法人設立届出書の記入例|どの欄に何を書くか


この記事のポイント
- ✓法人設立届出書の書き方を欄ごとに解説します
- ✓国税庁の記載要領を確認しながら
- ✓架空の会社の記入例で1枚通して埋め方を追います
法人設立届出書は用紙1枚です。ところが、いざペンを持つと手が止まります。設立年月日はどの日付なのか、事業の目的は定款を全部写すのか、消費税の欄は空欄でいいのか。迷うところはだいたい決まっています。
結論を先に書くと、この書類の大半は登記事項証明書と定款からの書き写しです。自分で判断して決める欄は4つしかありません。事業開始の見込み日、給与支払事務所等の開設届出書を出すかどうか、添付書類の種類、関与税理士の有無です。残りはすでに決まっている事実を転記する作業なので、手元に登記事項証明書と定款さえあれば埋まります。
ここでは国税庁が公開している記載要領を1項目ずつ確認しながら、どの欄に何を書くのかを順番に見ていきます。最後に架空の会社を使った記入例を置いたので、自分の会社に置き換えて使ってください。
用紙をどこで手に入れるか
用紙は国税庁の申告・申請・届出等のページから、法人税の手続一覧をたどって入手できます。内国普通法人等の設立の届出のページに、届出書の様式と記載要領がPDFで並んでいます。印刷して手書きで埋めても、PDFに直接入力してから印刷しても構いません。
税務署の窓口に置いてある用紙をもらってくる方法もあります。設立の届出をしに行くついでに、青色申告の承認申請書や給与支払事務所等の開設届出書の用紙もまとめてもらえば、往復の手間が減ります。
電子で出す場合は用紙そのものが要りません。国税庁の案内はこう書いています。
[提出方法]e-Taxソフトで届出書を作成・提出してください。 ※ e-Taxを初めてご利用になる方は、利用者識別番号を取得する必要があります。 出典: nta.go.jp
e-Taxは国税の手続をインターネットで行う仕組みで、国税電子申告・納税システムのサイトから始めます。法人の場合は法人用の電子証明書が要るので、設立直後に用意するなら、まず法務局で電子証明書を取得するところからになります。紙のほうが早い、という判断も当然あります。
なお、都道府県と市町村に出す分は様式が別です。東京都や神奈川県のように、税務署用、都道府県用、市町村用が1組になった複写式の用紙を配っている自治体もあります。本店所在地の自治体の様式を先に取り寄せておくと、同じ内容を3回書く手間が減ります。
書き始める前に手元に置く3つの資料
書き写す作業なので、写す元が揃っていないと進みません。用意するのは次の3つです。
登記事項証明書、いわゆる登記簿謄本です。設立登記が完了したら法務局で取得します。ここから設立年月日、商号、本店所在地、資本金の額、代表者の氏名を写します。窓口でもオンラインでも取得できます。
定款です。会社の決まりを書いた文書で、事業年度と事業の目的をここから写します。株式会社なら公証役場で認証を受けたもの、合同会社なら自分たちで作ったものです。届出書に添付するのもこの定款の写しなので、コピーを1部余分に取っておきます。
法人番号指定通知書です。登記が完了すると国税庁から郵送されてきます。13桁の法人番号が書かれています。届いていなければ空欄で構いません。記載要領にも、提出日時点で法人番号の指定を受けていない場合は記載不要と書かれています。
印鑑は、実は必須ではなくなりました。税務署に出す届出書の多くで押印欄が廃止されています。様式に押印欄が残っていなければ、そのまま押さずに出せます。
上段の基本情報を埋める
用紙の上のほうには、提出日、提出先の税務署名、納税地、法人名、代表者の情報が並びます。
提出日は、実際に提出する日付です。作成した日ではありません。郵送するなら投函する日、持参するなら持っていく日を書きます。1日や2日ずれても問題になりませんが、設立年月日より前の日付にはなりません。
提出先の税務署名は、納税地を所轄する税務署です。納税地は原則として本店の所在地なので、本店の住所を管轄する税務署を調べて書きます。国税庁のサイトに税務署の所在地を調べるページがあり、郵便番号や住所から所轄の税務署を引けます。隣の区の税務署に出してしまうと回送に時間がかかるので、ここは必ず確認します。
納税地の欄には本店の所在地を書きます。ここで注意したいのが、登記した表記に合わせることです。登記簿が「一丁目2番3号」となっているなら、その表記のまま書きます。普段の郵便で「1-2-3」と書いていても、届出書は登記簿に合わせます。記載要領も、登記してある本店又は主たる事務所の所在地を記載すること、としています。
電話番号は、日中に連絡が取れる番号を書きます。税務署から確認の電話が入ることがあるので、携帯電話でも構いません。
法人名は商号をそのまま書きます。株式会社が前に付くのか後ろに付くのかも登記どおりです。フリガナ欄がある場合は、株式会社の部分を除いた固有名詞部分だけ振るのが一般的な運用ですが、全部振っても差し支えありません。
代表者住所と代表者氏名は、記載要領がはっきり分けて説明しています。代表者住所はその代表者の住所地、つまり自宅の住所です。会社の住所ではありません。ここを会社の住所で埋めてしまう間違いが多いので、注意してください。
登記簿から写す3つの欄
設立年月日、事業年度、資本金。この3つは書き写すだけですが、それぞれ落とし穴があります。
設立年月日について、記載要領はこう書いています。
「設立年月日」欄には、登記簿に記載されている登記年月日を記載してください。 「事業年度」欄には、法令、定款等により定められている会計期間を記載してください。 「設立時の資本金又は出資金の額」欄には、設立時に登記した資本金の額又は出資金の額を記載してください。 出典: nta.go.jp
設立年月日は、定款を作成した日でも、公証役場で認証を受けた日でも、資本金を振り込んだ日でもありません。登記簿に載っている登記年月日です。法務局に申請した日がそのまま登記年月日になることがほとんどですが、思い込みで書かず、登記事項証明書を開いて確認してください。この日付から2か月という提出期限も数えます。
事業年度は、定款で定めた会計期間を書きます。「4月1日から翌年3月31日まで」という形です。1期目が短い会社でも、ここに書くのは通常の事業年度であって、1期目の期間ではありません。1期目がいつ終わるかは、この事業年度の定めから自動的に決まります。
資本金の額は、設立時に登記した額です。会社法では資本金に下限がないので1円でも設立できますが、額が何であれ登記した数字をそのまま書きます。なお資本金が1,000万円以上かどうかで後述の消費税の欄の扱いが変わるので、ここの数字は後ろの欄とセットで見ます。
事業の目的は、定款を全部写さない
定款の目的は10項目、20項目と並んでいることがあります。ここを全部書き写す必要はありません。記載要領の指示はこうです。
定款等に記載されている事業の目的のうちその主なものと、現に営んでいる事業または営む予定の事業の種類を書く。つまり上段には定款の目的のうち主要なものを、下段には実際にやる事業を書く、という二段構えです。定款には将来やるかもしれない事業を幅広く書いておくのが普通なので、実態と定款がずれるのは当たり前です。この欄はそのずれを埋めるためにあります。
たとえば定款の目的が「ソフトウェアの企画、開発、販売」「情報処理サービス業」「インターネットによる広告業」「前各号に附帯関連する一切の事業」となっていて、実際に今やるのが受託開発だけなら、上段には主なものとしてソフトウェアの開発を書き、下段には現に営む事業としてソフトウェアの受託開発と書きます。下段が上段と同じ内容になるなら、同上と書いても構いません。
この欄は、税務署が業種を判定して事業税や消費税の扱いを見るために使われます。実態と違うことを書く理由はないので、素直に今やることを書いてください。あとから事業が広がっても、この欄だけを理由に届出をやり直す必要はありません。
支店・出張所・工場等の欄
支店の欄で迷うのは、登記していない場所を書くのかどうかです。記載要領の答えは明快で、支店の登記の有無に関わらず全ての支店、出張所、営業所、事務所、工場等を記載する、となっています。
つまり登記していないサテライトオフィスも、倉庫として借りている場所も、書きます。ここに書いた場所は、地方税の均等割がかかる場所になり得ます。均等割とは、赤字でも黒字でも事務所があるだけでかかる住民税のことで、事務所がある自治体ごとに発生します。東京都の記載要領には、地方税において均等割の算定期間は原則として設立設置年月日からである、という注記も入っています。
設立直後の会社で支店がなければ、この欄は空欄です。自宅を本店にして他に拠点がないなら、何も書く必要はありません。
逆に、本店以外の場所で継続的に仕事をしているなら、書き漏らさないことです。後から税務調査や地方税の照会で発覚すると、遡って均等割を納めることになります。
設立の形態と、法人成りの場合の書き方
設立の形態の欄は、その会社がどうやってできたかを番号で選ぶ欄です。選択肢には、個人企業を法人組織にした場合、合併により設立した場合、新設分割により設立した場合、現物出資により設立した場合、その他、といった区分が並んでいます。
個人事業主が事業をそのまま会社にした、いわゆる法人成りなら、個人企業を法人組織にした場合に当たります。東京都が配っている法人設立・設置届出書の記載要領には、設立の形態が個人企業を法人組織にした場合であるときは、括弧内に個人企業の時に確定申告書を提出していた税務署名と整理番号を記載する、と書かれています。個人時代の確定申告書の控えを開いて、整理番号を写してください。
ゼロから会社を作った場合は、その他に当たります。ここがいちばん多いパターンです。
合併や分割で設立した会社は、追加の宿題があります。国税庁の記載要領は、設立の形態の区分1が合併、新設分割、現物出資のいずれかである場合には、確定申告の際に、組織再編成に係る合併契約書や分割契約書などの写しと、組織再編成に係る主要な事項の明細書を添付しなければならない、と注記しています。届出書の時点ではなく確定申告の時点の話ですが、最初に知っておかないと決算期に慌てます。
消費税の欄は、資本金1,000万円以上の会社だけが埋める
欄の名前が長くて身構えるのが「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」です。記載要領の説明を引きます。
「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」欄には、設立時の資本金の額又は出資金の額が1千万円以上である場合にその設立年月日を記入してください。この欄に設立年月日を記入した場合には、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要はありません。 出典: nta.go.jp
読み替えるとこうなります。資本金が1,000万円未満なら空欄。1,000万円以上なら設立年月日を書く。そして書けば別の届出書を1枚省ける。
なぜ1,000万円で線が引かれているかというと、消費税の納税義務は2年前の売上で判定するのが原則で、できたばかりの会社には2年前がないため、1期目と2期目は納税義務が免除されるのが基本だからです。ただし資本金が1,000万円以上ある会社は、その免除の対象から外れます。設立時から消費税の申告と納付が必要になります。
この欄を空欄のままにするか埋めるかは、資本金の数字ひとつで自動的に決まります。判断の余地はありません。ただし資本金を1,000万円にするかどうかという判断のほうは、許認可の要件や取引先の与信も絡むため、金額と事情によって結論が変わります。実際の判断は税務署か税理士に確認してください。
自分で決めて書く欄が3つ残る
ここから先が、書き写しではなく自分で決める欄です。
事業開始(見込み)年月日は、設立後に事業を始めた日、またはこれから始める見込みの日を書きます。すでに売上が立っているならその日、まだなら見込みの日付で構いません。厳密な日付を後から問われることはまずありません。
「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無は、有か無を選ぶ欄です。記載要領は、既に別途に提出している場合は「1」を記載してください、と指示しています。注記として、給与等の支払事務を取り扱う事務所を設けた場合には、その事務所等を設けた日から1か月以内に給与支払事務所等の開設届出書を提出しなければならない、とも書かれています。
ここは迷いやすいところです。従業員がいなくても、自分に役員報酬を払うなら「有」です。役員報酬は給与として源泉徴収の対象になるからです。当面は役員報酬を0円にして誰にも給与を払わないなら「無」で構いません。ただし後から役員報酬を出すことにしたら、その時点で給与支払事務所等の開設届出書を出します。
添付書類等の欄は、この届出書に添えたものの番号を選びます。税務署に出す分の添付書類は定款等の写しだけなので、該当する番号を選べば終わりです。
関与税理士の欄は、顧問税理士がいれば氏名と事務所所在地を書きます。いなければ空欄です。用紙のいちばん下にある税理士署名の欄は、税理士または税理士法人がこの届出書を作成した場合にその税理士が署名する欄なので、自分で作ったなら触りません。
架空の会社で1枚通して見る
言葉だけだと分かりにくいので、例を置きます。東京都渋谷区に本店を置き、2026年10月1日に設立した資本金300万円の合同会社を想定します。代表社員は個人事業主から法人成りしたエンジニアで、従業員はいません。
| 欄 | 書く内容 | 写す元 |
|---|---|---|
| 提出日 | 2026年11月10日 | 実際に出す日 |
| 税務署名 | 渋谷税務署長 | 本店所在地の所轄税務署 |
| 納税地 | 東京都渋谷区○○一丁目2番3号 | 登記事項証明書 |
| 法人名 | 合同会社○○ワークス | 登記事項証明書 |
| 法人番号 | 13桁の番号 | 法人番号指定通知書 |
| 代表者住所 | 代表社員の自宅住所 | 本人 |
| 代表者氏名 | 代表社員の氏名 | 登記事項証明書 |
| 設立年月日 | 令和8年10月1日 | 登記事項証明書の登記年月日 |
| 事業年度 | 9月1日から翌年8月31日まで | 定款 |
| 設立時の資本金 | 3,000,000円 | 登記事項証明書 |
| 事業の目的 | ソフトウェアの企画・開発(現に営む事業も同じ) | 定款 |
| 支店等 | 記載なし | 実態 |
| 設立の形態 | 個人企業を法人組織とした場合 | 実態 |
| 消費税の欄 | 空欄 | 資本金300万円のため |
| 事業開始見込年月日 | 令和8年10月1日 | 自分で決める |
| 給与支払事務所の届出 | 有 | 役員報酬を出すため |
| 添付書類 | 定款の写し | 定款 |
| 関与税理士 | 空欄 | 顧問なしのため |
事業年度を9月末ではなく8月末にしているのは、設立月の前月末を決算月にすると1期目が最長の12か月近くになるためです。資本金1,000万円未満の会社は1期目と2期目に消費税の納税義務が免除される扱いなので、1期目を長く取るほどその期間が長くなります。ただし決算作業が繁忙期と重なる設計になっていないかは、別途確かめてください。
書き間違えやすい7か所
実際に書いてみると、つまずく場所はほぼ決まっています。先回りして並べておきます。
設立年月日に定款の作成日を書いてしまう。登記年月日が正解です。登記事項証明書を開いて確認します。
代表者住所に会社の住所を書いてしまう。代表者個人の住所地が正解です。記載要領が明示的に分けています。
本店所在地を普段使いの省略表記で書いてしまう。登記した表記に合わせます。
事業年度に1期目の期間を書いてしまう。定款で定めた通常の会計期間が正解です。
事業の目的に定款の全項目を書き写してしまう。主なものと実際にやることだけで足ります。
資本金1,000万円未満なのに消費税の欄に設立年月日を書いてしまう。該当しないので空欄です。
給与支払事務所等の開設届出書の欄を、従業員がいないという理由で「無」にしてしまう。自分に役員報酬を払うなら「有」です。
提出前に、この7つだけ見直せば、書き直しになる確率はかなり下がります。提出した後に誤りに気づいたら、所轄の税務署に電話して指示を仰いでください。設立当初の届出は税務署側でも法人を登録するための情報として扱われるので、修正の申し出は普通に受け付けてもらえます。
都道府県と市町村の用紙は、欄が少し増える
同じ「法人設立届出書」という名前でも、都道府県と市町村に出す様式は税務署の様式と完全には一致しません。埋める欄がいくつか増えます。東京都の記載要領を見ると、税務署用にはない欄が並んでいるのが分かります。
従業者総数と市内従業者数の欄です。東京都の記載要領は、従業者総数には従業者の総数を、市内従業者数にはこの届出書を提出する各市町村内の従業者数を記載すること、と説明しています。人数は届出年月日の現在で数え、役員、アルバイト、パートタイマーを含めます。社長1人の会社なら1と書きます。
この人数が要るのは、地方税の均等割が資本金等の額と従業者の数の組み合わせで決まるからです。均等割とは、赤字でも黒字でも事務所があるだけでかかる住民税のことです。人数の区切りをまたぐと税額が変わるので、適当に書く欄ではありません。
事業の種類の欄も、都道府県と市町村の用紙にだけあります。東京都の記載要領は、都税事務所および市町村提出用については最下段の事業の種類欄にレ印を付けるよう指示しています。法人事業税の税率が業種で分かれるための欄です。
地方税の申告期限の延長の処分(承認)の有無という欄もあります。設立したばかりの会社にはまず関係がありません。すでに他の道府県で事務所を持っていて、申告期限の延長の承認を受けている法人が、新たに都内に事務所を設けたときに書く欄です。
支店の書き方にも独自のルールがあります。東京都の記載要領は、本店が東京都以外にある法人が都内に2つ以上の支店を持つ場合、法人都民税と事業税の届出や申告の事務を一括して行う支店の名称の前に丸を付け、同じ市町村内に2つ以上の支店を持つ場合はその市町村の法人市町村民税の事務を一括して行う支店の前に三角を付けるよう求めています。窓口を1か所に決めるための印です。
3枚を1回で埋める段取り
税務署、都道府県、市町村。同じ内容を3回書くのは無駄に見えますが、自治体によっては複写式の用紙が用意されています。横浜市が配っている法人設立・開設届出書の記載要領には、この届出書を税務署、県税事務所、市町村提出用にそれぞれ作成し、いずれかの機関に提出すれば、提出のあった機関を通じて他の機関に回付される、と書かれています。1か所に出せば3か所に届く仕組みです。
ただしこれは神奈川県と横浜市の運用であって、全国共通ではありません。税務署と都道府県と市町村にそれぞれ別々に出す自治体もあります。用紙を取り寄せた時点で記載要領を読み、何通必要でどこへ出すのかを確かめてください。
部数にも決まりがあります。東京都の記載要領は、資本金1億円以上の内国普通法人の場合は税務署提出用が2通必要、市町村提出分は支店等の存する市町村ごとに各1通必要、と指定しています。横浜市の記載要領も同じ作りです。支店を3つの市に持っているなら、市町村提出分は3通になります。
添付書類の数え方も忘れがちです。定款の写しは、提出する機関ごとに1通ずつ要ります。税務署と県税事務所と市役所に出すなら、定款のコピーは3部。登記事項証明書は、税務署提出分には不要ですが市町村提出分には必要になるのが一般的なので、法務局で取るときに必要な通数を数えてから窓口に行くと二度手間が防げます。
段取りとしては、登記が完了した日に法務局で登記事項証明書を必要部数まとめて取り、その足で定款のコピーを取り、同じ日に3枚分を書いてしまうのが最も効率的です。提出期限は税務署が2か月、東京都は15日と幅があるので、いちばん短いところに合わせて動けば全部が間に合います。
書類を書く手より、書く前の判断に時間がかかる
ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の視点で、この書類の周辺にある話を書きます。
法人設立届出書そのものは、資料が揃っていれば30分で埋まります。時間がかかるのは、事業年度をいつにするか、資本金をいくらにするか、役員報酬を月いくらに設定するかという、届出書に書く前の判断のほうです。運営者として見てきた限りでは、ここを先に固めずに登記だけ済ませてしまい、届出書の前で止まる人がかなりいます。
そしてもう一つ、法人成りのタイミングを売上だけで決めている人が多い、という傾向もあります。実際に法人にして楽になっているのは、売上より先に取引の形が変わった人です。単発の発注が続くうちは個人のままでも回りますが、年間契約や複数名での受注が入ると、契約の名義と請求の管理が個人の器に収まらなくなります。逆に、売上が大きくても取引が全部単発なら、法人にした分だけ均等割と記帳の手間が増えるだけ、ということが起こります。
報酬の見方も、続いている人ほど額面ではなく手取りで見ています。仲介が何割か抜く仕組みのなかにいると、同じ仕事量でも手元に残る額が変わる。中間マージンが乗らない直接取引なら、発注する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなります。法人化の損得も、同じように手取りベースで計算すると答えが出やすくなります。
自分の単価がどのあたりにいるかを確かめるなら、職種別の相場が参考になります。開発の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場、書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、全国平均と都道府県別の水準が並んでいます。法人成りの前に、いまの請求単価が相場のどこにあるかを見ておくと、役員報酬をいくらに設定するかの目安にもなります。
仕事の幅を広げる方向なら、単価が動いている領域を見ておくのが早い。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は生成AIの導入支援から社内研修までを引き受ける仕事で、企業側の予算が付きやすい分野です。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も技術と事業の両方が分かる人が少なく、単価が落ちにくい傾向があります。受託開発を主軸にするならアプリケーション開発のお仕事が近い領域です。
税金の考え方は、個人事業のときとはっきり変わります。個人時代の申告の感覚を整理しておきたいなら確定申告 メリットを最大化!フリーランスが知るべき節税と還付のコツが土台になりますし、役員報酬を決める前に手元資金の置き場所まで考えるなら【20年で2倍?】毎月10万円の積立投資で資産形成する最強のポートフォリオのような長期の視点も要ります。書類仕事の精度そのものを上げたいならビジネス文書検定、技術側の基礎を客観的に示したいならCCNA(シスコ技術者認定)といった選択肢もあります。
よくある質問
Q. 設立年月日には、どの日付を書けばいいですか?
登記簿に記載されている登記年月日を書きます。定款を作成した日でも、公証役場で認証を受けた日でも、資本金を振り込んだ日でもありません。登記事項証明書を開いて登記年月日を確認し、そのまま書き写してください。提出期限の2か月も、この日から数えます。
Q. 代表者住所には会社の住所を書くのですか?
代表者個人の住所地を書きます。国税庁の記載要領は、代表者住所欄にはその代表者の住所地を、代表者氏名欄には法人を代表する者の氏名を記載する、と分けて説明しています。会社の住所は納税地の欄に書くので、ここに会社の住所を書くと重複してしまいます。
Q. 事業の目的は定款に書いた項目を全部写すのですか?
全部は要りません。定款に書かれた目的のうち主なものと、現に営んでいる事業または営む予定の事業の種類を書きます。定款には将来やるかもしれない事業も広く書いてあるのが普通なので、実際にやることだけを下段に書けば足ります。上下段が同じ内容なら同上と書いても構いません。
Q. 消費税の欄は空欄のままでいいですか?
設立時の資本金が1,000万円未満なら空欄で構いません。1,000万円以上の場合だけ設立年月日を記入します。この欄に設立年月日を書けば、消費税の新設法人に該当する旨の届出書を別途提出する必要がなくなるので、該当する会社は必ず埋めてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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