決算月を変えるときの定款の直し方と届出

丸山 桃子
丸山 桃子
決算月を変えるときの定款の直し方と届出

この記事のポイント

  • 事業年度変更の定款の書き方を
  • 条文の文例と届出の順番で整理しました
  • 株主総会の議事録に書くこと

事業年度変更の定款の書き方を調べている人の多くは、実は手続き全体の重さを測りかねています。決算月を変えるのは大工事なのか、それとも書類を1枚直すだけなのか。結論から書くと、後者に近いです。株主総会で決議して議事録を残し、税務署と自治体に届出を出す。これで終わります。法務局への登記は要りません。

登記が不要なのは、事業年度が登記される項目に入っていないからです。会社法が定める株式会社の登記事項には、目的、商号、本店、資本金の額、発行可能株式総数などが並びますが、事業年度はそこにありません。だから登録免許税もかからず、司法書士に頼む必要もない。実費でいえば、届出書の郵送代くらいしかかかりません。

とはいえ、書き方を間違えると税務署から問い合わせが来ますし、変更した年の決算が思っていたのと違う形になって慌てることもあります。この記事では、定款の条文をどう直すか、議事録に何を書くか、どこにいつまでに届け出るかを、順番どおりに整理します。

事業年度は、定款に書いたものがそのまま事業年度になる

まず前提を確かめておきます。事業年度とは、会社の業績を区切って計算する期間のことです。4月1日から3月31日まで、といった形で決めます。この区切りの終わりの月が決算月です。

法人税法第13条は、事業年度を「法人の財産及び損益の計算の単位となる期間で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるものに定めるもの」と定義しています。つまり、定款に会計期間を書いていれば、それがそのまま税務上の事業年度になります。

同じ条文には、この期間が1年を超える場合は、開始の日から1年ごとに区切った各期間をいう、というただし書きも付いています。事業年度は1年を超えられない、という決まりがここから出てきます。半年でも3か月でもよいのですが、1年を超えることはできません。

そして、定款に書いた以上、変えるには定款を変える必要があります。定款を変えるには株主総会の特別決議が要る。これが手続きの中心になります。

なお、事業年度は会社法が定める絶対的記載事項ではありません。書かなくても定款は有効です。それでもほぼすべての会社が定款に書いているのは、決算と株主総会の時期を会社の決まりとして固定しておくためです。

全体の流れは3ステップ

決算月を変えるときの手順は、次の3つだけです。

1. 株主総会の特別決議で定款を変更する。 会社法は、株式会社はその成立後、株主総会の決議によって定款を変更することができると定めています。定款変更は特別決議なので、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

2. 株主総会議事録を作る。 登記をしないので法務局に出す先はありませんが、議事録は会社に備え置きます。税務署から「いつ、どう決めたのか」を聞かれたときに出す書類になります。

3. 税務署と自治体に届け出る。 国税は所轄の税務署、地方税は都道府県の税事務所と市区町村です。書式はいずれも異動届出書です。

登記所に行く工程が1つもない。ここが、商号変更や本店移転との決定的な違いです。手続きの重さを測りかねている人は、この点だけ押さえておけば見通しが立ちます。

定款の条文をどう直すか

定款の中で事業年度を定めている条文は、たいてい最後のほうの「計算」という章にあります。よくある形は次のとおりです。

変更前の条文の例です。

「第○条(事業年度) 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする。」

これを、たとえば決算月を9月にするなら、次のように直します。

「第○条(事業年度) 当会社の事業年度は、毎年10月1日から翌年9月30日までの年1期とする。」

直すのはこの1行です。条文番号も、前後の条文も動かしません。定款そのものを作り直すのではなく、この1条だけを差し替えるという理解で合っています。

ここで多くの人が迷うのが、変更する年の扱いです。上の例だと、いまは4月1日に始まった事業年度の途中にいるわけで、10月1日から新しい事業年度が始まるなら、4月1日から9月30日までの半年間はどうなるのか。

この点は定款の本文には書きません。書くとしたら附則です。附則に次のような一文を置く形が実務で使われます。

「(附則) 本定款変更の効力発生日の属する事業年度は、2026年4月1日から2026年9月30日までとする。」

ただし、附則を置かなくても手続き上の問題はありません。定款の本文を直せば、変更の効力が生じた日を含む事業年度は、その期首から新しい決算日までになるからです。附則は、社内の誰が読んでも誤解しないようにするための念押しです。初めて定款を直す場合は、書いておくほうが親切です。

決算月だけでなく、決算日も選べる

見落とされがちですが、決算日は月末である必要がありません。「毎年10月21日から翌年10月20日まで」といった区切り方もできます。実際に20日締めを採っている会社もあります。

とはいえ、月末以外にすると会計処理も請求のサイクルも半端になります。取引先の締め日と合わないと、売掛金の計上でややこしいことが起きます。特別な理由がなければ月末にしておくのが無難です。

株主総会議事録に書くこと

議事録には、次の項目を入れます。

・開催した日時と場所 ・出席した株主の数と、その議決権の数 ・議長と議事録作成者の氏名 ・議案(定款一部変更の件) ・変更前の条文と変更後の条文 ・可決した旨と、賛成した議決権の数

本文の書き方としては、「議長は、当会社の事業年度を下記のとおり変更したい旨を述べ、その理由を説明した。議長が本議案の賛否を諮ったところ、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって、原案どおり承認可決された」といった形になります。

変更前と変更後の条文を並べて書いておくのが大事です。税務署の担当者が読んだときに、どの条文がどう変わったのかが一目で分かる形にしておくと、追加の問い合わせが減ります。

株主が1人の会社でも議事録は作ります。集まる必要すらないので形式的に見えますが、あとから「いつ決めたのか」を証明するものがこれしかありません。決議した日にその場で作る。これが鉄則です。

税務署への届出

国税については、国税庁が「異動事項に関する届出」という手続きを案内しています。

事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号又は名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更、法人の合併、法人の分割による事業の譲渡若しくは譲受け、法人区分の変更、法人の解散(信託の終了を含みます。)・清算結了、支店・工場等の異動等をした場合の手続です。 出典: nta.go.jp

同じ案内には、実務で知っておきたいことが一通り書かれています。

提出時期は「異動等後速やかに」です。何日以内という数字は置かれていません。ただし法人税法第15条は、法人がその定款等に定める会計期間を変更した場合には、遅滞なく、変更前の会計期間と変更後の会計期間を納税地の所轄税務署長に届け出なければならない、としています。決議したらその週のうちに出す、という進め方で問題ありません。

提出先は異動前の納税地の所轄税務署長です。事業年度の変更だけなら納税地は動かないので、いつもの税務署で合っています。

添付書類は、案内では「なし」とされています。ただし、異動事項の内容確認のため定款等の写しを確認する場合がある、とも書かれています。実務では、株主総会議事録の写しを添えて出しておくと、あとからのやり取りが省けます。

提出方法は、e-Taxソフトで作成して提出するのが基本の案内です。書面で作る場合は1部を持参または送付します。

届出書の様式そのものは、国税庁の異動事項に関する届出のページからPDFで取れます。記載要領も同じページにあるので、書き方で迷ったらそちらを見るのが早道です。

なお、この届出書には消費税に関する欄があります。案内には、法人の消費税異動届出書に係る異動事項について、この届出書の消費税の欄にレ印を付して提出した場合は、重ねて法人の消費税異動届出書を提出する必要はない、と書かれています。1枚で済むなら1枚で済ませてください。

条文そのものを確かめたい場合は、e-Gov法令検索の法人税法で第13条と第15条を読むと、定義と届出義務が並んで確認できます。

都道府県と市区町村への届出

国税だけでなく、地方税の届出も必要です。ここを忘れる会社がかなりあります。

東京都の場合、主税局が法人事業税・法人都民税の届出を案内していて、納税地変更、資本金額の変更、解散など法人の届出事項に変更が生じた場合は異動届出書を提出するとされています。届出期間は、廃止・変更の日から10日以内です。国税の「速やかに」と違って、具体的な日数が置かれています。

東京都以外の道府県や、市区町村にも同じ趣旨の届出があります。期限や書式は自治体ごとに違うので、自社の事務所がある自治体の案内を確認してください。支店や営業所を複数の自治体に置いている会社は、その全部に出すことになります。ここが地味に手間のかかる部分です。

段取りとしては、株主総会で決議した日に議事録を作り、その写しを添えて国税・都道府県・市区町村の3方向へ同時に出すのが、いちばん取りこぼしがありません。

変更した年の決算は、必ず1年未満になる

決算月を変えると、その年の事業年度は必ず1年より短くなります。ここを理解しないまま進めると、あとで驚くことになります。

たとえば3月決算の会社が9月決算に変える場合、4月1日から始まった事業年度は、9月30日で締められます。この年の事業年度は6か月です。翌年からは10月1日から9月30日までの12か月に戻ります。

なぜ短くするしかないのかというと、法人税法第13条が事業年度は1年を超えられないと定めているからです。4月1日から翌年9月30日までの18か月、という事業年度は作れません。決算月を後ろにずらす場合も前に戻す場合も、変更した年だけは短い期間になります。

短い事業年度になることの影響は、いくつかあります。

申告の回数が増える。 変更した年に短い決算を1回挟むので、通常より1回多く決算と申告をすることになります。税理士に頼んでいる場合、決算の報酬がもう1回分かかることが多いです。金額は契約によるので、変更を決める前に顧問税理士に確認してください。

月数で按分する項目がある。 減価償却費や、一部の控除の限度額など、事業年度の月数に応じて計算する項目があります。6か月の事業年度なら、年間の半分で計算します。

消費税の扱いが変わる場面がある。 課税期間が短くなることで、納税義務の判定や簡易課税の適用に関する取り扱いが変わることがあります。ここは金額や事情によって結論が変わるので、断定はできません。決める前に税務署か税理士に確認するのが確実です。

いつに決算月を持っていくべきか

そもそも、なぜ決算月を変えたくなるのか。理由はだいたい次のどれかです。

繁忙期と決算作業が重なっている。 これがいちばん多い理由です。決算の作業は1か月以上かかるので、いちばん忙しい月の直後に決算日を置くと、現場が潰れます。アパレルやEC運営の会社なら、セールの山が終わった直後は物流も受注処理も混乱していて、そこに棚卸しを乗せると誰かが倒れます。

在庫がいちばん少ない時期に締めたい。 決算日には棚卸しをします。在庫が山積みの時期に締めると、数えるのが大変なうえ、評価にも手間がかかります。在庫が薄い月末に決算日を置くと、作業量が目に見えて減ります。季節商材を扱う会社ほど、この効果が大きくなります。

売上の山と決算期をずらして、資金繰りを読みやすくしたい。 法人税の納付は決算日の翌日から2か月以内が原則です。売上が入ってくる時期と納税の時期が重ならないように設計すると、資金の谷が浅くなります。

親会社や取引先に合わせたい。 グループ会社の決算期を揃えると、連結の作業が楽になります。

3月決算を避けたい。 3月は税理士も税務署も混みます。3月以外にしておくと、相談の予約が取りやすく、丁寧に見てもらえるという実利があります。

どれを優先するかは会社によりますが、決めるときは「この月末に棚卸しができるか」「この月に決算作業をする人手があるか」の2つを先に確認してください。理屈のうえで最適な月を選んでも、その時期に人が足りなければ意味がありません。

設立してすぐに変えたくなった場合

会社を作った直後に「決算月の選び方を間違えた」と気づくことがあります。設立日から逆算して機械的に決めてしまい、あとから繁忙期と重なると分かった、というパターンです。

このときも手続きは同じです。株主総会の特別決議で定款を変更し、届出を出す。設立して何か月しか経っていなくても、変更に制限はありません。

ただし1つ注意点があります。最初の事業年度(設立事業年度)は、設立の日から最初の決算日までの期間です。これを短くするか長くするかで、最初の申告の時期が変わります。たとえば4月に設立して3月決算にしていた会社が、途中で9月決算に変えると、設立から9月30日までが最初の事業年度になり、そこで1回目の申告をすることになります。

設立1期目の期間は、消費税の納税義務の判定にも関わってきます。ここは資本金の額や売上の水準によって結論が変わるところなので、断定はできません。設立から間もない時期に決算月を動かすなら、変更を決める前に税務署か税理士に一度当たっておくのが安全です。

もう1つ、設立時に定款へ「最初の事業年度は、当会社成立の日から○年3月31日までとする」といった条文を置いている場合があります。この条文も残っているので、あわせて扱いを整理しておくと、定款を読んだ人が混乱しません。

合同会社でも手続きは同じか

合同会社でも、決算月を変えるには定款を変更します。ただし決め方が違います。

株式会社は株主総会の特別決議ですが、合同会社の定款変更は、原則として社員全員の同意で行います。社員とは出資をして会社を構成する人のことで、株式会社でいう株主にあたります。定款に別の定めを置いている場合はそれに従います。

1人で作った合同会社なら、自分1人の同意で足ります。同意書という形で書面を残し、そのうえで税務署と自治体に異動届出書を出す。登記が不要な点も同じです。株式会社より手続きがさらに軽くなります。

2人以上で作った合同会社では、全員の同意が必要になる点に気をつけてください。多数決ではありません。1人でも反対すれば変更できないので、先に話をまとめておく必要があります。

事業年度を12か月より短くしておくという選択

事業年度は1年を超えられませんが、1年より短くすることはできます。半年ごとに決算をする会社も、制度上は可能です。

実際にそうする会社はほとんどありません。決算と申告の回数が倍になり、費用も手間も倍になるからです。上場を目指していて四半期ごとの数字を厳密に管理したい、といった特別な事情がない限り、12か月で回すのが合理的です。

ただし、変更する年だけは必ず12か月未満になります。これは選択ではなく、制度上そうなるものです。「短い決算を1回挟む」という言い方をされるのはこのためです。

短い事業年度を挟むタイミングを選べるのは、変更を決める側の利点でもあります。売上が薄い時期を短い事業年度にすれば、その期の決算作業は軽く済みます。逆に、繁忙期をまたぐ形で短い期間を作ると、忙しいうえに決算が重なるという最悪の組み合わせになります。どの半端な期間を作るかまで含めて設計すると、初年度の負担がかなり変わります。

効力が生じる日をいつにするか

定款変更の効力は、原則として株主総会で決議した時に生じます。将来の日付を効力発生日として決議することもできますが、事業年度の変更ではあまり使いません。決議した日を含む事業年度がその場で区切られる、と考えておけば実務上は足ります。

注意したいのは、過去にさかのぼって変えることはできないという点です。すでに終わった事業年度の区切りを、あとから動かすことはできません。「前期の決算をやり直したい」という理由で事業年度を変更する、という使い方は成り立たないわけです。

もう1つ、決議の日をいつにするかで、短い事業年度の長さが変わります。3月決算の会社が9月決算に変える場合、8月に決議すれば4月1日から9月30日までの6か月が短い事業年度になります。ところが10月に決議すると、すでに10月に入っているので、4月1日から翌年の9月30日までは18か月になってしまい、1年を超えられないという制約に引っかかります。この場合、4月1日から翌年3月31日までを通常どおり1年とし、その次の期を4月1日から9月30日までの6か月とする、という区切り方になります。

つまり、新しい決算日が来る前に決議しておかないと、変更の効果が1年先送りになります。決算月を動かしたいと思ったら、新しい決算日の前月までには決議まで終えておく。これが段取りの要点です。

定時株主総会と決算公告のタイミングも動く

事業年度が変わると、その後ろに連なる年間の予定が全部ずれます。

定時株主総会は、定款で「毎事業年度の終了後3か月以内に招集する」と定めている会社が多く、その場合は新しい決算日から3か月以内が開催の期限になります。3月決算で6月に開いていた会社が9月決算に変えれば、12月までに開くことになります。

法人税の申告と納付は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。9月決算なら11月末が期限になります。資金繰りの表を作っている会社は、納税のタイミングを書き換えてください。

決算公告も、定時株主総会の終結後に行うものなので、時期がずれます。官報に載せる場合は掲載の申し込みに日数がかかるので、新しいスケジュールで逆算し直しておきます。

社会保険や労働保険の年度は事業年度と連動していないので、こちらは変わりません。算定基礎届や年度更新の時期は今までどおりです。このあたりを混同して「全部ずれる」と思い込むと、かえって混乱します。動くのは会社の計算に関わるものだけ、と整理しておくと見通しが立ちます。

決める前に確認する6つのこと

決算月の変更を決議する前に、次の6点を確認しておくと手戻りが出ません。

1. 新しい決算日に棚卸しができるか。 在庫を持つ事業なら、その月末に数えられる体制があるかを先に見ます。

2. 決算作業をする2か月間に人手があるか。 決算日の翌日から申告期限まで、原則2か月です。その期間が繁忙期でないかを確認します。

3. 税理士の繁忙期と重ならないか。 3月決算にすると、5月の申告期限が税理士事務所の山とぶつかります。相談の時間を取ってもらいにくくなります。

4. 短い事業年度を挟むことによる追加費用がいくらか。 決算・申告がもう1回分増えるので、顧問契約の内容を確認します。

5. 役員の任期がいつ満了になるか。 事業年度が変わると任期の満了日も動きます。役員変更の登記が必要になる時期を確認しておきます。

6. 消費税や各種届出への影響。 課税期間が短くなることで判定が変わる場面があります。事情によって結論が変わるので、税務署か税理士に確認します。

この6つを潰しておけば、決議したあとに「そんなつもりではなかった」となる場面はほぼなくなります。

変えたあとに直すもの

届出を出して終わりではありません。決算月が変わると、社内のあちこちに影響が出ます。

会計ソフトの設定を直します。事業年度の開始日と終了日を変更しないと、仕訳の期間がずれます。変更した年は短い事業年度になるので、その設定も要ります。

定款の最新版を作り直します。変更後の全文を1つのファイルにまとめ直して保管してください。融資審査や補助金の申請で「現行定款の写し」を求められたときに、設立時の定款しか出てこないと、変更議事録を全部集め直すことになります。

役員の任期の起算を確認します。役員の任期は「選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」という形で決まっているので、事業年度が変わると任期の満了日も動きます。任期満了を見落とすと役員の変更登記が遅れ、過料の対象になる可能性があります。ここだけは登記に関わるので、変更したら必ず確認してください。

定時株主総会の時期も変わります。定款に「毎事業年度の終了後3か月以内に招集する」と書いてある場合、新しい決算日を基準に数え直します。

取引先への案内も、必要に応じて出します。請求や支払いのサイクルが決算月に連動している場合は、先に伝えておくと混乱しません。

6か月の決算になると、枠が半分になるものがある

短い事業年度になると、月数で按分される枠があります。数字が具体的に決まっているものを2つ挙げます。決算月を変える年に、その枠を当てにした買い物や支出を予定していると、想定が崩れます。

1つ目が、中小企業者等が30万円未満の資産を買ったときに全額を損金にできる特例です。年間の上限が300万円と決まっていますが、国税庁の案内には按分の計算まで書かれています。

適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額。月数は、暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは、これを1か月とします。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。 出典: nta.go.jp

6か月の事業年度なら150万円です。3月決算を9月決算に変える年に、20万円台のパソコンを15台まとめて買う計画があったなら、その期の枠は150万円なので入りきりません。買う時期を短い事業年度の後ろの期に回すか、台数を分けることになります。

2つ目が、交際費の定額控除限度額です。資本金1億円以下などの法人は、交際費のうち年800万円までを損金にできますが、国税庁の案内では、800万円にその事業年度の月数を乗じて12で除した金額が定額控除限度額とされています。6か月なら400万円です。

損金不算入額は、上記の「概要」の交際費等の額のうち、800万円にその事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額(定額控除限度額)を超える部分の金額 出典: nta.go.jp

減価償却費も同じ考え方で、6か月の事業年度なら年間の償却額の半分になります。つまり短い期は、費用として落とせる枠も半分になる。売上が薄い時期を短い事業年度にすると決算作業は軽くなりますが、枠まで半分になる点は別に計算しておいてください。

異動届出書は3行を書き換えるだけ

税務署に出す異動届出書は、事業年度の変更なら埋める場所がごく限られています。会社の情報のほかに書くのは次の3つです。

・異動事項として「事業年度」と書く ・異動前の内容として、いまの事業年度を「4月1日から3月31日まで」のように書く ・異動後の内容として、新しい事業年度を「10月1日から9月30日まで」のように書く

このほかに異動年月日の欄があります。ここには定款変更の効力が生じた日、つまり株主総会で決議した日を書きます。届出書を作った日や、新しい事業年度が始まる日ではありません。都道府県と市区町村に出す異動届出書も、聞かれることはほぼ同じです。

添付するものは、国税庁の案内では「なし」とされていますが、内容の確認のため定款等の写しを確認する場合があると書かれています。議事録の写しを1部添えておけば、この確認のやり取りが省けます。3方向に出すなら、議事録の写しも3部用意しておくと1回で終わります。

手続きの多い時期に、何を抱え込むか

20年この市場を見てきた立場から言えば、会社の手続きでいちばん時間を失うのは、難しいからではなく、慣れていないからです。事業年度の変更は、やることの数だけなら5つか6つしかありません。それでも初めてやると、書式を探し、記載例を読み、どこに出すかを調べるだけで半日が消えます。2回目からは30分で終わります。

長く続いている会社ほど、この「初回だけ重い作業」を早めに外に出しています。判断が要る部分、つまり決算月をいつにするかは経営者が決める。一方、議事録を整える、届出書を書式どおりに埋める、自治体ごとの提出先を洗い出すといった作業は、慣れた人に任せる。この切り分けができている会社は、手続きで事業が止まりません。

そのときに効いてくるのが、間に入る手数料の大きさです。同じ予算でも、仲介の取り分が大きければ実際に手を動かす人に届く額は減り、受ける側の手取りも薄くなります。手数料0%で直接やり取りできる形は、依頼する側が同じ予算でより多く頼め、受ける側の手取りが厚くなるという意味で、両方に効きます。運営者として見てきた限りでは、この形で続いている関係ほど、単発の作業依頼ではなく「決算の時期はこの人に頼む」という定着した関係に育っています。

社内の手続きを誰かに任せることを考え始めたら、どんな仕事が外に出せるかを一覧で見ておくと具体化します。定型業務を洗い出して自動化の道筋を作るAIコンサル・業務活用支援のお仕事は、決算まわりの繰り返し作業とそのまま重なる領域です。手続きそのものを仕組みに置き換えるならアプリケーション開発のお仕事という発注の仕方もあります。

予算を組むときは相場を先に見ておくと、交渉が早く終わります。開発を頼む場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場、文書を作る仕事を頼む場合は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、職業分類ごとの水準がまとまっています。任せる相手を選ぶ手がかりとしては、議事録や規程を扱う業務ならビジネス文書検定のような資格が目安になります。

外注を始める前に整えておきたいのが、発注の型です。フリーランスに仕事を出す会社には下請法(取適法)の規制がかかる場面があり、発注書に書くべき項目が決まっています。この点はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。会計まわりを誰に見てもらうかで迷っているなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に、専門職がどこまで受けられるかがまとまっています。支払いでもめたときに備えるなら、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で回収の手順と費用の相場を見ておくと、契約書に入れるべき条項が逆算できます。

決算月を変える手続きそのものは、定款の1行を直して議事録を作り、3方向に届け出るだけです。重いのは手続きではなく、いつに変えるかという判断のほう。そこに時間を使えるよう、作業の部分は最初から手放しておくのが合理的です。

よくある質問

Q. 事業年度を変更するのに登記は必要ですか?

必要ありません。事業年度は会社法が定める登記事項に入っていないため、法務局への変更登記は不要で、登録免許税もかかりません。必要なのは、株主総会の特別決議による定款変更、議事録の作成、そして税務署と都道府県・市区町村への異動届出書の提出です。

Q. 定款の条文はどう書き直せばよいですか?

事業年度を定めている条文の日付だけを差し替えます。「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする」を「毎年10月1日から翌年9月30日までの年1期とする」といった形です。変更した年の期間を明確にしたい場合は、附則にその事業年度の開始日と終了日を書き添えておくと社内で誤解が生じません。

Q. 税務署への届出はいつまでに出しますか?

国税庁の案内では、異動事項に関する届出の提出時期は「異動等後速やかに」とされています。法人税法も、会計期間を変更した場合は遅滞なく変更前と変更後の会計期間を所轄税務署長に届け出るよう定めています。地方税は自治体ごとに期限が異なり、東京都の場合は変更の日から10日以内です。

Q. 決算月を変えた年の事業年度はどうなりますか?

必ず1年より短くなります。法人税法が事業年度は1年を超えられないと定めているためで、3月決算を9月決算に変えると、その年は4月1日から9月30日までの6か月が1つの事業年度になります。決算と申告を通常より1回多く行うことになるので、税理士報酬が追加で発生するかを事前に確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月19日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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