定款を書き直すときの直し方|新旧対照表の作り方


この記事のポイント
- ✓条文の直し方に絞って整理した
- ✓法務局が無料で公開している記載例をもとに
- ✓そのまま使える形で並べる
定款を変えることは決まった。手続きの流れも分かった。ところが、いざパソコンを開くと手が止まる。条文をどう書き換えればいいのか。変更前と変更後をどう並べれば伝わるのか。条を1つ増やしたら、後ろの番号はどうなるのか。
「定款変更書き方」で検索する人がつまずいているのは、手続きではなく文面である。そしてこの部分だけは、どのサイトにも断片しか載っていない。
この記事では、条文を直す作業だけに絞って、書き方の型を並べる。新旧対照表の作り方、議案に書く文面、条ずれの処理、目的や公告方法の文言の決め方。使うのは、法務局が無料で公開している申請書の記載例と、会社法の条文で確かめた内容だけである。
書き直す対象は2つある
最初に整理しておきたいことがある。定款変更で文章を書く場面は、実は2か所ある。
1つ目は、株主総会の議案の文面。「定款第◯条を次のとおり変更すること」と書いて、変更後の条文を示す部分である。これは議事録に載り、登記のときは法務局にも提出する。
2つ目は、定款本体。変更を反映した新しい定款を作り直す作業である。こちらは法務局に出す義務はないが、実務では作り直して保管するのが普通になっている。
この2つは内容がつながっている。議案で確定させた文面を、そのまま定款本体に写す。だから順番としては、議案の文面を先に固めるのが正しい。定款本体を先に直してしまうと、決議していない変更が混じるおそれがある。
そして、その議案の文面を固めるために作るのが新旧対照表である。
新旧対照表は何のために作るのか
新旧対照表とは、変更前の条文と変更後の条文を左右に並べた表のこと。法律の改正で国が公表しているものと同じ形式である。
法律上、定款変更に新旧対照表を作る義務はない。株主総会議事録にも、添付が必要な書類のリストにも入っていない。それでも作る理由は3つある。
1つ目は、変更の範囲を自分で把握するため。1つの条文を直したつもりでも、別の条文がその条文を引用していることがある。「第5条に定める取締役」のような書き方をしている条文が後ろにあると、第5条を動かした瞬間に意味がずれる。左右に並べると、こうした波及が見つけやすい。
2つ目は、株主に説明するため。株主が複数いる会社で「定款を変えます」とだけ伝えても、何がどう変わるのかは伝わらない。対照表を招集通知に添えれば、その場の説明が短くて済む。
3つ目は、議案の文面をそのまま切り出すため。対照表の右側に書いた条文を、議案の「次のとおり変更すること」の後ろへ貼れば、それで議案ができる。二度書く手間がなくなる。
新旧対照表の作り方
作り方は単純である。表計算ソフトでも文書ソフトでも、表を2列か3列で作る。
2列で作る場合は、左に変更前、右に変更後を並べる。3列で作る場合は、いちばん左に条の番号を置く。条が増えたり減ったりする変更では、3列のほうが分かりやすい。
| 変更前 | 変更後 |
|---|---|
| (目的) 第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。 1 衣料品の企画、製造及び販売 2 前号に附帯する一切の事業 |
(目的) 第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。 1 衣料品の企画、製造及び販売 2 インターネットによる商品の売買 3 前各号に附帯する一切の事業 |
この例では2つの変更が同時に起きている。新しい1号を足したことと、最後の包括的な一号の文言が「前号」から「前各号」に変わったこと。後者は見落としやすい。号が1つしかないときは「前号」、2つ以上になると「前各号」になる。左右に並べて初めて気づく類の差である。
書き方のコツを3つ挙げておく。
1つ目は、変更した部分に下線を引くこと。国が公表する新旧対照表もこの形式で、変わった箇所だけが一目で分かる。削除した部分は変更前の側に下線を引く。
2つ目は、変更のない条文は表に入れないこと。全条文を並べると長くなるだけで、どこが変わるのかが埋もれる。入れるのは、変える条文と、その影響を受ける条文だけでよい。
3つ目は、条見出しも対象に含めること。定款の条文には「(目的)」「(商号)」のような見出しが付いている。条の中身を変えるときに見出しが合わなくなることがあるので、見出しごと左右に並べておく。
議案の文面には型がある
対照表ができたら、議案の文面に落とす。法務局が公開している記載例に、そのまま使える型が載っている。公告方法を変更する場合の議事録では、次のように書かれている。
議案 定款変更の件 1 定款第◯条を次のとおり変更すること。 (公告方法) 第◯条 当会社の公告は、電子公告とする。ただし、電子公告による公告をすることができない事故その他やむを得ない事由が生じた場合は、官報に掲載してする。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
注目したいのは、変更後の条文が全文で書かれている点である。「公告方法を電子公告に改める」という説明文ではない。条見出しから条文の最後までを丸ごと書き写している。
この型は3つの場面に使い分けられる。
条文を差し替える場合は、「定款第◯条を次のとおり変更すること」と書き、変更後の全文を並べる。目的の追加も商号の変更も、この型になる。
条を新しく足す場合は、「定款に次の1条を加えること」と書き、新しい条の番号から全文を並べる。既存の条と条のあいだに入れるなら、「第◯条の次に次の1条を加える」と書いて挿入位置を示す。
条を削除する場合は、「定款第◯条を削除すること」と書く。削除した後の条番号をどう扱うかまで書く必要があるが、その点は次の節で扱う。
法務局の記載例では、議案を「1」「2」と番号付きで並べている。複数の条文を同時に変えるなら、条文ごとに番号を振って並べるのが読みやすい。
条ずれをどう処理するか
条を増やしたり減らしたりすると、後ろの条番号がずれる。これが定款を書き直すときにいちばん悩む部分になる。
やり方は2つある。
1つ目は、後ろの条を繰り下げる(または繰り上げる)方法。第5条と第6条のあいだに1条足すなら、新しい条を第6条とし、もとの第6条以降を1つずつ後ろへずらす。この場合、議案には「第6条以下を1条ずつ繰り下げる」という趣旨を明示する。定款としては番号が連続してきれいに収まるが、ずれた条を他の条文が引用していないかを全部確かめる必要がある。
2つ目は、枝番を使う方法。第5条の次に足すなら「第5条の2」とする。後ろの条番号は一切動かない。引用関係も壊れない。法令でもよく使われる形式である。
小さな会社の定款なら、どちらを選んでも問題はない。ただし、条文どうしの引用が多い定款や、株主が複数いて過去の議事録を参照する場面がある会社では、枝番のほうが安全である。番号が動かないので、5年前の議事録に出てくる「第12条」が今も第12条のまま残る。
条を削除する場合も同じ考え方になる。削除して後ろを繰り上げるか、番号を欠番のまま残すか。欠番にするなら「第7条 削除」とだけ書いた条を残す形にする。これも法令で使われる書き方である。
繰り下げや繰り上げを選ぶなら、作業のあとに必ず1回、定款を通しで読む。「第◯条に定める」という書き方をしている箇所が、正しい番号を指しているかを確かめる。ここを飛ばすと、番号だけが噛み合わない定款ができあがる。
目的の条文をどう書くか
定款変更でいちばん多いのが目的の追加である。そして、書き方でいちばん差が出るのもここになる。
目的は登記簿に載って誰でも見られる。取引先が、その会社が何をやる会社かを確かめる材料にする。だから、見た人に事業の中身が伝わる程度には具体的に書く。「各種事業」のような書き方では、何も伝わらない。
一方で、細かく書きすぎると別の問題が起きる。「レディースアパレル製品のオンラインによる小売販売」と書いてしまうと、メンズを扱い始めた瞬間に目的から外れる。実店舗を出したときも外れる。事業が少し広がるたびに定款変更をやり直すことになる。
落としどころは、事業の種類が分かる程度の粒度である。「衣料品の企画、製造及び販売」「インターネットによる商品の売買」「輸出入業務」といった書き方なら、中身が伝わりつつ、動きの幅も残る。
並べる順番にも慣例がある。主たる事業を1号に置き、関連する事業を続け、最後に「前各号に附帯する一切の事業」を置く。この最後の一号は、目的に書き漏らした周辺業務を拾うための受け皿になる。新しい号を足すときは、この一号の手前に入れる。
許認可を受けて事業をするなら、書き方は自由ではなくなる。建設業、宅地建物取引業、古物商、有料職業紹介、飲食業といった許認可には、目的にどう書いてあれば要件を満たすかの運用がある。書き方によっては許可が下りない。決議する前に、許可を出す役所に文言を確認しておきたい。総会で決議してから書き直すと、総会からやり直しになる。
公告方法の条文をどう書くか
公告方法も、書き方に選択肢がある条文である。会社法は3つの方法を用意している。官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、そして電子公告である。定款に何も定めていない会社の公告方法は、官報になる。
電子公告を選ぶ場合、条文には予備の方法も一緒に書くのが一般的である。法務局の記載例でも、「当会社の公告は、電子公告とする。ただし、電子公告による公告をすることができない事故その他やむを得ない事由が生じた場合は、官報に掲載してする」という形になっている。会社法も、電子公告を定める場合に事故等の場合の方法として官報または日刊新聞紙を定められるとしている。
もう1つ、電子公告に固有の注意点がある。登記すべき事項として、公告を掲載するウェブページのURLを登記することになる。記載例には、URLはすべて全角文字で記録すること、と注記がある。
URLの選び方にも幅がある。記載例の注記によれば、原則として公告を実際に閲覧できるページのURLである必要があるが、公告のページへのリンクが分かりやすく設定された目次ページがあれば、そのURLでも差し支えないとされている。そうした作りになっていれば、自社サイトのトップページのURLでも構わない。
サイトを作り替える予定がある会社なら、この点は先に考えておきたい。URLが変われば登記の変更が必要になる。トップページのURLを登記しておけば、下層ページの構成を変えても登記は動かない。
商号の条文をどう書くか
商号を変える場合、条文そのものは短い。「(商号)第1条 当会社は、◯◯◯◯株式会社と称する」という一文である。短いぶん、書ける文字の範囲を知らないと決議のあとでつまずく。
会社法は、株式会社であれば商号の中に「株式会社」という文字を使わなければならないと定めている。また、他の種類の会社だと誤認されるおそれのある文字を使うことも禁じている。合同会社でないのに「合同会社」と紛らわしい語を入れることはできない。
「株式会社」を前に置くか後ろに置くかは自由である。前に置けば前株、後ろに置けば後株と呼ばれるが、法律上の違いはない。既存の取引先の名簿や請求書の並び順に影響するので、変えるなら取引先への連絡とセットで考えたい。
漢字とひらがなとカタカナ以外の文字を使いたい場合は、使える符号に決まりがある。法務省が案内を出している。
商号の登記に用いることができる符号 出典: moj.go.jp
使えるのは、ローマ字の大文字と小文字、アラビア数字、そして「&」「’」「,」「‐」「.」「・」の6つの符号である。
このうち6つの符号には条件が付いている。字句を区切る符号として使う場合に限られるので、商号の先頭や末尾には置けない。たとえば「・◯◯株式会社」とはできない。例外が1つあり、ピリオドだけは省略を表すものとして商号の末尾に使える。「◯◯Corp.株式会社」のような形である。
ローマ字で複数の単語を並べる場合に限って、単語のあいだに空白を入れることもできる。日本文字とローマ字を組み合わせた商号も登記できる。法務省の案内には「ABC東日本株式会社」「大阪XYZ株式会社」という例が挙げられている。
決める前にもう1つやっておきたいのが、同じ住所に同じ商号の会社がないかの確認である。本店の所在場所が同じで商号も同じ会社は登記できない。ビルの1室を共有オフィスとして使っている場合などは、事前に確かめておくと安全である。
本店と事業年度の条文をどう書くか
この2つは、書き方で後の手間が大きく変わる条文である。
本店の条文は、どこまで細かく書くかが分かれ目になる。会社法が定款の必須事項として挙げているのは「本店の所在地」であって、番地までの所在場所ではない。そのため実務では、「(本店)第3条 当会社は、本店を東京都渋谷区に置く」のように、市区町村までを書く例が多い。
この書き方には利点がある。同じ市区町村の中で引っ越す限り、定款変更が要らない。番地まで定款に書いてしまうと、同じビルの別フロアに移っただけで株主総会を開くことになる。
もちろん登記は別で、所在場所が変われば必ず変更登記が必要になる。定款変更が要らないだけで、法務局への申請と登録免許税3万円は発生する。
すでに番地まで書いてある定款を、市区町村までの書き方に改めることもできる。引っ越しの予定があるなら、移転の決議と同じ総会でこの変更も済ませてしまうと、次回以降が楽になる。
もう1つ、住所まわりで知っておきたい区別がある。市町村の合併や区画の再編で住所の表記が変わった場合は、商業登記法が「その変更による登記があつたものとみなす」と定めているので、会社が申請しなくても登記のほうが追随する。一方、住居表示の実施によって番地の表し方が変わった場合は、変更の登記を申請することになる。法務局の申請書様式にも、住居表示の実施等による本店の変更という専用の様式が用意されている。どちらの話なのかは市区町村の窓口で確かめられる。
なお、商号を決めるときに関わってくるのも、この所在場所である。商業登記法は、同じ所在場所に同じ商号を登記することを禁じている。共有オフィスやレンタルオフィスに本店を置いている会社は、商号を変える前にこの点を確かめておきたい。
事業年度の条文は「(事業年度)第◯条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする」という形になる。
事業年度の変更は、登記が要らない定款変更の代表例である。事業年度は登記簿に載っていないので、株主総会で決議して議事録を残し、定款を差し替えれば手続きとしては完了する。法務局へ行く必要はなく、登録免許税もかからない。
ただし税務の届出は別に要る。事業年度を変えると、変更した年度は通常より短い期間で区切られる。その期間について申告することになるので、税務署への異動届出書を出したうえで、申告の時期を税理士と確認しておきたい。決算期を変える動機は節税や繁忙期の回避であることが多いが、実際の有利不利は会社の数字で変わるため、決議する前に税務署か税理士に相談するのが確実である。
附則をどう残すか
定款の末尾には附則を置く。ここに何を書くかで、後の使い勝手が変わる。
書いておきたいのは2つある。
1つ目は、効力が生じる日である。定款変更の効力は、原則として決議が成立した時点で生じる。ただし、決議のなかで効力発生日を先に指定することもできる。事業年度の変更のように、実務の区切りに合わせたい変更ではこの指定が生きる。指定するなら、議案に「本決議は令和◯年◯月◯日から効力を生じる」と書き添え、定款の附則にも同じ趣旨を残す。
なお、効力発生日を指定した場合、登記の期限の起算点もその日になる。登記すべき事項に変更が生じてから2週間という数え方なので、決議の日から数えると期限を取り違える。
2つ目は、変更の履歴である。「本定款は、令和◯年◯月◯日の臨時株主総会の決議により第2条を変更した」という一行を、変更のたびに積み重ねていく。義務ではないが、何度も変更する会社ではこの履歴が効いてくる。取引先や金融機関から定款の写しを求められたとき、いつ何を変えたのかが1枚で説明できる。
履歴を残さない会社は、変更を重ねるほど「今の定款はどれが最新か」が分からなくなる。ファイル名に日付を入れる運用と併せて、附則にも残しておくのが確実である。
定款本体を作り直すときの手順
議案の文面が確定し、決議が終わったら、定款本体を作り直す。
手順は4つである。
1つ目は、現在の定款のファイルを複製すること。元のファイルを直接直さない。変更前の定款は、対照表の根拠として残しておく必要がある。
2つ目は、新旧対照表の右側を、複製したファイルに写すこと。手で打ち直すのではなく、対照表から貼る。打ち直すと誤字が入る。
3つ目は、条番号の通し確認をすること。条を増減したなら、先頭から末尾まで番号が連続しているかを見る。あわせて、条文中に出てくる「第◯条」の引用が正しい条を指しているかを確かめる。
4つ目は、附則に変更の履歴を書き足すこと。決議した年月日と、変更した条を書く。
作り直した定款に、公証人の認証は要らない。認証が必要なのは会社を作るときの定款だけである。印紙税も、課税の対象は「会社の設立のときに作成される定款の原本」に限られている。つまり定款を作り直すこと自体には、手数料も印紙代もかからない。ここは0円で済む。
費用がかかるのは、変えた項目が登記簿に載っている場合の登録免許税だけになる。目的や商号や公告方法の変更なら申請1件につき3万円である。同じ区分に入る変更をまとめて1通で申請すれば、複数の条文を直しても金額は3万円のまま変わらない。書き直したい条文が複数あるなら、1回の総会でまとめて決議するのが得になる。
電子定款で作っている会社の扱い
設立のときに電子定款を選んだ会社は、変更後の扱いをどうするか迷うことがある。
結論を書くと、設立時が電子定款であっても、変更後の定款を電子で持つか紙で持つかは会社の自由である。会社法は定款を電磁的記録で作成できると定めており、電子で持ち続けても構わない。
ただし1つ、誤解しやすい点がある。設立時の電子定款には公証人の電子署名が付いているが、変更後の定款にはそうした認証がない。認証が要るのは設立時だけだからである。したがって、変更後の定款に電子署名を付ける義務はない。取引先に提出する場面では、代表者名義で「これは現在の定款に相違ない」と原本証明を付けた写しを出すのが実務である。
紙で持つか電子で持つかは、社内の運用で決めればよい。定款は本店に備え置く義務があるので、電子で持つなら、求められたときにすぐ表示・印刷できる状態にしておく。
書き方でやりがちな失敗
実際に起きやすいつまずきを4つ挙げておく。
1つ目は、議案に差分だけを書くこと。「目的に1号を追加する」と書いてしまうと、変更後の目的がどうなったのかが議事録から読めない。申請書の登記すべき事項には変更後の全項目を書くことになるので、議事録の段階で全文を確定させておくのが結局は早い。
2つ目は、「前号」と「前各号」を直し忘れること。号が1つしかない状態に号を足すと、最後の包括的な一号は「前号」から「前各号」に変わる。対照表を左右に並べていれば気づくが、変更後の条文だけを見ていると通り過ぎる。
3つ目は、条ずれの引用を放置すること。条を繰り下げたのに、他の条文が古い番号のまま「第◯条に定める」と書いている状態である。定款としては形になっているので、誰も指摘しないまま何年も残る。
4つ目は、決議していない修正を定款本体に混ぜること。作り直すついでに言い回しを整えたくなるが、決議していない変更は定款と議事録の食い違いになる。整えたいなら、次の総会で正式に決議する。
運営者として見てきた、定款を丁寧に書く会社の得
在宅で働く人と発注する企業のあいだを20年近く見てきた立場から言うと、定款の書き方が丁寧な会社には共通する得がある。
取引が始まるとき、相手は登記簿を見る。そこに並んだ目的が、頼もうとしている仕事を含んでいるかどうかを確かめている。含んでいなければ「この会社はこの仕事をやっていないのでは」という疑問が生まれ、確認のやり取りが1往復増える。逆に、事業の中身が伝わる粒度で書いてあれば、そこで話が前に進む。
運営者として見てきた限りでは、仕事の幅を広げていく会社ほど、目的の書き方に余白を持たせている。細かく書きすぎず、かといって抽象的にもしすぎない。この加減は、実際に市場でどんな言葉で仕事が募集されているかを見ていないと身につかない。
もう1つ、手取りの話をしておきたい。法人化を考える人の多くは報酬の額面に目を向けるが、手元に残る額を押し上げるのは、あいだに手数料が乗らない取引の比率であることが多い。手数料0%で直接やり取りできる関係を持っている人は、同じ予算でも依頼する側がより多く頼めるので、受ける側の手取りが厚くなる。定款を整える時間は1日で終わるが、その関係づくりは何年も効き続ける。
目的の文言は、実際の募集の呼び名から決める
目的をどう書くか迷ったら、市場で実際にどんな呼び名で仕事が募集されているかを見るのが早い。発注する側が使っている言葉をそのまま拾えば、取引先にとって分かりやすい目的になる。
システム開発を受ける会社なら、アプリケーション開発のお仕事に、受託開発から保守や技術支援までどんな業務が実在するかがまとまっている。報酬の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確かめられる。
生成AIの活用支援を目的に加えるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、発注する側がどんな言葉で業務を書いているかを拾っておくとよい。文章や編集を事業にするなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が判断材料になる。
条文や議事録を自社で書き続けるなら、文書作成の型を押さえておくと毎回の負担が減る。ビジネス文書検定が扱う範囲が、ちょうどこの土台にあたる。技術系の事業を目的に書くなら、CCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、その事業を実際にやれる会社であることの裏づけになる。
取引条件の固め方という観点では、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが、発注書に何を書いておけば後で揉めないかを整理している。報酬の回収でつまずいた経験があるなら、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】も目を通しておきたい。会計の体制を考えている段階なら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】で専門家側の働き方を知っておくと、依頼の仕方が変わる。
なお、目的の書き方が許認可の要件を満たすか、条ずれの処理をどうするかといった判断は、会社ごとの事情で変わることがある。許認可を持っている、種類株式を出している、条文どうしの引用が多いといった事情があるなら、決議の前に司法書士か弁護士に一度確認してから進めたほうが安全である。税務上の扱いも金額や事情で結論が変わるため、税務署か税理士に確認してほしい。
よくある質問
Q. 定款変更に新旧対照表は必ず必要ですか?
法律上の義務はありません。株主総会議事録にも、登記の添付書類にも含まれていません。それでも作る価値があるのは、条文どうしの引用のずれを見つけられること、株主への説明が短く済むこと、対照表の右側をそのまま議案の文面に使えることの3点です。
Q. 議案には変更後の条文を全文書く必要がありますか?
はい。法務局の記載例も、条見出しから条文の最後までを丸ごと書き写す形になっています。「1号を追加する」という差分の書き方だと、変更後の姿が議事録から読み取れません。申請書の登記すべき事項も全項目を書くので、議事録で全文を確定させると二度手間が減ります。
Q. 条を追加したとき、後ろの条番号はどうすればいいですか?
繰り下げる方法と、枝番(第5条の2など)を使う方法があります。繰り下げると番号が連続してきれいですが、他の条文が古い番号を引用していないか全部確かめる必要があります。枝番なら後ろの番号が動かないので、引用の多い定款では安全です。
Q. 定款を書き直すのに費用はかかりますか?
定款本体を作り直すだけなら0円です。公証人の認証が要るのは会社を作るときの定款だけで、印紙税も設立時に作成される定款の原本に限って課されます。費用がかかるのは、変えた項目が登記簿に載っている場合の登録免許税で、目的や商号の変更なら申請1件につき3万円です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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