高校教師が副業を持つには|認められる範囲と学校への相談 2026


この記事のポイント
- ✓高校教師の副業はどこまで認められるのか
- ✓教育公務員特例法による別の入り口
- ✓時間と体力の現実的な設計
「高校教師でも副業はできるのでしょうか」。このご相談、本当に多くいただきます。
そして続けてこう言われます。「聞ける相手がいない」。職員室で相談すれば噂になりそうで怖い。教育委員会に直接聞くのも気が重い。だから検索して調べている。
大丈夫です。順番があります。そして結論から申し上げると、高校教師の副業は一律に禁止されているわけではありません。公立学校の教員には、一般の公務員とは別の入り口も用意されています。
この記事では、制度がどうなっているのか、どこまでが許可なしにできるのか、学校にはどのように相談するのか、そして時間と体力をどう設計するのかを、ひとつずつ整理していきます。焦らなくて大丈夫です。
高校教師の副業を縛っている制度
まず、自分がどの制度の下にいるのかを確認してください。公立と私立で全く違います。
公立高校の教員の場合
公立高校の教員は地方公務員です。したがって地方公務員法第38条第1項が適用されます。任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする団体の役員等を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業または事務に従事することができないという規定です。
任命権者は多くの場合、都道府県の教育委員会です。市町村立の高校であれば、その市町村の教育委員会になります。
ここで大事なのは、「禁止」ではなく「許可を受けなければならない」と書かれている点です。つまり許可制です。この違いは、諦めるか相談するかを分けます。
私立高校の教員の場合
私立高校の教員は公務員ではありません。地方公務員法は適用されません。副業の可否は、学校法人の就業規則で決まります。
就業規則に兼業の規定があるはずですので、まず自分の学校の規則を確認してください。届け出制の学校、許可制の学校、一定の範囲を認めている学校があります。近年は届け出制に緩めた学校も出ています。
規則に書かれていない場合でも、勝手に始めるのは避けてください。労働契約上の誠実義務があり、本業に支障が出る形や学校の信用を損なう形は問題になります。事務局に確認するのが確実です。
同時に効いている義務
公立の場合、第38条の許可を得ても他の義務は消えません。職務専念義務は地方公務員法第35条、信用失墜行為の禁止は第33条、秘密を守る義務は第34条です。
秘密を守る義務は、教員にとって特に重い意味を持ちます。生徒の情報、家庭の事情、進路の相談内容。これらは形を変えても外に出せません。副業で自分の経験を語る場面があるなら、この線を強く意識してください。
教育に関する兼業という、もうひとつの入り口
ここが公立高校の教員にとって重要な部分です。一般の公務員には無い規定があります。
教育公務員特例法第17条です。教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、または教育に関する他の事業もしくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、または受けないでその職を兼ね、またはその事業もしくは事務に従事することができるという規定です。
つまり、教育に関する活動については別の枠組みが用意されています。地方公務員法第38条だけを見て「難しい」と判断する前に、この条文を確認してください。
何が「教育に関する」に当たるか
学校での指導、他の学校での非常勤講師、教育委員会の研修での講師、教育関係の団体での役職、教育に関する調査研究、教科書や教材の執筆などが該当しうる領域です。
部活動の指導については、文部科学省が教員の兼職兼業の取扱いについて考え方を示してきました。地域のクラブで指導する形を制度として整えようとする動きが続いており、実際に許可を得て地域のクラブで指導している教員もいます。
「本務の遂行に支障がない」が条件
第17条の条文を読むと、認める主体は任命権者で、条件は「本務の遂行に支障がない」ことです。つまり、どれだけ教育に関する活動であっても、本務に支障が出る量なら認められません。
ここが実務の勘所です。申請するときは、活動の量と時間帯を具体的に示して、本務に支障がないことを説明する必要があります。
許可を取らずにできる範囲
すべてに許可が必要なわけではありません。原則として対象外とされている行為を整理します。
資産の運用
株式や投資信託の売買、預貯金の利息、債券の保有は、労働や役務の提供を伴いません。したがって原則として許可の対象外です。
ただし勤務時間中に取引をすれば職務専念義務に触れます。授業の合間にスマートフォンで値動きを見る行為は避けてください。取引の回数が多い手法を選ぶと、この線を越えやすくなります。
不要品の処分
自宅の不要品をフリマアプリで売る行為は、利益を目的とした仕入れがないため事業ではありません。読み終わった本、使わなくなった家電、子どもの衣類などです。
売るために仕入れる行為が始まれば話が変わります。反復継続して差益を得る形は、営利企業を営むことに当たりうる領域です。
無報酬の活動
町内会やPTAの役員、地域の団体を無報酬で手伝う行為は、報酬を得て従事する形ではありません。実務上も問題視されない扱いが一般的です。
規模で判断が変わるもの
不動産の賃貸と太陽光発電は、規模で扱いが変わります。国家公務員については、独立家屋であれば5棟以上、賃貸料収入であれば年額500万円以上といった水準が自営の目安として扱われてきました。多くの自治体もこの考え方を参考にしています。
相続で賃貸物件を引き継いだ場合は、やむを得ない事情として許可が出やすい類型です。放置して無許可の状態が続くほうが問題になります。事情があるほど早く相談してください。
実際に選ばれている副業の内容
では、許可を得て副業をしている教員は何をしているのか。傾向がはっきり出ています。
「少しでも収入を増やしたい!」「新しいことに挑戦してみたい!」という方はぜひ副業にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。実際に副業をしている教師の方の約80%は塾講師や家庭教師など、教育に関連する仕事をしています。教育関連のお仕事は教師としての経験を活かせるだけでなく、他のお仕事に比べて短時間から勤務可能で、時給が高いことで知られています。なので、「本業に影響を及ぼさない範囲で効率よく稼ぎたい!」という教師の方に最適なお仕事として紹介させていただきました。 出典: juku.st
約80%が教育に関連する仕事という内訳は、教育公務員特例法第17条という入り口があることを考えれば自然な結果です。許可を得やすい領域に集まっているわけです。
ただし、教育関連であっても注意点があります。
自校の生徒を教えることは避ける
塾や家庭教師で自分が勤務する学校の生徒を教える形は、利益相反の問題が生じます。評価する立場と報酬を受け取る立場が重なるためです。ここは許可の審査でも厳しく見られます。
近隣の競合になる形も慎重に
学区が重なる塾で指導する形は、学校との関係で問題になることがあります。生徒の保護者と顔を合わせる可能性も考えておく必要があります。
教育以外の選択肢も現実にある
文章を書く仕事を選ぶ方もいます。ただし、ここは期待と現実の差が大きい領域です。
Webサイトの文章を作成(ライティング)するのが、Webライターです。副業として人気が高いものの、実際にやってみたら仕事の案件がない、月に5万円を稼ぐのもきつい……という声も聞こえ… 出典: biz.moneyforward.com
正直な記述だと思います。文章を書く仕事は始めやすい反面、単価が上がるまでに時間がかかります。未経験の募集では1文字0.5円から1円という水準が中心です。
ただ、教員の場合は有利な点があります。専門分野をすでに持っているからです。担当教科の内容、進路指導、学習方法、教材の作り方。これらは書ける根拠がある領域です。文章を扱う仕事全体の報酬水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種単位に整理していますので、目安を知りたいときに見てみてください。
部活動の指導を副業として引き受ける場合
いま相談が増えているのがこの形です。制度の動きも大きいので、独立して整理します。
地域のクラブでの指導
部活動を学校から地域に移していく動きが各地で進んでいます。その流れの中で、教員が地域のクラブや団体で指導者として関わる形が制度として整えられてきました。文部科学省も教員の兼職兼業の取扱いについて考え方を示しており、実際に許可を得て地域のクラブで指導している教員がいます。
この形が認められやすいのは、教育に関する事業に当たると説明しやすく、かつ地域の求めに応える性格を持っているからです。教育公務員特例法第17条の枠組みで扱われることも多い領域です。
確認しておきたい5つのこと
引き受ける前に、次の5点を確認してください。
1つめは、活動する曜日と時間帯です。自校の部活動の日程と重なっていないか。重なっていると、本務に支障が出ると判断されます。
2つめは、指導する対象です。自校の生徒が含まれる場合は、評価する立場と報酬を受け取る立場が重なるため慎重な判断が必要になります。
3つめは、報酬の形と額です。実費の精算なのか、指導料として受け取るのか。年間の見込み額まで把握しておきます。
4つめは、事故が起きたときの責任の所在です。指導中のけがについて、どの保険で対応するのか。団体が保険に加入しているかを確認してください。ここを確認せずに引き受けると、後で困ります。
5つめは、活動の期間です。年度単位で区切るのか、大会までなのか。期間を区切って申請すると通りやすくなります。
体力の配分を忘れない
こういうご相談がよくあります。「土日も指導が入って、休む日がなくなりました」。部活動の指導は体力を使います。そこに地域での指導を重ねると、休息が消えます。
引き受ける前に、月に何日休めるのかを数えてください。数えてみて足りないなら、量を減らすか断るという判断が必要です。断ることは、無責任ではありません。続けられる形にすることが責任です。
学校への相談の進め方
ここでつまずく方がいちばん多いので、丁寧に書きます。
誰に聞くのか
まず、人事を担当する部署です。公立なら教育委員会の教職員課などが窓口です。学校の事務室や管理職を経由する流れになっている場合もあります。
職員室で同僚に相談する必要はありません。制度の質問は制度の担当者に聞くのがいちばん早く、そして噂にもなりません。
何を聞くのか
聞き方にコツがあります。「私がこれをやってよいか」ではなく、「この種の活動は許可の対象になるか」と制度の質問として聞くことです。前者は個別の判断を求める形になり、担当者も慎重になります。後者なら制度の説明として答えやすくなります。
確認しておきたいのは次の4点です。該当する様式はどれか。教育に関する兼業として扱えるか、それとも一般の兼業として扱うのか。提出から結論までどのくらいかかるか。許可に条件が付くことがあるか。
処理に要する期間は特に重要です。1か月以上かかる場合もあります。相手先と開始日を約束する前に確認してください。
申請書に書くこと
活動の内容(何を、誰に、どのくらいの頻度で)、従事する曜日と時間帯、場所、期間、報酬の有無と見込み額、そして本務に支障がないと考える理由です。
「執筆」ではなく「月2本、教育関係の媒体に寄稿する原稿の執筆」のように、量まで書きます。抽象的に書くと、審査する側は最悪の形を想定して判断します。
報酬額を小さく見せようとしないでください。後で実態と食い違ったときに不利になります。幅で書いて構いません。
書類を作ることに気が重くなる方は多いです。照会文や申請文の型を知っておくと負担が変わりますので、ビジネス文書検定の学習範囲を眺めてみるのもひとつの手です。資格を取る必要はありません。何を先に書き、何を根拠として添えるかの順番が分かるだけで、手が動くようになります。
記録を残す
聞いた内容と回答を、日付と相手の部署とともにメモに残してください。後から解釈が問題になったときに、確認した記録があることは大きな違いを生みます。
これは自分を守るための行動です。疑われているから記録するのではありません。
認められにくい形と、その理由
通りにくい形も知っておいたほうが、無駄な回り道が減ります。理由も添えて書きます。
平日の昼間に稼働が必要な形
本務の勤務時間と重なるため、そもそも説明がつきません。店舗での接客、配達、平日昼間の講座など、時間帯が固定されている仕事は難しい領域です。
在宅で時間帯を自分で決められる形、または夜間と休日に完結する形を選んでください。時間帯の自由度は、許可を得るうえで最も効く条件です。
在庫を抱えて反復継続する物品の売買
安く仕入れて高く売る形は、自ら営利企業を営むことに当たりやすい類型です。加えて、在庫を置く場所、仕入れの時間、発送の作業が生活を侵食します。本務を持っている方にとっては負担が重く効きます。
自校や学区に関わる相手との取引
自校の生徒、保護者、取引業者との間で報酬が発生する形は、職務の公正さに疑いが生じるため通りません。教材業者、制服の取扱店、修学旅行の手配業者なども含みます。
ここは判断が難しいと感じるかもしれませんが、基準はひとつです。学校として関係のある相手かどうか。関係があるなら避けてください。
職名や所属を使った発信
「〇〇高校の教員です」と名乗って発信する形は、信用失墜の観点で問題になりやすい領域です。特定の商品を宣伝する形、政治的な主張を含む形は慎重に判断されます。
発信そのものが禁じられているわけではありません。職名や所属を出さない、学校の内部の話を扱わない、と自分で条件を決めておけば、判断は変わります。申請の段階でその条件を書いておくと通りやすくなります。
生徒や家庭の情報に触れる形
秘密を守る義務は、許可の有無に関係なく効いています。教育相談の経験を素材にした執筆、進路指導の事例を扱う講演などは、細部を変えても特定される可能性があります。
判断に迷う内容なら、書かない選択をしてください。これは慎重すぎる態度ではなく、生徒とその家庭を守る態度です。
報酬の規模が本務と釣り合わない形
副業の収入が本務の給与を上回る規模になると、どちらが本業なのかという指摘を受けます。量を抑える設計にしておくことが、続けるための条件になります。
時間と体力の現実を先に設計する
ここは、私がカウンセリングの場でいちばん多く扱っている部分です。制度の話より大事かもしれません。
高校教員の勤務は、授業だけでは終わりません。教材の準備、採点、生徒の対応、保護者への連絡、部活動の指導、行事の運営、会議。これに加えて副業を入れるなら、設計を先にする必要があります。
給与の仕組みを理解しておく
公立学校の教員には給特法という法律があり、時間外勤務手当が支給されない代わりに、給料月額に対する一定割合の教職調整額が支給される仕組みになっています。この割合を段階的に引き上げる法改正も行われました。
この仕組みを理解しておくことが大事なのは、働いた時間がそのまま収入に結びつかない構造だからです。だからこそ、副業の時間を確保するには、本業の時間を意識的に区切る必要があります。
週に何時間なら大丈夫かを先に決める
こういうご相談がよくあります。「副業を始めたら、休みの日がなくなりました」。これは意志の問題ではなく、設計の問題です。
おすすめは、週に使える時間の上限を先に決めることです。たとえば「週5時間まで」。そして、その時間を曜日と時間帯に割り当てます。
上限を決めると、受ける仕事の量を判断できます。上限を決めていないと、来た依頼を全部受けてしまいます。
休む日を先に決める
がんばれる方ほど、休みを最後に回します。そして体調を崩して全部止まります。
週に1日、完全に仕事から離れる日を先に決めてください。予定表に「休み」と書いてしまうのがいちばん確実です。副業は終わりの線が見えにくいので、線は自分で引くしかありません。
在宅で完結する形を選ぶ
移動時間がない形は、それだけで負担が軽くなります。在宅でできる仕事を選ぶなら、環境を整えておくと作業の質が変わります。
通信環境は最初に整えたい部分です。在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方では回線の種類ごとの違いを整理していますので、オンラインでの指導や打ち合わせを含む形を考えている方は先に見ておくと安心です。
限られた時間で集中する工夫については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックにまとめています。短い時間しか取れないからこそ、この部分が効いてきます。
将来の選択肢を広げたい方は在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるも参考になります。ただし、資格を取ることが目的になってしまうと本業の時間を削ることになりますので、順番には気をつけてください。
税と手続きは別の制度
公務員法の話と税の話は別です。ここを混同すると、思わぬ問題が起きます。
確定申告が必要になる場合
給与を受け取っている方は、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。判断の対象は売上ではなく、経費を引いた所得です。
非常勤講師のように給与として受け取る形の場合は、扱いが変わります。2か所以上から給与を受け取っていると、年末調整は1か所でしか行えないため、確定申告が必要になる場面があります。
判断の基準額は税制改正で見直されます。実際に申告する年の要件は国税庁の案内で確認してください。
住民税の扱い
所得税の確定申告をすれば、その内容が住民税の計算に反映されます。住民税は勤務先が給与から差し引いて納める仕組みが原則なので、税額の通知が勤務先に届きます。
これを避けるために申告をしないという選択は、税法上の義務を果たさない状態になります。許可を得て正々堂々とやるほうが、気持ちの面でもずっと楽です。
非常勤講師として他校で教える場合
他校の非常勤講師を引き受ける形は、教育に関する職を兼ねる類型に当たります。この場合、報酬は給与として支払われることが多く、税の扱いも変わります。
給与を2か所以上から受け取る状態になると、年末調整は主たる勤務先でしか行えません。もう一方の給与については、確定申告で合算して精算する形になります。源泉徴収票は両方保管しておいてください。
社会保険についても確認が必要です。勤務時間と日数によって加入の要件が変わるため、両方の勤務先の状況を合わせて判断することになります。分からないときは、それぞれの事務担当に確認するのが確実です。
記録を月ごとに残す
領収書とレシートを月ごとに封筒に入れておくだけで、年明けの作業が別物になります。年度末は教員がいちばん忙しい時期ですから、ここを軽くする工夫は効きます。
20年この市場を見てきた立場からの観察
運営者として見てきた限りでは、教員の方が副業を考えるときに最初に見落としているのは、自分の技能の値段です。
授業を組み立てる力、分からない人の躓きを見つける力、複雑な内容を段階に分けて説明する力。学校の中では当たり前のものとして扱われていますが、外から見ると需要のある技能です。企業の研修、教材の制作、マニュアルの作成、社内向けの説明資料。どれも「分からない人に分かるように伝える」仕事です。
たとえば生成AIの社内活用を進めたい企業が外部の支援を探す動きは続いていて、AIコンサル・業務活用支援のお仕事ではどんな業務が切り出されているかを職種ガイドとして整理しています。技術の専門家である必要はなく、使い方を整理して手順書に落とす役割から関わる道があります。この役割は、教える仕事をしてきた方の得意な形に近いのです。技術寄りの分野の報酬水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場のような職種単位の相場で把握できます。
もうひとつ、20年この市場を見てきて感じることを書きます。長く続いている方は、単発の作業を数えるのではなく「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っています。連絡が早い、確認の粒度が適切、期限の前に状況を伝える。教員として日々やっていることと、実はほとんど同じです。新しく何かを身につける必要はなく、既にある段取りの力を持ち出せば足りる場合が多いのです。
額面と手取りの違いについても触れておきます。同じ報酬額でも、仲介の手数料が引かれてから受け取るのと、引かれずに受け取るのとでは、手元に残る金額が変わります。手数料0%の直接取引なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。どちらかが損をする構造ではありません。教員の副業は許可の範囲で量を抑える形になりますから、限られた時間に対して手元に残る割合が厚いかどうかは、続けられるかどうかに直接効いてきます。
最後に、いちばん伝えたいことを書きます。ひとりで抱えないでください。制度の答えを持っているのは、あなたの学校の事務室と教育委員会の担当部署です。聞くこと自体は不利になりません。そして聞いた記録が、後々あなたを守ります。
もうひとつ、現場を見てきて気づいたことを書きます。副業を始めた教員の方が最初に得るものは、多くの場合お金ではありません。「学校の外にも自分を必要としてくれる場所がある」という感覚です。この感覚は、日々の仕事の見え方を変えます。
教員の仕事は、成果が数字で返ってこない仕事です。生徒の変化はゆっくりで、しかも自分の手柄とは限りません。だからこそ、外で「ありがとう」と言われる経験が、思っていたより効くのです。収入を増やす目的で始めた方が、続けている理由として「気持ちが軽くなった」と言うのを何度も聞いてきました。
もちろん、収入が増えること自体にも意味があります。ただ、量を増やすことばかりに向かうと、本務も体調も削られます。私がお伝えしたいのは、小さく始めて、生活が壊れないことを確かめてから調整していく順番です。
今日できることは、自分の職場の兼業に関する規程がどこにあるかを探してみることだけで十分です。それだけで、次の一歩が見えてきます。
よくある質問
Q. 公立高校の教師は副業が禁止されているのですか?
禁止ではなく許可制です。地方公務員法第38条は、任命権者の許可を受けなければ営利企業を営むことや報酬を得て事業に従事することができないと定めています。さらに公立学校の教員には教育公務員特例法第17条があり、教育に関する職や事業については、本務の遂行に支障がないと任命権者が認める場合に従事できます。
Q. 塾講師や家庭教師の副業はできますか?
教育に関する事業として許可を得られる可能性があります。副業をしている教師の約80%が教育関連の仕事という調査もあり、許可を得やすい領域です。ただし自分が勤務する学校の生徒を教える形は利益相反になるため避けてください。学区が重なる塾での指導も慎重に判断されます。
Q. 私立高校の教師は制度が違いますか?
違います。私立高校の教員は公務員ではないため地方公務員法は適用されず、副業の可否は学校法人の就業規則で決まります。届け出制の学校、許可制の学校があります。規則に定めがない場合も、本業に支障が出る形や学校の信用を損なう形は問題になりますので、事務局に確認してください。
Q. 株式投資や不要品の売却も許可が必要ですか?
資産の運用は労働や役務の提供を伴わないため、原則として許可の対象外です。自宅の不要品をフリマアプリで売る行為も、利益を目的とした仕入れがないため事業ではありません。ただし勤務時間中に取引をすれば職務専念義務に触れますし、売るために仕入れる行為が始まれば扱いが変わります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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