定款変更の登記に出す書類一式

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
定款変更の登記に出す書類一式

この記事のポイント

  • 定款変更登記の必要書類を
  • 法務局の様式番号と会社法の条文に当たって整理しました
  • 申請書・株主総会議事録・株主リスト・委任状の4点を軸に

定款変更登記の必要書類を調べている人の多くは、すでに株主総会を終えたあとです。決議はした、議事録も作った、それで法務局に何を持っていけばいいのかが分からない。結論から書くと、多くの中小企業では出す紙は4種類しかありません。変更登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、そして代理人に頼む場合の委任状です。ここに登録免許税分の収入印紙を貼った台紙が加わって、それで終わりです。この記事では、その4種類の中身を法務局の様式と会社法の条文に当たって分解し、商号を変えたとき、目的を変えたとき、本店を移したときで何がどう変わるのかを並べていきます。

そもそも、定款を変えても登記がいらないことがある

最初に切り分けておきたいことがあります。定款を変えたからといって、必ず登記が必要になるわけではありません。

定款とは、会社の決まりを書いた文書のことです。会社の名前、何をする会社か、どこに本店を置くか、株式をどう扱うか、役員をどう決めるかといったことが書かれています。一方で登記簿は、その会社の情報のうち「外から見える形にしておくべきもの」だけを抜き出して法務局が公開している台帳です。つまり定款と登記簿は、範囲が重なっているだけで同じものではありません。

登記簿に載る項目は会社法第911条第3項に列挙されています。目的、商号、本店および支店の所在場所、会社の存続期間や解散の事由についての定めがあるときはその定め、資本金の額、発行可能株式総数、発行する株式の内容などです。定款を変えた結果、このリストに載っている項目の中身が変わったときだけ、変更登記が必要になります。

逆に言えば、定款にしか書かれていない事柄を変えても登記はいりません。たとえば事業年度を4月始まりから1月始まりに変える、株主総会の招集通知を出す期間を短くする、株主名簿の基準日を変える、といった変更は定款の話で完結します。この場合は株主総会で決議して議事録を残せば手続きは終わりで、法務局に行く必要はありません。

ここを勘違いすると、いらない登録免許税3万円を払いに行くことになります。まずは自分が変えた条文が、登記簿に出ている項目かどうかを確かめてください。確かめ方は簡単で、いま自分の会社の登記事項証明書を1通取って、その紙に印刷されている項目と見比べるだけです。証明書の手数料は登記手数料令第2条第1項で1通600円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は同令第3条第1項で490円、郵送してもらう場合は520円と決まっています。

登記がいる変更・いらない変更の線引き

実務でよく出てくる定款変更を、登記が必要かどうかで並べると次のようになります。

変更した内容 登記 備考
商号(会社の名前) 必要 登記簿の筆頭項目
目的(事業の内容) 必要 許認可の要件になることが多い
本店の所在地 必要 管轄をまたぐと手続きが二重になる
公告方法 必要 官報・日刊新聞紙・電子公告の3択
発行可能株式総数 必要 増資の前段として変えることが多い
取締役会や監査役を置く・やめる 必要 機関設計の変更
株式の譲渡制限の定め 必要 決議の要件が重くなる
事業年度 不要 税務署への届出は別途必要
株主総会の招集手続の細目 不要 定款の保管だけで足りる
役員の任期 不要 ただし任期満了の時期が動く
基準日の定め 不要 公告が必要になる場合がある

事業年度と役員の任期は、登記こそいらないものの、放っておくと別のところで効いてきます。事業年度を変えれば申告期限が動くので税務署と都道府県、市区町村への異動届出が必要ですし、任期を10年に伸ばせば次の改選時期がずれるので、忘れた頃に役員変更登記の期限を落とすことになります。登記がいらない変更ほど、社内の記録をきちんと残しておいたほうがいい、というのが現場の感覚です。

出す書類は「4つの束」で覚える

ここからが本題です。変更登記の必要書類は、変更の種類が何であっても骨組みは変わりません。次の4つです。

1つ目が変更登記申請書。これが本体で、法務局に対して「こういう変更があったので登記簿を書き換えてください」と伝える紙です。

2つ目が株主総会議事録。定款変更は会社法第466条で株主総会の決議によると決まっているので、決議したことを証明する紙が要ります。

3つ目が株主リスト。平成28年10月1日から登記の添付書面になったもので、誰がどれだけ議決権を持っているかを代表者が証明する紙です。これを知らずに申請して補正の電話をもらう人が、いまだにいます。

4つ目が委任状。司法書士など代理人に頼むときだけ必要です。自分で申請するなら要りません。

これに加えて、登録免許税を収入印紙で納めるための台紙を1枚付けます。法務局のページでは、印紙を汚したり印紙に割印をしたりすると使えなくなるので注意するよう案内されています。割印を押したくなる気持ちは分かりますが、押してはいけません。

変更の中身によっては、ここに1枚か2枚が足される程度です。たとえば本店を管轄外に移す場合は移転先の法務局向けの申請書がもう1通、取締役会を置く定めを新たに設ける場合は役員の就任承諾書と本人確認書類、といった具合です。「必要書類が20種類ある」というような話ではありません。

変更登記申請書には何を書くのか

法務局は商業・法人登記の申請書様式を公開していて、WordとPDFの両方でダウンロードできます。株式会社の定款変更に関係するものだけを拾うと、1-11が商号の変更、1-12が目的の変更、1-13が本店移転(管轄登記所内移転)、1-14が本店移転(管轄登記所外移転)、1-18が公告方法の変更です。取締役会設置会社の定めの廃止や監査役設置会社の定めの廃止、株式譲渡制限の定めの変更をまとめて扱う1-19という様式もあります。まずはこの記載例のPDFを開くところから始めるのが、いちばん遠回りに見えて近道です。

申請書に書く項目は共通しています。会社の商号、本店、法人名のフリガナ、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税額、添付書類の一覧、申請年月日、申請先の法務局名、申請人である会社の商号と本店、代表取締役の住所と氏名、そして連絡先の電話番号です。

このうち、初めて書く人が必ず迷うのが「登記の事由」と「登記すべき事項」の違いです。登記の事由は何が起きたかで、たとえば「商号変更」「目的変更」と短く書きます。登記すべき事項は、書き換えたあとの登記簿にそのまま印刷される文言で、「商号 株式会社○○○○」「原因年月日 令和8年9月10日変更」のように、変更後の内容と変更した日をセットで書きます。記載例のPDFにそのままの形が載っているので、見比べながら埋めてください。

法務局が挙げている「間違いやすいチェックポイント」も実用的です。申請書に本店所在地、商号、代表者の住所、代表者の氏名を書いたか。登記原因が将来の日付になっていないか。日中つながる電話番号を書いたか。収入印紙を貼ったか。申請書に契印をしたか。代表者の住所を変更する登記の場合は、変更後の住所を書く必要がある点も明記されています。

登記原因の日付が未来になっていないか、というのは地味ですが大事です。「令和8年7月1日に、令和8年8月14日本店移転の登記申請をすることはできません」と法務局のページにはっきり書かれています。決議は先にできても、効力が発生する前に登記は出せません。

株主総会議事録の作り方

定款変更は、株主総会の特別決議で行います。会社法第309条第2項第11号により、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。通常の決議より重い要件です。

例外的にもっと重くなる場面もあります。発行する全部の株式について譲渡制限を設ける定款変更は、会社法第309条第3項第1号で、議決権を行使できる株主の半数以上であって、かつその議決権の3分の2以上の賛成が必要とされています。頭数と議決権の両方で数える形です。非公開会社への移行を考えている会社は、ここだけ決議要件が違うことを押さえておいてください。

議事録そのものは、会社法第318条第1項で「法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と定められています。書く内容は、開催した日時と場所、出席した役員の氏名、議長の氏名、議事の経過の要領とその結果、議事録を作成した取締役の氏名などです。登記のために出す以上、「第1号議案 定款一部変更の件」として、変更前と変更後の条文を並べて書いておくと、法務局側も確認しやすくなります。

株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。 株式会社は、株主総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

10年という保存期間は意外と長く感じますが、株主が数人しかいない会社ほど、あとから「その決議はいつしたのか」が分からなくなりがちです。議事録は登記のための紙ではなく、会社の履歴書だと考えたほうが実態に近いです。

株主が全員身内で、わざわざ集まるのが現実的でないという会社は、会社法第319条第1項の決議の省略が使えます。取締役か株主が提案した内容について、議決権を行使できる株主の全員が書面か電磁的記録で同意すれば、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなされる仕組みです。この場合は議事録の代わりに、同意書と「決議があったものとみなされた」旨を記した議事録を作ります。同意の書面は、みなされた日から10年間、本店に備え置く必要があります。

株主リストは何を書く紙か

株主リストは、登記の添付書面としては比較的新しいものです。法務省のページでは次のように案内されています。

平成28年10月1日以降の株式会社・投資法人・特定目的会社の登記の申請に当たっては、添付書面として、「株主リスト」が必要となる場合があります(商業登記規則61条2項・3項、投資法人登記規則3条、特定目的会社登記規則3条)。 出典: moj.go.jp

必要になるのは2つの場合です。登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合と、株主全員の同意を要する場合です。定款変更は前者にあたるので、定款変更登記では原則として株主リストが付きます。しかも、先ほどの会社法第319条第1項で決議を省略した場合にも株主リストは必要だと、法務省のページに明記されています。集まらずに済ませても、リストの提出は省けません。

株主総会の決議を要する場合に書くのは、議決権数の上位10名の株主か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主か、いずれか少ないほうです。商業登記規則第61条第3項がその根拠で、法務省はこれを表の形に落とした書式例と記載例をExcelとPDFで配布しています。

記載する項目は5つです。株主の氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数割合。これらを代表者が証明する形になります。株主全員の同意を要する場合は割合が外れて4つになります。

注意点が2つあります。1つは、自己株式のようにその事項について議決権を行使できない株式を持つ株主は除くけれども、株主総会を欠席した株主や議決権を行使しなかった株主は含める、ということです。出席していないから書かなくていい、ではありません。もう1つは、3分の2に達するまでで数えるときは議決権割合の多い順に足していく必要がある、ということです。

株主が1人しかいない会社なら、この紙は1行で終わります。それでも出さないといけません。

変更の種類別に、足される書類を見る

骨組みの4点に何が足されるか、よくある変更ごとに並べます。

商号の変更は、4点だけで足ります。ただし、同じ本店所在地に同じ商号の会社が先にいると登記できないので、法務局が案内している同一商号・同一本店の調査を先に済ませてください。

目的の変更も、原則は4点だけです。ただし建設業や産業廃棄物処理、人材派遣、古物商といった許認可を取っている会社は、目的の文言が許認可の要件そのものになっていることがあります。登記が通っても行政庁への変更届が別に必要になるので、登記だけで終わったと思わないことです。

本店移転は、管轄内か管轄外かで手間がまったく変わります。管轄内なら申請書1通で終わりますが、管轄外に移すと、旧本店を管轄する法務局と新本店を管轄する法務局の両方に登記することになり、登録免許税も2箇所分かかります。定款に「本店を東京都渋谷区に置く」と市区町村まで書いてある会社は定款変更が必要ですが、「東京都に置く」とだけ書いてある会社が同じ都内で移るなら、取締役の決定だけで足りて定款変更はいりません。ここも自分の定款の書きぶり次第です。

公告方法の変更は、電子公告にする場合に公告を載せるURLも登記事項になります。申請書にURLを書き間違えると、登記簿に間違ったURLが載ります。

発行可能株式総数の変更は、増資の前に枠を広げる目的で行うことが多いものです。公開会社の場合、発行済株式総数の4倍を超えて発行可能株式総数を定めることはできないという制限があるので、数字を決める前に確認してください。

取締役会や監査役を置く・やめるといった機関設計の変更は、書類が増えます。新しく取締役会を置くなら取締役が3名以上必要になり、新任者の就任承諾書、本人確認証明書、代表取締役については印鑑証明書が要ります。商業登記規則第61条第4項から第7項に、どの場面で印鑑証明書や本人確認証明書が要るかが細かく書かれています。

費用の計算は「区分」で考える

登録免許税の金額は、登録免許税法の別表第一第24号に列挙されています。株式会社の変更登記でよく使うものを抜き出すと、次のとおりです。

登記の内容 登録免許税
登記事項の変更(商号・目的・公告方法・発行可能株式総数など) 申請1件につき3万円
本店の移転 1箇所につき3万円
取締役会・監査役会・監査等委員会などに関する事項の変更 申請1件につき3万円
役員に関する事項の変更 申請1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円)
資本金の額の増加 増加した資本金の額の0.7%(3万円に満たないときは3万円)
支店の設置 1箇所につき6万円
新株予約権の発行による変更 申請1件につき9万円

ここで押さえてほしいのが、金額は「1件いくら」であって「1項目いくら」ではないという点です。商号と目的を同じ株主総会で変えて1通の申請書で出せば、どちらも同じ「登記事項の変更」の区分なので、合わせて3万円で済みます。項目ごとに3万円ずつかかるわけではありません。

一方で、区分が違うものを同じ申請書に入れると、区分ごとに合算されます。目的を変えると同時に役員も入れ替える場合は、登記事項の変更で3万円、役員に関する事項の変更で資本金1億円以下なら1万円、合わせて4万円です。管轄外への本店移転は2箇所分なので6万円になります。

変更したい項目がいくつか溜まっているなら、同じ株主総会でまとめて決議して1通の申請書で出すほうが安く済むことが多い、というのがこの表の読み方です。ただし個別の税額判断は事案によって変わるので、金額が大きくなる増資や組織再編がからむときは、管轄の法務局か司法書士に確認してください。

書類の作成そのものにかかるお金は、自分でやれば0円です。司法書士に頼むと、変更の内容にもよりますが報酬は3万円から8万円程度が目安になります。登録免許税は誰が出しても同じ金額なので、差が出るのは報酬部分だけです。

なお、変更後の定款に収入印紙を貼る必要はありません。印紙税法の別表第一第6号は定款を課税対象にしていますが、そこには「定款は、会社(相互会社を含む。)の設立のときに作成される定款の原本に限るものとする」という注記が付いています。課税されるのは会社を作るときの原始定款だけで、変更後の定款は対象外です。公証人の認証も、会社法第30条第1項が求めているのは設立時の定款についてなので、変更後の定款には必要ありません。

期限は2週間。過ぎたらどうなるか

会社法第915条第1項は、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更登記をしなければならないと定めています。起算点は株主総会で決議した日ではなく、その変更の効力が生じた日です。議事録に「本日から効力を生じる」と書いたならその日から、「令和8年10月1日から」と書いたならその日からです。

では、2週間を過ぎたらどうなるか。法務局のページには次のように書かれています。

登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはありませんが、会社・法人の代表者に対して、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

つまり、遅れても申請自体は受け付けてもらえます。受け付けてもらえるからといって安全ではなく、会社法第976条第1号が「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」を100万円以下の過料の対象に挙げていて、これは会社ではなく代表者個人に課されます。実務上は数万円程度で通知が来ることが多いのですが、金額がいくらになるかは裁判所が決めることなので、事前に見積もれるものではありません。

もう1つ、放置がもっと大きな結果につながる場面があります。法務局は「最後の登記から12年を経過している株式会社」がみなし解散の登記の対象になると案内しています。役員の任期を10年にして、改選も登記もしないまま12年が経つと、事業を続けているのに登記簿上は解散した会社になる、ということが実際に起きます。

申請の出し方は3通りある

法務局が案内している申請方法は、オンライン申請、QRコード付き書面申請、通常の書面申請の3つです。

オンライン申請は、申請用総合ソフトと電子証明書を使ってすべてを電子で完結させる方法です。電子証明書を持っている会社ならこれがいちばん速く、法務局も一人会社の設立登記については完全オンライン申請を勧めています。

QRコード付き書面申請は、申請用総合ソフトで申請書を作って、印刷した紙に二次元コードを付けて窓口か郵送で出す方法です。電子証明書がなくても使えて、オンライン申請と同じように処理状況をパソコンで確認できます。電子証明書を持っていない中小企業には、いまのところこれがいちばん現実的な選択肢です。

通常の書面申請は、Wordの様式をダウンロードして埋めて印刷し、押印して出す昔ながらのやり方です。これも当然使えます。

どの方法でも、出してから登記が完了するまでは数日から1週間程度かかります。この間は原則として登記事項証明書と印鑑証明書が発行されないという点は、見落とされがちです。銀行や取引先に提出する証明書が必要な予定が入っているなら、申請のタイミングをずらすか、先に必要通数を取っておいてください。完了予定日は、申請した登記所を管轄する法務局のホームページの「登記完了予定日」のタブで確認できます。

補正の連絡が来ることもあります。添付書面が足りない、記載内容に誤りがある、といった場合に法務局から電話が入る仕組みです。だからこそ、申請書には日中つながる電話番号を書く必要があります。携帯番号でも構いません。

申請したあと、社内に残す仕事

登記が終わったら、それで全部終わりではありません。

まず定款です。会社法第31条第1項は、会社は定款を本店と支店に備え置かなければならないと定めています。株主と債権者は営業時間内ならいつでも閲覧や謄本の交付を請求できます。登記を出しても法務局が定款を書き換えてくれるわけではないので、変更後の内容を反映した定款を自社で作り直して保管する必要があります。実務では、原始定款と株主総会議事録を一緒に綴じておけば法的には足りるのですが、条文を変更後の形に打ち直した「現行定款」を1本作っておくほうが、あとから探す手間が圧倒的に減ります。

次に、登記事項証明書を取り直します。銀行口座の名義、取引先への通知、各種の許認可、社会保険の届出、印鑑カードなど、登記簿の内容が変わったことを前提に手続きが要る先が必ず出てきます。商号を変えたなら会社の実印や銀行印、請求書のひな形、ウェブサイトの表記まで波及します。

そして税務です。商号や本店を変えたときは、税務署と都道府県、市区町村への異動届出が必要です。登記と税務の届出は別のルートなので、片方だけ終わらせて安心しないでください。

よくつまずく5つの点

ここまでの内容を、失敗しやすい順に5つだけ抜き出しておきます。

1つ目は、株主リストの付け忘れです。平成28年10月から始まった書面なので、それ以前に登記をした経験だけで進めると抜けます。株主が1人でも必要です。

2つ目は、決議要件の読み違えです。定款変更は特別決議で、出席株主の議決権の3分の2以上が必要です。普通決議と同じつもりで議事録を作ると、決議自体が無効になりかねません。

3つ目は、登記原因の日付です。効力発生日を未来に設定した議事録を作ったのに、その日が来る前に申請してしまうと受け付けてもらえません。

4つ目は、定款に何が書いてあるかを確認しないまま動くことです。本店移転で定款変更が要るかどうか、事業年度の変更で登記が要るかどうかは、すべて自社の定款の書きぶりで決まります。

5つ目は、登記が終わった時点で完了だと思うことです。許認可の変更届、税務の異動届、銀行への届出が残っています。登記は入口であって出口ではありません。

運営者の視点から見た、会社の書類まわりの実態

在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた立場から言うと、個人で仕事を受けていた人が法人を作ったあと、いちばん時間を取られるのがこの種の手続きです。仕事の腕とはまったく関係のない作業で、しかも年に1回あるかないかなので毎回ゼロから調べ直すことになる。定款変更登記の必要書類を検索している人が多いのは、そういう構造があるからです。

同時に、この手続きの知識そのものが仕事になる場面も増えています。士業事務所は登記や申告の実務を抱えたまま、顧客への説明資料やサイトの原稿、業務のマニュアル化に手が回っていないことが多い。制度を正確に読める書き手や、手順を整理して業務フローに落とせる人への需要は、この10年で確実に増えました。法律や制度を扱う文章の書き手がどのくらいの水準で取引されているかは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種別のデータとして確認できます。書類仕事を正確にさばける力は、事務作業ではなく専門性として値段が付く領域です。

書類の型を正しく作れる人が評価されやすいのも、この分野の特徴です。申請書と添付書面の関係を理解して、誰が読んでも同じ結論になる文書を作れるかどうか。その基礎を体系的に押さえたいならビジネス文書検定のような資格の出題範囲が、意外なほど実務に近い形で整理されています。

もう1つ、運営者として見てきた限りでは、法人化した人が最初に直面するのは手続きそのものより「手取りが思ったより増えない」という現実のほうです。売上は同じなのに社会保険料と税金と手続きコストが増える。だからこそ、仲介手数料が乗らない直接の取引をどれだけ持てているかが効いてきます。同じ予算でも、中間で抜かれる分がなければ依頼する側はより多くを頼めますし、受ける側の手取りは厚くなる。手数料0%という条件が意味を持つのは、この手取りの厚みの部分です。法人を作るかどうかを考える段階の人ほど、案件単価そのものより、単価から何が引かれるかを先に見たほうがいいと考えています。

取引の相手方との関係でいえば、発注書や契約書の整備も同じ文脈にあります。登記や定款は対外的な看板を整える作業で、契約書は目の前の1件を守る作業です。どちらも「後から揉めたときに、何が証拠として残っているか」で価値が決まります。取引条件の書面化についてはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに必須項目を整理してあるので、登記の手続きが落ち着いたタイミングで一度見直しておくと、次のトラブルを1つ減らせます。

定款変更登記の必要書類は、突き詰めれば申請書と議事録と株主リストの3枚です。難しいのは枚数ではなく、自分の会社の定款と登記簿のどこが変わるのかを見極めるところにあります。そこさえ切り分けられれば、あとは法務局の記載例のとおりに埋めていく作業になります。

よくある質問

Q. 定款変更登記に最低限必要な書類は何ですか?

変更登記申請書、株主総会議事録、株主リストの3点が基本です。司法書士などに依頼する場合はこれに委任状が加わります。登録免許税を納めるための収入印紙を貼る台紙も1枚用意してください。機関設計を変える場合は、就任承諾書や本人確認証明書、印鑑証明書が追加で必要になります。

Q. 株主が自分ひとりでも株主リストは必要ですか?

必要です。登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合は株主リストの添付が求められ、株主が1人でも例外はありません。書く内容は氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数割合の5点で、代表者が証明します。会社法第319条第1項で決議を省略した場合も添付が必要です。

Q. 定款変更の登記費用はいくらかかりますか?

登録免許税は、商号や目的などの登記事項の変更なら申請1件につき3万円、本店移転は1箇所につき3万円です。同じ区分の変更は1通の申請書にまとめれば合計3万円で済みます。役員変更を同時に行うと区分が別なので、資本金1億円以下の会社で1万円が加算されます。司法書士に依頼する場合の報酬は別途3万円から8万円程度が目安です。

Q. 2週間の期限を過ぎてしまったらどうなりますか?

期限を過ぎてから申請しても、それだけを理由に却下されることはなく、受け付けてもらえます。ただし会社法第976条第1号により、代表者個人が裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。さらに最後の登記から12年を経過した株式会社はみなし解散の対象になるため、気づいた時点ですぐに申請してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月28日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方