行政書士の講師・講座の仕事


この記事のポイント
- ✓行政書士 講師 副業を検討している合格者・開業者向けに
- ✓自主開催講座の5つの入口と
- ✓それぞれの値付けの考え方
行政書士の資格を持っている人が「講師 副業」で検索するとき、知りたいことはだいたい3つに絞られます。教える仕事は本当に存在するのか、実務経験がなくても受けられるのか、いくらもらえるのか。結論から書きます。教える仕事は存在し、募集の一部は実務経験を問わず合格者であれば応募できる形になっており、コマ単価は1コマ9,500円前後が公開されている水準です。ただしそれは入口のひとつにすぎず、行政書士が教える側に回る仕事は資格予備校の講義だけではありません。教材制作、企業や団体向けの研修、個人指導、そして自分で講座を作って売る形まで含めると、稼働時間の使い方も報酬の作り方もまったく別物になります。この記事では、その5つの入口を並べて、どれが自分の時間の使い方に合うのかを判断できる形にします。
行政書士が教える側に回る市場は、思っているより広い
「講師」という言葉から真っ先に浮かぶのは資格予備校の教室でしょう。ですが、行政書士の知識を求めて対価を払う相手は、受験生だけではありません。市場を整理すると、需要は次の3層に分かれています。
第1層は受験生向けの市場です。行政書士試験は毎年4万人を超える規模の受験者を集める試験で、受験対策の講座、教材、答案添削、個別指導の需要が安定して存在します。合格者であること自体が資格要件になるため、参入の入口としてはもっとも分かりやすい層です。
第2層は実務者向けの市場です。開業したばかりの行政書士、補助者、士業事務所の事務スタッフ、そして企業の総務・法務担当者が対象になります。許認可の申請実務、外国人の在留手続き、建設業許可の更新、相続関係の書類整備といったテーマは、受験対策とは違って「現場で困っている人」が相手です。単価は受験対策より高く出やすい反面、実務の裏付けが問われます。
第3層は一般の事業者・個人向けの市場です。創業予定者向けの起業セミナー、自治体や商工会議所の相談会に併設される講習、地域の団体向けの終活・遺言のセミナーなどがここに入ります。行政書士会や自治体が主催するものは報酬が控えめな代わりに、実績と信用を積む場として機能します。
この3層のうち、副業として時間を切り売りせずに続けやすいのは第2層と第3層です。理由は後述しますが、第1層のコマ講師は移動と拘束時間が発生しやすく、本業を持つ人にとっては時間単価が伸びにくい構造があるからです。
資格予備校の講師募集は、実務経験を問わない枠がある
まず数字が公開されている求人を見ておきます。大手資格予備校が出している行政書士講座の講師募集は、条件が明快です。
行政書士講座の講義・教材担当講師を募集しています。業務内容は、行政書士講座の講義講師(準備、片付け含む)および教材作成です。行政書士試験合格者であれば、講義や教材作成の経験は問いません。勤務時間は月当たり10時間~20時間以上で、給与は2時間30分の1コマあたり9,500円以上、経験により決定されます。勤務地は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県です。 出典: 求人ボックス
ここから読み取れることが3つあります。1つ目は、応募要件が「試験合格者」であって「登録済み行政書士」ではないこと。つまり合格しただけで登録していない段階でも応募できる募集が実在します。2つ目は、講義経験を問わない枠があること。3つ目は、月10時間から20時間という稼働レンジが提示されていること。会社員が本業と並行するには、この稼働幅が現実的かどうかが分かれ目になります。
正直なところ、この条件を「時給3,800円相当」と単純計算するのは危険です。2時間30分のコマに対して9,500円という提示は、講義の時間だけを見た金額です。実際には初回のレジュメ準備に数時間、受講生からの質問対応、教室までの往復が加わります。担当科目に習熟するまでの数期は、講義1コマにつき準備が3時間から5時間かかることも珍しくありません。2期目以降は準備時間が大きく減るので、時間単価は回数を重ねてから評価するべき仕事です。
求人の中身を読むと、講師業は単独では募集されていないことが多い
もうひとつ、行政書士向けの求人を眺めていて気づくことがあります。「講師」が独立した職種としてではなく、実務職の付帯業務として書かれているケースが多いのです。
行政書士として国際業務を中心に活躍しませんか。在日外国人の在留手続き全般や許認可業務、コンサルティング、申請書類作成、代理申請などを担当します。WEB原稿作成やセミナー講師など、業績拡大への取り組みも行います。大学卒業者で行政書士試験合格者(登録不問)を募集します。 出典: 求人ボックス
セミナー講師とWEB原稿作成が並んで書かれている点が示唆的です。事務所側から見ると、講師業は集客の手段であって独立した収益源ではありません。この構造を理解しておくと、副業として講師をやる意味が変わってきます。講師料そのものを目的にするのか、講師をやることで自分の名前を市場に出して本業の依頼につなげるのか。この2つは戦略がまったく違います。
教える仕事を5つの型に分けて、時間と報酬の関係を見る
ここからは具体的に、行政書士の知識を対価に換える形を5つに分けて見ていきます。それぞれ拘束の仕方が違うので、本業の働き方に合わせて選ぶことになります。
型1: 資格予備校のコマ講師
もっとも分かりやすい形です。予備校と業務委託または非常勤の契約を結び、決められた日程で講義を担当します。報酬はコマ単価で、前掲のとおり2時間30分あたり9,500円以上という水準が公開されています。担当科目が増えたり、答練の解説を任されたりすると単価が上がる仕組みが一般的です。
向いているのは、平日夜や土日の時間帯を固定で空けられる人です。逆に不向きなのは、出張や繁忙期で予定が読めない人。講義は代講の調整が難しく、一度シラバスに載ると休みにくい仕事だからです。オンライン講義に切り替えた予備校も増えていますが、収録型の場合は「収録日は必ず押さえる」という別種の拘束が発生します。
参入の順序としては、いきなり本科の担当を狙うより、単発の講座や模試の解説、質問対応の担当から入るほうが現実的です。予備校側も未知の人にいきなり長期の科目を任せません。
型2: 教材・問題・レジュメの制作
講義に立たず、テキストや問題を作る側に回る形です。前掲の募集でも「講義講師および教材作成」と併記されており、教材制作は講師業とセットで発注される仕事だと分かります。ここが副業としては最も相性がよい領域です。
理由は明快で、納期さえ守れば作業時間を自分で決められるからです。深夜でも早朝でも構わない。予備校の講義のように、特定の曜日と時間に体を拘束されることがありません。報酬の形は、問題1問あたりの単価、レジュメ1本あたりの単価、原稿1文字あたりの単価のいずれかが使われます。相場は依頼元によって幅がありますが、択一式問題の作成と解説執筆で1問3,000円から8,000円程度、テキストの章単位の執筆で1本3万円から10万円程度の提示を見かけます。
注意点として、教材制作は著作権の扱いを契約時に必ず確認してください。制作物の著作権を発注側に譲渡する条件が一般的ですが、譲渡するのか利用許諾にとどめるのか、自分のポートフォリオとして公開してよいのかは案件ごとに違います。ここを詰めずに納品すると、後で「あの教材は私が書きました」と実績に出せなくなります。
在宅で成果物を納める働き方の全体像は、報酬体系や契約形態の違いを含めて著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種別のデータとして整理しています。教材制作は執筆業の単価構造に近いので、目安を持っておくと交渉しやすくなります。
型3: 実務者向けの研修・企業セミナー
こちらは受験生ではなく、現場で困っている人が相手です。具体的には、建設業の総務担当者向けの許可申請と更新の実務、外国人を雇用する企業向けの在留資格の基礎、宅建業や古物商の免許管理、契約書の実務、相続手続きの流れといったテーマが挙がります。
単価は受験対策講座より高く出ます。企業研修は90分から120分で5万円から20万円という提示帯が一般的で、大手企業や業界団体が主催するものではさらに上がります。ただし、この単価は「その業務を実際にやったことがある人」に払われる金額です。実務経験のない領域を教えると質疑応答で行き詰まるので、自分が申請書を書いた分野に絞るのが鉄則になります。
入口としては、商工会議所、業界団体、地域の金融機関、士業向けの研修会社が主な発注元です。いきなり有償の研修を取るのは難しいので、まず行政書士会の支部研修や無料の相談会で登壇実績を作り、それを持って営業する順序が現実的です。
型4: 個人指導・添削
受験生に対する個別指導、記述式の答案添削、学習計画の設計といった1対1の仕事です。オンライン会議ツールが普通になったことで、地方在住でも全国の受講生を取れるようになりました。
報酬は60分5,000円から1万5,000円程度の時間課金か、答案1通1,500円から3,000円程度の出来高が中心です。時間単価だけを見ればコマ講師より高くなることもありますが、集客を自分でやる必要があります。裏を返すと、集客の導線を作れる人にとってはもっとも利益率が高い形です。
このタイプは、キャリア相談や学習相談のスキルとも重なります。相談を仕事にする働き方の全体像はキャリア・副業・人生相談のお仕事にまとまっているので、料金設定や単発相談の設計を考えるときの参考になります。
型5: 自分で講座を作って売る
動画講座を制作してプラットフォームで販売する、月額のコミュニティを運営する、電子書籍として教材を出す。制作の初期投資は大きいものの、売れれば稼働時間と報酬が切り離される唯一の型です。
現実的な数字を出しておくと、動画講座を1本作るのに撮影・編集・スライド制作で40時間から100時間はかかります。販売プラットフォームの手数料は10%から50%と幅が大きく、セール価格での販売を強制される仕組みもあります。「作れば売れる」という性質の市場ではないので、型1から型4で受講者と接点を持ち、質問の中身を蓄積してから作るのが順序として正しいと考えます。
近年はAI活用と組み合わせた講座設計も増えています。教材の下書き、スライドの構成案、練習問題のバリエーション作成にツールを使う実務はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事の領域と重なってきており、講師業とデジタル制作の境界は年々曖昧になっています。
値付けを間違えないための3つの原則
教える仕事でつまずく人の多くは、値付けの段階で判断を誤っています。原則を3つ挙げます。
原則1: コマ単価は「準備時間を含めた総時間」で割り戻す
前述のとおり、講義の報酬は講義時間に対して提示されます。ですが自分の労働時間は準備を含めた合計です。初回に準備4時間、講義2.5時間、移動1.5時間なら合計8時間で、9,500円を割ると時間あたり1,188円です。この数字だけを見て「割に合わない」と判断するのは早計ですが、少なくとも2期目以降の再利用を前提に受けるべきだとは言えます。同じ科目を3期担当すれば準備時間は初回の3分の1以下に落ち、時間単価は跳ね上がります。単発で1回だけ引き受ける講義は、この再利用が効かないので単価を高めに設定するのが筋です。
原則2: 制作物は「文字数」ではなく「調べる時間」で見積もる
教材制作の見積もりを文字単価で受けると、法令改正の確認や判例の裏取りに費やす時間が丸ごと計算から漏れます。行政書士の教材は、法改正への追随が品質そのものです。改正の反映が必要な章と、そうでない章では手間が3倍以上違います。見積もりを出すときは、執筆時間と調査時間を分けて提示し、改正対応が発生した場合の追加費用を契約に書いておくのが安全です。
原則3: 自主開催の講座は「原価ゼロ」に見えるが実際は違う
自分でセミナーを開くと、参加費がそのまま収入に見えます。実際には集客の手間、資料の制作、会場費または配信ツールの費用、当日の運営、事後のフォローが乗ります。参加者10人で参加費5,000円なら売上5万円ですが、そこに至るまでの告知に20時間使っていれば、コマ講師のほうが効率がよかったという結論になります。自主開催は、単発の売上ではなく参加者リストという資産を得るための投資と考えるのが妥当です。
講師業と行政書士法の関係で、誤解しやすいところ
ここは慎重に書きます。教える仕事そのものは、行政書士法が定める業務とは別の活動です。行政書士法(昭和26年法律第4号)は、官公署に提出する書類の作成などを業として行うことについて定めた法律であり、条文はe-Gov法令検索の行政書士法で確認できます。講義や教材制作は、この法律が想定する「他人の依頼を受けて書類を作成する」行為とは性質が違います。
ただし、次の点は自己判断で済ませず、所属予定の行政書士会や依頼元に確認してください。
1つ目は、名称の使い方です。行政書士という名称は法律で保護されており、登録していない人が行政書士を名乗ることには制限があります。試験に合格しただけの段階で、講師のプロフィールにどう書くかは注意が必要です。「行政書士試験合格」と書くのか「行政書士」と書くのかで意味が変わります。実務上は前者が無難とされていますが、最終的な判断は行政書士会に確認するのが確実です。
2つ目は、講義や相談の中で個別具体的な申請の助言に踏み込む場合です。一般的な制度の説明と、特定の人の案件についての助言では、性質が変わり得ます。セミナーの質疑応答で「うちの会社の場合はどうですか」と聞かれたときにどこまで答えるかは、あらかじめ線引きを決めておくべき部分です。個別案件は別途の相談として受けるという運用にしておけば、後から問題になりにくくなります。
3つ目は、登録している行政書士が使用人として勤務しながら講師をする場合の兼業の扱いです。行政書士会の会則や、勤務先の就業規則が関わってきます。この点は所属会ごとに運用が異なるため、一般論で断定できません。
資格そのものの位置づけ、試験制度、登録の流れは行政書士の資格ガイドに整理してあるので、講師のプロフィールを作る前に一度確認しておくと表記のブレを防げます。
最初の1件を取るまでの手順
教える仕事は、実績がない状態からの1件目がもっとも難しい仕事です。順序を示します。
第1段階は、教えられるテーマを1つに絞ることです。「行政書士試験全般」では誰にも刺さりません。「民法の債権各論だけ」「建設業許可の更新手続きだけ」「特定技能の在留資格申請の流れだけ」というレベルまで狭めます。狭いほど、その分野の担当を探している発注者に見つけてもらえます。
第2段階は、教える中身を目に見える形にすることです。スライド20枚程度の講義資料、または解説記事を1本作ります。これが提案時のサンプルになります。予備校の講師募集では模擬講義の選考があることが多いので、資料は必ず作ることになります。
第3段階は、応募先を分けて当たることです。資格予備校の講師募集ページ、業務委託の案件が集まるマッチングサイト、行政書士会の支部の研修担当、地域の商工会議所。この4系統に同時に当たります。予備校は採用サイクルが年に数回しかないため、応募のタイミングを外すと半年待つことになります。
第4段階は、初回の登壇後にアンケートを取ることです。受講者の声は次の営業資料になります。無料の登壇であっても、アンケートを取れれば実績として使えるので、対価は金銭だけではないと考えてください。
在宅で完結する専門職の受注導線としては、システム開発やコンサルティングの分野が先行しています。案件の探し方と提案の作り方の考え方自体は共通する部分が多いので、ITコンサルティング・講師のお仕事にある提案の組み立て方は、士業が研修を提案するときにも応用が利きます。
年収に組み込むときの現実的な考え方
副業としての講師業を年収に足すとき、期待値を作りすぎないほうが健全です。月10時間から20時間の稼働でコマ講師をした場合、コマ単価9,500円で月4コマから8コマとすれば、月額3万8,000円から7万6,000円のレンジになります。年間では45万円から91万円です。教材制作を組み合わせれば上振れしますが、本業を持ちながら安定して出せる範囲はこのあたりだと見ておくのが妥当です。
会社員が副業で報酬を得た場合、給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要になります。講師料は源泉徴収されて支払われることが多く、支払調書の扱いや必要経費の計上方法を含めて、初年度は早めに整理しておくべきです。制度の詳細は国税庁の案内で確認してください。
もうひとつ、税制以外に確認が要るのが勤務先の就業規則です。副業の可否だけでなく、「教育・研修に関する社外活動」を届出制にしている企業は珍しくありません。講師業は名前と顔が外に出る仕事なので、届出を怠ると発覚したときの説明が難しくなります。
講師業と本業を両立させる時間の組み方
教える仕事を副業として続けられるかどうかは、知識の量よりもスケジュールの組み方で決まります。実際に途中で辞めていく人の理由は「教えられなかった」ではなく「時間が読めなくなった」がほとんどです。
まず押さえたいのは、講師業には性質の違う3種類の時間が発生するという点です。1つ目は本番の時間で、講義や研修の当日です。ここは日程が固定され、動かせません。2つ目は準備の時間で、レジュメ作成、レジュメの改訂、法改正の確認が入ります。ここは自分で時間帯を選べます。3つ目は事後の時間で、質問対応、アンケートの集計、次回の改善が入ります。これは細切れに発生し、見積もりから漏れやすい部分です。
この3つのうち、本業と衝突するのは1つ目だけです。したがって両立の設計は「本番の時間をどこまで固定できるか」に集約されます。平日夜を週1回だけ空けられるなら、その枠に収まる案件だけを受ける。土日のどちらか半日を確保できるなら、その枠で完結する単発研修を狙う。逆に、出張が多く予定が読めない働き方をしているなら、本番の時間が存在しない型2の教材制作から入るのが合理的です。
もう1つ、見落とされやすいのが繁忙期の重なりです。資格試験の講座は年間のカリキュラムが決まっており、直前期にあたる時期は質問対応が急増します。本業の決算期や年度末と重なるなら、その期間だけ担当を外してもらう交渉を契約時にしておくべきです。開講後に「今期は忙しいので降ります」と言うと、次の期の依頼が来なくなります。事前に条件として出しておけば、発注側も代講を含めた組み方ができるので、むしろ信用は上がります。
稼働の目安として、本業がフルタイムの会社員である場合、講師業に安定して割ける時間は月20時間が上限だと考えておくのが現実的です。それを超えると準備が雑になり、受講者アンケートに数字として現れます。教える仕事は評価が可視化される仕事なので、無理に本数を増やすより、少ない本数で評価を高めて単価を上げるほうが結果的に稼働あたりの収入は増えます。
運営者として見てきた、教える仕事が続く人の共通点
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、教える仕事で長く続いている人には共通点があります。それは、講義の巧拙ではなく「受け手が何につまずいているかを記録している」という点です。
質問された内容をメモに残し、同じ質問が3回出たらその部分の説明を作り直す。この地味な作業を続けている人は、2年目以降に単価が上がっていきます。逆に、1回作った資料を数年使い回している人は、受講者の満足度が落ちて次の依頼が来なくなります。教える仕事は成果物が残るように見えて、実際には受け手の変化に合わせて更新し続ける仕事です。
もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、講師業を単価の高い仕事だと考えて入ってくる人ほど早く離脱します。長く続く人は、講師業を「自分の専門分野を市場に告知する装置」として使っています。研修で会った企業の担当者から数か月後に許認可の依頼が来る、受講生が開業して業務提携の相手になる。こうした二次的な効果のほうが、講師料そのものより大きくなることが多い。教える仕事の本当の収益は、講義のあとに発生するという構造です。
もうひとつ触れておきたいのが、報酬の受け取り方の構造です。研修会社や仲介事業者を経由すると、発注者が支払った金額から手数料が差し引かれて手元に届きます。発注者が10万円払っているのに受け手には7万円しか届かない、という構図は珍しくありません。直接取引の形をとれる仲介であれば、同じ予算で発注者はより多くの回数を頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が意味を持つのは、金額の大小そのものより「同じ仕事で残る額が変わる」という質の部分です。運営者として長く見てきた実感として、この差は年間の稼働で積み上がると無視できない規模になります。
最後に、講師業と本業の関係について。在宅で完結する専門職の単価水準は職種によって大きく違い、たとえばソフトウェア作成者の年収・単価相場のようにデータとして公開されている職種もあります。行政書士の講師業はまだ市場データが整備されていない領域ですが、公開されている求人条件と、実務者向け研修の提示帯を突き合わせれば、自分の交渉の下限は決められます。値付けを相手に丸投げしないこと。これが教える側に回るときの、最初の一歩だと考えます。
よくある質問
Q. 行政書士の登録をしていなくても講師の仕事は受けられますか?
資格予備校の講師募集には「行政書士試験合格者(登録不問)」と明示された枠が実在します。ただしプロフィールで「行政書士」と名乗る表記については名称の使用に制限があるため、合格のみの段階では「行政書士試験合格」と書くのが無難です。表記の可否は所属予定の行政書士会に確認してください。
Q. 講師の報酬はどのくらいが目安ですか?
公開されている資格予備校の募集では、2時間30分の1コマあたり9,500円以上という水準が提示されています。企業や団体向けの実務研修は90分から120分で5万円から20万円程度、個人指導は60分5,000円から1万5,000円程度が目安です。準備時間を含めた総時間で割り戻して判断してください。
Q. 実務経験がなくても教える仕事はできますか?
受験対策の講義や教材制作は、合格者であれば実務経験を問わない募集があります。一方で企業向けの実務研修は、自分が実際に申請書を作成した分野に限るべきです。経験のない領域を教えると質疑応答で行き詰まり、次の依頼につながりません。
Q. 会社員が副業で講師をする場合、何を確認しておくべきですか?
勤務先の就業規則で副業の可否と届出の要否を確認してください。教育・研修に関する社外活動を届出制にしている企業もあります。また給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要になるため、源泉徴収と必要経費の扱いを初年度のうちに整理しておくことをおすすめします。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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