公認会計士の講師・講座の仕事

長谷川 奈津
長谷川 奈津
公認会計士の講師・講座の仕事

この記事のポイント

  • ✓公認会計士 講師 副業として受験指導
  • ✓個人指導の5つを整理します
  • ✓資格を持っている人向けに解説します

公認会計士の資格を持っている人が、教える側に回る道はいくつもあります。予備校の受験指導、大学の非常勤講師、企業の経理部門向け研修、自分で開くオンライン講座、そして個人指導。どれも会計士の知識をそのまま使えますが、報酬の決まり方も、始め方も、必要な準備もまったく違います。

「講師の副業」とひとくくりにして探し始めると、募集要項を眺めるだけで終わります。先に、自分がどの相手に何を教えるのかを決めてください。相手が受験生なのか、経理の実務担当者なのか、経営者なのかで、必要な教材も値付けも変わるからです。

この記事では、5つの形をそれぞれ分解し、報酬の決まり方、始め方、値付けの手順、契約で確認する点まで整理します。資格の取り方や試験の勉強法は扱いません。既に資格を持っている人が、それを教える仕事に換えるところだけを扱います。

会計士が教える仕事は、相手によって5つに分かれる

講師業が会計士に向いている理由は、知識の再確認になる点も含めて、業界の解説でも整理されています。

公認会計士試験や簿記、会計、財務、監査、経営管理などを教える講師業は、会計士に人気の高い副業です。 予備校、専門学校、大学、研修機関などで講座を担当するほか、答案の採点、受験生への指導、セミナー登壇なども含まれます。合格者としての経験や論文、科目学習のノウハウを伝えられるため、受講者にとっても価値が高く、やりがいを感じやすい仕事です。 また、教えることで自身の知識が整理され、専門知識の再確認や説明能力の向上にもつながります。将来的に教育分野へ広げたい人や、発信力を高めたい人にも相性のよい選択肢です。

ここに挙がっている「講座を担当する」「答案の採点」「セミナー登壇」は、実際には別々の仕事です。順に見ていきます。

受験指導と答案の採点

会計士試験や簿記検定の受験生を相手にする仕事です。予備校や専門学校が発注元になります。担当の形は、講義の登壇、答案の採点、質問対応、教材の作成に分かれていて、それぞれ別契約になっていることが多い領域です。

このうち、副業として最も入りやすいのが答案の採点です。決められた基準に沿って採点し、コメントを付けて返す作業で、自宅で完結します。作業時間帯の指定もほとんどありません。1通あたりで報酬が決まる形が一般的で、慣れると処理速度が上がるため、時給換算の数字は経験とともに改善していきます。

講義の登壇は、拘束時間と移動が発生します。オンライン配信に切り替わっている講座も増えましたが、収録のスケジュールは決まった時間に固定されます。本業の繁忙期と重ならないかを、契約前に必ず確認してください。

大学と専門学校の非常勤講師

実務経験のある会計士が講義を担当するのは、学生側から見た価値が高い形です。

大学や予備校等の講師業も、公認会計士におすすめの副業の1つです。公認会計士は会計に携わる資格の中で上級とされているため、会計学、財務、税法などの分野で実務経験を持つ公認会計士の講義は、学生にとって価値が高いといえます。 出典: crear-ac.co.jp

ただし、大学の非常勤は募集が公募で出るとは限らず、既にその大学と関わりのある人からの紹介で決まる例が多くあります。また、契約は年度単位で、シラバスの提出、成績評価、試験問題の作成といった付随作業が発生します。1コマあたりの報酬だけを見て判断すると、実際の作業量と合わないことがあります。

副業として受ける場合の最大の制約は、曜日と時限が固定されることです。平日の昼に90分の枠を半年間確保できるかどうかが、最初の判断になります。

企業研修

事業会社の経理部門、管理職、新任の役員などを相手にする研修です。テーマは、決算実務、内部統制、財務分析の読み方、予算管理、投資判断といったあたりになります。研修会社経由で受ける場合と、企業から直接受ける場合があります。

報酬は1回あたりで決まり、半日や1日といった単位で提示されます。受験指導と比べて単価は高い一方、教材を相手先に合わせて作り直す必要があるため、準備時間が長くなりがちです。同じ教材を複数社に使い回せるようになると、収支が安定します。

研修は業務改善の相談に発展することがあります。教える立場から入って、そのまま業務設計の相談を受けるという流れです。この領域の案件の建て付けはITコンサルティング・講師のお仕事にまとまっているので、研修と相談の両方を視野に入れている人は見ておいてください。

自分で開くオンライン講座

動画教材を作って販売する形、あるいはオンライン会議ツールで定員を決めて開く形です。発注元がいないため、内容も価格も自分で決められます。

ただし、集客も自分でやることになります。教材を作る時間と、受講者を集める時間の両方が必要で、最初の1本が売れるまでに数か月かかることは珍しくありません。既に発信の場を持っている人、あるいは本業の関係で相談を受けている人が、その延長で始める形が現実的です。

個人指導とメンタリング

受験生や、経理担当者、独立を考えている若手会計士を相手に、1対1で継続的に指導する形です。1時間あたりで料金を決め、月に数回のペースで実施します。

教材を作る必要がなく、相手の状況に合わせて話せばよいため、準備時間が最も短い形です。一方で、人数を増やさないと金額が伸びません。他の形と組み合わせて、収入の底として持っておくのが合っています。

報酬の決まり方を、形ごとに把握する

値付けの話に入る前に、それぞれの報酬がどう決まるかを整理しておきます。

答案の採点は1通あたり。講義の登壇は1コマあたり、または1時間あたり。大学の非常勤は1コマあたりで年間の契約。企業研修は1回あたり、または半日や1日の単位。オンライン講座は販売価格に販売数を掛けたもの。個人指導は1時間あたり。

このうち、時間を売っている形と、成果物を売っている形が混ざっています。時間を売る形は、自分の時間が上限になるため、単価を上げないと金額が伸びません。成果物を売る形は、作った後に何度も売れる可能性がありますが、最初の投入時間が長くなります。

副業として始めるなら、時間を売る形から入って、その中で使った教材を成果物に変えていく順序が無理がありません。いきなりオンライン講座を作ろうとして、作りかけのまま止まっている人をよく見ます。

会計・税務分野の報酬水準の全体像は公認会計士,税理士の年収・単価相場にまとまっています。自分に提示された金額が市場のどのあたりにあるかを確認してから返事をすると、根拠のある交渉ができます。

始め方は、声がかかる経路と自分から作る経路の2つ

講師の仕事は、募集ページからの応募だけでは届きません。経路を2つ用意します。

声がかかる経路は、既にある関係の中にあります。出身の予備校、母校の学部、本業の取引先、所属している研究会や委員会。教える仕事の依頼は、その人の話し方を知っている人から来ます。逆に言えば、話しているところを見せていない人には来ません。

だから、自分から作る経路が要ります。具体的には、無料で話す場を1つ持つことです。社内の勉強会、業界団体の分科会、同業者向けの小さな会。30分でかまいません。そこで話した資料を1本残しておくと、次に依頼の話が来たときに提示できます。

予備校や研修会社の講師募集に応募する場合も、この資料が効きます。応募書類には経歴を書きますが、選ぶ側が知りたいのは、この人が話したときに受講者に伝わるかどうかです。経歴の説明より、実際の資料と5分程度の録画を1本添えるほうが、判断してもらえます。

キャリアや働き方の相談を受ける仕事から入る人もいます。相談系の在宅案件の組まれ方はキャリア・副業・人生相談のお仕事に、キャリア支援の資格を組み合わせた進め方はキャリアコンサルタント資格の活かし方|副業・独立ガイド【2026年版】にまとまっています。会計の知識と相談の技術を組み合わせている人は、企業研修でも指名されやすくなります。

値付けの手順

講師の副業でいちばん相談が多いのが、いくらで受ければよいかです。手順にすると迷いません。

時間単価から逆算する

まず、その仕事に何時間かかるかを全部書き出します。企業研修で3時間の登壇なら、登壇3時間だけではありません。事前打ち合わせ、教材作成、リハーサル、当日の移動、終了後の質問対応。合計すると15時間を超えることもあります。

次に、自分が本業以外の時間に対して置きたい時間単価を決めます。その2つを掛けた金額が、最低ラインです。提示額がこれを下回るなら、作業範囲を削るか、断るかの判断になります。

教材を作る時間を必ず単価に入れる

初回と2回目以降で、かかる時間はまったく違います。初回は教材をゼロから作るため、2回目の3倍から5倍の時間がかかります。

ここを織り込まずに初回の金額を決めると、初回だけ大幅な赤字になります。初回は教材作成費を別途計上する、あるいは初回の単価を高くして2回目以降を下げる。どちらの形でもよいので、契約時に分けて提示してください。分けて提示すると、発注側も納得します。

値下げではなく範囲を削る

予算が合わないと言われたとき、単価を下げるのではなく、含まれる作業を減らします。事前打ち合わせを1回だけにする、教材のカスタマイズをやめて汎用版を使う、終了後の質問対応を含めない。

これは値付けの原則です。一度下げた単価は戻りません。範囲を削れば、次回に範囲を戻したときに単価も戻せます。

教材の作り方

最初の1本をどう作るかで、その後の負担が変わります。

作り始める前に、受講者が終わったときに何ができるようになっているかを1文で書いてください。「決算書を読めるようになる」では広すぎます。「損益計算書から、売上の伸びが利益につながっていない原因を3つの観点で特定できるようになる」くらいまで絞ります。

絞ると、話す内容が決まります。逆に絞らないと、知っていることを全部話す構成になり、受講者は何も持ち帰れません。会計士の講義でよく起きるのが、これです。専門家ほど、前提の説明が長くなります。

構成は、原則の説明、具体例、手を動かす演習、質疑の順に組みます。演習を入れると、受講者の理解度がその場で分かります。分からなかった箇所は次回の教材に反映する。この繰り返しで教材が育っていきます。

資料の見た目は、凝る必要はありません。ただし、文字が小さい、1枚に情報を詰め込みすぎ、という状態だけは避けてください。資料作成のスキルを体系的に整えたい人はAdobe認定プロフェッショナル Adobe Expressのような制作系の資格の範囲が参考になります。オンライン講座を自分のサイトで販売するところまで考えるなら、WordPressカスタマイズで稼ぐ|副業エンジニアの実践法【2026年版】にある構築の考え方が使えます。

オンライン講座を作る場合の現実的な手順

自分で講座を作って売る形は、うまくいけば作業時間と収入が切り離せます。ただし、順番を間違えると作りかけで止まります。

最初にやるのは、教材を作ることではありません。誰が、どういう場面で困っていて、いくらなら払うのかを確認する作業です。確認の方法は簡単で、想定している受講者に近い人に3人ほど話を聞くだけです。困っている内容が自分の想像とずれていることは、かなりの確率で起きます。

次に、いきなり動画を作らず、まずオンライン会議ツールで少人数の回を開きます。定員5人程度、90分。ここで受講者の反応を見て、伝わらなかった箇所を直します。この回を3回繰り返せば、教材はかなり整います。動画にするのはその後です。

動画にするときは、1本を10分前後に区切ります。長い動画は最後まで見られません。区切ると、後から一部だけ差し替えることもできます。会計や税務は制度が変わるため、部分的に更新できる構造にしておくかどうかで、講座の寿命が変わります。

価格の決め方は、内容の量ではなく、受講者が得るものの大きさで決めます。決算の実務が回るようになる講座と、用語を知る講座では、同じ時間でも価値が違います。ただし、実績がない段階で高い価格を付けると売れないため、最初の回は受講者からの感想をもらうことを目的にして、価格を抑えるという判断もあります。その場合も、無料にはしないほうがよいというのが一般的な傾向です。無料の講座は受講者の本気度が下がり、感想の質も落ちます。

集客は、講座を作る時間と同じかそれ以上の時間がかかります。既に読者や視聴者がいる人以外は、ここが最大の壁になります。自分で集める見込みが立たないなら、研修会社や教育事業者に教材ごと提供する形のほうが、現実的な収支になります。

本業と両立させる時間の組み方

講師の副業が続かなくなる理由の大半は、内容ではなく時間の組み方です。

まず、自分の本業の繁忙期を月単位で書き出してください。監査法人であれば期末と四半期のレビュー期間、事業会社の経理であれば決算と開示の時期。ここに講師の仕事を入れると、必ずどちらかが崩れます。

そのうえで、受ける仕事を繁忙期の外に寄せます。受験指導であれば講座の期が決まっているため、期の途中で降りることはできません。契約前に、その期間が自分の繁忙期と重ならないかを確認します。企業研修は日程の相談ができることが多いので、受注時に希望の月を伝えてしまうのが確実です。

もうひとつ、準備時間の見積もりを甘くしないことです。2時間の研修に対して、初回は10時間以上の準備が必要になることを前提に予定を組みます。前日の夜に資料を作る想定でいると、本業が伸びた瞬間に破綻します。

継続案件を受けるときは、月に何時間まで出せるかを先に決めて、その範囲を超える依頼は断ります。断ることで信用を失うのではないかと心配する人がいますが、実際には逆です。引き受けて品質が落ちるほうが、次の依頼を失います。

受験指導で特に注意する点

受験生を相手にする仕事には、他の形にはない注意点があります。

1つ目が、出題範囲と傾向の更新です。自分が受験した当時と、現在の制度も出題の形も変わっています。会計基準の改正、試験制度の変更、出題の重点の移り変わり。ここを更新せずに自分の受験経験だけで話すと、受講者に古い情報を渡すことになります。担当する科目については、直近数年分の出題と現行の基準を確認してから登壇してください。

2つ目が、合格までの過程の扱い方です。受験生は不安を抱えて講義に来ています。自分がどう合格したかを話すこと自体は求められますが、それが「このやり方なら必ず受かる」という形になると、合わない受講者を追い詰めます。複数の進め方を示して、選べるようにするのが実務的です。

3つ目が、質問対応の範囲です。受験指導では、講義外の質問が大量に来ます。対応の範囲と時間を契約で決めておかないと、無償の作業が積み上がります。質問はまとめて週に1回返す、といった運用を発注元と合意しておくのが現実的です。

契約と権利まわりで確認すること

教える仕事の契約には、執筆の仕事とは違う論点があります。

1つ目が、教材の著作権です。自分が作った資料の権利が発注元に移るのか、自分に残るのか。移る契約の場合、同じ内容を別の場所で話せなくなることがあります。研修会社経由の案件では、この条項が入っていることが多いので必ず確認してください。

2つ目が、録画の扱いです。オンライン研修では録画されるのが通常ですが、その録画がいつまで、どの範囲で使われるのか。1回の登壇料で、以後何年も配信され続ける契約になっていないかを見ます。二次利用の範囲と期間、追加報酬の有無を書面で決めておきます。

3つ目が、競業に関する条項です。同じテーマで他社の研修を受けてはいけない、という制限が入る場合があります。副業として複数の発注元から受けるつもりなら、この条項の範囲を先に確認しないと、後で身動きが取れなくなります。

4つ目が守秘義務です。企業研修では、相手先の業績や課題に踏み込むことになります。会計士は本業でも守秘義務を負っていますが、副業の案件で知った情報と本業の情報を明確に分けて扱う必要があります。

契約書の読み方そのものに不安がある場合は、士業の業務範囲を整理した行政書士のガイドが、契約書類の扱いを理解する手がかりになります。判断に迷う条項があるときは、専門家に確認してください。

資格の表示と、教える内容の線引き

公認会計士と表示して教える場合、表示の仕方と内容の範囲には注意が要ります。

公認会計士の業務の範囲は公認会計士法に定められています。研修や講義で一般的な制度や実務の考え方を説明することと、受講者の個別の事案について助言することは、性格が異なります。後者に踏み込む場合、その内容によっては別の資格の業務範囲に関わる可能性があります。

特に税務の分野は、税理士法に業務の範囲が定められており、公認会計士が税理士業務を行う場合の要件も同法に定めがあります。研修の質疑応答で受講者から個別の税務の相談を受けたとき、どこまで答えてよいかは、その場の判断ではなく事前に線を引いておくべき事項です。所属している団体や監督官庁の案内で確認し、講義の冒頭で「個別の事案は顧問の専門家に確認してください」と伝える運用にしておくのが安全です。

これは受講者を突き放すためではありません。一般論として説明できる範囲と、個別に判断が必要な範囲を分けて示すことは、実務を知っている人にしか書けない部分であり、それ自体が講義の価値になります。

報酬の受け取り方と、事務まわりの準備

講師の仕事を受けると、報酬の受け取りに関する事務が発生します。ここを最初に整えておくと、後から慌てません。

講演料や研修の講師料は、所得税法上の源泉徴収の対象となる報酬に含まれる場合があります。発注元が法人であれば、支払時に所得税および復興特別所得税が差し引かれて振り込まれる形になります。税率や計算の方法は国税庁の案内で確認してください。提示された金額と入金額が違うのは、この差し引きによるものです。

請求の形式も、発注元によって異なります。こちらから請求書を出す形、発注元が支払通知書を発行する形、業務委託契約に基づいて定額で支払われる形。案件ごとに違うため、受注時にどの形かを確認しておきます。

そして、案件ごとに受注日、実施日、報酬額、源泉徴収額、入金日、経費を1つの表に記録してください。会計士であれば作業そのものは難しくありませんが、案件が増えてから遡って作るのは手間です。最初の1件から記録を始めるのが結局いちばん早くなります。

交通費や資料の印刷費といった経費についても、どちらが負担するかを受注時に決めます。実費精算なのか、報酬に含まれているのか。曖昧なまま進めて、後から請求できないケースが実際にあります。

続く講師と、1回で終わる講師の差

依頼が継続する人と、単発で終わる人の差ははっきりしています。

継続する人は、受講者のレベルを事前に確認しています。同じ「経理担当者向け」でも、入社2年目と課長では前提知識がまったく違います。事前に発注元へ、受講者の職種、経験年数、既に受けた研修を聞いておく。この確認をするかしないかで、当日の伝わり方が変わります。

もうひとつが、終わった後の報告です。研修が終わったら、質疑で出た内容と、受講者がつまずいていた箇所を短くまとめて発注元に渡します。発注元は研修の効果を社内に説明する必要があるので、この報告は非常に喜ばれます。次回の依頼が来る確率が明確に上がる部分です。

逆に、単発で終わる人は、自分の話したいことを話して終わっています。内容は正しく、資料も充実しているのに、受講者が持ち帰れるものがない。この状態は、専門性が高い人ほど起こりやすいので注意が要ります。

運営者として見てきた観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた立場から、教える仕事について気づいたことを書いておきます。

長く続いている人は、教える相手を1つに絞っています。受験生に教える人は受験生だけ、企業の経理に教える人は経理だけ。相手を絞ると教材が蓄積し、2回目以降の準備時間が減っていきます。準備時間が減ると、同じ報酬でも実質的な時間単価が上がる。この積み上がりが、続けられるかどうかを決めています。

相手を広げている人は、毎回ゼロから教材を作ることになり、金額の割に消耗します。数をこなしているのに楽にならない、という相談の背景には、たいていこの構造があります。

もうひとつ、手取りの話をしておきます。仲介を挟む案件では報酬から手数料が引かれる仕組みが一般的で、年間で見ると無視できない差になります。手数料0%で発注者と直接やり取りできる経路を持っている人は、同じ稼働でも手取りが厚くなります。発注する側から見ても、同じ予算でより多く依頼できることになる。金額の差そのものより、その分だけ関係が続きやすくなる点のほうが大きいというのが、長く見てきた実感です。

教える仕事から、業務の設計や仕組みづくりの相談に広がっていく人もいます。企業向けの分析や業務活用の案件がどう組まれているかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、専門資格を持つ人が管理組合や企業に対して助言の仕事を組み立てた例はマンション管理士の副業|管理組合のコンサルティング【2026年版】に整理されています。教える形から始めて助言の形に移った例として、進め方の参考になります。

会計士が教える側に回るとき、必要なのは新しい知識ではありません。既に持っている知識を、相手が使える形に切り分ける作業です。切り分け方さえ決まれば、あとは同じ教材を育てていくだけになります。

よくある質問

Q. 公認会計士が講師の副業を始めるなら、どの形から入るのがよいですか?

答案の採点から入るのが最も負担が軽い形です。自宅で完結し、作業時間帯の指定もほとんどありません。次に入りやすいのが個人指導で、教材を作らずに相手の状況に合わせて話せば済みます。企業研修やオンライン講座は準備時間が長くなるため、採点や個人指導で感覚をつかんでから広げる順序が無理がありません。

Q. 企業研修の値付けはどう決めればよいですか?

登壇時間だけで計算しないでください。事前打ち合わせ、教材作成、リハーサル、移動、終了後の質問対応まで全部書き出し、合計時間に自分の置きたい時間単価を掛けた金額が最低ラインです。初回は教材をゼロから作るため2回目の3倍から5倍の時間がかかるので、初回の教材作成費を別途計上するか、初回単価を高くして2回目以降を下げる形で提示します。

Q. 予算が合わないと言われたら値下げすべきですか?

単価を下げるのではなく、含まれる作業を減らしてください。事前打ち合わせを1回だけにする、教材のカスタマイズをやめて汎用版を使う、終了後の質問対応を含めない、といった調整です。一度下げた単価は戻りませんが、範囲を削った場合は次回に範囲を戻すときに単価も戻せます。

Q. 研修の質疑で個別の相談を受けたら、どこまで答えてよいですか?

一般的な制度や実務の考え方の説明と、個別事案への助言は性格が異なります。公認会計士の業務の範囲は公認会計士法に、税理士業務の範囲は税理士法に定めがあるため、どこまで答えるかは事前に線を引いておくべき事項です。所属団体や監督官庁の案内で確認したうえで、講義の冒頭に個別の事案は顧問の専門家に確認するよう伝える運用にしておくのが安全です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月27日最終更新:2026年9月24日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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