地方公務員の兼業許可の取り方と、認められやすい活動

丸山 桃子
丸山 桃子
地方公務員の兼業許可の取り方と、認められやすい活動

この記事のポイント

  • ✓地方公務員兼業許可の仕組みを
  • ✓地方公務員法の条文と自治体が公開した許可基準の実物から整理しました
  • ✓許可が必要になる3つの型

地方公務員兼業許可について調べている人が本当に知りたいのは、「自分がやりたい活動は許可が下りるのか」「下りるとしたら何を書いて出せばよいのか」という2点だと思います。この記事はその2点に答えます。結論を先に置いておくと、地方公務員の兼業は禁止ではなく許可制で、しかも令和6年から令和8年にかけて、許可の基準を文書で公開して枠を広げる自治体が相次いでいます。つまり、数年前に「無理だと言われた」という話は、いまの基準では通らない可能性があります。以下では、根拠になる条文の読み方、実際に基準を公開した千葉県と鶴岡市の中身、申請の進め方、報酬を受け取った後の税の手続きまでを順に確認していきます。

兼業が許可制になっている理由を、条文の3つの型から押さえる

出発点は地方公務員法第38条です。条文はこう定めています。

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

長い一文ですが、禁じられている行為は3つの型に分かれます。1つ目が、営利企業を営む会社や団体の役員などの地位を兼ねること。2つ目が、自分で営利企業を営むこと。3つ目が、報酬を得て何らかの事業や事務に従事することです。この3つのどれかに当たると、任命権者の許可が必要になります。

ここで大事なのは、条文が「してはならない」と書いているのは「許可を受けずに」という条件付きだという点です。禁止条文ではなく、許可を前提にした制限条文です。自治体の窓口で「公務員は副業禁止です」と説明されることがありますが、それは条文の読み方としては正確ではありません。鶴岡市は、この点を自ら振り返ってこう書いています。

地方公務員の兼業については、地方公務員法第38条により公務の能率の確保、職務の公正、職員の品位の保持等のため、許可制が採用されていましたが、地域活動等の兼業について許可基準が明確でなかったため、これまで必要以上に制限的な運用がなされてきました。 出典: city.tsuruoka.lg.jp

「必要以上に制限的な運用」という言葉を、自治体自身が公文書で使っているわけです。基準が書かれていないと、窓口は安全側に振れて断ります。だから基準を書く、という流れがいま全国で進んでいます。

もう1つ、条文の第2項も押さえておくと交渉が変わります。第2項は「人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる」と定めています。つまり、許可基準は担当者の感覚ではなく、規則や要綱として文書化されることが法律上の想定です。自分の自治体に基準の文書があるかどうかを先に確かめる。これが最初の一手になります。

許可が要る場合と要らない場合の境目

第38条の第1項には、ただし書きがあります。「非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない」という部分です。会計年度任用職員のうち一定の区分に当たる人は、この制限の対象から外れます。自分の任用の種類がどれに当たるかは、辞令と任用通知に書かれた職名で決まるので、任用担当の課に確認してください。

常勤の職員の場合、境目は3つの要素で決まります。1つ目は報酬が発生するかどうか。無報酬のボランティアは、第38条の3つの型のどれにも当たりません。ただし無報酬でも、第35条の職務に専念する義務や第33条の信用失墜行為の禁止には引き続き当たるので、勤務時間中に行うことや、職の信用を損なう活動は許可の有無にかかわらず問題になります。

2つ目は、営利企業に該当するかどうか。町内会の役員やNPOの理事など、営利を目的としない団体の役員は、役員兼業の型には当たりません。ただし報酬が出る場合は3つ目の型、つまり「報酬を得て事業や事務に従事する」に当たるため、許可が必要になります。

3つ目は、事業と呼べる規模かどうかです。不動産の賃貸や太陽光発電による電気の販売は、規模が一定を超えると自営兼業として扱われます。自治体によって線の引き方が違うため、独自の判断で「この程度なら報告しなくてよい」と決めないでください。公務員の兼業でこじれるのは、活動の内容そのものよりも、申請せずに始めてしまったという手続きの部分です。

国家公務員の場合は、国家公務員法第104条が「報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する」と定めています。許可を出す相手が違うだけで、報酬を得る活動には許可が要るという構造は同じです。国の職員向けに書かれた記事を読むときは、許可権者が自分の場合は任命権者に置き換わることを意識してください。

判断されるのは4つの観点。条文のどこから来ているか

許可を出すかどうかの判断で見られるのは、大きく4つです。どれも第38条の周辺の条文に根拠があります。

第1に、公務の能率が確保されるか。地方公務員法第35条は「職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い」と定めています。兼業によって本業の集中力が落ちる、遅刻や欠勤が増える、時間外勤務ができなくなるといった影響があると見込まれれば、そこが不許可の理由になります。申請書で疲労の管理をどうするかに触れておく価値があるのは、この条文があるからです。

第2に、職務の公正が保たれるか。自分が許認可や補助金の審査を担当している分野で、その相手方から報酬を受け取る形になっていないか。これは最も厳しく見られる点で、活動の内容が立派であっても職務との利害関係があると通りません。担当業務を変わってから申請する、という順番になることもあります。

第3に、職員の品位が保持されるか。地方公務員法第33条は「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」と定めています。特定の商品を強く勧める活動、投機性の高い事業、誤解を招く肩書きの使い方などが問題になります。

第4に、秘密が守られるか。第34条は「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする」と定めています。ここは退職後まで続く義務なので、在職中に得た内部情報を素材にした執筆や講演は、テーマの選び方の段階で線を引く必要があります。

この4つは、自治体の要綱でもほぼ同じ言葉で並んでいます。申請書を書くときは、この4つに1つずつ答える形で文章を組むと、審査する側が判断しやすくなります。逆に、活動の意義だけを熱心に書いて4つの観点に触れていない申請書は、確認のやり直しが発生して時間がかかります。

千葉県が令和8年4月から広げた兼業の枠

基準の公開がどこまで具体的になっているかを見るには、千葉県の例が分かりやすいです。千葉県は職員の兼業に係る許可基準を見直し、令和8年4月1日以降に開始する兼業から新しい運用を始めると公表しました。

見直しの目的は、県自身の言葉で説明されています。

職員が自己実現や社会課題の解決に資するような兼業を行うことは、地域社会を知ることでの視野の拡大や本業への意欲の高まりといった点から、本業にも好影響を与え得るものと考えられます。 出典: pref.chiba.lg.jp

内容で注目したいのは、兼業できる活動の類型が名指しで増えたことです。報酬を得て行う活動(雇用関係なし)の枠には、従来からの「職務上の専門性を活かした活動」(大学での講演や学術誌への執筆など)と「公益に資する活動」(地域クラブのスポーツ指導、有害鳥獣の駆除、農作業の手伝いなど)に加えて、「知識・技能を活かした活動」が新しく入りました。例として挙げられているのは、イベントでのピアノ演奏や、パソコン教室などの公開講座の講師です。

営利企業等の従業員として働く枠にも、「社会課題の解決に資する活動」が新しく入りました。ここには条件が付いていて、その活動が副次的に広く不特定多数の利益の増進に寄与するものであり、従事者数の不足により民間の就業を阻害しないものに限る、とされています。挙げられている例は、人手不足が生じている地域におけるバスの運転手です。

自営兼業の枠も広がりました。従来の不動産等賃貸や太陽光電気の販売に加えて、「知識・技能を活かした個人事業」(書道教室の経営、ハンドメイド作品の販売)と「公益に資する個人事業」(地域振興イベントの主催、高齢者の買物代行)が新しく認められています。

ここを読むときに注意したいのは、これが千葉県の基準であって、全国共通の基準ではないという点です。ただし、他の自治体に相談するときの材料としては強い。「県でこういう類型が認められています」という具体例があると、窓口も判断の物差しを持てます。自分の自治体の基準が見つからない場合は、近隣の県や市が公開している要綱を印刷して持っていくところから始めると話が進みます。

上限時間はどう設定されているか

許可基準の中で最も実務に効くのが時間の上限です。千葉県は、この見直しで上限時間の設定そのものを組み替えました。

新しい上限は、週8時間、または1か月30時間以内。そして勤務時間が割り振られた日は1日3時間以内です。見直し前は、年104時間の上限時間の範囲内で個別に判断する形でした。

年104時間を12で割ると1か月あたり約8.7時間ですから、1か月30時間という新しい上限は、従来の3倍を超える水準です。数字だけ見ると大きく緩んでいます。ただし「勤務時間が割り振られた日は1日3時間以内」という日ごとの制限が入ったので、平日の夜に少しずつ活動する形は上限に届きにくく、休日にまとめて活動する形のほうが時間を使えます。土日に開催される教室やイベントの講師と相性がよい設計になっている、と読めます。

千葉県はあわせて管理の仕組みも決めています。営利企業等の従業員としての兼業と、自営兼業(不動産等賃貸や太陽光電気の販売等を除く)については、定期的な業務従事が想定されるため実績報告を求め、県での時間外勤務時間を含めた労働時間の管理を行うとしています。つまり、許可が下りた後も報告が続きます。

この点は、申請する側にとっては手間ですが、同時に守りにもなります。活動時間を記録して出しておけば、後から「本業に支障が出ていたのではないか」と問われたときに、記録で答えられます。活動を始める前に、日付と時間と内容を書く簡単な記録の形を決めておいてください。表計算ソフトのシートを1枚用意しておく程度で足ります。

鶴岡市の要綱が示す「地域貢献活動」の2条件

市町村レベルの例として、鶴岡市の要綱を見ておきます。鶴岡市は「鶴岡市職員の営利企業等の従事制限に関する事務取扱要綱」を公開し、市職員が兼業として地域の発展や活性化に寄与する地域貢献活動に積極的に取り組めるよう、既存の許可基準を明確化したと説明しています。

対象になる地域貢献活動等の条件は、2つだけです。1つ目は、市内外の地域の発展、活性化に寄与する、公益性が高い活動であること。2つ目は、定期的・継続的な活動に伴い、報酬が発生することです。

この2つ目の条件の書き方に注目してください。「報酬が発生すること」が対象の条件として書かれています。報酬があるから制限する、という発想ではなく、報酬が発生する定期的な活動を許可の対象として扱う、という整理です。無報酬の活動は許可の枠組みの外にある、という前提が読み取れます。

1つ目の条件では「市内外」と書かれている点も実務的です。隣の市で行う活動、県域の団体での活動も対象に含まれます。地元に限る、という縛りがかかっていません。

市町村の要綱は、県の基準よりも短く、条件の数も少ない傾向があります。その代わり、個別の相談で判断する幅が広い。だから、要綱を読んで自分の活動が当てはまるかを自分だけで決め込まず、職員課に活動の内容を説明して当てはまるかを聞くのが早道です。要綱が公開されている自治体なら、窓口も説明の根拠を持っているので、話が具体的になります。

認められやすい活動と、認められにくい活動

公開されている基準を並べると、認められやすい活動には共通の性質があります。

認められやすいのは、まず公益性が説明できる活動です。地域クラブのスポーツ指導、有害鳥獣の駆除、農作業の手伝い、地域振興イベントの主催、高齢者の買物代行。いずれも、その活動が地域の誰かの役に立つことを1文で説明できます。次に、自分の知識や技能に根拠がある活動です。大学での講演、学術誌への執筆、公開講座の講師、書道教室の経営。技能の出どころが説明できると、職務の公正との関係も整理しやすくなります。そして、活動の時間と場所がはっきりしている活動です。週末の教室、決まった曜日の指導は、上限時間に収まることを数字で示せます。

認められにくいのは、逆の性質を持つものです。自分の担当業務と利害が重なる相手から報酬を受け取る形、活動時間が読めない形、勤務時間中に連絡対応が必要になる形、そして公務員という立場が営業の材料になりかねない形です。とくに最後の点は見落とされがちです。肩書きを出さないつもりでも、地域の活動では顔と職場が知られているので、実質的に立場が効いてしまうことがあります。

判断に迷うのは、その中間にある活動です。ハンドメイド作品の販売は、千葉県の基準では知識・技能を活かした個人事業として例示されています。一方で、販売の規模が大きくなり在庫と仕入れを抱える形になると、自営兼業としての管理が必要になります。文章を書く仕事も同じで、専門分野の執筆は認められやすく、匿名で量をこなす請負は活動時間が読めないため説明が難しくなります。文章で報酬を受け取る形を検討しているなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、どの程度の単価でどれだけの時間がかかる仕事なのかを先に把握しておくと、上限時間に収まる計画を立てやすくなります。

許可申請の進め方と、申請書に書く内容

手続きの流れは、どの自治体でもおおむね同じ形です。

第1段階は、基準の文書を手に入れることです。自治体の公式サイトで「兼業」「営利企業等の従事制限」「許可基準」といった言葉を探します。見つからない場合は職員課に問い合わせます。要綱がない自治体もありますが、その場合は判断の前例を聞くことになります。

第2段階は、事前相談です。申請書を書く前に、活動の内容を口頭で説明して、そもそも対象になるかを確かめます。ここを飛ばして申請書を出すと、様式の不備で戻ってくることが多く、かえって時間がかかります。

第3段階は、申請書の作成です。様式は自治体ごとに違いますが、書く中身はほぼ共通しています。活動の名称と内容、活動を行う団体または相手方の名称と所在地、活動の場所、活動の期間、1週間または1か月あたりの従事時間、報酬の額と支払われ方、そして公務との関係です。

このうち差が出るのが最後の項目です。公務との関係の欄には、担当業務と活動の相手方に利害関係がないことを具体的に書きます。「利害関係はありません」だけでは根拠になりません。自分の担当業務が何で、活動の相手方がどういう立場で、その2つの間に許認可や契約や補助の関係がないことを、事実として並べてください。

報酬の額は、見込みでも構いませんが、幅を持たせて書きます。1回あたりの謝金が決まっているなら、その単価と年間の回数を書くのが最も誤解が少ない形です。報酬が物品や割引で支払われる場合も、金額に換算して書いてください。

第4段階は、許可後の記録です。千葉県のように実績報告を求める自治体があるので、活動の日付と時間を記録しておきます。活動の内容が変わったとき、報酬の額が大きく変わったとき、活動の相手方が変わったときは、許可の内容と実態がずれます。その時点で改めて相談してください。文書の書き方そのものに不安があるなら、ビジネス文書検定のように文書の型を学ぶ検定の出題範囲を眺めておくと、申請書や実績報告の書き方の型が身につきます。

許可が下りなかったときに確かめる3つのこと

不許可の連絡を受けたとき、そこで諦めてしまう人が多いのですが、理由の中身によって次の手が変わります。確かめる点は3つです。

1つ目は、不許可の理由が活動の内容そのものなのか、条件の部分なのかです。活動の分野が職務と利害関係にあるという理由なら、担当業務が変わるまで同じ活動は難しくなります。一方、時間が上限を超えているという理由なら、回数を減らした計画に組み替えて再度申請できます。報酬の額が高すぎるという理由なら、単価を下げるのではなく、受ける回数を減らして年間の総額を下げる形が現実的です。理由の分類を聞かないまま引き下がると、この組み替えができません。

2つ目は、判断の根拠になった文書があるかです。要綱や基準に基づく判断なら、その条文を教えてもらってください。基準の文書がなく前例だけで判断されている場合は、判断の幅が残っています。近隣の自治体が公開している基準を材料に、あらためて相談する余地があります。千葉県や鶴岡市のように基準を公開した自治体が増えているのは、判断の根拠を文書で示す流れが広がっているからです。

3つ目は、活動の形を変えれば通るのかです。報酬を受け取る形が雇用なのか委託なのか、相手が営利企業なのか公益の団体なのか、活動の場所が公共施設なのかで、当てはまる類型が変わります。同じ内容の活動でも、地域のクラブを通じて指導する形と、個人で教室を経営する形では審査の観点が違います。どの類型なら説明しやすいかを窓口と一緒に探すほうが早い場合があります。

なお、不許可の判断に納得できない場合の手続きは、自治体の規程によって違います。勤務条件に関する措置の要求という制度もありますが、使い方は人事委員会または公平委員会の運用によります。手続きを検討する段階に入るなら、自治体の労働組合または人事委員会の窓口で、自分の場合に使える制度を確かめてください。

報酬を受け取ったあとの税金の手続き

許可が下りて報酬を受け取り始めると、税の手続きが発生します。ここを知らずに進めて年明けに慌てる例が多いので、先に整理しておきます。

まず所得税です。給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。ここでいう20万円は収入ではなく所得、つまり収入から必要経費を差し引いた後の金額です。講師の謝金なら、会場までの交通費や資料の印刷費を差し引いた残りが所得になります。

次に住民税です。住民税の申告義務は所得税とは別の制度で、地方税法第317条の2に定めがあります。期限は3月15日で、提出先はその年の1月1日現在の住所地の市区町村です。所得税の20万円という線は所得税だけの話であって、住民税には当てはまりません。確定申告をしなかった場合でも、住民税の申告は必要になる場合があります。

徴収の方法についても触れておきます。副業の分の住民税を給与から差し引かれない形にできる、という説明を目にすることがあります。根拠は地方税法第321条の3第2項のただし書きですが、対象は給与所得以外の所得だけです。兼業がアルバイトのように給与として支払われる形だと、この選択はできません。自治体によって運用が違うので、税務の窓口に確認してください。

もう1つ、公務員に固有の注意点があります。国税庁のタックスアンサーには、家内労働者等の必要経費の特例という制度があり、令和8年分では必要経費として69万円まで認められます。特定の相手に継続して役務を提供する形の仕事が対象になるので、兼業の形によっては当てはまりそうに見えます。しかし同じページに「給与の収入金額が69万円以上あるときは、この特例は受けられません」と明記されています。

(1)給与の収入金額が69万円以上あるときは、この特例は受けられません。 出典: nta.go.jp

常勤の地方公務員には給与収入があり、その額は69万円を大きく超えます。したがって、この特例は使えません。副業の税金を扱う記事にはこの特例がよく登場しますが、公務員が読むときは対象外だと分かった上で読み飛ばしてください。実際の税額や申告の要否は収入の種類と金額で変わるので、判断に迷うときは税務署か市区町村の税務窓口で確認するのが確実です。

職場に知らせる範囲と、同僚との関係の作り方

制度の話とは別に、実際の運用でつまずきやすいのが職場との関係です。許可は任命権者が出すものですが、日々の業務は同じ課の人たちと進みます。

まず、許可の事実をどこまで共有するかを決めてください。制度上、許可を受けたことを同僚に知らせる義務はありません。しかし、活動の日に定時で退庁する必要がある場合や、特定の曜日に時間外勤務を引き受けられない場合は、直属の上司には伝わっていたほうが摩擦が少なくなります。伝える内容は、活動の日と時間、そして本業の予定との調整の考え方だけで足ります。報酬の額まで説明する必要はありません。

次に、繁忙期の扱いを先に決めておくことです。予算編成の時期、災害対応、選挙の事務など、時間外勤務が集中する期間は部署ごとに決まっています。その期間に兼業の活動を入れない、あるいは回数を減らすという方針を、許可の申請の段階で書いておくと後で話が早いです。千葉県が実績報告と時間外勤務時間を含めた労働時間の管理を求めているのは、まさにこの重なりを避けるためです。

もう1つは、連絡の窓口を分けることです。兼業の相手方からの連絡が職場の電話や公用のメールに届くと、公私の区別が曖昧になります。連絡先は私用の電話とメールに限り、勤務時間中は応答しないことを相手に伝えてください。返信できる時間帯を最初に示しておけば、相手も予定を立てられます。

最後に、活動の記録を自分で持つことです。実績報告を求められない自治体でも、日付と時間と活動の内容を残しておく価値があります。異動して上司が変わったとき、制度が見直されたとき、記録があれば説明に時間がかかりません。記録は同僚への説明にも使えます。

兼業を長く続けるための組み立て方

ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年にわたって見てきた運営者の立場からの観察です。

許可を取った後に続かなくなる例には、はっきりした共通点があります。活動の量を相手の都合に合わせてしまうことです。兼業には上限時間があります。相手から「もう1回お願いしたい」と言われたときに断れないと、上限を超えるか、本業に影響が出るかのどちらかになります。そして上限を超えた事実が後から分かると、許可そのものが見直されます。長く続いている人は、最初の打ち合わせの段階で「年間で受けられるのは何回まで」と自分から数字を出しています。制限を先に伝えることが、信頼を落とすのではなく、むしろ相手の予定を立てやすくしている。これは運営者として見てきた限り、業種を問わず共通する型です。

もう1つの観察は、報酬の形についてです。仲介する会社が間に入る形では、依頼者が払った金額から手数料が引かれた残りが手取りになります。同じ予算でも、直接の取引なら依頼者はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%で直接つながる形が意味を持つのは、金額の多寡ではなく、少ない回数で必要な額に届くという質の部分です。上限時間がある兼業では、この差がそのまま続けられるかどうかに効いてきます。1回あたりの単価が上がれば、同じ上限時間の中で受けられる依頼の質を選べるようになります。

技能の方向についても触れておきます。公務員の兼業で公開されている類型を並べると、説明できる専門性が起点になっている活動が目立ちます。窓口業務で身につけた制度の知識、統計の扱い、文書の作り方、住民への説明の組み立て。これらは民間でも需要があります。どういう業務がどういう形で依頼されているのかを知るには、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、業務の改善を支援する仕事の内容と進め方をまとめた案内を読んでおくと、自分の経験のどこが値段のつく部分なのかが見えてきます。

契約の形についても、先に知っておく価値があります。兼業で報酬を受け取る形は、雇用ではなく業務委託になることが多いです。委託の取引では、条件を文書で受け取ることが法律上の義務になっています。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでは、発注書に何が書かれていなければならないかを項目ごとに確認できます。兼業の申請書に報酬の額を書く必要があるので、条件が文書で示されていないと申請そのものが書けません。最初に文書を求めることは、相手を疑う行為ではなく、許可手続きに必要な資料をそろえる行為です。

士業のように資格に基づく副業と、公務員の兼業は、許可の考え方が似ています。会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】では、勤務先の規程と自分の専門性の間で線を引く進め方が整理されています。許可を出す相手が違うだけで、利害関係の確認と時間の管理という2つの軸は共通です。

最後に、始める順番の話をします。活動の相手を先に決めてから許可を申請するのが自然な流れですが、相手に話を持ちかける前に、基準の文書を読んで自分の活動が類型のどこに入るかを確かめてください。相手との約束が先に固まってから許可が下りないと、断る相手ができてしまいます。基準を読む、窓口に相談する、相手と条件を決める、申請する。この順番が最も事故が少ない形です。ITの分野で技能を示したいならCCNA(シスコ技術者認定)のような認定が説明の材料になりますし、開発の経験があるならソフトウェア作成者の年収・単価相場で自分の技能に対する市場の水準を確かめておくと、報酬の欄に書く金額の根拠が持てます。制度は動いています。数年前に断られた人も、いまの基準をもう一度読み直してみてください。

よくある質問

Q. 地方公務員の兼業は許可を取れば自由にできますか?

自由にはなりません。許可の対象は活動の内容ごとで、公務の能率の確保、職務の公正の確保、職員の品位の保持、秘密の保持という4つの観点から個別に判断されます。許可後も上限時間の制限があり、自治体によっては活動の実績報告を求められます。活動の内容や報酬が変わったときは、改めて相談が必要です。

Q. 兼業の上限時間はどれくらいに設定されていますか?

自治体ごとに違います。千葉県は令和8年4月1日以降に開始する兼業について、週8時間または1か月30時間以内、勤務時間が割り振られた日は1日3時間以内という上限を設定しました。見直し前は年104時間の範囲内で個別に判断する形でした。自分の自治体の要綱で確認してください。

Q. 無報酬のボランティアでも許可は必要ですか?

地方公務員法第38条が制限しているのは報酬を得る活動と営利企業に関わる活動なので、無報酬の活動は許可の枠組みの外になります。ただし勤務時間中に行うことは職務専念義務に、職の信用を損なう活動は信用失墜行為の禁止に当たります。判断に迷う活動は、事前に職員課へ相談してください。

Q. 兼業の報酬を受け取ったら確定申告が必要ですか?

給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要になります。20万円は収入ではなく、必要経費を差し引いた後の所得の額です。住民税の申告は所得税とは別の制度で、期限は3月15日、提出先は1月1日現在の住所地の市区町村です。判断に迷う場合は税務署か市区町村の税務窓口で確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月20日最終更新:2026年9月27日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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