合同会社に株主名簿は要るのか|代わりに作る書類

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合同会社に株主名簿は要るのか|代わりに作る書類

この記事のポイント

  • ✓合同会社には株式がないため
  • ✓株主名簿という書類そのものが存在しません
  • ✓では出資者の情報はどこに残るのか

合同会社の株主名簿を作ろうとして、ひな形を探しても見つからない。そういう行き止まりにぶつかった人のために、最初に答えを書きます。合同会社に株主名簿はありません。存在しない書類なので、作りようがないのです。理由は単純で、合同会社は株式を発行しないからです。株式がないので株主もいません。出資した人は「社員」と呼ばれ、その情報は株主名簿ではなく定款に書かれます。とはいえ、金融機関や取引先から「社員名簿を出してください」と言われる場面は実際にあります。この記事では、合同会社で出資者の情報がどこに記録されるのか、何を作れば求めに応えられるのか、そして社員が増減したときに何をするのかを、会社法の条文にあたりながら整理します。

株主名簿が存在しない理由

株主名簿は、会社法121条が株式会社に対して作成を義務づけている帳簿です。条文の主語は「株式会社」であり、持分会社である合同会社は対象に入っていません。そして合同会社には株式という概念自体がありません。出資者が持っているのは株式ではなく「持分」です。

持分とは、その会社に対する出資者の地位そのもののことです。株式のように1株、2株と数えるものではなく、社員1人につき1個、という考え方をします。株式会社なら100株のうち60株というように分けて数えますが、合同会社では「出資額が全体の何割か」で表します。数え方の単位から違うので、株主名簿と同じ形の書類を作ろうとしても噛み合いません。

司法書士事務所も、この行き違いが実際に起きていることを書いています。

合同会社を設立した会社様から、ときどき「社員名簿」なる書類を作成するように求められることがあります。お金を借りようとする金融機関から求められているということが多いのですが、そもそも合同会社には「社員名簿」という書類は存在しているのでしょうか? 出典: pright-si.com

会社法は、合同会社に対して社員名簿という名前の書類を作れとも言っていません。つまり、株主名簿も社員名簿も、法律上の作成義務はないということです。ではどこを見れば出資者が分かるのか。その答えが定款です。

「社員」は従業員のことではない

先に言葉を整理しておきます。会社法でいう社員とは、その会社に出資している人のことです。日常会話で言う社員、つまり雇われて働いている人は、会社法では従業員や使用人と呼ばれます。合同会社の書類を読むときは、この切り替えができていないと意味が反転します。

合同会社の社員は、全員が有限責任社員です。会社法576条4項が、合同会社を設立する場合は社員の全部を有限責任社員とする旨を定款に書くよう求めています。有限責任とは、会社が倒れたときに、出資した額を限度としてしか責任を負わないということです。会社法580条2項がこの範囲を定めています。個人事業のように自分の財産まで追われることがない、というのが法人化する動機の一つになっています。

そして合同会社の社員は、原則として全員が業務を執行します。会社法590条1項が、社員は定款に別段の定めがある場合を除いて持分会社の業務を執行する、と定めているからです。出資した人が同時に経営者でもある、というのが基本形です。株式会社のように、お金だけ出して経営には関わらない立場が標準ではありません。

ただし定款で「業務を執行する社員」を限定することもできます。この場合の業務執行社員は、株式会社の取締役に近い立場になります。

業務執行社員とは、合同会社の中で実際に業務を執行する社員のことです。株式会社における取締役に近いといえます。業務執行社員は、出資者(社員)の中から定める役職で、とくに定めがない場合は、社員全員が業務執行社員となります。 出典: vs-group.jp

さらにその中から代表社員を決めることもできます。会社法599条3項により、定款または定款の定めにもとづく社員の互選で、業務を執行する社員の中から代表社員を定められます。代表社員を決めなければ、業務を執行する社員が各自で会社を代表します。

なお、合同会社は1人でも設立できます。「合同」という言葉から複数人が必要に見えますが、社員が1人の合同会社は普通に存在します。その場合、定款に書かれる社員も1人です。

出資者の情報が載るのは定款

会社法576条1項は、持分会社の定款に必ず書かなければならない事項として、次の6つを挙げています。

・目的
・商号
・本店の所在地
・社員の氏名または名称および住所
・社員が無限責任社員か有限責任社員かの別
・社員の出資の目的(有限責任社員は金銭等に限る)およびその価額または評価の標準

4番目から6番目に注目してください。誰が社員か、その人の住所はどこか、いくら出資したか。株主名簿で知りたい情報が、そのまま定款の記載事項になっています。つまり合同会社では、定款が株主名簿の役割を兼ねているということです。

この構造には効き方の違いもあります。株式会社の株主名簿は、会社が自分の判断で書き換える帳簿です。一方、合同会社の社員に関する情報は定款の一部なので、書き換えには定款変更の手続きが要ります。会社法637条は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款を変更すると定めています。社員が1人増えるだけでも、原則として社員全員の同意が必要です。

軽い気持ちで人を入れると後戻りしにくい、という点は、合同会社を選ぶときに知っておくべき性質です。逆に言えば、外から勝手に持分を買われて構成が変わることが起きにくい、という守りの強さでもあります。

登記簿に載る社員、載らない社員

もう一つの記録が登記簿です。ただし、ここには全員が載るわけではありません。会社法914条が定める合同会社の設立登記事項のうち、社員に関係するのは次の2つです。

・合同会社の業務を執行する社員の氏名または名称
・合同会社を代表する社員の氏名または名称および住所

読み比べると差が見えます。業務を執行する社員は氏名だけが載り、住所は載りません。住所まで載るのは代表社員だけです。そして、業務を執行しない社員は、そもそも登記簿に名前が出ません。出資はしているが経営には関わらない社員がいる場合、その人の存在は登記簿からは分からないということです。

この仕組みは、プライバシーの面では合同会社の利点として語られます。株式会社では代表取締役の住所が登記され、誰でも取得できる登記事項証明書に載りますが、合同会社では業務を執行する社員にとどめておけば住所は出ません。ただし代表社員を定めればその住所は登記されるので、完全に隠せるわけではありません。

一方で、この仕組みには落とし穴もあります。登記簿を見ても社員の全体像が分からないため、外部から会社の出資構成を確認する手段が限られます。金融機関が社員名簿を求めてくるのは、まさにここが理由です。登記簿では足りないから、別の形で教えてほしい、というのが実際の要求です。

なお、登記事項に変更が生じたときは、会社法915条1項により2週間以内に変更の登記をしなければなりません。業務執行社員が入れ替わったのに登記をしないまま放置すると、登記を怠ったこと自体が過料の対象になりえます。

社員名簿を求められたときにどうするか

存在しない書類を求められたとき、取るべき行動は3つあります。

1つめは、定款の写しを出すことです。社員の氏名と住所、出資の価額が書かれているので、相手が知りたい情報は原則としてすべて含まれています。設立時の定款に加えて、その後の定款変更の内容も分かる形で出すのが親切です。

2つめは、定款の記載をもとに一覧表を作って添えることです。定款は条文の形で書かれているため、社員が複数いると読み取りにくくなります。社員の氏名、住所、出資の価額、出資の割合、業務執行社員かどうか、代表社員かどうかを列にした表を1枚作れば、相手の作業はぐっと楽になります。これが世の中で「合同会社の社員名簿」と呼ばれているものの正体です。法定の様式はないので、自由に作って構いません。

3つめは、必要に応じて登記事項証明書を添えることです。業務執行社員と代表社員については、公的な証明として登記簿が使えます。定款は会社が自分で持っている書類なので、第三者の目には証明力が弱く見えます。登記簿と組み合わせると説得力が増します。

作った一覧表は、社内でも使えます。誰がいくら出資して、割合がどうなっているかを1枚にまとめておくと、利益の配当を決めるときや、新しい社員を入れるかどうかを話し合うときの土台になります。法律上の義務はなくても、作っておいて損がない書類です。

社員が増えるときの手順

新しく社員を入れる場合、会社法604条が手順を決めています。まず、持分会社は新たに社員を加入させることができます(1項)。そして加入の効力は、その社員に係る定款の変更をした時に生じます(2項)。

ただし合同会社には特則があります。同条3項により、新たに社員になろうとする者が定款変更の時点で出資の払込みや給付を終えていない場合、その人は払込みまたは給付を完了した時に社員になります。定款を書き換えただけでは足りず、お金が実際に入って初めて社員になる、ということです。合同会社の社員は全員が有限責任なので、出資が入っていない状態で社員として扱うと、会社債権者の引き当てになる財産が実態と食い違ってしまいます。それを防ぐための規定です。

順番としては、既存の社員全員の同意を取る、定款変更の内容を書面に残す、出資金を会社の口座に払い込んでもらう、通帳の記録を保存する、その人が業務執行社員や代表社員になるなら登記を申請する、という流れになります。資本金の額が変わる場合は、その変更も登記事項です。

設立の場面では、会社法578条が、合同会社の社員になろうとする者は定款の作成後、設立登記をする時までに出資に係る金銭の全額を払い込むか、金銭以外の財産の全部を給付しなければならないと定めています。設立時も加入時も、全額を先に入れるのが合同会社のルールです。

持分を譲るとき、抜けるとき

出資者が入れ替わる場面も見ておきます。

持分の譲渡は、会社法585条1項により、他の社員全員の承諾がなければできません。株式会社の株式は原則として自由に譲渡できて、譲渡制限を付けるかどうかは会社が選ぶ形ですが、合同会社は最初から全員の承諾が必要な設計です。例外として、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員全員の承諾があれば譲渡できます(2項)。そして4項により、これらは定款で別段の定めをすることを妨げません。

退社にも2種類あります。会社法606条の任意退社は、存続期間を定款で定めなかった場合などに、各社員が事業年度の終了時に退社できるというものです。この場合、6か月前までに会社へ退社の予告をしなければなりません。ただし、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社できます。

会社法607条の法定退社は、一定の事由が起きたら当然に退社になるというものです。定款で定めた事由の発生、総社員の同意、死亡、合併による消滅、破産手続開始の決定、解散、後見開始の審判、除名の8つが挙げられています。

退社した社員は、出資の種類を問わず持分の払戻しを受けられます(会社法611条1項)。払戻しは金銭でできます(3項)。ここで気をつけたいのが、退社した後も責任が残る点です。会社法612条は、退社した社員は、その登記をする前に生じた会社の債務について従前の責任の範囲内で弁済する責任を負い、その責任は登記後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、登記後2年を経過した時に消滅すると定めています。抜けた日で終わりではない、ということです。

社員が亡くなったときの扱い

株式会社では、株主が亡くなれば株式は相続人に移ります。合同会社は違います。会社法607条1項3号により、死亡は法定退社の事由です。何も手当てをしていなければ、亡くなった社員は退社したものとして扱われ、相続人が引き継ぐのは社員の地位ではなく、持分の払戻しを受ける権利になります。

これを変えたい場合は、定款に定めを置きます。会社法608条1項は、社員が死亡した場合の相続人その他の一般承継人が持分を承継する旨を定款で定めることができるとしています。この定めがあれば、相続人は持分を承継した時に社員となり(2項)、会社はその時点で定款変更をしたものとみなされます(3項)。

相続人が2人以上いる場合は、承継した持分についての権利を行使する者を1人決めなければ権利を行使できません(5項)。これは株式が共有になった場合と似た仕組みです。

社員が1人の合同会社では、この定めの有無が決定的に効きます。定款に承継の定めがないまま唯一の社員が亡くなると、社員が誰もいない状態になり、会社は解散に向かいます。事業を家族に残したいのであれば、設立時の定款にこの一文を入れておくかどうかで結果が変わります。法人化を考えている段階で、司法書士に相談すべき論点の一つです。

作成義務があるのは会計の書類

株主名簿の作成義務はありませんが、合同会社にも作らなければならない書類はあります。中心は会計まわりです。

会社法615条1項は、持分会社は法務省令の定めにより、適時に正確な会計帳簿を作成しなければならないと定めています。そして2項で、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存しなければなりません。

計算書類も同じです。会社法617条1項は成立の日における貸借対照表の作成を求め、2項で各事業年度に係る計算書類の作成を求めています。計算書類は電磁的記録で作れます(3項)。保存期間は作成した時から10年です(4項)。

この作成義務には閲覧の仕組みが付いてきます。会社法618条1項により、社員は会社の営業時間内であればいつでも計算書類の閲覧や写しの請求ができます。定款で別段の定めを置くことはできますが、同条2項ただし書きにより、事業年度の終了時に請求することを制限する定めは置けません。出資した社員から会社の数字を完全に隠すことはできない、という最低ラインが引かれています。

債権者にも道があります。会社法625条により、合同会社の債権者は、営業時間内であればいつでも、作成した日から5年以内の計算書類について閲覧や写しの請求ができます。合同会社には決算公告の義務がない代わりに、債権者が個別に見に行ける仕組みが用意されている、という整理です。

なお、決算公告の義務がないことは合同会社の実務上の利点としてよく挙げられます。会社法440条1項が計算書類の公告を義務づけているのは株式会社であり、持分会社は対象に入っていないためです。官報への掲載費用がかからない分、年間の固定費が軽くなります。

法人が社員になるときの追加手続き

もう一つ、合同会社に特有の論点があります。社員は個人でなくてもよく、法人が社員になることができます。親会社が合同会社を作って自らが社員になる形は実際によくあります。

法人が業務を執行する社員である場合、会社法598条1項により、その法人は業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名と住所を他の社員に通知しなければなりません。この人を職務執行者と呼びます。法人そのものが会議で発言したり書類に押印したりはできないので、意思を実行する人を立てるという仕組みです。

職務執行者は、合同会社の出資者(社員)が法人というケースで、その法人の意思を反映させるために設置される役職です。たとえば、親会社が合同会社を設立して社員(出資者)となるケースでは、実際に合同会社で経営判断をする人が必要となるため、職務執行者を定めます。 出典: vs-group.jp

職務執行者は、会社法598条2項により、善管注意義務や忠実義務といった業務執行社員と同じ義務を負います。そして法人が代表社員になる場合、その職務を行うべき者の氏名と住所は登記事項です(会社法914条8号)。

個人で始めた事業を合同会社にし、その後さらに別の法人を作って持株構造にする、といった組み替えを考えているなら、この職務執行者の扱いは早めに理解しておいたほうがよい部分です。条文の原文はe-Gov法令検索の会社法で確認できます。

出資の割合と、利益の分け方は別に決められる

株主名簿が存在しないことと並んで、合同会社の分かりにくいところが、出資の割合と利益の取り分の関係です。株式会社では、持っている株式の数に応じて配当を受けるのが原則です。合同会社は違います。

会社法621条1項は、社員は会社に対して利益の配当を請求することができるとし、2項で、利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項を定款で定めることができるとしています。つまり、分け方を定款で自由に設計できるということです。出資は1割しかしていないが、実務の大半を担っているので取り分は5割にする、といった配分も、社員全員が同意して定款に書けば成り立ちます。

この柔軟さは、お金を出す人と働く人が別々にいるときに効きます。技術を持つ人が少額の出資で参加し、資金を出す人が多めに出資する。それでも成果の分け方は貢献度で決める。株式会社でこれをやろうとすると種類株式の設計が要りますが、合同会社なら定款の一文で済みます。

ただし上限はあります。会社法628条により、合同会社は利益の配当で社員に交付する金銭等の帳簿価額が、その配当をする日における利益額を超える場合、配当をすることができません。この場合、会社は社員からの配当請求を拒めます。利益が出ていないのに分配することはできない、という歯止めです。合同会社の社員は全員が有限責任なので、会社に財産を残しておかないと債権者の引き当てがなくなる、という考え方から来ています。

なお、税務上の扱いは会社法の定めとは別の論点です。定款で決めた配分が税務でそのまま通るかどうかは金額や事情で変わるので、配分を設計する段階で税理士に確認してください。

途中で株式会社に変えるときに何が起きるか

事業が育って外部から出資を受けたくなると、株式会社への組織変更を検討する場面が来ます。このとき、これまで存在しなかった株主名簿が一気に必要になります。

手順の骨格はこうです。まず組織変更計画を作ります。会社法746条1項が定める記載事項には、組織変更後の株式会社の目的、商号、本店の所在地、発行可能株式総数、取締役の氏名、そして持分会社の社員が組織変更に際して取得する株式の数や割当てに関する事項が含まれます。持分が株式に置き換わる、という変換をここで設計します。

次に、会社法781条1項により、効力発生日の前日までに総社員の同意を得ます(定款に別段の定めがある場合を除く)。あわせて債権者を保護する手続きを踏み、効力発生日に株式会社になり、持分会社については解散の登記、株式会社については設立の登記を申請します。

そして効力発生日からは、会社法121条の適用を受けます。株主名簿を作り、本店に備え置く義務が生じるということです。組織変更の書類を作った流れで、そのまま株主名簿も作ってしまうのが確実です。登記が終わってから数か月放置する会社が少なくありませんが、この時期は外部からの出資交渉が動いていることが多く、株主名簿の提出を求められる可能性がいちばん高い時期でもあります。

一覧表を作る。社員が3人いる会社を例に

法定の様式がないと聞くと、かえって何を書けばよいか迷います。実際の数字を入れて1枚作ってみます。

社員が3人で、出資額がA氏300万円、B氏150万円、C氏50万円、合計500万円の合同会社を想定します。AとBが業務を執行する社員で、Aが代表社員、Cは出資だけで経営には関わらないという構成です。

一覧表に並べる列は6つで足ります。氏名または名称、住所、出資の価額、出資の割合、業務を執行する社員かどうか、代表社員かどうかです。出資の割合は、その人の出資額を出資の総額で割って計算します。A氏なら300万円を500万円で割って60パーセント、B氏は30パーセント、C氏は10パーセントです。端数が出る場合は小数第1位まで書いておけば、相手が合計を検算できます。

表の下には、作成した日付と、この表が定款の記載にもとづくものであることを1行書き、代表社員が記名して会社の印を押します。これで対外的に出せる形になります。株主リストのように法務局が様式を決めている書類ではないので、押印の種類にも決まりはありません。

この表を作ると、登記簿だけでは見えない部分が可視化されます。この例で登記簿に出てくるのはAとBの氏名、そしてAの住所だけです。C氏は10パーセントを出資しているのに、登記簿には一切現れません。金融機関が定款や一覧表を求めるのは、この見えない部分を確かめたいからです。

一覧表は作ったら終わりではなく、社員が入れ替わるたびに作り直します。表の右上に「令和○年○月○日現在」と入れておくと、古い版と混ざりません。定款変更の書面と同じフォルダに並べて保管しておくのが扱いやすい形です。

社員が1人増えるときの、日付の並べ方

加入の手続きは、順番を1つ入れ替えるだけで効力が生じる日が変わります。先の会社に、新しくD氏が100万円を出資して加わる場合を例に、日付を入れて並べてみます。

・9月1日 既存の社員3人とD氏で条件を詰める。出資額、出資の割合、業務を執行する社員にするかどうかを決める
・9月5日 総社員の同意書を作り、A氏、B氏、C氏が署名する。定款の社員に関する条文を、D氏を加えた内容に書き換える
・9月8日 D氏が会社の口座へ100万円を払い込む。ここで初めてD氏は社員になる。通帳の記録を印刷して保存する
・9月9日 出資の総額が600万円になったので、一覧表を作り直す。割合はA氏50パーセント、B氏25パーセント、C氏8.3パーセント、D氏16.7パーセントに変わる
・9月10日ごろ 資本金の額が変わる場合、またはD氏を業務を執行する社員にする場合は、変更の登記を申請する
・9月22日 登記の期限。変更が生じた日から2週間なので、この日までに申請を出す

ここで順番を逆にすると噛み合いません。払込みを先に受けてから定款を書き換えた場合、定款変更の時点で払込みが終わっているので、その時に社員になります。逆に定款だけ先に書き換えて払込みが遅れると、書面上は社員に見えても、法律上はまだ社員ではない期間ができます。その期間に総社員の同意を取る場面が来ると、誰の同意が必要かで揉めます。同意書の日付と入金日の順番は、はじめに決めておきたいところです。

なお、出資を受けても登記が要らない場合があります。D氏を業務を執行する社員にせず、資本金の額も変えないのであれば、登記簿に変化はありません。定款と同意書、通帳の記録を残して終わりです。

勘違いされやすい5つ

最後に、合同会社の出資者まわりで実際に行き違いが起きる点を並べます。

・社員という言葉を従業員の意味で読んでしまう。会社法の社員は出資した人です。雇われて働いている人は従業員や使用人と呼ばれ、定款には出てきません
・定款を書き換えれば社員になると思ってしまう。合同会社では、出資の払込みや給付が終わるまで社員になりません。書面の日付だけ先に進めても効力は生じません
・登記簿を見れば出資者が分かると思ってしまう。登記されるのは業務を執行する社員の氏名と、代表社員の氏名と住所だけです。出資だけしている社員は出てきません
・持分は当然に相続されると思ってしまう。定款に承継の定めがなければ、死亡は退社の事由になり、相続人が得るのは払戻しを受ける権利です
・決算公告が不要だから数字は誰にも見せなくてよいと思ってしまう。社員は営業時間内であればいつでも計算書類を見られますし、債権者も作成から5年以内の計算書類について閲覧を請求できます

どれも、株式会社の常識をそのまま当てはめると外れる点です。合同会社は書類の量が少ない代わりに、定款が背負う役割が大きくなっています。定款を手元に置いていない状態で判断すると、5つのうちどれかを踏みます。

書類の軽さを、そのまま事業の軽さにする

合同会社が選ばれる理由は、設立費用の安さだけではありません。株主総会の招集手続きがない、決算公告の義務がない、役員の任期による重任登記がない。事務の量が構造的に少ないのです。株主名簿がないことも、その一環だと考えると腑に落ちます。

20年この市場を見てきた立場から言えば、個人で仕事を請けていた人が法人にするとき、最初の数年でつまずくのは事業の内容ではなく事務の量です。請求と入金の管理、契約書の確認、税務の書類、そして今回のような会社法まわりの手続き。ひとつひとつは大した作業ではないのに、本業の合間に挟まると処理が止まり、止まったまま何年も過ぎます。合同会社を選ぶというのは、その量を最初から抑える選択でもあります。

そして、抑えてもなお残る事務は、外に出したほうが早い。中間のマージンが乗らない直接の取引であれば、同じ予算で依頼する側はより多く頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。長く続いている人ほど、この切り分けが早い印象があります。

書類や文章を整える仕事は需要として安定しています。規程や案内文を読みやすい形にする仕事の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっていますし、その土台として評価されやすいのがビジネス文書検定です。文書の体裁と敬語の使い分けを体系的に問う試験で、事務代行の案件で精度を求められる場面に効きます。

事業側を広げる方向なら、業務の進め方をAIで組み替える支援が独立した職種として定着しつつあり、AIコンサル・業務活用支援のお仕事に案件像が整理されています。マーケティングやセキュリティまで含めるならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発側に寄せるならアプリケーション開発のお仕事とソフトウェア作成者の年収・単価相場を突き合わせると、単価の現実的な水準が見えます。ネットワーク寄りの仕事で名刺代わりに使われている資格はCCNA(シスコ技術者認定)です。

法人になると、契約の相手方が個人ではなく会社になります。発注書と契約書で最低限どこを押さえるかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに、報酬が止まったときにどう動くかは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にまとまっています。合同会社は事務が軽い分、記録を残す習慣が会社ごと薄くなりがちです。定款と会計帳簿、そして契約書。この3つだけは、軽さに流されずに手元へ揃えておくことをすすめます。

よくある質問

Q. 合同会社に株主名簿を作る義務はありますか?

ありません。株主名簿の作成を義務づけている会社法121条は株式会社を対象としており、合同会社はそもそも株式を発行しないため株主が存在しません。出資者は社員と呼ばれ、その氏名や住所、出資の価額は会社法576条1項により定款の必要記載事項になっています。

Q. 金融機関から社員名簿を求められたらどうすればよいですか?

法定の書類ではないので、定款の写しを出すか、定款の記載をもとに一覧表を作って提出します。社員の氏名、住所、出資の価額と割合、業務執行社員か代表社員かを列にした表で十分です。様式の決まりはありません。業務執行社員と代表社員については登記事項証明書を添えると証明力が上がります。

Q. 合同会社の登記簿を見れば出資者は分かりますか?

全員は分かりません。会社法914条により登記されるのは、業務を執行する社員の氏名または名称と、代表社員の氏名または名称および住所です。業務を執行しない社員は登記簿に載らず、業務執行社員も住所までは載りません。出資構成を確認するには定款を見る必要があります。

Q. 社員が亡くなったら持分は相続されますか?

定款に定めがなければ相続されません。会社法607条1項3号により死亡は法定退社の事由で、相続人が得るのは持分の払戻しを受ける権利です。会社法608条1項にもとづき、相続人が持分を承継する旨を定款で定めておけば、相続人が社員として引き継げます。事業承継を考えるなら設立時に入れておくべき条項です。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月31日最終更新:2026年10月10日
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