取締役の重任登記|任期が来た年にやること

前田 壮一
前田 壮一
取締役の重任登記|任期が来た年にやること

この記事のポイント

  • ✓任期が満了した定時株主総会で同じ人を選び直したときに出す登記です
  • ✓再任なら本人確認証明書が不要な点
  • ✓10年任期の会社が陥りやすい忘却までまとめました

まず、安心してください。取締役重任登記は、役員変更の手続きのなかでは穏やかな部類に入ります。人が入れ替わるわけではなく、同じ顔ぶれで続けるための登記だからです。用意する書類も限られています。ただし、この手続きにはひとつだけ厄介な性質があります。忘れやすいのです。任期を10年にしている会社では、前回の登記から次の登記まで10年空きます。その間に担当者が変わり、記録が散り、気づいたときには期限を大きく過ぎている。この記事では、何をいつまでにやるのかと、忘れないための仕組みの作り方を順に見ていきます。

重任とは何か

重任というのは、任期が満了して退任するのと同時に、同じ人がもう一度選ばれて就任することをいいます。退任と就任が同じ日に起きるので、登記簿には「重任」と1行で記録されます。

これが「就任」と区別されるのは、間に空白がないからです。任期が切れた後しばらく空けてから同じ人が選ばれた場合は、退任と就任が別々に記録されます。定時株主総会の終結の時に任期が満了し、その同じ総会で再び選任されて承諾すれば、切れ目なく続くので重任になります。

法務局が公開している申請書様式のページにも、「株式会社役員変更登記申請書(取締役会設置会社・役員の全員が重任)」のように、重任専用の様式が並んでいます。それだけ件数が多い、つまり多くの会社が定期的に通る道だということです。

役員が入れ替わらないのだから登記は要らないのでは、と考えたくなりますが、そうはいきません。任期が満了した時点で、登記簿上の取締役はいったん退任しています。登記簿の記録を実態に合わせるために、重任の登記が必要になります。

任期の数え方を押さえる

会社法332条1項は、取締役の任期を、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定めています。この書き方が分かりにくいので、具体的に置き換えます。

3月決算の会社で、令和6年6月の定時株主総会で取締役を選任したとします。選任後2年以内に終了する事業年度のうち最後のものは、令和8年3月期です。その事業年度に関する定時株主総会は令和8年6月ごろに開かれます。したがって、任期はその総会が終わる時までということになります。

同じ条文の2項が、公開会社でない株式会社について、定款によって任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸ばせると定めています。株式の譲渡に会社の承認が必要な中小企業のほとんどはこれに当たるので、定款で10年にしている会社が多くあります。

監査等委員である取締役や指名委員会等設置会社の取締役には、1年とする読み替えの規定があります。自社がどの形なのかは、定款と登記簿を突き合わせて確認してください。

監査役を置いている会社は、任期がずれる

監査役がいる会社では、取締役と監査役で満了の時期がずれます。会社法336条1項が、監査役の任期を選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定めているためです。取締役の2年より長く設定されています。

同じ条文の2項で、公開会社でない株式会社は、定款によって監査役の任期も選任後10年以内まで伸ばせます。定款で取締役と監査役をそろえて10年にしている会社では、同じ総会で全員が満了するので1件の申請で済みます。一方、取締役だけ10年にして監査役の定めを置いていない会社では、4年と10年がずれていき、20年のあいだに監査役の重任が5回、取締役が2回という数え方になります。

ずれると何が困るかというと、片方の登記だけを出して満足してしまうことです。取締役の重任だけ登記して監査役を忘れると、登記簿には古い監査役の名前が残り続けます。役員の一覧表を作るときは、取締役と監査役を同じ表に並べ、それぞれの満了する総会の年月を書き込んでおいてください。

なお、任期の満了前に退任した監査役の後任として選ばれた人については、定款で定めておけば、前任者の任期の満了する時までを任期にできます。この定めがある会社では、後任の監査役の満了時期を独立に数えないよう注意してください。

自分の会社の満了日を割り出す3つの手順

「うちの取締役の任期はいつまでか」を知るには、3つの情報を集めます。

ひとつ目が、定款に書かれた任期の年数です。2年なのか、10年なのか、その中間なのか。定款の役員の章を見れば書いてあります。定款が見つからない会社は、公証人の認証を受けた原始定款の写しが手元にないか、設立を依頼した専門家に控えがないかを当たってください。

ふたつ目が、登記簿に記録されている就任または重任の日付です。登記事項証明書を1通取れば、役員ごとに原因年月日が載っています。ここが任期の起点です。

みっつ目が、決算期です。任期は「事業年度に関する定時株主総会の終結の時まで」で数えるので、決算期が分からないと満了する総会の時期が決まりません。

この3つがそろえば、満了する定時株主総会が何年の何月ごろになるかは機械的に計算できます。役員が複数いて就任の時期がばらばらなら、人ごとに計算して一覧にします。

登記の期限は、総会の日から2週間

会社法915条1項は、登記されている事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないと定めています。重任の場合、変更が生じたのは定時株主総会の終結の時です。したがって、総会の日から2週間で数えます。

定時株主総会は、決算の承認や配当の決議と一緒に行われるので、経理の繁忙期と重なります。総会が終わってほっとしているうちに2週間が過ぎる、というのはよくある展開です。総会の招集を決めた段階で、登記の期限をカレンダーに入れてしまってください。

役員が複数いて、全員の任期が同じ総会で満了するのであれば、まとめて1件の申請にします。法務局の記載例も「役員の全員が重任」という形で用意されています。

必要な書類は4つか5つ

取締役会を設置している会社で、役員全員が重任する場合、法務局の記載例が挙げている添付書類は次のとおりです。

株主総会議事録が1通。取締役と監査役を選任した総会の記録です。

株主リストが1通。議決権数の上位10名か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主か、どちらか少ないほうについて、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合を記載し、代表者が証明します。

取締役会議事録が1通。代表取締役を取締役会で選定するためです。

就任承諾書が人数分。重任であっても、本人が引き受ける意思を示す書面は必要です。

監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社では、その定めがあることを証する書面が1通。定款、株主総会議事録、または代表取締役が作成した証明書のいずれかを添付します。

委任状が1通。代理人に申請を委任する場合のみです。

取締役会を設置していない会社であれば、取締役会議事録は出てきません。株主総会で代表取締役を選ぶ定款であればその総会の議事録、取締役の互選で選ぶ定款であれば互選を証する書面が該当します。

再任なら、本人確認証明書と印鑑証明書は要らない

重任の手続きが新任より軽くなる理由がここにあります。

商業登記規則61条4項は、取締役の就任による変更の登記の申請書に、就任承諾書に押した印鑑についての市区町村長が作成した証明書を添付すると定めていますが、そこには「再任を除く」という括弧書きが付いています。同じ条の7項が定める本人確認証明書についても、対象は取締役、監査役、執行役の就任による変更の登記で、やはり再任は除かれています。

法務省も本人確認証明書の案内のなかで、対象となる登記申請として取締役等の就任による変更登記の申請を挙げたうえで、再任は除くと明記しています。

つまり、毎回の重任のたびに全役員の住民票や印鑑証明書を集める必要はありません。ここを知らずに、役員全員分の印鑑証明書を取り寄せて手数料を払っている会社があります。1人あたり数百円でも、人数と回数を掛ければ無駄が積み上がります。

ただし、同じ総会で新しい役員を迎える場合、その人については新任なので本人確認証明書か印鑑証明書が必要です。誰が再任で誰が新任なのかを、人ごとに整理してから書類を集めてください。

費用は登録免許税だけ

登録免許税は、役員に関する事項の変更の登記として、申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。登録免許税法の別表にそう定められています。

納付は収入印紙か領収証書です。1万円または3万円分の収入印紙を買い、申請書に付けた貼付台紙に貼ります。貼った印紙に自分で消印を押してはいけません。消印は法務局の職員が行います。収入印紙は郵便局や法務局内の印紙売り場で買えます。

ここでも「1件につき」の数え方が効きます。取締役3人と監査役1人が同じ総会で重任しても、まとめて申請すれば1件分です。人数で増えることはありません。

これに加えて、司法書士に依頼するなら報酬が乗ります。重任は書類の型が決まっているので、事務所ごとの見積もりを比べやすい部類です。2年ごとに必ず発生する費用なので、長い目で見れば比較する価値があります。

10年任期の落とし穴

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

任期を10年にすると、登記の回数が減って費用も手間も減ります。2年ごとに1万円かかるものが、10年に1回で済むわけですから、単純計算では負担が5分の1になります。多くの中小企業が10年を選ぶ理由はここにあります。

ただし、10年というのは人が覚えていられる長さではありません。設立のときに専門家に頼んだ会社では、その専門家との付き合いが途切れていることもあります。経理の担当者が入れ替わり、定款がどこにあるか分からなくなり、気づいたときには11年目だった、という事態が実際に起きています。

そして、登記を怠ったまま放置すると、次の段階が待っています。法務省は毎年、長く登記のない会社を整理する作業を行っています。令和7年度の公告はこう書かれていました。

令和7年10月10日(金)の時点で、最後の登記から12年を経過している株式会社(以下「休眠会社」といいます。)又は最後の登記から5年を経過している一般社団法人若しくは一般財団法人(以下「休眠一般法人」といいます。)は、事業を継続している場合には、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があります。 出典: moj.go.jp

会社法472条1項は、法務大臣の公告後2か月以内に届出も登記もされないときは、その期間の満了の時に解散したものとみなすと定めています。10年任期の会社が重任の登記を忘れると、最後の登記から12年というラインまで、わずか2年しか余裕がありません。実際に事業を続けている会社が、登記を忘れていただけで解散扱いになるというのは、想像より近いところにある話です。

期限を過ぎていることに気づいたら

すでに何年か過ぎていた場合でも、やることは変わりません。速やかに登記を申請します。

登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはありませんが、会社・法人の代表者に対して、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

過料は会社ではなく代表者個人に科されます。金額は法律上100万円以下と幅があり、実際にいくらになるかは裁判所が事情を見て決めます。一般には怠った期間が長いほど重くなる傾向があるとされますが、算定の基準そのものは公表されていないため、金額を断定することはできません。過料の通知が届いたときの対応は、司法書士か弁護士に相談してください。

手続きの面では、過ぎた年数分の総会を遡って整理する必要が出ることがあります。任期が満了していた年の総会で選任の決議がされていなかったのであれば、その間の登記をどう組み立てるかは個別の判断になります。何年も空いている場合は、自社で片付けようとせず専門家に相談したほうが早く済みます。

ここで大事なのは、気づいた時点で止まらないことです。過料を恐れて申請を先延ばしにしても、怠った期間が伸びるだけで、状況はよくなりません。

忘れないための仕組みを作る

10年後の自分に期待するのは無理があります。仕組みで解決します。

ひとつ目が、役員の任期の一覧表です。役員ごとに、氏名、就任または重任の日付、定款で定めた任期の年数、満了する予定の定時株主総会の年月を書きます。これを決算の資料と同じ場所に置いておきます。

ふたつ目が、満了の年の前年に予告を入れることです。カレンダーやタスク管理に「来年の定時株主総会で役員の任期が満了する」という予定を入れておきます。前年に気づけば、総会の議案に選任の件を入れ忘れることがありません。

みっつ目が、登記の記録をまとめて保管することです。申請書の控え、株主総会議事録の原本、完了後の登記事項証明書。この3点をひとつのファイルにまとめ、次の担当者が見て分かる状態にします。

よっつ目が、顧問の税理士や司法書士と任期の情報を共有することです。決算で毎年顔を合わせる相手が任期を把握していれば、会社側が忘れても指摘が入ります。共有するのは、定款の任期の条文と、登記事項証明書の写しで足ります。

任期を2年にするか、10年にするか

そもそも任期を何年にすべきかという問いにも触れておきます。

10年のメリットは、登記の回数と費用が減ることです。デメリットは、忘れるリスクと、役員を任期満了で自然に退いてもらうタイミングが10年に1度しか来ないことです。

2年のメリットは、定期的に役員構成を見直す機会が来ることと、任期満了という穏やかな形で退任してもらえる場面が多いことです。揉めた末に解任するのと、任期の満了で自然に交代するのとでは、登記簿への残り方も社内の空気もまるで違います。デメリットは、2年ごとに費用と手間がかかることです。

家族や創業メンバーだけで運営していて、当面メンバーが変わる見込みがないなら10年でよいでしょう。外部から役員を迎える可能性がある会社や、事業承継を視野に入れている会社なら、短めにしておくほうが動かしやすくなります。任期の変更は定款の変更なので、株主総会の特別決議が必要です。変更した場合の既存の役員の任期の扱いは個別の判断になるため、変えるときは専門家に確認してください。

申請書と、出し方

申請書の骨格はほかの役員変更と同じです。会社法人等番号、商号のフリガナ、商号、本店を書き、「登記の事由」に「取締役、代表取締役及び監査役の変更」のように書きます。

「登記すべき事項」には、役員に関する事項として、資格、氏名、代表取締役なら住所、そして原因年月日を書きます。原因年月日には総会の日付と「重任」を記載します。人数分だけこの固まりを繰り返します。

「登録免許税」に金額を書き、「添付書類」に実際に添える書類の名称と通数を並べます。末尾には会社の本店と商号、代表取締役の住所と氏名を書き、登記所に届け出た印鑑を押します。連絡先の電話番号を忘れずに書いてください。

申請の方法は、通常の書面申請、オンライン申請、QRコード付き書面申請の3つです。法務局は全員重任の場合の操作の手引きを別に用意しているので、自社の状況に合うものを開いてから作業を始めると迷いません。なお、申請から完了までの間は、原則としてその会社の登記事項証明書と印鑑証明書が発行されません。総会の直後は決算関係の手続きが重なりやすいので、証明書が必要になる予定と突き合わせておいてください。

株主リストには誰を、何項目書くのか

添付書類のなかで、いちばん手が止まりやすいのが株主リストです。名前のとおり株主の一覧なのですが、全員を書くとは限りません。

法務省の案内は、登記すべき事項について株主総会の決議が必要な場合、議決権数の上位10名の株主と、議決権割合が3分の2に達するまでの株主のうち、少ないほうを書くとしています。株主が5人しかいない会社なら5人全員。株主が30人いて、上位3人で議決権の7割を持っているなら、その3人だけで足ります。3分の2に達するまでの株主を数えるときは、議決権割合の多いほうから順に足していきます。

書く項目は5つです。株主の氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合。この5点を代表者が証明する形をとります。

●議決権数 上位10名 の株主 ●議決権割合が 2/3に達するまで の 株主 ・・・いずれか 少ない方 の株主について,次の事項を記載した株主リスト (1) 株主の 氏名又は名称 (2) 住所 (3) 株式数 (4) 議決権数 (5) 議決権数割合 ➡ これら5点を代表者が証明 出典: moj.go.jp

数に入れるかどうかで迷う株主もいます。自己株式のように議決権を行使できない株式を持つ株主は除きますが、総会を欠席した株主や、議決権を使わなかった株主は含めます。出席したかどうかではなく、議決権を持っているかどうかで数えるということです。

実際の総会を開かず、書面で全員の同意をとって決議に代える方法をとった会社も、株主リストは必要です。法務省の案内は、株主総会の決議を省略する場合にも添付が要ると明記しています。総会を開いていないから書類も要らない、とはなりません。

様式と記載例はエクセルとPDFの両方が公開されています。株主の顔ぶれが変わらない会社なら、前回のファイルの日付と議決権数を直すだけで済みます。2年後の自分のために、作ったファイルは議事録と同じ場所に残しておいてください。

議事録と就任承諾書に書く中身

株主総会議事録には、開催した日時と場所、出席した株主の議決権の数、議案、決議の結果、議事録を作った取締役の氏名を書きます。重任の場合は、任期の満了により退任することと、同じ人を選任したことの両方が読み取れる書き方にします。選任の決議だけを書いて、任期が満了した事実を落とすと、登記官から補正を求められることがあります。

就任承諾書は、会社の商号、日付、選任された本人の氏名、そして就任を承諾する旨を1行書けば足ります。重任であっても人数分そろえます。議事録のなかに「被選任者は席上その就任を承諾した」と書き、議事録を就任承諾書の代わりに使う運用もありますが、その場合は本人の氏名が議事録に載っていることが前提です。どちらの形をとるかは、申請前に管轄の登記所に確認しておくと確実です。

取締役会を置いている会社では、代表取締役を選び直す取締役会議事録も要ります。こちらは出席した取締役と監査役が署名または記名押印します。押す印鑑の種類は、代表取締役が登記所に届け出た印鑑を押しているかどうかで変わるため、記載例の注意書きを読んでから作ってください。

旧姓を登記簿に併記したいとき

役員の氏名は戸籍の氏名で登記されます。結婚などで姓が変わったあとも旧姓で仕事を続けている人は、登記簿に旧姓を併記するよう申し出ることができます。根拠は商業登記規則81条の2です。

法務省の案内によると、令和4年9月1日から併記できる旧姓の範囲が広がり、登記の申請と同時でなくても、単独で申し出られるようになりました。取締役、監査役、執行役、会計参与、会計監査人、清算人が対象です。詳しい要件と申出書のひな型は添付書面としての本人確認証明書及び旧氏の併記についてのページにまとまっています。

重任の登記は、この申出をまとめて出せる数少ない機会です。同じページには、新任の役員に付ける本人確認証明書として使える書類の例も挙がっています。住民票記載事項証明書、戸籍の附票、運転免許証のコピー、マイナンバーカードの表面のコピーなど。個人番号の通知カードは使えません。運転免許証やマイナンバーカードのコピーを使うときは、本人が「原本と相違がない。」と書いて記名する必要があります。

登記が終わったあとにやること

登記が完了しても、法務局から完了の連絡が来るとは限りません。法務局のサイトに登記完了予定日が掲載されているので、その日以降に登記事項証明書を取って、内容が正しく反映されているかを自分で確かめます。原因年月日と「重任」の文字が入っていれば完了です。

取った証明書は、金融機関、許認可の窓口、継続中の取引先に出す機会があります。必要な通数を最初に数えてからまとめて取ると、窓口に行く回数が減ります。

税務署への届出は、役員の顔ぶれが変わらない重任であれば発生しません。国税庁の異動事項に関する届出の案内が挙げている事項は、事業年度の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号の変更、代表者の変更などです。重任で代表取締役が交代した場合は代表者の変更にあたるので、異動届出書の対象になります。同じ人が続けるなら、登記だけで完結します。

許認可を受けている会社は、そちらの窓口の規則も確かめてください。建設業や宅地建物取引業のように、役員の変更を所管の官庁に届け出る決まりがある業種では、登記とは別の期限が設けられています。登記が終わった日を起点に数えるものが多いため、登記の完了日を控えておくと期限の計算が楽になります。

総会の3か月前から完了までを、日付順に並べる

3月決算で6月下旬に定時株主総会を開く会社を例に、やることを日付の順に置いてみます。

3月下旬、決算期末を迎えた時点で、役員の任期の一覧表を開きます。今年の総会で任期が満了する人がいるかどうかを、ここで確かめます。

4月、定款の役員の章に書かれた任期の年数と、登記事項証明書に載っている原因年月日を突き合わせます。新しい役員を迎える予定があるなら、この時期に本人確認証明書の用意を本人に頼んでおきます。住民票を取るには本人が窓口に行くか郵送を待つ必要があるため、直前に頼むと間に合いません。

5月中旬、取締役会で総会の招集を決めます。議案に役員選任の件を入れるのはこの日です。ここで同時に、総会の日から2週間後の日付を登記の期限としてカレンダーに入れてしまいます。

6月上旬、招集通知を発送します。

6月下旬、総会当日です。議事録、就任承諾書、株主リストは、その日のうちに作り終えるのが安全です。記憶が新しいうちに書いたほうが速く、出席した株主の議決権数も確認しやすいためです。

総会の翌週、収入印紙を買い、申請書を作って法務局に出します。2週間の期限に対して1週間の余裕を残しておけば、書類の不足に気づいても作り直せます。

提出からおよそ1週間から10日後、法務局のサイトに出ている登記完了予定日を確認し、その日以降に登記事項証明書を取ります。原因年月日と重任の文字が入っていれば終わりです。

完了後、許認可を受けている業種は所管の官庁への届出に移ります。代表取締役が交代していた場合は、税務署への異動届出書もこの段階です。

2年任期と10年任期で、10年間の費用はどれだけ違うか

資本金の額が1億円以下で、取締役3人と監査役1人がいる会社を想定して、10年分の費用を数えてみます。専門家の報酬は事務所ごとに違うので、ここでは1回2万円と仮に置きます。

任期を2年にしている会社は、10年のあいだに重任の登記を5回出します。登録免許税が1回1万円なので5万円。完了後の確認と取引先への提出用に登記事項証明書を2通ずつ取ると、書面請求で1通600円ですから、5回分で6,000円。自分で申請するなら合計56,000円です。毎回専門家に頼むと報酬が10万円乗るので、156,000円になります。

任期を10年にしている会社は、この期間に1回です。登録免許税1万円と証明書1,200円で11,200円。報酬を加えても31,200円です。

差額は、自分で申請する場合が44,800円、頼む場合が124,800円。10年で見ればこの程度の差だということです。

ここで注意したいのが、10年任期で登記を忘れた場合の損得です。過料は法律上100万円以下の幅があり、金額は裁判所が事情を見て決めます。1回科されるだけで、10年分の節約額を大きく超える可能性があります。費用だけを理由に10年を選ぶのであれば、忘れない仕組みを同時に作っておくことが前提になります。

なお、登記事項証明書と印鑑証明書はオンラインで請求すると1通あたりの手数料が下がります。登記事項証明書は書面請求の600円に対してオンライン請求で郵送を選ぶと520円、窓口で受け取ると490円。印鑑証明書は書面請求の500円に対して450円と420円です。通数が多い会社ほど差が出ます。

勘違いしやすい5つ

ひとつ目は、顔ぶれが変わらないのだから登記は要らないという思い込みです。任期が満了した時点で登記簿上の取締役はいったん退任しているため、同じ人が続けるとしても登記は必要になります。

ふたつ目は、毎回、役員全員の印鑑証明書や住民票を集めてしまうことです。再任の場合はこれらが要りません。集めているとしたら、手数料と手間をそのまま捨てていることになります。

みっつ目は、登録免許税が人数分かかると考えることです。役員に関する事項の変更は申請1件あたりで数えるので、同じ総会で4人が重任してもまとめて1件です。

よっつ目は、総会を開いていないから株主リストも要らないという判断です。書面で全員の同意をとって決議に代えた場合も株主リストは添付します。

いつつ目は、2週間の期限を申請の準備を始めた日から数えることです。起点は定時株主総会の日です。総会が終わった日を1日目として数えてください。

2年に1度の作業を、仕組みに変える

この市場を20年にわたって運営してきた立場から言うと、重任の登記で困っている会社に足りないのは知識ではありません。仕組みです。やり方はインターネットにも法務局のページにも載っています。それでも忘れるのは、覚えておく責任が誰か1人の頭の中に置かれているからです。

運営者として見てきた限り、これは外部との取引でも同じ構図で起きています。長く続いている関係ほど、更新の時期、請求の締め、成果物の受け渡しといった繰り返しの作業が、人の記憶ではなく手順として置かれています。担当者が代わっても止まりません。反対に、特定の人の段取りに依存している関係は、その人がいなくなった瞬間に止まります。

中間に手数料が乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受け手は手取りが厚くなります。ただしその関係が何年も続くかどうかを決めるのは、単価ではなく、こうした繰り返しの作業が仕組みになっているかどうかです。

社内の繰り返し業務を外部の担い手に定型化して任せる流れは、ここ数年で目に見えて広がりました。どんな業務が外に出ているかはAIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に整理があります。相場観を掴むなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が公的統計に基づく水準を示しています。社内の書類の型そのものを底上げしたいならビジネス文書検定が学習の順番を決める目安になります。会計や決算まわりを外部の専門家と分担する考え方は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】からも見えてきます。

取締役重任登記でやることは、総会で選び直し、2週間以内に4つか5つの書類を出す。それだけです。難しいのは手続きではなく、10年後の自分に思い出させることのほうだと考えてください。

よくある質問

Q. 重任と就任は何が違いますか?

重任は、任期が満了して退任するのと同時に、同じ人が再び選任されて就任することです。定時株主総会の終結の時に任期が満了し、その同じ総会で選び直されて承諾すれば、切れ目がないので登記簿には重任と記録されます。いったん間が空いてから改めて選ばれた場合は、退任と就任が別々に記録されます。

Q. 重任の登記に本人確認証明書は必要ですか?

不要です。商業登記規則61条4項と7項は、いずれも対象を就任による変更の登記としたうえで再任を除くと定めており、法務省の案内でも再任は除くと明記されています。したがって、重任する役員について住民票や印鑑証明書を集める必要はありません。同じ総会で新任の役員を迎える場合は、その人についてのみ必要です。

Q. 任期を10年にしている会社が気をつけることは何ですか?

忘れることです。前回の登記から次まで10年空くため、担当者が代わると記録も記憶も途切れます。最後の登記から12年が経過した株式会社は休眠会社の整理作業の対象になり、法務大臣の公告から2か月以内に登記も届出もしなければ解散したものとみなされます。役員ごとの満了予定を一覧にして保管してください。

Q. 期限を過ぎていた場合でも登記できますか?

できます。期間内に登記を怠っても、そのことだけを理由に申請が却下されることはありません。ただし会社の代表者に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性があります。何年も空いている場合は、その間の総会や決議の整理が必要になることもあるため、自社で処理せず司法書士に相談するほうが確実です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月12日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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