公務員の兼業が許される範囲|許可の取り方と届出の書き方 2026


この記事のポイント
- ✓公務員の兼業は全面禁止ではなく許可制です
- ✓地方公務員法第38条の条文
- ✓許可が要るものと要らないものの線引き
公務員の兼業について調べ始めると、だいたい2種類の情報に当たります。「公務員の副業は原則禁止」と断言するものと、「もう解禁された」と言うもの。どちらも正確ではありません。
結論から書きます。公務員の兼業は禁止されていません。許可制です。そして、許可が要らない類型も明確に存在します。この2つを分けて理解できると、調べものの精度が一気に上がります。
この記事では、条文の根拠、許可が必要になるラインの具体的な数字、申請書に何を書くのか、どういう兼業が通りやすいのかを、実務の順番で並べます。「グレーだからやめておこう」で止まっている方に、判断できる材料を渡すのが目的です。
公務員の兼業は「禁止」ではなく「許可制」
まず用語を整理します。「副業」は法律用語ではありません。法律が規制しているのは、次の3つの行為です。
1つ目は、営利企業等の役員等の地位を兼ねること。2つ目は、自ら営利企業を営むこと。3つ目は、報酬を得て事業または事務に従事すること。
この3つは、任命権者の許可を受けなければできません。逆に読むと、許可を受ければできます。そして、この3つのどれにも当たらない行為は、そもそも許可の対象外です。
ここが最大の分かれ目です。多くの方が「公務員は副業禁止」と思い込んでいる原因は、この「許可があれば可」「そもそも対象外の類型がある」という2段構造を知らないことにあります。
現状の運用も、数字で見ると動いています。
総務省の令和6年度調査では、地方公務員の兼業許可件数は約4万1千件と横ばいで推移している。一方で、社会貢献活動に関する兼業は増加傾向にある。また、許可基準を明文化する自治体も増えており、副業をめぐる運用は徐々に整理されつつある。 出典: jichitai.works
4万1千件という規模は、けっして例外的な運用ではありません。すでに毎年これだけの許可が出ているという事実を、まず頭に入れてください。
根拠になる条文は、実質3つだけ
法令の全体を読む必要はありません。実務で判断に使うのは次の条文です。
地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)
兼業規制の本体です。任命権者の許可がなければ、営利企業等の役員等を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業・事務に従事することができない、と定めています。
ここで注意したい言葉が「報酬」です。労務や役務の対価として支払われるものが報酬です。実費弁償としての交通費や、社会通念上の謝礼の範囲にとどまるものは、報酬に当たらないと整理されることがあります。ただしこの線引きは所属の運用によって差が出ます。曖昧なら聞いてください。
地方公務員法第35条(職務に専念する義務)
勤務時間中は職務に専念しなければならない、という定めです。兼業が問題になるのは、勤務時間中に兼業の連絡を取る、庁舎の設備を使う、といった形で職務専念義務に触れる場面です。兼業自体は許可を得ていても、やり方で違反になることがあります。
地方公務員法第33条(信用失墜行為の禁止)と第34条(秘密を守る義務)
職の信用を傷つける行為の禁止と、職務上知り得た秘密の守秘義務です。兼業の内容が、所属の業務と利害が絡む場合や、職務上の情報を使う場合は、この2つで引っかかります。許可の審査でも、実際にここを最も丁寧に見られます。
国家公務員の場合は根拠条文が国家公務員法第103条と第104条になり、承認・許可の判断は人事院規則に沿って行われます。枠組みはよく似ていますが、承認の基準の具体性が国のほうが高いという違いがあります。この点は後で使います。
許可が必要なもの、必要でないものの線引き
ここが一番知りたいところだと思います。実務上の整理を並べます。ただし最終判断は所属の任命権者にありますから、「一般的にはこう整理されている」という前提で読んでください。
許可が必要になりやすいもの
営利企業の役員や監査役への就任。個人事業としての物販、飲食、コンサルティング、教室運営。一定規模を超える不動産賃貸。一定規模を超える太陽光発電。継続的・反復的に報酬を得る業務委託。アルバイトとしての雇用契約。
許可なしで行えると整理されることが多いもの
株式、投資信託、債券などの資産運用。預貯金の利息。相続で得た不動産の、規模の小さい賃貸。単発の講演や執筆に対する謝金や原稿料。家業を無報酬で手伝うこと。ふるさと納税や寄附。
判断が分かれるもの
ここが実務の山場です。次のようなものは、所属によって扱いが違います。
継続的なブログやYouTubeの広告収入。フリマアプリでの継続的な販売。アフィリエイト。個人でのイラストやスタンプの販売。NPOの理事への就任(無報酬なら許可不要とする例が多い)。
判断が分かれる理由は、金額ではなく「事業性があるか」「継続的か」で見るためです。不要品を年に数回売るのは事業ではありませんが、仕入れて継続的に売れば事業です。同じフリマアプリでも中身が違います。
ここで多い誤解を1つ潰しておきます。「年20万円以下なら兼業許可は不要」という説明を見かけますが、これは間違いです。20万円は所得税の確定申告が必要になるかどうかの基準で、兼業許可の要否とはまったく別の制度です。税務上申告が不要でも、兼業許可が必要な行為は必要です。この2つを混ぜないでください。
国家公務員の承認基準が、地方でも目安になる理由
地方公務員の許可基準は、自治体ごとに定められています。ただ、明文の基準を公開していない自治体も少なくありません。そういうとき、実務では国家公務員の自営兼業の承認基準が参考にされます。
以下は、国家公務員の兼業基準や、公開されている各自治体の許可基準を参考に整理した一般的な目安である。 出典: jichitai.works
広く参照されている水準は、次のようなものです。
不動産の賃貸で、独立家屋の賃貸が5棟以上。アパートやマンションなどの部屋数が10室以上。土地の賃貸が10件以上。駐車場の契約台数が10台以上、または機械設備を設けた駐車場。賃貸に係る収入が年額500万円以上。太陽光発電設備の出力が10キロワット以上。
これらの規模に達すると「自ら営利企業を営む」と評価され、承認や許可の対象になるという考え方です。逆に言えば、相続したアパートの1室を貸している、月極駐車場を数台分貸している、といった規模なら、許可の対象にならないと整理されることが多いわけです。
農業についても同じ発想で見ます。自家消費や家族への配布にとどまる家庭菜園は問題になりませんが、継続的に販売して収益を上げる規模になると自営に当たります。
なお国家公務員側の制度は動いています。職員の知識や技能をいかした事業、社会貢献に資する事業を承認できるようにする見直しが行われ、2026年4月から施行されました。地方公務員の運用も、こうした国の動きに追随する形で柔軟化する傾向があります。
大事なのは、この数字を「自分は基準未満だからセーフ」と自己判断の根拠にしないことです。目安として持っておいて、自分のケースを人事担当に確認する材料に使ってください。基準未満でも、職務との関係で問題になるケースはあります。
許可の取り方と、審査で見られている3つの視点
申請の流れは、おおむね次のとおりです。
第一に、所属の人事担当課に相談します。書式が用意されているか、どの段階で出すのかを確認します。ここを飛ばして書類だけ出すと差し戻されます。
第二に、許可申請書を作成します。書式は自治体ごとに違いますが、記載項目はほぼ共通です。後の節で詳しく書きます。
第三に、上司の確認を経て人事担当課へ提出します。組織によっては所属長の副申が必要です。
第四に、審査を受けます。所要期間は2週間〜2か月程度を見ておくと安全です。年度替わりや議会の時期は延びます。
第五に、許可書の交付を受けてから兼業を開始します。ここが重要で、許可が下りる前に始めてはいけません。「申請中だから大丈夫」は通りません。
審査で見られている視点は、実質3つに集約されます。
視点1:職務の遂行に支障がないか 勤務時間外に行われるか。深夜や早朝にまたがって、翌日の勤務に影響しないか。繁忙期と重ならないか。ここを申請書で先に説明しておくと、審査が早く進みます。
視点2:職務と利害関係がないか 自分が担当している許認可の相手方や、補助金の交付先、入札の参加者と関係がないか。これが最も厳しく見られます。所属を異動したばかりなら、前所属との関係も確認されます。
視点3:職の信用を傷つけないか 業種そのものの評価です。公序良俗に反する事業、投機的な事業、宗教的・政治的な勧誘を伴う事業は通りません。
この3つを申請書の中で先回りして説明すると、通る確率が上がります。逆に、この3つに触れずに「○○の業務に従事します」だけ書くと、確認のやり直しで時間を取られます。
許可申請書・届出書の書き方
実際に何を書くのかを、項目ごとに整理します。
従事先の名称と所在地 法人なら商号と本店所在地。個人事業なら屋号と事業所の所在地。自宅で行うなら「自宅(住所)」と書きます。
従事する業務の内容 ここを具体的に書いてください。「コンサルティング業務」では審査が止まります。「中小企業の通販サイトの商品ページ作成および運用の助言。月2回のオンライン打ち合わせと、資料作成」のように、何をどれだけやるのかを書きます。
従事の場所 自宅か、相手先か、オンラインか。庁舎や公用の設備を使わないことが読み取れるように書きます。
従事する期間 開始日と終了日。契約に期間があるなら契約期間に合わせます。無期なら「当面の間」としつつ、年度単位で更新の申請を求められることがあります。
従事する時間と曜日 ここは具体的に。「土曜日または日曜日の10時から16時のうち4時間程度、月4回以内」のように、上限が分かる書き方にします。勤務日の夜に行う場合は、終了時刻を明記します。
報酬の額と支払方法 月額か案件ごとか、金額の見込み、支払時期。金額が変動するなら「月額3万円を上限とする」のように上限で書くと、後の変更申請が減ります。
職務との関係 「担当職務と利害関係を有しない」ことを、理由を添えて書きます。「現在の担当業務は○○であり、従事先はその許認可・補助・契約の相手方ではない」と書けば十分です。
添付書類 契約書や委託契約の案、相手先の会社概要、業務内容の説明資料。相手先がまだ決まっていない段階では、業務内容の説明資料だけで受け付けてもらえることもあります。
実務の細かい話をひとつ。契約書のひな型を添付するとき、報酬の支払期日や成果物の検査に関する条項が抜けていると、そこを指摘されることがあります。発注書や契約書に何を入れておくべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに必須項目がチェックリストの形で整理されているので、契約書を自分で作る段階なら目を通しておくと手戻りが減ります。
認められやすい兼業と、認められにくい兼業
傾向をはっきり書きます。
通りやすいもの
地域のNPOや社会福祉法人での活動。スポーツクラブや文化団体の指導。地域の消防団。学校や大学での非常勤講師や講演。専門資格をいかした研修講師。農業(自家消費に近い規模)。執筆。地域の祭りや観光振興の運営支援。
共通点は、公益性が説明でき、職務と利害が絶たれていて、活動時間が読めることです。
通りにくいもの
自分の担当職務と関係する事業者との取引。宅配や配車などの日雇いに近い労働(職務専念義務や信用の観点で問題になりやすい)。深夜の勤務を伴うもの。投機的な性格が強い事業。実質的に営業行為を伴うマルチレベルの販売。
地域貢献型の兼業が広がっている
2010年代後半から、自治体が地域貢献に関する兼業の許可基準を明文化する動きが出ました。神戸市や奈良県生駒市が公表した基準はよく引用されています。そして国の側からも通知が出ています。
公務員の副業は、特定の年から全面解禁されたわけではない。ただし、令和7年6月に総務省が「地方公務員の兼業に関する技術的助言」を通知して以降、地方公務員の兼業運用は柔軟化の方向にある。通知では、活動内容に応じて積極的に許可を検討するよう各自治体に求めている。 出典: jichitai.works
「積極的に許可を検討する」という方向が示されているというのは、申請する側にとって大きな話です。前例がないから諦める、ではなく、前例を作る側に回れる余地があるということです。実際に、地域貢献型の兼業は許可件数が増えている領域です。
許可が下りなかったときに取れる手
申請が通らないこともあります。そこで終わりにしないための選択肢を挙げます。実務では、初回で通らなかった案件が形を変えて通ることが珍しくありません。
まず、理由を具体的に聞いてください。 「認められない」だけで終わらせず、どの要件に引っかかったのかを確認します。職務専念義務の観点なのか、利害関係なのか、信用の観点なのか。引っかかった箇所が分かれば、直せる可能性があります。
次に、規模を縮める。 時間が長すぎる、回数が多すぎる、報酬が大きすぎる。これらは調整できます。「月8回」を「月2回」に、「平日の夜を含む」を「土日のみ」に変えるだけで判断が変わることがあります。
三つめ、報酬の扱いを変える。 報酬を受けない形にすれば、報酬を得て従事することの制限からは外れます。もちろん収入にはなりませんが、活動そのものを続けたい場合には有効です。実績を作ってから、改めて報酬ありで申請するという順序も取れます。
四つめ、相手方を変える。 利害関係が理由なら、同じ内容でも相手が変われば通ります。自分の担当職務と接点のない分野の団体や事業者を探すことになります。
五つめ、時期をずらす。 異動の直後は前所属との関係を見られます。年度をまたいでから再申請すると判断が変わることがあります。繁忙期と重なっていたことが理由なら、時期を動かすだけで済みます。
六つめ、自分の専門を別の形で使う。 執筆、資格の取得、勉強会への参加、学会の活動。これらは多くの場合、許可の対象になりません。兼業という形を取らずに専門性を積む道は残っています。
不許可を「向いていない」と受け取る必要はありません。通らなかったのは、その形が要件と合わなかったということです。形は変えられます。
兼業が問題になる経路と、事務手続きの落とし穴
無許可の兼業が発覚する経路は、想像されているほど多様ではありません。実務でよく聞くのは次の3つです。
1つは住民税です。副収入の所得が住民税の計算に反映され、勤務先に届く特別徴収の通知額が、給与だけで説明できない額になることがあります。これで気づかれるケースが最も多いと言われます。
2つめは、本人が兼業先で名前や顔を出していて、関係者に見られることです。SNSは検索されます。屋号だけで運営していても、写真から特定されることがあります。
3つめは、確定申告書の提出漏れや記載の不整合が、税務署からの照会を経て問題になることです。
税務の扱いを整理しておきます。給与のほかに所得がある場合、その所得が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は別に必要です。詳細は国税庁の案内が一次情報です。
そして、経費の扱いを軽く考えないでください。所得は売上ではなく、売上から経費を引いた額です。記録が残っていないと経費を認めてもらえません。取引の記録は最初から残す。これは兼業に限らず、収入を得るすべての場面の基本です。
私が実務で相談を受けるとき、いつも最初に確認するのが「契約書があるか」と「入金の記録が追えるか」です。この2つが揃っていない状態で報酬のトラブルになると、打てる手が極端に少なくなります。相手が支払わない場合の回収手順を知りたい方は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に費用感と手続きの流れが書かれています。公務員の兼業でも、相手が民間事業者なら同じ問題が起こります。
始める前に決めておく5つのこと
許可が下りたあとで慌てないために、先に決めておくと楽になる項目を挙げます。実務で相談を受けていて、ここを詰めていない方が後から困っている場面を繰り返し見てきました。
1つめ、上限時間を自分で決めること。 許可申請に書いた時間を超えないことは当然ですが、それとは別に「これ以上は受けない」という自分の上限を決めてください。相手に喜ばれると、依頼は増えます。増えた分を断る理由を先に用意しておかないと、申請内容と実態がずれていきます。月16時間まで、繁忙期の2か月は休止、というように数字で決めるのが一番効きます。
2つめ、屋号と連絡先を職務と分けること。 兼業の連絡に職場のメールアドレスや電話番号を使ってはいけません。これは職務専念義務と情報管理の両方に触れます。専用のメールアドレスを作り、名刺を作るなら職名を載せないでください。
3つめ、請求と入金の形を決めること。 請求書を毎月出すのか、案件ごとに出すのか。振込先はどの口座にするのか。生活費の口座と混ぜると、経費の記録が追えなくなります。専用の口座を1つ用意するだけで、確定申告の手間が大きく減ります。
4つめ、やめ方を決めること。 兼業は始めるより終えるほうが難しいです。契約期間を区切っておく、更新は年度単位にする、引き継ぎの方法を先に決めておく。人事異動で担当が変わり、利害関係が生じてやめざるを得なくなることは実際に起こります。そのときに相手に迷惑をかけない形を、最初に決めておいてください。
5つめ、所属への報告の頻度を決めること。 許可は一度取れば終わりではありません。業務の内容、時間、報酬が変わったら変更の申請が必要です。年に1回、自分で申請内容と実態を突き合わせる日を決めておくと、気づかないうちにずれていく事故を防げます。
この5つは、どれも制度が要求していることではありません。ただ、この5つを決めている方の兼業は、揉めません。制度を守るための工夫ではなく、自分の生活を守るための工夫です。
将来の独立や退職後を見据えるなら、何を準備するか
兼業を調べている方の動機は、実は2つに分かれます。今の収入を増やしたい方と、将来の選択肢を作りたい方です。後者の場合、兼業許可を取ること自体より、「許可なしでも積み上がるもの」を先に作るほうが効率的です。
たとえば、資格です。資格の取得は兼業に当たりませんから、許可は要りません。書類作成の基礎を整えるならビジネス文書検定で何が問われるのかを確かめられますし、ネットワークの技術を証明したいならCCNA(シスコ技術者認定)が定番です。どちらも、退職後に業務委託で仕事を受けるときの説明材料になります。
次に、どんな仕事がどんな単価で動いているのかを先に知っておくことです。業務委託の相場を知らないまま独立すると、最初の1年で安値の案件に埋まります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場と著述家,記者,編集者の年収・単価相場には職種別の水準がまとまっているので、自分の技能がどのあたりに位置するのかを測る材料になります。
仕事の中身そのものを知りたい場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事が参考になります。行政の現場で業務改善に携わった経験は、この領域でそのまま需要があります。資料をまとめる力、関係者を調整する力、根拠を示して説明する力は、民間の業務委託でそのまま評価されます。
公務員から独立した専門職の事例として、監査法人に勤めながら副業の範囲を整理していく流れを扱った会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も、組織の規程と専門性のバランスを取る考え方の参考になります。
市場を長く見てきた立場からの観察
在宅ワークと業務委託の市場を20年以上運営してきた立場から、公務員の方の兼業について気づいていることを書きます。
まず、許可を取って兼業をしている方の多くは、金額を目的にしていません。許可の範囲で動ける以上、報酬の上限はおのずと低く抑えられます。それでも続けている理由は、職務では会えない相手と関わることそのものにあります。実際に、地域の活動や講師の仕事から、本業の仕事の質が上がったという声のほうが、収入が増えたという声よりずっと多いです。
もう一点。運営者として見てきた限りでは、独立して長く続く方は、退職前に「関係」を作っています。案件ではなく関係です。単発の作業を安く請け負う人ではなく、「この人に相談すると早い」と思われる立場を、在職中に少しずつ作っている。公務員の方はこれが得意なはずです。所属の外の人と誠実に仕事をした記憶は、退職後もそのまま残ります。
手取りの話もしておきます。業務委託の仲介に15%〜20%の手数料が乗る仕組みだと、年100万円の売上で15万円〜20万円が中間に消えます。兼業許可の範囲で得られる報酬は、そもそも大きくありません。その中から2割が抜けるかどうかは、体感としてかなり違います。手数料0%で直接やり取りする形なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手取りが厚くなります。片方が損をする話ではないところが、この構造の面白さです。
データから見える、兼業を調べる人の本当の関心
内部の記事がどう読まれているかを見ると、公務員の兼業に関する情報を探している方は、同時に「独立したときの単価」と「契約書の作り方」を調べている傾向がはっきり出ています。これは示唆的です。
つまり、兼業許可そのものがゴールではないのです。許可を取って月2万円の報酬を得ることが目的なら、調べる範囲はもっと狭くなります。単価や契約を一緒に調べている方は、その先を見ています。
この視点から整理すると、やるべき順番が変わってきます。
第一に、自分がやろうとしていることが、そもそも許可の対象なのかを確認する。対象外なら、許可の話に時間を使わない。
第二に、対象なら、人事担当課に相談して書式と運用を確かめる。前例があるかを聞くだけで、通る形が見えます。
第三に、許可の範囲でできることと、範囲外だがいつかやりたいことを分けて書き出す。後者については、資格や知識のように許可が要らない準備から始める。
第四に、報酬が発生する取引には必ず契約書を作る。金額の大小ではなく、記録を残す習慣のためです。
この4つを踏むと、「グレーだから何もしない」という状態から抜けられます。公務員という立場は、兼業の自由度では確かに制約があります。ただ、その制約は「何もできない」という意味ではなく、「説明できる形にしてから動く」という意味です。説明できる形を作る作業は、そのまま将来の独立の準備になります。制度はあなたを止めるためだけにあるのではなく、どう動けばよいかを示すためにもあります。
よくある質問
Q. 公務員の副業は、何年から解禁されたのですか?
全面解禁された年はありません。地方公務員法第38条により、以前から任命権者の許可を受ければ兼業は可能で、許可制のまま運用されています。2010年代後半から自治体が地域貢献活動の許可基準を明文化し、総務省も兼業に関する技術的助言を通知したため、運用が柔軟化する方向にあるというのが正確な理解です。
Q. 年20万円以下なら兼業の許可は要らないのですか?
違います。20万円は所得税の確定申告が必要かどうかの基準で、兼業許可の要否とは別の制度です。金額が小さくても、営利企業の役員就任、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することは許可の対象です。逆に20万円を超えても資産運用のように許可の対象外の類型もあります。
Q. 不動産の賃貸や太陽光発電は許可が必要ですか?
規模で判断されます。国家公務員の承認基準として広く参照されている水準では、独立家屋5棟以上、部屋数10室以上、土地10件以上、駐車場10台以上、賃貸収入が年500万円以上、太陽光発電の出力10キロワット以上が自営とみなされる目安です。相続した1室の賃貸など小規模なら対象外と整理されることが多いですが、所属に確認してください。
Q. 許可申請書には、どこまで具体的に書けばよいですか?
業務の内容、従事の場所、曜日と時間帯、月あたりの回数、報酬の額と支払方法、期間を数字で書いてください。「コンサルティング業務」のような書き方だと審査が止まります。あわせて、担当職務と利害関係がない理由を一文添えると審査が早く進みます。許可が下りる前に兼業を開始してはいけません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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