偽装請負にならない指揮命令の線引き|在宅ワーカーへの発注で注意する点 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
偽装請負にならない指揮命令の線引き|在宅ワーカーへの発注で注意する点 2026

この記事のポイント

  • 在宅ワーカーに業務委託で仕事を依頼する発注者向けに
  • 偽装請負と判断される指揮命令の線引きを解説します
  • 相談先まで実務目線でまとめました

先日、あるEC事業者の方から相談を受けました。「在宅の業務委託スタッフに、毎朝9時に出勤報告をさせて、業務内容もこちらが逐一指示していたら、偽装請負だと知人に指摘された」と。結論から言うと、これは十分に偽装請負と判断されるリスクがあるケースです。業務委託契約なのに実態が雇用と変わらない指揮命令をしていれば、職業安定法違反に問われる可能性があります。つまり、「契約書の名前」ではなく「実際の働かせ方」で判断されるということです。こういうケース、実は本当に多い。在宅ワーカーに仕事を発注する側にとって、指揮命令の線引きを知らないまま業務を依頼するのは、思っている以上にリスクが大きいのです。

この記事では、偽装請負とは何か、業務委託契約でどこまで指示していいのか、罰則はどの程度重いのか、そして発注者として安心して在宅ワーカーに仕事を依頼するための具体的な線引きを、法律の専門家の視点から噛み砕いて解説します。

偽装請負をめぐる在宅ワーク市場の現状

在宅ワークやリモートワークが広がったことで、業務委託契約を使って外部の人材に仕事を依頼する個人事業主・中小企業が急増しています。特にSNS運用、経理事務、Webデザイン、ライティングといった分野では、正社員を雇用するより業務委託で必要な分だけ依頼するスタイルが一般化しました。

一方で、この広がりと同時に「偽装請負」に関する相談件数も増えています。2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の影響で、フリーランス側が自分の働き方の適法性を意識するようになったことも背景にあります。以前は「業務委託だから、まあ細かく指示しても大丈夫だろう」という曖昧な運用がまかり通っていましたが、今はフリーランス自身が労働局や弁護士に相談するケースが増え、発注者側が指摘を受ける事例も目立ち始めています。

在宅勤務は特に線引きが難しい分野です。オフィスに出勤する派遣社員と違い、在宅の業務委託ワーカーは自宅で作業するため、発注者側が「進捗が見えないから」という理由で、つい細かく指示を出したり、勤務時間を管理したくなったりします。しかしこの「つい」が偽装請負の温床になります。

厚生労働省や東京労働局は、業務委託契約における指揮命令の線引きについて具体的な基準を公表しています。まず「偽装請負とは何か」を正確に理解することから始めましょう。

偽装請負とは何か。業務委託と労働者派遣の違い

まず前提として、業務委託契約(請負契約・準委任契約)と労働者派遣契約は、法律上まったく異なる仕組みです。

業務委託契約では、発注者は「成果物」または「役務の提供」を発注し、受注者(在宅ワーカー)は自分の裁量で作業の進め方・時間配分を決めます。発注者は業務の内容や進め方について、逐一指揮命令をしてはいけません。これが業務委託の大原則です。

これに対して労働者派遣契約は、派遣元(派遣会社)と派遣先(発注者)、派遣労働者の三者間契約で、派遣先が労働者に対して直接指揮命令を行うことが法律上認められています。労働者派遣法に基づく届出や許可を得た事業者だけが、この指揮命令付きの働かせ方をできます。

つまり「業務委託契約」という名前で契約書を交わしていても、実態として発注者が受注者に対して労働者派遣と同様の指揮命令を行っていれば、それは契約の形式と実態が食い違った「偽装請負」にあたります。契約書の文言がどうであれ、実際の業務の進め方が問われるという点が最大のポイントです。

業務委託契約で仕事を行う場合、委託側の企業が指揮命令を行ってしまうと、「偽装請負」になるケースが出てきます。

出典: gigabaito.com

この指摘の通り、偽装請負かどうかを分けるのは「指揮命令の有無」です。では具体的に、どのような行為が指揮命令とみなされるのか、次で詳しく見ていきます。

偽装請負と判断される指揮命令の具体例

発注者が無自覚にやってしまいがちな「指揮命令」に該当する行為を、実務でよく見られるパターンごとに整理します。

勤務時間の管理

在宅の業務委託ワーカーに対して「毎朝9時から18時まで稼働してください」「離席するときは連絡してください」「出勤・退勤の報告をしてください」といった時間管理をすることは、指揮命令にあたる可能性が高い行為です。業務委託は成果物や役務の提供に対して報酬を支払う契約であり、労働時間を管理する契約ではありません。

もちろん「納期までに成果物を提出してください」という納期管理は問題ありません。問題になるのは、1日単位・時間単位で稼働時間を拘束し、その時間の使い方まで管理しようとすることです。

業務の進め方への具体的指示

「この作業はA、次にB、そのあとCの順番でやってください」というように、業務の手順や方法まで細かく指示することも、指揮命令とみなされやすい行為です。業務委託では、発注者は「何を」「いつまでに」求めるかを伝え、「どうやって」やるかは受注者の裁量に委ねる必要があります。

ただし、成果物の品質基準や仕様書を渡すことは指揮命令にはあたりません。仕様書の提示と、作業手順への逐一の口出しは別物だという点を押さえておいてください。

他の業務との掛け持ちを制限する

在宅ワーカーに対して「うちの仕事だけに専念してください」「他社の仕事は受けないでください」と専属性を求めることも、偽装請負の判断材料になります。業務委託の受注者は本来、複数のクライアントと契約する自由があります。専属を求める場合は、業務委託ではなく雇用契約を検討すべきです。

会議や研修への強制参加

社内会議や朝礼への毎回の出席を義務付けたり、社員向けの研修プログラムへの参加を求めたりすることも、雇用に近い拘束とみなされる可能性があります。業務上必要な打ち合わせは問題ありませんが、社員と同様の扱いをしていないか注意が必要です。

服務規律や社内ルールの適用

社員向けの就業規則や服務規律を在宅の業務委託ワーカーにも適用し、違反した場合に注意や指導を行うことも、雇用類似の管理とみなされるリスクがあります。

もしも、業務委託契約を締結していながら、委託側の企業が指揮命令をしてしまえば、それは業務請負ではなく偽装請負となってしまうのです。

出典: gigabaito.com

これらの例を見ると、「良かれと思って」やっている管理が、実は偽装請負のリスクになっていることに気づく発注者は少なくありません。次に、偽装請負と判断された場合の罰則を確認しておきましょう。

偽装請負の罰則。発注者が負うリスク

偽装請負は職業安定法違反にあたり、決して軽い罰則ではありません。

偽装請負は職業安定法に違反し、懲役または罰金の対象となります。偽装請負による罰則は、職業安定法第63条から67条に基づき、事業者双方に対して、「1年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」が科せられます。決して軽い罰則ではないため、注意不足による指揮命令・指示の実行が、企業に大きな損失を与える可能性があります。

出典: isfnet-services.com

つまり、「知らなかった」「悪気はなかった」では済まされない重さの罰則が定められています。しかも罰則の対象は発注者・受注者の双方です。

罰則以外にも、発注者にとって次のようなリスクがあります。

まず、労働基準監督署から是正指導が入る可能性があります。是正指導自体は罰則ではありませんが、社名や事業内容が公表される事案に発展すれば、取引先や顧客からの信用低下につながります。

次に、在宅ワーカー側から未払い残業代や労働者としての権利を主張されるリスクです。偽装請負の実態が認められると、契約形式が「業務委託」であっても、実質的には「労働者」として扱われ、労働基準法や最低賃金法の適用を主張される可能性があります。これは発注者にとって、想定していなかった費用負担につながりかねません。

さらに、フリーランス保護新法の施行により、フリーランス側が労働局やフリーランス・トラブル110番に相談するハードルが下がっています。2024年の法施行以降、相談件数は増加傾向にあり、発注者としては「バレなければ大丈夫」という考え方が通用しにくくなっています。

私自身、行政書士としてフリーランスの契約相談を受ける中で、発注者側から「うちは大丈夫でしょうか」と不安げに相談されるケースが増えています。多くの場合、悪意があるわけではなく、単に「業務委託の指揮命令のルールを知らなかった」だけです。だからこそ、事前に正しい知識を持つことが、発注者自身を守ることにもつながります。

指揮命令とみなされない例外パターン

指揮命令のすべてが禁止されているわけではありません。業務委託でも認められる指示・管理の範囲を理解しておくことで、必要以上に萎縮せず、安心して発注できます。

成果物の仕様や納期の指定

「この機能を実装してください」「A4サイズで3ページの資料を作成してください」「納期は来月10日までにお願いします」といった、成果物の仕様や納期の指定は業務委託の基本であり、指揮命令には該当しません。むしろ仕様を明確にしないまま発注すること自体が、認識のズレやトラブルの原因になります。

業務品質を確保するための最低限の確認

成果物が仕様通りかどうかを確認したり、修正を依頼したりすることも問題ありません。「この部分は仕様と違うので直してください」という指摘は、業務委託契約における当然の権利です。

セキュリティ上必要な制約

取引先の機密情報を扱う業務で、情報漏えい防止のために特定のツールやセキュリティソフトの使用を求めることは、業務の性質上必要な制約として認められる余地があります。ただし、これも「作業のやり方全般」への指示にならないよう、必要最小限にとどめることが重要です。

進捗の報告を求めること

「週に1回、進捗を報告してください」というように、一定の頻度で進捗確認を行うこと自体は問題になりにくいとされています。ただし、これが「毎日、時間単位で報告してください」というレベルになると、勤務時間管理に近づき、指揮命令とみなされるリスクが高まります。

このように、「成果物や納期についての指示」と「働き方そのものへの指示」を区別することが、偽装請負を避ける最大のポイントです。判断に迷う場合は、社会保険労務士や弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

※このケースでは実際の契約内容によって判断が分かれるため、必ず弁護士や社会保険労務士に個別相談してください。

発注者が実践すべき契約書とマネジメントの工夫

偽装請負のリスクを避けるために、発注者側で実践できる具体的な工夫を紹介します。

業務委託契約書に成果物と納期を明記する

契約書には「何を」「いつまでに」納品してもらうかを明確に記載します。曖昧な「業務全般」という記載ではなく、具体的な成果物の仕様、納期、報酬額、支払い条件を明記することで、業務委託の実態を裏付ける証拠になります。

業務マニュアルは「仕様書」として渡す

業務の進め方を細かく指定したい場合は、それを「命令」として口頭やチャットで逐一指示するのではなく、最初に「仕様書」「業務マニュアル」として文書で渡し、あとは受注者の裁量に委ねる形にします。仕様書の提示は問題になりませんが、日々の作業に対する逐一の指示は問題になりやすいという違いを意識してください。

コミュニケーションツールの使い方に注意する

チャットツールで「今すぐこれをやってください」「至急対応してください」といった即時対応を頻繁に求めることも、労働者に近い拘束とみなされるリスクがあります。業務委託であれば、あらかじめ決めた納期・連絡頻度の範囲でやり取りするのが基本です。

専属性を求めない

在宅ワーカーが他のクライアントの仕事も並行して受けられる状態を尊重してください。専属を求めたい事情がある場合は、業務委託契約ではなく雇用契約への切り替えを検討すべきです。

定期的に契約内容を見直す

長期間にわたって同じ在宅ワーカーに継続発注していると、当初は問題のなかった関係性が、徐々に指揮命令に近い実態に変化していることがあります。半年〜1年に一度、契約内容と実際の業務の進め方にズレがないかを見直す習慣をつけることをおすすめします。

私自身、発注者側の相談を受けていて印象的だったのは、「最初は明確な仕様書ベースで発注していたのに、付き合いが長くなるにつれて、細かい業務指示をチャットで日常的に送るようになっていた」というケースです。悪意なく、徐々に指揮命令の実態に近づいてしまう。これは決して珍しいことではありません。だからこそ、定期的な見直しが重要なのです。

直接依頼と仲介経由。中間マージンとリスク管理の関係

在宅ワーカーへの発注方法には、大きく分けて「代理店や仲介会社を通す方法」と「フリーランスへ直接依頼する方法」の2つがあります。

代理店を通す場合、代理店が採用・契約・進行管理をまとめて代行してくれる安心感がある一方、代理店の手数料が上乗せされるため、同じ予算で依頼できる業務量は少なくなります。一般的に、仲介手数料は報酬額の20%から50%程度が相場とされており、この中間マージンの分だけ発注者のコストが増え、受注者の手取りは減るという構造になります。

一方、フリーランスへ直接依頼する場合は、中間マージンが発生しないため、同じ予算でより多くの業務を依頼できる、あるいは同じ業務量であれば費用を抑えられるというメリットがあります。手数料0%で直接契約できるマッチングサービスを利用すれば、仲介会社を挟む場合と比べて、発注者と受注者の双方にとって金銭的なメリットが大きくなります。

ただし、直接依頼のデメリットとして、契約書の作成やトラブル対応、そして今回のテーマである指揮命令の線引きなど、発注者自身が法務面の知識を持って管理する必要がある点は押さえておくべきです。代理店を通す場合は、代理店側が契約実務や指揮命令のリスク管理をある程度サポートしてくれることもありますが、直接契約ではその役割を発注者自身が担うことになります。

だからこそ、直接依頼を選ぶ発注者ほど、今回解説したような偽装請負の判断基準を正しく理解しておくことが重要になります。中間マージンを削って浮いたコストを、契約書の整備や専門家への相談費用に充てるという発想も有効です。

運営者の一次観察。長く続く発注関係に共通すること

20年この市場を見てきた立場から言えば、偽装請負のトラブルに発展する発注者と、長期的に良好な関係を築ける発注者の違いは、業務の「任せ方」に表れています。

トラブルになりやすいのは、当初は業務委託として発注していたのに、付き合いが長くなるほど「もう社員みたいなものだから」という感覚で、勤務時間や業務の進め方に口を出すようになるケースです。悪意はなくても、関係性が深まるほど管理欲が強くなる。これは人間の自然な心理でもありますが、法律上は明確にリスクのある行為です。

一方で、長く続く発注関係を築けている発注者は、単発の作業を依頼するだけでなく、「この人に任せれば安心」という信頼関係を、指揮命令ではなく仕様書の明確化と適切な報酬設計で作っています。細かく管理するのではなく、最初に期待値をすり合わせ、あとは裁量に任せる。この距離感を保てる発注者ほど、優秀な在宅ワーカーに長期で選ばれ続ける傾向があります。

そしてもう一つ、運営者として見てきた実感があります。中間マージンが乗らない直接取引は、発注者と受注者の双方にとって得をする構造になりやすいということです。同じ予算であれば、発注者はより多くの業務を依頼でき、受注者は同じ業務量でより厚い手取りを得られます。この「額面より手取り」の物語は、単なる金額の話ではなく、双方が長期的に気持ちよく仕事を続けられる質の話でもあります。仲介手数料を削ってその分を報酬に上乗せする、あるいは契約書や業務マニュアルの整備に時間をかける。そうした余力の使い方こそが、偽装請負のリスクを避けながら、良い関係を長く続けるための鍵になると感じています。

在宅ワーカーへの発注を検討する際に押さえておきたい業務範囲の考え方

偽装請負を避けるためには、発注する業務そのものの範囲設定も重要です。ここでは実務でよく発注される業務ジャンルごとに、指揮命令に注意すべきポイントを整理します。

SNS運用代行を依頼する場合、投稿内容の方向性やトンマナのガイドラインを事前に共有することは問題ありませんが、投稿のタイミングや日々の作業手順まで逐一指示すると、指揮命令とみなされるリスクが高まります。月間の投稿本数や更新頻度といった成果物ベースの契約にすることをおすすめします。

経理・事務代行を依頼する場合、対応する業務範囲(記帳代行、請求書発行、経費精算など)を明確にし、処理期限を設定する形にすると、業務委託の実態を保ちやすくなります。逆に「毎日決まった時間にログインして作業してください」という運用は、労働者派遣に近い実態になりがちです。

広告運用代行を依頼する場合も同様に、目標とするKPI(CPA、CVRなど)や運用方針を共有し、日々の細かい入札調整の方法までは口を出さないことが望ましいとされています。

AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、専門性の高い業務を発注する際は特に、成果物の定義を丁寧に行い、業務の進め方は専門家である受注者の裁量に委ねることが、質の高い成果物を得るためにも、偽装請負を避けるためにも有効です。

またアプリケーション開発のように長期プロジェクトになりやすい業務では、アプリケーション開発のお仕事で紹介されているような、要件定義から納品までのマイルストーンを区切った発注形式にすることで、日々の進捗管理を「成果物ベース」で行いやすくなります。

在宅ワーカーへの発注を初めて検討する場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のような業務範囲の考え方も参考にしながら、自社の業務のどこまでを外部委託し、どこからを社内で管理するかを事前に整理しておくことをおすすめします。

報酬相場と契約形態のバランスを考える

偽装請負を避けつつ、適正な報酬設計を行うためには、業界ごとの相場感を把握しておくことも重要です。例えばソフトウェア作成者の年収・単価相場のようなデータベースを参考にすると、業務委託契約で依頼する際の適正な報酬水準を検討しやすくなります。

同様に、ライティングや編集業務を依頼する場合は著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような相場データを参考にすることで、極端に低い報酬設定によるトラブルを避けられます。報酬が相場から大きく乖離していると、受注者側の不満が蓄積し、それが労働局への相談やトラブルの引き金になることもあります。

適正な報酬水準を設定した上で、成果物と納期を明確にした契約書を交わし、業務の進め方は受注者の裁量に委ねる。これが偽装請負を避けながら、長期的に良い在宅ワーカーとの関係を築くための基本的な考え方です。

よくある発注者の失敗例と防ぎ方

私が相談を受けた中で、実際に多かった発注者側の失敗パターンを紹介します。

一つは、業務委託契約を結んでいるにもかかわらず、社員と同じ社内チャットグループに在宅ワーカーを入れ、社員向けの業務連絡(朝礼の議事録共有、勤怠報告のリマインドなど)まで一律で流してしまうケースです。これにより、受注者側から「実質的に社員と同じ扱いをされている」と指摘され、契約の見直しを求められた例があります。対策としては、業務委託の受注者向けに、業務に必要な情報だけを絞って共有する専用のやり取りチャネルを用意することが有効です。

もう一つは、業務委託契約書自体は整備されているのに、実際の運用が口頭やチャットでの指示ベースになってしまい、契約書と実態が乖離していたケースです。契約書は立派でも、日々の運用が伴っていなければ、偽装請負のリスクは残ります。契約書を作って終わりにせず、実際の業務運用が契約内容と一致しているかを定期的に確認する体制が重要です。

三つ目は、業務量が増えるにつれて、当初は成果物ベースだった契約が、なし崩し的に時間拘束型の運用に変わってしまうケースです。「忙しくなってきたから、決まった時間帯に対応してほしい」という要望自体は自然なものですが、それを求めるのであれば、業務委託ではなく雇用契約への切り替えを検討すべきタイミングだと考えてください。

専門家への相談タイミング

自社の発注形態が偽装請負にあたるかどうか判断に迷う場合、次のようなタイミングで専門家に相談することをおすすめします。

まず、新しく業務委託契約を結ぶ前の契約書作成の段階です。この段階で成果物の定義や指揮命令に該当しない業務フローを設計しておけば、後々のリスクを大幅に減らせます。

次に、既存の在宅ワーカーとの関係が長期化し、当初の契約内容と実際の業務運用にズレが生じてきたと感じたタイミングです。半年から1年に一度、契約書の見直しと合わせて専門家のチェックを受けることをおすすめします。

そして、在宅ワーカー本人や社内の他のメンバーから「これは指揮命令にあたるのでは」という指摘を受けた場合は、速やかに専門家に相談してください。指摘を放置すると、労働局への相談やトラブルに発展するリスクが高まります。

相談先としては、社会保険労務士(労務管理の専門家)、弁護士(契約書のリーガルチェックやトラブル対応)、行政書士(契約書作成のサポート)などがあります。フリーランス・トラブル110番のような公的な相談窓口も利用できます。

法律はあなたの味方です。正しい知識を持って業務委託契約を運用すれば、発注者も受注者も安心して長期的な信頼関係を築くことができます。

よくある質問

Q. 業務委託契約で納期を細かく設定するのは偽装請負にあたりますか?

あたりません。成果物の納期や仕様の指定は業務委託の基本であり問題ありません。問題になるのは、日々の勤務時間や作業手順そのものを逐一管理する行為です。

Q. 在宅ワーカーに毎日の進捗報告を求めるのは指揮命令になりますか?

週1回程度の進捗報告は一般的に問題視されにくいとされますが、毎日時間単位で報告を求めると勤務時間管理に近づき、指揮命令とみなされるリスクが高まります。頻度は必要最小限にとどめましょう。

Q. 偽装請負が発覚した場合、発注者はどのような対応を取るべきですか?

まずは弁護士や社会保険労務士に相談し、契約内容と実際の運用を見直します。業務委託を続けたいなら指揮命令にあたる運用を改め、実態が雇用に近いなら雇用契約への切り替えも検討してください。

Q. 代理店経由の発注より直接依頼の方が偽装請負のリスクは高いですか?

契約形態そのものではなく、実際の指揮命令の有無でリスクが決まります。ただし直接依頼では契約実務を発注者自身が担うため、あらかじめ線引きの知識を持っておくことが重要です。

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この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月2日最終更新:2026年7月31日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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