マンション維持修繕技術者 最初の1件の取り方


この記事のポイント
- ✓マンション維持修繕技術者の登録証は手元にある
- ✓修繕の現場も長く見てきた
- ✓副業として案件を取ろうとした途端に手が止まる
マンション維持修繕技術者の登録証は手元にある。修繕の現場も長く見てきた。それなのに、副業として案件を取ろうとした途端に手が止まる。この状態のご相談は本当に多いです。理由ははっきりしていて、資格試験は「知識があるか」を測る仕組みですが、案件を取る場面で問われるのは「何を、いくらで、いつまでに渡せるか」という別の情報だからです。ここが空欄のままだと、どれだけ知識があっても発注者は判断できません。
この記事では、資格を取ったあと最初の1件を受けるまでにやることを、順番どおりに並べます。提案文に書く内容、実績がない段階で見せられるもの、単価の決め方、そして法令上ふれてはいけない線引きまでを扱います。資格の取り方や試験対策の話は出てきません。すでに持っている人が、それを在宅の仕事に換えるための話だけをします。
修繕の仕事が在宅に切り出されつつある背景を先に押さえる
最初の1件を取る動きに入る前に、市場の側がいまどうなっているかを確認しておきます。ここが分かっていないと、提案文の書き出しが「資格を持っています」で終わってしまいます。発注者が知りたいのは資格の有無ではなく、自分の困りごとが片づくかどうかです。
修繕を必要とする建物が積み上がっている
日本の分譲マンションは1970年代から供給が本格化し、築40年を超える住棟が毎年積み上がっています。マンションは12年から18年の周期で大規模修繕を回すのが一般的で、1回目より2回目、2回目より3回目のほうが判断が難しくなります。理由は単純で、回を重ねるほど過去の工事履歴が複雑になり、図面と現物が食い違い、管理組合側にも当時の経緯を知る人が残っていないからです。
こうした建物では、工事そのものより「判断のための材料づくり」が足りていません。見積書が3社そろっているのに比べ方が分からない。長期修繕計画の数字が10年前のまま更新されていない。理事会に説明する資料が作れない。これらはいずれも現場に立たなくても処理できる仕事で、在宅の副業として切り出しやすい部分です。
求人票が示している「資格の扱われ方」
この資格が実際にどう扱われているかは、求人情報の書き方を見ると分かります。募集要項では、必須要件ではなく歓迎要件の並びに置かれていることが多く、他の資格と束にして書かれています。
【仕事内容】<9割が自社グループの管理物件>分譲マンションの管理やサポート業務をお任せ...<あれば活かせる経験・資格> なくてもOK管理業務主任者宅建士建築士マンション管理士マンション維持修繕技術者... 出典: 求人ボックス
この書かれ方を悲観する必要はありません。むしろ副業として動く人には有利に働きます。「あれば活かせる」ということは、資格そのものが門番になっていないということです。つまり、資格の有無で機械的に弾かれる世界ではなく、提案の中身で選ばれる世界だという意味になります。資格が必須要件になっている求人ばかりだと、常勤の採用枠しか残りません。歓迎要件として扱われているからこそ、業務委託で部分的に頼む余地が生まれます。
在宅で切り出せるのはどの部分か
現場の立会いや打診調査は在宅にできません。切り出せるのは、資料を読んで比べて書く部分です。具体的には次のような単位になります。
・長期修繕計画の見直し補助(数量拾いの確認、周期と単価の妥当性チェック、更新案の作成) ・複数社の見積書を横並びにした比較表の作成と、差異が生じている項目の注記 ・修繕仕様書や要領書のたたき台づくり ・理事会や総会向けの説明資料、住民向けお知らせ文のドラフト ・専門用語だらけの報告書を、居住者が読める日本語に直す作業 ・修繕関連の記事や教材の監修、事実確認
どれも「判断の材料を整える」仕事です。最終的な決定は管理組合が行い、設計や工事監理の資格が要る領域は別の人が担う。その手前を引き受けるという位置取りになります。この線引きは次章で詳しく扱いますが、最初の1件を取る段階でいちばん効くのは、この「引き受ける範囲がはっきりしている」という点です。
最初の1件を取る前に決めておく3つのこと
案件が取れない人の多くは、探し方ではなく準備の順番でつまずいています。応募先を探すより先に、自分の側で固めておくことが3つあります。
売るものを1つに絞る
「マンションの修繕まわり全般をやります」という書き方は、いちばん反応が薄い書き方です。発注者は自分の困りごとに引き寄せて読むので、全般と書かれると自分の件が対象かどうか判断できません。ここは思い切って1つに絞ります。
絞り方のコツは、自分がいちばん短時間で終わらせられる作業を選ぶことです。得意な作業ではなく、速い作業です。たとえば見積書の比較表なら、様式さえ決めておけば3社分で4時間前後、慣れれば2時間台で終わります。速い作業を選ぶと、最初の1件で納期を落とすリスクが下がり、時給換算も崩れません。
絞ったあとも、他の作業を断る必要はありません。看板を1つにするだけです。「見積比較を専門にしています。関連して長期修繕計画の点検もお受けします」という順序で書けば、間口は保ったまま、伝わる看板になります。
やらないと決めることを、先に書き出す
資格を仕事に換えるとき、いちばん危ないのは「この資格があるから、ここまでやってよい」と自分で判断してしまうことです。マンション維持修繕技術者は一般社団法人マンション管理業協会が認定する民間資格で、この資格自体が特定の業務を独占するものではありません。裏を返せば、この資格があるから合法になる、という領域も存在しません。
隣接する領域には、それぞれ別の法律が置かれています。建築物の設計と工事監理については建築士法に定めがあり、規模や構造によって建築士でなければ行えない範囲が決められています。工事の請負については建設業法があり、一定金額を超える工事には許可が要ります。管理組合から報酬を得て他人の依頼で権利義務や事実証明に関する書類を作る行為には行政書士法の定めがあります。マンション管理業そのものにはマンションの管理の適正化の推進に関する法律があり、管理業務主任者の設置や重要事項説明の義務が置かれています。
副業として動く側がやるべきことは、これらの条文を暗記することではなく、「自分の作業がその範囲に触れていないか」を発注者と一緒に確認する習慣を持つことです。提案文に一行入れておくだけで足ります。たとえば「今回お受けするのは資料の作成と比較整理までで、設計や工事監理にあたる判断、および法定の書類作成が必要な部分は含みません。該当しそうな場合は事前にご相談させてください」と書く。この一文があるだけで、発注者からの信頼はむしろ上がります。境界を知っている人だと分かるからです。
書類作成の独占業務がどこから始まるのかは、隣接資格の側から眺めると輪郭がつかみやすくなります。行政書士のガイドでは、どういう書類が独占業務にあたるのかという考え方が整理されているので、自分の作業と突き合わせて確認しておくと安心です。判断に迷う案件は、受ける前に該当する専門家へ振る。これは仕事を失う行為ではなく、次の依頼を呼ぶ行為です。
稼働できる時間と、守れる納期を数字で決める
3つ目は自分の側の条件です。平日夜に何時間、土日に何時間使えるのか。返信は何時間以内に返せるのか。この2つを数字で決めておかないと、提案のたびに納期の見立てがぶれます。
目安として、本業がある状態で無理なく回せるのは週6時間から10時間程度です。この範囲を超えると、体調と本業のどちらかが先に崩れます。最初の1件は特に、見積もった時間の1.5倍かかると考えて納期を置いてください。初回は様式づくりや前提の確認に時間を取られるので、2件目以降とは所要時間が違います。
実績がゼロの段階で、見せられるものを自分で作る
最初の1件が取れない最大の理由は、発注者が「この人の仕事の出来」を想像できないことです。実績がないなら、実績の代わりになるものを自分で用意します。
匿名化した読み解きサンプルを1本作る
いちばん効くのは、成果物の見本を1本持っておくことです。実案件がなくても作れます。公開されている修繕関連の資料や、自分で条件を設定した架空の物件を使って、実際に納品するのと同じ形式でサンプルを作ります。
見積比較を看板にするなら、A社・B社・C社という架空の3社の見積を並べた比較表を作り、単価の差がどこから生まれているのか、数量の拾い方が違うのか、仕様のグレードが違うのか、といった注記を付けます。分量は2ページで十分です。多いほど良いわけではなく、発注者はまず「読みやすいか」を見ます。
このサンプルには必ず「架空の事例をもとに作成した見本です」と明記してください。実在の案件のように見せることは絶対に避けます。守秘の面でも、信頼の面でも、ここを曖昧にすると一発で終わります。
チェックリストを配布物として持つ
もう1つ用意しておくと強いのが、チェックリストです。長期修繕計画を点検するときに自分が見ている項目を、そのまま箇条書きにします。周期の設定根拠、単価の出典年度、数量の拾い直しの有無、一時金や借入の前提、消費税の扱い、といった項目です。
これを提案時に添付すると、発注者は「この人はこういう順番で見るのか」と作業の中身を具体的に想像できます。知識を出し惜しみするより、見せたほうが依頼につながります。20年この市場を見てきた立場から言えば、手の内を隠す人ほど最初の1件が遠く、惜しみなく見せる人ほど早く決まります。読んだ側は、リストを見て自分でやろうとは思いません。むしろ「これを全部見るのは大変だ、頼もう」と思います。
プロフィールは資格の羅列にしない
プロフィール欄に資格名を並べただけの状態は、発注者から見ると情報がゼロに近い状態です。書く順番を変えるだけで見え方が変わります。
先頭に置くのは「引き受ける作業」です。次に「その作業をどう進めるか」、そのあとに「その進め方ができる根拠」として資格と経験を置きます。たとえば、修繕の見積比較と長期修繕計画の点検を承ります、から始め、進め方として数量と単価を分けて比べる手順を書き、根拠としてマンション維持修繕技術者の登録と現場での年数を書く。この順序だと、資格が装飾ではなく理由として機能します。
副業のプロフィールをどう組み立てるかは職種を問わず共通する部分が多いので、キャリア・副業・人生相談のお仕事で扱われている、経験を仕事の説明に翻訳する考え方も参考になります。相談系の仕事は「相手の状況を聞いて整理する」という工程が中心で、修繕の相談対応と構造がよく似ています。
提案文に何を書くか
準備ができたら提案です。ここが最初の1件を左右します。提案文は自己紹介文ではありません。発注者の困りごとに対する回答書だと考えてください。
冒頭3行で、読む理由を作る
発注者は複数の提案を並べて読みます。最初の3行で「自分の件を分かっている」と伝わらないと、そこで読むのをやめます。
冒頭に書くのは、募集文から読み取った状況の要約です。「築30年を超えて2回目の大規模修繕を控えているとのことで、1回目の資料が残っていない点が今回の悩みどころだとお見受けしました」といった書き方です。ここで的が外れていれば以降を読まれませんが、当たっていれば最後まで読まれます。挨拶文や「拝見しました」から始める提案は、この3行を捨てているのと同じです。
提案文の骨格は5つでよい
長い提案文は読まれません。次の5つを、それぞれ2文から4文で書けば十分です。
1つ目は状況の要約です。上に書いた3行がこれにあたります。2つ目は今回やることの範囲で、何をして何を渡すのかを名詞で書きます。「見積3社分の比較表(Excel、注記付き)と、差異の要因メモ(A4で1枚)をお渡しします」という具合です。3つ目は進め方と期間で、いつ何を受け取り、いつ中間で見せ、いつ納めるかを日数で書きます。4つ目は金額です。5つ目は含まないことの明記で、前章で触れた法令上の線引きと、追加になる場合の扱いを書きます。
この5つが揃っている提案文は、実績がなくても読み手が判断できます。逆に、実績が並んでいても範囲と納期が書かれていない提案文は、発注者にとって判断材料がありません。
金額は範囲で出し、根拠を1行付ける
最初の1件で金額を決めるのは怖いものですが、空欄にするともっと不利になります。相場が読めないときは、範囲で出して根拠を1行添えるのが現実的です。
在宅で受ける資料作成系の作業は、内容にもよりますが1件あたり1万円から5万円の帯に収まることが多く、継続的な計画の見直しや監修の形になると月額で3万円から10万円程度の設計になります。時間で見るなら、専門知識が要る資料作成の時間単価は2,500円から5,000円あたりが出発点です。
根拠の1行というのは、「今回は3社分・工種は外壁と防水を想定して、確認と作表で6時間程度を見込んでいます」といった書き方です。金額の絶対値より、時間の見立てが書かれているほうが納得されます。値付けの考え方そのものに不安があるなら、文章系の在宅職種の相場の作られ方が参考になります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、同じ作業でも受け手の裁量が大きいほど単価が上がる構造が見て取れます。修繕の資料作成も、指示どおりに作表するだけの仕事と、判断まで含む仕事では、価格帯が明確に分かれます。
落ちる提案文に共通する3つの型
反応が返ってこない提案文には、はっきりした共通点があります。
1つ目は、経歴が長い型です。前職の会社名や担当物件数が並び、今回の件が出てくるのが後半になっています。発注者はそこまで読みません。2つ目は、質問だけの型です。「詳細を教えていただけますか」で終わる提案は、相手に作業を増やしているだけなので後回しにされます。聞きたいことがあるなら、こちらの想定を書いたうえで「この前提で合っていますか」と確認する形にします。3つ目は、できますとだけ書く型です。何をどう渡すかがないので、判断できません。
最初の1件を受けたあとに、必ずやること
提案が通ったら、そこからが本番です。1件目の進め方が2件目を決めます。
範囲を文章で固定してから着手する
口頭やチャットの流れで作業に入ると、あとから「ついでにこれも」が積み上がります。最初の1件では特にこれが起きやすく、断りづらさから受けてしまい、時給が崩れます。
着手前に、提案文の2番目に書いた範囲をそのまま貼り直して、「この内容で進めます。追加が出た場合は別途お見積りします」と一言添えて合意を取ります。堅苦しく見えるかもしれませんが、発注者側もあとで揉めたくないので、むしろ歓迎されます。フリーランスとして受ける以上、書面で条件を確認しておくことは相手を疑う行為ではなく、双方を守る行為です。
秘密保持と、資料の取り扱いを決める
修繕の案件では、図面、見積書、総会議事録、住戸の状況といった情報を預かります。ここには居住者の個人情報が混ざっていることも珍しくありません。
受け取る前に、保管場所と保管期間、作業が終わったあとの扱いを決めておきます。共有はクラウド上のフォルダに限定し、自分のパソコンには残さない。案件終了後に削除する。ここまで決めておいて、提案の段階で伝えます。秘密保持契約の締結を求められることもありますが、求められなくてもこちらから扱い方を提示するのが安全です。
納品物は、そのまま使える形にする
在宅の仕事で評価が分かれるのは、納品物が「そのまま次に使えるか」です。比較表なら、理事会でそのまま配れる状態か。仕様書のたたき台なら、管理会社に渡してそのまま議論を始められるか。
ファイル名に日付と版を入れる、表の単位を揃える、根拠になった資料のページ番号を注記に残す。この程度の手間で、再依頼の確率がはっきり変わります。専門知識の深さより、受け取ったあとの手間の少なさで評価される場面のほうが多いというのが実際のところです。
1件目を2件目に変えるための動き
最初の1件が終わった時点で、次の依頼につながる材料が3つ手に入っています。これを取りこぼさないでください。
1つ目は、実績の記述です。守秘の範囲を守りつつ、「築30年台の分譲マンションで、大規模修繕の見積3社分の比較表を作成」という粒度なら書けます。物件名や管理組合名は出さず、規模と工種と作業内容だけを書く。この形なら、依頼者に確認を取れば公開できることがほとんどです。確認を取ること自体が、次の相談のきっかけにもなります。
2つ目は、作業テンプレートです。1件目で作った様式は、2件目以降そのまま使えます。所要時間が半分になれば、同じ金額でも時給は倍になります。副業として続くかどうかは、この蓄積が効くかどうかで決まります。
3つ目は、依頼者との関係です。納品して終わりにせず、1か月後に「その後、理事会での説明はいかがでしたか」と一言送る。この一手間で、次の修繕時期や、同じ管理会社が担当している別の管理組合につながることがあります。
市場での位置づけを知っておくと、値付けがぶれない
最初の1件の金額を決めるとき、自分の作業がどのくらいの価値を持つのかが分からないと、必ず安く出しすぎます。基準になるのは、この資格を持つ人が常勤で扱われるときの水準です。
求人情報の集計を見ると、この資格に関連する職種の平均年収は470万円前後の帯に置かれています。年間の労働時間を1,900時間として割り戻すと、時間あたりおよそ2,500円。これに賞与や社会保険の事業主負担を加えると、企業が負担している人件費はさらに上に乗ります。業務委託で受ける側は、この負担分を自分で賄う立場になるので、常勤の時間単価をそのまま自分の単価にすると、実質的には目減りします。
つまり、時間単価2,500円は下限であって、目標値ではありません。前章で挙げた2,500円から5,000円という帯のうち、判断を含む作業は上側に置いて構いません。ここを理解しないまま「相場より安ければ受かるだろう」と考えると、受注はできても続かない価格になります。
もう1つ、市場の側の事情も押さえておきます。この資格の求人は、東京都だけで数百件の規模で動いており、認定している業界団体自身も、資格保有者の位置づけと活用を事業計画に掲げています。つまり、資格の側から仕事を増やそうとしている状態です。この流れは副業で入る人にも追い風になります。常勤で採りたいが人が足りない、という状況は、部分的な業務委託が生まれる前提条件だからです。
ただし、追い風があるからといって案件が向こうから来るわけではありません。求人として出ている枠は常勤が中心で、在宅の業務委託の形で公募されている件数はまだ多くありません。だからこそ、前章までに書いた「切り出せる作業を自分の側から名指しして提案する」動きが効きます。募集を待つのではなく、こちらから業務の単位を作って提示する。この順序が、この分野の副業では特に重要になります。
足りないスキルは、修繕の知識ではなく渡し方の技術
資格を持っている人が案件を取れないとき、足りないのは修繕の知識ではありません。不足しているのは、材料を受け取りやすい形に整えて渡す技術です。ここは短期間で埋められます。
具体的には3つあります。1つ目は表計算の扱いです。見積比較表を作るなら、数量と単価を分けた列構成にして、差額と差額の理由を並べる。関数を駆使する必要はなく、条件付き書式で差異の大きい行に色を付ける程度で、読み手の負担は大きく下がります。ここに要する学習は10時間もかかりません。
2つ目は、説明資料の組み立てです。理事会に出す資料は、結論、判断の根拠、選択肢、次にやること、の順で並べると通りやすくなります。専門家の資料は経緯から書き始めがちですが、読む側は理事会の限られた時間で決めなければならない立場です。順序を入れ替えるだけで、同じ内容でも評価が変わります。
3つ目は、言い換えの技術です。打診調査、爆裂、シーリングの劣化、といった語をそのまま並べた資料は、居住者向けには機能しません。何が起きているのか、放置するとどうなるのか、いま決めるべきことは何か、という3点に翻訳する。この作業ができる人は、修繕の現場では意外なほど少数です。翻訳ができるという一点だけで、依頼の理由になります。
この3つは、いずれも修繕以外の分野でも通用します。資料を作って渡す仕事の相場感を知っておくと、自分の作業をどの帯に置くかの判断がしやすくなるので、隣接する在宅職の情報も一度は見ておくとよいでしょう。
運営者として見てきた、資格を仕事に換えている人の共通点
在宅の仕事の市場を20年見てきた立場から言うと、資格を持っている人が案件を取れるかどうかを分けているのは、知識量ではありません。分けているのは、依頼者の手間をどれだけ引き受けられるかという一点です。
長く続いている人ほど、「この作業をやります」ではなく「この判断をする材料を揃えます」という形で仕事を定義しています。前者は代わりがいますが、後者は代わりが見つかりません。マンションの修繕はまさにこの構造で、工事そのものを担う会社は探せばありますが、管理組合の側に立って材料を整理できる人はほとんどいません。副業として入るなら、ここが最も空いている場所です。
もう1つ、額面と手取りの話をしておきます。同じ3万円の仕事でも、間に何社も入る形と、依頼者と直接つながる形では、手元に残る金額が変わります。仲介手数料が引かれない手数料0%の直接取引では、依頼者は同じ予算でより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。この構造は、副業のように稼働時間が限られている働き方ほど効いてきます。限られた時間で受けられる件数には上限があるので、1件あたりの手取りが薄いと、そもそも続きません。
在宅で受けられる仕事の幅を広げたいなら、修繕の周辺だけに閉じないことも選択肢です。建物や設備のデータを扱う仕事は、集計や資料化の技術と組み合わせると案件の種類が増えます。データの整理や分析まわりの仕事の広がり方はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱われている領域と重なる部分があり、修繕履歴や点検データを扱える人は、この方面からも声がかかります。単価の水準を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場のような技術職の相場と見比べておくと、自分の作業をどの帯に置くべきか判断しやすくなります。
在宅の副業を始める手順そのものを一度整理したい方は、副業 始め方ガイド!星野ゆいが教える失敗しない4ステップとおすすめに、職種を問わず共通する立ち上げの流れがまとまっています。データを扱う在宅ワークの入口についてはデータ入力・文字起こしの副業は稼げる?在宅ワークの始め方と相場が、作業単価の考え方まで含めて参考になります。
最初の1件は、資格を取るより時間がかかることがあります。ただし、通ってしまえば2件目以降の景色は変わります。焦らず、売るものを1つに絞って、範囲を書いた提案を出し続けてください。あなたが持っている知識は、いま材料を欲しがっている管理組合が確かに必要としているものです。
よくある質問
Q. マンション維持修繕技術者の資格だけで、大規模修繕の設計や工事監理を請け負えますか?
建築物の設計や工事監理については建築士法に定めがあり、規模や構造によって建築士でなければ行えない範囲が決められています。この資格は民間の認定資格で、それ自体が特定の業務を独占するものではありません。請け負う前に、その作業が法令上どの範囲にあたるのかを発注者と確認し、該当しそうな部分は専門家に振る形にしてください。
Q. 実務経験はありますが在宅の受注実績がゼロです。最初の1件は取れますか?
取れます。実績の代わりになるのは、架空の事例で作った成果物のサンプルと、自分の点検項目をまとめたチェックリストです。提案文に、状況の要約、渡すものの中身、日数、金額、含まない範囲の5点を書けば、発注者は実績がなくても判断できます。サンプルには架空の事例である旨を必ず明記してください。
Q. 在宅で受けられる修繕まわりの仕事にはどんなものがありますか?
現場に立たなくても進められる作業が対象になります。長期修繕計画の見直し補助、複数社の見積書の比較表作成、修繕仕様書のたたき台づくり、理事会や住民向けの説明資料の作成、専門用語の多い報告書を読みやすく整える作業、修繕関連の記事や教材の監修などです。いずれも判断の材料を整える仕事にあたります。
Q. 最初の1件の金額はどう決めればよいですか?
金額を空欄にすると発注者が判断できないため、範囲で出して根拠を1行添えます。在宅の資料作成系は1件1万円から5万円の帯、継続的な見直しや監修は月額3万円から10万円程度が目安です。時間単価なら2,500円から5,000円あたりが出発点になります。金額そのものより、何時間かかると見込んでいるかを書くほうが納得されます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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