合同会社の業務執行社員と代表社員の就任承諾書

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
合同会社の業務執行社員と代表社員の就任承諾書

この記事のポイント

  • ✓合同会社就任承諾書は誰の分が要るのか
  • ✓法務局の記載例では添付されるのは代表社員の分だけで
  • ✓印鑑証明書も本人確認証明書も出てきません

合同会社就任承諾書を調べていて混乱するのは、株式会社の説明が先に目に入るからです。実印を押す、印鑑証明書を添付する、取締役全員分そろえる。合同会社では、そのどれも当てはまりません。結論から書きます。法務局が公開している合同会社の設立登記の記載例で就任承諾書として添付されるのは、代表社員の分1通だけです。業務執行社員の就任承諾書は登場しません。印鑑証明書も本人確認証明書も、添付書類の一覧に出てきません。この記事では、その理由と、では何を出すのかを順に整理します。

混乱しているのは、あなただけではない

この論点で迷う人が多いことは、実務家の側からも指摘されています。

合同会社(LLC)の設立では、代表社員の就任承諾書が要るのか・要らないのかで混乱が起きがちです。背景には次の三層の論点が重なっています。 出典: asanagi.co.jp

混乱が起きる理由は3つに整理できます。

1つ目は、株式会社の情報量が圧倒的に多いことです。検索して最初に出てくるのは株式会社の説明で、そこには実印と印鑑証明書の話が必ず書かれています。読んだ人は、合同会社にも同じものが要ると思い込みます。

2つ目は、合同会社の中でも代表社員の決め方が何通りもあることです。定款で直接指名するのか、定款の定めに基づく互選で決めるのか、そもそも代表社員を置かず業務執行社員が全員代表するのか。決め方が違えば、出す紙も変わります。

3つ目は、社員という言葉が紛らわしいことです。合同会社の社員は従業員ではなく出資者を指します。この読み替えができていないと、説明のどこを読んでも意味が通りません。

この3つをほどけば、答えは単純な形に落ちます。順に見ていきます。

合同会社は「役員を選ぶ」会社ではない

いちばんの違いはここです。株式会社では、株主が取締役を選び、取締役が会社を動かします。お金を出す人と会社を動かす人が制度として分かれている。だから「選んだ」「引き受けた」という2つの意思を紙で確かめる必要がありました。

合同会社は違います。お金を出した人がそのまま社員になり、社員が会社を動かします。社員というのは従業員のことではなく、出資者のことです。ここが最初のつまずきどころで、求人票の「社員」とはまったく別の意味になります。

会社法は、社員は定款に別段の定めがある場合を除き持分会社の業務を執行する、と定めています。つまり何も決めなければ、社員全員が自動的に業務を執行する立場になる。選任という行為がそもそも存在しません。選任がないのだから、就任を承諾する場面もありません。

社員が誰であるかは、定款に書いてあります。持分会社の定款には、目的、商号、本店の所在地、社員の氏名または名称および住所、社員が無限責任社員か有限責任社員かの別、社員の出資の目的およびその価額または評価の標準を記載しなければならない、と会社法が定めています。合同会社の場合は、社員の全部を有限責任社員とする旨を書きます。

定款には社員が記名押印します。つまり社員になることへの同意は、定款そのものに残っている。別の紙で承諾を示す必要がないわけです。

業務執行社員と代表社員は、何が違うのか

ここを分けて理解すると、あとが早くなります。

業務執行社員とは、会社の業務を執行する社員のことです。何も定めなければ社員全員がこれに当たりますが、定款で「社員のうちAとBを業務執行社員とする」と絞ることができます。法務局の定款記載例にも、第8条として「社員○○商事株式会社及び○○○○は、業務執行社員とし、当会社の業務を執行するものとする。」という条文が置かれています。

代表社員とは、会社を外に向かって代表する社員のことです。会社法は、業務を執行する社員は持分会社を代表する、ただし他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合はこの限りでない、と定めています。そして、定款または定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から代表社員を定めることができる、と続きます。

つまり業務執行社員が2人以上いる場合、何も決めなければ全員が代表します。1人に絞りたいなら、定款で直接決めるか、定款に互選の定めを置いて社員の話し合いで決めるか、のどちらかです。法務局の定款記載例では、第9条に「代表社員は業務執行社員の互選をもって、これを定める。」と書かれています。互選の形です。

ここでようやく就任承諾書が出てきます。互選という行為で選ばれた以上、選ばれた本人が引き受けるという意思表示が別に必要になる。だから代表社員の就任承諾書だけが添付書類に現れます。

株式会社と並べると構造が見えます。取締役会を置かない株式会社では、取締役の互選で代表取締役を決めた場合に代表取締役の就任承諾書が必要でした。合同会社の代表社員も、これと同じ位置にいます。

設立登記の添付書類を、法務局の記載例からそのまま並べる

合同会社設立登記申請書の記載例に並んでいる添付書類は次のとおりです。

・定款 ・代表社員、本店所在地及び資本金を決定したことを証する書面 ・代表社員の就任承諾書 ・払込みがあったことを証する書面 ・資本金の額の計上に関する代表社員の証明書 ・委任状(代理人に申請を委任した場合のみ)

代表社員が法人である場合には、これに加えて、その法人の登記事項証明書、職務執行者の選任に関する書面、職務執行者の就任承諾書が必要になります。業務執行社員が法人である場合には、その法人の登記事項証明書が必要です。

印鑑証明書も本人確認証明書も、この一覧にありません。株式会社の設立登記の記載例と見比べると、その2行が丸ごと抜けていることが分かります。

理由は、商業登記の決まりにあります。印鑑証明書や本人確認証明書を求める規定は、株式会社の登記についての章に置かれていて、合同会社の登記に準用されているのは資本金の額の計上に関する部分だけです。つまり合同会社には、そもそも適用されません。

ただし例外が1つあります。会社の実印を法務局に届け出る印鑑届書には、市区町村長が作成した印鑑証明書等の書類を添付する必要があります。商業登記規則は、この証明書を作成後3か月以内のものと定めています。登記の添付書類としては要らないが、実印を届け出るために1通は取ることになる、という整理です。

登録免許税は、資本金の額の1000分の7で、この額が6万円に満たない場合は6万円です。100円未満の端数は切り捨てます。株式会社の設立が15万円なので、その半分以下になります。

もう1つ、合同会社の定款には公証人の認証が要りません。法務局の定款記載例にも「公証人の認証は不要です。」と明記されています。株式会社では認証の費用がかかるので、ここでも差が出ます。

ひな形。代表社員の就任承諾書は2行で終わる

法務局の記載例は次のとおりです。

「私は、令和○年○月○日、貴社の代表社員に定められたので、その就任を承諾します。」

これに日付、住所、氏名を書き、宛先として会社名と御中を記します。用紙はA4で1枚、表題は「就任承諾書」で十分です。

株式会社の就任承諾書と比べると、書き出しが違うことに気づきます。株式会社では「貴社株主総会において、貴社の取締役に選任されたので」と、選んだ場です。合同会社では「貴社の代表社員に定められたので」と、選んだ場に触れません。互選や定款という決め方が会社ごとに違うので、そこをぼかした書き方になっています。

押す印鑑は認印で構いません。印鑑証明書を添付しないので、照合する相手がないからです。ただし会社の実印を届け出る人が代表社員本人なら、印鑑届書のほうで市区町村に登録した印鑑が必要になります。

宛先は会社です。法務局に直接出すのではなく、本人が会社に渡し、会社が登記の添付書類として提出します。

代表社員が法人の場合は、書き方が変わります。記載例では、住所のあとに法人名を書き、その下に「代表取締役 ○○○○」と署名者の資格と氏名を記す形になっています。

代表社員を決めた証拠の書面も、あわせて作る

就任承諾書とセットで必要になるのが、代表社員を決めたことを証明する書面です。

法務局の記載例では「代表社員、本店所在地及び資本金決定書」という1枚にまとめられています。中身は3項目だけです。本店の所在場所、代表社員、資本金の額。これを決定する旨を書き、日付を入れ、社員が記名します。

本店については注が付いていて、定款の中で具体的に本店所在地を定めた場合は必要ありません。定款に「本店を○県○市に置く」と最小行政区画までしか書かなかった場合に、丁目と番と号まで決める必要が出てくる、という構造です。

ここで1つ、実務上の疑問が残ります。定款で代表社員を直接指名した場合はどうなるのか、という点です。

法務局が公開している記載例は、定款に互選の定めを置いた形だけを示していて、定款で直接代表社員を指名する形の記載例はありません。株式会社については、法務局が「取締役・代表取締役の就任の登記の添付書面」という一覧表を公開していて、そこでは、取締役会を置かない会社について、定款で代表取締役を定めた場合と株主総会で定めた場合は代表取締役の就任承諾書が不要、取締役の互選で定めた場合は必要、と整理されています。合同会社についてこれに対応する公表資料は見当たらないため、定款で代表社員を直接定める形を採るなら、申請前に管轄の登記所に添付書類を確認するのが確実です。登記所によって取り扱いの説明が異なる場面があるので、迷ったら電話で聞いたほうが早く済みます。

法人が社員になるときは、職務執行者を立てる

合同会社の特徴の1つが、法人でも社員になれることです。株式会社の取締役には法人がなれませんが、合同会社の社員にはなれます。グループ会社を作るときや、事業の受け皿を作るときによく使われます。

ただし法人は自分で動けません。そこで、その法人の職務を実際に行う人を立てることになります。これが職務執行者です。登記簿にも、代表社員が法人である場合には職務執行者の住所と氏名が記録されます。

添付書類は3つです。その法人の登記事項証明書、職務執行者の選任に関する書面、職務執行者の就任承諾書。

登記事項証明書については省略できる場合があります。申請する登記所と同一の登記所にその法人の登記がある場合は添付を省略でき、同一でない場合でも、申請書にその法人の会社法人等番号を記載すれば省略できます。その場合は申請書に「登記事項証明書 添付省略(会社法人等番号 0000-00-000000)」のように記載します。

職務執行者の選任に関する書面は、その法人の業務執行の決定機関で選んだことを明らかにした議事録などです。法務局は例として、取締役会議事録や、社員の過半数をもって選任したことを証する書面を挙げています。

職務執行者の就任承諾書の記載例はこうです。「私は、令和○年○月○日、○○商店合同会社代表社員の職務執行者に選任されたので、その就任を承諾します。」。宛先が合同会社ではなく、代表社員である法人になっている点に注意してください。記載例でも宛先は「○○商事株式会社 御中」、つまり代表社員になる法人のほうです。選んだのがその法人だからです。

社員が入れ替わるときの就任承諾書

設立のあと、社員が抜けたり入ったりする場面でも、同じ考え方が続きます。

法務局が公開している合同会社の変更登記の記載例は、持分の全部を譲渡して社員が退社し、譲り受けた人が加入する場合のものです。そこに並ぶ添付書類は次のとおりです。

・総社員の同意書 ・定款の定めに基づく互選により、加入する業務執行社員を代表社員と定めた場合には、定款、業務執行社員の互選による代表社員の選任を証する書面および就任承諾書 ・代表社員が法人であるときは、その法人の登記事項証明書、職務執行者の選任に関する書面、職務執行者の就任承諾書 ・業務執行社員が法人であるときは、その法人の登記事項証明書 ・委任状(代理人に申請を委任した場合のみ)

ここでも、業務執行社員として加入するだけなら就任承諾書は出てきません。必要なのは総社員の同意書です。社員の加入は定款を変更することで効力が生じ、定款の変更には原則として総社員の同意が要るからです。合同会社では、新しく社員になろうとする人が定款変更の時点で出資の払込みや給付を終えていない場合、それを完了した時に社員になります。

就任承諾書が必要になるのは、加入した人を互選で代表社員に定めた場合だけです。設立のときとまったく同じ構造になっています。

登録免許税は1件につき1万円で、資本金の額が1億円を超える会社については3万円です。

登記の期限は、登記すべきことが起きた日から2週間以内です。会社法は、登記すべき事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地において変更の登記をしなければならないと定めたうえで、この法律の規定による登記をすることを怠ったときは100万円以下の過料に処すると定めています。過料を科すかどうかを決めるのは裁判所で、登記そのものは期限を過ぎても受け付けられますが、遅れた事実は記録に残ります。

株式会社と合同会社で、そろえる紙がどれだけ違うか

設立の場面で、両者の添付書類を並べると差がはっきりします。株式会社は取締役会を置かない発起設立、合同会社は法務局の記載例の形で比べます。

項目 株式会社(取締役会なし・発起設立) 合同会社
定款 必要。公証人の認証も必要 必要。認証は不要
代表者を決めた書面 設立時代表取締役を選定したことを証する書面 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
就任承諾書 設立時取締役(及び設立時監査役)の分 代表社員の分のみ
印鑑証明書 設立時取締役の全員分 添付書類としては不要
本人確認証明書 設立時監査役の分 不要
払込みを証する書面 必要 必要
資本金の計上に関する証明書 金銭のみの出資なら不要 金銭のみの出資なら不要
登録免許税 資本金の1000分の7、下限15万円 資本金の1000分の7、下限6万円

紙の枚数でも費用でも、合同会社のほうが軽い。役員の任期がなく、重任の登記も不要なので、作ったあとの維持の手間も少なくなります。株式会社では取締役の任期が最長10年で、そのたびに登記が必要でした。

そのかわり、合同会社には株式がありません。出資を受けて持分を渡す、株式を譲渡して事業を売る、といった動きは株式会社ほど自由にできません。持分の譲渡には原則として他の社員全員の承諾が必要です。外部から資金を調達する予定があるなら、この点が効いてきます。

なお、あとから株式会社に変えることはできます。持分会社の組織変更という手続きで、法務局も記載例を公開しています。ただし組織変更前の会社について解散の登記、組織変更後の会社について設立の登記をすることになるので、手間と費用はそれなりにかかります。最初から株式会社で作るか、合同会社で始めて後で変えるかは、資金調達の計画しだいです。

補正になりやすいところ

法務局から連絡が来て書類を出し直すことを補正といいます。合同会社の設立で止まりやすい箇所を挙げます。

商号と本店の重複です。商号と本店が同一の会社が既に存在する場合、設立の登記はできません。法務局は、この調査は無料でできると案内しています。合同会社は定款の認証が要らないぶん、調べずに進めてしまいがちです。印鑑の発注や口座の準備を始める前に確認してください。

目的の書き方も、あとで効いてきます。会社法は、目的を定款の必ず書かなければならない事項の1つに挙げており、登記すべき事項でもあります。読んだ人に何をする会社か分かる表現にしておかないと、登記のあとで取引先や金融機関から説明を求められることになります。許認可が必要な事業を予定しているなら、定款に定める目的の書き方でつまずくことがあるので、設立の前に所管の官公庁へ確認しておいてください。目的を追加するには定款の変更と登記が必要で、そのたびに費用がかかります。

住所の表記は、定款と決定書と就任承諾書の3つで一致させてください。ばらばらに作ると、どれかが食い違います。

形式面では、申請書が2枚以上になるときに各ページのつづり目へ契印をすること、収入印紙は台紙に貼り割印をしないこと、訂正は二重線と押印で行い修正液を使わないこと、申請書に日中つながる電話番号を書くこと。このあたりは会社の種類を問わず共通です。

最後に、合同会社は本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する、と会社法が定めています。会社の成立日は、登記所が申請書を受け付けた日です。登記が完了した日ではありません。ただし、登記事項証明書や印鑑証明書を受け取れるようになるのは手続が終わってからです。口座開設や契約の予定があるなら、管轄の登記所に登記完了予定日を聞いて逆算してください。

業務執行社員には、辞めにくいという性質がある

引き受ける前に知っておくべきことを書いておきます。

会社法は、業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は正当な事由がなければ辞任することができない、と定めています。解任についても、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる、という定めです。いずれも定款で別段の定めをすることは妨げられません。

株式会社の取締役はいつでも辞任でき、株主総会の決議でいつでも解任できます。合同会社はそこが違う。定款で業務執行社員を絞った場合、抜けるにも外すにもハードルが上がります。

さらに、業務を執行する社員には善良な管理者の注意をもって職務を行う義務があり、法令と定款を遵守して会社のため忠実に職務を行う義務があります。競業の禁止と利益相反取引の制限もかかります。同種の事業を目的とする会社の取締役や業務執行社員になることは、ほかの社員全員の承認がなければできません。副業や兼業を予定しているなら、定款に別段の定めを置くかどうかを設立時に決めておく必要があります。

もう1つ、出資と責任の関係です。合同会社の社員は全員が有限責任社員で、出資の価額を限度として会社の債務を弁済する責任を負います。ただし合同会社では、社員になろうとする者は定款の作成後、設立の登記をする時までに出資に係る金銭の全額を払い込む必要があります。株式会社のように一部だけ払い込んで残りを後回しにする、ということができません。

社員そのものを辞める、つまり退社についても決まりがあります。会社法は、持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合などには、各社員は事業年度の終了の時において退社をすることができるとしたうえで、6か月前までに退社の予告をしなければならない、と定めています。この規定は定款で別段の定めをすることが妨げられていません。やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができます。

つまり合同会社では、業務執行社員としての立場を降りることと、出資者である社員をやめることの2つが別々に決まっています。共同で作る場合は、誰が業務執行社員になり、誰が代表社員になり、抜けたいときにどうするかを、定款を作る段階で話し合っておくのが安全です。あとから変えるには、原則として総社員の同意が要ります。

設立にかかるお金を、資本金300万円で並べてみる

書類の枚数の差は、そのまま費用の差になります。資本金300万円で作る場合を例に、実際に出ていく金額を並べます。

登録免許税は資本金の額の1000分の7です。300万円なら21,000円ですが、合同会社は下限が6万円なので6万円になります。株式会社は下限が15万円なので、同じ資本金でも15万円です。この時点で9万円の差が付きます。

次に、定款そのものにかかる税金です。見落としやすいところです。

6 [定款] (注) 株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限ります。 4万円 (非課税文書:株式会社または相互会社の定款のうち公証人法の規定により公証人の保存するもの以外のもの) 出典: nta.go.jp

紙で作った設立時の定款の原本は、印紙税の対象になる文書です。合同会社の定款には非課税の枠がないので、紙で作れば4万円の収入印紙を貼ることになります。定款をファイルで作って電子署名を付ける形にすれば、紙の文書ではないので印紙は要りません。専門家に依頼する場合、この4万円が省けるかどうかを先に聞いておくと判断しやすくなります。

株式会社にはもう1つ、定款に公証人の認証を受ける費用が加わります。手数料は資本金の額によって変わるので、依頼する公証役場に確認してください。合同会社は認証が不要なので、この費用がゼロです。

登記が終わったあとにも、少額の出費が続きます。登記事項証明書は窓口や郵送で請求すると1通600円、オンラインで請求して郵送で受け取ると520円、オンラインで請求して窓口で受け取ると490円です。会社の印鑑証明書はそれぞれ500円、450円、420円です。銀行口座の開設、事務所の賃貸借契約、許認可の申請で数通ずつ必要になるので、最初に5通ほどまとめて取っておくと足を運ぶ回数が減ります。

自分で申請する場合の合計は、電子で定款を作れば6万円台に収まります。専門家に頼む場合の報酬は事務所ごとに違うので、2社か3社から見積もりを取ってください。

作ったあとの維持費で、株式会社との差がさらに開く

費用の差は設立時だけではありません。作ったあとに毎年かかる手間のほうが、長く見れば大きくなります。

いちばん効くのは任期です。株式会社では取締役の任期が最長10年で、任期が切れるたびに同じ人を選び直す重任の登記が必要になります。資本金1億円以下の会社なら1件1万円の登録免許税がかかり、議事録と就任承諾書もそのつど作ります。合同会社の社員には任期がないので、この作業が一度も発生しません。

もう1つ、みなし解散の対象にならないという違いがあります。法務局は毎年、長く登記のない会社を整理する作業を行っています。

(1) 休眠会社:最後の登記から 12年 を経過している株式会社 (会社法第472条の休眠会社。特例有限会社は含まれません。) 出典: moj.go.jp

対象は株式会社です。合同会社は含まれません。株式会社で重任の登記を忘れたまま12年が過ぎると、官報で公告され、2か月以内に登記や届出をしないと、実際に事業を続けていても解散したものとみなされます。令和7年度の作業では25,195社が解散したものとみなされました。合同会社にはこの経路がありません。

決算公告の義務も違います。貸借対照表を公告しなければならないのは株式会社で、合同会社にはこの義務がありません。官報に載せる費用も、電子公告のための準備も要らないということです。

ただし、変更の登記の義務は同じです。本店を移した、商号を変えた、目的を足した、代表社員が引っ越した。こうした登記すべき事項が変わったときは、2週間以内に申請します。怠れば100万円以下の過料の対象です。任期がないぶん、登記に触る機会が数年に一度しかないので、変更があったことに気づかないまま過ぎてしまいやすい。引っ越しや商号の変更を決めた日に、その場でカレンダーへ2週間後の期限を書き込んでおくのが確実です。

毎年必ずあるのは決算と申告です。法人税などの申告は、事業年度が終わった日の翌日から2か月以内が期限になります。ここは会社の種類にかかわらず同じです。

法人を作ったあとに残る仕事と、そこで効いてくるもの

登記が終わっても、会社の仕事は始まったばかりです。運営者として在宅と業務委託の市場を長く見てきた立場から言うと、合同会社を選ぶ人の多くは費用の安さから入りますが、実際に効いてくるのはそこではありませんでした。取引の形を自分で決められるようになることのほうが、はるかに大きい。個人で受けていたときは相手の様式に合わせるしかなかった見積書や契約書を、法人になった瞬間に自分の型で出せるようになります。

その型を作るうえで地味に効くのが、文書を整える力です。就任承諾書のように「様式は自由だが要素は決まっている」書類は、ビジネス文書の基本と構造がまったく同じです。誰が、いつ、何について、どう意思表示したのかを、読む人が迷わない順番で並べる。この作法を体系立てて確認したいなら、ビジネス文書検定の出題範囲が参考になります。社内文書と社外文書の使い分け、日付と宛名の置き方まで、登記書類にもそのまま通じます。

合同会社を作る動機が受注の幅を広げることにあるなら、法人でなければ入れない案件がどこにあるかも見ておきたいところです。企業がAIをどう業務に組み込むかを設計する仕事は、その代表格です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、現場の業務を聞き取って自動化の設計に落とす仕事の輪郭がまとまっています。守備範囲を広げるならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、受託開発を軸にするならアプリケーション開発のお仕事が、それぞれどんな案件が動いているかの見取り図になります。技術職として法人で受けるなら、ネットワークの基礎を証明するCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、取引開始時の判断材料になる場面もあります。

資本金をいくらにするか、初年度の売上をどう見積もるかを決めるときは、職種ごとの相場を先に見ておくのが早い。ソフトウェア作成者の年収・単価相場と著述家,記者,編集者の年収・単価相場は、公的統計をもとにした職種別のデータで、年間の計画を立てるときの下敷きになります。

法人になると、取引の守り方も変わります。相手が大きくなるほど、支払条件や検収の取り決めが効いてきます。発注書と契約書に何を書いておくべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理があります。それでも回収できない事態に備えるなら未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】を、会計まわりの知見を持つ人が周辺でどう動いているかを知るなら会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】を見ておくと、法人まわりの実務の地図がひととおりそろいます。制度そのものの案内は法務省の商業・法人登記のページから確認できます。

もう1つ、運営者として見てきた限りでは、法人にして長く続く人ほど、案件の数ではなく取引の構造を整えることに時間を使っています。同じ仕事でも、間に入る事業者が多いほど、発注側が払った金額と受け手の手取りの差は開きます。中間のマージンが乗らない直接の取引なら、発注側は同じ予算でより多く頼め、受け手の手取りは厚くなる。この手数料0%の構造は、単価表の数字としてではなく、1年たったときの残り方の違いとして現れます。

合同会社の就任承諾書に話を戻すと、必要なのは代表社員の分だけで、内容は2行、印鑑は認印、印鑑証明書も本人確認証明書も要りません。株式会社の説明を読んで身構えた人ほど、拍子抜けするはずです。代わりに時間をかけるべきなのは、定款で業務執行社員と代表社員をどう定めるか。ここが決まれば、書類は自動的に決まります。

よくある質問

Q. 合同会社では業務執行社員の就任承諾書も必要ですか?

法務局の記載例では必要ありません。社員は定款に別段の定めがなければ当然に業務を執行する立場になり、選任という行為がないためです。社員が誰であるかは定款に記載され、社員が定款に記名押印することで意思が示されます。就任承諾書として添付されるのは、互選などで選ばれた代表社員の分だけです。

Q. 合同会社の就任承諾書に印鑑証明書は必要ですか?

法務局の合同会社設立登記の記載例には、印鑑証明書も本人確認証明書も添付書類として挙げられていません。印鑑証明書を求める商業登記の規定は株式会社について置かれたもので、合同会社には準用されていないためです。ただし会社の実印を届け出る印鑑届書には、3か月以内の印鑑証明書等を添付する必要があります。

Q. 代表社員が法人の場合は何が必要ですか?

その法人の登記事項証明書、職務執行者の選任に関する書面、職務執行者の就任承諾書の3つが必要です。登記事項証明書は、申請書に会社法人等番号を記載すれば添付を省略できます。職務執行者の就任承諾書の宛先は、合同会社ではなく代表社員である法人になります。

Q. 合同会社の設立費用は株式会社と比べてどれくらい違いますか?

登録免許税は資本金の額の1000分の7で、6万円に満たない場合は6万円です。株式会社は同じ計算で下限が15万円なので、差は9万円以上になります。加えて合同会社の定款には公証人の認証が不要なため、認証にかかる費用も発生しません。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月24日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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