合同会社で社員が変わったときの登記|株式会社と違う点

丸山 桃子
丸山 桃子
合同会社で社員が変わったときの登記|株式会社と違う点

この記事のポイント

  • ✓合同会社役員変更の登記を
  • ✓社員の加入・退社・持分の譲渡という3つの場面ごとに解説します
  • ✓株式会社の役員変更と何が違うのか

合同会社の役員変更について調べ始めた人が最初に戸惑うのは、株式会社の情報がそのまま当てはまらないことです。取締役という言葉が出てこない、任期の話が出てこない、株主総会も出てこない。検索して出てくる説明の多くが株式会社を前提にしているため、自分の会社の話なのか判断できないまま時間が過ぎていきます。

合同会社にも「役員の変更」にあたる手続きはあります。ただし呼び方も仕組みも別物です。出資して会社の持分を持っている人を社員と呼び、その中で会社の運営にあたる人を業務執行社員、外部に対して会社を代表する人を代表社員と呼びます。誰かが新しく加わったり抜けたりしたとき、あるいは代表を交代したときに、会社の公的な記録を書き換える必要が出てきます。

この記事では、社員が入るとき、抜けるとき、持分を譲って入れ替わるときの3つの場面に分けて、何を決め、どんな紙を作り、どこに出すのかを説明します。株式会社の役員変更と決定的に違う点も並べて整理します。

合同会社の「社員」は従業員のことではない

最初に用語を1つだけ入れ替えてください。合同会社で言う社員とは、その会社にお金や財産を出して持分を持っている人のことです。日常会話で使う社員、つまり雇われて働いている人とは意味がまったく違います。

合同会社における「社員」とは、合同会社の持分を有する者のことをいい、従業員を意味する通常の用語法とは異なっているため、わかりにくく感じられる方も多いかもしれません。 出典: corporate.ai-con.lawyer

株式会社に置き換えると、社員は株主にあたります。ただし株主と違う点があります。株式会社では、お金を出す株主と会社を動かす取締役が分かれているのが建前です。株主は所有者、取締役は経営者という役割分担があり、株主総会で取締役を選ぶという流れになっています。

合同会社にはこの分離がありません。出資した人がそのまま会社を動かす人になります。会社法は、社員は原則として全員が会社の業務を執行すると定めており、定款、つまり会社の基本ルールを書いた文書で特定の人だけを業務執行社員と決めることもできる、という構造になっています。この「出資と経営が一致している」という性質が、後で説明する手続きの違いをすべて生み出しています。

社員には3つの層があると考えると整理しやすくなります。いちばん外側が社員、つまり出資している人全員です。その内側に業務執行社員、つまり会社の運営を担当する人がいます。いちばん内側が代表社員、つまり契約書に署名したり銀行口座を開いたりする権限を持つ人です。1人で会社を作った場合は、この3つが全部同じ人になります。

合同会社を選ぶ人が増えている背景には、設立の費用の安さがあります。株式会社では会社の基本ルールを公証人に確認してもらう手続きが要りますが、合同会社にはその手続きがありません。登録免許税も株式会社より低く設定されています。フリーランスから法人にする段階で合同会社を選ぶ人が多いのは、この初期費用の差が大きな理由です。

登記に載る社員と、載らない社員がいる

ここが実務でもっとも取り違えられやすい点です。合同会社では、社員全員が公的な記録に載るわけではありません。

会社法が定めている合同会社の登記事項を見ると、社員に関するものは2つだけです。1つは業務を執行する社員の氏名または名称。もう1つは代表社員の氏名または名称および住所です。つまり、出資はしているが会社の運営には関わらないという人は、記録に名前が出ません。

もう1つ細かい差があります。業務執行社員は氏名だけが載り、住所は載りません。代表社員は氏名に加えて住所まで載ります。この違いは、代表社員が交代するときに住所を証明する書類が要る一方、業務執行社員の交代では要らない、という形で実務に効いてきます。

この構造から、次のことが導けます。出資はするが経営には関わらない人が増えたり減ったりしても、そのこと自体では登記は発生しません。 ただし、その人が出資したことで資本金の額が変われば、資本金の額は登記事項なので登記が必要になります。ここを混同すると、必要のない登記を申請したり、逆に必要な登記を落としたりします。

具体例で確かめます。2人で作った合同会社に、3人目が出資して加わったとします。この3人目を業務執行社員にするなら、業務執行社員の加入として登記します。加えて資本金が増えるなら、資本金の額の変更も登記します。一方、3人目を業務を執行しない社員として迎えるなら、社員の加入についての登記は発生せず、資本金の額の変更だけを登記します。

もう1つ、記録に載るのは「誰が」だけで、「いくら出資したか」は載りません。株式会社では誰が何株持っているかは登記されませんが、合同会社も同じで、各社員の出資額は外から見えません。見えるのは資本金の合計額だけです。会社の内部の力関係を外に出したくない事業者にとって、この点は合同会社を選ぶ理由の1つになっています。

株式会社の役員変更と決定的に違う4つの点

株式会社の役員変更を経験したことがある人ほど、合同会社で戸惑います。違いは大きく4つです。

1つ目は、任期がないこと。株式会社の取締役には任期があり、非公開会社なら最長で10年まで伸ばせますが、任期が切れたら同じ人を選び直す手続きが要ります。この選び直しを重任と呼び、そのたびに登記と登録免許税が発生します。合同会社の社員には任期という概念がありません。本人が抜けると決めるか、法律が定める事由に当たらない限り、社員のままです。定期的にやってくる登記の手間と費用がない、というのが合同会社の運営コストが低いと言われる大きな理由です。

2つ目は、選任という手続きがないこと。株式会社では株主総会で取締役を選びます。合同会社には株主総会にあたる機関がなく、誰かを社員にする行為は「選ぶ」ではなく「会社の基本ルールに名前を書き加える」という形を取ります。会社法は、合同会社の基本ルールには社員の氏名と住所、その人が出す財産の内容と金額を書かなければならないと定めています。名前が書いてあることが社員であることの根拠なので、新しい人を入れるにはその文書を書き換えるしかありません。

3つ目は、多数決ではなく全員の同意が原則であること。会社の基本ルールを変えるには、定めに別段の決まりがない限り、社員全員の同意が要ります。株式会社なら議決権の3分の2を集めれば通りますが、合同会社では1人でも反対すれば進みません。社員が3人いて2人が賛成していても、残り1人が同意書に押印しなければ登記は通りません。この点は、複数人で合同会社を作るときに事前に理解しておく必要があります。なお、基本ルールの中に「社員の加入は業務執行社員の過半数で決める」といった別段の定めを置いておけば、その定めが優先します。設立のときに考えておくと、後の手続きが軽くなります。

4つ目は、株式会社なら必要な書類のいくつかが不要になること。株式会社の役員変更では、就任を承諾したことを証する書面に押した印鑑について市区町村長が作った証明書、いわゆる印鑑証明書を添えるよう求められる場面があります。また、本人確認のための証明書も要ります。合同会社の業務執行社員の交代では、これらの本人確認書類は原則として不要です。手続きが1段階軽くなります。ただし代表社員が新しく就任する場合は事情が変わるので、その点は代表社員の変更を扱う際に確認してください。

社員が入るとき:加入の手続きと出資の払込み

新しい人を社員として迎える手順を、順番に見ていきます。

第1段階は、会社の基本ルールを書き換えることへの同意を集めること。合同会社の社員の加入は、その人について基本ルールを変えたときに効力が生じます。書き換える中身は、社員の氏名と住所、そして出資する財産の内容と金額です。この書き換えには原則として社員全員の同意が要るので、総社員の同意書という紙を作ります。日付、書き換え後の条文、同意した社員全員の氏名と押印が入った1枚です。

第2段階は、出資を払い込んでもらうこと。ここに合同会社ならではのルールがあります。会社法は、合同会社が新しく社員を加入させる場合、基本ルールを書き換えた時点でその人がまだ払込みを済ませていなければ、払込みが完了した時に社員になる、と定めています。つまり合同会社では、お金が入るまで社員になりません。書き換えの日と入金の日がずれている場合、加入の日付は入金の日になります。この日付が申請書に書く原因年月日になるので、通帳の記帳日を必ず確認してください。

第3段階は、登記が必要かを判断すること。前の節で説明したとおり、その人を業務執行社員にするなら加入の登記が発生します。しない場合は発生しません。ただし資本金が増えるなら、資本金の額の変更は別途必要です。

第4段階は、申請書を作って法務局に出すこと。法務局は合同会社向けに専用の様式を公開しており、業務執行社員の退社および加入という名前の記載例が置かれています。この様式は退社と加入をまとめて申請する形になっていますが、加入だけ、退社だけでも同じ形式で作れます。

なお、加入の登記では、その人が出資を払い込んだことを証する書面を添えることになっています。実務では、通帳の写しと代表社員が作成した証明書を合わせてとじる形が一般的です。日付の裏付けになる紙なので、雑に作ると後から確認を求められます。

社員が抜けるとき:退社の事由は法律で決まっている

社員が会社から抜けることを退社と呼びます。従業員が辞めることではありません。

会社法は、社員が退社する事由を列挙しています。定款で定めた事由が発生したこと、総社員の同意、死亡、合併によってその社員である法人が消滅したこと、破産手続開始の決定、解散、後見開始の審判を受けたこと、そして除名です。このうち破産手続開始の決定、解散、後見開始の審判については、これらの事由では退社しないと会社の基本ルールで定めておくこともできます。

実務でよく使われるのは、総社員の同意と、あらかじめ基本ルールに書いておいた事由の2つです。自分の意思で抜けたい場合、ほかの社員全員が同意すればその日に退社できます。同意が得られない場合には、事業年度の終わりに6か月前の予告をして退社するという道も法律上は用意されていますが、実際にここまでこじれる例は多くありません。

死亡による退社は、相続の扱いに注意が要ります。株式会社の株式は相続されますが、合同会社の持分は原則として相続されません。社員が亡くなった場合、その人は退社し、相続人は持分の払戻しを受ける立場になります。ただし、基本ルールに「社員が死亡した場合は相続人が持分を承継する」という定めを置いておけば、相続人がそのまま社員になります。家族で合同会社を運営している場合、この定めの有無で結果が大きく変わるので、設立時に確認しておく価値があります。

退社した社員には、原則として持分の払戻しを請求する権利が生じます。会社に現金の余裕がないタイミングで退社が起きると、払戻しの資金繰りが問題になります。複数人で合同会社を作るときは、退社時の計算方法をあらかじめ基本ルールや社員間の取り決めに書いておくと、揉めごとを防げます。

登記の面では、抜ける人が業務執行社員として登記されていたなら、退社の登記が必要です。登記されていない社員が抜けた場合、そのこと自体では登記は発生しません。ただし退社にともなって持分の払戻しをし、資本金の額が減るなら、資本金の額の変更の登記が要ります。この場合は債権者に知らせる手続きも加わるため、期間の見込みが変わります。

持分を譲って入れ替わる場合

社員が入れ替わる典型的なパターンが、持分の譲渡です。抜ける人が持っている持分を、入る人が買い取る形を取ります。法務局が公開している記載例にも、持分全部譲渡による社員の退社および加入という見出しが付いたものがあります。

この方法の利点は、資本金の額が動かないことです。出資はすでに済んでいて、その権利が人から人へ移るだけなので、会社に新しくお金が入るわけではありません。したがって資本金の額の変更の登記は発生せず、登録免許税も社員の交代分だけで済みます。会社の外から見た財務の見え方も変わりません。

手続きの中心は、持分譲渡契約と総社員の同意です。会社法は、社員がその持分を他人に譲り渡すには、原則としてほかの社員全員の承諾が要ると定めています。業務を執行しない社員の持分については、業務執行社員全員の承諾で足りる場合もありますが、基本ルールの書きぶりによって変わります。実務では、譲渡についての同意と、それにともなう基本ルールの書き換えについての同意を、1枚の総社員の同意書にまとめて作ることが多いです。

申請書には、退社と加入を並べて書きます。法務局の記載例では、登記の事由に「業務執行社員の退社及び加入」と書き、登記すべき事項の欄に、退社する人の資格と氏名と退社日、加入する人の資格と氏名と加入日を、それぞれ並べる形が示されています。

このパターンで注意したいのは、代表社員も同時に交代するケースが多いことです。1人で運営していた合同会社を別の人に引き継ぐ場合、社員としての持分を譲るのと、代表社員の座を引き継ぐのは別の話として整理します。法務局の記載例にも、基本ルールの定めに基づく互選によって加入した業務執行社員を代表社員と定めた場合には、定款、互選を証する書面、就任承諾書を添える、という注記があります。

申請書の書き方:登記の事由と登記すべき事項

申請書の形は株式会社のものとよく似ています。書く項目を上から追います。

会社法人等番号は12桁の番号で、登記事項証明書の冒頭にあります。分かる場合に記載してくださいという扱いです。

フリガナと商号。フリガナは会社の種類を表す部分、つまり「合同会社」の4文字を除いて片仮名で左詰めに書きます。この表記は国税庁の法人番号公表サイトを通じて公表されます。商号そのものは登記されているとおりに写します。

本店も登記されているとおりに書きます。

登記の事由。社員が交代するなら「業務執行社員の退社及び加入」と書きます。加入だけなら「業務執行社員の加入」、退社だけなら「業務執行社員の退社」です。

登記すべき事項。ここは書式が決まっています。社員に関する事項という見出しの下に、資格として業務執行社員、氏名、原因年月日を並べます。原因年月日には「令和○年○月○日退社」「令和○年○月○日加入」のように、日付と事由をセットで書きます。退社する人と加入する人がいるなら、同じ形の固まりを2つ並べます。

登録免許税。金額は次の節で説明します。

添付書類。書類の名前と通数を並べます。

申請人の欄。本店、商号を書き、代表社員の住所と氏名を書いて、登記所に提出した印鑑を押します。代理人に任せる場合は代理人の住所と氏名を書き、代理人の認印を押します。この場合、代表社員の押印は不要です。

申請書が収入印紙貼付台紙を含めて複数ページになるときは、つづり目に契印を押します。契印に使う印鑑は申請書に押したものと同じでなければなりません。

添える書類は「同意」と「事実」の2種類

添付書類を覚えるとき、役割で2つに分けると迷いません。1つは会社の中で正しく決めたことを示す紙。もう1つは、その決定どおりの事実が起きたことを示す紙です。

総社員の同意書が前者の中心です。社員の加入も、持分の譲渡も、基本ルールの書き換えを伴うため、原則として全員の同意が要ります。商業登記のルールでも、登記すべき事項について総社員の同意を要するときは、その同意があったことを証する書面を添えると定められています。日付、同意の対象、社員全員の氏名と押印が必要です。1人でも欠けると受理されません。

出資に係る払込みまたは給付があったことを証する書面が後者にあたります。新しい社員が出資をして加入する場合に添えます。通帳の写しに代表社員の証明書を付ける形が実務では一般的です。持分の譲渡による交代の場合は、会社に新しくお金が入らないので、この書面は不要です。

代表社員に関する書類は、加入した人を代表社員にする場合に加わります。法務局の記載例では、基本ルールの定めに基づく互選によって代表社員を定めた場合として、定款、業務執行社員の互選による代表社員の選任を証する書面、就任承諾書の3点が挙がっています。

法人が社員になる場合の書類も用意されています。社員が法人であるときは、その法人の登記事項証明書を添えます。ただし、申請する登記所の管轄内にその法人の本店があるときは不要で、管轄外でも申請書に会社法人等番号を書けば添付を省略できます。代表社員が法人である場合はさらに、職務執行者の選任に関する書面と職務執行者の就任承諾書が加わります。法人が代表社員になるケースは、親会社が子会社を合同会社の形で持つときなどに見られます。

委任状は、代理人に申請を任せた場合だけ必要です。

書類は申請書に書いた順に重ねて、左上をホチキスで留めます。

登録免許税は1万円。ただし増資が絡むと別計算

社員の交代にかかる登録免許税は決まっています。

合同会社の代表社員の交代(就任・退任)に関する登録免許税額は、申請1件につき1万円(資本金の額が1億円を超える合同会社については3万円)とされています。 出典: corporate.ai-con.lawyer

国税庁が公開している税額表でも、役員に関する事項の変更は1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社については1万円とされています。合同会社の多くは資本金が1億円以下なので、実際に納めるのは1万円になります。

ここで大事なのは、「1件につき」という単位です。退社と加入を同じ申請書でまとめて出せば、何人分であっても1万円で済みます。別々の日に分けて申請すると、そのたびに1万円がかかります。交代が同じ時期にまとまるなら、1回の申請にまとめるほうが安くなります。

一方、増資が絡むと計算が変わります。新しい社員が出資して加わり、資本金が増える場合、資本金の額の変更の登記が別に立ちます。法務局が公開している合同会社の資本金の額の変更の記載例には、増加した資本金の額の1000分の7、この額が3万円に満たない場合は3万円、という計算方法が示されています。さらにその記載例には、業務執行社員の加入の登記について別途3万円、資本金の額が1億円以下の会社にあっては1万円の納付が必要になる、という注記があります。

つまり、新しい人が出資して業務執行社員になるケースでは、資本金の額の変更分と社員の加入分の両方がかかります。資本金を100万円増やして1人加入させるなら、資本金分で3万円、加入分で1万円、合計4万円が目安です。持分の譲渡で入れ替わるだけなら1万円で済むので、この差は小さくありません。

納め方は収入印紙か領収証書です。収入印紙は白紙の台紙に貼ります。自分で消印を押すと使えなくなるので、貼るだけにします。法務局は、消印の作業の都合上、台紙の右側に寄せて貼るよう案内しています。

司法書士に依頼する場合は、登録免許税に加えて報酬がかかります。金額は依頼先によって変わりますが、数万円程度が一般的な範囲とされています。

期限は2週間。過ぎたときに何が起きるか

会社の登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に変更の登記をしなければならないと会社法が定めています。合同会社の業務執行社員や代表社員の変更も、この2週間のルールの対象です。

起算日は変更が生じた日です。持分の譲渡による交代なら譲渡の効力が生じた日、新しい社員の加入なら出資の払込みが完了した日、退社なら退社の効力が生じた日になります。同意書の日付ではない場合があるので、どの日が効力発生日なのかを確認してから申請書の原因年月日を書きます。

期限を過ぎても登記の申請は受け付けられます。窓口で拒否されることはありません。ただし、登記を怠ったこと自体について、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。過料は会社ではなく代表者個人に届く点が、見落とされやすいところです。

実務で問題になりやすいのは、社員が抜けたことに気付いていながら、後回しにして何年も経ってしまうパターンです。合同会社は任期による更新の登記がないため、何年も登記所に足を運ばない会社が珍しくありません。その結果、社員の交代を放置していることを誰も指摘しないまま時間が経ちます。登記事項証明書を取る機会があったときに、実態と記録が合っているかを確かめる習慣を付けておくと安全です。

登記が完了するまでには、受け付けから1週間前後かかるのが一般的です。完了の連絡は基本的に来ません。管轄の法務局が掲示している登記完了予定日を過ぎてから、登記事項証明書を取って中身を確かめます。

つまずきやすい箇所

実際に申請書を作る段階で引っかかりやすいところを挙げます。

同意書に社員が1人足りない。登記されていない社員、つまり業務を執行しない社員も、基本ルールを書き換えることへの同意が要ります。登記事項証明書に名前が載っていないため、存在を忘れて同意書から漏れることがあります。手元の定款を開いて、社員として名前が書かれている人を全員数えてください。

原因年月日が同意書の日付になっている。加入の場合、効力が生じるのは払込みが完了した時です。同意書の日付と入金日が違うなら、原因年月日は入金日です。

業務執行社員と代表社員を混同している。業務執行社員の交代なら氏名だけを登記します。代表社員の交代なら住所も登記します。登記すべき事項の書き方が変わるので、どちらの立場の変更なのかをはっきりさせてから書きます。

代表社員の互選をしたのに定款を添えていない。基本ルールの定めに基づいて互選した場合、その定めがあることを示すために定款そのものを添えます。互選書だけでは足りません。

登記所に提出した印鑑ではない印を押している。申請書に押すのは会社実印です。契印も同じ印鑑を使います。

法人が社員になる場合の書類を落としている。社員が法人なら登記事項証明書が要ります。会社法人等番号を書いて省略することもできますが、番号を書かずに証明書も添えないと補正になります。

1件にまとめられる登記を分けて出してしまう。同じ時期に複数の交代があるなら、1通の申請書にまとめると登録免許税が1回分で済みます。

法人の形を選ぶ段階で見えてくること

フリーランスとして働いてきた人が法人を作るとき、合同会社を選ぶ理由はたいてい費用と手間です。設立時の出費が抑えられ、任期による更新の登記もない。1人で始めるなら合理的な選択です。ところが、仕事が広がって人を巻き込む段階になると、この「全員の同意が要る」という性質が重く効き始めます。

2人で合同会社を作り、方針が食い違ったまま片方が抜けたいと言い出したとき、同意が得られなければ手続きは止まります。持分の払戻しをめぐって話がこじれることもあります。株式会社なら議決権の多数で決められる場面が、合同会社では1人の反対で動かなくなります。20年この市場を見てきた立場から言えば、こうした行き詰まりの多くは、設立のときに出口の取り決めを書いていなかったことに原因があります。誰かが抜けるときにどう計算するのか、代表をどう引き継ぐのか。この2点を基本ルールか社員間の書面に残しておくだけで、後の手続きは驚くほど軽くなります。

もう1つ、運営者として見てきた限りではっきりしているのは、間に手数料が乗らない直接の取引ほど、依頼する側と受ける側の双方に余裕が生まれるということです。同じ予算でも中間の取り分がなければ依頼側はより多くを頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が意味を持つのは、金額の大小そのものより、この「手取りが厚い」という質の部分です。法人を作って人を迎える段階まで進む事業者は、たいてい先に取引の構造を整えています。

契約や請求の実務を固めたい人には、発注書と契約書で何を確かめるべきかを整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが役立ちます。取引先から入金が止まったときの備えとしては、回収の手段と費用の見当をまとめた未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が判断を速くしてくれます。会計まわりをどこまで自分でやるか迷っている人には、会計の専門職が業務をどう切り分けているかを扱った会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が、外注と自前の線引きの参考になります。

事業を広げる方向を考えるなら、需要が集まっている領域を知っておくと判断材料になります。生成系の技術を業務に組み込む支援は、業務の整理から入る案件が多く、契約の単位が大きくなりやすい分野です。仕事の中身はAIコンサル・業務活用支援のお仕事にまとまっています。もう少し広い範囲を見たいならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発そのものを請け負う道ならアプリケーション開発のお仕事で案件の種類を確認できます。

報酬の水準を知りたいときは、職種ごとの相場が参考になります。開発職の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場、書き手としての水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。社員を1人増やすかどうかを考える段階では、その人に任せる仕事が相場のどのあたりにあるのかを把握しておくと、出資の額や役割分担の話が具体的になります。

書類仕事の精度を上げたい人は、定型文書の型を身に付けておくと手が速くなります。議事録や同意書のような文書の作法を押さえるならビジネス文書検定が直接的に効きますし、技術寄りの案件で信用を示したいならCCNA(シスコ技術者認定)のような基盤系の資格が実務に結び付きます。登記の書類作りも、決まった型に正しい数字を正しい順番で入れる作業です。ここで手が止まらない人は、契約書でも提案書でも同じ速さで進みます。

合同会社の社員の変更は、様式さえ分かれば自分でやり切れる手続きです。法務局の商業・法人登記の申請書様式のページに合同会社向けの記載例が公開されており、登録免許税の税率は国税庁の税額表で確認できます。手元の定款を開いて社員を数え、この2つのページで自社に当たるパターンを決めてから書き始めれば、迷う時間はかなり減ります。

よくある質問

Q. 合同会社の社員が変わったら必ず登記が必要ですか?

必要とは限りません。登記に載るのは業務を執行する社員の氏名と、代表社員の氏名と住所だけです。出資はするが経営に関わらない社員が入れ替わっても、そのこと自体では登記は発生しません。ただしその出入りによって資本金の額が変わる場合は、資本金の額の変更の登記が別に必要になります。

Q. 合同会社の役員変更の登録免許税はいくらですか?

資本金の額が1億円以下の会社なら申請1件につき1万円、1億円を超える会社なら3万円です。1件という単位なので、退社と加入を同じ申請書にまとめれば何人分でも1万円で済みます。ただし新しい社員の出資で資本金が増える場合は、資本金の額の変更分として別に、増加額の1000分の7(最低3万円)がかかります。

Q. 株式会社の役員変更と何が違いますか?

主な違いは4つです。合同会社の社員には任期がないため定期的な重任登記が不要です。選任ではなく定款への記載で社員になります。多数決ではなく原則として社員全員の同意が要ります。そして業務執行社員の交代では、株式会社で求められる印鑑証明書などの本人確認書類が原則として不要です。

Q. 登記の期限を過ぎてしまったらどうなりますか?

期限は変更が生じた日から2週間ですが、過ぎても登記の申請自体は受け付けられます。窓口で断られることはありません。ただし登記を怠ったことについて、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。合同会社は任期の更新がないため放置しやすいので、気付いた時点で速やかに申請してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月31日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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