法人設立届出書に付ける書類|定款の写しと登記事項証明書


この記事のポイント
- ✓法人設立届出書の添付書類を提出先ごとに整理しました
- ✓税務署は定款の写し1枚
- ✓市町村は登記事項証明書も必要です
法人設立届出書に何を添えるのか。ここで混乱が起きるのは、ネット上の情報が古いままだったり、提出先の違いを飛ばして書かれていたりするからです。
結論を先に書きます。税務署に出す分の添付書類は定款の写し1点だけです。登記事項証明書は要りません。一方、市町村に出す分では登記事項証明書が求められるのが一般的で、都道府県税事務所の分は自治体によって扱いが分かれます。つまり「法人設立届出書の添付書類」という1つの答えは存在せず、どこに出す分の話なのかで変わります。
ここでは国税庁と各自治体が公開している記載要領を確認しながら、提出先ごとに何を何部添えるのか、その書類をどこでいくらで手に入れるのか、添付そのものを省く方法があるのかを整理します。
税務署に出す分は、定款等の写しだけ
国税庁の手続案内は、添付書類を1行で済ませています。
[添付書類]定款、寄付行為、規則又は規約の写し 出典: nta.go.jp
4つ並んでいますが、株式会社と合同会社に関係するのは最初の定款だけです。寄付行為は財団法人の、規則や規約は法人格のない団体などの、それぞれ会社の定款に当たる文書を指しています。普通の会社を作ったなら、定款のコピーを1部添えれば添付は完了です。
国税庁が公開している法人設立届出書の記載要領にも、同じことが書かれています。この届出書は、定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるものの写しを添付して提出してください、という書き出しです。原本を渡す必要はありません。コピーで足ります。
原本証明、つまり「これは原本と相違ありません」と書いて代表者印を押す作業も、税務署の添付では求められていません。単純にコピーを添えます。
ページ数が多い定款でも、抜粋ではなく全ページを添えます。事業の目的や事業年度だけ抜き出して出すと、差し戻されることがあります。
登記事項証明書が要らなくなった理由と、今も要る場所
以前は、法人設立届出書に登記事項証明書、いわゆる登記簿謄本を添えるのが当たり前でした。今は税務署に出す分では不要です。法人番号制度によって、税務署の側で登記の情報を確認できるようになったためです。法務局まで取りに行く手間と1通あたりの手数料が浮きます。
ただし、これは税務署の話に限られます。地方税の届出では話が変わります。東京都主税局が配っている法人設立・設置届出書の記載要領は、添付書類を2つ挙げたうえで、こう但し書きを付けています。
この届出書は、次に掲げる書類を提出機関ごとに1通添付して提出してください。ただし、②については税務署及び都税事務所への提出は必要ありません。 ① 定款、寄附行為、規則又は規約その他これらに準ずるものの写し ② 設立の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)又は登記簿謄本 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp
読み替えると、東京都の場合、登記事項証明書が必要なのは市町村に出す分だけです。都税事務所への提出分は定款の写しだけで足ります。ただし東京23区に本店を置く会社は、そもそも区役所への提出がなく都税事務所だけで完結するため、登記事項証明書を用意する場面がありません。
横浜市が配っている記載要領も、添付書類として定款等の写しと設立の登記事項証明書を挙げ、注記で税務署提出分への添付は不要と明記しています。こちらは県税事務所と市への提出分には登記事項証明書が要る、という整理です。
自治体ごとに扱いが違うので、本店所在地の自治体の記載要領を開いて確かめるのが唯一の正解です。「登記事項証明書は不要になった」という情報だけを持って市役所に行くと、その場で足りないと言われます。
定款の写しをどう用意するか
添える定款の写しは、公証役場の認証を受けたものか、自分たちで作ったものか、会社の形で変わります。
株式会社は、定款に公証人の認証が必要です。認証を受けると、公証役場から謄本が交付されます。添付するのはこの謄本のコピーです。認証文と公証人の記名押印が入ったページも含めてコピーします。
合同会社は、定款の認証が要りません。自分たちで作って代表社員が署名または記名押印した定款が、そのまま正式な定款になります。そのコピーを添えます。認証を受けていないことを理由に差し戻されることはありません。
費用の話もしておきます。日本公証人連合会の案内によると、株式会社の定款認証の手数料は資本金の額で分かれていて、100万円未満が3万円、100万円以上300万円未満が4万円、300万円以上が5万円です。謄本の交付手数料は1枚につき250円かかります。
そして紙の定款には収入印紙が要ります。同連合会は、株式会社の定款の認証については、電子定款によらない場合には収入印紙4万円を公証人保存原本に貼付する、と説明したうえで、電子定款による場合は収入印紙を貼付する必要がないとしています。電子定款とは、紙ではなくPDFに電子署名をして認証を受ける方式のことです。印紙税は紙の文書にかかる税金なので、紙がなければかかりません。
この4万円の差は大きいので、設立の手続を自分でやるなら電子定款にする価値があります。ただし電子署名のための機器とソフトを自前で揃えると、4万円を超えることもあります。司法書士や行政書士、あるいは会社設立の支援サービスを使うと電子定款で作ってもらえるので、そちらの費用と比べて決めるのが現実的です。
なお、電子定款で作った場合、添付するのはそのPDFを印刷したものです。データのまま出す必要はありません。
登記事項証明書の取り方と手数料
市町村に出す分などで登記事項証明書が必要になったときは、法務局で取得します。会社の登記は全国の登記所がオンラインでつながっているので、どこの法務局の窓口でも取れます。本店所在地を管轄する法務局まで行く必要はありません。
証明書には種類があります。設立の届出で使うのは履歴事項全部証明書です。現在の登記内容に加えて、一定期間の変更履歴も載っているものです。現在事項全部証明書でも足りる場合がありますが、自治体の記載要領が履歴事項全部証明書と指定していることが多いので、指定どおりに取ります。
手数料は法務省が公開している一覧で確認できます。令和7年4月1日からの金額です。
登記事項証明書(謄抄本) 書面請求 600円 / オンライン請求・送付 520円 / オンライン請求・窓口交付 490円 出典: moj.go.jp
窓口で紙の申請書を書いて取ると1通600円。オンラインで請求して郵送してもらうと520円。オンラインで請求して法務局の窓口で受け取ると490円です。1通あたりの差は小さいですが、複数の市町村に支店がある会社は通数が増えるので、まとめてオンライン請求するほうが安く済みます。
必要な通数は、提出先の数で決まります。東京都の記載要領は、市町村提出分は支店等の存する市町村ごとに各1通必要と指定しています。本店だけの会社なら1通、支店が2つの市にあるなら3通、という数え方です。取りに行く前に必要数を数えておかないと、二度手間になります。
添付の代わりに照会番号を使う方法がある
登記事項証明書を取らずに済ませる方法もあります。東京都の記載要領には、次の注記が付いています。
オンライン登記情報提供制度が利用できる市町村もあるので、事前に提出先へ確認すること。この制度を利用する場合には、照会番号欄と発行年月日欄をそれぞれ記載すれば、登記事項証明書等の添付は不要になる。ただし提出先ごとに照会番号が必要になる。
ここで言うオンライン登記情報提供制度は、登記情報提供サービスのことです。登記所が持っている登記情報をインターネットで閲覧できる仕組みで、行政機関へ提出する場合に登記事項証明書の代わりとして使える照会番号を発行してもらえます。
料金は、商業・法人登記情報の全部事項が1件330円です。この金額は、国に納める登記手数料と、運営する協会の手数料10円を合算したものだと説明されています。証明書を窓口で取る600円と比べると安く済みます。
照会番号には期限があります。同サービスの案内は、照会番号の有効期間は請求の翌日から100日間で、この期間を過ぎると行政機関等から登記情報の確認ができない、としています。設立直後に取って設立の届出に使う分には、期限が問題になることはまずありません。
ただし、この方法が使えるかどうかは提出先次第です。記載要領自体が「利用できる市町村もありますので、事前に提出先へ確認してください」と書いているとおり、全国どこでも通る話ではありません。電話1本で確認できるので、通数が多くなりそうなら先に聞いておくと安く済みます。
提出先ごとの早見表
ここまでの内容を1つの表にまとめます。自治体によって差があるので、あくまで目安として使い、最終的には提出先の記載要領で確認してください。
| 提出先 | 定款等の写し | 登記事項証明書 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 税務署 | 必要 | 不要 | 1部。資本金1億円以上は2部 |
| 都税事務所(東京都) | 必要 | 不要 | 23区内はここで完結 |
| 県税事務所(神奈川県など) | 必要 | 自治体による | 横浜市の様式では必要 |
| 市役所・町村役場 | 必要 | 必要が一般的 | 支店のある市町村ごとに各1部 |
定款の写しは提出する機関ごとに1部ずつ必要です。税務署と県税事務所と市役所の3か所に出すなら、定款のコピーは3部。1部だけ作って使い回すことはできません。
登記事項証明書も同じで、提出先ごとに1通ずつです。コピーで代用できるかどうかは自治体によるので、原本を必要数取るのが確実です。
e-Taxで出すときの添付書類
電子で提出する場合、添付書類も電子で送ります。国税庁の案内は、e-Taxソフトで届出書を作成して提出すること、書面で作成する場合は届出書と添付書類を1部、提出先に持参または送付すること、と使い分けを示しています。
e-Taxでは、定款をスキャンしたPDFをイメージデータとして送信します。紙をコピーして封筒に入れる代わりに、スキャンしてアップロードする、と考えれば分かりやすい。電子定款で作った会社なら、そもそも元がPDFなのでスキャンすら要りません。
電子で出す場合の準備として、利用者識別番号の取得と法人用の電子証明書が必要です。国税電子申告・納税システムのサイトに手順があります。設立直後に一式を揃えるのは手間なので、初回だけ紙で出して、次の決算から電子に切り替える会社も多い。どちらが正解ということはありません。
同じ時期に、別の役所も書類を求めてくる
添付書類の話で見落としがちなのが、税金以外の役所です。会社を作ると、年金事務所への届出も同時期に発生します。そしてそちらの添付書類には、税務署では不要になった登記簿謄本が必要です。
日本年金機構が配っている新規適用届の案内には、こう書かれています。
なお、添付書類のうち、法人(商業)登記簿謄本および、住民票(コピー不可)は、直近の状態を確認するため、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものをご提出いただくこととなりますのでご注意願います。 1.法人事業所の場合 法人(商業)登記簿謄本 出典: nenkin.go.jp
発行から90日以内という条件が付いています。登記が終わってすぐ取った謄本なら問題ありませんが、設立から数か月経ってから届出をする場合は、取り直しになることがあります。
しかも新規適用届の期限は、事実発生から5日以内です。税務署の2か月と比べると桁が違います。登記が完了した日に法務局で必要な通数の謄本をまとめて取り、その足で年金事務所に向かうのが最も無駄のない動き方です。届出書の様式は日本年金機構の適用関係届書のページから確認できます。
銀行で法人口座を開くときにも、登記事項証明書、定款の写し、法人番号の確認できる書類、代表者の本人確認書類などが求められます。銀行によっては事業実態を確認する資料まで要ります。つまり登記事項証明書は、税務署で不要になっても、他の場面で何通も使います。最初にまとめて取るのが結局いちばん安く早い、というのが実務的な結論です。
支店がある会社と、資本金が大きい会社は部数が変わる
添付書類の「何通」という話は、会社の形で変わります。ここを読み違えると、窓口で足りないと言われて出直しになります。
まず支店です。東京都の記載要領は、市町村提出分は支店等の存する市町村ごとに各1通必要と指定しています。横浜市の記載要領も同じです。本店が横浜市、支店が川崎市と大阪市にあるなら、市町村に出す分は3通。それぞれに定款の写しと登記事項証明書を添えるので、定款のコピーは3部、登記事項証明書も3通になります。
ここで言う支店は、登記した支店だけを指すのではありません。届出書の支店・出張所・工場等の欄について、記載要領は支店等の登記の有無に関わらず全ての支店、出張所、営業所、事務所、工場等を記載すること、としています。登記していないサテライトオフィスや、継続的に使っている作業場も対象になり得ます。そこが別の市町村にあるなら、その市町村への届出が発生します。
次に資本金です。東京都の記載要領は、資本金1億円以上の内国普通法人の場合は税務署提出用が2通必要、と書いています。横浜市の記載要領にも同じ記述があります。資本金1億円以上の会社は税務署と国税局の両方で管理されるため、税務署に出す分が2通になるという趣旨です。設立時から資本金1億円という会社は多くありませんが、増資で1億円を超えたときは、その後の届出で部数が変わります。
資本金1,000万円の線は、部数ではなく中身に効きます。設立時の資本金が1,000万円以上だと消費税の新設法人に該当するため、届出書の消費税の欄に設立年月日を書きます。書けば、消費税の新設法人に該当する旨の届出書を別に出さずに済みます。添付書類が増えるわけではありませんが、書き忘れると1枚増えるので、資本金の額を見たらこの欄も一緒に確認してください。
通数をまとめると、次の掛け算になります。定款のコピーは提出機関の数だけ。登記事項証明書は、それを求める機関の数だけ。税務署分は資本金1億円以上なら2通。この3つを先に計算してからコピー機と法務局に向かえば、一度で終わります。
設立費用の全体像のなかで、書類の手数料はどこに乗るか
添付書類を揃える費用は、会社を作る費用全体のなかで見るとごく一部です。全体像を押さえておくと、どこを削れてどこは削れないのかが分かります。
会社を作るときに必ずかかるのが登録免許税です。国税庁のタックスアンサーによると、株式会社の設立登記は資本金の額の1,000分の7で、それが15万円に満たないときは申請1件につき15万円。合同会社の設立登記も税率は1,000分の7ですが、6万円に満たないときは申請1件につき6万円です。資本金が2,143万円あたりを超えると、株式会社でも定額の15万円ではなく0.7%のほうが大きくなります。
次に定款です。株式会社は公証人の認証が要るので、資本金に応じた認証手数料が3万円から5万円。謄本の交付手数料が1枚250円。紙の定款なら収入印紙が4万円。合同会社は認証そのものが不要なので、この費用が丸ごとかかりません。
そして登記事項証明書と印鑑証明書です。法務省の手数料一覧によると、印鑑証明書は書面請求で1通500円、オンライン請求で郵送してもらうと450円、オンライン請求で窓口交付なら420円です。登記事項証明書と一緒に必要な通数を取ります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円または資本金の0.7%の高いほう | 6万円または資本金の0.7%の高いほう |
| 定款認証手数料 | 3万円から5万円 | 不要 |
| 定款の収入印紙 | 紙なら4万円、電子定款なら不要 | 紙なら4万円、電子定款なら不要 |
| 登記事項証明書 | 1通600円から | 1通600円から |
こうして並べると、添付書類のために払う数百円から数千円は、全体のなかでは誤差の範囲です。逆に言えば、ここを節約するために平日の午前中を潰して法務局に並ぶのは、時間の使い方として割に合わないこともあります。オンライン請求で郵送してもらうほうが、1通あたり80円高くても合理的な場面は多い。
提出したあと、いつ何が届くか
添付書類を揃えて出したら、その後に何が来るのかも知っておくと安心です。
法人番号指定通知書は、設立登記が完了するとおおむね1週間ほどで国税庁から郵送されてきます。13桁の法人番号が書かれた紙です。届出書を出す時点で届いていなければ法人番号欄は空欄で構いませんが、この通知書は後で銀行口座の開設や取引先への登録で使うので、なくさないよう保管します。
青色申告の承認申請書を出した場合、承認されたという通知は原則として届きません。申請した事業年度の終了日までに税務署から何も言ってこなければ、自動的に承認されたことになります。この扱いは「みなし承認」と呼ばれます。通知が来ないことを不安に思う必要はありません。
申告書の用紙は、事業年度が終わる少し前に税務署から郵送されてきます。届出書に書いた事業年度をもとに送られてくるので、事業年度の記載が間違っていると、届くタイミングもずれます。
地方税のほうも、都道府県税事務所と市町村から均等割や申告に関する案内が届くようになります。届出を出していない自治体からは何も来ないので、案内が来ないことを「出さなくてよかった」と読み替えないよう注意してください。届出の漏れは、後から遡って均等割を納めることで表面化します。
定款を紛失したときと、後から内容を変えたとき
添付する定款が手元にない、というケースもあります。
株式会社の場合、認証を受けた定款の原本は公証役場に保存されています。認証を受けた公証役場に問い合わせれば、謄本を再発行してもらえます。どの公証役場で認証を受けたか分からないときは、設立を依頼した司法書士や行政書士に聞くのが早い。
合同会社の場合、定款は自分たちで保管しているものがすべてです。公証役場に控えはありません。紛失すると再発行の仕組みがないので、原始定款は必ずデータと紙の両方で残しておいてください。会社法上、定款は本店に備え置くことになっています。
設立後に定款の内容を変えた場合、たとえば事業の目的を増やした、事業年度を変えた、というときは、株主総会や社員総会で決議した議事録と、変更後の定款を作ります。株式会社でも、設立後の定款変更に公証人の認証は要りません。認証が必要なのは設立時の原始定款だけです。
そして定款を変えた結果、税務署に届けた内容と食い違うことになったら、異動届出書を出します。提出先は異動する前の納税地を所轄する税務署長で、期限は異動後すみやかに。添付書類は原則なしですが、国税庁の案内は、異動事項の内容確認のため定款等の写しを確認させてもらう場合がある、と注記しています。結局ここでも定款の写しが出てくるので、変更のたびに最新版をPDFで保存しておくのが実務的です。
添付でつまずく6つの場面
実際に用意していて引っかかりやすいのは、次の6つです。
定款の抜粋を添えてしまう。全ページ必要です。表紙から末尾の署名ページまでコピーします。
認証前の定款を添えてしまう。株式会社なら、公証人の認証を受けた後の謄本をコピーします。認証文が入っているページを含めます。
登記事項証明書のコピーで済ませようとする。自治体によっては原本を求めます。何通必要かを先に数えて、原本で用意するのが安全です。
古い登記事項証明書を使い回す。年金事務所は発行から90日以内という条件を明示しています。他の窓口でも3か月以内を目安にするところが多い。
定款の写しを1部しか作らない。提出する機関ごとに1部ずつ必要です。
登記事項証明書の種類を間違える。設立の届出では履歴事項全部証明書を指定されることが多く、現在事項全部証明書では受け付けられない場合があります。窓口で請求するときに種類を伝えてください。
この6つを潰しておけば、書類が足りずに出直しになる確率はかなり下がります。
書類の手間より、その先の設計に時間を使う
ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の視点で、この作業の周辺にある話を書きます。
添付書類を揃える作業そのものは、半日で終わります。法務局に行って謄本を取り、定款をコピーして、封筒に入れるだけです。ところが運営者として見てきた限りでは、この半日の作業の前で何週間も止まってしまう人がいます。止まる理由は書類が難しいからではなく、会社を作った後にどう仕事を取るかが決まっていないからです。
法人化して実際に楽になっているのは、売上が増えた人ではなく、取引の形が変わった人です。単発の発注が続くうちは個人のままでも回りますが、年間契約や複数名での受注が入ると、契約の名義と請求の管理が個人の器に収まらなくなる。逆に、売上が大きくても取引が全部単発なら、法人にした分だけ均等割と記帳の手間が増えるだけ、ということが起こります。
もう一つ、長く続いている人ほど、報酬を額面ではなく手取りで見ています。仲介が何割か抜く仕組みのなかにいると、同じ仕事量でも手元に残る額が変わります。中間マージンが乗らない直接取引なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなる。法人化の損得も、同じ見方で計算すると答えが出ます。
自分の単価が相場のどこにいるかを確かめてから決めると、役員報酬の設定もぶれません。開発の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場、書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、全国平均と都道府県別の水準が並んでいます。
仕事の幅を広げる方向を考えているなら、単価が動いている領域を見ておくのが早い。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は生成AIの導入支援から社内研修までを引き受ける仕事で、企業側の予算が付きやすい分野です。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も、技術と事業の両方が分かる人が少ないため単価が落ちにくい傾向があります。受託開発を主軸にするならアプリケーション開発のお仕事が近い領域です。
会社にすると、税金の扱いも個人事業のときとは変わります。個人時代の申告の感覚を整理しておきたいなら確定申告 メリットを最大化!フリーランスが知るべき節税と還付のコツが土台になりますし、役員報酬を決める前に手元資金の置き場所まで考えるなら【20年で2倍?】毎月10万円の積立投資で資産形成する最強のポートフォリオのような長期の視点も要ります。書類仕事そのものの精度を上げたいならビジネス文書検定、技術側の基礎を客観的に示したいならCCNA(シスコ技術者認定)といった選択肢もあります。
よくある質問
Q. 法人設立届出書に登記事項証明書は必要ですか?
税務署に出す分には不要です。国税庁の案内が挙げている添付書類は定款、寄付行為、規則または規約の写しだけで、登記事項証明書は含まれていません。ただし市町村に出す分では必要になるのが一般的で、都道府県税事務所の分は自治体によって扱いが分かれます。提出先の記載要領で確認してください。
Q. 定款はコピーでいいですか。原本証明は必要ですか?
コピーで構いません。国税庁の記載要領も「写しを添付して提出してください」と書いています。原本と相違ない旨を記して押印する原本証明までは求められていません。ただし抜粋ではなく全ページをコピーしてください。株式会社なら公証人の認証文が入ったページも含めます。
Q. 登記事項証明書は1通いくらですか?
法務省が公開している令和7年4月1日からの手数料は、窓口で紙の申請書により請求する書面請求が1通600円、オンライン請求で郵送してもらう場合が520円、オンライン請求で窓口交付の場合が490円です。複数の市町村に提出するなら通数が増えるので、オンラインでまとめて請求するほうが安く済みます。
Q. 登記事項証明書を添付せずに済ませる方法はありますか?
登記情報提供サービスで照会番号を取得し、届出書の照会番号欄と発行年月日欄に記載する方法があります。商業・法人登記情報の全部事項は1件330円で、照会番号の有効期間は請求の翌日から100日間です。ただし対応していない市町村もあるため、使う前に提出先へ確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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