助産師の講師・講座の仕事


この記事のポイント
- ✓助産師 講師 副業を考えている方へ
- ✓個人指導という4つの型ごとに
- ✓契約と資格表示の注意点までを実務の順番で整理します
助産師 講師 副業と検索する方の多くは、すでに人前で話した経験を持っています。母親学級を担当していた。院内の勉強会で新人に教えていた。地域の講座に呼ばれたことがある。そのときに「これ、仕事にできるのでは」と思いながら、値段の付け方も、誰に売ればいいのかも分からずに止まっている。この状態の方が、とても多いのです。
結論から書きます。助産師が教える側に回る仕事は、成立します。ただし成立の仕方が、勤務先で講座を担当していたときとはまったく違います。勤務先では、集客も会場も資料の印刷も、施設側が用意してくれていました。外に出ると、その全部が自分の仕事になります。逆に言えば、その部分を設計できれば、時間あたりの報酬は勤務よりかなり高くなります。この記事では、4つの型ごとに仕事の中身と値付けを整理し、最初の1講座をどう組み立てるかまでを書きます。資格の取り方の話はしません。すでに資格を持っている方が、それを講座に換えるための順番だけを扱います。
教える側の需要が伸びているのは、どの現場か
いま助産師に講師の声がかかる場面は、以前より広がっています。理由は3つあります。
第一に、自治体の母子保健の事業が、外部委託を増やしていること。人員が限られる中で、教室や相談会を職員だけで回すのが難しくなり、資格を持つ外部の人に業務委託する形が定着してきました。第二に、企業が従業員向けの健康支援に予算を付けるようになったこと。不妊治療と仕事の両立、産休・育休からの復職支援、女性の健康課題といったテーマで、外部講師を呼ぶ研修が増えています。第三に、オンラインの講座が当たり前になったこと。会場を押さえる必要がなくなり、参加者が全国に散っていても成立するようになりました。
求人の側からも、資格を持つ人に短時間で関わってほしいという姿勢が見えます。
【仕事内容】[登録制]単発1日 月1・週1など選べる 健診・時給2100円~!単発OK/1日4H スキマ時間やWワークに!健診 【経験・資格】<必須> 正看護師 准看護師 保健師 助産師上記いずれかの資格保持者 出典: 求人ボックス
こうした単発・短時間の募集は、時給で換算されています。講師の仕事も入口はここに近いのですが、決定的に違う点がひとつあります。健診の応援は自分の時間を売る仕事で、上限は時間数で決まります。講座は、一度作った内容を繰り返し使えます。同じ90分の講座を年に10回実施すれば、準備の時間は初回にしかかかりません。ここが、講師という選択の本質です。
助産師の講師の仕事は、4つの型に分かれる
同じ「講師」でも、依頼元によって求められるものが違います。自分がどれを取りに行くかを決めないまま動くと、準備が散らかります。
自治体や施設から委託される教室
母親学級、両親学級、産後の教室、離乳食や卒乳の相談会。自治体、保健センター、産科クリニック、産後ケア施設が発注元になります。報酬は1回2時間で1万円から3万円程度が目安で、交通費が別途出る場合が多い。
この型の良いところは、集客をこちらでやらなくてよいことです。参加者は自治体の広報や施設の案内から集まります。悪いところは、単価が上げにくいこと。予算が先に決まっているため、交渉の余地が小さい。ただし継続の依頼になりやすく、年間の予定が読めるという安定感があります。最初の実績を作る場としては、この型がいちばん入りやすいと考えてください。
企業の研修やセミナー
従業員向けの健康セミナー、管理職向けの両立支援研修、女性向けの健康リテラシー講座など。人事部や健康経営の担当部署が発注元になります。報酬は1回60分から90分で3万円から10万円程度と幅がありますが、4つの型の中では最も高い部類です。
求められるのは、医療の正確さに加えて、企業の文脈に翻訳する力です。「この症状にはこう対処します」だけでは足りず、「だから管理職はどう声をかけるべきか」「制度としてどう整えるか」まで踏み込むと評価されます。ここは、産業保健や労務の周辺知識が効いてきます。
オンラインの講座
録画した講座を販売する形と、日時を決めてライブで実施する形があります。ライブは1人3,000円から8,000円、少人数制なら1万円を超える設定もあります。録画販売は単価を下げて本数で回す形になります。
この型だけは、集客が自分の仕事になります。作れば売れるということはありません。開催まで何をするかを先に決めておかないと、参加者ゼロで中止という結果になります。逆に、集客の経路が作れれば、会場費も移動時間もかからないので、時間あたりの効率は最も高くなります。
個人向けの少人数指導
出産準備の個別レッスン、上の子がいる家庭向けの相談、里帰りしない出産の準備など、1組から数組を対象にした指導です。60分5,000円から1万5,000円程度の設定が多く見られます。
満足度は高くなりやすい一方で、時間の切り売りになりやすい型でもあります。相談が長引いても追加料金を取りにくく、感情的な負荷も大きい。この型を主軸にするなら、時間の区切りと、対応しない範囲を最初に明記しておく必要があります。
値付けは、時間ではなく「準備を含めた総時間」で考える
講師の報酬でいちばん多い失敗は、実施時間だけを見て値段を決めることです。90分の講座に2万円なら悪くない、と思って受ける。ところが実際には、資料の作成に6時間、打ち合わせに1時間、移動に2時間、終了後の報告書に1時間かかっていた。合計11.5時間で2万円ですから、時間あたりでは勤務より低い。これが、初回の講座でほぼ全員が通る道です。
対処は2つあります。ひとつは、見積もりの段階で総時間を数えること。実施時間の5倍から8倍が初回の総作業時間だと見ておくと、大きく外しません。もうひとつは、同じ内容を再演する前提で組むことです。初回の準備コストは、2回目以降で回収されます。だから最初の1本は、単発で使い捨てになるテーマではなく、繰り返し依頼が来そうなテーマで作るべきです。
見積書に書いておく項目も決めておきます。実施料、資料作成費、交通費、オンラインの場合の配信環境費、そしてキャンセル料。特にキャンセル料は、口頭では決まりません。実施日の7日前までは無料、それ以降は50%、前日以降は100%といった段階を書面に残してください。準備が終わったあとの直前キャンセルは、実際によく起きます。
仲介を挟む場合は、手数料の確認も先にしてください。15%から20%の手数料がかかる仕組みだと、3万円の講座は実質2万4,000円になります。年間30回登壇すれば、差額は13万5,000円から18万円です。手数料0%で直接受けられる経路を1つ持っておくと、同じ登壇数でも手取りが変わります。
最初の1講座を、どう組み立てるか
作り方の順番を間違えると、時間だけかかって完成しません。実務的には、次の順で進めるのが早い。
最初にやるのは、対象を1つに絞ることです。「妊婦さん向け」では広すぎます。「初めての出産を控えた妊娠28週から34週の方で、里帰りせずに出産する予定の人」まで絞る。絞ると内容が具体的になり、参加者は自分のことだと分かって申し込みます。
次に、講座が終わったときに参加者が何をできるようになっているかを1文で書きます。「知識が身につく」では設計になりません。「入院バッグの中身を自分で決められる」「陣痛が来たときに誰に何を連絡するかの順番が決まっている」といった、行動で書ける到達点にします。
そこまで決まってから、中身を並べます。90分の講座なら、扱えるのは大きな話題3つまでです。それ以上詰め込むと、参加者は何も持ち帰れません。各話題に20分を割り、残りを導入と質疑に使う。この配分が基本形です。
資料は、話す原稿と配布物を分けて作ります。配布物には、講座中に埋める空欄を入れておくと集中が続きます。医療の内容を扱う部分については、参照した公表資料の出典を資料の末尾に載せてください。参加者から根拠を尋ねられたときに答えられますし、依頼元からの信頼も変わります。
資格名と講座名の表示は、確認してから決める
ここは慎重に扱う必要があります。助産師の資格は保健師助産師看護師法に定めがあり、名称の使用や業務の範囲について同法に規定があります。講座の告知で肩書きをどう書くか、どこまでの内容を「できる」と示すかは、この規定に関わります。
実務上、判断が必要になるのは次のような場面です。講座名に医療行為を連想させる語を入れてよいか。個別の相談に応じる形にしたとき、それが指導の範囲に収まるのか。医療機関ではない主体が、診療に類する印象を与える広告を出していないか。これらは一律に線が引けるものではなく、内容と表示の仕方によって判断が変わります。
だから、自分で結論を出さないでください。医療に関する広告の考え方については厚生労働省が指針を示していますし、自治体の保健所に確認する経路もあります。勤務先がある方は、施設の規定に照らして問題がないかを先に確認するのが確実です。告知は公開されて残るものなので、後から直せばよいという性質のものではありません。
契約面で確認しておくとよい観点は、業務委託契約の一般的なチェック項目と重なります。契約書の作成を扱う資格の全体像は行政書士にまとまっており、どの条項に注意すべきかの見当をつけるのに役立ちます。
集客は、順番を守ると無理がない
オンライン講座や個人向け指導では、集客が自分の仕事になります。ここで多くの方がつまずくのは、順番を飛ばすからです。
正しい順番は、まず既につながっている人に案内することです。勤務先の同僚、以前の教室の参加者、地域のつながり。20人に個別に案内して3人集まれば、初回としては十分です。次に、その3人に感想をもらいます。感想は次回の告知でそのまま使えます。この2段階を踏まずに、いきなり不特定多数への発信を始めると、実績がないまま宣伝することになり、時間だけが溶けます。
継続の依頼を取りに行くなら、実施後の報告が効きます。参加者の反応、出た質問、次に扱うとよいテーマを、A4で1枚にまとめて依頼元に渡す。30分ほどの作業ですが、これを出す講師はほとんどいません。次年度の予算を組むとき、担当者の手元に残っている資料が判断材料になります。
キャリアや働き方をテーマにした相談の仕事も、講座と相性がよい領域です。どんな依頼が来るのかはキャリア・副業・人生相談のお仕事にまとまっています。研修や講師の依頼が、企業向けのコンサルティングと同じ経路で来ることも多く、その実態はITコンサルティング・講師のお仕事を見ると分かります。資格を軸に教える側へ移った人の進め方はキャリアコンサルタント資格の活かし方|副業・独立ガイド【2026年版】が具体的で、値付けと集客の順番が参考になります。
契約で決めておく3つのこと
講師の仕事は、口約束で進みやすい領域です。あとで揉めやすい点は決まっているので、3つだけ書面にしてください。
ひとつめは、録画と資料の扱いです。オンライン講座は録画されることが多く、その録画が後日どう使われるかを決めていないと、知らないうちに繰り返し配信されていた、という事態が起きます。録画の保存期間、二次利用の可否、社内共有の範囲を明記します。配布資料についても同じで、依頼元が別の回で使い回すかどうかを決めておきます。
ふたつめは、中止と延期の条件です。天候、感染症の流行、参加者が集まらないといった理由での中止は、実際に起きます。誰の判断で中止できるのか、そのときの報酬はどうなるのかを決めておく。前述のキャンセル料の段階を、そのまま契約書に入れれば足ります。
みっつめは、報酬の支払時期です。実施から入金までの日数を明記します。取引の形態によっては、報酬の支払期日について法律上の定めが関わる場合があります。書面がない状態で進めると、支払いが遅れたときに主張の根拠がなくなります。契約書が用意されない相手であっても、条件をメールで列挙して返信をもらっておけば記録になります。数分の手間で、後の面倒がなくなります。
扱えるテーマを棚卸しすると、企画が出てくる
何を教えるかが決まらない、という相談は多いのですが、これは発想が足りないのではなく、棚卸しをしていないだけです。手順は単純で、勤務の中で「同じ説明を何度もした」場面を書き出すだけです。何度も説明したということは、それだけ多くの人が知らないということで、そのまま講座の候補になります。
書き出すと、だいたい次のような領域が並びます。妊娠中の体重管理と食事、入院までの準備と連絡の段取り、陣痛の始まりの見分け方、立ち会いのときに家族ができること、授乳の姿勢と乳房のトラブル、産後の睡眠と回復、上の子への対応、里帰りしない場合の生活設計。どれも、外来で繰り返し説明してきた内容のはずです。
このうち、講座として売りやすいのは、参加者が期限を意識しているテーマです。出産予定日が近い人は、準備の講座に申し込みます。復職の日が決まっている人は、両立の講座に申し込みます。逆に、期限のないテーマは「そのうち」になり、申込につながりにくい。棚卸しの結果を並べたら、期限があるものから順に手をつけてください。
企業向けを狙う場合は、視点をもう一段変えます。企業が予算を出すのは、従業員個人の悩みそのものではなく、それが業務に与える影響が見えたときです。不妊治療と仕事の両立で離職が出ている、育休からの復職後に短期間で辞める人が続いている、月経に伴う体調不良で欠勤が増えている。こうした課題に対して、医療の知識から何が言えるかを組み立てると、研修の企画になります。同じ知識でも、誰の課題として提示するかで、値段が変わります。
自治体向けなら、事業年度を意識してください。多くの自治体は、翌年度の事業計画を秋から冬にかけて固めます。その時期に企画を持ち込むと検討の俎上に載りますが、年度が始まってからでは予算がありません。売り込みの時期そのものが、成否を分けます。
勤務を続けながら回すための時間の設計
講師の仕事は、実施日が固定されるため、勤務との調整が難しく見えます。実際に続けている方の進め方には、共通した形があります。
第一に、受ける曜日を先に決めています。夜勤明けの翌日は入れない、月に登壇は2回まで、といった上限を自分で決めてから依頼を受ける。依頼が来てから調整すると、断りづらくなって無理をします。
第二に、資料を作り直さない仕組みを持っています。1つの講座を作ったら、その一部を差し替えるだけで別の対象に転用できる形にしておく。90分の講座を60分版と120分版に分けておくと、依頼の枠に合わせられて断る理由が減ります。
第三に、オンラインを軸に置いています。会場に出向く講座は、移動を含めると半日が消えます。オンラインなら、前後30分の準備で終わる。勤務と並行する時期は、移動の要らない形を主軸にしたほうが続きます。
つまずきやすい場面を、先に知っておく
講師の仕事で相談が多いのは、実は講座の中身ではありません。周辺で起きることです。
多いのが、参加者から個別の相談を持ちかけられる場面です。講座の後に残って、自分の症状について具体的に聞かれる。答えたくなりますが、講座の場で個別の判断を示すのは範囲を越える可能性があります。「この場では一般的な説明までにして、状況の判断はかかりつけで相談してください」と伝える言い方を、あらかじめ用意しておいてください。
次に多いのが、依頼元から内容の変更を求められる場面です。企業の研修で、特定の商品やサービスに触れてほしいと言われることがあります。これは、専門家としての立場を使った宣伝になりかねません。受けるかどうかは、表示の仕方も含めて慎重に判断する必要があります。断る場合の言い方も、契約前に決めておくと迷いません。
もうひとつ、資料の中で使う図表や写真の出所です。書籍や他のサイトから持ってきた図をそのまま資料に貼ると、著作権の問題になります。公表されている資料には利用の条件が定められていることが多いので、出所と条件を確認してから使ってください。自分で作図するほうが、結果的に早い場合もあります。
報酬の水準を、他の講師の仕事と比べておく
自分の講座に値段を付けるとき、比較する相手がいないと決められません。同じ「教える」という仕事でも、分野によって水準が違うので、いくつか見ておくと目安ができます。
技術系の研修講師は、専門性が高く代替が効かないほど単価が上がります。その相場感はソフトウェア作成者の年収・単価相場に整理されていて、指名で仕事が来る状態がどのくらいの水準になるのかが分かります。教材や資料を書く仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になり、講座の資料作成を別建てで請求するときの根拠になります。企業向けの研修がどんな経路で発注されるかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事を見ると具体的に分かります。
こうして並べると、共通する原則が見えてきます。単価が高いのは、話がうまい人ではなく、その内容を話せる人が少ない場合です。助産師の講座が値崩れしにくいのは、まさにここに理由があります。資格の要件があるため、参入できる人が限られる。だから、単価を下げて競争する必要がありません。むしろ、安く受けることで「その程度の内容だ」と見なされる損のほうが大きい。
もうひとつ、資格を持つ人が講師業を伸ばすときの型として、コンサルティングに寄せていく道もあります。管理職向けの研修から、制度設計の相談へ広がる流れです。同じ構造の事例はマンション管理士の副業|管理組合のコンサルティング【2026年版】にまとまっていて、単発の登壇から継続の関与へ移る過程が具体的に書かれています。
講座を受けた人が、次の依頼を連れてくる
講師の仕事が広がっていく経路は、宣伝ではありません。受講した人からの紹介です。母親学級に参加した人が、勤務先の健康担当だった。自治体の教室に来ていた保健師が、別の部署の事業を紹介してくれた。こうした流れが、実際にはいちばん多い。
だから、講座の最後に何を伝えるかが重要になります。宣伝めいたことを言う必要はありません。次にどんなテーマを扱えるのかを、一言だけ添えておく。「今日は出産までの準備を扱いましたが、産後の生活の組み立てについても講座があります」と伝えておけば、必要になったときに思い出してもらえます。
連絡先の渡し方も決めておいてください。名刺でも、案内の紙でも構いませんが、その場で渡せるものが手元にないと機会が消えます。載せる情報は、名前、資格名、扱えるテーマ、連絡の方法の4つで足ります。細かい経歴は要りません。
受講者からの感想は、書面でもらう仕組みにしておきます。口頭の「よかったです」は記録に残りませんが、紙に書かれた一文は次の告知にも、依頼元への提案にも使えます。回収の手間は、講座の最後に3分取るだけです。この3分を惜しむと、実績が積み上がりません。
紹介で仕事が来る状態になると、集客に使っていた時間がまるごと空きます。その時間を次の講座の準備に回せるので、内容が良くなり、また紹介が増える。この循環に入るまでに必要なのは、特別な才能ではなく、終わったあとの数分の習慣です。
講師として動き始めると、勤務先での経験の見え方が変わってきます。日々の説明の一つひとつが、そのまま教材の素材になっていることに気づくからです。同じ現場に立っていても、教える前提で見るかどうかで、記録の取り方も、質問への答え方も変わってきます。これは資格を取り直さなくても得られる変化で、外に出る準備としては最も効きます。
もうひとつ付け加えると、講座を1本作った経験は、他の仕事にも転用できます。研修の設計ができる人は、資料の作成も、相談の対応も、同じ組み立て方で進められるからです。教える仕事を選ぶことは、1つの収入源を増やすというより、持っている知識の出口を増やすことに近いと考えてください。
運営者として見てきた、続く講師の共通点
在宅と業務委託の受発注を長く見てきた立場から、ひとつ観察をお伝えします。講師として続いている人は、話が上手な人ではありません。依頼元の手間を減らす人です。
具体的には、告知に使える文章と写真を自分から渡す。当日の進行表を先に送る。終わったあとに報告を1枚出す。どれも大きな作業ではありませんが、受け取った担当者は、次に人を探す手間が省けることを知ります。講師を探すのは面倒な仕事なので、「この人に頼めば楽だ」という記憶が、次の依頼を呼びます。
もうひとつ、手取りの話をしておきます。仲介手数料が乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くの回数を頼めますし、受ける側は同じ登壇数で手取りが厚くなります。これは単に金額の問題ではありません。手取りに余裕があると、準備に時間をかけられます。準備に時間をかけた講座は評価が上がり、再演の依頼が来る。20年この市場を見てきた実感として、直接取引の本当の効き目は、この循環が回り始めるところにあります。
助産師として現場で積み上げてきたものは、そのままでは外の人に見えません。講座という形にして初めて、必要としている人に届きます。最初にやることは、対象を1つに絞って紙に書くこと。そこから先は、順番通りに進むだけです。
よくある質問
Q. 人前で話した経験が母親学級だけでも、講師の仕事は受けられますか?
受けられます。自治体や産科施設からの教室の委託は、教える内容が勤務中に担当していたものと重なるため、最初の実績を作る場として入りやすい型です。報酬は1回2時間で1万円から3万円程度が目安で、集客は依頼元が担うため準備に集中できます。ここで実績を作ってから、企業研修やオンライン講座へ広げる順番が現実的です。
Q. オンライン講座の値段は、どう決めればよいですか?
実施時間だけで決めないことが大切です。初回は実施時間の5倍から8倍の準備時間がかかるため、その総時間で採算を見ます。ライブ形式なら1人3,000円から8,000円が一般的な水準で、少人数制ならさらに高い設定もあります。同じ内容を繰り返し実施する前提で組むと、2回目以降に準備コストを回収できます。
Q. 講座の告知で、助産師という資格名はどう書けばよいですか?
資格の名称の使用や業務の範囲は保健師助産師看護師法に定めがあり、医療に関する広告の考え方については厚生労働省が指針を示しています。講座名や告知文の表現が指針に触れないかは内容によって判断が変わるため、自分で結論を出さず、保健所や勤務先の規定に照らして事前に確認してください。
Q. 直前にキャンセルされたとき、報酬は請求できますか?
契約でキャンセル料を定めていれば請求できます。定めがないと交渉になり、実務上は回収が難しくなります。実施日の7日前までは無料、それ以降は50%、前日以降は100%といった段階をあらかじめ書面に残しておくのが確実です。契約書が用意されない相手でも、条件をメールで送って返信をもらえば記録になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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