マンション管理士の最初の1件の取り方

中西 直美
中西 直美
マンション管理士の最初の1件の取り方

この記事のポイント

  • ✓マンション管理士の副業で案件の取り方が分からない方へ
  • ✓最初の1件が生まれる4つの入口
  • ✓名称独占と他士業の線引きまで

マンション管理士の副業で案件の取り方を調べている方の多くは、実はもう答えの半分を持っています。合格証書があり、区分所有法も標準管理規約も読める。それなのに手が止まるのは、知識が足りないからではなく、「最初の依頼がどこから来るのか」を誰も教えてくれないからです。

この記事では、資格を取ったあとに最初の1件が生まれるまでの動線だけを扱います。試験の難易度や勉強法は書きません。読者はすでに資格を持っている方だと想定して、どこに声をかければ依頼が発生するのか、提案文には何を書くのか、実績がゼロの状態をどう埋めるのかを、順番に整理していきます。

資格を持っている人の大半が、最初の1件で止まっている

まず、止まっているのがあなただけではないという事実から確認します。この分野は、合格者数と実際に稼働している人の数が大きく食い違うことで知られています。

マンション管理士の資格を取得したものの、多くの人が実務経験を積めずに「ペーパーライセンス」となっているのが現状です。ある調査によると、資格取得者のうち76%はマンション管理士として仕事をしていないという衝撃的なデータがあります。これは、資格を取得しただけでは案件が自然に舞い込んでこないからです。 出典: sokkin-match.me

副業として稼働している人に限ると、割合はさらに小さくなります。

その中で副業でマンション管理士の業務を行っている人の割合をみると、資格取得者全体のうちの8%ほどです。 出典: studying.jp

8%という数字は、裏を返せば競争相手が少ないという意味でもあります。資格保有者の大半が動いていないので、動いた人のところに相談が集まりやすい構造になっています。この分野で最初の1件が出るかどうかを分けているのは、知識の深さよりも「相談できる人としてどこかに名前が出ているか」です。

もうひとつ、先に知っておいてほしいことがあります。副業として稼働している人の報酬の分布です。

マンション管理士として副業している人の年収については、副業している人の59%が年収100万円未満で、年収100万円以上400万円未満が13%です。 出典: studying.jp

年収100万円未満が59%を占めるという数字は、期待値を下げるために出しているのではありません。最初の1件を「生活を変える1件」として設計しようとすると、条件が重すぎて動けなくなるからです。1件目は小さくてかまわない、というより、小さいほうが受注できます。

最初の1件は、マンション管理士の名前で受ける仕事とは限らない

案件の取り方でつまずく人の多くは、「マンション管理士としての顧問契約」を1件目に置いています。管理組合と直接契約し、理事会に毎月出席し、長期修繕計画に意見を述べる。たしかにそれが本流ですが、実績のない人がいきなりそこに入るのは、順番として無理があります。

管理組合は住民の共有財産を預かる立場です。理事は輪番で回ってくることが多く、任期は1年か2年。新しい支出を決めるには総会の決議が要ります。つまり、あなたを採用する判断は、個人の好意ではなく組織の合意として行われます。実績のない人を通すには、理事の誰かが責任を背負って説明しなければなりません。ここが最初の壁です。

そこで、1件目の設計を変えます。狙うのは「マンション管理士という肩書きが信用の裏づけになり、成果物が小さく、判断が個人で完結する仕事」です。具体的には、管理会社の担当者が抱えている作業の一部、士業やコンサル事務所の調査の下請け、専門メディアの記事や資料作成などが該当します。これらは決裁が軽く、成果物の良し悪しがその場で分かるため、1件目として成立しやすい領域です。

在宅中心で始めたい方向けの入口としては、相談業務全般の需要を整理したキャリア・副業・人生相談のお仕事が参考になります。マンション管理の相談は、法律や技術の話に見えて、実際には住民同士の感情の調整が半分を占めます。相談を受ける仕事としての性質を先に理解しておくと、提案文の書き方も変わります。

最初の1件が生まれる4つの入口

依頼が発生する場所は、思っているより限られています。ここでは実際に相談が動いている経路を4つに分けて説明します。

管理会社の担当者からの外注

マンション管理会社のフロント担当者は、1人で10棟から20棟を受け持つことが珍しくありません。総会資料の作成、議事録の整理、修繕の説明資料、アンケートの集計。どれも専門知識が要るのに、手が足りていない領域です。

ここでの依頼は「マンション管理士として意見を述べてください」ではなく、「この資料をまとめてほしい」という形で来ます。肩書きは、担当者が社内で外注を通すときの説明材料として機能します。知識のない外注先に出すと差し戻しが発生するため、最初から分かっている人に出したいのです。

接点の作り方は地味です。前職で管理会社と接点があったなら、まずそこに連絡する。接点がないなら、管理会社が業務委託の募集を出していないかを定期的に確認する。管理業務主任者を併せ持っているなら、その旨も添える。派手さはありませんが、この経路が最も件数の母数が大きい入口です。

管理組合からの直接の相談

顧問契約ではなく、単発の相談として発生する経路です。管理会社の変更を検討している、管理費の値上げ提案が出て理事会が割れている、大規模修繕の見積もりが妥当か分からない。こうした局面で、第三者の意見を求める理事長がいます。

ただし、この経路は待っていても来ません。名前が出ている必要があります。自治体や住宅関連団体が実施する無料相談会の相談員、地域のマンション管理士会が受託している相談窓口、住民向けセミナーの登壇。こうした場に一度でも入ると、そこから個別の相談につながることがあります。報酬は低いか無償のこともありますが、1件目の実績としては十分に機能します。

士業やコンサル事務所の下請け

弁護士や不動産コンサルタントが、マンション関連の案件で調査を必要とする場面があります。管理規約の読み込み、議事録の時系列整理、修繕履歴の突き合わせ。法律判断は依頼元が行い、事実の整理をこちらが担当する形です。

この経路の利点は、依頼元が専門家なので説明のコストが低いことです。「区分所有法第31条の特別決議の要件を満たしているか、議事録から確認してほしい」といった具体的な指示で仕事が始まります。逆に、こちらが法律判断まで踏み込むと領域を侵すことになるため、線引きの意識が要ります。この点は後の章で詳しく書きます。

書き物と調べ物の仕事

不動産系メディア、資格系メディア、管理組合向けの情報サイト。マンション管理の分野は、書ける人が少ないわりに需要が続いている領域です。標準管理規約の改正、マンション管理計画認定制度、修繕積立金の段階増額方式の見直し。制度が動くたびに解説の需要が生まれます。

報酬の水準を知るには、文章を書く仕事全般の相場が参考になります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、職種としての報酬レンジを公的統計ベースで確認できます。専門知識が要る分野は一般的な記事より単価が上がる傾向がありますが、まずは全体の水準を把握しておくと、提示された金額が妥当かどうかを自分で判断できます。

なお、調べ物や資料作成から入る場合、作業系の在宅ワークとの違いも知っておくと選びやすくなります。データ入力・文字起こしの副業は稼げる?在宅ワークの始め方と相場では、単純作業の相場と、専門性が乗ったときの差が整理されています。

提案文に何を書くか

案件の入口が見つかっても、提案文で止まる方が多くいます。ここは具体的に書きます。

冒頭の3行で決まる

依頼者が最初に知りたいのは、「この人は何ができて、うちの困りごとに対応できるのか」の一点だけです。経歴の羅列から始まる提案文は、そこにたどり着く前に閉じられます。

冒頭に置くのは、依頼内容を自分の言葉で言い直した1文です。「総会資料のうち、修繕積立金の改定に関する説明部分の作成というご依頼と理解しました」。この1文があるだけで、募集要項を読んでいることが伝わります。次に、自分が対応できる根拠を1文。「マンション管理士として管理規約と長期修繕計画の読み込みを行っており、区分所有法上の決議要件を踏まえた記載ができます」。最後に、納期と進め方を1文。ここまでで3行です。

書かないほうがよいこと

避けたほうがよい表現があります。ひとつは「勉強させていただきます」です。依頼者は教育機関ではありません。学ぶ姿勢は美徳ですが、提案文に書くと「まだできない人」という情報だけが伝わります。

もうひとつは、対応範囲を広げすぎることです。「マンション管理に関することなら何でもご相談ください」と書くと、依頼者は何を頼めばよいか分からなくなります。むしろ「規約と議事録の読み込み、決議要件の確認、住民向け説明資料の作成に対応できます」と絞ったほうが、依頼が具体化します。

3つめは、報酬を極端に下げることです。相場より大幅に安い金額は、依頼者に「何か理由があるのでは」と思わせます。適正な範囲の下限で出すのは戦略ですが、無償や極端な安値は、1件目の実績としても2件目の交渉材料としても機能しません。

相手が判断できる材料を添える

提案文と一緒に、こちらの仕事の質が分かるものを添えると通過率が変わります。実際の業務成果物は守秘義務があるので出せませんが、公開情報だけで作れる資料なら問題ありません。標準管理規約の改正点を2ページにまとめた資料、マンション管理計画認定制度の申請手順を図にしたもの。こうしたサンプルは、実績の代わりに使えます。

実績ゼロの欄をどう埋めるか

多くの方が最も気にするのがここです。実績欄に書くことがない、という状態をどう抜けるか。

結論から言うと、実績欄は「有償で受けた仕事の一覧」である必要はありません。依頼者が知りたいのは、この人が同じ作業をしたことがあるかどうかです。したがって、次のようなものは実績として書けます。

自分が住んでいるマンションの理事や監事を務めた経験。管理費の見直しに関わった経験。前職で管理規約や議事録を扱った経験。合格後に作成した資料や解説記事。地域の相談会での相談対応。いずれも「マンション管理士としての受注実績」ではありませんが、作業の経験としては事実です。

ここで守るべき一線があります。守秘義務です。前職で扱った案件を具体的に書くことはできません。物件が特定できる情報、住民の氏名、金額の詳細は書かないでください。書けるのは「築30年超、100戸規模の物件で、修繕積立金の改定案の作成に関わった」という粒度までです。この粒度でも、依頼者には十分に伝わります。

副業として動き出すときの全体の手順を確認したい方は、副業 始め方ガイド!星野ゆいが教える失敗しない4ステップとおすすめも併せて読むと、契約や申告まで含めた流れが把握できます。

やってよい範囲を、法令の名前で確認しておく

最初の1件を受ける前に、必ず確認しておくべき線があります。ここを曖昧にしたまま受けると、あとで困るのは自分です。

マンション管理士は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づく国家資格です。同法の第43条では、マンション管理士でない者がその名称または紛らわしい名称を使用してはならないと定められています。名称独占の資格であり、業務独占の資格ではありません。つまり、マンション管理士だけができる業務が法律で囲われているわけではないという点が出発点になります。

ここから先が重要です。名称独占であることは「何をしてもよい」という意味ではありません。他の法律が業務独占を定めている領域には入れません。具体的には、報酬を得て法律事件について法律事務を扱うことは弁護士法が制限しています。官公署に提出する書類の作成を業として行うことは行政書士法が定めています。不動産の鑑定評価、建築士でなければできない設計や工事監理も同様です。

実務では、この線が微妙になる場面が繰り返し出てきます。管理組合と施工会社の紛争について、どこまでが助言でどこからが法律事務なのか。規約改正案の文言をこちらが作成することは書類作成にあたるのか。一般論として断定できる話ではなく、案件ごとの具体的な内容によって判断が変わります。したがって、受ける前に依頼内容を書面で明確にし、疑わしい部分は依頼元や関係する専門家に確認してください。「この資格があるからできる」と自己判断で押し切るのが、最も危ない進め方です。

隣接する資格の業務範囲を知っておくと、この線引きの精度が上がります。行政書士の資格ガイドでは、行政書士が扱う書類作成の範囲が整理されています。自分が受けようとしている作業がその範囲に重なっていないかを、事前に照らし合わせる習慣をつけておくと安全です。

最初の1件でよく起きる4つのつまずき

受注できたあとにも、つまずきやすい場所があります。相談としてよく寄せられるものを4つ挙げます。

ひとつめは、範囲の膨張です。「ついでにこれも見てもらえませんか」が積み重なり、当初の報酬に対して作業量が倍になる。最初の1件は断りにくいため、特に起きやすい現象です。対処法は、受注時に成果物と回数を書面で確定させることです。「議事録の確認は3期分まで、修正対応は2回まで」と書いておけば、追加の相談が来たときに「追加分として別途お見積もりします」と自然に言えます。

ふたつめは、理事会の場での断定です。専門家として呼ばれると、答えを求められます。そこで確信のないまま「それは違法です」「その決議は無効です」と言ってしまうと、あとで訂正できなくなります。分からないことは「確認して次回お答えします」で問題ありません。むしろその一言が信頼を作ります。

みっつめは、住民間の対立に巻き込まれることです。マンションの相談には、必ず立場の違う人がいます。管理費を上げたい理事会と、上げたくない住民。ペット飼育を認めたい人と、認めたくない人。専門家がどちらかの陣営の代弁者に見えた瞬間、仕事が成立しなくなります。事実と選択肢を示し、判断は組合が行うという立て付けを崩さないでください。

よっつめは、報酬の回収です。管理組合との取引では、支払いが総会や理事会の決議のタイミングに縛られます。「作業は終わったのに、支払いが次の理事会まで待ち」ということが普通に起きます。受注時に支払い時期を確認し、着手金を設定できるならしておくと、資金繰りの不安が減ります。

1件目を2件目につなげる

最初の1件が終わったあと、何もしなければそこで終わります。次につなげるために、終了時にやっておくことが3つあります。

ひとつは、成果物の匿名版を手元に残すことです。物件名と個人情報を削除し、構成だけが分かる形にしておく。次の提案でサンプルとして使えます。

ふたつめは、依頼者に対して次の課題を言語化して渡すことです。「今回は総会資料の作成でしたが、長期修繕計画の見直し時期が近づいています」と伝えておくと、次に必要が生じたときに思い出してもらえます。売り込みではなく、観察の共有として渡すのがこつです。

みっつめは、紹介の可能性を閉じないことです。管理会社の担当者は他の物件も持っています。士業の事務所は他の案件も抱えています。1件をきちんと納めた相手は、次の依頼先を探すときに真っ先にあなたを思い出します。この分野は、口コミで動く比率が非常に高い領域です。

募集を見るときに確認する3つのこと

案件を探し始めると、条件がよく見える募集に出会います。そこで判断を誤らないために、確認する項目を決めておくと迷いが減ります。

ひとつめは、成果物が具体的に書かれているかどうかです。「マンション管理に関するアドバイス」とだけ書かれた募集は、範囲が定まっていません。依頼者側も何を頼めばよいか整理できていない状態なので、着手後に要望が増えます。逆に「総会議案書のうち第3号議案の説明文を作成」のように成果物が名指しされている募集は、作業量が読めます。1件目に選ぶなら後者です。

ふたつめは、依頼者が誰かということです。管理会社なのか、管理組合なのか、コンサル事務所なのか、個人の区分所有者なのか。この違いで決裁の速さと支払いの確実さが変わります。個人の区分所有者からの依頼は、話が早い代わりに、組合の合意が取れていない段階の相談であることがあります。そのまま進めると、組合の総意ではない意見を代弁する形になりかねません。誰の依頼として動くのかは、着手前にはっきりさせてください。

みっつめは、報酬の決め方が書いてあるかどうかです。時間単価なのか、成果物ごとの固定なのか、月額なのか。固定額の場合は何をもって完了とするのか。ここが曖昧な募集は、金額そのものより、あとで揉める確率が高いという点で避ける理由になります。

見るべき項目を決めておくと、応募するかどうかの判断に時間を使わなくなります。最初の1件までの期間が長引く原因の多くは、応募数の少なさです。1件あたりの検討時間を短くして、母数を増やすほうが早く着地します。

1件目の前に整えておく事務まわり

受注が決まってから慌てないよう、先に用意しておくものがあります。難しいものはひとつもありませんが、なければ着手が遅れます。

まず、業務委託契約書か、それに代わる発注書と請書です。管理会社や士業事務所からの依頼なら先方の書式が出てきますが、管理組合からの直接依頼では「特に書面はない」という進め方を提案されることがあります。金額が小さくても、業務の範囲、納期、報酬、支払い時期、秘密保持の5点だけは文書で残してください。トラブルの大半は、この5点のどれかが決まっていなかったことに起因します。

次に、秘密保持の扱いです。マンションの案件では、住民の氏名、滞納の状況、管理費の残高など、外に出せない情報に触れます。NDA(エヌディーエー)を締結する場合はその内容を確認し、締結しない場合でも、成果物や作業データの保管と削除の方針を自分で決めておいてください。作業用の端末に個人情報を残さない、共有フォルダの権限を限定する、といった基本的な運用で足ります。

そして、報酬の記録です。副業として受ける場合、給与所得以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。1件目の段階から、入金日と金額、経費を記録しておくと、あとでまとめて遡る手間がなくなります。会計ソフトを使わなくても、表計算ソフトの1枚のシートで十分です。

最後に、勤務先の副業規程の確認です。会社員として働きながら受ける場合、就業規則で副業の届出が必要なことがあります。特に不動産や管理の関連会社に勤めている場合は、競業に該当しないかという論点が加わります。ここを確認せずに受けて、あとから問題になるのは避けたいところです。

運営者として見てきた、最初の1件が出る人の共通点

在宅の仕事とフリーランスの市場を20年見てきた立場から、最初の1件が出る人と出ない人の違いについて書きます。

はっきりしているのは、知識量の差ではないということです。むしろ、詳しすぎる人ほど動きが遅い傾向があります。完璧な準備をしてから応募しようとして、準備が終わらない。一方で1件目が出る人は、対応できる範囲を小さく切って、その範囲だけを明確に伝えています。「マンション管理に関すること全般」ではなく「議事録の整理と決議要件の確認」。狭いほうが選ばれるという逆説が、この市場では明確に成り立っています。

もうひとつ、長く続く人に共通しているのは、単発の作業を売るのではなく「この人に聞けば整理がつく」という関係を作っている点です。マンションの相談は、法的な正解が出れば終わりという性質のものではありません。住民が納得して合意に至る過程を支える仕事です。だからこそ、感情の整理ができる人が重宝されます。専門知識と同じくらい、相手の話を最後まで聞く姿勢が効きます。

報酬の面でも、見落とされがちな構造があります。仲介を何段も挟むと、依頼者が支払った金額と受け手に届く金額の差が大きくなります。中間マージンが乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼者はより多くを頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%で直接つながる形が価値を持つのは、金額の大小の話ではなく、この構造の違いによるものです。長く見てきて感じるのは、双方が納得している取引ほど継続率が高いという単純な事実です。

最後に、最初の1件が出るまでの期間について現実的な見通しを書いておきます。動き始めてから初回の受注まで、3か月から6か月かかることは珍しくありません。応募して落ちる期間が続くと、資格そのものが無意味だったのではと感じる方もいます。そう感じたときに思い出してほしいのが、冒頭の数字です。稼働している人が8%しかいない市場では、動き続けている時点で上位にいます。焦らなくて大丈夫です。準備を小さく切って、出せる場所に出し続けることだけが、1件目に近づく唯一の方法です。

もうひとつ、相談としてよく届くのが「同じ資格を持つ人が周りにいないので、判断が合っているか分からない」という不安です。この分野は独学で進む人が多く、実務の作法を教えてくれる先輩がいない状態で始めることになります。そこで役に立つのが、地域のマンション管理士会や、管理組合向けの相談会に一度参加してみることです。他の人がどんな言葉で説明しているか、どこで線を引いているかを一度見ておくだけで、自分の提案文の精度が上がります。案件を取りに行く前の準備として、費用対効果が高い行動です。

そして、最初の1件が取れなかった期間を、無駄だったと考える必要はありません。応募のたびに募集要項を読み、依頼者が何に困っているかを推測する作業は、そのまま提案力の訓練になっています。実際、受注できるようになった人の提案文を時系列で並べると、初期のものと後期のもので情報の並べ方がはっきり変わっています。相手が最初に知りたいことを先に書く形に、自然と寄っていくのです。動き続けている限り、精度は上がります。

よくある質問

Q. マンション管理士の実績がゼロでも案件に応募してよいですか?

問題ありません。依頼者が知りたいのは受注実績の数ではなく、同じ作業ができるかどうかです。自宅マンションの理事経験、前職での規約や議事録の取り扱い、合格後に作成した解説資料なども実績欄に書けます。ただし守秘義務があるため、物件が特定できる情報や住民の個人情報は書かないでください。

Q. 最初の1件はどのくらいの報酬を想定すればよいですか?

副業で稼働している人の年収は100万円未満が59%を占めるという調査があり、1件あたりの金額は小さいのが実情です。1件目は数千円から数万円の単発作業になることが多く、それで問題ありません。極端な安値や無償は、次の交渉の基準を下げるため避けたほうが安全です。

Q. マンション管理士の資格だけで、規約改正案の作成まで受けてよいですか?

断定できません。マンション管理士は名称独占の資格であり、業務独占ではないため、他の法律が定める独占業務には入れません。書類作成は行政書士法、法律事件の処理は弁護士法が関係します。受注前に依頼内容を書面で確認し、疑わしい部分は依頼元や関係する専門家に確認してください。

Q. 最初の1件を受けるまで、どのくらいの期間を見ておくべきですか?

動き始めてから3か月から6か月程度は見ておくのが現実的です。管理組合の意思決定は理事会や総会のタイミングに縛られ、管理会社の外注も期末や総会前に集中します。応募が通らない期間があっても異常ではないため、対応範囲を狭く切り直しながら継続することが有効です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月18日最終更新:2026年8月27日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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