合同会社の業務執行社員の決定書|議事録の代わりになる書類

前田 壮一
前田 壮一
合同会社の業務執行社員の決定書|議事録の代わりになる書類

この記事のポイント

  • 合同会社の業務執行社員は登記事項です
  • 決定書と同意書はどう使い分けるのか
  • 社員が加入・退社したときの手続と必要書類

合同会社の業務執行社員に関する登記で最初につまずくのは、「そもそも誰の名前が登記簿に載るのか」という点です。株式会社なら取締役が登記されると決まっていますが、合同会社は出資した人が全員経営者になるのが原則で、定款の書き方によって登記簿に載る人が変わります。そして、株主総会がないため、決めた内容は議事録ではなく決定書や同意書という形で残します。この記事では、合同会社業務執行社員登記で何が登記されるのか、どの書類を作ればよいのか、いつまでに申請するのか、いくらかかるのかを、法令の原文にあたりながら順番に整理します。

合同会社の登記簿に載るもの

まず、合同会社の登記簿に何が記録されるかを確認します。会社法は、合同会社の設立登記で登記すべき事項を列挙しています。

一 目的 二 商号 三 本店及び支店の所在場所 四 合同会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め 五 資本金の額 六 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称 七 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所 出典: laws.e-gov.go.jp

ここで注目してほしいのが六号と七号です。業務を執行する社員は氏名だけが登記され、代表する社員は氏名に加えて住所も登記されます。つまり、業務執行社員であっても代表社員でなければ、住所は登記簿に出ません。プライバシーを気にする人にとって、これは意外と重要な違いです。

一方、登記簿に載らないものもあります。出資した金額の内訳、社員ごとの持分の割合、業務を執行しない社員の氏名。これらは定款には書かれますが、登記簿には出ません。定款は法務局に提出しますが、誰でも閲覧できる登記簿とは別扱いです。

ここから導かれる結論はシンプルです。登記簿に載る事項が変わったときだけ、変更の登記が必要になる。業務執行社員が増えた、減った、名前が変わった、代表社員が交代した、代表社員が引っ越した。こうした場面が登記の出番です。逆に、業務を執行しない社員だけが入れ替わった場合は、定款は変わりますが登記は発生しません。

なお、代表社員が法人である場合は、その法人の職務を行うべき者の氏名と住所も登記されます。親会社が合同会社を作ってその子会社の代表を務める形では、実際に動く担当者の名前と住所が登記簿に出ることになります。

業務執行社員と代表社員はどう違うのか

言葉が似ているので混同されますが、役割が違います。

合同会社では、社員は定款に別の定めがある場合を除いて、全員が会社の業務を執行します。出資した以上は経営にも関わるのが原則です。ただし、定款で「業務を執行する社員は次の者とする」と限定することができます。この限定をした場合、指名されなかった社員は出資だけをして経営には関与しない立場になります。

代表社員は、その業務執行社員のなかから会社を代表する人を選んだものです。対外的に契約を結んだり、銀行口座を開いたりする権限を持ちます。株式会社でいう代表取締役に近い立場です。業務執行社員が一人しかいない会社では、その人が自動的に代表社員になります。

業務執行社員が二人以上いるとき、会社の業務は業務執行社員の過半数で決まります。定款で業務執行社員を限定していない会社なら、社員の過半数です。ここで数えるのは出資の金額ではなく頭数です。出資比率が大きい社員が一人いても、頭数で負ければ決定を通せません。株式会社の感覚で「多く出したほうが決められる」と考えていると、ここで思わぬ事態になります。

業務執行社員には、ほかの社員より重い縛りもあります。定款で業務執行社員に指名された人は、正当な事由がなければ辞任できません。解任も、正当な事由がある場合に限り、ほかの社員の一致によってできる扱いです。どちらも定款で別の定めを置くことは認められているので、実務では設立時の定款で緩やかに定めておく会社もあります。自社の定款がどうなっているかを、書類を作る前に必ず確認してください。

また、定款で業務執行社員を定めている会社で、その業務執行社員の全員が退社した場合、定款のその定めは効力を失います。残った社員が自動的に全員業務執行社員に戻る形になります。この点を知らずに「誰も業務執行社員がいない会社」ができたと慌てるケースがあります。

決定書が議事録の代わりになる理由

合同会社に株主総会はありません。会社法にも合同会社の社員総会という機関は出てきません。したがって、株主総会議事録にあたる法定の書類も存在しません。

では何を作るのか。実務で使われているのは次の三つです。社員が一人だけなら「業務執行社員の決定書」。業務執行社員が複数いて、その過半数で決める事項なら「業務執行社員の決定書」または「業務執行社員の過半数の一致を証する書面」。社員全員の同意が必要な事項、たとえば定款の変更なら「総社員の同意書」です。

名前の違いより大切なのは、決め方のルールと書類の中身が合っていることです。定款変更にあたる事項を「業務執行社員の過半数で決定した」と書いた決定書で済ませると、実際には総社員の同意が必要なのに手続が足りていないことになります。合同会社の定款変更は、定款に別の定めがある場合を除いて総社員の同意によると会社法に定められています。過半数ではなく全員です。

登記の場面でも、この区別が効いてきます。法務局は、登記すべき事項について誰の意思決定が必要かを法令に照らして判断し、それを証明する書面が添付されているかを見ます。必要な書面が足りなければ補正を求められ、申請は止まります。

書類に書く項目は、名前が何であっても共通です。決定した日、決定した内容、誰が決定したか(氏名と記名押印)、どの規定に基づく決定か。この四つがそろっていれば形式としては足ります。会議を開いていないのに「議事録」と題して議長や出席者を書くと、実態と合わない書類になるので避けてください。

社員が増えるとき、減るときに何が起きるか

社員の加入と退社は、登記が絡む場面でもっとも手順が多いところです。

新しく社員を加入させる場合、その効力が生じるのは、その社員に関する定款の変更をした時です。社員の氏名と住所、出資の目的と価額は定款の記載事項なので、新しい人が入れば定款を書き換えることになります。その定款変更には、原則として総社員の同意が要ります。

ただし合同会社にはもう一段の条件があります。新しく社員になろうとする人が、定款変更の時点で出資の払込みや給付を済ませていない場合、その人が社員になるのは払込みを完了した時です。つまり、定款を書き換えただけでは社員になりません。お金が入って初めて社員になります。登記の日付を決めるときは、この順番を押さえてください。

加入した人が業務執行社員になるなら、登記簿の業務執行社員の欄に氏名を追加する変更登記が必要です。代表社員になるなら、氏名と住所を登記します。出資だけをして業務を執行しない社員として加入する場合は、定款は変わりますが登記は発生しません。

退社の場合は逆の流れです。退社の事由が生じた時点で社員の地位を失い、業務執行社員として登記されていたなら、その氏名を抹消する変更登記を申請します。退社の事由は、本人の申し出による任意退社のほか、死亡、破産、除名など法律が定めるものがあります。

いずれの場合も、登記の期限は変更が生じてから2週間以内です。本店の所在地で申請します。ここで言う変更が生じた日は、書類を作った日ではなく、効力が発生した日です。加入なら出資の払込みが完了した日、退社なら退社の効力が生じた日を起算点にします。

必要な書類と、かかる費用

登記申請に添える書類は、何の登記かによって変わります。主なものを整理します。

場面 添える主な書類
社員の加入 総社員の同意書(定款変更の証明)、出資に係る払込みまたは給付があったことを証する書面、加入の事実を証する書面
社員の退社 退社の事実を証する書面(退社届、死亡を証する書面など)
代表社員の就任 就任を承諾したことを証する書面、業務執行社員の互選書または総社員の同意書
代表社員の住所変更 住所の変更を証する書面(法務局の運用により不要な場合もある)

書面の要否や様式は法務局の運用で細かく違う場合があります。申請前に管轄の法務局へ電話で確認しておくと、往復の手間が減ります。法務局の窓口は登記の相談に応じており、申請書の書式も法務省のサイトから確認できます。

費用の中心は登録免許税です。合同会社の社員に関する事項の変更登記は、登録免許税法の別表で「社員に関する事項の変更(会社の代表に関する事項の変更を含む)の登記」に分類され、申請1件につき3万円、ただし資本金の額が1億円以下の会社については1万円とされています。中小の合同会社であれば、ほとんどが1万円です。

同じ申請書で複数の変更をまとめる場合、区分が同じなら1件として扱われますが、区分が違えばそれぞれに課税されます。たとえば社員の加入と本店移転を同時に行うと、社員に関する変更の分と、本店移転の分(本店1か所につき3万円)が合算されます。税額の一覧は国税庁の登録免許税の税額表で確認できます。

司法書士に依頼する場合の報酬はこれとは別です。金額は案件の内容で変わるため一律の相場を示すことはできませんが、自分で申請するか依頼するかは、期限までの日数と、社内で書類を検証できる人がいるかどうかで決めるのが現実的です。

法人が業務執行社員になる場合の追加手続

合同会社では、社員は個人でなくてもかまいません。株式会社や別の合同会社が社員として出資し、業務執行社員になることができます。グループ会社の受け皿として合同会社を使う場合や、個人事業主が自分の法人を通じて出資する場合に出てくる形です。

ただし法人は自分で会議に出たり書類に署名したりできないので、実際に動く人を決める必要があります。会社法は、法人が業務を執行する社員である場合、その法人は業務執行社員の職務を行うべき者を選任し、その氏名と住所をほかの社員に通知しなければならないと定めています。この人を職務執行者と呼びます。

職務執行者には、業務執行社員と同じ義務が課されます。善良な管理者としての注意をもって職務を行う義務、法令と定款を守って会社のために忠実に職務を行う義務、求められたときに職務の状況を報告する義務です。名義だけ貸すような立場ではありません。

登記との関係では、その法人が代表社員である場合に、職務執行者の氏名と住所が登記簿に載ります。代表社員ではない業務執行社員にとどまる場合は、法人の名称が登記されるだけで、職務執行者の情報は登記簿に出ません。

書類としては、法人が職務執行者を選任したことを証明する書面(取締役の決定書や取締役会議事録など、その法人の機関に応じたもの)と、職務執行者の就任承諾書を用意します。登記申請では、その法人の登記事項証明書の添付を求められる場合もあります。同じ法務局の管轄内に主たる事務所がある場合は省略できる扱いがあるので、申請前に確認してください。

退社にはいくつかの型がある

社員が抜ける場面は一つではありません。会社法は、本人の意思による退社と、事由の発生による退社を分けて定めています。

本人の意思で抜ける場合を任意退社と呼びます。会社の存続期間を定款で定めていない場合、各社員は事業年度の終了時に退社でき、その際は6か月前までに会社へ退社の予告をしなければなりません。ただし定款で別の定めを置くことができるため、実際の期間は定款次第です。また、やむを得ない事由があるときは、この予告の期間にかかわらずいつでも退社できます。

事由の発生による退社は法定退社と呼ばれ、定款で定めた事由の発生、総社員の同意、死亡、合併による消滅、破産手続開始の決定、解散、後見開始の審判、除名の八つが挙げられています。このうち破産手続開始の決定、解散、後見開始の審判については、その事由では退社しない旨を会社が定めることもできます。

実務で問題になりやすいのが死亡です。株式会社なら株式が相続されますが、合同会社の持分は原則として相続されず、社員は死亡によって退社します。相続人が事業を継ぐには、定款に「社員が死亡した場合は相続人が持分を承継して社員となる」という趣旨の定めが必要です。この定めがないまま社員が一人の合同会社の社員が亡くなると、社員がいなくなり会社が解散に向かうことになります。設立時の定款を確認しておくべき箇所の一つです。

退社した社員は、持分の払戻しを受ける権利を持ちます。払戻しの金額の計算や、資本金を減らす場合の債権者保護の手続が絡むため、金額が大きい場合は税理士や司法書士に相談してから進めてください。

決定書と同意書の書き方の見本

文面がイメージしにくいという声が多いので、二つの見本を示します。カギ括弧や記号の部分は自社の内容に置き換えてください。

業務執行社員が複数いる会社で、過半数の一致により代表社員を選ぶ場合の書面です。

業務執行社員の決定書

合同会社〇〇の業務執行社員は、令和〇年〇月〇日、
業務執行社員の過半数の一致により、下記のとおり決定した。

記

1. 当会社の代表社員として、業務執行社員 〇〇〇〇 を選定する。
2. 本決定の効力は令和〇年〇月〇日から生じるものとする。

以上のとおり決定したことを証するため、本書を作成し、
業務執行社員が記名押印する。

令和〇年〇月〇日
合同会社〇〇
業務執行社員 〇〇〇〇 印
業務執行社員 △△△△ 印

社員を加入させる場合は、定款変更を伴うため、総社員の同意書の形にします。

総社員の同意書

合同会社〇〇の総社員は、令和〇年〇月〇日、
下記のとおり定款を変更することに同意した。

記

1. 次の者を当会社の社員として加入させ、定款第〇条の社員に関する
   記載に次の一項を加える。
   住所 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
   氏名 □□□□
   出資の目的および価額 金銭 金〇〇円
2. 前項の者を業務を執行する社員とする。

以上のとおり同意したことを証するため、本書を作成し、
総社員が記名押印する。

令和〇年〇月〇日
合同会社〇〇
社員 〇〇〇〇 印
社員 △△△△ 印

見本の中で気をつけてほしいのは、決定の根拠を明記している点です。「業務執行社員の過半数の一致により」「総社員の同意により」という文言が、その書類がどのルールに基づいているかを示します。この一行がないと、法務局はどの規定に基づく決定なのかを読み取れません。

押印は、実務では代表社員の届出印または社員の実印を使うのが一般的です。就任承諾書など、印鑑証明書の添付が求められる書面もあるため、どの書類にどの印を押すかは申請前に確認してください。

期限を過ぎたとき、記載を間違えたとき

2週間の期限を過ぎても、登記の申請自体は受け付けてもらえます。ただし、登記を怠ったこととして100万円以下の過料の対象になると会社法に定められています。過料は刑罰ではないので前科はつきませんが、裁判所から通知が届き、会社ではなく業務執行社員などの個人が支払うことになります。金額は遅れた期間や事情によって決まります。

見落としやすいのが、代表社員の住所変更です。引っ越しは登記事項の変更にあたるため、2週間以内の申請が必要です。会社の所在地は変わっていないので気づきにくく、数年分まとめて申請する事態になりがちです。

登記した内容に誤りがあった場合は、更正の登記または抹消の登記で直します。登録免許税は、更正が申請1件につき2万円、抹消が2万円です。間違いを直すほうが安いわけではないので、最初の申請で正確に書くほうが結局は早く安く済みます。

申請書に不備があった場合は補正になります。法務局から連絡が来て、指示された箇所を直して提出し直す流れです。補正で済むうちは登録免許税を払い直す必要はありませんが、申請を取り下げて出し直す場合は、納めた登録免許税の扱いについて法務局に確認してください。

無料のひな形とオンライン作成サービスの選び方

決定書や同意書のひな形は、登記支援サービスや司法書士事務所が無料で配布しています。項目を入力すると書類が完成するオンラインのツールもあり、ゼロから作るより確実です。選ぶときに見るべき点を三つ挙げます。

第一に、合同会社専用かどうかです。株式会社用のひな形を社名だけ差し替えて使うと、「取締役」「株主総会」「議長」といった合同会社に存在しない言葉が残ります。用語が合っていない書類は、法務局で補正を求められる原因になります。

第二に、自社の定款の定めに対応しているかです。業務執行社員を限定しているかどうか、定款変更の要件を総社員の同意から緩和しているかどうかで、必要な書面が変わります。ひな形はどちらか一方を前提に作られていることが多いので、該当箇所を読み替えてください。

もう一点、ひな形を使う前に確かめておきたいのが、手元の定款が最新版かどうかです。設立後に定款を変更したのに、パソコンに残っているのが設立時のファイルのまま、というケースがよくあります。定款は変更のたびに新しい内容が正となり、法務局に提出した設立時の原始定款とは別物になります。総社員の同意書を作るときに古い条文番号を引いてしまうと、書類の記載と実際の定款がずれます。変更の履歴を一つのファイルにまとめて管理しておくと、この種の食い違いを防げます。

第三に、無料の範囲です。書類の作成までは無料でも、法務局への申請代行や郵送に費用がかかるサービスがあります。自分で法務局へ持ち込むなら、作成部分だけを使えば足ります。逆に、平日に法務局へ行く時間が取れないなら、郵送やオンライン申請に対応したサービスを選ぶ価値があります。

おすすめの進め方を一つ挙げるとすれば、初回だけ司法書士に依頼して完成形の書類一式を手元に残し、二回目以降は自分でその書式に沿って作る方法です。合同会社の社員の変更は、会社が続く限り何度か発生します。正しい書式の見本が一つあるだけで、次からの作業がかなり楽になります。

書類作成を請け負う立場から見たこの分野

在宅で仕事を受けている人にとって、こうした登記まわりの書類作成の補助は、需要が途切れにくい領域です。会社の側は、司法書士に頼むほどではないと感じる場面でも、書式が分からずに手が止まっていることが多いからです。

ただし、線引きは明確に必要です。登記申請の代理は司法書士の業務で、報酬を得て他人の登記申請書類を作成することも司法書士法で制限されています。請け負えるのは、会社自身が作る社内文書の整理、過去の書類の体裁統一、必要書類のチェックリスト作成、定款と登記簿の内容の突き合わせといった作業です。最初にこの範囲を伝えておくと、依頼する側も安心しますし、越境した依頼を断る根拠にもなります。

文書作成の力を客観的に示したい場合は、ビジネス文書検定のような資格が判断材料になります。文部科学省後援の検定で、正確で効率的なビジネス文書を作る力を測るものです。法律知識そのものの証明にはなりませんが、書式と構成の正確さが求められる仕事では評価されます。書類作成を仕組み化する方向へ広げるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、生成AIの活用戦略から業務プロセスへの組み込み、社内研修までを支援する案件が視野に入ります。定型書類はテンプレート化と相性がよく、作成そのものより仕組みづくりのほうが単価が付く領域です。

報酬水準の目安を知っておくと交渉の基準になります。文書作成を主軸にするなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場、書類作成と社内システムの構築をセットで請けるならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。全国平均と都道府県別の数字が出ているので、居住地や取引先の所在地に合わせて読み替えてください。

フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、この分野で長く続いている人は、書類を作ること自体ではなく、期限を管理することに価値を置いています。合同会社の社員の変更は2週間という短い期限があり、しかも会社の側は日常業務に追われて気づきません。効力が生じた日を押さえ、期限の数日前に声をかける。それだけで過料の事故が防げます。書類の作成料より、この管理のほうが依頼する側にとっては価値が大きい。そういう関係になると、次の変更のときも声がかかります。

もう一つ、運営者として見てきた限りでは、報酬を額面ではなく手取りで捉えている人のほうが息が長い。同じ10万円の仕事でも、仲介手数料が引かれる経路と引かれない経路では、年間で見ると差が積み上がります。仲介手数料が差し引かれない手数料0%の形で直接やり取りできる経路を一つ持っておくと、依頼する側も同じ予算でより多く頼めるようになり、結果として仕事が続きやすくなります。

取引条件の整備も並行して進めてください。発注書や契約書の段階で確認すべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。報酬が支払われない事態になったときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で費用と手順が確認できます。会計や税務の素養を持つ人がこの領域へ広げる道もあり、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】には本業との両立の考え方が書かれています。

合同会社の業務執行社員に関する登記は、押さえるべき点が三つに絞られます。登記簿に載るのは業務執行社員の氏名と代表社員の氏名と住所であること。決め方は定款次第で、過半数なのか総社員の同意なのかが変わること。そして期限は効力発生から2週間であること。この三つを確認してから書類に取りかかれば、手戻りはほとんど起きません。

決定してから登記完了までを日付で並べる

制度の説明だけでは動きにくいので、社員が1人加わる場面を例に、流れを日付順に並べます。日付は会社の事情で前後しますが、間隔の感覚はつかめます。

着手の初日に、手元の定款を開きます。業務執行社員を限定しているか、定款変更の要件を総社員の同意から緩めているか。この2点で必要な書類が変わるので、確かめないまま書き始めると作り直しになります。設立後に定款を変更している会社は、どのファイルが最新版かもここで突き合わせます。

2日目から3日目にかけて、出資の額と払込みの方法を決めます。加入する人が会社の口座へ振り込み、通帳の該当ページの写しを払込みがあったことを証する書面として使う形が一般的です。

4日目に、総社員の同意書を作り、全員の署名または記名押印をもらいます。遠方の社員がいる場合は郵送の往復に日数がかかるので、ここが最も日数の読みにくい区間です。効力が生じる日をこの書面で明確にしておきます。

効力が生じた日から2週間以内に、本店を管轄する登記所へ申請します。申請書、総社員の同意書、払込みがあったことを証する書面、加入の事実を証する書面、収入印紙を揃えます。

申請から1週間から10日ほどで登記が完了します。完了予定日は申請した登記所のサイトに出ています。この間、登記事項証明書と印鑑証明書は原則として発行されないので、融資や入札の予定があるなら時期を調整してください。

完了したら新しい登記事項証明書を取り、業務執行社員の欄に名前が入っているかを確認します。ここまでで3週間前後です。

段取りで効くのは、同意書を集める区間を先に押さえることです。2週間の期限は効力が生じた日から数えるので、同意書に書く日付を郵送の見込みより後ろに置いておけば、期限に追われずに済みます。

実際に出ていくお金を数えてみる

登録免許税の1万円だけを見ていると、あとから小さな出費が積み上がります。社員が1人加わる場面で、何にいくら出ていくのかを並べます。

いちばん大きいのが登録免許税で、資本金の額が1億円以下の会社なら1万円、1億円を超える会社なら3万円です。

次が、登記が終わったあとに取る登記事項証明書です。取引先や金融機関に社員の構成が変わったことを示す場面で必要になります。手数料は法務省が公表しています。

登記事項証明書(謄抄本) 書面請求 600円/オンライン請求・送付 520円/オンライン請求・窓口交付 490円 出典: 法務省 登記手数料について

同じページによると、印鑑証明書は書面請求で500円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は420円です。令和7年4月1日からの金額なので、申請の前にもう一度確認してください。

郵送で申請するなら、往復の郵便料金も見ておきます。書類を折らずに送ると定形外の料金になります。返信用の封筒と切手を同封するかどうかは、管轄の登記所に確認しておくと確実です。

ここまでを足すと、書類を自分で作って自分で持ち込む場合の実費は1万円台の前半に収まります。司法書士に依頼する場合は報酬が上に乗ります。

見落としやすいのが、資本金を増やす場合です。社員の加入で受けた出資を資本金の額に組み入れるなら、資本金の額の変更の登記も必要になり、区分が違うので登録免許税が別に発生します。受けた出資を資本剰余金として処理して資本金を増やさない扱いもあるため、どちらにするかは登記の前に税理士に相談してください。ここを決めないまま申請すると、あとから追加の登記が発生します。

登記が終わったあとに社外へ出すもの

登記が完了しても、法務局から終わりましたという通知は届きません。完了予定日を過ぎて連絡がなければ、不備なく終わっているという意味です。

代表社員が交代した場合は、ここから届出がまとまって出てきます。税務署と、都道府県税事務所、市区町村の税務担当には、代表者が変わったことの届出が必要になります。年金事務所には事業所の代表者の変更届と、抜けた社員の社会保険の手続きがあります。何をいつまでに出すかは窓口によって扱いが違うので、登記が完了したら早い段階で確認してください。

金融機関では、代表社員が変わった場合に届出印と代表者の登録を直します。新しい登記事項証明書と印鑑証明書を持参する形が一般的です。

許認可を受けている業種は、ここが最も期限に注意が要る部分です。業務執行社員の氏名が許可の内容に含まれている業種では、変更届に期限が定められています。期限は業種ごとに違うので、許認可の窓口か所管の部署に確認してください。届出を忘れたまま更新の時期を迎えると、更新そのものが止まることがあります。

代表社員が交代せず、業務執行社員が1人増えただけであれば、社外への届出はほとんど発生しません。それでも、名刺、ウェブサイトの会社概要、契約書の署名欄に載っている担当者の表記は、登記に合わせて直しておくと後で困りません。登記簿と外に出ている表記がずれている状態は、取引先が会社の実在を確かめる場面でつまずきの原因になります。

よくある質問

Q. 合同会社の業務執行社員は登記されますか?

登記されます。会社法が定める合同会社の登記事項に「業務を執行する社員の氏名又は名称」が含まれているためです。業務執行社員は氏名のみ、会社を代表する社員は氏名に加えて住所も登記されます。出資だけをして業務を執行しない社員は、定款には記載されますが登記簿には出ません。

Q. 決定書と同意書はどう使い分けますか?

決め方のルールで分かれます。業務執行社員の過半数で決められる事項なら業務執行社員の決定書、定款の変更にあたる事項なら総社員の同意書です。合同会社の定款変更は、定款に別の定めがある場合を除いて総社員の同意が必要とされています。社員の加入は定款変更を伴うため、同意書の形になります。

Q. 変更登記の登録免許税はいくらですか?

合同会社の社員に関する事項の変更登記は、登録免許税法の別表で申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社については1万円とされています。中小の合同会社であればほとんどが1万円です。本店移転など区分の違う登記を同時に行う場合は、それぞれに課税されるため合算されます。

Q. 登記の期限を過ぎるとどうなりますか?

期限を過ぎても申請は受け付けてもらえますが、登記を怠ったこととして100万円以下の過料の対象になると会社法に定められています。過料は会社ではなく業務執行社員などの個人が支払うもので、金額は遅れた期間や事情で決まります。期限は変更が生じてから2週間で、書類を作った日ではなく効力が発生した日が起算点です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月5日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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