定款変更を自分で進める手順|専門家に頼まない場合


この記事のポイント
- ✓定款変更を自分でやる場合の手順を
- ✓条文を固めるところから法務局への申請
- ✓補正の連絡までを順に並べた
定款変更を司法書士に頼むと報酬がかかる。金額はそれほど大きくないとはいえ、創業まもない会社にとっては削りたい出費である。「定款変更自分で」と検索する人の多くは、自分でやれるものなのか、やれるとしてどのくらい大変なのかを知りたがっている。
結論から書くと、事業目的の追加や商号の変更といったよくある定款変更は、自分で進められる。国が様式も記載例も無料で公開しており、申請書を作るソフトも無料である。必要なのは、書類を4種類そろえることと、収入印紙を貼ることだけだ。
ただし、自分でやらないほうがいい変更もある。この記事では、その線引きを先に示したうえで、自分で進める場合の手順を最初から最後まで並べる。金額と期限は、会社法・登録免許税法の条文と、法務局が公開している案内および記載例で確かめた内容だけを書く。
自分でやれる変更と、頼んだほうがいい変更
まず線を引いておきたい。定款変更と一口に言っても、難易度に幅がある。
自分で進めやすいのは、決議して申請するだけで完結する変更である。
・事業目的の追加や変更 ・商号(会社名)の変更 ・同じ市区町村の中での本店移転 ・公告方法の変更 ・事業年度の変更(登記そのものが不要) ・取締役の員数など、社内の運営ルールの変更(登記そのものが不要)
一方、専門家に相談したほうがよい変更もある。
・株式に譲渡制限をつける、または外す変更 ・種類株式を新しく作る変更 ・機関設計を変える変更(取締役会や監査役を置く、廃止する) ・資本金の額を変える変更 ・許認可の要件に直結する目的の変更
後者に共通するのは、決議の要件が重くなったり、別の手続きが連動したりする点である。たとえば全部の株式に譲渡制限をつける変更は、特別決議よりも重い決議が必要になる。機関設計を変えると、役員の任期や登記すべき事項が芋づる式に動く。許認可の要件に関わる目的の変更は、書き方ひとつで許可が下りなくなることがある。
判断に迷ったら、次の問いで切り分けるとよい。変えるのが「何をやる会社か」「どこにある会社か」「何という名前の会社か」だけなら自分でやれる。株式や役員の仕組みそのものを動かすなら、相談したほうが早い。
どのくらいの時間で終わるのか
自分でやると決めたら、次に知りたいのは所要時間である。事業目的を1つ追加する場合を例に、作業ごとの時間を並べてみる。
| 作業 | 目安の時間 |
|---|---|
| 変更後の条文を固める | 30分から1時間 |
| 株主総会の招集通知を出す | 20分 |
| 総会を開いて決議する | 30分 |
| 議事録を作る | 30分 |
| 株主リストを作る | 20分 |
| 申請書を作る | 40分 |
| 印紙を買って貼り、押印する | 20分 |
| 法務局へ提出する | 30分から1時間 |
実作業を合計すると3時間から4時間ほどになる。ただし招集通知から総会までに1週間置く必要があるので、着手してから申請までの暦日では10日前後を見ておくとよい。申請してから登記が完了するまでは、さらに1週間前後かかる。
この時間を、頼んだ場合の報酬と見比べるのが判断の軸になる。作業の中身は難しくないが、初回は様式と記載例を読み込む時間が別に乗る。2回目以降は半分以下になる。
手順1 変更後の条文を先に確定させる
最初にやるのは、定款の何条をどう書き換えるかを決めることである。議事録にも申請書にも変更後の条文が必要になるので、ここを先に固めておくと後がすべて楽になる。
手元にある定款を開き、変える条文の番号と現在の文面を書き出す。その横に、変更後の文面を並べる。
事業目的を追加する場合なら、こうなる。
現在の第2条が「1 ◯◯の製造販売 2 ◯◯の売買 3 前各号に附帯する一切の事業」となっていて、そこに新しい事業を足すとする。このとき、新しい行を末尾ではなく「前各号に附帯する一切の事業」の手前に入れる。包括的な一文は最後に置くのが慣例だからである。
書き方にも注意したい。目的は登記簿に載って誰でも見られるので、見た人が何をやる会社か分かる程度には具体的に書く。ただし細かく書きすぎると、事業が少し広がっただけで目的から外れてしまう。同業他社の登記簿を見て、どの粒度で書かれているかを参考にするとよい。
許認可を受けて事業をするなら、この段階で許可を出す役所に文言を確認する。建設業、宅地建物取引業、古物商、有料職業紹介、飲食業などは、目的の書き方が許可の要件に関わる。決議したあとで書き直すと、総会からやり直しになる。
手順2 株主総会を開いて決議する
定款を変える権限は株主にある。会社法にそう書いてある。
株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。 出典: laws.e-gov.go.jp
必要なのは特別決議である。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成すれば可決になる。株主が経営者ひとり、あるいは家族だけという会社なら、この条件は自動的に満たされる。
総会を開くには招集の通知を出す。全株式に譲渡制限をつけている会社(公開会社ではない会社)は、総会の日の1週間前までに出せばよい。取締役会を置いていなければ、定款でこれより短くすることもできる。株主全員の同意があるときは、招集の手続きを省いて開くこともできる。
株主が遠方にいる、あるいは全員が賛成すると分かっているなら、集まらずに決める方法もある。取締役または株主が提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面か電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされる。条件は「全員」の同意なので、1人でも同意しない株主がいるときは使えない。この方法で集めた同意書は、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く義務がある。
手順3 議事録と株主リストを作る
決議したら、その日のうちに議事録を作る。法務局が公開している目的変更の記載例に、そのまま流用できる見本が載っている。書く項目はこうなる。
・開催した日時と場所 ・株主の総数 ・発行済株式の総数(自己株式があればその数も) ・議決権を行使することができる株主の数と、その議決権の数 ・出席した株主の数(委任状による者を含む)と、出席した株主の議決権の数 ・出席した取締役の氏名(議長と議事録を作成した者が分かる形で) ・出席した監査役の氏名(監査役がいる場合) ・総会が適法に成立した旨 ・議案の内容と決議の結果 ・閉会した時刻 ・議長および出席した取締役が記名する欄
議案は「議案 定款変更の件」と立て、「定款第2条を次のとおり変更すること」と書いて、変更後の条文を全文書き写す。差分だけを書く形にしない。ここで全文を確定させておけば、申請書の登記すべき事項の欄にそのまま写せる。
次に株主リストを作る。誰がどれだけの議決権を持っているかを会社が証明する書面で、株主総会の決議を要する登記には添付が必要になる。法務省が対象を整理している。
登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合 出典: moj.go.jp
書く株主の範囲には決まりがある。議決権の割合が高い順に並べ、合計が3分の2に達するまで、または10位に達するまでの、どちらか少ない人数を書く。株主が3人なら3人全員で終わる。記載するのは氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合の5項目で、代表者名義で証明する。自己株式のように議決権のない株式は、分母にも分子にも入れない。
株主が1人の会社でも省略できない。議事録だけを持って窓口へ行くと、その場で足りないと言われる。
手順4 登記が要るかどうかを確かめる
ここで一度立ち止まる。変えた項目が登記簿に載っていなければ、手続きはここで終わりになる。
登記簿に載っているのは、目的、商号、本店および支店の所在場所、資本金の額、発行可能株式総数、発行する株式の内容、公告方法、存続期間や解散の事由の定め、機関設計、役員の氏名などである。
載っていないのは、事業年度、取締役の員数の上限、株主総会の議長の決め方、招集地といった社内の運営ルールである。こちらを変えた場合は、議事録を残して定款を差し替えれば完了する。費用は0円で、法務局へ行く必要もない。
登記が要る場合は、ここから期限が走る。
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
起算点は変更の効力が生じた日で、決議で効力発生日を先に指定していなければ決議した日である。期限を過ぎても申請は受け付けてもらえるが、会社法は登記を怠った場合に代表者を100万円以下の過料に処すると定めている。過料は会社ではなく代表者個人にかかる。
手順5 申請書を作る。様式もソフトも無料
申請書は法務局のサイトから無料でダウンロードできる。商業・法人登記の申請書様式のページに、商号の変更、目的の変更、公告方法の変更、本店移転(管轄内と管轄外)といった場面別の様式と記載例が並んでいる。形式はWord、一太郎、PDFから選べる。
目的変更の申請書に書く項目はこうなる。
・会社法人等番号(分かる場合) ・商号のフリガナ ・商号 ・本店 ・登記の事由(目的の変更) ・登記すべき事項(変更後のすべての目的と、原因年月日) ・登録免許税の金額 ・添付書類の一覧 ・申請日、申請人の本店と商号、代表取締役の住所と氏名、登記所に提出した印鑑 ・連絡先の電話番号 ・提出先の法務局名
登記すべき事項の欄には注意書きがある。目的は変更した部分だけでなく、変更後のすべての目的を書く。1号だけ足したつもりでも、1号から最後まで全部を並べる。
添付する書類は3つである。株主総会議事録が1通、株主リストが1通、そして代理人に頼む場合だけ委任状が1通。自分で申請するなら委任状は要らないので、実質2通でそろう。
申請書を作るもう1つの道が、登記・供託オンライン申請システムの申請用総合ソフトである。無料で使えて、画面の案内に沿って入力すれば申請書ができる。一度作ったデータはソフト上に残るので、次に同じような申請をするときに再利用できる。
出し方は3通り。電子証明書がなくても使える道がある
申請の出し方は、窓口に持参する、郵送する、オンラインで送るの3つである。
このうちオンラインには2種類ある。電子証明書を使って完結させる本来のオンライン申請と、QRコード(二次元バーコード)付き書面申請である。後者は、申請用総合ソフトで作った申請書の情報を事前に登記所へ送っておき、印刷した申請書を登記所に提出する方式で、電子証明書を持っていなくても使える。法務局はこの方法を勧めている。
処理状況をパソコンで確認できる点も、オンライン申請とQRコード付き書面申請に共通する利点である。窓口へ持参した場合は、完了予定日まで待って連絡が来ないかどうかで判断することになる。
なお、本店を別の法務局の管轄へ移す場合だけは出し方が違う。移転前の所在地を管轄する登記所宛ての申請書と、移転後の所在地を管轄する登記所宛ての申請書の2通を作り、両方を同時に、移転前の所在地の登記所へ提出する。2か所の窓口を回る必要はない。
収入印紙の貼り方と押印にも作法がある
登録免許税は収入印紙で納める。印紙は申請書に直接貼らず、収入印紙貼付台紙に貼る。台紙は様式に付いている。
法務局の記載例には、貼り方の指示まで書いてある。印紙に割印をしないこと、消印作業の都合で右側に寄せて貼ること、印紙を汚さないこと。汚したり割印を押したりすると、その印紙は使えなくなる。
申請書が複数ページになる場合は、つづり目に契印を押す。契印には申請書に押した印鑑と同じものを使う。代表取締役が法務局に提出した印鑑、または代理人の印鑑である。
押印そのものにも決まりがある。自分で申請するなら申請書に、代理人に頼むなら委任状に、登記所に提出した印鑑(いわゆる会社の実印)を押す。代理人が申請する場合、申請書には代理人が自分の印鑑を押せばよく、代表取締役の押印は不要になる。
出したあとに来る連絡と、完了の確かめ方
申請を出したら、あとは待つだけである。ただし1つだけ、連絡が来る可能性がある。補正である。
必要な添付書面が不足している、申請書や添付書面に記載した内容に誤りがあるといった不備があった場合には、登記所から申請人又はその代理人に連絡します。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
だから申請書には、日中つながる電話番号を書く。携帯電話の番号でも構わない。連絡を受けたら、指示に従って直す。初めて自分で申請すると、何かしら補正が入ることは珍しくないので、期限ぎりぎりではなく余裕をもって出しておきたい。
完了の目安になるのが登記完了予定日である。申請した登記所を管轄する法務局のサイトで公開されており、その日まで登記所から連絡がなければ、不備がなく手続きが完了したということになる。
注意したいのは、申請してから完了するまでの間、その会社の登記事項証明書と印鑑証明書が原則として発行されないことである。融資の申込みや入札で証明書が要る予定があるなら、申請の時期をずらすか、先に取っておくかを考えておく必要がある。
登記が終わったら、定款そのものも差し替えておく。登記簿の記載が変わっても、会社の手元にある定款は自動では書き換わらない。変更後の条文を反映した定款を1部作り、末尾に上記は当会社の定款に相違ないという一文を入れて代表取締役が記名押印し、本店に備え置く。前の版は捨てずに、議事録と一緒に残す。どの総会でどう変わったかをたどれる状態にしておくと、あとから融資や許認可の審査で会社の沿革を聞かれたときに、その場で答えられる。
申請で間違いやすい6点
法務局が「間違いやすいチェックポイント」として挙げている項目がある。自分で申請するなら、出す前にこれを一通り確かめたい。
・申請書に、会社の本店所在地、商号、代表者の住所、代表者の氏名を書いたか。代表者の住所を変更する登記なら、書くのは変更後の住所である ・登記の原因が将来の日付になっていないか。変更の事由が起きる前に申請することはできない。たとえば7月1日に「8月14日本店移転」の登記を申請することはできない ・申請書に、日中つながる電話番号を書いたか ・収入印紙を貼付台紙に貼ったか。割印を押していないか、汚していないか ・申請書(自分で申請する場合)または委任状(代理人に頼む場合)に、登記所に提出した印鑑を押したか ・複数ページになる場合、つづり目に契印を押したか
もう1つ加えるなら、株主リストを入れ忘れていないかである。議事録だけそろえて満足してしまうのが、初回でいちばん多い抜けになる。
目的を1つ足す場合の、日付の並べ方
作業の中身が分かっても、どの順にどれだけ間を空ければよいかが見えないと動き出せない。取締役会を置いていない会社が、9月1日に事業目的の追加を思い立った場合を例に、日付を入れて並べてみる。
・9月1日 現在の定款を開き、変更後の条文を全文書き起こす。許認可に関わる事業なら、この日のうちに許可を出す役所へ文言を問い合わせる ・9月2日 株主へ招集通知を出す。総会の日を9月10日に置けば、1週間前までという条件を満たす ・9月10日 総会を開いて特別決議を取る。終わったらその日のうちに議事録を作る。効力発生日を先に指定していなければ、この日が変更の効力が生じた日になる ・9月11日 株主リストを作り、申請書を作る。登記すべき事項の欄に、変更後のすべての目的を書き写す ・9月12日 収入印紙を買って台紙に貼り、押印して提出する。決議から2日しか経っていないので、期限には十分間に合う ・9月19日前後 登記完了予定日。この日まで登記所から連絡がなければ、不備なく完了している ・完了後すみやかに 税務署へ異動届出書を出し、都道府県税事務所と市区町村役場にも届け出る
期限の観点で見ると、動かせない線は2本だけである。招集通知から総会までの1週間と、効力が生じた日から申請までの2週間。この2本さえ守れば、あいだの作業はまとめてしまって構わない。決議した日の午後に議事録と申請書を作り、翌日提出するという進め方も珍しくない。
逆に、間を空けすぎると起算点のほうが先に来る。決議したあとで印紙を買う時間が取れず1か月放置すると、それだけで期限を過ぎた申請になる。受け付けてはもらえるが、過料の対象になりうる状態で出すことになる。総会の日を決めるときは、そのあと2週間の自分の予定も一緒に見ておきたい。
かかるお金を、頼む場合と並べて見る
自分でやる場合にかかるのは、登録免許税だけである。金額は登録免許税法の別表で区分ごとに決まっている。
| 変更する内容 | 登録免許税 |
|---|---|
| 目的・商号・公告方法などの登記事項の変更 | 申請1件につき3万円 |
| 本店または支店の移転 | 1箇所につき3万円 |
| 支店の設置 | 1箇所につき6万円 |
| 取締役会などの機関に関する事項の変更 | 申請1件につき3万円 |
| 役員に関する事項の変更 | 1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円) |
| 資本金の増加 | 増加した資本金の額の1000分の7(3万円に満たないときは3万円) |
課税は区分ごとなので、同じ区分に入る変更をまとめて1通で申請すれば金額は3万円のまま変わらない。目的と商号と公告方法を同時に変えても3万円である。逆に区分が違えば合算される。変えたい項目が複数あるなら、時期をそろえて1回で出すのが得になる。
ここでよくある誤解を1つ解いておきたい。会社を作るときの定款は公証人の認証が要り、紙で作れば4万円の収入印紙を貼ることになる。しかし認証が必要なのは設立時の定款だけで、変更後の定款に認証は要らない。印紙税法も課税対象を「会社の設立のときに作成される定款の原本」に限っている。定款を作り直しても、認証手数料も印紙代もかからない。ここは無料である。
司法書士に依頼する場合は、この登録免許税に報酬が乗る。報酬額は自由化されているため事務所ごとに幅があり、依頼前に見積もりを取って比べるしかない。登録免許税の部分は誰が出しても同じ金額なので、比べるべきは報酬だけになる。
自分でやるか頼むかの分かれ目は、金額よりも中身である。目的の追加や商号の変更のように答えが1つに決まる変更なら、報酬を払って得られるのは時間の節約だけになる。一方、株式や機関設計に手を入れる変更は、判断を誤ると登記が通らず、やり直しに総会から戻ることになる。そこは報酬を払う価値がある。
分からないところは、法務局に聞ける
自分で進めていて手が止まったら、法務局に聞くという手がある。各登記所では登記手続案内を行っている。
ただし、一部の登記所を除いて事前予約制になっている。予約せずに行くと案内してもらえないか、長く待たされる。予約の方法は各法務局のサイトに書いてあるので、行く前に確かめておきたい。
聞くときは、手ぶらで行くより、書きかけの申請書と議事録の案、それに現在の定款を持っていくほうが話が早い。どこが足りないかを具体的に指摘してもらえる。
なお、登記手続案内で答えてもらえるのは手続きの方法についてである。どの条文をどう書き換えるべきか、その変更が会社にとって有利かどうかといった中身の判断は対象外になる。そこは司法書士や弁護士に相談する領域である。
登記が終わっても、まだ届出が残っている
法務局の手続きが完了したら、次は税務まわりである。会社の情報を持っている役所は法務局だけではない。
税務署には異動届出書を出す。国税庁が案内している手続で、対象が広い。
事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号又は名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更、法人の合併、法人の分割による事業の譲渡若しくは譲受け、法人区分の変更、法人の解散(信託の終了を含みます。)・清算結了、支店・工場等の異動等をした場合の手続です。 出典: nta.go.jp
提出の時期は「異動等後すみやかに」とされ、提出先は異動前の納税地を所轄する税務署長である。引っ越した先の税務署ではない。添付書類は原則として不要だが、内容を確かめるために定款などの写しを求められることがある。
税務署に加えて、都道府県税事務所と市区町村役場にも届出が要る。様式は自治体ごとに違う。本店を移したときは、日本年金機構への届出と、労働保険や雇用保険の所在地変更の手続きも出てくる。許認可を受けている事業なら、許可を出した役所への届出も忘れないようにしたい。
合同会社なら、株主総会の部分がまるごと変わる
ここまでは株式会社を前提に書いてきた。合同会社の定款変更は、決め方と添付書類が入れ替わる。
まず決め方である。合同会社には株主総会がない。会社法は持分会社の定款変更について、定款に別段の定めがある場合を除いて総社員の同意によると定めている。過半数でも3分の2でもなく、社員全員の同意である。ただし別段の定めを認めているので、定款に「業務を執行する社員の過半数の同意で変更できる」と書いてあれば、そちらが優先する。着手する前に、手元の定款にその一文があるかどうかを確かめたい。
添付書類も変わる。株主総会議事録と株主リストの代わりに、総社員の同意書を1通付ける。同意した社員全員の氏名と、同意した日付を書く。社員が1人だけの合同会社なら、その1人の同意書で足りる。
登記が要る項目の並びも違う。合同会社の登記簿に載るのは、目的、商号、本店および支店の所在場所、存続期間や解散の事由についての定め、資本金の額、業務を執行する社員の氏名または名称、会社を代表する社員の氏名または名称および住所、それに公告方法である。業務を執行しない社員は、登記簿には出てこない。
ここが合同会社で勘違いされやすい点になる。社員の氏名と住所、出資の価額は定款に必ず書く事項なので、社員が入ったり抜けたりするたびに定款そのものは変わる。しかし登記まで必要になるのは、業務を執行する社員や代表社員が変わったときだけである。出資だけして経営に加わらない社員が入れ替わった場合は、定款を直して同意書を残しておけば手続きは終わる。
期限と税額は株式会社と同じである。登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をする。登録免許税も同じ区分で計算するので、目的や商号の変更なら申請1件につき3万円になる。申請書の様式も、法務局の同じページに合同会社用が並んでいる。
運営者として見てきた、自分でやる人が得るもの
在宅で働く人と発注する企業のあいだを20年近く見てきた立場から言うと、最初の定款変更を自分でやった経営者には、共通して身につくものがある。自社の登記簿に何が載っていて、何が載っていないかを理解する、という感覚である。
これは地味に効いてくる。取引先から登記事項証明書を求められたとき、融資の審査で会社の沿革を聞かれたとき、許認可の更新で目的の記載を確認されたとき。自分の手で申請書を書いた経験があると、何を出せばよいかが即答できる。全部を外に投げてきた会社は、そのたびに専門家へ連絡して数日待つことになる。
運営者として見てきた限りでは、長く続く会社ほど、こうした事務の勘所を社内に1つ持っている。全部を自分でやる必要はないが、1回は通しでやっておくと、次からどこを任せてどこを自分で見るかの判断が付く。
もう1つ、手取りの話をしておきたい。法人化を考える人の多くは報酬の額面に目を向けるが、手元に残る額を押し上げるのは、あいだに手数料が乗らない取引の比率であることが多い。手数料0%で直接やり取りできる関係を持っている人は、同じ予算でも依頼する側がより多く頼めるので、受ける側の手取りが厚くなる。事務を効率よく片づけて、その時間を関係づくりに回せるかどうかが、法人として続くかどうかの分かれ目になる。
目的に書く言葉は、実際の募集の呼び名から決める
自分で定款変更をする理由でいちばん多いのが、事業目的の追加である。ここで効くのが、どんな言葉で書くかという点だ。目的は登記簿に載るので、取引先が事業範囲を確かめる材料になる。
実務に合う言葉を選ぶには、市場で実際にどんな呼び名で仕事が募集されているかを見るのが早い。システム開発を受ける会社なら、アプリケーション開発のお仕事に、受託開発から保守や技術支援までどんな業務が並んでいるかがまとまっている。報酬の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確かめられる。
生成AIの活用支援を目的に加えるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、発注する側がどんな言葉で業務を書いているかを拾っておくとよい。文章や編集を事業にするなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が判断材料になる。
議事録や株主リストを自社で作り続けるなら、文書作成の型を押さえておくと毎回の負担が減る。ビジネス文書検定が扱う範囲が、ちょうどこの土台にあたる。技術系の事業を目的に書くなら、CCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、その事業を実際にやれる会社であることの裏づけになる。
取引条件の固め方という観点では、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが、発注書に何を書いておけば後で揉めないかを整理している。会計の体制を外に出すか自社で回すかを考えているなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】で専門家側の働き方を知っておくと、依頼の仕方が変わる。
なお、どの変更が登記事項にあたるか、目的の書き方が許認可の要件を満たすかといった最終判断は、会社ごとの事情で変わることがある。許認可を持っている、種類株式を出している、株主が分散しているといった事情があるなら、決議の前に司法書士か弁護士に一度確認してから進めたほうが安全である。税務上の扱いも金額や事情で結論が変わるため、税務署か税理士に確認してほしい。
よくある質問
Q. 定款変更は本当に自分でできますか?
事業目的の追加、商号の変更、同じ市区町村内での本店移転、公告方法の変更といったよくある変更は自分でできます。申請書の様式と記載例は法務局のサイトから無料でダウンロードでき、申請書を作る申請用総合ソフトも無料です。株式や機関設計に手を入れる変更は、司法書士に相談したほうが安全です。
Q. 自分でやると費用はいくら抑えられますか?
自分でやる場合にかかるのは登録免許税だけです。目的や商号の変更なら申請1件につき3万円で、これは誰が申請しても同じ金額です。抑えられるのは司法書士の報酬の部分で、金額は事務所ごとに幅があるため、依頼前に見積もりを取って比べてください。
Q. 電子証明書がなくてもオンラインで申請できますか?
できます。QRコード(二次元バーコード)付き書面申請という方法があり、無料の申請用総合ソフトで作った申請書の情報を事前に登記所へ送ったうえで、印刷した申請書を提出します。電子証明書は不要で、処理状況をパソコンで確認できる利点もあります。
Q. 申請したあと、不備があったらどうなりますか?
添付書類が足りない、記載に誤りがあるといった場合は、登記所から申請人へ連絡が入ります。これを補正といい、連絡に従って直します。だから申請書には日中つながる電話番号を書きます。登記完了予定日まで連絡がなければ、不備なく手続きが完了したということになります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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