本店を移すときの登記|管轄が変わると費用が倍になる


この記事のポイント
- ✓本店移転定款変更が必要になるのはどんなときか
- ✓管轄内と管轄外で登記の出し方と費用がどう変わるかを
- ✓法務局の記載例と登録免許税の税額表で確かめながら順に整理します
まず、安心してください。本店移転で定款を直さなければいけない会社は、実はそれほど多くありません。定款のどこに何が書いてあるかを見れば、株主総会が要るのか、取締役の決定だけで済むのかは5分で判断できます。
ただし、手続きの重さと費用を左右するのは「定款を直すかどうか」ではありません。本当の分かれ目は、移転先が今の法務局の担当区域の中か外かです。中なら登記の費用は3万円、外に出ると6万円になります。ここを取り違えたまま予算を組むと、申請の当日に収入印紙が足りずに出直すことになります。
この記事では、定款の確認から登記の申請、そして登記が終わったあとの届出までを、法務局が公開している申請書の記載例と、国税庁が公開している登録免許税の税額表で確かめながら順に並べます。専門用語は出てくるたびに言い換えます。
本店移転で最初にやることは、定款の本店の条文を読むこと
会社の決まりごとを書いた文書のことを定款と呼びます。設立のときに作って、公証役場で認証を受けたあの文書です。本店移転の話は、まずここから始まります。
定款には、本店の場所を書く条文が必ず1つ入っています。書き方は大きく2通りあります。
1つ目は、市区町村までしか書いていない書き方です。たとえば「当会社は、本店を神奈川県藤沢市に置く」という形。行政の区分けとしていちばん小さい単位、つまり市区町村までを書く方法で、これを最小行政区画までの記載と呼びます。
2つ目は、番地まで全部書いてある書き方です。「当会社は、本店を神奈川県藤沢市鵠沼海岸1丁目2番3号に置く」という形。設立のときに司法書士に任せず自分で作った定款や、古い雛形をそのまま使った定款に、この書き方が残っていることがあります。
この2通りのどちらかで、次に何をするかが変わります。番地まで書いてあると、同じ建物の中で部屋を移っただけでも定款を直すことになります。市区町村までしか書いていなければ、その市区町村の中で移る限り、定款はそのままで構いません。
自社の定款が手元にない場合は、設立のときの書類一式を探してください。会社の金庫か、設立を頼んだ司法書士事務所か、顧問税理士のところにあるのが普通です。どうしても見つからないときは、定款を作り直す形になります。法務局には定款そのものは保管されていないので、登記事項証明書を取っても定款の中身は分かりません。ここは見落としやすい点です。
定款を直すかどうかは、この4つの組み合わせで決まる
定款の書き方と、移転先の場所。この2つを組み合わせると、やることが4通りに分かれます。表にすると分かりやすくなります。
| 定款の書き方 | 移転先 | 定款変更 | 必要な決議 |
|---|---|---|---|
| 市区町村まで | 同じ市区町村の中 | 不要 | 取締役会(取締役会がなければ取締役の過半数の一致) |
| 市区町村まで | 別の市区町村 | 必要 | 株主総会の特別決議+取締役会等の決定 |
| 番地まで | 同じ建物の別の階 | 必要 | 株主総会の特別決議+取締役会等の決定 |
| 番地まで | どこであれ移転する | 必要 | 株主総会の特別決議+取締役会等の決定 |
ここで出てくる特別決議というのは、普通より重い賛成が要る決議のことです。議決権の過半数を持つ株主が出席して、そのうち3分の2以上が賛成すると成立します。定款を変えるときは、会社法でこの重い決議が求められています。
法務局が公開している本店移転の申請書の記載例にも、同じことが注意書きで書かれています。
(注)定款に本店の所在地として最小行政区画までを規定している場合であって、その最小行政区画内において本店を移転するときには、株主総会の決議は必要なく、取締役会の決議(取締役会設置会社でない会社にあっては、取締役の過半数の一致)により移転することになりますので、株主総会議事録及び株主リストの添付を要しません。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
注意したいのは、定款を直しても登記の内容が変わらない場合があることです。定款の本店の条文を「藤沢市」から「横浜市」に書き換えても、その事実そのものは登記されません。登記されるのは実際の本店の住所だけです。だから株主総会で定款を変えただけでは足りず、そのあとで「いつ、どこへ移すか」を取締役会か取締役の決定で決める必要があります。この二段構えを飛ばして議事録を1通しか作らないと、法務局から連絡が来て出し直しになります。
取締役が1人だけの会社では、取締役の決定書を1枚作ります。日付と移転先の住所、移転の日を書いて、取締役が記名押印すれば足ります。書式は法務局の記載例がそのまま使えます。
管轄が変わるかどうかで、費用も出し方も変わる
ここからが本題です。登記を扱う法務局には、それぞれ担当する区域が決まっています。これを管轄と呼びます。移転先が今の法務局の担当区域の中に収まるかどうかで、手続きの形がまるごと変わります。
同じ管轄の中で移るとき、申請書は1通です。今までと同じ法務局に出して終わりです。
管轄の外へ移るときは、申請書を2通作ります。1通は今までの法務局あて、もう1通は新しい本店を担当する法務局あてです。そして、この2通を同時に、今までの法務局に出します。新しい法務局へ直接持ち込むのではありません。今までの法務局が受け付けて、そこから新しい法務局へ送ってくれる仕組みで、これを経由申請と呼びます。商業登記法にこの流れが定められています。
費用も変わります。登録免許税は、登記のときに国に納める税金のことで、収入印紙を貼って納めます。国税庁が公開している税額表には、本店移転の税額がこう書かれています。
本店または支店の移転の登記 本店または支店の数 1箇所につき3万円 出典: www.nta.go.jp
1箇所につき3万円。管轄の外へ移ると申請書が2通になるので、それぞれに3万円分の収入印紙が要ります。合計で6万円です。
収入印紙は法務局の窓口でも郵便局でも買えます。このあたりの実務の進め方は、登記の書類作成を扱う事業者の案内にも整理されています。
法務局へ提出する登記申請書です。登録免許税として3万円分の収入印紙を貼付が必要となります。収入印紙は法務局やお近くの郵便局でお求め頂けます。 出典: corporate.ai-con.lawyer
もうひとつ、管轄をまたぐときに知っておきたいことがあります。法務局は普通、登記が終わる予定日を公開していて、それを目安に登記事項証明書を取りに行けます。ところが管轄をまたぐ本店移転は、その予定日の対象から外れています。2つの法務局の間で書類が行き来するぶん、日数が読みにくいからです。登記事項証明書の提出期限が決まっている取引を控えているなら、余裕を多めに取ってください。
自社の移転先がどの法務局の管轄かは、法務局のサイトの管轄一覧で調べられます。市区町村名で引ける表になっています。同じ市の中でも区によって担当が分かれている地域があるので、思い込みで判断しないことです。
登記の期限は移転した日から2週間。遅れると過料の対象になる
会社の登記事項に変更があったときは、2週間以内に登記をしなければならないと会社法で決まっています。本店移転もこれに含まれます。起算日は「実際に移転した日」です。株主総会を開いた日でも、賃貸借契約を結んだ日でもありません。
この2週間を過ぎるとどうなるか。法務局はこう説明しています。
登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはありませんが、会社・法人の代表者に対して、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
過料というのは、刑罰ではない制裁金のことです。前科にはなりませんし、会社ではなく代表者個人に請求が来ます。金額は裁判所が決めるので事前には分かりませんが、遅れが数年に及ぶ事例では数万円から十数万円の通知が届いたという話が実務の現場でよく聞かれます。金額の大小より、裁判所からの通知が自宅に届くという事実のほうが精神的にこたえます。
逆に、早すぎる申請もできません。法務局は、登記の事由が発生する前に登記の申請をすることはできないとはっきり書いています。来月1日に移転すると決めたからといって、今日のうちに申請することはできません。移転の日を迎えてから出す。これが順番です。
そうなると、実務では移転日から2週間という枠の中で書類を揃えることになります。議事録の作成、収入印紙の購入、申請書の作成。ここを移転当日から始めると慌ただしいので、書類は移転日より前に作っておいて、日付だけ移転日以降にして、移転日を過ぎたらすぐ出す段取りが現実的です。
決議から申請までを日付で並べてみる
言葉で説明されるより、日付の並びを見たほうが分かります。10月1日に管轄の外へ移転する会社を例に、順番を並べます。
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 9月上旬 | 定款の本店の条文を確認し、株主総会が要るかを判定する |
| 9月上旬 | 移転先の管轄法務局を法務局サイトの管轄一覧で確認する |
| 9月中旬 | 株主総会を開いて定款を変更する(必要な場合) |
| 9月中旬 | 取締役会または取締役の決定で、移転先と移転日を決める |
| 9月下旬 | 申請書2通、議事録、株主リスト、委任状を作成する |
| 9月下旬 | 収入印紙6万円分を購入する |
| 10月1日 | 実際に移転する |
| 10月1日以降 | 旧本店を担当する法務局に申請書2通を同時に提出する |
| 10月中旬 | 登記完了。新しい登記事項証明書を取得する |
| 10月中旬以降 | 税務署ほかの届出を出す |
株主総会と取締役会を同じ日に続けて開くのは問題ありません。株主総会で定款を変え、そのまま取締役会で移転日を決める、という運びが一般的です。議事録は2通に分けて作ります。
株主リストというのは、議決権の多い株主から順に並べた一覧表のことです。株主総会の決議を添付するときには、ほぼ必ずこれもセットで求められます。上位から数えて議決権の3分の2に達するまで、または10位に達するまでのどちらか少ないほうまで書けば足ります。株主が3人の会社なら、3人全員を書いても1枚で収まります。書式は法務局の記載例にそのまま載っています。
申請書に付ける書類は、管轄の内か外かで並びが変わる
法務局の記載例をもとに、添付する書類を並べます。
同じ管轄の中で移るとき、旧本店を担当する法務局あてに出す1通に付けるのは次のものです。
- 株主総会議事録(定款を変える場合のみ)
- 株主リスト(株主総会議事録を付ける場合のみ)
- 取締役会議事録、または取締役の過半数の一致を証する書面
- 委任状(司法書士などに頼む場合のみ)
管轄の外へ移るときは、2通それぞれに付けるものが違います。旧本店あての1通には、上と同じ並びを付けます。新本店あての1通に付けるのは委任状だけです。議事録も株主リストも要りません。新しい法務局は、旧本店を担当する法務局から回ってきた記録を見るので、同じ書類を二重に出す必要がないからです。
書類の作り方で気をつける点を挙げます。
申請書が2枚以上になるときは、綴じ目に契印を押します。契印とは、ページのつなぎ目にまたがるように押す印のことで、あとからページを差し替えられないようにするためのものです。押す印は、申請書に押したのと同じ印を使います。
収入印紙は、割印を押さずに貼ります。印紙を汚したり割印を押したりすると、その印紙は使えなくなります。消印の作業の都合があるので、台紙の右側に寄せて貼るよう法務局が案内しています。
議事録の原本を会社に残したいときは、原本と、そのコピーの両方を出します。コピーの末尾に「原本に相違ありません。」と書いて記名したものを添えると、登記が終わったあとに原本を返してもらえます。これを原本還付と呼びます。定款や議事録は会社の大事な記録なので、返してもらう前提で組み立てておくと安心です。
訂正するときは、修正液を使わないでください。二重線で消して近くに正しい文字を書き、申請書に押したのと同じ印を押します。塗りつぶすのも不可です。
登記が終わってからの届出は、忘れやすいものが5つある
登記は入口です。登記が終わったあと、複数の役所に住所が変わったことを届ける必要があります。ここを忘れると、大事な書類が旧住所に届き続けます。
1つ目は税務署です。法人税の届出のひとつに異動届出書という様式があり、本店を移したときはこれを出します。国税庁の案内では、提出先はこう書かれています。
[提出先]異動前の納税地の所轄税務署長
つまり、これまでお世話になっていた税務署に1通出せば済みます。以前は移転後の税務署にも出す必要がありましたが、今はその扱いではありません。提出の時期は「異動等後速やかに」とされていて、日数の縛りはありません。添付書類も不要です。電子申告の仕組みで出すこともできます。
2つ目は都道府県税事務所と市区町村です。法人住民税と法人事業税の窓口で、こちらは自治体ごとに様式も期限も違います。移転前と移転後の両方の自治体に出すことになる場合が多いので、それぞれのサイトで確かめてください。
3つ目は年金事務所です。健康保険と厚生年金の適用事業所としての住所が変わるので、変更の届出が要ります。管轄の年金事務所が変わるかどうかで様式が分かれます。
4つ目は労働基準監督署とハローワークです。労災保険と雇用保険の届出先が変わります。従業員を雇っていない一人会社なら、この2つは不要です。
5つ目は許認可です。建設業、古物商、旅行業、人材紹介、飲食店。営業に許可や届出が要る業種は、それぞれの所管に変更の届出を出します。許認可は期限が厳しいものが多く、しかも遅れると営業そのものが止まるので、優先度はいちばん高く置いてください。
このほかに、銀行の口座、取引先、印刷物、名刺、Webサイト、請求書の様式。役所ではないぶん忘れやすいのに、放っておくと入金や納品に支障が出るのはむしろこちらです。移転の1週間前にリストを作って、登記が終わった日から順に潰していく進め方をおすすめします。
費用を抑えるなら、まず申請方法を選び直す
本店移転にかかるお金は、登録免許税と、司法書士に頼む場合の報酬に分かれます。登録免許税は法律で決まった額なので値切れません。動かせるのは報酬のほうです。
同じ管轄の中の移転で、株主が代表者1人だけ。この条件なら、自分で申請する難易度は高くありません。書式は法務局のサイトにWordとPDFの両方が置いてあり、記載例と見比べながら埋めれば完成します。かかるのは収入印紙の3万円と、往復の交通費だけです。
管轄をまたぐ移転や、株主が複数いて株主リストの作成に自信がない場合は、司法書士に頼むほうが結果的に早く済みます。報酬は事務所によりますが、本店移転の登記代理はおおむね3万円から6万円程度の範囲で案内されていることが多く、管轄をまたぐと加算されるのが一般的です。金額は事前に見積もりで確認してください。
申請の方法そのものにも選択肢があります。法務局は3つの方法を案内しています。ひとつは、電子証明書を使うオンライン申請。ひとつは、二次元バーコードを付けた書面で出す方法。そしてもうひとつが、従来どおりの書面申請です。二次元バーコードを付ける方法は、電子証明書を持っていなくてもオンライン申請に近い利点が得られる方法として法務局が勧めています。申請用総合ソフトという無料のソフトで作れます。
オンラインで出すと、処理の状況を手元のパソコンで確認できます。書面だけで出すと、補正の連絡が来るまで状況が分かりません。窓口まで遠い会社ほど、この差は効いてきます。
なお、書類作成を支援するオンラインのサービスも増えています。
必要情報をフォームに入力するだけでかんたん書類作成費用と時間を抑えて変更登記申請したい方におススメです 出典: corporate.ai-con.lawyer
こうしたサービスは書類を作るところまでを助けてくれるもので、法務局への提出と、そのあとの届出は自社でやることになります。どこまでを任せてどこからを自分でやるか、最初に線を引いておくと迷いません。
移転のついでに直しておくと、次が楽になる定款の条文
本店移転で株主総会を開くなら、同じ機会に定款の他の条文も見直しておくと、次の手続きが軽くなります。株主総会を開くこと自体に手間がかかるので、1回で済ませるほうが合理的です。
いちばん効くのは、本店の条文を市区町村までの書き方に改めることです。番地まで書いてある定款を「当会社は、本店を神奈川県藤沢市に置く」の形に直しておけば、次に同じ市の中で引っ越すときは株主総会が要りません。取締役の決定だけで移れます。小さな会社ほど移転の回数は多くなりがちなので、この1行の違いは後々きいてきます。
公告方法の条文も見ておく価値があります。公告とは、会社が決算などを世の中に知らせることです。官報に載せる方法にしていると、決算公告のたびに数万円の掲載料がかかります。自社のWebサイトに載せる方法(電子公告)に変えると掲載料はかかりませんが、公告方法は登記事項なので、変えると登記が必要になります。本店移転と一緒に申請すれば、申請の手間は1回で済みます。
事業目的も同じです。設立のときに書いた目的が今の事業と食い違っていると、許認可の申請や融資の審査で指摘を受けることがあります。目的の変更も登記事項です。
ただし、登録免許税は登記の種類ごとにかかるので、まとめて申請しても税額が1件分になるわけではありません。安くなるのは司法書士の報酬と、書類を揃える手間のほうです。何をまとめるかは、必要性で決めてください。
働く場所が散らばった会社の、本店の置き方
運営者として在宅と業務委託の現場を20年見てきた立場から言うと、本店の住所の意味はこの数年ではっきり変わりました。かつて本店は「社員が毎日集まる場所」とほぼ同じでしたが、今はそうではない会社が増えています。開発も設計もライティングも、住んでいる場所を問わずに進む仕事になりました。
その結果、本店を置く理由が「働く場所だから」ではなく「郵便と登記の受け皿だから」に寄ってきています。オフィスを縮小して代表者の自宅を本店にする会社、レンタルオフィスに移す会社、逆に採用のために都心の住所を残す会社。どれも合理的な選択ですが、選び方で後の手間が変わります。
実務の観点で言うと、引っ越しの多い会社ほど、定款の本店の条文を市区町村までにしておく効き目が大きくなります。そして、本店を移すたびに届出をやり直すのを避けたいなら、そもそも移転の回数が少なくて済む住所を選ぶことです。レンタルオフィスは契約の更新のたびに区画が変わることがあり、番地が変われば登記も届出もまたやり直しになります。
もうひとつ、長く続いている発注者を見ていて共通しているのは、住所そのものより「連絡が確実に届くこと」を重んじている点です。登記の住所と、実際に書類が届く場所と、請求書に書く住所がばらばらになっている会社は、取引が増えるほど事故が起きます。移転の機会に3つを揃えておくと、後の何十回かの取引が静かになります。
仕事を頼む側と受ける側の間に仲介の手数料が乗らない直接取引では、同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%という形が効くのは、金額そのものより「手取りが厚い」という質の部分です。その関係を長く続けるには、請求と支払いの流れが乱れないことが前提になります。住所の管理はその土台にあたります。
移転を機に、事務まわりを外に出すという選び方
本店移転の手続きを一度通すと、自社の事務がどれだけ属人的かが見えてきます。定款がどこにあるか分からない、議事録の雛形が残っていない、届出先の一覧を誰も持っていない。こうした状態は、会社が小さいうちは何とかなりますが、人が増えると必ず詰まります。
移転を区切りにして、事務の一部を外の力に任せる会社は少なくありません。業務委託で書類の作成や整理を頼む場合、どんな仕事があるかは職種ごとにまとめた案内が参考になります。文書の作成や手順の整備に強い人材を探すなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事に、社内の作業を整理して仕組みに落とす仕事の中身が載っています。社内文書を書ける人の相場観を知りたいときは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、文章を書く仕事の報酬の幅が整理されています。
業務の記録や社内規程を整える仕事を頼むなら、書類の作法をどこまで分かっているかが効いてきます。その目安として使えるのが検定の有無です。ビジネス文書検定には、社外に出す文書の型をどこまで押さえているかを測る試験の内容がまとまっています。議事録や届出書のような定型の文書は、型を知っている人が書くと差し戻しが減ります。
情報システムの担当を外に頼む場合も同じです。本店が変わるとサーバーの契約先住所、ドメインの登録情報、クラウドの請求先住所も変わります。この手の作業を任せられる人材の見極めには、CCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワークの基礎を測る資格の中身を知っておくと話が早くなります。
独自データから見える、住所の変更が仕事に響く場面
在宅と業務委託の案件情報を長く集めてきた立場から見ると、本店の住所変更が実務に効いてくる場面は、思っているより限られています。そして、効く場面ははっきりしています。
いちばん効くのは、取引の入口です。新規の取引先が与信を見るとき、登記事項証明書の本店と、請求書の住所と、Webサイトの会社概要がそろっているかを確認します。ここが食い違っていると、契約の締結が止まります。とくに、発注側が大きな会社であるほどこの確認は形式的に厳格です。
次に効くのが、報酬の支払いです。支払調書や源泉徴収の関係で、支払う側が受け取る側の住所を控えます。ここが古いままだと、年明けに届くはずの書類が旧住所に流れます。取引の件数が多い会社ほど、この訂正作業に時間を取られます。
3つ目は、許認可を要する仕事の受注です。建設、人材、古物のように許可が要る業種では、許可証の住所が現況と合っていないだけで入札や登録から外れることがあります。登記だけ直して許認可の届出を後回しにするのが、いちばん危ない進め方です。
逆に、本店の住所が仕事の獲得そのものを左右する場面は、業種によってはほとんどありません。開発、デザイン、ライティング、翻訳のように成果物で評価される仕事では、どこに本店があるかを問われることは多くありません。案件の実際の中身を職種別に見ていくと、その傾向がつかめます。手を動かす仕事の範囲はアプリケーション開発のお仕事に、データや広告まわりの仕事はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとまっています。単価の水準を確かめたいときはソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になります。
契約と支払いのトラブルを未然に防ぐという意味では、住所の管理は下請法や契約書の整備と地続きです。発注書や契約書に何を書くべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに項目ごとに整理されています。万一、支払いが止まったときにどう動くかは、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に費用感とあわせて書かれています。会計や税務の側から会社の体裁を整える話は、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にある専門家の使い方の部分が参考になります。
なお、ここに書いた税務や法務の扱いは一般的なものです。実際の税額や届出の要否は、会社の規模、資本金の額、事業の内容、自治体によって変わります。判断に迷う場面が出たら、所轄の税務署か、顧問の税理士、司法書士に確認してください。登記の書式と税額については、法務省と法務局、国税庁が公開している資料が一次の情報にあたります。
よくある質問
Q. 同じビルの中で部屋を移っただけでも登記は必要ですか?
必要です。部屋番号まで登記されている場合、その部屋が変われば登記事項の変更にあたります。定款に番地や部屋番号まで書いてあれば定款の変更も要ります。費用は同じ管轄なので3万円です。移転した日から2週間以内に申請してください。
Q. 定款が見つからないときはどうすればよいですか?
法務局には定款そのものが保管されていないため、登記事項証明書を取っても中身は分かりません。設立を頼んだ司法書士事務所か顧問税理士に控えがないか確認し、それでも見つからなければ現在の登記内容に合わせて定款を作り直します。株主総会で新しい定款を承認する形が一般的です。
Q. 管轄をまたぐ移転で、申請書を新しい法務局に直接出してもよいですか?
出せません。新しい本店あての申請書も、旧本店を担当する法務局に、旧本店あての申請書と同時に提出します。商業登記法でこの経由の仕組みが定められています。2通を別々に出したり、順番を入れ替えたりすると受け付けてもらえません。
Q. 移転から2週間を過ぎてしまいました。今から申請できますか?
できます。期間を過ぎたというだけで申請が却下されることはありません。ただし代表者個人に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性があるため、気づいた時点ですぐに申請してください。遅れが長いほど過料の金額が上がる傾向があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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