度、これに登録免許税3万円が実費として加わり、総額6万円から8万円あたりが目安です。報酬額は事務所ごとに自由に決められるので、見積もりを複数取り、登録免許税や証明書代が含まれているかを確認してください。

Q. 登記を2週間以内に出し忘れたら、どうなりますか?

期限を過ぎても申請そのものは受け付けられますが、法務局は代表者が裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があると案内しています。過料は会社ではなく代表者個人にかかります。決議した日から2週間が起算点なので、議事録を作った時点で申請日を先に決めておくと確実です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月15日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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