年金事務所に出す新規適用届の書き方

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年金事務所に出す新規適用届の書き方

この記事のポイント

  • ✓会社設立年金事務所手続きの中心は健康保険・厚生年金保険新規適用届です
  • ✓事務センターと年金事務所の使い分け
  • ✓90日以内の登記簿謄本などの添付書類

会社設立年金事務所手続きと検索してたどり着く人の多くは、登記が終わったあとに残った1枚のエクセル様式を前にして止まっています。健康保険・厚生年金保険 新規適用届。名前は仰々しいですが、やることは会社の基本情報と、給与の締め日と支払日、そして何人を加入させるかを書くだけです。

先に全体像を置きます。期限は事実発生から5日以内。出す先は事務センターか管轄の年金事務所。必ず被保険者資格取得届と同時に出します。添付する登記簿謄本には発行から90日以内という条件が付きます。この4点を外さなければ、あとは欄を埋める作業です。

以下、日本年金機構が公開している手続案内と様式、そして届書の手続概要をそのまま確認しながら、欄ごとに何を書くのかを見ていきます。

新規適用届は、会社を社会保険の名簿に載せる1枚

新規適用届とは、この事業所が健康保険と厚生年金保険の対象になりましたと日本年金機構に知らせる書類です。会社そのものを登録する紙であって、人を登録する紙ではありません。人のほうは被保険者資格取得届が担当します。

日本年金機構の届書には、手続の概要がこう書かれています。

この届出は、事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、事実発生から5日以内に事業主が行わなければなりません。 なお、この届出を提出される際には、必ず「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」と同時に提出してください。 出典: nenkin.go.jp

「必ず同時に」と書かれている点が重要です。新規適用届だけを先に出しても処理は進みません。事業所を登録しても、加入する人がいなければ適用事業所の要件を満たさないからです。社長ひとりの会社なら、新規適用届1枚と資格取得届1枚の合計2枚がセットになります。

様式はエクセルファイルで配布されています。日本年金機構は、エクセルファイルは端末の設定によって印刷位置がずれる場合があるため、印刷する前に余白設定やレイアウトを確認するよう案内しています。実際にずれたまま印刷して、枠から文字がはみ出した状態で提出すると読み取りでつまずきます。印刷プレビューで確認してから出してください。

なお、常時使用する従業員が5人未満の個人事業所や、サービス業の一部、農業、漁業等の個人事業所は、新規適用届ではなく任意適用申請書を使います。会社を作った場合はこちらではなく新規適用届です。

出す先は事務センターか、管轄の年金事務所か

提出先は2つ書かれています。事務センターと、管轄の年金事務所です。使い分けは提出方法で決まります。

郵送で送る場合は、都道府県ごとに置かれている事務センターが宛先です。事務センターは届書の処理を集約している拠点で、窓口業務はしていません。持参する場合は、管轄の年金事務所の窓口に出します。電子申請の場合は、送信先を選ぶ必要はありません。

管轄の決め方には注意点があります。日本年金機構の案内はこう書いています。

実際に事業を行っている事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合は、実際に事業を行っている事業所の所在地を管轄する事務センター(年金事務所)となります。 出典: nenkin.go.jp

バーチャルオフィスや実家の住所で登記して、実際は別の場所で作業しているケースが増えています。この場合、窓口は実際に仕事をしている場所の側です。そして所在地が登記と違うなら、賃貸借契約書のコピーなど所在地を確認できる書類を別に添付します。

もう1つ、支店を持つ会社の扱いがあります。新規適用届には本店と支店を区分する欄があるので、支店として届け出る場合はそちらを選びます。複数の事業所を1つにまとめて扱いたい場合は一括適用という別の手続きがありますが、設立直後に使う場面はほとんどありません。

期限は5日。起点をどこに置くか

期限は事実発生から5日以内です。5日というのは営業日ではなく暦の日数で数えます。金曜に登記が完了したら、翌週の水曜が5日目です。

問題は「事実発生」がいつかという点です。会社設立と同時に役員報酬を出すなら、設立登記の日が起点になります。設立してしばらく役員報酬をゼロにしていた会社は、報酬を出すと決めた日、つまり被保険者になる人が生まれた日が起点です。

現実には、5日で間に合わないことがよくあります。登記が完了してから登記簿謄本が取れるまで数日かかり、法人番号指定通知書が届くのはさらにあとです。この場合、期限を過ぎても提出そのものは受け付けられます。届出が遅れても、資格取得の日は実際の事実の日でさかのぼって処理されるので、保険料もその月から発生します。日付をごまかして後ろにずらすと、加入日と役員報酬の支給開始月が合わなくなり、かえって説明が必要になります。実際の日付で出すのが結局いちばん早い。

期限に間に合わせたいなら、登記の申請と同時に動くのが有効です。登記事項証明書は法務局のオンライン申請でも請求できます。日本年金機構の案内も、法務局のオンライン申請の案内を参照するよう書いています。窓口に並ばず郵送で受け取れるので、その分だけ日数が縮みます。

事業主が書く欄の中身

様式は上半分が事業主記入欄、下半分が事業所情報記入欄という構成です。上半分から見ていきます。

事業所所在地。郵便番号とフリガナを付けて書きます。登記上の所在地ではなく、実際に事業を行っている場所です。

事業所名称。フリガナを付けて書きます。株式会社の位置も登記どおりに書きます。前株と後株を取り違えると照合でつまずきます。

事業主(または代表者)氏名。フリガナと氏名を分けて書きます。法人なら代表取締役の氏名です。

事業主(または代表者)住所。代表者個人の住所を書きます。会社の住所ではありません。

事業主代理人氏名・住所。代理人を置いている場合だけ書きます。置いていなければ空欄です。

電話番号と問合せ先担当者名、内線番号。年金事務所から確認の連絡が来る先です。ひとりの会社なら代表者本人の携帯番号を書いておくと取りこぼしがありません。

社会保険労務士記載欄。社会保険労務士が作った場合だけ、氏名等とコードが入ります。自分で作ったなら空欄です。

上半分は、登記簿謄本を横に置いて写す作業です。迷う欄はほとんどありません。

事業所情報の欄で迷いやすいところ

下半分の事業所情報記入欄には、判断が入る欄が並びます。

事業の種類・業態区分。何をする会社なのかを書きます。定款の事業目的をそのまま並べるのではなく、実際に行う主な事業を書きます。ここは労災保険の料率とは別の分類なので、労働基準監督署に出す書類とは書き方が違って構いません。

個人・法人等区分。法人事業所、個人事業所、国・地方公共団体の3択です。会社なら法人事業所です。

本店・支店区分。本店か支店かを選びます。

内国・外国区分。日本の法律で設立した会社なら内国法人です。

法人番号等。ここが添付書類に直結する欄です。日本年金機構の必要書類の一覧には、次の説明があります。

「新規適用届」の項目9において「1:法人番号」を選択する場合は、あわせて「法人番号指定通知書のコピー」を添付してください。 出典: nenkin.go.jp

法人番号を書く欄では、13桁の法人番号を選ぶか、登記簿に載っている12桁の会社法人等番号を選ぶかを区分で示します。法人番号を選ぶなら、その番号を証明する通知書のコピーが要る。通知書が届いていない段階なら、国税庁の法人番号公表サイトで検索した画面を印刷して添付する方法が認められています。

健康保険組合名称と厚生年金基金番号。業界の健康保険組合や厚生年金基金に加入する場合だけ書きます。協会けんぽに入るなら空欄です。設立したばかりの会社はほぼ空欄になります。

給与計算の締切日と給与支払日。締め日と、支払日が当月か翌月かを区分で選び、日付を書きます。末日締め翌月25日払いなら、締切日に31または末日、支払日は翌月の25日です。ここは実際の運用と合わせてください。標準報酬月額の見直しの時期や、資格喪失時の保険料の扱いに関わります。

昇給月と賞与支払予定月。予定でよいので入れます。賞与を出す予定がなければ空欄で構いません。賞与支払予定月を登録しておくと、その月に賞与支払届の用紙が送られてきます。

算定基礎届媒体作成と賞与支払届媒体作成。毎年7月の算定基礎届を、紙で送ってほしいのか、自社で作るので不要なのか、社会保険労務士への電子送付用が必要なのかを選びます。初年度は紙で送ってもらう選択にしておくと、何が来るのかが分かって安心です。

給与形態。月給、日給、日給月給、歩合給、時間給、年俸制、その他から選びます。役員報酬なら月給です。

諸手当の種類。家族手当、住宅手当、役付手当、通勤手当、精勤手当、残業手当、その他から、実際に支給するものを選びます。通勤手当は標準報酬月額に含める報酬なので、支給するなら選んでおきます。

現物給与の種類。食事、住宅、被服、定期券、その他から選びます。社宅を貸す、食事を出す、定期券を現物で渡すといった場合は、その分も報酬として評価されます。ここを空欄にしておいて、あとから社宅の扱いを指摘されるパターンがあるので、該当するなら最初から選んでおくほうが安全です。

従業員情報の欄は人数の内訳を書く

最後のまとまりが従業員情報です。ここは人数を分解して書く欄です。

従業員数(役員含む)。会社にいる人の総数です。社長ひとりなら1です。

社会保険に加入する従業員数。そのうち被保険者になる人数です。社長ひとりなら1です。

社会保険に加入しない従業員について。加入しない人がいる場合に、区分ごとに人数と勤務の実態を書きます。役員の欄には人数と、報酬が有るか無いか、常勤かどうかを記入します。嘱託職員等、パート、アルバイトの欄には、人数と1か月の勤務日数、1週間の勤務時間を書きます。案内には、これらの区分については平均的な勤務日数および勤務時間を記入するようにと書かれています。

ここが実質的な審査の対象になります。週の所定労働時間と月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になるという基準があるので、加入しないと書いた人の勤務時間が長すぎると、加入すべきではないかと確認が入ります。実態より短く書いて加入を免れる、という使い方はできません。

所定労働日数と所定労働時間。通常の労働者の基準になる日数と時間を書きます。1か月の日数と1週間の時間です。

備考。特殊な事情があれば書きます。役員報酬が特定の月から発生する、代表者が他社でも被保険者になっているといった事情は、ここに書いておくと問い合わせが減ります。代表者が2つ以上の会社で報酬を受けている場合は、二以上事業所勤務届という別の届出が必要になるので、該当するなら備考に触れておくとよいでしょう。

添付書類はどれも入手に日数がかかる

新規適用届でいちばん時間を食うのが添付書類です。日本年金機構の案内は、場合ごとに必要なものを分けて示しています。

場合 添付するもの 条件
法人の事業所 法人(商業)登記簿謄本 コピー不可、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの
事業主が法人である場合 法人番号指定通知書のコピー 届かない場合は法人番号公表サイトの画面の印刷で代替可
強制適用となる個人事業所 事業主の世帯全員の住民票 コピー不可、個人番号の記載がないもの、90日以内発行
所在地が登記と異なる場合 賃貸借契約書のコピーなど 所在地が確認できるもの
口座振替を希望する場合 保険料口座振替納付(変更)申出書 事前に金融機関での手続きが必要
共済組合制度に加入する事業所 健保法第200条等の適用申出書 共済組合の証明を受けたもの

90日という条件は、直近の状態を確認するために置かれているものです。設立してすぐ手続きするなら問題になりませんが、数か月放置してから動き出すと取り直しになります。

原本で提出した添付書類は、希望すれば返却してもらえると案内されています。登記簿謄本は1通あたりの手数料がかかるので、他の手続きにも使う予定があるなら返却を希望しておくとよいでしょう。

同時に出す2枚の書き方の要点

新規適用届と一緒に出す書類も見ておきます。

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届。 加入する人ごとに1枚です。氏名、生年月日、基礎年金番号または個人番号、資格取得年月日、報酬月額を書きます。報酬月額には、決めた役員報酬の額を、通勤手当や現物給与も含めて書きます。この金額から標準報酬月額の等級が決まり、保険料が算出されます。

健康保険 被扶養者(異動)届。 扶養に入れる家族がいる場合に出します。配偶者を扶養に入れる場合は、国民年金第3号被保険者関係届も併せて必要です。収入の条件を満たしているかを確認するため、届出の内容によっては添付書類を求められることがあります。

資格取得届で迷いやすいのが資格取得年月日です。会社設立と同時に役員報酬を出すなら設立登記の日、報酬を後から決めたならその報酬の対象期間が始まる日です。社会保険料は月単位で計算されるので、月の途中に資格を取得しても、その月の分は満額かかります。月末に設立して報酬を出すと、数日分の在籍で1か月分の保険料が発生する形になります。設立日を選べる段階なら、この点も判断材料の1つになります。

出したあとに届くもの

提出が受理されると、順番に書類が届きます。何が来るのかを知っておくと、届いていないことに気づけます。

健康保険・厚生年金保険 適用通知書。事業所整理記号と事業所番号が記載されています。以後の届出ではこの記号と番号を書くので、すぐ取り出せる場所に保管します。

健康保険・厚生年金保険 資格取得確認および標準報酬決定通知書。加入した人ごとに、標準報酬月額の等級が記載されています。ここに書かれた等級が保険料の根拠になるので、届出した報酬月額と合っているかを確認します。

健康保険証。協会けんぽから送られます。マイナンバーカードを健康保険証として使う運用が広がっていますが、資格情報のお知らせなどが届く流れになります。届くまでの間に受診が必要なら、資格取得の手続きが済んでいることを伝えれば、後から精算できる扱いがあります。

保険料納入告知書。毎月10日頃に前月分の保険料額が確定し、20日頃に事業所へ送られます。納付期限は納付対象月の翌月末日です。

告知書が届かない場合は、管轄の年金事務所に連絡して再発行を依頼するよう案内されています。郵便物の転送届を出している事業所は到着がさらに遅れることがあります。月末が近いのに届かないなら、待たずに電話してください。

差し戻される理由をあらかじめ潰す

窓口や事務センターから連絡が来て、やり直しになる典型を並べます。どれも事前に確認できるものです。

登記簿謄本の発行日が90日を超えていた。設立直後に取ったものを使えば問題になりません。他の手続きで使ったあと数か月経っている場合は発行日を確認します。

登記簿謄本がコピーだった。原本が必要です。コピーでは受け付けられません。

法人番号指定通知書がなく、代替の印刷も添えていない。法人番号公表サイトの画面を印刷して添付すれば通ります。

事業所の所在地が登記と違うのに、所在地の確認書類がない。賃貸借契約書のコピーなどを添えます。

資格取得届を同時に出していない。新規適用届だけでは処理が進みません。

加入しない従業員の勤務時間が、4分の3基準を超えて記入されている。実態が加入対象なら加入させます。実態より短く書くのではなく、基準を確認して正しく判断します。

報酬月額に通勤手当や現物給与を含めていない。標準報酬月額は、通勤手当や食事・住宅の現物給与も含めた報酬で決まります。基本給だけで届け出ると、あとで訂正になります。

印刷がずれて枠から文字がはみ出している。エクセル様式の印刷設定を確認します。

書き終えたら、提出前に全部をスキャンして控えを残します。事業所整理記号が分かるまでの間、控えが唯一の証拠になります。

電子申請にすると、この一連が短くなる

紙で出す場合、登記簿謄本を取りに行き、様式を印刷し、郵送するか窓口に行く。ここまでで数日を使います。

電子申請を使うと、この移動がなくなります。日本年金機構は事業所向けのオンラインサービスを用意しており、届書の申請だけでなく、各種情報や通知書の受け取りもオンラインで行えます。電子申請と電子媒体申請の案内も別に置かれています。

ただし初期設定に時間がかかります。電子証明書を用意するか、GビズIDのアカウントを取得するか。どちらも申請から使えるようになるまで日数が必要で、5日という期限には間に合わないことが多い。1回目は紙で出し、その間にアカウントの取得を進めて、2回目以降の届出から電子に切り替える。これが現実的な段取りです。

従業員が増えると、資格取得届と喪失届を5日以内に出す場面が繰り返し発生します。年に1回の算定基礎届、賞与を出せば賞与支払届。回数が増えるほど電子申請の効き目は大きくなります。設立直後に慌てて導入する必要はありませんが、1人目を採用するまでには準備しておくと楽になります。

口座振替も同じ発想です。初回は納入告知書で払い、その間に金融機関で口座振替の手続きを進めておけば、翌月以降は自動で引き落とされます。毎月末日という期限を忘れる心配がなくなるので、ひとりで会社を回している人には効果が大きい仕組みです。

報酬月額の欄に書いた金額が、翌年8月までの保険料を決める

資格取得届の報酬月額の欄は、新規適用届の周辺でいちばん結果に影響する1マスです。まだ給与を1円も払っていない段階なので実績がありません。では何を書くのか。日本年金機構はこう説明しています。

事業所が従業員を雇用した場合、当該従業員には報酬を支払った実績がないため、事業主は、就業規則や労働契約等の内容に基づき、この「資格取得時の決定」の規定に則って被保険者の報酬月額を届け出ることとなります。 出典: nenkin.go.jp

つまり、実績ではなく決めた条件から算定します。月給のように一定期間で報酬が定められている場合は、資格を取得した日現在の報酬額をその期間の総日数で割って30倍した額。日給や時間給、出来高の場合は、資格を取得した月の前1か月間に同じ事業所で同様の業務に従事して同様の報酬を受けた人の平均額。どちらの方法でも算定が難しい場合は、その地方で同様の業務に従事する人の報酬額を使います。複数に該当する報酬があるときは、それぞれ算定して合算します。

役員報酬を月50万円と決めた会社なら、報酬月額は50万円です。ここに通勤手当や現物給与を足します。基本給だけで届け出て、あとから通勤手当を入れ忘れていたことが分かると訂正になります。

そして重要なのが適用期間です。ここで決まった標準報酬月額は、資格を取得した月からその年の8月までの各月に適用されます。6月1日から12月31日までの間に資格を取得した場合は、資格を取得した月から翌年の8月までです。

つまり、9月に設立して報酬を届け出た会社の標準報酬月額は、翌年8月まで固定されます。その間に報酬を大きく変えれば随時改定という別の手続きになりますが、そうでなければ1年近く同じ等級が続きます。毎年7月に算定基礎届を出して見直す仕組みなので、次の見直しはその翌年の9月からです。最初の1マスが長く効く、という構造を知っておいてください。

5日を過ぎたときに何が起きるか

5日という期限は短く、現実には超えることがあります。超えた場合にどうなるのかを整理します。

まず、届出そのものは受け付けられます。期限を過ぎたからといって加入できなくなるわけではありません。

次に、資格取得の日は実際の事実の日で処理されます。届出が遅れても、加入の効力が届出日からになるわけではないため、保険料はさかのぼって発生します。3か月遅れて届け出れば、3か月分の保険料をまとめて納めることになります。会社負担分と本人負担分の両方を用意する必要があるので、資金の面では重くなります。

そして、さかのぼる幅には限りがあります。労働保険の徴収に関する法律には、徴収する権利が2年で時効になるという規定があります。健康保険と厚生年金についても、保険料を徴収する権利の時効は定められています。ただし、時効があるから放置してよいという話ではありません。加入指導が入った段階でさかのぼって適用される仕組みがあり、その場合の負担は自分で気づいて出す場合より大きくなります。

もう1つの実害が、健康保険証が手元にない期間です。個人事業から法人にした人が、国民健康保険をやめたあとに新規適用届を出し忘れると、どちらの保険もない状態になります。この期間に医療機関を受診すると、いったん全額を払うことになります。あとから精算できる扱いはありますが、手続きが増えます。

結論としては、日付をごまかさずに実際の日で出すのがいちばん早く片付きます。備考欄に、登記簿謄本の取得に日数がかかったといった事情を書いておけば、確認の連絡も短く済みます。

社長ひとりで、報酬を後から決める場合の段取り

設立から数か月は役員報酬をゼロにして、売上が立ってから報酬を決める。この設計を取る会社は少なくありません。この場合の段取りを整理します。

報酬がゼロの期間は、被保険者になる人がいないため適用事業所になれません。社長個人は国民健康保険と国民年金のままです。この期間に新規適用届を出しても受理されません。

報酬を決めるときは、株主総会または取締役会で決議し、議事録を残します。役員報酬は事業年度の開始から3か月以内に決めないと法人税の計算上で経費にできないという別の制約があるので、税務の側の期限も併せて確認してください。金額と時期が絡む判断なので、具体的な設定は税理士に確認するのが安全です。

決議した内容に沿って報酬の支給が始まる日が、社会保険の側の事実発生日になります。そこから5日以内に新規適用届と資格取得届を出します。このタイミングで登記簿謄本の発行日が90日を超えていることが多いので、決議の前後で取り直しておくと段取りがつながります。

健康保険証が届いたら、市区町村の窓口で国民健康保険の資格喪失の手続きをします。順番を逆にすると無保険の期間ができるので、必ず保険証が届いてから動きます。国民年金のほうは厚生年金の記録が入ることで切り替わるため、本人の届出は不要です。

扶養に入れる家族がいるなら、被扶養者(異動)届を同時に出します。国民健康保険には扶養という考え方がなく世帯全員が被保険者でしたが、健康保険では条件を満たす家族の保険料はかかりません。配偶者を第3号被保険者にすれば国民年金の保険料も不要になります。世帯全体で見ると負担が下がる場合があるので、切り替えの前に一度計算してみる価値があります。

固定費が確定したあと、どこで回収するか

新規適用届を出した時点で、毎月の固定費が確定します。厚生年金の保険料率は18.3%で固定されており、これを会社と本人で折半します。ここに健康保険と、40歳以上なら介護保険の分が乗ります。役員報酬を決めた瞬間に、会社の毎月の支出が決まる構造です。

だから手続きを終えたら、次に考えるのは回収の設計です。方向は2つ、単価を上げるか、使える制度を取りに行くかになります。

制度の側では、人を雇う会社に向けた入口がいくつか用意されています。在宅で働ける体制を整えるならテレワーク 助成金 2026で要件と申請の流れを確認できます。福祉や介護の分野で事業を組むなら、介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化や送迎バス安全装置の設置補助金2026|介護施設の義務化対応と申請手順のように、業種ごとに別の制度が動いています。

単価の側では、自分の職種の相場を数字で持っておくことが交渉の土台になります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では全国平均と都道府県別の水準が確認でき、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も同じ見方で使えます。守備範囲を広げるなら、経営の相談に入っていける中小企業診断士や、医療機関の事務を在宅で受けられる医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)といった資格が、継続して入る仕事につながりやすい部類です。案件の種類を増やす方向なら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発を軸にするならアプリケーション開発のお仕事の整理が近いでしょう。

20年この市場を見てきた運営者の立場から言えば、法人を作ったあとに安定するかどうかを分けるのは、案件の数ではなく1件あたりに残る金額です。仲介が入らない直接の取引は、依頼する側から見れば同じ予算でより多くを頼めて、受ける側から見れば手数料0%の分だけ手取りが厚くなります。保険料は毎月末日に必ず引かれるので、この差はそのまま資金繰りの余裕になります。

なお、この記事で扱った期限、添付書類、欄の内容は、日本年金機構が公開している案内と様式で確認したものです。一方で、役員報酬の金額設定、社宅や食事といった現物給与の評価、二以上の事業所で報酬を受ける場合の扱いは、金額と事情で結論が変わります。具体的な金額が絡む場面では、管轄の年金事務所か社会保険労務士に確認してください。

よくある質問

Q. 新規適用届は何日以内に出しますか?

事実発生から5日以内です。会社設立と同時に役員報酬を出すなら設立登記の日が起点になります。営業日ではなく暦の日数で数えます。登記簿謄本の取得に日数がかかり間に合わない場合も、日付をずらさず実際の日で提出してください。

Q. 新規適用届だけを先に提出できますか?

できません。日本年金機構の届書には、被保険者資格取得届と必ず同時に提出するよう明記されています。事業所を登録しても被保険者になる人がいなければ適用事業所の要件を満たさないためです。社長ひとりなら2枚セットで出します。

Q. 添付する登記簿謄本に条件はありますか?

あります。法人の事業所は法人(商業)登記簿謄本が必要で、コピーは不可、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものに限られます。事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合は、賃貸借契約書のコピーなど所在地が確認できるものも別に添付します。

Q. 法人番号指定通知書が届いていない場合はどうしますか?

国税庁の法人番号公表サイトで自社を検索し、事業所名称、法人番号、所在地が表示された画面を印刷して添付すれば差し支えないと案内されています。通知書が届くのを待って5日の期限を過ぎるより、この方法で先に提出するほうが確実です。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年2月24日最終更新:2026年10月10日
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