株主リストとは|登記に添える書類の作り方

前田 壮一
前田 壮一
株主リストとは|登記に添える書類の作り方

この記事のポイント

  • 会社の登記を申請するときに法務局へ一緒に出す添付書類のことです
  • 上位10名と3分の2の数え方
  • つまずきやすい場面の対処までを法務省の資料で確認しながら手順で整理します

役員を入れ替えた、本店を移した、会社の目的を増やした。こうした変更を法務局に届け出ようとしたとき、司法書士や法務局の窓口から「株主リストも付けてください」と言われて、初めてその言葉を聞いた人は多いはずです。株主リストとは、その登記のもとになった株主総会で、誰が何株持っていて、どれだけの議決権を持っていたのかを一覧にし、会社の代表者が「この通りに間違いありません」と証明する紙のことです。難しそうな名前ですが、作る対象も書く項目も法務省がはっきり決めていて、ひな形も無料で配られています。この記事では、必要になる場面、書く中身、よく取り違えられる株主名簿との違い、そして実際に手が止まりやすい場面の対処までを、順番に整理します。

株主リストが添付書類になったのは2016年から

株主リストは、会社法がもともと定めていた書類ではありません。商業登記規則という、登記の手続きを細かく定めたルールが改正され、平成28年(2016年)10月1日以降に申請する登記から、添付が必要な場合が出てきました。根拠は商業登記規則61条2項と3項です。対象になるのは株式会社のほか、投資法人と特定合同会社を含む特定目的会社で、それ以外の法人には求められません。

平成28年10月1日以降の株式会社・投資法人・特定目的会社の登記の申請に当たっては,添付書面として,「株主リスト」が必要となる場合があります(商業登記規則61条2項・3項,投資法人登記規則3条,特定目的会社登記規則3条)。 出典: moj.go.jp

なぜ急にこんな書類が増えたのか。背景には、実際には開かれていない株主総会の議事録を作って登記を通してしまう、いわゆる虚偽の登記を防ぐという目的があります。議事録だけなら、極端な話、文面を作ればできてしまいます。そこに「誰が議決権を持っていたのか」を代表者の証明付きで添えさせれば、嘘をつく心理的なハードルは一段上がります。会社の乗っ取りや、身に覚えのない役員変更といったトラブルの入り口を狭める狙いです。

もうひとつ、この制度で覚えておきたい点があります。施行日より前に株主総会を開いていたとしても、登記の申請そのものを施行日以降に行うのであれば、株主リストは必要です。判定の基準になるのは総会の日ではなく申請の日です。昔の総会の決議をもとにいまから登記する、という場面では見落としやすいので注意してください。

必要になるのは2つの場面だけ

株主リストが必要になる場面は、法務省の整理ではたった2つです。ひとつは、登記すべき事項について株主総会の決議(種類株主総会の決議を含む)が必要な場合。もうひとつは、登記すべき事項について株主全員の同意(種類株主全員の同意を含む)が必要な場合です。

前者の代表例が、役員の変更です。取締役や監査役を選び直したとき、その選任は株主総会の決議で決まります。だから役員変更の登記には株主リストが付きます。商号の変更、目的の変更、本店の移転で定款を変える場合、発行可能株式総数の変更、資本金の減少なども、定款変更のために株主総会の決議を経るので同じです。

ここで見落とされがちなのが、書面で決議を済ませた場合です。株主全員が書面で賛成の意思を示せば、実際に集まらなくても総会の決議があったものとみなす仕組みが会社法319条1項にあります。この決議省略を使ったときも、株主リストは必要です。集まっていないから総会ではない、と考えて外してしまうと、補正の連絡が来ます。

逆に、株主リストが要らない登記もあります。たとえば取締役会で決めれば足りる事項、代表取締役の住所変更や支店の設置など、株主総会の決議も株主全員の同意も必要ない登記には添付しません。会計監査人が任期満了のときに何も決議しなくても再任されたとみなされる自動再任(会社法338条2項)の場合も、法務省は添付不要と明示しています。何でもかんでも付ければよいわけではなく、その登記の中身が株主の意思を必要とするかどうかで決まります。

決議が必要な場合に書く5つの項目

株主総会の決議を要する登記では、株主全員を書き出す必要はありません。書くのは次のどちらか、人数の少ないほうです。

・議決権の数が多い順に上位10名の株主 ・議決権の割合を多い順に足していき、合計が3分の2に達するまでの株主

たとえば代表者が1人で全株を持っている会社なら、1人足せばその時点で割合は100パーセントになり、3分の2を超えます。書くのは1名で終わりです。株主が5人で、上位2人の合計が70パーセントなら、書くのは2名です。株主が30人いて、上位10名まで足しても3分の2に届かないなら、上位10名で止めます。どちらが少ないかを比べる、という順番で考えると迷いません。

そのうえで、選んだ株主について次の5点を書きます。

・株主の氏名または名称 ・住所 ・株式数(種類株式を発行している会社は、種類ごとの数も) ・議決権数 ・議決権数の割合

この5点を、会社の代表者が証明する形にします。書式には「上記の株主は、株主総会に出席することができる株主全員の議決権の3分の2に達するまでの株主である」といった趣旨の証明文と、代表者の記名押印欄があらかじめ用意されています。

議決権数の割合は、全体の議決権数を分母にして計算します。ここで分母に入れてはいけないのが、自己株式のように、その議案で議決権を行使できない株式です。会社が自社の株を買い取って持っている場合、その分は議決権がありませんから、分母からも株主の一覧からも外します。一方で、総会を欠席した株主や、出席はしたが投票しなかった株主は外しません。議決権を行使できる立場だったかどうかが基準であって、実際に行使したかどうかは関係ありません。この点は法務省のよくある質問でも明確に答えられています。

議決権の数え方でつまずかないために

株主リストで唯一、計算らしい計算が必要になるのが議決権数と、その割合です。ここを間違えると、書く株主の人数まで変わってしまうので、順を追って確認します。

出発点は、1株につき1個の議決権がある、という原則です。株主名簿に「甲が600株、乙が300株、丙が100株」とあるなら、議決権数はそのまま600、300、100です。合計は1,000で、甲の割合は60パーセント、甲と乙を足すと90パーセントになります。上位から足して3分の2に達するのは乙までなので、書くのは甲と乙の2名です。丙は書きません。

これが変わるのが単元株制度を採っている会社です。単元株制度とは、たとえば100株をひとかたまりとし、そのかたまりごとに1個の議決権を与える仕組みのことです。1単元100株の会社で甲が650株持っているなら、議決権は6個です。端数の50株には議決権がありません。株式数と議決権数がずれるので、書式の欄をそのまま株式数で埋めないよう気をつけてください。

自己株式も外します。会社が自分で買い取って保有している株式には議決権がありません。発行済株式総数が1,000株でも、うち200株が自己株式なら、議決権の総数は800です。割合の分母はこの800になります。発行済株式総数をそのまま分母にすると、全員分を足しても100パーセントにならず、証明文と数字が食い違います。

議決権を制限した種類株式を発行している会社も同じ考え方です。その議案について議決権を行使できない株式は、決議を要する場合の株主リストでは分母にも一覧にも入れません。種類株主総会の決議が必要な登記では、その種類の株主について別に株主リストを作ることになります。

計算が終わったら、割合の合計を一度見てください。上位10名で切った場合を除き、選んだ株主の割合を足した数が3分の2、つまり約66.7パーセント以上になっているかを確かめます。ここが下回っていたら、足す株主が1人足りていません。

株主全員の同意が必要な場合は中身が変わる

もうひとつの場面、株主全員の同意を要する登記では、書き方が変わります。対象は上位10名でも3分の2でもなく、株主全員です。そして書く項目は次の4点で、議決権数の割合は求められません。

・株主の氏名または名称 ・住所 ・株式数(種類株式発行会社は種類ごとの数も) ・議決権数

割合が要らないのは、全員の同意が前提なので、誰がどれだけの割合を持っているかを確かめる意味が薄いからです。かわりに、全員が漏れなく並んでいることが大事になります。

そしてこの場面には、決議の場合とちょうど逆の落とし穴があります。決議の場合は議決権を行使できない株式を持つ株主を書きませんでしたが、全員の同意を要する場合は、議決権を行使できない株式を持つ株主も書く必要があります。自己株式しか関係しない小さな会社では影響が出ませんが、種類株式を発行していたり、議決権制限株式を使っていたりする会社では、ここを取り違えると一覧が足りなくなります。

決議と同意で書く範囲も項目も逆向きに変わる、というのはかなり紛らわしい設計です。作業に入る前に、その登記が「決議」なのか「全員の同意」なのかを先に確定させ、そのうえで書式を選ぶ。この順番を守るだけで、作り直しのほとんどは防げます。

株主名簿と株主リストは別物

この分野でいちばん多い誤解が、株主名簿と株主リストを同じものだと思ってしまうことです。会社に「株主名簿はありますか」と聞くと、株主の氏名と住所と持株数を並べた表が出てくる。それを株主名簿だと思っている会社は珍しくありません。

多くの会社では、この株主リストを株主名簿と呼んでおり、「ウチの会社は株主名簿をきちんと作成している。」と認識されていることがありますが、これは大きな誤解です。 出典: ylo-corporatelaw.com

株主名簿は、会社法121条が作成を義務づけている、会社が常に備えておく帳簿です。書くのは、株主の氏名または名称および住所、その株主が持つ株式の数、その株主が株式を取得した日、そして株券を発行している会社なら株券の番号の4点です。株主リストには「取得した日」がなく、かわりに「議決権数」と「議決権数の割合」があります。この時点で中身が違います。

置き場所も違います。株主名簿は会社法125条1項により本店に備え置かなければなりません(株主名簿管理人を置いている場合はその営業所)。株主と債権者は、営業時間内であれば理由を示して閲覧や写しの請求ができます。株主リストは登記のたびに作って法務局に出す、いわばその都度の書類です。常備する帳簿と、その都度出す証明書。役割がまったく違います。

だから、株主名簿を登記申請書に付けても株主リストの代わりにはなりません。法務省も、記載内容が異なるためそれはできないと答えています。そして株主名簿を作っていないこと自体にも罰があります。会社法976条は、株主名簿に記載すべき事項を記載しなかった場合や、備え置きを怠った場合に、100万円以下の過料に処すると定めています。登記のたびに作る一覧だけで済ませている会社は、この過料の対象になりうる状態です。

株主リストしか作成していない場合にも、会社法が定める「株主名簿」を作成していないことになりますので、100万円以下の過料が課されてしまう可能性があります。 出典: ylo-corporatelaw.com

なお、過料が実際に科されるかどうかは事案によって変わります。金額や運用の見通しは断定できる性質のものではないので、自社の状況が心配な場合は司法書士や弁護士に確認してください。

作るのは誰か、いつの時点の代表者か

株主リストは、原則として登記申請人、つまり会社の代表者が作ります。外部の誰かに証明してもらう書類ではありません。株主本人の署名も押印も要りません。代表者が自社の株主名簿を見て作り、代表者が証明する、という一人で完結する構造です。

ここで実務上よく問題になるのが、総会のときと申請のときで代表者が変わっているケースです。代表取締役を交代させる決議をした場合、総会のときは前の代表者、登記を出すときは新しい代表者です。どちらが作るのか迷いますが、答えは決まっていて、登記申請時の代表者、つまり新しい代表者が作ります。前任者を追いかけて押印をもらう必要はありません。

合併や会社分割のような組織再編の登記では、関係する会社が複数あるため、誰が作るかが場面ごとに分かれます。法務省は別表を用意してこれを整理しているので、組織再編をするときは自己判断せず、その別表と管轄の法務局に確認するのが確実です。

添付の形式も押さえておきます。株主リストは登記申請書の添付書面なので、書面で申請するなら紙で綴じて出し、オンラインで申請するなら電子データとして添付します。書面の場合、代表者の記名押印が求められます。使う印鑑については、法務局に届け出ている会社の実印を押しておけば問題が起きにくい運用です。

議案ごとに作る。1通で済ませられる条件

意外に知られていないのが、株主リストは「総会ごと」ではなく「登記すべき事項ごと」に作るのが原則、という点です。1回の株主総会で役員の変更と目的の変更を両方決議し、それを1件の登記申請でまとめて出す場合、原則としてそれぞれについて株主リストを作ります。

ただし救済もあります。各議案を通じて、株主リストに書く株主の内容が変わらないのであれば、その旨を株主リストに明記することで1通にまとめられます。株主が代表者1人だけ、あるいは家族数人で固定されている会社なら、議案が3つあっても中身は同じですから、1通で足ります。

「内容が変わらない」というのは、たとえば議案ごとに議決権を行使できる株主の顔ぶれが変わらない、ということです。種類株式を使っていて、議案Aでは議決権があるが議案Bでは議決権がない株主がいる、といった会社では内容が変わるので、まとめられません。

逆に、登記と関係のない議案については株主リストを作る必要はありません。決算の承認や役員報酬の決定のように登記事項でないものは、そもそも登記の対象になっていないからです。総会で扱った議案を全部書き出そうとして手が止まる人がいますが、見るべきは登記する事項だけです。

書式は法務省が無料で配っている

ゼロから表を組む必要はありません。法務省のページに、ExcelとPDFの書式例と記載例が無料で置かれています。用意されているのは大きく分けて次の3系統です。

・簡易書式(書式例A-1)。株主が少なく、内容が単純な会社向け ・決議を要する場合の書式(書式例1-1)と、全員の同意を要する場合の書式(書式例1-2) ・法人税の確定申告で使う「同族会社等の判定に関する明細書」を流用する書式(書式例2-1)、有価証券報告書を流用する書式(書式例2-2)

3つめは少し変わった仕組みです。同族会社の判定明細書には、もともと上位の株主と持株数が並んでいます。一定の条件を満たす場合は、その明細書を添えることで株主リストの一部に代えられます。毎年の申告書類をそのまま使えるので、株主構成が動いていない会社では手間が減ります。使えるかどうかは法務省のフローチャートで判定できます。

作業の手順としては、まず自社の株主名簿を開いて、総会の基準日時点の株主と株式数を確認します。次に議決権数を計算します。単元株制度を採っていない会社なら1株が1議決権なので株式数がそのまま議決権数になりますが、単元株制度があるなら単元の数で割ります。そのうえで自己株式など議決権のない株式を除き、割合を計算します。最後に書式へ転記し、証明文と代表者の記名押印を入れて完成です。

具体的な書式と記載例は、法務省の株主リストのページからたどれます。フローチャートも同じページにあるので、どの書式を使うか迷ったらまずそこを開くのが早道です。

つまずきやすい場面と対処

実務で手が止まるのは、だいたい決まった場面です。法務省がよくある質問として公開している株主リストのQ&Aから、頻度の高いものを挙げます。

同率10位が複数いる場合。第10位に該当する株主が3名いるなら、3名とも書きます。上位10名という言い方ですが、10人で切ってはいけません。この例では合計12名を書くことになります。配られている書式例は株主の記入欄が10名分しかないので、別紙を添えるか、表の行を増やして使ってください。

株主が亡くなっている場合。相続が終わっていれば相続人が株主ですが、遺産分割がまだ済んでいない段階だと、誰を書くべきか判断が分かれます。法務省は個別のPDFでこのケースを整理しているので、そこに沿って処理します。自己判断で相続人の1人だけを書くのは避けてください。

外国人や外国法人の株主。氏名や住所を外国文字でしか把握していない場合、株主リストにも外国文字で書けば足ります。無理にカタカナへ直したり、日本語訳を作ったりする必要はありません。

法人が株主の場合。住所欄には、その法人の本店所在地を書きます。担当者の連絡先や営業所ではありません。

住所が正確に分からない場合。株主の住所は株主名簿の記載事項なので、原則は地番まで書きます。ただし、会社が地番まで把握していない場合は、把握している範囲で書けば足ります。そのときは株主リストの余白に「株主某の住所については、株主名簿にも最小行政区画までしか記載されていない」といった理由を注記します。空欄のまま出すのではなく、なぜ書けないのかを添えるのが正しい対処です。

結婚などで氏が変わった株主。戸籍上の氏だけを書くこともできますし、旧氏だけを書くことも、両方を併記することもできます。会社が把握している呼び方と株主名簿の記載を揃えておけば問題ありません。

株主が12人いる会社で、書く人数を決めてみる

上位10名と3分の2のどちらが少ないかを比べる、という説明は分かったつもりでも、実際の数字を前にすると手が止まります。株主が12人いる会社を例に、順を追って決めてみます。発行済株式総数は2,000株、自己株式はなく、単元株制度も採っていないとします。1株が1議決権なので、議決権の総数は2,000です。

・甲 800株 議決権800個 40.0パーセント 累計40.0パーセント ・乙 400株 議決権400個 20.0パーセント 累計60.0パーセント ・丙 200株 議決権200個 10.0パーセント 累計70.0パーセント ・丁以下9名 合計600株 合計30.0パーセント

上から足していくと、丙を入れた時点で累計70.0パーセントとなり、3分の2(約66.7パーセント)を超えます。3分の2で切ると3名です。上位10名で切ると10名です。少ないほうを選ぶので、書くのは甲と乙と丙の3名で終わりです。残りの9人は書きません。株主が12人いても、紙の上には3行しか並びません。

逆の形も見ておきます。株主が30人いて、上位10名の合計が55.0パーセントにとどまる会社です。3分の2に達するまで足すと15人目まで必要ですが、上位10名のほうが少ないので10名で止めます。このとき、書いた株主の割合の合計は3分の2に届きません。それが正しい状態です。合計が3分の2以上になっているかという点検は、3分の2で切った場合にだけ当てはまります。

自己株式があるとどうなるかも数字で見ておきます。発行済株式総数1,000株のうち200株が自己株式なら、議決権の総数は800です。甲が500株持っているなら割合は500を800で割った62.5パーセント、乙が200株なら25.0パーセントで累計87.5パーセント。3分の2を超えるのは乙までなので2名です。ここで分母を発行済株式総数の1,000にしてしまうと、甲が50.0パーセント、乙が20.0パーセント、累計70.0パーセントとなり、選ぶ人数は同じ2名でも、書式に書く数字が全部ずれます。人数が合っていても割合が違えば証明文と食い違うので、分母の確認は最初にやってください。

出した株主リストは誰が見られるか

株主リストには株主の住所が地番まで入ります。これを法務局に出すことになるので、誰でも見られてしまうのかを気にする人がいます。結論は、登記簿そのものとは扱いが違う、です。

登記簿は、商業登記法10条により誰でも手数料を納めて登記事項証明書の交付を請求できます。一方、株主リストのような添付書類は登記簿の附属書類にあたり、商業登記法11条の2は、閲覧について利害関係を有する者が手数料を納付して閲覧を請求できる、と定めています。誰でも自由に見られるわけではありませんが、利害関係があると認められれば見られます。閲覧の手数料は、法務省が公開している登記手数料の表で1件500円です。

実務上の意味は2つあります。1つは、株主に対して「住所が書かれた書類を法務局に出す」ことを事前に伝えておくほうが、あとで揉めにくいということです。株主が親族や元同僚だけの会社でも、住所を書くことに驚かれる場面はあります。もう1つは、株主構成をめぐって争いのある会社では、相手方が閲覧を請求してくる可能性があるということです。どちらの理由からも、出す内容は株主名簿と一致させておく必要があります。

何が利害関係にあたるかの判断は登記所が行います。閲覧を請求したい側も、される側も、見込みで決めつけずに管轄の登記所に確認するのが確実です。

提出前の自己点検

窓口で補正を言われないために、出す前に次の点を順に見ておくと安全です。

・その登記は株主総会の決議、または株主全員の同意が必要な登記か。要らない登記に付けていないか ・書面で決議を済ませた場合も付けたか ・決議の場合、上位10名と3分の2の少ないほうで選んでいるか ・決議の場合、自己株式など議決権のない株式を持つ株主を外し、分母からも外しているか ・全員の同意の場合、議決権のない株式を持つ株主も含め、全員を書いたか ・割合の合計や、書式の証明文の内容と実際の記載が食い違っていないか ・議案ごとに作ったか。1通にまとめるなら、内容が同じである旨を書いたか ・作成者は登記申請時の代表者になっているか。記名押印はあるか ・株主名簿の記載と株主リストの記載が一致しているか

最後の項目が実は重要です。株主リストは株主名簿から作る書類なので、株主名簿のほうが更新されていなければ、そもそも正しい株主リストは作れません。株式を譲渡したのに名義を書き換えていない、増資したのに帳簿へ反映していない、といった状態のまま登記の話だけ進めると、あとで株主の権利をめぐる争いの火種になります。登記の準備は、株主名簿を最新にする良い機会でもあります。

なお、登記事項に変更が生じたときは、会社法915条により2週間以内に変更の登記をしなければなりません。株主リストの作成に手間取って期限を過ぎると、登記を怠ったこと自体が過料の対象になりえます。総会の日程が決まった段階で、株主名簿の点検を先に始めておくのが現実的です。

法人成りした働き手にとっての株主リスト

この書類に初めて出会う人の多くは、上場企業の法務担当ではありません。個人で仕事を請けていた人が法人を作り、役員を1人増やしたり、事業目的を足したりする段になって、初めて名前を知ります。株主が自分1人だけの会社なら、株主リストに書くのは1行で終わります。それでも添付は必要です。

20年この市場を見てきた立場から言えば、法人を作ったあとに詰まる人と、詰まらない人の差は、知識量ではありません。書類を作る前に「この手続きは誰の意思が必要なのか」を確かめる習慣があるかどうかです。株主リストは、まさにその確認を書類の形にしたものです。誰の意思で会社が動いたのかを1枚にして残す。それが分かってしまえば、上位10名なのか全員なのかという分岐も、自然に読めるようになります。

もうひとつ、長く続いている働き手に共通するのは、事務の仕事を外へ出すときの割り切り方です。仲介の手数料が乗らない直接の取引であれば、同じ予算でも依頼する側はより多く頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。法人化したあとは、自分の時間の単価を意識せざるをえません。登記の書類づくりに何時間も費やすより、本業に時間を戻して、書類は書ける人に直接頼む。その判断ができる人ほど、法人化後の数年を落ち着いて越えています。

書類まわりの作業をきちんと形にできる人の需要は、実際に途切れていません。報告書や社内規程を読みやすく整える仕事の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できますし、そうした仕事の基礎として評価されやすいのがビジネス文書検定です。文書の形式と敬語の使い分けを体系的に問う試験で、事務代行や編集の案件で書類の精度を求められる場面に効きます。

法人化のあとに事業の幅を広げたい場合は、仕事の種類そのものを見直すのも手です。業務の進め方をAIで組み替える支援は独立した職種として定着しつつあり、AIコンサル・業務活用支援のお仕事ではその案件像がまとまっています。開発側に寄せるならアプリケーション開発のお仕事ソフトウェア作成者の年収・単価相場を突き合わせると、単価の現実的な水準がつかめます。

そして、法人になると契約の当事者が変わります。個人のときは何となく通っていた条件が、法人同士の取引では通用しなくなる場面もあります。発注書や契約書で最低限どこを押さえるべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。万一、報酬が支払われないまま止まったときにどう動くかは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が手順を示しています。株主リストは会社の内側を証明する書類ですが、会社を作るということは、外との取引の形も変えるということです。内側の帳簿と外側の契約、その両方を同じ熱量で整えておくことが、法人化を続けられるかどうかを分けます。

よくある質問

Q. 株主リストは株主名簿のコピーで代用できますか?

できません。株主名簿には議決権数や議決権数の割合が書かれておらず、記載内容が異なるためです。法務省も、株主名簿を申請書に添付しても株主リストの添付は不要にならないと明示しています。株主名簿を元データとして、株主リストは別途作成してください。

Q. 株主が代表者1人だけの会社でも必要ですか?

必要です。株主が1人なら、その1人で議決権割合が100パーセントとなり3分の2を超えるため、書くのは1行で済みます。氏名、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合を書き、代表者が証明して添付します。行数は少なくても、添付を省くことはできません。

Q. 1回の総会で複数の議案を決議した場合、何通作りますか?

原則は登記すべき事項ごとに作ります。ただし各議案を通じて記載する株主の内容が変わらない場合は、その旨を株主リストに明記することで1通にまとめられます。登記と関係のない議案については作成不要です。判断に迷う場合は管轄の法務局に確認してください。

Q. 株主リストを作るのに費用はかかりますか?

書式と記載例は法務省のサイトでExcelとPDFが無料配布されているため、自分で作れば書類の費用はかかりません。司法書士に登記を依頼する場合は、その報酬に株主リストの作成が含まれるのが一般的です。金額は事務所や登記の内容で変わるので、見積もりで確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月14日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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