Illustratorクリエイター能力認定試験の受け方と在宅デザインでの評価のされ方

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Illustratorクリエイター能力認定試験の受け方と在宅デザインでの評価のされ方

この記事のポイント

  • ✓illustrator クリエイター能力認定試験の受験料・試験時間・合格基準・出題範囲を主催団体の記載で確かめて整理しました
  • ✓スタンダードとエキスパートの違い
  • ✓標準学習時間からの学習計画

Illustratorを独学で触ってきた人が最初にぶつかるのは、「この操作で合っているのか誰も教えてくれない」という壁です。チュートリアルを真似れば見た目は作れます。けれども、入稿できるデータになっているか、指示書どおりの仕様を満たしているかは、自分では判定できません。illustrator クリエイター能力認定試験は、まさにその「指示どおりに正確に作れるか」を測る試験です。この記事では、受験料と試験時間、合格の線引き、出題範囲、在宅での受験方法、標準学習時間から逆算した学習の組み方、そして在宅のデザインの仕事で実際にどう見られるかまでを、主催団体の記載で確かめた内容だけで整理します。数字は古い情報が世に多く残っているため、すべて現在の公表値に合わせています。

この試験が測っているのは、作品の美しさではなく再現の正確さ

Illustratorクリエイター能力認定試験は、株式会社サーティファイのソフトウェア活用能力認定委員会が主催・認定する試験です。試験の目的は、ドキュメントデザイン技術に関する知識を持ち、提示されたテーマと素材から仕様に従ってコンテンツを制作する能力を認定することだとされています。ここで大事なのは「仕様に従って」という部分です。センスの良い作品を自由に作る力を測る試験ではありません。作業指示書を読み、書かれた条件を落とさずに再現する力を測る試験です。

測定の対象は、Illustratorを用いたDTPファイルおよびWebデザインパーツの作成と、問題の指示に従って1つの作品を作り上げる表現力です。つまり「部品を正確に作る力」と「1本の作品にまとめ上げる力」の2つが、別々の部で問われます。

受験資格に学歴や年齢の制限はありません。実務経験も問われないため、独学の人でも学生でも同じ条件で受けられます。累計受験者数は120,897名(2026年3月31日時点)、2025年度の平均合格率は72.1%と公表されています。合格率の数字だけを見ると易しそうに見えますが、受験者の多くはパソコンスクールや専門学校で対策講座を受けてから臨んでいます。対策なしで挑んで落ちる人と、対策して受かる人が混ざった結果が7割台だと読むのが正確です。

在宅でデザインの仕事を受けたい人にとって、この試験の価値は「操作できる」と言い切れる根拠が手に入ることにあります。資格を持っているだけで単価が上がる性質のものではありません。ただ、発注する側から見たときに「Illustratorが使えます」という自己申告と、第三者の試験に合格しているという記述は、読み方がまったく違います。資格の位置づけそのものはIllustratorクリエイター能力認定試験の解説ページでも整理しているので、級の選び方に迷う段階なら先にそちらを読むと判断が早くなります。

スタンダードとエキスパートは、知識問題があるかどうかで分かれる

級種は2つです。どちらから受けてもよく、同じ日に併願もできます。違いは大きく3つあります。知識問題の有無、問題数、そして印刷とWebの前提知識をどこまで問われるかです。

主催団体は認定基準をこう書いています。

■エキスパート Illustrator® を活用し、クライアントのニーズに対応した創造性の高いコンテンツ制作ができる。
・デザインコンセプトや表現の目的に応じて適切な機能を選択し、表現できる。
・DTP/Webデザインに関する基本的な知識がある。 ■スタンダード Illustrator® を活用し、指示通りの作業を正確かつ合理的に行う事ができる。
・作業指示書に基づいた制作ができる。
・Illustrator® の基本的な操作ができる。 出典: sikaku.gr.jp

言い換えると、スタンダードは「書かれたとおりに作れる」、エキスパートは「目的から逆算して機能を選べる」を測ります。在宅で制作の下請けを受ける段階ならスタンダードで足ります。デザインの方向性ごと任される立場を目指すならエキスパートが対応します。

出題形式も具体的に違います。スタンダードは第1部が実技のみで、Illustrator上でDTPファイルとWebデザインパーツを作る問題がテーマ別の大問7問から9問程度、40分です。第2部は実践で、指示に従って1つの作品を作る1テーマ、90分です。

エキスパートは第1部に知識問題が加わります。Adobe IllustratorおよびDTP、Webデザインに関する知識が多肢選択解答形式でテーマ別大問4問から6問程度、実技問題と合わせて50分です。第2部の実践は90分でスタンダードと同じ構成です。第1部の問題数がスタンダードより少なく見えるのは、知識問題と実技問題が同じ50分の枠を分け合うためです。時間配分の練習をしていないと、知識問題に時間を使いすぎて実技が終わらない事故が起きます。

級種選びで迷ったときの判断は単純です。作業指示書を渡されて、書かれた寸法やカラー指定を落とさずに再現した経験があるならエキスパートを狙えます。Illustratorを開いて自由に描いた経験しかないなら、スタンダードから入るほうが学習の順序として自然です。

受験料と試験時間、そして合格の線引き

受験料は税込でスタンダードが8,100円、エキスパートが9,100円です。この数字は変わっており、7,800円や8,800円と書いている解説が今も残っています。申し込み前に主催団体の日程ページで確認するのが確実です。

試験時間は級種で違います。スタンダードは合計130分で、第1部の実技40分と第2部の実践90分です。エキスパートは合計140分で、第1部の知識と実技が50分、第2部の実践が90分です。どちらも第1部と第2部の間に最大10分間の休憩を挟めます。

公開試験では開始時刻が幅で指定されます。スタンダードは10時から12時までの間の好きな時点で開始でき、休憩を含めると終了は12時10分から14時20分の間になります。エキスパートは13時から15時までの間の開始で、終了は15時20分から17時30分の間です。この幅があるおかげで、同じ日にスタンダードとエキスパートを併願できます。受験開始とともに時間の計測が始まるため、開始ボタンを押す前に机の上を片づけておくことが実務的な注意点です。

合格基準は級種で分かれます。スタンダードは実技問題の得点率65%以上で、かつ実践問題の得点率70%以上です。エキスパートは知識問題と実技問題の得点率が65%以上で、かつ実践問題の得点率が70%以上です。

ここで見落としやすいのが、合計点での判定ではないという点です。第1部で満点を取っても、第2部の実践が70%に届かなければ不合格になります。逆に実践がよくできても、第1部の取りこぼしが多ければ届きません。両方に基準があるので、得意な部だけを伸ばす学習では受かりません。合否結果は試験日から1か月後をめどに通知されます。

受験の方法は「随時試験」と「公開試験」の2通り

個人で受ける場合、経路は2つあります。どちらを選ぶかで、日程の決まり方と受験場所がまるごと変わります。

随時試験は、パソコンスクールなどの認定会場で受ける形式です。会場ごとに受験できる日程が違い、申込期間も支払方法も会場が決めます。近所に会場があれば、自分の都合に近い日に受けられる可能性が高い経路です。会場のパソコンを使うため、自分の機械の環境を整える手間がありません。

公開試験は、サーティファイが直接運営する全国一斉試験です。こちらはリモートWebテストによる在宅または在社での受験形式で、認定会場が近くにない地域からでも、海外からでも受けられます。公開試験の日程は年に数回で、直近では第9回が2026年7月5日(日)に実施され、第10回が2027年1月24日(日)に予定されています。第10回の申込期間は2026年11月10日から2027年1月10日まで、結果発表日は2027年2月17日です。

リモートWebテストは、2つのカメラと4つのAIによる不正監視機能を備えた受験システムで、2021年から運用されています。在宅受験の利便性と公平な試験実施を両立させる仕組みという位置づけです。

在宅で受けるときに用意するものは、インターネット接続環境、受験用のパソコン、スマートフォン、スマートフォンスタンド、そして静かな個室です。スマートフォンは手元や部屋を映す2台目のカメラとして使うため、スタンドは必須の持ち物になります。家族と同居している場合は、試験時間が130分から140分に休憩を加えた長さになることを先に伝えておくほうが安全です。途中で人が入ってくると監視の対象になります。

どちらの経路でも試験の内容と合格基準は同じです。日程の自由度を取るなら随時試験、場所の自由度を取るなら公開試験という選び方になります。

申し込みから結果を受け取るまでの流れ

公開試験の場合、手続きは資格受付ONLINEというサイトに集約されています。流れは次のとおりです。

まず資格受付ONLINEのログインページで新規登録を行います。登録は無料です。個人情報保護方針を確認して同意し、画面の指示に従って情報を入力すると、入力したメールアドレスに仮登録完了のメールが届きます。そのメールに書かれた本登録完了リンクを開くと、アカウントの作成が終わります。このアカウントは、サーティファイが運営する他の試験にも共通で使えます。

次にマイページから受験申込に進みます。受験申込のボタンを押し、試験IDを持っていない場合はその旨のボタンを選び、申込受付中の試験一覧から希望の試験を選んで申込手続へ進みます。試験情報を入力して内容を確認したら、外部の決済システムに移り、選んだ支払方法で受験料の支払いを済ませます。ここまでで申し込みは完了です。

申し込んだあとは、受験票の確認、リモートWebテストの操作体験、当日の受験、合否結果の確認、デジタル認定証の受領まで、すべて資格受付ONLINE上で行います。操作体験は本番前に必ず通しておくことをおすすめします。カメラの位置やマイクの許可でつまずくと、本番の開始時刻を無駄に消費します。

随時試験の場合は流れが変わります。まず受験会場検索のページで近くの会場を探します。受験には資格受付ONLINEのアカウント登録が必要なので、先に登録してから会場へ連絡するとやり取りが短くなります。会場には、試験日時、受験申込期間、申込方法と支払方法、受験結果の受領方法を確認します。申し込みと受験料の支払いは会場が指定する方法で直接行います。当日は時間厳守で、開始時刻を過ぎると受験できなくなる場合があります。

結果については、受験者全員に「試験結果のおしらせ」がデータで発行されます。合格した場合はオープンバッジとデジタル認定証明書が発行され、いずれも資格受付ONLINEのマイページから確認できます。オープンバッジは、履歴書や職務経歴書だけでなく、案件応募のプロフィール欄に証明として並べられる形式です。なお、同じ試験の再受験の申し込みは、前回試験の合否結果を受け取ったあとに行う決まりになっています。落ちた直後にすぐ申し込めるわけではないので、日程に余裕を見ておきます。

在宅受験でつまずくのは、実力ではなく環境の設定

リモートWebテストで受けるなら、試験の前日までに機械の側を整えておく必要があります。主催団体が公表している注意点は具体的で、ここを読んでいないと本番で操作ができません。

対応OSはWindows 11が23H2以降のみで、対応バージョンは2026(30.x)と2025(29.x)です。macOSは14(Sonoma)から26(Tahoe)までが2026(30.x)と2025(29.x)に対応し、macOS 12(Monterey)から15(Sequoia)までは2024(28.x)と2025(29.x)に対応します。自分のOSとIllustratorの組み合わせが対応表に載っているかを先に見てください。随時試験の場合は、会場検索の画面でバージョンを指定して検索します。

フォントの準備も必要です。試験の実施までに、Adobe Fontsから小塚明朝 Pro、小塚ゴシック Pro、小塚明朝 Pr6N、小塚ゴシック Pr6Nの4つを、いずれも全ウェイトでアクティベートしておきます。ここを忘れると、問題文で指定されたフォントを選べません。指定フォントが当てられないだけで実践問題の得点がまるごと落ちるため、前日までに終わらせておく作業です。

アプリケーションの表示設定にも指定があります。プログラムの表示エラーが起きる場合があるため、スクリーンモードは「標準スクリーンモード」にしておきます。メニューバーの表示からスクリーンモードを選び、標準スクリーンモードを選択する操作です。フルスクリーンで作業する習慣がある人は、当日だけ戻す必要があります。

もう1つ、試験ではRTF形式のファイルを使います。Windows 11では、初期状態でリッチテキストを開くエディタが入っていない場合があります。その場合は、エクスプローラーの表示からプレビューウィンドウを選んでプレビューを表示し、RTFファイルを選ぶとプレビューに文章が出るので、そこで文字列の選択などの操作を行います。原稿のテキストをコピーして流し込む問題で使う手順なので、この動きだけは事前に手を動かして確かめておく価値があります。

アプリケーションには最新のアップデートを適用しておくことも指示されています。試験前の1週間は、Creative Cloudの更新を後回しにしないほうが安全です。

出題範囲を「両方に○が付く単元」と「エキスパートだけの単元」に分ける

出題範囲は公表されており、スタンダードとエキスパートのどちらで問われるかが単元ごとに示されています。学習計画を立てるときは、この表を2つに割って読むのが早道です。

両方の級種で問われる基本の操作は、次のような範囲です。指定されたファイル形式での保存、指定内容でのドキュメント設定、アウトライン表示とプレビュー表示の切り替え、スクリーンモードの変更、用紙サイズやプリントサイズの設定、環境設定の一般と単位とガイド・グリッド、カラーの選択と線パネルでの線幅や線端や破線の設定、スポイトツールでの属性のコピー、各種の図形ツールでの描画、ペンツールと鉛筆ツールでのパスの描画と編集、定規やガイドやスマートガイドでの正確なレイアウト、整列パネルでの整列と分布、グループ化とロック、レイヤーの管理、文字ツールでの入力とフォントやサイズや行揃えの設定、行送りやトラッキングやカーニングの設定、禁則処理と文字組み、アウトライン化、配置コマンドでの画像の配置、Web用画像の保存です。ここが土台になります。

エキスパートだけで問われる単元は、操作の細かさよりも、印刷とWebの前提知識に寄ります。フレアツール、ブラシの作成と編集、選択メニューの共通とオブジェクトによる属性を条件にした選択、スポットカラー(特色)の設定と適用、メッシュツールでの複雑なグラデーション、不透明マスクの作成、カラーマネジメントとカラー設定ダイアログの知識、校正設定の知識、シンボルとインスタンスの管理、グラフィックスタイルの登録と変更、オブジェクトのラスタライズ、テンプレートレイヤーの利用、レイヤーを使ったクリッピングマスク、タブパネルでのタブとリーダーの設定、OpenTypeパネルと字形パネルの知識、フォントの検索と置換、合成フォントの作成、グラフツールとグラフ設定、アクションの再生と作成、スクリプトによる一括処理、目的に応じたファイル形式での書き出しとスライス画像の書き出しが並びます。

さらにエキスパートでは、DTPとWebデザインの基本知識が独立して問われます。PDFの形式と特徴、画像解像度(dpi、ppi)の知識、色分解の知識、プロファイルとガンマ補正の知識、オーバープリントとトラッピングとレジストレーションカラーの知識、トリムエリア(トンボ)とトリムマークと裁ち落としの設定、Webのファイル形式の知識、イメージマップの設定、フォントフォーマットの知識です。ベクトルデータとビットマップデータの概念だけは両方の級種で問われます。

この並びから分かるのは、エキスパートの勉強は「Illustratorの操作の練習」ではなく「印刷とWebの用語の勉強」が半分だということです。手を動かすだけでは届きません。用語を説明できる状態まで持っていく必要があります。

標準学習時間から、現実的な学習計画に落とす

主催団体はモデルカリキュラムとして標準学習時間を公表しています。

Illustrator ® クリエイター能力認定試験 モデルカリキュラム エキスパート 標準学習時間 22 時間 スタンダード 標準学習時間 23 時間 出典: sikaku.gr.jp

この2つの数字は、起点が違うことに注意して読みます。スタンダードの23時間は、初学者がスタンダードの合格レベルに達する目安です。エキスパートの22時間は、スタンダードを取得した人がエキスパートの合格レベルに達する目安です。つまり、初学者がエキスパートまで通すなら、合わせて45時間前後が目安になります。学習教材としては、Illustratorクイックマスターと、Illustratorクリエイター能力認定試験問題集が案内されています。

1日1時間の学習なら、スタンダードで3週間から4週間です。平日は操作の練習、休日に実践問題を通しで解く配分にすると、時間の見積もりが現実に合います。ここで削ってはいけないのが、第2部の実践90分を時間を計って通す練習です。実践は1テーマを仕上げる問題なので、途中で時間が足りなくなると部分点しか残りません。1回でも通しでやっておくと、どの工程に何分かかるのかが分かります。

サンプル問題は、スマートフォンからすぐ確認できるPDF版と、本試験と同じ形式で使える受験プログラム版の2種類が用意されています。問題の内容は同じなので、まずPDF版で出題の雰囲気をつかみ、直前に受験プログラム版で操作を確かめる順序が無理がありません。

独学で進めるときに起きがちなのは、得意な描画の練習に時間が偏ることです。制作の現場でよく使う機能ほど、試験では「できて当たり前」の扱いになります。差が付くのは、環境設定や保存形式、整列と分布、文字組みといった地味な単元です。出題範囲の表を印刷して、自分で説明できない行にしるしを付け、しるしが消えるまで回すやり方が、時間対効果としては最も安定します。

在宅のデザインの仕事で、この資格はどこを見られるか

在宅でデザインの仕事を探すときに、発注する側が最も不安に思うのは「納品されたデータがそのまま使えるか」です。絵の好みは事前に作品を見れば分かります。一方で、入稿できるデータかどうかは、作業を頼んで受け取ってみるまで分かりません。文字がアウトライン化されていない、裁ち落としが足りない、リンク画像が入っていない、カラーモードが違う。この種の手戻りは、発注側の予定を直接壊します。

Illustratorクリエイター能力認定試験が証明しているのは、まさにその領域です。指定されたファイル形式での保存、トリムマークと裁ち落としの設定、カラーモードの使い分け、アウトライン化、配置画像の管理はすべて出題範囲に入っています。したがって応募書類に書くときは、資格名だけを並べるのではなく、その資格が何を保証しているのかを1行で添えるほうが伝わります。

書き方の例としては、「Illustratorクリエイター能力認定試験エキスパート合格。作業指示書に沿ったDTPデータの作成と、入稿前のアウトライン化や裁ち落としの確認まで対応できます」といった形です。資格の名前は根拠として置き、できることを自分の言葉で言い切ります。

コーディングまで含めた制作を受けたい場合は、Webクリエイター能力認定試験を組み合わせると、扱える工程の幅が説明しやすくなります。デザインパーツの作成からマークアップまでを1人で通せる人は、小規模な案件で重宝されます。

単価の相場感を知りたい場合は、職種ごとの水準を並べた資料を見るのが手っ取り早いです。制作系の周辺職種として著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ておくと、同じ制作の仕事で報酬の決まり方がどう違うかの比較材料になります。開発寄りの案件に広げるつもりがあるなら、ソフトウェア作成者の年収・単価相場も合わせて眺めておくと、学習の投資先を決める判断が具体的になります。

受けて良かったという声と、意味がないという声の読み分け方

この試験を調べていると、必ず両方の評価に当たります。片方だけを信じると判断を誤るので、それぞれがどの立場からの発言なのかを見分けます。

役に立ったという評価は、多くの場合「手探りだった作業の手順が浮かぶようになった」という趣旨です。主催団体が掲載している受験者の声にも、手探りの作業から手順が見えるようになったという趣旨の声や、検定合格が自分の努力の証明になったという声、Illustratorのスキルが副業につながったという声が並んでいます。独学の人が、自分の操作が正しいかどうかを外から確かめる手段として機能したという話です。

意味がないという評価は、たいてい「すでに実務経験がある人」から出ます。制作会社で何年も入稿データを作ってきた人にとって、この試験の内容はすでに身についています。作品集と実績があれば、資格の記述が結果を変える場面は限られます。この立場からの意見は事実として正しく、その人には当てはまります。ただ、実務経験がない人に同じ結論をそのまま当てるのは筋が違います。

したがって判断はこうなります。制作の実務経験があり、見せられる作品と取引の実績があるなら、受験料と学習時間を他に回す選択は合理的です。実務経験がなく、独学の操作が正しいのか確かめる手段がないなら、出題範囲そのものが学習の地図として役に立ちます。合格の証明は副産物で、本当の価値は「何を覚えるべきかが決まっている」ことにあります。

費用の面も見ておきます。スタンダードの受験料は8,100円、エキスパートは9,100円で、学習教材を合わせても1万円台から2万円台の投資です。標準学習時間は初学者からスタンダードで23時間です。この投資で「Illustratorの基本操作の抜け」を埋められるなら、独学の遠回りを減らす手段としては現実的な価格帯だと言えます。

資格の次に必要になるのは、見せられる作品の並べ方

合格しても、それだけで仕事の依頼が来ることはありません。発注する側が最初に開くのは作品集です。資格は作品集の信頼を補強する材料で、順序が逆になることはありません。

作品集を組むときにつまずくのは、「何を載せるか」ではなく「何を書き添えるか」です。絵だけを並べると、見た人は好みで判断します。条件と結果を添えると、仕事として頼めるかどうかで判断してもらえます。具体的には、想定した用途、指定された寸法とカラーモード、使った機能、かけた時間の4点です。この4つが書かれていると、指示書を読める人だと伝わります。

作品集の構成の考え方そのものは、職種が違っても共通する部分があります。Webライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】では、実績の少ない段階でどう並べるかという観点を整理しているので、載せる順番の決め方の参考になります。

もう1つ、試験勉強の副産物を作品集に使う手があります。実践問題は1テーマを仕上げる形式なので、練習で作ったものは「指示に従って仕上げた制作物」として説明できます。ただし試験問題そのものを公開するのは避け、同じ仕様を自分で書き直したうえで作り直したものを載せます。指示書を自分で書けること自体が、発注側から見て安心できる材料になります。

単価の交渉に進む段階では、作業の範囲を先に決めることが効きます。修正の回数、指示書に書かれていない追加の作業、入稿データの作成をどこまで含めるか。この線引きを最初に文書で決めておくと、あとからの摩擦が減ります。交渉の考え方は業種をまたいで共通する部分があり、Webライターが文字単価を上げる方法|1円→5円にステップアップする戦略【2026年版】で整理している「範囲を決めてから値を決める」という順序は、制作の仕事にもそのまま当てはまります。

長く続く人が何をしているか、という現場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、資格を取ったあとに仕事が続く人と続かない人の差は、技術の高さではないところに出ます。続く人は、指示書に書かれていない前提を先に質問します。続かない人は、書かれたとおりに作って納品し、差し戻されてから初めて確認します。この違いは、出来上がりの品質よりも、発注側の手間の量に直結します。

運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、単発の作業をこなすことよりも「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っています。入稿データの形式を先に聞く、修正の回数を最初に決める、納期の前に中間の確認を入れる。どれも技術の話ではありません。けれども、次の依頼が来るかどうかを決めているのはこちら側です。

もう1つ、報酬の見え方についても触れておきます。同じ制作物でも、間に何社か入る形と、依頼する人と直接やり取りする形では、受け取る額が変わります。中間のマージンが乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が意味を持つのは、表示される金額の派手さではなく、この手取りの質の部分です。20年見てきて確かなのは、手取りが厚い関係のほうが長続きするということです。値切り合いになりにくく、双方に余裕が残るからです。

在宅の制作の仕事を探す段階では、扱える工程を広げておくと選べる案件が変わります。デザインの周辺には、資料作成の支援や業務の自動化といった領域が隣接しています。制作の技術に加えて業務の整理まで引き受けられる人は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のような、ツールの導入を手伝う立場の案件にも手が届きます。制作物を納めるだけでなく、運用の形まで一緒に決められると、関係が単発で終わりにくくなります。

資格と実務のあいだにある差を、数字で把握しておく

最後に、学習の投資先を決めるための整理をしておきます。判断の材料は3つです。試験が保証する範囲、必要な時間と費用、そして在宅の仕事で求められる工程の広さです。

試験が保証する範囲は、これまで見てきたとおり「指示どおりに正確に作れること」です。スタンダードなら基本操作と作業指示書に基づく制作、エキスパートならそれに加えて印刷とWebの前提知識です。逆に保証していないのは、デザインの方向性を決める力と、依頼のやり取りを進める力です。この2つは仕事のなかで身につける領域で、試験の外にあります。

必要な時間と費用は、スタンダードで標準学習時間23時間と受験料8,100円、エキスパートでさらに22時間と9,100円です。初学者が両方を通すと、45時間前後と17,200円が目安になります。1日1時間なら2か月弱の計画です。この規模の投資で操作の抜けを埋められるかどうかが、受けるかどうかの判断軸になります。

在宅の仕事で求められる工程の広さは、年々広がる方向にあります。画像の制作だけを頼む案件よりも、資料の作成、簡単な更新作業、データの整理までを含めて任せたい案件のほうが継続しやすい傾向があります。制作の隣にある領域として、アプリの画面設計や運用の手伝いが挙げられます。制作と実装の両方に手が届く人の需要は、アプリケーション開発のお仕事のような案件の説明を読むと具体的につかめます。

まず手を動かす順番としては、次の形をおすすめします。第1にサンプル問題を開いて出題の形を見る。第2に出題範囲の表で説明できない単元にしるしを付ける。第3に標準学習時間を目安に予定を立て、実践問題を1回通しで解く。第4に受験の経路を決め、公開試験なら申込期間を確認し、随時試験なら近くの会場に問い合わせる。この4手を踏めば、受けるかどうかの判断も含めて2週間で決められます。級種ごとの位置づけをもう一度確かめたい場合は、Illustratorクリエイター能力認定試験の解説と主催団体の日程ページを並べて見ると、申込の締切から逆算した計画が立てられます。

よくある質問

Q. スタンダードとエキスパートはどちらから受けるべきですか?

作業指示書に沿って寸法やカラー指定を落とさず再現した経験があるならエキスパートから狙えます。Illustratorを自由に触った経験しかない場合はスタンダードが順序として自然です。同じ日に併願もでき、標準学習時間は初学者からスタンダードで23時間、スタンダード取得者からエキスパートで22時間が目安とされています。

Q. 受験料はいくらですか?

税込でスタンダードが8,100円、エキスパートが9,100円です。7,800円や8,800円と書いている解説が今も残っていますが現行の金額とは違うため、申し込み前に主催団体の日程ページで確認してください。随時試験の場合は支払方法も会場が決めるので、問い合わせのときに一緒に確かめると手戻りがありません。

Q. 自宅で受けられますか?

公開試験はリモートWebテストによる在宅または在社の受験形式で、海外からでも受けられます。用意するのはインターネット接続環境、受験用のパソコン、スマートフォン、スマートフォンスタンド、静かな個室です。スマートフォンは2台目のカメラとして使うためスタンドが必須になります。認定会場で受ける随時試験も選べます。

Q. 合格の基準はどう決まっていますか?

合計点ではなく部ごとに基準があります。スタンダードは実技問題の得点率65%以上で、かつ実践問題の得点率70%以上です。エキスパートは知識問題と実技問題が65%以上で、かつ実践問題が70%以上です。どちらか一方が基準に届かないと不合格になるため、得意な部だけを伸ばす学習では通りません。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年6月21日最終更新:2026年9月27日
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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方