定款を変えたあとの定款の作り直し方|附則に何を残すか


この記事のポイント
- ✓定款変更後の定款附則をどう扱うかを整理しました
- ✓株主総会で決議しても手元の定款は自動では変わりません
- ✓作り直すか一式で保管するかの選び方
株主総会で定款の変更を決議して、法務局への登記も終わった。ところが手元にあるのは設立のときに作った定款のままで、中身は変更前の状態です。この定款をどうすればよいのか。特に、設立のときの記録が並んでいる附則の部分をどう扱えばよいのか。定款変更後の定款附則で迷う人が多いのは、ここに決まった様式がないからです。結論から言えば、作り直すやり方と、作り直さずに一式で保管するやり方の2つがあり、どちらも間違いではありません。この記事では、その選び方と、作り直す場合に附則へ何を残し何を足すのかを整理します。
決議をしても、手元の定款は自動では変わらない
最初に押さえておきたいのは、定款の変更と、定款という文書の書き換えが別の作業だという点です。
定款とは、会社の決まりごとを書いた文書のことです。この内容を変えるには、株式会社なら株主総会の決議が要ります。そして決議をした瞬間に、定款の内容は法的には変わっています。文書を書き換えたかどうかは関係ありません。
ですから、決議と登記を終えた時点で、手続き自体は完了しています。そこで安心して手が止まり、手元の定款だけが古いまま何年も残る。これが実際によく起きていることです。
困るのは、外から定款の提出を求められたときです。銀行の口座を開くとき、融資を申し込むとき、許認可を申請するとき、補助金に応募するとき。求められるのは「現在の内容が分かる定款」です。設立のときの定款をそのまま出すと、登記事項証明書と中身が食い違い、その場で説明を求められます。
定款は、求められたら見せる義務のある文書でもあります。
発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
同じ会社法第31条の第2項では、株主と債権者が営業時間内であればいつでも、定款の閲覧や写しの交付を請求できると定められています。債権者には、取引先や金融機関のように会社に対して債権を持つ相手が含まれます。つまり定款は、いつでも出せる状態にしておくことが前提の文書です。
作り直すか、一式で保管するか
実務で取られている扱いは、次の2つに分かれます。
1つめは、設立のときの定款と、その後の変更を決議した議事録をセットで保管する方法です。定款そのものには手を入れません。求められたときは、定款と議事録を一緒に出します。
2つめは、変更を反映させた最新版を1つの文書として作り直す方法です。作り直したものは現行定款と呼ばれます。求められたときは、この1冊を出します。
どちらを選ぶかは、変更の回数と、定款を出す頻度で決まります。
変更が1回か2回で、定款を出す機会もほとんどないなら、1つめで足ります。作り直す手間をかける理由がありません。
一方、変更を3回、4回と重ねている会社や、融資や許認可で定款を出す機会が多い会社は、2つめにしておくほうが楽です。議事録を何枚も添えて「この条文は令和5年の総会で、こちらは令和7年の総会で変わりました」と説明するのは、渡す側も受け取る側も負担になります。
実際のところ、変更が2回を超えたあたりで作り直す会社が多いという印象があります。目安として覚えておいて構いません。
現行定款という呼び方
作り直した定款を指す言葉が現行定款です。これは法律上の用語ではなく、実務で使われている呼び名です。
対になる言葉が原始定款です。会社を作るときに最初に作り、株式会社であれば公証人の確認を受けた定款のことを指します。
この2つを分けて考えるようになったのは、外から定款を求められる場面で「どちらを出せばよいか」がはっきりするからです。許認可の窓口や金融機関が見たいのは、ほとんどの場合、現在の内容です。ですから渡すのは現行定款になります。設立のときの出資額や発起人を確認したいという特殊な場面でだけ、原始定款が必要になります。
ここで注意したいのは、現行定款には公的なお墨付きがないという点です。公証人が確認しているのは原始定款だけで、作り直した文書を誰かが検証しているわけではありません。会社が自分で「これが現在の内容です」と示す文書です。だからこそ、後述する原本証明や、変更の経緯の記載が効いてきます。
附則に何を残し、何を足すか
本題です。作り直すとき、附則をどう扱うか。
附則は、定款の末尾に置かれた章で、設立のときの事実が書かれています。出資された財産の価額と成立後の資本金の額、最初の事業年度、設立時の取締役、発起人の氏名と住所と引き受けた株式数、そして法令の準拠。この5つが並んでいるのが典型的な形です。
作り直すときの原則は次の2つです。
1つめ、設立のときの記録は消さずに残します。役割を終えているように見えても、会社の来歴を示す唯一の記録だからです。ここを消すと、原始定款を引っ張り出さない限り、いくらで始まった会社なのかが分からなくなります。
2つめ、変更の経緯を附則の末尾に足します。いつの総会で、どの条文を変えたのか。これを積み重ねていくことで、1つの文書を読めば会社の歴史が追える状態になります。
この2つを守れば、附則の扱いで大きく外すことはありません。
迷いやすいのが、最初の事業年度の条文です。1回目の決算が終われば役目は終わっているので、消してよさそうに見えます。ですが、ここも残すのが通例です。理由は、税務の場面で最初の事業年度の区切りを確認されることがあるためです。設立の年の申告について後から問い合わせが来たとき、定款を見れば答えられる状態にしておくほうが早く終わります。
設立時取締役の氏名も同じです。すでに改選が済んでいても、誰が最初の取締役だったかは事業承継や株式の整理の場面で確認されます。
変更の経緯は、こう書く
附則の末尾に足す文の形に決まりはありません。実務でよく見るのは、次のような書き方です。
「(附則)この定款は、令和7年3月15日開催の臨時株主総会の決議により、第2条を変更したものである。」
変更が複数回あるなら、これを古い順に並べます。
「1 この定款は、令和5年6月20日開催の定時株主総会の決議により、第3条を変更したものである。 2 この定款は、令和7年3月15日開催の臨時株主総会の決議により、第2条を変更したものである。」
書くときのこつは3つあります。
1つめは、総会の日付を正確に書くことです。議事録に書いた日付と1日でもずれていると、突き合わせたときに別の決議に見えます。
2つめは、変更した条の番号を書くことです。「一部を変更した」だけでは、どこが変わったのか追えません。
3つめは、定時株主総会か臨時株主総会かを書き分けることです。議事録の表題と揃えておきます。
合同会社の場合は、株主総会ではなく社員の同意で定款を変更します。ですから「令和7年3月15日付けの総社員の同意により」という書き方になります。会社法第637条は、持分会社は定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款の変更をすることができると定めています。
なお、この経緯の記載は法律で求められているものではありません。書かなくても定款としての効力に影響はありません。ただ、書いておくと、定款を受け取った側が内容を信用しやすくなります。
議事録は捨てない。法律で保管期間が決まっている
定款を作り直したあと、元になった議事録を処分してよいかという質問が出ます。答えは明確に、だめです。
株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
会社法第318条第2項は、株主総会の議事録を総会の日から10年間、本店に備え置くことを義務づけています。支店がある場合は、写しを5年間備え置きます。同条第4項により、株主と債権者は営業時間内であれば、この議事録の閲覧や謄写を請求できます。
株主総会を実際には開かず、株主全員の書面による同意で決議があったものとみなす方法を使った場合も同じです。会社法第319条第2項は、決議があったものとみなされた日から10年間、その書面を本店に備え置くことを求めています。
そして実務の観点から言えば、法律の期間を過ぎても捨てないほうがよい。作り直した現行定款は、会社が自分で作った文書にすぎません。その正しさを説明できるのは、根拠になった議事録だけです。議事録がなければ、現行定款は「会社がそう主張しているだけの文書」になってしまいます。
保管の形は紙でも電子でも構いません。紙で残すなら、設立のときの定款、登記事項証明書、印鑑カードと同じ場所にまとめておくのが確実です。
作り直した定款に、認証も印紙も要らない
作り直すとなると、また公証役場へ行くのか、印紙を貼るのかと身構える人がいます。どちらも要りません。
公証人の確認が必要なのは、会社を作るときに最初に作った定款だけです。会社法第30条第1項が認証を求めているのは設立時の定款であり、成立後の定款変更は株主総会の決議で効力が生じます。作り直した文書を持ち込む必要はありません。
印紙についても、国税庁の一覧表が範囲を限定しています。
6 [定款] (注) 株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限ります。 4万円 出典: www.nta.go.jp
印紙税の対象になるのは、設立のときに作成される定款の原本に限られます。4万円という金額は、あくまで設立の場面の話です。作り直した現行定款は設立のときの文書ではないので、対象になりません。
ですから、作り直す作業にかかる費用は実質的にゼロです。パソコンで文書を作り、印刷して綴じるだけです。この手軽さを知らずに、司法書士に頼まないとできないと思い込んでいる人がかなりいます。
原本証明のつけ方
作り直した定款を外に出すとき、多くの場面で「原本証明をつけてください」と言われます。
原本証明とは、その写しが原本と同じ内容であることを会社が証明する手続きのことです。やり方は決まった様式があるわけではありませんが、実務では次の形が使われています。
すべてのページを原寸大でコピーします。順番どおりに並べてまとめ、末尾に「これは原本と相違ありません。」という文言と、日付、会社の商号、代表者の肩書と氏名を記載し、会社の実印を押します。ページが複数にわたるときは、綴じ目に同じ印鑑で契印を押します。
この作法は、法務局が登記の添付書類について案内している原本還付の手順とほぼ同じです。
その場合には、原本をコピーしたもの(コピーが複数枚にわたる場合には、それらを合わせてとじたもの)に、申請書に押印した人が「原本に相違ありません。」と記載して記名したものを、必ず原本とともに提出してください。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
求める側によって、袋とじにしてほしい、実印と印鑑証明書を添えてほしい、といった条件が加わることがあります。提出先に先に確認してから作ると、作り直しがありません。
条番号のずれと、登記との突合
作り直すときに起きやすい事故が2つあります。
1つめは、条番号のずれです。条を追加したり削除したりすると、それ以降の番号が全部ずれます。定款の中には「第10条に定める」のように他の条を参照している記載があり、そこが食い違います。番号を振り直したら、必ず全文を通して読み、参照している箇所をすべて確認します。
このずれを避けるために、条を追加するときは「第3条の2」という枝番号を使う方法もあります。以降の番号が動かないので、参照が壊れません。読みやすさとの兼ね合いになりますが、参照の多い定款では枝番号のほうが安全です。
2つめは、登記との突合です。定款に書いてある内容のうち、商号、目的、本店、公告の方法、発行可能株式総数、役員に関する事項などは登記にも載ります。作り直した定款と登記事項証明書を並べて読み、食い違いがないかを確認します。
ここで見つかることがあるのが、登記を忘れていた変更です。定款だけ直して登記をしていない、あるいはその逆。会社法第915条第1項は、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならないと定めています。期限を過ぎていても申請自体は受け付けられますが、法務局は代表者が裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があると案内しています。見つけたらすぐに手を打ちます。
作り直しの作業は、この突合ができる数少ない機会です。面倒に見えますが、点検の場と考えると価値が出ます。
登記事項証明書があれば、定款は要らないのではないか
作り直しの手間を前にすると、こう考えたくなります。商号も目的も本店も登記に載っているのだから、登記事項証明書を出せば足りるのではないか、と。
足りません。登記と定款は、載っている情報の範囲が違うからです。
登記に載るのは、会社法第911条第3項が挙げている事項です。目的、商号、本店と支店の所在場所、資本金の額、発行可能株式総数、取締役や代表取締役の氏名、公告方法など、外部の人が会社を特定し取引の可否を判断するために必要な項目が並びます。
一方、定款にはそれ以外のことが書かれています。株主総会をどう招集するか、議長は誰が務めるか、取締役の任期を何年にしているか、決算をどう承認するか、株式を譲渡するときに誰の承認が要るか。これらは登記には出てきません。
許認可の窓口が定款を求めるのは、事業の内容が目的の条文にどう書かれているかを、条文の言い回しごと確認したいからです。金融機関が定款を求めるのは、誰が意思決定できる会社なのかを知りたいからです。登記の1行だけでは、どちらも読み取れません。
ですから、登記事項証明書と定款は代わりになりません。両方をいつでも出せるようにしておく、というのが答えになります。
作り直す前に、手元にそろえる書類
実際に作業に入る前に、次の4点をそろえます。
1点目は、設立のときの定款です。紙で保管しているならその原本、電子で作ったならそのPDFです。作り直す文書の土台になります。
2点目は、これまでの変更を決議した議事録の全部です。1枚でも欠けていると、その変更の根拠を示せません。総会の日付と、変更した条文の内容を、議事録から1つずつ拾っていきます。
3点目は、最新の登記事項証明書です。定款と突き合わせて、食い違いがないかを確認するために使います。オンラインで請求して郵送してもらう方法が、窓口で請求するより安く済みます。
4点目は、会社の実印です。作り直した定款に押し、原本証明をつけるときにも使います。
このうち2点目でつまずく会社がかなりあります。議事録を作ったつもりで作っていなかった、作ったがどこにあるか分からない、という状態です。登記を司法書士に頼んでいたなら、その事務所に控えが残っている可能性があります。まず問い合わせてみるのが早い道です。
どうしても見つからない場合は、その変更を決議し直すという方法があります。過去にさかのぼって効力を生じさせることはできませんが、現在の内容を改めて決議すれば、そこから先は根拠が揃います。判断が要る場面なので、司法書士に相談してください。
合同会社で作り直すとき
ここまでは株式会社を前提に書いてきました。合同会社の場合も、作り直しの考え方は同じです。違うのは3点です。
1点目は、変更の根拠になる書類です。株主総会の議事録ではなく、総社員の同意書になります。附則に経緯を書くときも、「令和7年3月15日付けの総社員の同意により」という形にします。社員が1人なら、同意書も1人分です。
2点目は、原始定款の所在です。合同会社は設立のときに公証人の認証を受けないので、公証役場には何も残っていません。紛失すると、どこからも取り寄せられません。株式会社より、自社での保管の重みが大きくなります。
3点目は、附則の中身です。合同会社の定款では、社員の氏名や出資の内容が本則の側に書かれていることが多く、附則に置かれるのは最初の事業年度と法令の準拠くらい、という形もよくあります。会社法第576条第1項が持分会社の定款に必ず記載するよう求めているのは、目的、商号、本店の所在地、社員の氏名または名称および住所、社員が無限責任社員か有限責任社員かの別、社員の出資の目的およびその価額または評価の標準の6つです。附則が薄いぶん、作り直しの作業も軽く済みます。
なお、合同会社で社員が増えたり減ったりすると、定款の社員に関する記載も変わります。株式会社で株主が変わっても定款は変わらないのとは、ここが違います。社員の出入りがあった会社は、作り直しの機会に本則の側もあわせて点検します。
いつ作り直すのがよいか
タイミングの話をしておきます。
一番よいのは、変更の登記が終わった直後です。議事録の内容も、どこを変えたかも頭に入っています。後回しにすると、何年か経ってから「この条文はいつ変わったのか」を議事録から探すことになります。
次善は、定款を出す用事ができたときです。融資の申し込み、許認可の申請、口座の開設。このタイミングで作れば、無駄がありません。ただし、急ぎの提出に間に合わせようとすると、条番号の確認や登記との突合が雑になります。提出期限の数日前ではなく、用事が見えた時点で着手します。
避けたいのは、変更を何回も重ねてから一気にやることです。どの条文がどの総会で変わったのかを議事録から復元する作業が発生し、時間がかかります。しかも、途中の議事録が見当たらないと、その変更の根拠を示せません。
作り直しそのものは、内容が頭に入っていれば1時間もかかりません。回数が増えるほど1回あたりが重くなる作業なので、こまめにやるほうが結局は短く済みます。
自分でやるか、司法書士に頼むか
作り直しを誰がやるか、という話をしておきます。
結論から言えば、自分でできます。公証人の関与も、法務局への提出も要らない作業です。必要なのは、元の定款と議事録と登記事項証明書、そして文書を作るソフトだけです。条文を書き換え、附則の末尾に経緯を足し、印刷して綴じ、実印を押す。慣れていれば1時間ほどで終わります。
司法書士に頼む価値があるのは、次の3つの場合です。
1つめは、変更の回数が多く、どの議事録がどの条文に対応しているかを整理しきれない場合です。この作業は、過去の登記を扱った経験がある人のほうが速く正確に終わります。
2つめは、条文の整合を確かめたい場合です。何度も変更を重ねた定款には、参照している条の番号がずれていたり、廃止したはずの規定が残っていたりすることがあります。第三者に通しで読んでもらう価値は小さくありません。
3つめは、変更の登記自体をまだ済ませていない場合です。定款だけ直して登記を忘れていた、という状態が見つかったときは、登記の申請とあわせて依頼するほうが確実です。
依頼するときは、登録免許税を含んだ総額なのか、報酬だけの金額なのかを必ず確かめます。報酬は事務所ごとに自由に決められるので、相場という言い方はできません。ここを聞かずに2件を比べると、安く見えたほうが結局高いということが起きます。
作り直したあとに更新するもの
定款を作り直したら、あわせて手を入れておくものがあります。
まず、社内に配っている写しです。役員が複数いる会社では、それぞれが定款の写しを持っていることがあります。古い版が残っていると、どれが現在の内容か分からなくなります。差し替えるか、古い版に「旧版」と記して分けておきます。
次に、提出済みの相手です。定款の写しをすでに渡している先があるなら、内容が変わったことを知らせます。特に、許認可を受けている事業では、定款の変更そのものが届出の対象になっている場合があります。担当官庁に確認してください。
そして、税務署への届出です。事業目的や商号の変更は、国税庁が案内する異動事項に関する届出の対象になっています。登記と定款を直して満足せず、税務署と都道府県税事務所と市区町村への届出まで進めます。
最後に、自社で管理している表示です。ウェブサイトの会社概要、名刺、請求書のひな形、契約書の書式。定款や登記と違って誰も催促してこないので、古い情報が何年も残ります。作り直しの作業を始めるときに、会社の情報を載せている自社の媒体を一覧にしておくと、取りこぼしが減ります。
電子定款で設立した会社の場合
設立のときに紙ではなくPDFで定款を作り、電子署名を付けて認証を受けた会社が増えています。この場合の作り直しには、注意点が1つあります。
元のPDFを書き換えることはできません。電子署名は署名した時点の内容と結びついているため、中身を編集すると署名が壊れます。壊れた署名が付いたPDFは、原始定款としての価値を失います。
ですから、元のPDFはそのまま保管し、作り直した現行定款は別の文書として新しく作ります。形式は自由で、Wordでも、そこから書き出したPDFでも、印刷した紙でも構いません。電子署名を付け直す必要もありません。
元のPDFを紛失した場合、株式会社であれば公証役場に保存されているので、謄本の交付を請求できます。保存の期間には限りがあるため、心当たりがあるなら早めに動きます。合同会社は設立のときに認証を受けていないので、公証役場には残っていません。自社で管理するしかない、ということになります。
作り直した現行定款を電子で保管するなら、変更のたびに上書きせず、日付をファイル名に入れて別ファイルとして残していくほうが安全です。どの時点の内容なのかが、ファイル名だけで分かるようになります。
会社の書類を整える時間を、どこから捻出するか
ここまでは作り方の話でした。最後に、この手の作業をどう回していくかについて、市場の側から見ておきます。
運営者として在宅で働く人や小さな会社を20年見てきた限りでは、会社の書類が整っている人ほど、新しい取引が早く立ち上がります。理由は単純で、相手の社内手続きが止まらないからです。定款を求められて「探します」と答えるか、その日のうちに原本証明つきの写しを渡せるかで、初回の印象がまったく変わります。
一方で、この作業に時間を使いすぎるのも違います。書類を整えても売上が直接増えるわけではありません。増えるのは、手続きで止まらずに済む分の時間だけです。だからこそ、一度形を作って、あとは変更のたびに1時間で回せる状態にしておくのが正解になります。
受ける仕事の形によって、書類が問われる頻度は変わります。開発の受託を軸にするなら、契約や与信の確認が入る場面が多くなります。仕事の実態と単価の考え方はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、案件の中身はアプリケーション開発のお仕事に整理されています。文章や編集を軸にするなら、案件の形が幅広く、書類の求められ方も相手によって変わります。仕事の広がり方は著述家,記者,編集者の年収・単価相場から読み取れます。
書類が最も問われるのは、企業の相談に乗る形の仕事です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、成果物ではなく判断を売る領域では、発注が法人限定になっている募集も見られます。この領域へ出るなら、定款と登記事項証明書をいつでも出せる状態にしておく価値が高くなります。
中間に人が入らない直接の取引では、同じ予算でも依頼する側はより多く頼め、受ける側は手取りが厚くなります。長く続く人ほど、単発の作業を安く早くこなすことよりも、この人に任せれば楽だと思われる関係を作ることに時間を使っています。書類を整えておくのは、その「任せれば楽」の一部です。
契約の受け方そのものを整えるなら、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが発注書に入れるべき項目を解説しており、代金が支払われなかったときの手順は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にあります。定款や議事録のような文書の型を体系的に押さえたいなら、ビジネス文書検定が実務に直結します。技術職で法人を運営しているなら、CCNA(シスコ技術者認定)のように発注側が評価軸として見る資格を持っておくと、書類とは別の軸で選ばれやすくなります。どこまで自分でやってどこから専門家に頼むかの線引きは、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に専門家側から見た業務の切り分け方が書かれており、参考になります。
最後に確認です。定款の作り直し方や原本証明の形式は、提出先によって求められる条件が変わります。また税務上の扱いは会社の事情で変わります。判断に迷う点が出たら、提出先の窓口、管轄の法務局の相談窓口、税務署、または司法書士や税理士に確認してください。
よくある質問
Q. 定款を変更したら、必ず定款を作り直さないといけませんか?
必ずではありません。設立のときの定款と、変更を決議した議事録をセットで保管しておく方法でも問題ありません。ただし変更が重なると、提出のたびに議事録を何枚も添えて説明することになります。変更が2回を超えたあたりから、最新版を1つにまとめ直しておくほうが楽になります。
Q. 作り直した定款に、公証人の認証や収入印紙は必要ですか?
どちらも不要です。公証人の認証が要るのは設立のときの定款だけで、成立後の変更は株主総会の決議で効力が生じます。印紙税も国税庁の一覧表で設立のときに作成される定款の原本に限ると定められているため、作り直した定款は対象外です。費用は実質的にかかりません。
Q. 附則にある設立時の記録は、消してよいですか?
残すのが通例です。設立時の出資額や発起人、最初の事業年度、設立時の取締役は、会社の来歴を示す唯一の記録になります。融資や事業承継、税務の確認で後から参照されることがあります。消さずに残したうえで、変更の経緯を附則の末尾に書き足していくのが実務の形です。
Q. 変更を決議した議事録は、いつまで保管すればよいですか?
会社法では、株主総会の議事録を総会の日から10年間、本店に備え置くこととされています。支店がある場合は写しを5年間置きます。ただし期間が過ぎても捨てないほうが安全です。作り直した定款の正しさを説明できる根拠は、元になった議事録しかありません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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