会社を作るときの設立時取締役の就任承諾書


この記事のポイント
- ✓設立時取締役就任承諾書は何を書き
- ✓誰の印鑑証明書を付けるのか
- ✓取締役会を置くかどうかで対象が入れ替わる仕組みと
設立時取締役就任承諾書を調べている人が知りたいのは、ほぼ3つです。何を書くのか、誰の印鑑証明書を付けるのか、そもそも作らずに済ませられないのか。結論を先に書きます。書く要素は5つしかなく、印鑑証明書を付ける相手は取締役会を置くかどうかで入れ替わり、決議書の書き方しだいで就任承諾書そのものを省略できます。しかも印鑑証明書は、会社の実印を届け出るときの分と兼ねられます。この記事では、法務局が公開している設立登記の記載例をもとに、この3つを順にほどいていきます。
会社を作った人が、いちばん時間を取られているところ
最初に、どこでつまずくのかを数字で見ておきます。
マネーフォワード クラウドが実施した調査で、会社設立の手続きで大変さを感じた項目を尋ねたところ、最も多いのは「申請書類の作成」で、48.7%でした。次いで「会社設立のやり方・手続きを調べること」が44.9%、「会社の基礎情報を決定すること(定款内容など)」が37.5%となっています。 出典: biz.moneyforward.com
書類作りが1位で、調べること自体が2位。つまり、書く作業そのものより「何を何通そろえればいいのか分からない」ところで時間が消えています。
設立時取締役の就任承諾書は、その典型です。ネット上の説明が「必要です」と「決議書に書けば不要です」に割れていて、どちらも間違ってはいない。条件が違うだけなのですが、条件を書いていない説明が多いので、読んだ人は自分がどちらなのか判断できません。
もう1つ、設立の登記には独特のねじれがあります。法務局は「取締役・代表取締役の就任の登記の添付書面」という一覧表を公開していますが、その表の最後に「設立の登記については、この表とは異なる」という注をわざわざ付けています。役員を入れ替えるときの話をそのまま設立に当てはめると外れる、という警告です。この記事では設立の話だけを扱います。
設立時取締役は「会社ができる前の取締役」
言葉の整理から始めます。設立時取締役とは、会社が成立する前の段階で、成立したら取締役になる人として選ばれた人のことです。
会社は、登記が終わってはじめて存在します。それ以前は、発起人が集まって準備をしている状態にすぎません。まだ存在しない会社の取締役を先に決めておく必要があるので、この段階の人を設立時取締役と呼び分けています。設立の登記が終わった瞬間、この人はそのまま取締役になります。
なぜ承諾書が要るのか。会社と役員の関係は、雇用ではなく委任だからです。委任は、頼む側と受ける側の合意で成り立ちます。発起人が「この人を設立時取締役にします」と決めただけでは、まだ片方の意思しかありません。本人が「引き受けます」と言ってはじめて、就任という事実が生まれます。法務局は登記の申請を受け取ったとき、その事実が本当に起きたのかを紙で確かめます。その材料が就任承諾書です。
実務でよくあるのが、発起人と設立時取締役が同じ人というパターンです。ひとりで会社を作る場合、出資する人も取締役になる人も自分ひとり。自分が自分に承諾書を出すことになるので奇妙に見えますが、立場が2つあるので手続きとしては必要です。この場合こそ、後で説明する「決議書に書いて省略する」方法が効きます。
誰の印鑑証明書が要るかは、取締役会を置くかどうかで入れ替わる
ここが最大の分かれ目です。法務局の記載例を、2つ並べて比べます。
取締役会を置かない株式会社の発起設立の記載例では、添付書類が「設立時取締役(及び設立時監査役)の就任承諾書」となっていて、印鑑証明書について次の注が付いています。設立時取締役が就任承諾書に押した印鑑につき市町村長が作成した印鑑証明書を添付します、という注です。つまり設立時取締役の全員分です。そのうえで、設立時監査役を選任した場合には、設立時監査役について住民票記載事項証明書や運転免許証のコピーなどの本人確認証明書を添付します、と続きます。
取締役会を置く株式会社の発起設立の記載例では、添付書類が「設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書」となり、印鑑証明書の注はこうなります。設立時代表取締役が就任承諾書に押した印鑑につき市町村長が作成した印鑑証明書を添付します。設立時代表取締役だけです。そして本人確認証明書の注には、設立時取締役、設立時監査役(印鑑証明書を添付しない役員)について添付する、と書かれています。
表にすると違いがはっきりします。
| 立場 | 取締役会を置かない会社 | 取締役会を置く会社 |
|---|---|---|
| 設立時取締役(代表以外) | 印鑑証明書 | 本人確認証明書 |
| 設立時代表取締役 | 印鑑証明書(取締役として) | 印鑑証明書 |
| 設立時監査役 | 本人確認証明書 | 本人確認証明書 |
印鑑証明書を求められる相手は「会社を外に向かって代表する人」だと考えると、覚えやすくなります。取締役会を置かない会社では、取締役がひとりずつ会社を動かす立場にあるので全員が対象。取締役会を置く会社では、代表するのは代表取締役だけなので、そこに絞られる。監査役はどちらでも会社を代表しないので、常に本人確認証明書です。
自分がどちらの会社を作ろうとしているかは、定款を見れば分かります。取締役会を置く旨の条文があるかどうか、それだけです。取締役会を置くには取締役が3人以上必要になるため、少人数で作る会社は置かないのが普通です。
ひな形。書く要素は5つしかない
法務局の記載例は驚くほど短い文章です。構成要素は5つしかありません。
1つ、いつ、何の決議で選ばれたか。2つ、どの地位か(設立時取締役)。3つ、就任を承諾するという言葉。4つ、作成した日付。5つ、本人の住所と氏名。これに宛先の会社名を足せば完成です。
役員変更の記載例で法務局が示している文面は「私は、令和○年○月○日開催の貴社株主総会において、貴社の取締役に選任されたので、その就任を承諾します。」という形です。設立の場合は、選んだのが株主総会ではなく発起人なので、そこを「令和○年○月○日の発起人の決議において、貴社の設立時取締役に選任されたので、その就任を承諾します。」のように置き換えます。宛先には設立する会社の商号を書き、御中を付けます。
用紙はA4で1枚、余白は自由。パソコンでも手書きでも構いません。表題は「就任承諾書」で十分です。
押す印鑑は、印鑑証明書を添付する場面では市区町村に登録した印鑑、いわゆる実印です。取締役会を置かない会社の設立なら設立時取締役の全員が実印、取締役会を置く会社なら設立時代表取締役が実印で、ほかの人は認印で足ります。ただし認印で足りる人には本人確認証明書が必要になるので、どちらにしても1つは書類を用意することになります。
本人確認証明書として法務省が挙げているのは、住民票記載事項証明書(個人番号が記載されていないもの)、戸籍の附票、住所が記載された住基カードのコピー、運転免許証等のコピー、マイナンバーカードの表面のコピーです。運転免許証は裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名します。マイナンバーカードは表面だけをコピーし、同じく原本と相違がない旨を記載して記名します。個人番号の通知カードは使えません。制度の説明は法務省の商業・法人登記の案内に出ています。
決議書に書いてしまえば、就任承諾書を作らなくてよい
実務ではむしろこちらが主流です。法務局の記載例に、省略のしかたが明記されています。
設立時取締役は、発起人が決める手続きで選ばれます。その決議を書き残したものが「設立時取締役選任及び本店所在場所決議書」です。この決議書に、発起人の中から選ばれた人が席上で就任を承諾した旨の記載と、その人の住所の記載があり、本人が記名押印していれば、申請書に別途就任承諾書を添付する必要はありません。このとき押すのは、設立時取締役については市区町村に登録した印鑑です。申請書には「就任承諾書は、設立時取締役選任決議書の記載を援用する。」と書きます。援用とは、別の書類の記載をそのまま使うという意味です。
条件は3つそろっている必要があります。承諾した旨が書いてあること。住所が書いてあること。本人が記名押印していること。どれか1つでも欠けると援用できません。とくに住所の記載漏れが多い。氏名だけ書いた決議書では代わりになりません。
そして大事な点が2つあります。1つは、就任承諾書の添付を省略した場合でも、設立時取締役については市町村長が作成した印鑑証明書の添付が必要だということ。省けるのは紙1枚であって、本人確認の書類ではありません。設立時監査役を選任した場合には、住民票記載事項証明書などの本人確認証明書を添付することも同じです。
もう1つは、発起人以外から設立時取締役や設立時監査役を選んだ場合には、その人については別に就任承諾書が必要になることです。決議書に記名押印するのは発起人なので、発起人でない人の承諾は決議書の中に残りません。外部から役員を招く会社は、ここで援用が使えなくなります。
設立時代表取締役の就任承諾書はどうなるか
取締役会を置く会社では、設立時代表取締役も就任承諾書の対象になります。ここにも援用の仕組みがあります。
設立時代表取締役は、発起人全員の一致の決議で選びます。その決議を書き残したものが「設立時代表取締役選定決議書」です。法務局の記載例では、決議の文のあとに「なお、被選定者は即時その就任を承諾した。」という1文が置かれています。
記載例の注には、発起人の中から選ばれた被選定者が席上で就任を承諾し、その旨の記載と被選定者の記名が決議書にある場合には、申請書に別途就任承諾書を添付することを要しない、と書かれています。申請書には「就任承諾書は、設立時代表取締役選任決議書の記載を援用する。」と記載します。
設立時取締役のときと条件が少し違うことに気づいたでしょうか。設立時取締役の援用では「住所の記載」と「記名押印」が条件でしたが、設立時代表取締役の援用では「記名」とされています。代表取締役としての地位については、印鑑証明書を照合する対象が取締役としての承諾のほうにあるためです。ただし決議書には、選定した設立時代表取締役の住所が「設立時代表取締役 ○県○市○町○丁目○番○号 ○○○○」という形で書かれています。
ここでも、発起人以外から設立時代表取締役を選んだ場合には、別に就任承諾書を添付する必要があります。
印鑑証明書は1通で2役をこなす
設立の手続きで地味に効く節約があります。
会社を作ると、会社の実印を法務局に届け出ることになります。この届け出に使うのが印鑑届書で、そこにも市区町村長が作成した印鑑証明書を添付する必要があります。法務局は、印鑑届書に添付する印鑑証明書は市区町村長が作成した3か月以内のものと案内しています。
ここで、就任承諾書に添付する印鑑証明書と印鑑届書に添付する印鑑証明書が、同じ人の同じ書類だという場面が出てきます。取締役会を置かない会社で、設立時取締役が1人で、その人が会社の実印を届け出る場合がまさにそれです。
法務局の記載例には、同時に印鑑を提出している場合は、印鑑届書に添付する印鑑証明書として援用することができる、と書かれています。つまり1通で足ります。役所で2通取る必要はありません。
ひとりで会社を作る場合、必要な印鑑証明書は自分の分が1通だけ、ということになります。手数料も往復の手間も半分になるので、知っているかどうかで差が出ます。
なお法務局は、電子証明書を持っている人が一人会社を設立する場合には、完全オンライン申請を勧めています。電子証明書を持っていない場合でも、二次元バーコード付き書面申請という方法があり、これはオンライン申請と同様の利点があると案内されています。
設立登記の添付書類を、記載例からそのまま並べる
取締役会を置かない株式会社の発起設立について、法務局の記載例に並んでいる添付書類は次のとおりです。
・定款 ・発起人の同意書(設立に際して発起人が割当てを受けるべき株式数や払い込むべき金額、株式発行事項、発行可能株式総数の内容が定款に定められていない場合。資本金および資本準備金の額が定款に定められていない場合も同じ) ・設立時代表取締役を選定したことを証する書面 ・設立時取締役(及び設立時監査役)の就任承諾書 ・印鑑証明書 ・本人確認証明書 ・設立時取締役(及び設立時監査役)の調査報告書及びその附属書類(現物出資など変態設立事項の定めが定款にある場合に限る) ・払込みを証する書面 ・資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書 ・委任状(代理人に申請を委任した場合のみ)
払込みを証する書面は、払込金受入証明書か、設立時代表取締役が作成した「出資される金銭の全額の払込みを受けたことを証明する」書面に、預金通帳の写しや取引明細票を合わせてとじたものです。
資本金の額の計上に関する証明書は、出資される財産が金銭のみの場合には添付する必要がありません。現金だけで作る会社なら1通減ります。
登録免許税は資本金の額の1000分の7で、この額が15万円に満たない場合は15万円になります。100円未満の端数は切り捨てます。資本金を2000万円より下に設定する会社はすべて15万円ということです。収入印紙か領収証書で納付し、収入印紙は台紙に貼ります。割印はしません。
定款については、株式会社の場合、公証人の認証を受ける必要があります。この点は合同会社と異なります。
記載例が4種類ある理由。発起設立と募集設立
法務局のページで設立の記載例を探すと、株式会社だけで4種類並んでいて面食らいます。取締役会設置会社の発起設立、取締役会設置会社の募集設立、取締役会を設置しない会社の発起設立、取締役会を設置しない会社の募集設立の4つです。
縦軸が取締役会を置くかどうか、横軸が発起設立か募集設立か、という組み合わせになっています。取締役会の有無は前に説明したとおりです。もう一方の軸を説明します。
発起設立とは、設立時に発行する株式の全部を発起人が引き受ける形です。会社を作ろうと言い出した人たちだけでお金を出す、いちばん素直な作り方で、小規模な会社のほぼすべてがこれに当たります。募集設立とは、発起人が一部を引き受け、残りを引き受ける人を外から募集する形です。手続きが増え、創立総会という会議を開く必要も出てきます。
自分がどちらか迷う人はほとんどいません。外部から出資者を募った覚えがないなら発起設立です。したがって、見るべき記載例は2つに絞られます。取締役会を置くなら1つ目、置かないなら3つ目。この記事で引いているのは、この2つです。
なお法務局は、記載例のほかに申請書の様式もワード形式で配布しています。記載例を読んでから様式に書き込む、という順番で進めるのが早い。記載例には注が大量に付いていて、その注こそが実務の肝になっています。
定款に何を書くかで、添付書類の数が変わる
設立の書類は、定款の書き方しだいで増えたり減ったりします。ここを理解していると、無駄な紙を作らずに済みます。
定款に必ず書かなければならないことは5つです。目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所。これが欠けていると定款そのものが無効になります。
本店の所在地の書き方には選択肢があります。定款に定める本店の所在地は、最小行政区画までで構いません。「○県○市に置く」という書き方です。ただしその場合は、発起人の過半数により、丁目と番と号まで含めた本店の所在場所を別に決めることになります。その決定を残したものが、前に出てきた「設立時取締役選任及び本店所在場所決議書」です。定款に番地まで書いてしまうと、あとで本店を同じ市内で動かすときにも定款変更が必要になるので、最小行政区画までにしておくのが実務では一般的です。
発起人の同意書も、定款の書き方で要否が変わります。法務局の記載例には、発起人の引受株式数の記載が定款にあるときは、その点に係る発起人の同意書を申請書に添付する必要はない、と書かれています。この場合、申請書には「○○は定款の記載を援用する。」と記載します。つまり定款に書き込んでおけば、同意書という紙を1枚減らせます。
逆に、書いたことで書類が増える項目もあります。現物出資をする人の氏名と出資する財産とその価額、会社の成立後に譲り受けることを約した財産とその価額、発起人が受ける報酬その他の特別の利益、会社が負担する設立に関する費用。これらは変態設立事項と呼ばれ、定款に定めがある場合には、設立時取締役(および設立時監査役)の調査報告書とその附属書類を添付することになります。現物出資の額によっては、検査役の調査報告書や弁護士等の証明書まで必要になります。不動産を現物出資する場合は、不動産鑑定士の鑑定評価を記載した書面も添付します。
現金だけで作れば、これらはすべて不要です。パソコンや車を現物出資したいという相談をよく受けますが、手続きの重さと節税の効果を比べると、少額なら現金で出資して会社が買い直したほうが早い場面が多いのが実情です。
補正になりやすい3か所と、会社の成立日
法務局から連絡が来て書類を出し直すことを補正といいます。設立で多いのは次の3か所です。
1つ目は住所の表記です。印鑑証明書や本人確認証明書に記載された住所と、就任承諾書や決議書に書いた住所は、1文字も違ってはいけません。「1丁目2番3号」を「1-2-3」と書き換えたり、建物名や部屋番号を省いたりすると、同一人物と確認できないとして止まります。証明書を手元に置いて、見ながら書き写すのが確実です。
2つ目は商号と本店の重複です。商号と本店が同一の会社が既に存在する場合、設立の登記はできません。法務局は、定款の認証を受ける前にその有無を必ず確認するよう案内していて、この調査は無料でできると書いています。定款を認証してもらったあとに気づくと、認証の費用が無駄になります。
3つ目は目的の書き方です。ローマ字による用語や専門用語を使う場合、一般に市販されている用語辞典に掲載されているなど、広く社会的に認知されているものでないときは、登記申請が受理されない場合があると法務局は注意しています。許認可が必要な事業を予定しているなら、定款に定める目的に問題がないかを、事前に所管の官公庁に問い合わせておくべきだとも書かれています。登記が通っても、許認可の関係で問題とされることがあるからです。
最後に、会社の成立日について。会社は設立の登記をすることによって成立します。したがって会社の設立年月日は、登記所が設立登記申請書を受け付けた日になります。登記が完了した日ではありません。設立日にこだわりがあるなら、その日に申請書が受け付けられるように動くことになります。
なお、登記の申請を出してから手続が終わるまでの間は、原則としてその会社の登記事項証明書と印鑑証明書が発行されません。口座開設や契約で謄本が必要になる予定があるなら、登記完了予定日を確認したうえで逆算してください。
設立にかかるお金を、内訳で出す
取締役会を置かない発起設立で、発起人が1人、資本金を50万円にする会社を想定して、成立までに出ていくお金を並べます。
定款の認証手数料は、日本公証人連合会の案内によると、資本金の額等が100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以外で5万円です。ここに令和6年12月1日から始まった減額の仕組みがあります。
現行手数料令第35条第1号の規定が改正され、3万円と定められていた資本金の額等が100万円未満の株式会社の定款の認証手数料について、次の(1)から(3)までのいずれにも該当する場合にあっては、1万5,000円とされました。 (1) 発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が3人以下であること。 (2) 定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。 (3) 定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと。 出典: koshonin.gr.jp
3つの条件は、この記事が前提にしている形とそのまま重なります。取締役会を置かず、発起人が自分ひとりで、株式は全部自分が引き受ける。この形であれば認証手数料は1万5,000円です。
次に謄本の手数料が、1枚につき250円。おおむね8枚で2,000円ほどになります。
収入印紙が4万円。ただし電子定款で認証を受ける場合は貼る必要がありません。ここが単独でいちばん大きい節約になります。
設立登記の登録免許税が15万円。資本金の額の1000分の7で計算した額が15万円を超えないかぎり15万円です。50万円の1000分の7は3,500円ですから、15万円になります。
印鑑証明書が1通。手数料は市区町村ごとに違い、数百円です。取締役会を置かない会社で自分が会社の実印も届け出るなら、この1通を印鑑届書のぶんにも使えます。
会社の実印の作成費用が、注文する先によって数千円から2万円ほど。
電子定款で進めれば、合計はおよそ16万8,000円に実印の代金を足した額になります。紙の定款にすると収入印紙の4万円が乗って、20万8,000円ほど。取締役会を置く形にすると認証手数料が1万5,000円から3万円に戻るので、さらに1万5,000円増えます。資本金を100万円以上にした場合も、減額の対象から外れて4万円か5万円になります。
自分で申請するか専門家に頼むかで変わるのは報酬の部分だけで、ここに並べた金額は誰がやっても同じです。
認証から会社の成立までを日付順に並べる
ひとりで会社を作る場合の段取りを、順番に置きます。日数は目安です。
1日目、商号と本店を決めます。同じ商号と同じ本店の会社が既にないかを法務局で調べます。この調査は無料でできると法務局が案内しています。
2日目から4日目、定款を書きます。目的の書き方に許認可がからむなら、この段階で所管の官公庁に問い合わせます。あわせて印鑑証明書を取り、会社の実印を注文します。実印は注文から受け取りまで数日かかるので、ここで頼んでおきます。
5日目、公証役場に定款の案を送って事前に見てもらいます。多くの役場が案の確認に応じていて、直しがあれば認証の前に片付きます。
6日目から8日目、認証を受けます。認証の日に持っていくのは定款と印鑑証明書、そして手数料です。
9日目、資本金を発起人の口座に払い込みます。払込みを証する書面は、この通帳の記録から作ります。払い込むのは認証の後にしてください。
10日目、設立時取締役選任及び本店所在場所決議書と就任承諾書を作ります。就任承諾書に押した印鑑と印鑑証明書の住所の表記を突き合わせます。
11日目、申請書に収入印紙を貼り、印鑑届書を添えて法務局に出します。この受付の日が会社の成立日になります。設立日にこだわりがあるなら、この日を逆算して全体を組みます。
12日目から18日目、登記が終わるのを待ちます。この期間は登記事項証明書と印鑑証明書が出ないので、口座の開設や契約の予定はこの後に置きます。
19日目以降、登記事項証明書を取り、税務署と都道府県と市区町村への届出、社会保険の手続き、口座の開設に移ります。
勘違いしやすい5つ
ひとつ目は、就任承諾書に必ず実印が要ると考えることです。実印と印鑑証明書が要るのは取締役会を置かない会社の設立時取締役で、取締役会を置く会社では設立時代表取締役だけが対象になります。
ふたつ目は、就任承諾書という紙を必ず作らなければならないと考えることです。決議書のなかで本人が就任を承諾した旨が読み取れる形にしておけば、別に作らなくてよい場合があります。
みっつ目は、印鑑証明書を用途ごとに取ってしまうことです。就任承諾書に添付するものと印鑑届書に添付するものは、同時に出すなら1通で足ります。
よっつ目は、会社の成立日を登記が完了した日と考えることです。成立日は申請書が受け付けられた日です。
いつつ目は、資本金が少なければ登録免許税も少なくなると考えることです。1000分の7で計算した額が15万円に届かないかぎり15万円で、資本金2000万円を下回る会社はすべて同額になります。
会社を作ったあとに残る仕事と、そこで効いてくるもの
登記が終わっても、会社の仕事は始まったばかりです。運営者として在宅と業務委託の市場を長く見てきた立場から言うと、法人にした直後に効いてくるのは節税の知識よりも、取引の形を自分で決められるかどうかでした。個人で受けていたときは相手の様式に合わせるしかなかった見積書や契約書を、法人になった瞬間に自分の型で出せるようになる。この差が、単価よりも先に効きます。
その型を作るうえで地味に効くのが、文書を整える力です。就任承諾書のように「様式は自由だが要素は決まっている」書類は、ビジネス文書の基本と構造がまったく同じです。誰が、いつ、何について、どう意思表示したのかを、読む人が迷わない順番で並べる。この作法を体系立てて確認したいなら、ビジネス文書検定の出題範囲が参考になります。社内文書と社外文書の使い分け、日付と宛名の置き方、敬語の型まで、登記書類にもそのまま通じる内容です。
法人化の動機が受注の幅を広げることにあるなら、法人でなければ入れない案件がどこにあるかも見ておきたいところです。企業がAIをどう業務に組み込むかを設計する仕事は、その代表格です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、現場の業務を聞き取って自動化の設計に落とす仕事の輪郭がまとまっています。守備範囲を広げるならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、受託開発を軸にするならアプリケーション開発のお仕事が、それぞれどんな案件が動いているかの見取り図になります。技術職として法人で受けるなら、ネットワークの基礎を証明するCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、取引開始時の判断材料になる場面もあります。
資本金をいくらにするか、初年度の売上をどう見積もるかを決めるときは、職種ごとの相場を先に見ておくのが早い。ソフトウェア作成者の年収・単価相場と著述家,記者,編集者の年収・単価相場は、公的統計をもとにした職種別のデータで、年間の計画を立てるときの下敷きになります。
法人になると、取引の守り方も変わります。相手が大きくなるほど、支払条件や検収の取り決めが効いてきます。発注書と契約書に何を書いておくべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理があります。それでも回収できない事態に備えるなら未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】を、会計まわりの知見を持つ人が周辺でどう動いているかを知るなら会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】を見ておくと、法人まわりの実務の地図がひととおりそろいます。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、法人にして長く続く人ほど、案件の数ではなく取引の構造を整えることに時間を使っています。同じ仕事でも、間に入る事業者が多いほど、発注側が払った金額と受け手の手取りの差は開きます。中間のマージンが乗らない直接の取引なら、発注側は同じ予算でより多く頼め、受け手の手取りは厚くなる。この手数料0%の構造は、単価表の数字としてではなく、1年たったときの残り方の違いとして現れます。会社を作るという判断は、その残り方を自分の側に寄せるための一手でもあります。
設立時取締役の就任承諾書に話を戻すと、この1枚が求めているのは「その地位を引き受けたのは確かにこの人だ」という一点だけです。印鑑証明書が要るか要らないかも、その一点をどれだけ強く確かめる必要があるかの違いにすぎません。取締役会を置くかどうかを先に決めてしまえば、残りは書き写す作業になります。
よくある質問
Q. 設立時取締役の就任承諾書には実印を押す必要がありますか?
取締役会を置かない会社の設立では、設立時取締役の全員が市区町村に登録した実印を押し、その印鑑証明書を添付します。取締役会を置く会社の設立では、実印を押すのは設立時代表取締役だけで、ほかの設立時取締役は認印で足ります。ただし認印の人には住民票記載事項証明書などの本人確認証明書が必要になります。
Q. 就任承諾書を作らずに済ませる方法はありますか?
設立時取締役選任決議書に、本人が席上で就任を承諾した旨と本人の住所を記載し、本人が記名押印していれば、別途の就任承諾書は不要です。申請書には「就任承諾書は、設立時取締役選任決議書の記載を援用する。」と記載します。ただし印鑑証明書や本人確認証明書は省略できず、発起人以外から選んだ人については別に就任承諾書が必要です。
Q. 印鑑証明書は何通必要ですか?
就任承諾書に添付する分と、会社の実印を届け出る印鑑届書に添付する分が必要ですが、設立登記と同時に印鑑を提出する場合は、就任承諾書に添付した印鑑証明書を印鑑届書の分として援用できます。ひとりで会社を作る場合、自分の印鑑証明書が1通あれば足りることになります。
Q. 設立登記の費用はいくらかかりますか?
登録免許税は資本金の額の1000分の7で、この額が15万円に満たない場合は15万円です。100円未満の端数は切り捨てます。このほかに、株式会社では定款の認証を公証人に受ける費用、印鑑証明書などの証明書の取得費用がかかります。代理人に申請を委任する場合は、その報酬が別に必要です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







