公立教員の副業はどこまで認められるか|許可が必要な範囲と手続き 2026

前田 壮一
前田 壮一
公立教員の副業はどこまで認められるか|許可が必要な範囲と手続き 2026

この記事のポイント

  • ✓公立教員の副業がどこまで認められるかを
  • ✓地方公務員法と教育公務員特例法の条文にもとづいて整理しました
  • ✓教育に関する兼職の扱い

まず、前提を1つ置きます。公立学校の教員は地方公務員であり、副業について民間の会社員とはまったく違うルールが適用されます。就業規則ではなく法律が線を引いているため、「会社が黙認しているから大丈夫」という考え方が通用しません。一方で、「公務員だから副業は全部禁止」という理解も正確ではありません。許可を得れば認められる範囲があり、教員にはさらに別の条文による道も用意されています。この記事では、公立教員の副業について、どの条文がどこまでを禁じ、どこからが手続きの問題なのかを整理します。

公立教員に適用される2つの法律

出発点はここです。関係する条文は2つあり、この2つを混同すると話が分からなくなります。

1つ目は地方公務員法です。地方公共団体に勤める職員全般に適用される法律で、営利企業への従事などを制限する規定があります。2つ目は教育公務員特例法です。教育に携わる公務員について、地方公務員法の特例を定めた法律で、兼職についての別の規定を置いています。

公立学校の教員は、この両方の適用を受けます。そして、やろうとしている活動の内容によって、どちらの条文で判断するかが変わります。ここが理解の分かれ目です。

押さえておくべき前提の義務

副業の話に入る前に、そもそも公務員に課されている義務を確認しておきます。以下はすべて、副業をしているかどうかにかかわらず常に効いている規定です。

地方公務員法第三十五条は、職務に専念する義務を定めています。法律または条例に特別の定めがある場合を除き、勤務時間と職務上の注意力のすべてを職責の遂行のために用いなければならない、という内容です。勤務時間中に別の仕事をすることは、この条文に正面から反します。

同じ法律の第三十三条は、信用失墜行為の禁止を定めています。その職の信用を傷つけ、または職員全体の不名誉となるような行為をしてはならない、という規定です。勤務時間外の活動であっても、内容によってはここに触れます。

第三十四条は、秘密を守る義務です。職務上知り得た秘密を漏らしてはならず、退職後も同様だとされています。この違反には罰則があり、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。教員の場合、児童生徒や保護者に関する情報がこれに当たります。副業として執筆や講演をする際に、もっとも注意が必要な部分です。

地方公務員法第三十八条が禁じている3つの形

副業の中心にあるのが、この条文です。正確に読むと、禁じられているのは3つの形だと分かります。

条文は、職員は任命権者の許可を受けなければ、次のことをしてはならないと定めています。1つ目は、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他の地位を兼ねること。2つ目は、自ら営利企業を営むこと。3つ目は、報酬を得ていかなる事業もしくは事務にも従事することです。

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

「禁止」ではなく「許可制」だと読む

この条文でもっとも重要なのは、冒頭の「任命権者の許可を受けなければ」という部分です。絶対的な禁止ではなく、許可を条件とする制度だということです。

つまり、副業をしたい教員が最初に考えるべきことは「できるかどうか」ではなく、「どの窓口に、どういう資料を出して、許可を求めるか」になります。この発想の切り替えが、実務ではいちばん大きな差を生みます。

3つ目の「報酬を得て」が広い

注意が必要なのは3つ目です。営利企業に限定されておらず、「いかなる事業若しくは事務にも」と書かれています。営利を目的としない団体での活動であっても、報酬を受け取るのであれば許可の対象になります。

逆に言えば、報酬を受け取らない活動は、この3つ目には該当しません。無償のボランティア活動が一般に問題になりにくいのは、この理由によります。ただし、報酬という言葉に何が含まれるかは自治体の運用で幅があり、交通費の実費弁償と謝金の区別なども論点になります。判断に迷う額を受け取る場合は、事前に確認してください。

許可の基準は自治体ごとに決まる

条文の第二項は、人事委員会が規則で許可の基準を定めることができるとしています。基準は自治体ごとに定められるため、隣の市では認められる活動が自分の市では認められない、ということが実際に起こります。

したがって、インターネット上で見つけた「公務員でもできる副業一覧」を、そのまま自分に当てはめることはできません。勤務先の教育委員会が示している規程を確認するのが、唯一の確実な方法です。

教育公務員特例法第十七条という別の道

ここが、教員に固有の部分です。一般の地方公務員にはない規定が用意されています。

教育公務員特例法第十七条は、教育公務員が「教育に関する他の職」を兼ねること、または「教育に関する他の事業若しくは事務」に従事することについて、本務の遂行に支障がないと任命権者が認める場合には、給与を受けても受けなくても、その職を兼ね、その事業や事務に従事できると定めています。

教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。 出典: laws.e-gov.go.jp

3つの特徴

この条文には、地方公務員法第三十八条と比べて3つの違いがあります。

1つ目は、対象が「教育に関する」ものに限られていることです。教育と無関係な活動には使えません。

2つ目は、判断の基準が「本務の遂行に支障がないこと」に絞られていることです。営利かどうかではなく、本業に支障が出るかどうかで判断されます。

3つ目は、同じ条文の第三項に書かれています。この場合には、地方公務員法第三十八条第二項によって人事委員会が定める許可の基準によることを要しない、とされています。つまり、一般職員向けに作られた基準とは別枠で判断される仕組みになっています。

誰が判断するか

条文は、判断するのは任命権者だとしています。ただし、公立小中学校の教員のように、市町村立の学校に勤めながら都道府県が給与を負担する立場の教職員については、市町村の教育委員会が認めることになっています。

窓口がどこかは、自分がどの立場の教職員かによって変わります。管理職を通じて確認してください。

実務で判断が分かれやすいケース

条文の理解ができたところで、具体的な活動に当てはめていきます。以下は一般的な整理であり、最終的な可否は勤務先の規程と個別の事情で決まります。必ず事前に確認してください。

塾講師や家庭教師

教育に関する事業であるため、教育公務員特例法第十七条の枠組みで検討される余地があります。ただし、営利企業である塾に雇われて報酬を受ける形は、地方公務員法第三十八条の対象にもなり、実務上は許可を得ずに行うのは難しい領域です。

さらに、自分の勤務校の児童生徒を対象にする形は、公平性の観点から強い問題を生みます。勤務校と関係のない相手であっても、まず管理職に相談してください。

執筆と講演

教育に関する書籍の執筆や、教育雑誌への寄稿、研究会での講演は、教育に関する事業に当たる可能性があります。実際に、教科書や指導資料の執筆に教員が関わる例は多くあります。

注意点は2つです。1つは、職務上知り得た情報を書かないこと。児童生徒や保護者の事例を扱う場合、個人が特定されない形にしても、秘密を守る義務との関係で慎重な判断が要ります。もう1つは、継続的に報酬を得る形になれば、許可や承認の対象になるということです。単発の原稿料であっても、届け出を求める運用をしている自治体があります。

動画配信やブログでの広告収入

教育に関する情報発信であっても、広告収入を得る形になると、営利事業を自ら営んでいると評価される可能性があります。収入の規模が小さくても、継続的に発生する構造であれば許可の対象になり得ます。

加えて、教員という立場が特定される形での発信は、信用失墜行為の禁止との関係が問題になります。内容が適切であっても、発信の仕方によって所属先に問い合わせが入る事態が起こり得ます。始める前に相談してください。

不動産の賃貸と太陽光発電

相続などで不動産を持つことになった場合、賃貸することが自ら営利企業を営むことに当たるかが問題になります。自治体は規模の基準を設けていることが多く、戸数や賃貸料収入の額で線を引いています。基準は自治体ごとに違うため、勤務先の規程を確認してください。

なお、国家公務員については人事院が基準を定めており、令和8年4月1日から自営兼業に関する制度が見直されています。不動産の賃貸料収入について承認を要する基準が年額500万円以上から1,000万円以上へ、太陽光電気の販売について10キロワット以上から50キロワット以上へと緩和されました。地方公務員に直接適用されるものではありませんが、各自治体が基準を見直す際の参考にされることがあるため、動向として知っておく価値があります。

株式や投資信託の売買

一般に、資産の運用は営利企業を営むことには当たらないと整理されています。ただし、勤務時間中に取引をすれば職務専念義務の問題になりますし、規模や態様によっては事業と評価される可能性が残ります。

家業の手伝い

実家の農業や商店を手伝う形は、報酬の有無と関与の程度で判断が変わります。無償で短時間の手伝いをするのと、経営に関与して収入を得るのとでは、まったく扱いが違います。ここも自治体の規程を確認する領域です。

フリマアプリでの不用品の売却

自分が使っていた不用品を売る行為は、一般に営利事業とはみなされません。ただし、販売を目的として仕入れ、継続的に売る形になれば、営利企業を営んでいると評価される可能性があります。取り扱う点数と頻度が増えてきたら、線を越えていないか確認してください。

試験の監督や採点、審査への協力

入学試験の監督、検定試験の採点、コンクールの審査といった依頼が来ることがあります。教育に関する事務に当たる可能性がある一方、報酬を受け取る形であれば手続きの対象になります。

公的な機関からの依頼であっても、自動的に許可が不要になるわけではありません。依頼元が「公務員の方も参加しています」と説明する場合がありますが、それは他の自治体で許可が出た例があるという意味に過ぎません。自分の勤務先の規程で確認してください。

講師派遣や研修の依頼を受けるとき

教育委員会や大学から研修の講師を依頼される場合、職務命令として行くのか、個人として受けるのかで扱いが変わります。職務として派遣される形であれば副業の話にはなりませんが、個人で受けて報酬を得る形であれば手続きが必要です。

依頼を受けた時点で、どちらの形なのかを依頼元に確認してください。ここがあいまいなまま進むと、後から整理がつかなくなります。

部活動の地域移行と兼職兼業

近年もっとも動きがあるのが、この領域です。部活動を学校から地域のクラブ活動へ移していく流れの中で、教員が地域クラブの指導者として活動する形が制度として整えられつつあります。

文部科学省が令和7年12月に示した部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドラインは、教師等の兼職兼業について明確な方向を示しています。

学校の教師等が希望に応じて地域クラブ活動の指導者等として活動することができるよう、「公立学校の教師等が地域クラブ活動に従事する場合の兼職兼業について(手引き)」(令和5年1月文部科学省)等を参照しながら、兼職兼業の許可の手続の円滑化を図ることが必要。その際、認定地域クラブ活動については、国が示す要件に基づき、市区町村等が認定した公的な性質を有する活動であり、学校運営に支障がない限り、積極的に許可を行うことが必要。 出典: mext.go.jp

「積極的に許可を行うことが必要」と書かれている意味

この一文は重要です。国の文書が、許可に向けて積極的に動くよう求めています。副業一般については慎重な姿勢が続く中で、この領域だけは方向が明確に示されているということです。

同じガイドラインは、対象が中学校の教員に限られないことも示しています。小学校の体育専科教員、高等学校や特別支援学校の教員、さらには事務職員まで、幅広い職種が希望に応じて円滑に兼職兼業を行えるよう環境を整備することが重要だとされています。

条件として示されていること

一方で、歯止めも書かれています。許可にあたっては本人の意思を尊重し、指導を望んでいないのに参加を強いられることがないよう十分に確認すること。勤務校における業務への影響の有無や、健康への配慮を確認すること。そして、服務監督を行う教育委員会と、地域クラブの運営団体が連携して勤務時間の全体管理を行うことです。

つまり、「本人が望むこと」「学校運営に支障がないこと」「労務管理が行われること」の3点がそろっている形が想定されています。自分から手を挙げる場合も、この3点が説明できる状態にしてから相談すると話が早く進みます。

規程が整備されていない自治体もある

ガイドラインは、兼職兼業に係る規程等の整備が行われていない教育委員会について、国が示すひな型を参考に速やかに整備と周知を行うよう求めています。裏を返せば、まだ整っていない自治体があるということです。

勤務校がある市区町村と、指導したい地域クラブがある市区町村が違う場合についても、関係する教育委員会が連携して円滑に進めるよう求められています。窓口で前例がないと言われても、そこで終わりにせず、ガイドラインの記載を示して確認してもらう余地があります。

手続きの順番

実際に動くときの順番を示します。飛ばさないでください。

第1段階:勤務先の規程を手に入れる

最初にやるのは、勤務先の教育委員会が定めている営利企業等の従事制限に関する規程を読むことです。管理職に依頼すれば入手できます。ここに、許可の対象、判断の基準、必要な書類、申請の時期が書かれています。

インターネットで調べた一般論ではなく、この文書が自分にとっての基準です。

第2段階:管理職に相談する

次に、校長など管理職に相談します。申請は通常、管理職を経由して教育委員会に上がります。管理職が内容を把握していない状態で書類だけが上がる形は、そもそも成立しません。

相談するときは、活動の内容、頻度、時間帯、報酬の有無と額、本務への影響をどう抑えるかを説明できる状態にしておいてください。口頭で終わらせず、簡単な紙にまとめて持っていくと話が進みます。

第3段階:申請して結果を待つ

書類が整ったら申請します。判断には時間がかかるため、活動の開始予定日から逆算して早めに出してください。許可が下りる前に活動を始めてしまうと、それ自体が問題になります。

申請書に書く内容を先に整理する

自治体によって様式は違いますが、求められる情報はおおむね共通しています。次の項目を、数字で答えられる形にしておいてください。

従事する先の名称と所在地、その団体が何をしている組織か。従事する業務の内容。従事する期間、曜日、時間帯、1か月あたりの回数と合計時間。報酬の有無と、ある場合はその額と支払いの形。そして、本務の遂行に支障がないと言える理由です。

最後の項目がもっとも重要で、もっとも書き慣れない部分です。「支障はありません」とだけ書いても説得材料になりません。活動時間が勤務時間と重ならないこと、校務分掌や部活動の担当との兼ね合い、体調管理の方法、緊急時に活動を中止できる体制になっていること。こうした具体的な事実を並べる形で書いてください。

報酬の額を伏せたくなる気持ちは分かりますが、正確に書く方が結果的に早く進みます。額が不明確だと、判断する側は確認のために差し戻すしかありません。

第4段階:条件の変更は再度申請する

許可は、申請した内容に対して出されます。活動の頻度が増えた、報酬が大きく変わった、扱う内容が変わったといった場合は、あらためて相談が必要です。当初の申請のまま続けていると、実態と許可の内容がずれていきます。

常勤か非常勤かで適用が変わる

同じ学校で働いていても、立場によって適用される規定が違います。ここを取り違えている相談が少なくありません。

地方公務員法第三十八条のただし書き

条文の第一項には、ただし書きが付いています。非常勤職員については、この限りでないという内容です。ただし、短時間勤務の職を占める職員と、定年前再任用短時間勤務職員などは除かれます。

つまり、一定の非常勤職員には、営利企業への従事等の制限がそのまま当てはまりません。会計年度任用職員として週の勤務時間が短い形で働いている場合、常勤の教員とは扱いが違う可能性があります。

教育公務員特例法第十七条にも除外がある

こちらの条文にも第二項があり、非常勤の講師については適用しないとされています。地方公務員法の短時間勤務の職を占める者などは除かれます。

自分の立場を正確に把握する

重要なのは、自分がどの区分に属するかを思い込みで判断しないことです。「非常勤だから自由」と考えて始めたところ、実際には短時間勤務の職を占める職員にあたり、制限の対象だったという食い違いが起こり得ます。

任用の根拠がどの条文にあるのか、勤務時間はどう設定されているのか。この2点を人事の担当部署に確認してください。辞令や任用通知に書かれていることもあります。

また、制限の対象外であっても、職務専念義務、信用失墜行為の禁止、秘密を守る義務は適用されます。副業の許可が不要であることと、何をしてもよいこととは別です。

勤務時間外なら自由、とは言えない理由

「勤務が終わったあとの時間は自分のものだから、何をしても構わない」という考え方は、公務員には当てはまりません。理由が3つあります。

理由1:条文が勤務時間に限定していない

地方公務員法第三十八条の条文には、勤務時間内に限るという限定がありません。報酬を得て事業や事務に従事すること自体が許可の対象です。休日や夜間であっても、許可が必要な場面は生じます。

同じことが、信用失墜行為の禁止にも当てはまります。第三十三条は行為の時間帯を限定していません。勤務時間外の言動であっても、その職の信用を傷つけるものであれば対象になります。

理由2:本務への影響が判断される

教育公務員特例法第十七条の判断基準は「本務の遂行に支障がないこと」です。勤務時間外に行う活動であっても、疲労が蓄積して授業の質が落ちる、翌日の勤務に影響が出るといった事情があれば、支障があると評価されます。

実務でも、この点は具体的に確認されます。何時から何時まで、週に何回、どの曜日に活動するのか。休日をすべて充てる計画であれば、健康への影響が問われます。申請の段階で説明できる形に整理しておいてください。

理由3:教員の勤務時間は把握が難しい

教員の働き方には、授業以外の業務が勤務時間の前後に広がりやすいという特徴があります。校務分掌、教材の準備、保護者への対応。これらを含めた在校等時間を把握し、上限を守るための取り組みが各自治体で進められています。

副業の申請をする際、この在校等時間の状況も判断の材料になり得ます。すでに長い時間を本務に充てている状態で新たな活動を加える計画は、認められにくくなります。逆に言えば、本務の負担を整理してから申請する方が、通りやすいということでもあります。

違反した場合に何が起こるか

厳しい話になりますが、結果を知っておくことは判断の材料になります。

地方公務員法第二十九条は、懲戒処分として戒告、減給、停職または免職の処分をすることができると定めています。対象となるのは、この法律や条例、規則に違反した場合、職務上の義務に違反しまたは職務を怠った場合、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合です。

無許可の副業は、1つ目に該当します。処分の重さは、得た収入の額、期間の長さ、本務への影響、発覚後の対応などを総合して判断されます。金額が小さくても、長期にわたっていれば重く評価されることがあります。

加えて、職務上知り得た秘密を漏らした場合には、前述のとおり刑事罰が定められています。1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。執筆や講演で事例を扱う際は、この点をとくに意識してください。

処分は記録として残り、その後の人事にも影響します。「バレなければ大丈夫」という考え方で進めるには、代償が大きすぎる領域だと言えます。

税と社会保険の手続き

許可を得て活動を始めたあとの手続きも押さえておきます。

確定申告が必要になる場面

給与を1か所から受けていて、それ以外の所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。所得は受け取った金額そのものではなく、そこから必要経費を差し引いた額です。

講演料や原稿料は、支払う側が所得税を差し引いてから振り込む形になっていることがあります。これは源泉徴収と呼ばれるもので、確定申告をすることで払い過ぎた分が戻る場合があります。明細は保管しておいてください。

住民税の扱い

所得税の申告が不要な範囲であっても、住民税の申告は別に必要になる場合があります。住んでいる自治体の案内を確認してください。

なお、住民税の徴収方法について、給与以外の所得の分を自分で納付する方法を選べる仕組みがありますが、この対象は給与所得以外の所得に限られます。副業がアルバイトのような給与にあたる場合は選べません。そして公立教員の場合、そもそも許可を得て行う前提であるため、勤務先に知られないようにするという発想自体が成り立ちません。

契約書の扱い

外部の団体から依頼を受ける場合、業務の範囲と報酬、納期、支払日を文字で残してください。教育関係の依頼は口頭で進みがちですが、条件が食い違ったときの根拠が必要です。業務委託で仕事を受けるときに確かめるべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで整理しています。

資格を持つ専門職が本業と並行して活動する際の考え方は、職種が違っても共通する部分があります。似た構造の例として会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も参考になります。

退職後を見据えた準備

もう1つの視点を挙げます。在職中にできることは限られていても、その先を見据えた準備は進められます。

教える技術は外でも通用する

教員が持っている技術は、教室の中だけで使われるものではありません。教材の設計、学習者の理解度に合わせた説明、文章による指導。これらは企業研修や教育コンテンツの制作でそのまま必要とされます。

文章を書く仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとめています。相場を知っておくと、退職後に何ができるかの見通しが立ちます。

在職中に作れる実績もある

許可を得て進められる活動があれば、それ自体が実績になります。教育に関する執筆や講演は、教育公務員特例法第十七条の枠組みで検討できる余地がある領域です。1本でも外部に出した仕事があると、退職後に自分が何をしてきたかを説明する材料になります。

無報酬で行う活動も、記録としては残ります。研究会での発表、教材の共同開発、地域での学習支援。報酬を受け取らない形であれば許可の対象になりにくく、かつ経歴としては積み上がります。在職中に動ける範囲としては、ここが現実的な入口になります。

新しい領域の知識を積む

情報教育が必修化され、学校現場でも技術的な知識が求められるようになりました。この領域の知識は、本務にも役立ちますし、退職後の選択肢にもつながります。

公開された試験に合格しておくと、経歴の説明がしやすくなります。文書の領域ならビジネス文書検定、ネットワークの領域ならCCNA(シスコ技術者認定)のように、日付と結果が残るものが向いています。学習そのものは副業に当たらないため、在職中から進められます。

生成AIの活用を支援する仕事の形はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、開発系の案件の形はアプリケーション開発のお仕事にまとめています。どんな依頼が実際に出ているかを見ておくと、何を準備すべきかが具体的になります。

市場を長く見てきた立場からの観察

在宅とフリーランスの領域を20年にわたって見てきた立場から言えば、教員からの相談には特徴があります。収入を増やしたいという動機より、「教えることを続けたいが、学校の枠組みでは続けられない」という動機が目立つのです。

運営者として見てきた限りでは、この領域で結果が出る人は、在職中に許可を取って小さく始めています。退職してからゼロで立ち上げた人より、在職中に実績を1つ作っておいた人の方が、その後の展開が早い。準備の有無が、そのまま時間の差になって表れます。

もう1つの観察は、手取りの構造についてです。仲介の手数料が差し引かれない形で依頼者と直接つながれると、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めるようになり、受ける側の手元に残る額は厚くなります。教員が本務の合間に使える時間は限られています。限られた時間で手取りを厚くできるかどうかは、案件を取る場所の選び方で決まる部分が大きい、というのが率直な実感です。

最後にもう一度書いておきます。公立教員の副業は、禁止されているのではなく、許可を要する制度になっています。許可を求めることは、後ろめたい行為ではありません。部活動の地域移行に関しては、国の文書が積極的に許可するよう求めているほどです。まず勤務先の規程を手に入れ、管理職に相談する。この順番を守れば、進められる道は思っているより広く残っています。

よくある質問

Q. 公立教員の副業は法律で全部禁止されていますか?

禁止ではなく許可制です。地方公務員法第三十八条は「任命権者の許可を受けなければ」営利企業の役員を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することをしてはならないと定めています。さらに教育公務員特例法第十七条により、教育に関する職や事業については、本務の遂行に支障がないと認められれば従事できる道があります。

Q. 塾講師や家庭教師はできますか?

教育に関する事業にあたる可能性はありますが、営利企業に雇われて報酬を受ける形は地方公務員法第三十八条の対象にもなり、許可なしでは難しい領域です。勤務校の児童生徒を対象にする形は公平性の面で問題が生じます。まず勤務先の教育委員会が定める規程を確認し、管理職を通じて相談してください。

Q. 部活動を地域のクラブで指導する場合はどうなりますか?

文部科学省が令和7年12月に示したガイドラインは、認定地域クラブ活動について「学校運営に支障がない限り、積極的に許可を行うことが必要」としています。対象は中学校の教員に限られず、小学校や高等学校、特別支援学校の教員、事務職員まで含まれます。本人の意思の尊重と、勤務時間の全体管理が条件として示されています。

Q. 無許可で副業をしたらどうなりますか?

地方公務員法第二十九条により、戒告、減給、停職、免職の懲戒処分の対象になります。処分の重さは収入の額、期間、本務への影響、発覚後の対応などから判断されます。また職務上知り得た秘密を漏らした場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という刑事罰が定められています。処分は記録として残ります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月13日最終更新:2026年9月29日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、43歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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