合同会社で役員報酬を決めた書類|株主総会がない会社の作り方

前田 壮一
前田 壮一
合同会社で役員報酬を決めた書類|株主総会がない会社の作り方

この記事のポイント

  • 合同会社の役員報酬議事録は
  • 株主総会がない会社で報酬を決めた記録を残す書類です
  • 誰の過半数で決めるのか

合同会社を作ったあと、税理士から「役員報酬を決めた議事録を出してください」と言われて困る人が多くいます。合同会社役員報酬議事録という言葉で検索しても、出てくるのは株式会社の株主総会議事録の説明ばかり。そもそも合同会社に株主総会はありません。では何を作ればよいのか。結論から書くと、社員の同意があったことを証明できる書類であれば、名前は同意書でも決定書でも社員総会議事録でもかまいません。大事なのは書類の名前ではなく、誰がいつ何を決めたかが読み取れることと、決めた時期が税務上の期限に収まっていることです。この記事では、その二つを外さないための手順を順番に整理します。

合同会社には株主総会がない。だから書類の名前が定まらない

株式会社と合同会社の一番大きな違いは、出資した人と経営する人が同じかどうかです。株式会社では、出資した人が株主、経営する人が取締役と分かれていて、株主が集まる場が株主総会です。役員報酬は株主総会で決めるか、総会で総額の上限を決めて取締役会に配分を任せる形になります。

合同会社は違います。出資した人がそのまま社員と呼ばれ、原則としてその全員が会社の業務を執行します。出資者と経営者が一致しているので、株主総会という仕組みそのものが必要ありません。会社法にも合同会社の社員総会という言葉は出てきません。

ここが書類の名前が揺れる原因です。株主総会にあたる法定の会議がないため、決定の記録をどう残すかは会社に任されています。実務で使われている名前は主に三つです。社員が一人だけの会社なら「業務執行社員の決定書」、社員が複数いる会社なら「社員の同意書」または「社員総会議事録」。どれを選んでも法律上の効力に差はありません。

書類の名前より重要なのは、中身が次の四つを満たしているかどうかです。第一に、いつ決めたのか。第二に、誰が決めたのか。第三に、いくらに決めたのか。第四に、いつから支給するのか。この四点が書かれていれば、税務調査で提示を求められたときにも、金融機関から提出を求められたときにも通ります。

合同会社の社員は、原則として全員が会社の業務を執行する立場にあります。ただし、定款で「この人が業務を執行する」と限定することもできます。この違いが、次に説明する「誰の過半数で決めるか」に直結します。

決めるのは社員の過半数か、業務執行社員の過半数か

合同会社の意思決定のルールは、定款をどう作ったかで二通りに分かれます。

社員が二人以上いて、定款で業務執行社員を限定していない場合は、会社の業務は社員の過半数で決めます。社員三人のうち二人が賛成すれば決定です。ここで言う過半数は、出資した金額の割合ではなく頭数です。出資比率が90%の社員が一人、5%ずつの社員が二人という構成なら、少額の二人が結束すれば過半数になります。株式会社の感覚で「出資が多いほうが決められる」と思い込んでいると、ここで食い違いが起きます。

一方、定款で業務執行社員を定めている場合、業務執行社員が二人以上いるなら、業務は業務執行社員の過半数で決めます。業務を執行しない社員は、この決定に加わりません。

どちらのルールが自社に当てはまるかは、定款を読めばすぐ分かります。「当会社の業務執行社員は次のとおりとする」といった条文があれば後者です。何も書かれていなければ前者です。書類を作る前に必ず定款を開いてください。ひな形を引っ張ってきて「社員の過半数の同意により決定した」と書いたのに、実は定款で業務執行社員を限定していた、という食い違いが一番よくある失敗です。

社員が一人だけの合同会社、いわゆる一人合同会社の場合は、過半数を数える必要がありません。その一人が決めればそれで決定です。この場合に作るのは議事録ではなく決定書で、本人が記名押印した一枚で足ります。会議を開いていないのに「議事録」と題して出席者や議長を書くと、実態と合わない書類になります。

なお、役員報酬の額を定款に書き込んでいる会社もあります。この場合、報酬を変えるには定款の変更が必要で、定款の変更には定款に別の定めがない限り総社員の同意が要ります。過半数ではなく全員です。あえて定款に金額を書く会社は少ないですが、設立を代行業者に任せた場合に入っていることがあるので、これも定款で確認してください。

書類の作り方と、書くべき項目

実際に書く内容を整理します。社員が複数いる会社の同意書を例にすると、次の項目をそろえます。

項目 書き方の例
表題 社員の同意書(または業務執行社員の決定書)
会社名 商号を正式表記で書く
決定日 実際に同意がそろった日。さかのぼって書かない
決定事項 役員報酬の額と、支給の開始時期、支給日
対象者 報酬を受ける社員の氏名。複数人なら一人ずつ金額を書く
決定の根拠 定款のどの条文に基づく決定かを一行添える
同意した社員 同意した社員全員の氏名と記名押印

金額の書き方には注意点があります。「月額50万円」と書くとき、それが税金や社会保険料を引く前の額(額面)なのか、手取りなのかを明示してください。役員報酬は額面で決めるのが原則です。手取りで決めてしまうと、社会保険料率が変わるたびに額面が動き、毎月同じ額を支給するという税務上の要件を満たさなくなります。

支給の開始時期も必ず書きます。「令和8年11月分から支給する」のように、何月分から始まるのかを特定してください。支給日についても「毎月25日」のように決めておくと、あとから月をまたいだ支払いが発生したときに説明しやすくなります。

押印については、法律上は必須ではありません。ただし、金融機関に提出する場合や、社員のあいだで後日争いになった場合に備えて、実印または会社の届出印で押しておくほうが安全です。電子的に作成して電子署名を付す形でも問題ありません。

作成した書類は、会社の他の重要書類と一緒に保管します。合同会社の書類の保管期間は株式会社の議事録ほど細かく決められていませんが、法人税の申告に関わる書類は原則として7年間の保存が必要になるため、同じ期間は残しておくと安心です。

決める時期を外すと、経費にならない

ここが、合同会社の役員報酬でもっとも金額に響く論点です。

会社が役員に支払う給与は、全額が自動的に経費(損金)になるわけではありません。国税庁は、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれかに当たらないものは損金にならないと説明しています。

法人が役員に対して支給する給与の額のうち次に掲げる定期同額給与、事前確定届出給与または一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。ただし、次に掲げる給与のいずれかに該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。 出典: nta.go.jp

中小の合同会社が使うのは、ほぼ定期同額給与です。定期同額給与とは、支給の間隔が1か月以下で、その事業年度の各支給時期の金額が同じである給与のことです。毎月同じ日に同じ額を払う、という形が基本になります。

そして、額を改定できる時期が決まっています。原則は、事業年度が始まる日の属する会計期間の開始日から3か月を経過する日まで。3月決算の会社なら6月末まで、12月決算なら3月末までです。設立したばかりの会社は、設立日から数えて3か月以内に決める必要があります。

この期限を過ぎてから増額した場合、増額した差額の部分が損金になりません。たとえば月30万円を期の途中で月50万円に上げた場合、増えた20万円に残りの月数を掛けた額が経費として認められず、その分の法人税がかかります。しかも、本人の側では受け取った給与として所得税と社会保険料の対象になるので、両側で負担が増えます。

だからこそ、同意書や決定書の日付が重要になります。書類の日付が期限内かどうかで、経費にできるかどうかが変わる。設立直後の会社ほど、売上の見通しが立たないうちに報酬額を決めなければならず、悩ましいところです。判断に迷うときは、期限内に低めの額で決めておき、翌期の期首に見直す進め方が現実的です。金額の妥当性や個別の扱いは事情で変わるので、最終的には税務署か税理士に確認してください。

期の途中で変えられる二つの場面

期首から3か月を過ぎたあとでも、額を変えられる場面が二つあります。

一つは臨時改定事由です。役員の職制上の地位が変わった、職務の内容が大きく変わった、といったやむを得ない事情がある場合です。合同会社で言えば、業務執行社員が代表社員になった、担当する事業が大きく増えた、といった変化が該当します。

もう一つは業績悪化改定事由です。会社の経営状況が著しく悪化したことなどによる改定で、これは減額する場合に限られます。国税庁は、一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことはこれに含まれないと明記しています。つまり「今期は思ったより売れなかったので下げる」は理由になりません。取引先の倒産で売上が大きく落ちた、金融機関との協議で経費削減を求められた、といった客観的な事情が要ります。

どちらの場合も、改定した理由を書類に残してください。「代表社員に就任したため」「主要取引先の契約終了により売上が前年同期比で大きく減少したため」のように、事情を具体的に書きます。理由を書かない改定は、あとから説明できません。

毎月の給与とは別に、役員に賞与を出したい場合は事前確定届出給与という仕組みを使います。これは、いつ、いくら払うかをあらかじめ決めて税務署に届け出ておく方法です。届出の期限は、決議をした日から1か月を経過する日と、会計期間の開始日から4か月を経過する日のうち、早いほうです。新しく設立した法人が設立時に始まる職務について定めた場合は、設立の日以後2か月を経過する日が期限になります。届け出た額と違う額を払うと、支給した全額が損金にならない扱いになるため、使う場合は金額と日付を正確に守ってください。

金額を決めるときに見ておく三つの数字

報酬額そのものは経営判断ですが、決める前に確認しておくべき数字が三つあります。

一つ目は社会保険です。法人の事業所は、日本年金機構の説明によれば、事業主のみの場合を含めて厚生年金保険の強制適用事業所になります。つまり、社員が自分ひとりの合同会社であっても、報酬を払う以上は健康保険と厚生年金に加入する義務が生じます。厚生年金の保険料率は平成29年9月以後18.3%で固定されており、会社と本人で折半するので本人負担は9.15%です。健康保険料は都道府県や加入する保険者によって率が違います。報酬を上げれば、会社が負担する保険料も同じ割合で増えるという構造を頭に入れておいてください。

二つ目は法人と個人のどちらで税金を払うかのバランスです。役員報酬を上げれば会社の利益が減って法人税は下がりますが、本人の所得税と住民税、社会保険料は上がります。逆に報酬を抑えれば会社に利益が残り、法人税がかかります。どの水準が最も負担の合計が小さくなるかは、所得の規模、扶養親族の有無、住んでいる自治体によって変わります。一般論として言えることは、極端にどちらかへ寄せると不利になりやすいということだけです。具体的な試算は税理士に依頼するか、税務署の相談窓口で確認してください。

三つ目は融資です。設立まもない会社が創業融資を申し込む場合、金融機関は返済の原資として利益が残るかどうかを見ます。役員報酬を高く設定して会社が赤字になっていると、希望どおりの融資を受けられないことがあります。融資を検討しているなら、報酬を決める前に事業計画の数字と突き合わせておくべきです。

無料のひな形とツールを使うときの注意

同意書や決定書のひな形は、会計ソフトの提供会社や登記支援サービスが無料で配布しています。オンラインで項目を入力すると書類が完成するツールもあり、ゼロから作るより速いのは確かです。ただし、使うときに確かめてほしい点が三つあります。

第一に、株式会社用のひな形が混ざっていないかです。「株主総会議事録」「取締役」「議長」といった言葉が残っているひな形を、社名だけ差し替えて使ってしまう事故が起きます。合同会社には取締役も株主総会もありません。用語が合っていない書類は、金融機関や税務署に出したときに実態と合っていないと見られます。

第二に、自社の定款と決定ルールが一致しているかです。前に書いたとおり、社員の過半数で決めるのか業務執行社員の過半数で決めるのかは定款次第です。ひな形の文面がどちらか一方を前提にしていることがあるので、該当箇所を必ず読み替えてください。

第三に、無料と書かれていても条件が付いていることがある点です。サービスによっては会員登録が必要だったり、作成そのものは無料でも郵送や申請の代行に費用がかかったりします。役員報酬の決定は登記が不要なので、登記の代行費用が含まれた料金プランを選ぶ必要はありません。

登記の話が出たので補足すると、役員報酬の額は登記事項ではありません。報酬を決めても、変更しても、法務局に届け出る必要はなく、登録免許税もかかりません。登記が必要になるのは、業務執行社員や代表社員が変わったときや、本店を移したときなどです。参考までに、こうした登記事項の変更にかかる登録免許税は申請1件につき3万円で、国税庁の登録免許税の税額表に一覧が出ています。合同会社の設立自体は資本金の額の1,000分の7で、6万円に満たないときは6万円です。

役員報酬を0円にするという選択

設立初年度で売上の見通しが立たないとき、役員報酬を0円にできるかという相談がよくあります。結論としては可能です。役員報酬の支給を義務づける規定は会社法にはありません。

0円にする利点は二つあります。会社からの現金の流出が止まること。そして、報酬がまったく支払われない場合は健康保険と厚生年金の被保険者に該当しないと扱われるのが一般的で、会社が負担する社会保険料も発生しないことです。ただし、この扱いが自社に当てはまるかどうかは事情によって変わるので、実際に手続を進める前に年金事務所へ確認してください。勤め先を別に持っていて、そちらで社会保険に入っている人が合同会社を作る場合、報酬0円のまま様子を見る進め方は現実的な選択肢になります。

不利な点もはっきりしています。会社に利益が残れば、そのまま法人税の対象になります。個人として生活費を会社から引き出す手段がなくなるので、役員が会社に貸したお金を返してもらう形にするか、配当で受け取るかを考えることになります。また、国民健康保険や国民年金に自分で入り直す必要が出る場合があり、そちらの負担が増えることもあります。

もう一つ、期の途中で0円から支給を始めるのは原則としてできません。定期同額給与のルールは、期首から3か月を経過する日までに決めた額を、その事業年度を通じて同額で払うことを求めています。0円でスタートして途中から払い始めると、支給した分が経費にならない可能性が高くなります。0円にする場合も、その決定を書類として残し、翌期の期首に見直す前提で進めるのが安全です。

同意書の書き方の見本

実際の文面がイメージしにくいという声が多いので、社員が複数いる会社の同意書を想定した見本を示します。カギ括弧の中は自社の内容に置き換えてください。

社員の同意書

合同会社〇〇の社員は、令和〇年〇月〇日、
下記のとおり業務執行社員の報酬を定めることに同意した。

記

1. 業務執行社員 〇〇〇〇 の報酬を月額金〇〇円(税込・社会保険料控除前)とする。
2. 業務執行社員 △△△△ の報酬を月額金〇〇円(税込・社会保険料控除前)とする。
3. 支給開始は令和〇年〇月分からとし、毎月〇日に支給する。
4. 本件は当会社定款第〇条に基づき、社員の過半数の同意により決定した。

以上のとおり同意したことを証するため、本書を作成し、同意した社員が記名押印する。

令和〇年〇月〇日
合同会社〇〇
社員 〇〇〇〇 印
社員 △△△△ 印

見本の中で伏せてある箇所は、すべて実際の内容で埋めてください。特に注意したいのが第4項です。定款で業務執行社員を限定している会社なら、ここは「業務執行社員の過半数の同意により決定した」と書き換えます。定款に報酬の定めがある会社なら、同意書ではなく定款変更の手続が必要になるので、この文面のままでは足りません。

社員が一人の会社では、表題を「業務執行社員の決定書」に変え、同意した社員の欄を「業務執行社員 〇〇〇〇 印」の一行にします。「社員の過半数の同意により」という文言も不要です。

決めた報酬が1年でどう動くか、日付で追う

書類を一枚作れば終わり、という手続ではありません。決めた金額は、年間の別の手続と噛み合って動いていきます。4月1日に設立した合同会社を例に、順番に並べます。

設立日から5日以内。健康保険・厚生年金保険の新規適用届を年金事務所へ出します。報酬を受ける社員の被保険者資格取得届も一緒に出します。届出には報酬の見込額を書く欄があるため、実際にはこの時点で金額が決まっていることが多いはずです。

設立日から3か月以内(この例なら6月末まで)。定期同額給与として損金にできる額を決める期限です。同意書または決定書の日付をこの中に収めます。ここを外すと、以降どれだけ整えても増額分は経費になりません。

支給開始月から毎月。決めた額を同じ日に同じ額で支給します。源泉所得税を差し引いて、原則として翌月10日までに納めます。給与を受ける人が常時10人未満で納期の特例の承認を受けているなら、1月から6月までの分は7月10日、7月から12月までの分は翌年1月20日にまとめて納めます。

毎年7月。算定基礎届を出します。この届出の位置づけは次のとおりです。

事業主は、7月1日現在のすべての被保険者および70歳以上被用者について、その年の4月、5月、6月に支給した報酬を「算定基礎届」で届出します。この届出は、毎年1回、その年の9月から翌年の8月までの保険料や保険給付の額の基礎となる標準報酬月額を決めるためのものです(定時決定)。 出典: nenkin.go.jp

つまり4月から6月に払った額が、その年の9月から翌年8月までの保険料を決めます。期首から3か月以内に決めた金額が、ちょうどこの4月から6月に重なる会社では、報酬の決定が社会保険料の水準まで1年分決めることになります。3月決算の会社が6月末に増額すると、6月分の支給額が算定の対象に入る場合があり、保険料に跳ね返る点は見落とされやすいところです。

12月。年末調整をします。役員報酬も給与所得なので対象です。

翌年1月末まで。法定調書合計表と給与支払報告書を提出します。給与支払報告書は市区町村へ出すもので、これが翌年度の住民税の計算の元になります。

決算日から2か月以内。法人税の申告をします。ここで初めて、決めた報酬が損金として認められるかどうかが数字として確定します。

こうして並べると、報酬を決める一枚の書類が、社会保険、源泉徴収、住民税、法人税の4つに順番に効いていくことが分かります。期限や様式は制度の見直しで変わることがあるので、実際に出す前に年金事務所や税務署の案内で今の記載を確かめてください。

毎月の支給を帳簿にどう書くか

決めた額をそのまま振り込むわけではありません。差し引くものがあるので、仕訳は少し込み合います。月額50万円と決めた場合で組み立ててみます。

借方は、役員報酬500,000円の一行だけです。貸方が分かれます。源泉所得税の預り金、住民税の預り金、社会保険料の本人負担分の預り金、そして差額を振り込む普通預金。この4つに割れます。

厚生年金の保険料は、標準報酬月額が50万円なら料率18.3%で91,500円になり、会社と本人で折半するので本人負担は45,750円です。健康保険料は加入する保険者と都道府県で率が違うので、自社が加入している保険者の料率表で確認してください。源泉所得税の額は給与所得の源泉徴収税額表で求めます。扶養親族の数で変わるので、金額を決め打ちにはできません。

会社が負担する分は別の仕訳になります。借方に法定福利費として会社負担分を計上し、貸方を未払金または預り金にします。納付するときに、本人から預かった分と会社が負担する分をまとめて普通預金から出します。

ここで注意したいのが、役員報酬を未払いのまま計上する扱いです。資金繰りが厳しい月に「支給したことにして未払金に立てる」という処理をすると、実際にいつ支払ったのかが説明しづらくなります。定期同額給与は毎月同額を支給することが前提なので、支給の実態と帳簿がずれると、損金にできるかどうかの議論になりやすい部分です。金額を決める段階で、払い続けられる水準にしておくほうが安全です。

役員報酬は消費税の対象外の取引です。会社の経費として支払う外注費とは扱いが違うので、同じ「人に払うお金」でも科目と消費税の扱いを分けてください。

税務調査で見られる点

役員報酬の決定書は、税務調査で提示を求められる代表的な書類です。見られる点はだいたい決まっています。

書類の日付が期限内かどうか。期首から3か月以内に決められているか。あとから日付を書いた形跡がないか。決議の日と支給開始の月が矛盾していないか。

決めた額と実際の支給額が一致しているか。書類に月50万円と書いてあるのに、通帳の出金が月によって違えば、定期同額給与としての説明が難しくなります。1円単位で一致していることが前提です。

誰が決めたのかが定款と合っているか。定款で業務執行社員を限定しているのに「社員の過半数の同意により決定した」と書いてあれば、決定の手続そのものが定款と食い違います。

個人の支出と混ざっていないか。合同会社は出資者と経営者が同じなので、会社の口座から生活費を出してしまう事故が起きやすい。役員報酬として処理していない引き出しは、貸付金として扱われたり、給与として認定されたりします。

同族関係者への報酬が実態に見合っているか。配偶者や家族を社員にして報酬を払っている場合、実際にどんな業務をしているかを聞かれます。業務の記録が何も残っていないと説明できません。

いずれも、書類を作る段階で気をつければ済むことです。逆に言えば、あとから整えようとしても整いません。最終的な判断は事情によって変わるので、扱いに迷う点は税務署か税理士に確認してください。

書類まわりの業務を請け負う側から見たこの分野

在宅で仕事を受けている人にとって、こうした社内書類の作成補助は、目立たないわりに需要が安定している領域です。会社の側は、税理士に頼むほどではない下書きや、過去の書類の体裁をそろえる作業で手が止まっていることが多いからです。

ただし、受けられる範囲には線があります。報酬額が税務上どう扱われるかの判断は税理士の業務、登記の申請代理は司法書士の業務です。請け負えるのは、決まった内容を文書の形に整える作業、書式を統一する作業、保管と更新の仕組みを作る作業などになります。最初にこの線を伝えておくと、依頼する側も安心して任せられますし、境界を越えた依頼を断りやすくなります。

文書作成の力を客観的に示したい場合は、ビジネス文書検定のような資格が判断材料になります。文部科学省後援の検定で、正確で効率的なビジネス文書を作る力を測るものです。法律や税務の知識を証明するものではありませんが、書式や構成の正確さが求められる場面では評価されます。また、書類作成を仕組み化する方向に広げるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、生成AIの活用戦略から業務プロセスへの組み込み、社内研修までを支援する案件が視野に入ります。定型書類はテンプレート化と自動生成の相性がよく、作成そのものより仕組みづくりのほうが単価が付きやすい領域です。

報酬水準の目安を知っておくと交渉の基準になります。文書作成を主軸にするなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場、書類作成と社内システムの構築をセットで請ける方向ならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。全国平均と都道府県別の数字が確認できるので、居住地や取引先の所在地に合わせて読み替えてください。

フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、長く続いている人ほど、単発の作業ではなく「この人に任せると自分が考えなくて済む」という状態を作ることに時間を使っています。役員報酬の書類で言えば、その年の分を一枚作って終わりにせず、翌期の期首に声をかけて、期限内に決め直す流れを用意しておく。依頼する側からすると、期限を忘れて経費にできなくなる事故を防いでもらえるわけで、これは金額以上の価値があります。そういう関係になると、次の年も、その次の年も依頼が戻ってきます。

もう一つ、運営者として見てきた限りでは、報酬は額面ではなく手取りで考えている人のほうが息が長い。同じ10万円の仕事でも、仲介手数料が引かれる経路と引かれない経路では、年間で見ると差が積み上がります。仲介手数料が差し引かれない手数料0%の形で直接やり取りできる経路を一つ持っておくと、依頼する側も同じ予算でより多く頼めるようになり、結果として仕事が続きやすくなる。書類作成のように毎年繰り返し発生する領域では、この構造の差がそのまま効いてきます。

取引条件の整備も忘れずに進めてください。発注書や契約書の段階で確認しておくべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。万一報酬が支払われない事態になったときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で費用と手順が確認できます。会計や税務の素養がある人がこの領域に広げていく道もあり、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】には本業との両立の考え方が書かれています。

合同会社の役員報酬の書類は、作ること自体は一枚で終わります。難しいのは、定款を読んで誰の過半数で決めるかを確認すること、そして期首から3か月という期限を外さないこと。この二つさえ押さえておけば、書式は自社に合う形で作ってかまいません。

よくある質問

Q. 合同会社に株主総会はないのに、なぜ議事録が必要なのですか?

法律で議事録の作成が義務づけられているわけではありません。ただし、役員報酬をいつ誰がいくらに決めたかを証明できないと、税務調査で経費として認められない、金融機関に提出できないといった問題が起きます。社員の同意書、業務執行社員の決定書など、名前は自由です。決定日、決定者、金額、支給開始時期の四点が書かれていれば足ります。

Q. 社員が一人の合同会社でも書類は要りますか?

必要です。一人であれば過半数を数える必要はなく、その一人が決めればそれで決定ですが、決めた事実を残さないと後から証明できません。この場合は会議を開いていないので、議事録ではなく決定書の形で作ります。本人が記名押印した一枚で足ります。日付をさかのぼって作らないでください。

Q. 役員報酬はいつまでに決めなければいけませんか?

定期同額給与として経費にするには、事業年度が始まる日の属する会計期間の開始日から3か月を経過する日までに決める必要があります。設立したばかりの会社は設立日から3か月以内です。この期限を過ぎて増額すると、増えた分は経費になりません。金額の個別判断は事情で変わるので、税務署か税理士に確認してください。

Q. 役員報酬を変更したら登記は必要ですか?

必要ありません。役員報酬の額は登記事項ではないため、法務局への届け出も登録免許税もかかりません。登記が必要になるのは、業務執行社員や代表社員が変わったとき、本店を移したときなどです。登記事項の変更にかかる登録免許税は、国税庁の税額表によれば申請1件につき3万円です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月17日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方