法人設立届出書を出す先|税務署と都道府県と市町村の3か所

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
法人設立届出書を出す先|税務署と都道府県と市町村の3か所

この記事のポイント

  • ✓法人設立届出書の提出先は税務署
  • ✓自分の所轄をどう調べるか
  • ✓支店を出したときの扱いまで一次資料で確認して整理しました

法人設立届出書をどこに出すのか。税務署だと思っている人が多いのですが、それは3分の1でしかありません。

会社にかかる税金は、国に納める法人税と、都道府県に納める法人事業税および法人住民税の道府県民税分、市区町村に納める法人住民税の市町村民税分に分かれています。徴収する主体が3つに分かれているので、届出も3か所に出します。税務署に出しただけで終わらせると、都道府県と市町村への届出が漏れたまま事業年度を迎えることになります。

ここでは、それぞれの窓口をどう特定するか、名前が自治体ごとにどう違うか、期限がどれだけばらつくか、東京23区だけなぜ例外になるかを、公式の案内で確認しながら整理します。

3か所の窓口と、それぞれが見ている税金

まず全体像です。届出先と、その窓口が扱っている税金を並べます。

提出先 扱う税金 書類の名前の例
税務署 法人税、消費税、源泉所得税 法人設立届出書
都道府県税事務所 法人事業税、法人住民税の道府県民税分 法人設立・設置届出書、法人設立等申告書
市区町村の税務担当課 法人住民税の市町村民税分 法人設立・設置届出書、法人の設立申告書

国税庁の手続案内は、税務署への提出先をこう書いています。

[提出先]納税地の所轄税務署長(税務署の所在地については、国税庁ホームページの「組織(国税局・税務署等)」の「税務署の所在地などを知りたい方」をご覧下さい。) [提出時期]法人設立の日(設立登記の日)以後2月以内 出典: nta.go.jp

書類の名前が3か所で少しずつ違う点に注意してください。税務署は法人設立届出書、東京都は法人設立・設置届出書、大阪府は法人設立等申告書です。同じ趣旨の届出でも名称と様式が異なるので、税務署の用紙をコピーして都道府県に出すことはできません。

税務署は「納税地の所轄」で決まる

税務署の所轄は、納税地によって決まります。納税地は原則として本店の所在地です。つまり登記した本店の住所を管轄する税務署が提出先になります。

自分の所轄がどこかを調べるには、国税庁の国税局・税務署を調べるのページを使います。郵便番号から検索する欄と、都道府県と住所から検索する欄、地図から探す方法の3通りが用意されています。本店の郵便番号を入れれば、所轄の税務署名と所在地が出ます。

同じ市内でも税務署が分かれていることは珍しくありません。東京23区だけで税務署は複数あり、1つの区に2つの税務署がある場合もあります。「たぶんここだろう」で送ると、回送されて到着が遅れます。郵便番号を入れる30秒を惜しまないでください。

税務署の開庁時間も、国税庁の案内に書かれています。8時30分から17時まで。土日祝日は窓口が閉まっていますが、送付するか、税務署の時間外収受箱に投函すれば提出できます。期限日が土曜日でも、収受箱に入れておけば間に合います。

なお、届出書を出した後に本店を移転した場合は、この届出書を出し直すのではなく異動届出書を使います。提出先は異動する前の納税地を所轄する税務署長です。移転先の税務署ではありません。ここも間違えやすいところです。

都道府県の窓口は、名前が自治体ごとに違う

都道府県の窓口は、その都道府県が置いている税の事務所です。ところが名前が統一されていません。

東京都は都税事務所です。都税支所と、島しょ部の支庁も含まれます。大阪府は府税事務所。神奈川県や多くの県は県税事務所。北海道は道税事務所で、札幌なら札幌道税事務所です。呼び名は違っても役割は同じで、法人事業税と法人住民税の道府県民税分を扱っています。

探し方は、都道府県名と「県税事務所」または「法人設立 届出」で公式サイトを引くのが早い。多くの自治体が、管轄区域の一覧をサイトに載せています。本店の住所がどの事務所の管轄に入るかを確認してから出します。

期限は自治体ごとに違います。地方税の届出は各自治体の条例で決まるからです。東京都主税局の案内はこう書いています。

法人を設立した場合、都内に初めて支店等を設置した場合、法人設立・設置届出書を所管の都税事務所(都税支所)・支庁に提出してください(東京都都税条例第26条第1項、都税条例規則第12条の2)。 2 申告期限 事業を開始した日から15日以内に申告をお願いします。 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp

15日です。税務署の2か月と比べると、ずいぶん短い。東京都に本店を置く会社は、ここに合わせて動く必要があります。

同じ東京都の案内には、必要書類として法人設立・設置届出書と定款や寄附行為、規約等の写しが挙がっており、東京都への提出用紙は「その2(都税事務所・支所提出用)」のみ、と注記されています。複写式の用紙のうち都税事務所に渡すのは2枚目だけ、という意味です。

他の府県も見ておきます。大阪府は法人を設立した日から2か月以内に府税事務所へ法人設立等申告書を提出と案内しています。神奈川県は事業を開始した日から2か月以内に法人設立・開設届出書を所管の県税事務所へとしており、県内に支店を開設した場合は開設の日から1か月以内と、設立とは別の期限を置いています。

市区町村の窓口と、東京23区だけの例外

市区町村の窓口は、市民税課、法人市民税担当、税務課など、自治体によって名前が違います。政令指定都市では税務を担当する専門の部署や事務所が置かれていることもあります。横浜市が配っている記載要領には、市町村役場への提出について、横浜市の場合は横浜市法人課税課、川崎市の場合はかわさき市税事務所、という具体名が書かれています。

期限もばらばらです。名古屋市は市内に法人を設立または事務所等・寮等を新設または廃止することとなった日から30日以内。札幌市は市内に新たに法人を設立した場合は設立した日から2月以内、支店や営業所、出張所を設置した場合は設置した日から1月以内としています。

そして東京23区だけは、市区町村への届出そのものがありません。東京都主税局の説明はこうです。

東京都23区内の法人は都の特例として、市町村民税相当分もあわせて都民税として所管の都税事務所に申告して納めます。市町村にある法人は都税事務所(都税支所)・支庁に都民税を申告して納めるほかに、各市役所・町村役場に市町村民税を申告して納めます。 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp

つまり本店を渋谷区や港区に置いたなら、税務署と都税事務所の2か所で完結します。区役所に行く必要はありません。一方、同じ東京都でも武蔵野市や八王子市のような市部に本店を置くと、都税事務所と市役所の両方に出します。23区か市部かで手間が変わるのは、この特例があるからです。

提出先ごとの期限を並べて見る

主要な自治体の期限を1つの表にまとめます。実際の期限は条例改正で変わる可能性があるので、最終的には提出先の公式サイトで確認してください。

提出先 期限 起算日
税務署(全国共通) 2か月以内 設立登記の日
東京都(都税事務所) 15日以内 事業を開始した日
神奈川県(県税事務所) 2か月以内 事業を開始した日
大阪府(府税事務所) 2か月以内 法人を設立した日
名古屋市 30日以内 設立または新設の日
札幌市 2か月以内 設立した日

起算日にも差があるのが分かります。税務署は設立登記の日、東京都と神奈川県は事業を開始した日、大阪府は法人を設立した日です。登記してから事業を始めるまでに間が空く会社だと、この違いで締め切りが数週間ずれます。迷ったら、登記の日を起算日として最も短い期限に合わせておけば、どの窓口にも間に合います。

実務的な段取りとしては、登記が完了したら3か所分をまとめて作り、いちばん短い期限に合わせて一気に出してしまうのが安全です。期限が長いほうを後回しにすると、たいてい忘れます。

支店を出したら、その都道府県と市町村にも出す

提出先は設立時だけの話ではありません。支店や営業所を新しい都道府県や市町村に出すと、その自治体への届出が発生します。

東京都の案内は、法人を設立した場合と、東京都以外に本店のある法人が都内に初めて支店等を設置した場合を、同じ届出書で扱っています。神奈川県も、県内に事務所を開設した場合は開設の日から1か月以内に法人設立・開設届出書を提出するよう求めています。札幌市は市内に支店を設置した場合を1月以内としています。

ここで言う支店は、登記した支店だけではありません。国税庁の記載要領は、届出書の支店、出張所、工場等の欄について、支店の登記の有無に関わらず全ての支店、出張所、営業所、事務所、工場等を記載すること、としています。登記していない作業場や、継続的に使っている事務スペースも対象になり得ます。

なぜここが厳しく見られるかというと、事務所があるだけでかかる法人住民税の均等割が、事務所のある自治体ごとに発生するからです。東京都の記載要領には、地方税において均等割の算定期間は原則として設立設置年月日からである、という注記も入っています。届出をしていなくても課税されるので、放っておくと後から遡って納めることになります。

持参、郵送、電子。3つの出し方

出し方は3通りあります。

持参は、税務署や都税事務所の窓口に直接持っていく方法です。その場で不備を指摘してもらえるのが最大の利点で、初めて作る会社には向いています。控えを持っていけば受付印を押してもらえます。

郵送は、期限が迫っているときや窓口が遠いときに使います。控えが欲しいなら、同じ書類をもう1部と、切手を貼った返信用封筒を同封します。税務署の閉庁日でも、送付か時間外収受箱への投函で提出できます。

電子は、国税と地方税で仕組みが分かれています。国税は国税電子申告・納税システム、地方税は地方税ポータルシステムです。どちらも初回は利用者の登録と電子証明書の準備が要ります。どの手続が電子で出せるかは自治体ごとに違うので、提出先の案内を確認してください。

自治体によっては、複写式の用紙で手間を減らす運用をしています。横浜市の記載要領には、この届出書を税務署、県税事務所、市町村提出用にそれぞれ作成し、いずれかの機関に提出すれば、提出のあった機関を通じて他の機関に回付される、と書かれています。1か所に出せば3か所に届く仕組みです。ただしこれは神奈川県と横浜市の運用であって全国共通ではありません。用紙を取り寄せた時点で記載要領を読んでください。

本店を自宅にした場合と、レンタルオフィスの場合

提出先は本店の所在地で決まるので、本店をどこに置くかが窓口を決めます。

自宅を本店にした場合、提出先は自宅の住所を管轄する税務署、都道府県税事務所、市区町村です。自宅が賃貸なら、事業用に使ってよいかを契約書で確認しておく必要がありますが、それは届出とは別の話です。届出の観点では、登記した住所がそのまま基準になります。

レンタルオフィスやシェアオフィスを本店にした場合も同じで、その住所を管轄する窓口に出します。ここで注意したいのは、自宅と本店が別の自治体にあるケースです。本店をレンタルオフィスに置き、実際の作業は自宅でしている場合、自宅も事務所とみなされる可能性があります。事務所とみなされれば、そこにも均等割がかかります。

判断が微妙な場合は、自分で決めずに都道府県税事務所と市区町村に電話で確認してください。地方税の事務所の判定は、設備があるか、人がいるか、継続して事業が行われているか、といった実態で見られます。金額や事情によって結論が変わるので、断定できる話ではありません。

バーチャルオフィス、つまり住所だけを借りる形態も同じで、実態がどう見られるかは個別の判断になります。登記はできても、後から均等割の課税対象と判定される可能性は残ります。

税務署の中でも、書類によって出す先が変わる

税務署は1か所だと思いがちですが、設立時に出す書類のなかには、法人設立届出書とは別の税務署が提出先になるものがあります。

法人設立届出書と青色申告の承認申請書は、どちらも納税地の所轄税務署長に出します。納税地は原則として本店の所在地なので、本店を管轄する税務署です。

ところが給与に関する書類は違います。国税庁の案内は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書について、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ提出すること、移転の場合には移転前の事務所等の所在地の所轄税務署へ提出すること、としています。提出期限は開設、移転または廃止の事実があった日から1か月以内です。

[提出先]給与支払事務所等の所在地の所轄税務署(移転の場合には、移転前の事務所等の所在地の所轄税務署)へ提出してください。 [提出時期]開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内に提出してください。 出典: nta.go.jp

本店と給与の事務所が同じ場所なら、結果として同じ税務署になります。ただし本店をレンタルオフィスに置き、給与計算は別の場所でやっている、というケースでは提出先が分かれます。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書も同じで、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ提出することになっています。この申請は、給与を払う人が常時10人未満の会社が、毎月の源泉所得税の納付を年2回にまとめられる制度です。提出時期の定めはなく、原則として提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。

まとめると、税務署に出す書類の提出先は2系統あります。法人税と消費税に関するものは納税地の所轄税務署。給与と源泉所得税に関するものは給与支払事務所等の所在地の所轄税務署。多くの会社では同じ税務署になりますが、同じだと決めつけずに1度確認してください。

年金事務所とハローワークも提出先になる

税金の窓口が3か所あるという話をしてきましたが、会社を作ると税金以外の役所にも届出が発生します。そしてこちらのほうが期限は短い。

健康保険と厚生年金保険の届出は、事業所の所在地を管轄する年金事務所です。法人は社長1人の会社であっても適用事業所になります。日本年金機構が配っている新規適用届の案内には、この届出は事実発生から5日以内に事業主が行わなければならない、と書かれています。税務署の2か月とは比べものにならない短さです。

添付書類として法人の登記簿謄本が必要で、しかも提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものに限られます。詳しい様式は日本年金機構の適用関係届書のページで確認できます。

従業員を雇うなら、労働保険の窓口も加わります。厚生労働省の案内によると、労働保険の適用事業になったときは、まず労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署または公共職業安定所に提出し、その年度分の労働保険料を概算保険料として申告・納付します。概算保険料申告書の期限は、保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内です。

雇用保険については、労働局が配っている案内に具体的な日数が示されています。労働保険保険関係成立届は適用事業に該当した日から10日以内で、一元適用事業所なら労働基準監督署へ。雇用保険適用事業所設置届は適用事業に該当した日の翌日から10日以内で、事業所の所在地を管轄するハローワークへ。設置届には労働保険保険関係成立届の事業主控と、原則として登記事項証明書を添えます。順番が決まっていて、先に労働基準監督署、その後にハローワークです。

従業員を雇わない会社なら、労働保険の届出は発生しません。役員だけの会社は労災保険と雇用保険の対象外だからです。ただし健康保険と厚生年金保険は役員1人でも必要なので、年金事務所への届出は避けられません。

提出先を1枚のチェックリストにする

設立直後にやることを、窓口ごとに並べます。期限の短い順です。

年金事務所へ、健康保険・厚生年金保険新規適用届と被保険者資格取得届。事実発生から5日以内。登記簿謄本を添付。

労働基準監督署へ、労働保険保険関係成立届。従業員を雇う場合のみ。適用事業に該当した日から10日以内。

ハローワークへ、雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届。従業員を雇う場合のみ。翌日から10日以内。

都道府県税事務所へ、法人設立・設置届出書。東京都は15日以内、神奈川県と大阪府は2か月以内。定款等の写しを添付。

市区町村へ、法人設立の届出。名古屋市は30日以内、札幌市は2か月以内。東京23区は不要。

税務署へ、法人設立届出書と青色申告の承認申請書、必要に応じて給与支払事務所等の開設届出書。法人設立届出書は2か月以内、給与の届出は1か月以内、青色申告は設立から3か月を経過した日と1期目の末日の早いほうの前日まで。

こうして並べると、いちばん急ぐのは税務署ではなく年金事務所だと分かります。登記が完了した日に法務局で必要な通数の登記事項証明書を取り、まず年金事務所へ向かう。その週のうちに都道府県税事務所と市区町村。税務署は2か月あるので最後で間に合う。この順番で動けば、どの期限にも余裕を持って収まります。

出す先を間違えたらどうなるか

隣の税務署に出してしまった、県税事務所の管轄を取り違えた。こうした間違いは実際に起こります。

結論から言うと、致命的にはなりません。多くの場合、受け取った側が正しい窓口へ回送してくれます。ただし回送には時間がかかるので、期限ぎりぎりに出すと、到着が期限を過ぎる可能性があります。期限に余裕を持って出すことが、結局いちばんの対策です。

出し忘れた場合はどうか。法人設立届出書そのものに罰則はありません。気づいた時点で出せば受け付けてもらえます。ただし、税務署への届出を忘れると、一緒に出すはずだった青色申告の承認申請も忘れがちです。青色申告の承認申請には期限があり、設立の日以後3月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までと定められています。ここを過ぎると、その事業年度は青色申告ができません。初年度の赤字を繰り越せなくなるのは痛い。

都道府県や市町村への届出を忘れた場合も、届出がないこと自体への罰則は一般的にありませんが、均等割は事務所がある限り発生します。後から発覚すると、遡って納めることになります。届出をしていないから課税されない、ということはありません。

出さなくても怒られないが、出さないと損をする書類

ここまでは「出さなければならない」書類の話でした。設立のときに動く書類には、もう1つの系統があります。出さなくても督促は来ないが、出していないと使える制度が使えなくなるものです。

代表格が青色申告の承認申請書です。国税庁は、必要に応じて提出する書類として青色申告の承認申請書を挙げ、その期限を次のように示しています。

設立第1期目から青色申告の承認を受けようとする場合の提出期限は、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までです。 出典: nta.go.jp

期限を1日過ぎると、その期は青色申告ができません。1期目に赤字が出ても、その赤字を次の期以降の黒字と相殺する道が閉じます。設立してすぐの会社は赤字になることが多いので、ここを落とすと実際に払う税金の額が変わります。決算月を設立から3か月以内に置いた会社では期限が前に来るので、登記が終わった時点で法人設立届出書と一緒に出してしまうのが確実です。

ほかにも、期限が決まっている申請がいくつかあります。役員に賞与のような形で払う予定があるなら、事前確定届出給与に関する届出書があり、設立の日以後2か月を経過する日までが期限です。決算から2か月では申告が間に合わないと分かっている会社は、定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書を、適用を受けたい事業年度の終了の日までに出します。減価償却資産の償却方法の届出書と棚卸資産の評価方法の届出書は、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。

これらはどれも、出さなければ原則の扱いになるだけで、罰則はありません。だからこそ忘れます。設立の書類を作るときに、自社に当てはまるものだけを選んで同じ封筒に入れてしまうのが現実的な対処です。どれが当てはまるかは事業の内容で変わるので、判断がつかないものは税務署の法人課税部門か税理士に確認してください。

設立の日から1期目の申告までを、日付順に並べる

窓口ごとに期限を覚えるより、時間の並びで持つほうが抜けません。3月決算で、社長1人、従業員を雇う予定がある会社を例に、設立登記が完了した日を0日目として並べます。

0日目。登記が完了します。ここから全部の期限が動き始めます。まず登記事項証明書を数通取ります。年金事務所は発行から90日以内のものを求めるので早めでよいのですが、あとで足りなくなるより多めに取っておくほうが楽です。

5日目まで。健康保険と厚生年金保険の新規適用届を年金事務所に出します。全部の窓口のなかで、いちばん短い期限です。

10日目まで。従業員を雇うなら、労働保険の保険関係成立届を労働基準監督署に出し、そのあとで雇用保険適用事業所設置届をハローワークに出します。順番が決まっているので、労働基準監督署の控えを受け取ってからハローワークへ行きます。

登記の直後に事業を始める会社では、ここに東京都の期限が重なります。都税事務所への法人設立・設置届出書は、事業を開始した日から15日以内です。都道府県のなかで最も短いので、東京以外の会社でもこの日に合わせておけば、どこにも間に合います。

1か月目まで。給与を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書を出します。源泉所得税の納付を年2回にまとめたいなら、納期の特例の承認に関する申請書も一緒に出します。

2か月目まで。法人設立届出書を税務署に、定款の写しを添えて出します。市区町村への届出も、多くの自治体はこの範囲に収まります。

設立の日以後3か月を経過した日と1期目の決算日のうち、早いほうの前日。青色申告の承認申請書の期限です。3月決算で1月に設立した会社なら、決算日の前日である3月30日が期限になります。

決算日。1期目が終わります。

決算日から2か月以内。法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税の申告と納付です。赤字であっても法人住民税の均等割は発生します。消費税は、資本金の額や売上の状況によって1期目から納税義務が出る場合があります。

均等割は、赤字でも納める税金です。都道府県の分と市区町村の分に分かれ、資本金の額と従業者の数で段階が決まります。金額は自治体ごとに条例で定めるので、自社の額は都道府県税事務所と市区町村の課税課のページで確かめてください。1期目が数か月しかない会社では、月割りで計算した額になります。

この並びを1枚の紙にして、日付を自社の設立日に置き換える。それが設立後にやるべき事務の全体です。窓口の名前ではなく日付で並べておくと、どこを通過してどこが残っているかが一目で分かります。

窓口の数より、その後の取引の形で決まる

ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の視点で書きます。

提出先が3か所あることを面倒だと感じるのは自然です。ただ、運営者として見てきた限りでは、この3か所が負担になって法人化を諦めた人はほとんどいません。止まるのはもっと手前で、会社を作った後にどう仕事を取るかが決まっていない段階です。

法人にして実際に楽になっているのは、売上が増えた人ではなく、取引の形が変わった人です。単発の発注が続くうちは個人のままでも回ります。年間契約や複数名での受注が入ってくると、契約の名義と請求の管理が個人の器に収まらなくなる。そこが分岐点です。逆に、売上が大きくても取引が全部単発なら、法人にした分だけ均等割と記帳の手間が増えるだけ、ということが起こります。届出先が3か所に増えるというのは、その手間の一部です。

もう一つ、長く続いている人ほど、報酬を額面ではなく手取りで見ています。仲介が何割か抜く仕組みのなかにいると、同じ仕事量でも手元に残る額が変わる。中間マージンが乗らない直接取引なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなります。法人化の損得も、同じ見方で計算すると答えが出やすい。

自分の請求単価が相場のどこにあるかを確かめてから決めると、役員報酬の設定もぶれません。開発の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場、書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、全国平均と都道府県別の水準が並んでいます。都道府県別に見られるので、本店をどこに置くかを考えるときの材料にもなります。

仕事の幅を広げる方向なら、単価が動いている領域を見ておくのが早い。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は生成AIの導入支援から社内研修までを引き受ける仕事で、企業側の予算が付きやすい分野です。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も技術と事業の両方が分かる人が少なく、単価が落ちにくい傾向があります。受託開発を主軸にするならアプリケーション開発のお仕事が近い領域です。

税金の考え方は、個人事業のときとはっきり変わります。個人時代の申告の感覚を整理しておきたいなら確定申告 メリットを最大化!フリーランスが知るべき節税と還付のコツが土台になりますし、役員報酬を決める前に手元資金の置き場所まで考えるなら【20年で2倍?】毎月10万円の積立投資で資産形成する最強のポートフォリオのような長期の視点も要ります。書類仕事そのものの精度を上げたいならビジネス文書検定、技術側の基礎を客観的に示したいならCCNA(シスコ技術者認定)といった選択肢もあります。

よくある質問

Q. 法人設立届出書は税務署だけに出せばいいですか?

税務署だけでは足りません。会社にかかる税金は国の法人税、都道府県の法人事業税と道府県民税、市区町村の市町村民税に分かれているため、税務署、都道府県税事務所、市区町村の3か所に出します。例外は東京23区に本店を置く会社で、この場合は市町村民税相当分も都が課税するため税務署と都税事務所の2か所で完結します。

Q. 自分の所轄税務署はどうやって調べますか?

国税庁のサイトにある国税局・税務署を調べるページで、本店の郵便番号または住所を入力すれば所轄の税務署が分かります。地図から探すこともできます。同じ市内でも税務署が分かれていることが多いので、思い込みで送らず必ず検索してください。間違えた場合も回送されますが、到着が遅れます。

Q. 都道府県と市町村の期限は税務署と同じですか?

違います。税務署は設立登記の日から2か月以内で全国共通ですが、地方税の届出は各自治体の条例で決まります。東京都は事業を開始した日から15日以内、名古屋市は設立の日から30日以内、大阪府と神奈川県と札幌市は2か月以内です。いちばん短い期限に合わせて3か所まとめて出すのが安全です。

Q. 支店を別の市に出したら、そこにも届出が必要ですか?

必要です。支店や営業所を新しい都道府県や市町村に設けると、その自治体への届出が発生します。登記した支店だけでなく、登記していない営業所や作業場も対象になり得ます。事務所があるだけでかかる法人住民税の均等割はその自治体ごとに発生するため、届出をしていなくても課税は起こります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月18日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方