お礼状の代筆を仕事にする方法と、依頼を受ける場所


この記事のポイント
- ✓お礼状代筆を仕事として受ける側に向けて
- ✓文面作成と手書き清書の違い
- ✓必要なスキルと身につけ方
お礼状の代筆は、文章を書くことや字を書くことが得意な人が、在宅で小さく始めやすい仕事のひとつです。「お礼状代筆」と調べている人の中には、依頼したい側だけでなく、自分の得意をこの仕事に生かせないかと考えている人も少なくありません。
この記事は、受ける側に向けて書いています。どんな依頼が来るのか、1通あたりいくらで受けるのが相場なのか、どこで依頼を見つけるのか、そして引き受けたあとに何に気をつけるのか。始める前に知っておきたいことを、順番に整理しました。
結論を先に書くと、お礼状の代筆は資格がなくても始められます。ただし、依頼主の名前で相手に届く手紙を預かる仕事なので、文章の上手さ以上に、聞き取りの丁寧さと秘密を守る姿勢が評価を分けます。
お礼状の代筆とはどんな仕事か
お礼状の代筆には、大きく分けて2つの形があります。どちらを引き受けるかで、必要な道具も作業時間も変わります。
1つ目は、文面を考える仕事です。依頼主から「誰に」「何のお礼を」「どんな関係で」を聞き取り、相手にふさわしい文章を組み立てます。仕上がりはデータで渡し、依頼主が自分で書き写したり、印刷したりします。文章作成代行と呼ばれることもあります。
2つ目は、手で書いて清書する仕事です。文面は依頼主が用意するか、1つ目と組み合わせて代筆者が作り、それを便箋やはがきに手書きします。毛筆や筆ペン、万年筆、ボールペンなど、依頼に合わせた筆記具で書き、場合によっては封入や宛名書き、投函までを引き受けます。
手紙の代筆を長く手がけている事業者は、文面づくりについて次のように説明しています。
テンプレートを流用せず、お客様の事情や相手との関係に合わせ、一通ずつゼロから文章を作成します。手紙をはじめ、400件を超える文章制作で培った経験をもとに、一件ごとに最適な文面をご提案します。 出典: bun-ken.sakura.ne.jp
この一文に、仕事の中身がよく表れています。お礼状には決まった型がありますが、型を埋めるだけなら依頼主が例文集を見れば済みます。お金を払ってでも頼みたいのは、自分と相手の関係に合った言葉が見つからないときです。代筆者の役目は、その関係を聞き取って言葉にすることにあります。
在宅で始めるなら、まずは文面づくりから入るのが現実的です。手書きの清書は、紙や筆記具、郵送の手配が加わり、1通あたりの手間が大きく増えます。文面づくりで依頼の流れに慣れてから、字に自信がある人は清書まで広げる、という順番が無理のない進め方です。
依頼が生まれる場面と、依頼主の事情
どんな人がお礼状の代筆を頼むのかを知っておくと、仕事の探し方も、自分の売り方も決めやすくなります。
依頼が生まれる場面は、個人と法人で分かれます。個人の依頼で多いのは、結婚祝いや出産祝い、入学祝いへのお返しに添えるお礼状、法事や葬儀のあとの会葬御礼や香典返しの挨拶状、入院中のお見舞いへのお礼、お世話になった恩師や上司への退職時の手紙などです。冠婚葬祭は日常的に起きることではないので、手紙の作法を知らないまま当日を迎える人が多く、「失礼のない文面にしたい」という依頼につながります。
法人の依頼では、取引先への御礼状、展示会やセミナーに来てくれた人へのお礼状、契約後の挨拶状、顧客への季節の挨拶状などがあります。担当者が忙しくて手が回らない、社長の名前で出すので文面に失敗できない、何十通もまとめて手書きで出したい、という事情が背景にあります。
手紙という手段そのものについて、代筆サービスを比較している記事は次のように書いています。
手紙は、印刷した文書よりも気持ちが伝わりあたたかみを感じられ、特別なコミュニケーションとしての役割を果たすものですが、適切な言葉を選び美しい筆跡で書くことは容易ではありません。 出典: timers-inc.com
連絡の大半がメールやチャットに移ったことで、手書きの手紙はかえって目立つようになりました。受け取った側の印象に残りやすいので、ここぞという場面で手紙を選ぶ人はいます。ところが、普段書かない人ほど、時候の挨拶や結びの言葉、敬語の重ね方で迷います。代筆の需要は、この「書きたいけれど書けない」の隙間から生まれています。
依頼主の事情を想像できると、ヒアリングでも先回りができます。たとえば香典返しの挨拶状なら、忌み言葉を避ける、句読点を使わない書き方にするかどうかを確認する、といった配慮が必要です。こうした場面ごとの作法を知っていることが、代筆者としての信頼になります。
料金の相場と、1通あたりの作業時間
受ける側として最初に決めなければならないのが料金です。安すぎると続かず、高すぎると最初の依頼が来ません。
手紙代筆サービスの比較記事では、依頼先ごとの相場を次のように紹介しています。
例えば、ペン字の先生やフリーライター、日本語検定資格所持者など、個人が代筆を行うケースでは、1通あたり1,000〜2,000円が相場です。 出典: timers-inc.com
同じ記事では、代筆サービスの会社に頼む場合を1通あたり1,000円から5,000円程度としています。複数通の依頼や即日の納品には追加料金がかかる場合もある、と添えられています。
ここで大事なのは、この相場が何を含んだ値段なのかを自分で分解しておくことです。個人の相場である1通あたり1,000〜2,000円は、すでに文章が用意されている清書や、型に近い短い礼状を想定した値段と読むのが自然です。ヒアリングから文面をゼロで起こすなら、聞き取りに30分、下書きに1時間、修正のやりとりに30分ほどかかることもあります。その手間を考えずに相場どおりの値段をつけると、時給に直したときに続けられない金額になります。
そこで、料金は作業ごとに分けて示すのが受ける側にとって安全です。たとえば次のような分け方があります。
| 作業 | 料金の決め方の例 |
|---|---|
| 文面の作成(はがき1枚程度) | 1通ごとの定額。長さに応じて段階をつける |
| 文面の作成(便箋2枚以上) | 文字数か枚数で加算 |
| 手書きの清書 | 1通ごとの定額。毛筆は別料金 |
| 宛名書き・封入・投函 | 1通ごとの加算。切手代・紙代は実費 |
| 急ぎの納品 | 通常料金に一定額を加算 |
表の金額は、自分の作業時間を測ってから決めます。最初の数件は、ヒアリングから納品までの時間を記録しておきましょう。1通あたりの時間が分かれば、自分が目標にする時給から逆算して、無理のない料金が出せます。
仕事にするメリットとデメリット
始める前に、良い面と難しい面の両方を見ておきます。
メリットの1つ目は、初期費用が小さいことです。文面づくりだけなら、パソコンと文例を調べるための本が数冊あれば始められます。清書まで引き受ける場合も、筆ペンや便箋など手の届く道具で足ります。
2つ目は、場所と時間を選ばないことです。ヒアリングはメッセージやオンライン通話で済み、納品もデータや郵送でできます。家事や本業の合間に1通ずつ進められるので、副業として組み込みやすい働き方です。
3つ目は、経験がそのまま強みになることです。冠婚葬祭の作法、ビジネスの挨拶の言い回し、業界ごとの慣習。こうした知識は書くほど蓄積され、依頼主から見て「この人に頼めば安心」と思える理由になります。
一方で、デメリットもはっきりしています。
1つ目は、1件あたりの単価が低く、件数が安定しにくいことです。お礼状の依頼は季節や行事に左右されます。年末年始や年度の変わり目、結婚式の多い時期に集中し、それ以外の時期は依頼が細ります。お礼状だけで生活費をまかなうのは難しく、挨拶状や案内状、スピーチ原稿など、近い仕事と組み合わせる人が多いのが実情です。
2つ目は、責任の重さです。依頼主の名前で相手に届く手紙なので、誤字や敬称の誤り、相手の名前の書き間違いは、依頼主の信用に直接響きます。一度の失敗が依頼主と相手の関係を傷つけるおそれがあると考えて、確認の手順を決めておく必要があります。
3つ目は、手書きの清書を引き受ける場合の体への負担です。同じ文面を何十通も書く依頼では、手首や肩を傷めることがあります。1日に書く通数の上限を自分で決めておくと、品質も体も守れます。
必要なスキルと、身につけ方
お礼状の代筆に必須の資格はありません。それでも、依頼主が安心して頼めるかどうかは、次の4つのスキルで決まります。
1つ目は、手紙の型を知っていることです。お礼状には、頭語、時候の挨拶、相手の安否を気づかう言葉、本題のお礼、今後のお願い、結びの挨拶、結語という流れがあります。拝啓と敬具、謹啓と謹白のように、頭語と結語には組み合わせがあります。この型を自然に使いこなせることが出発点です。
2つ目は、敬語と言葉の選び方です。尊敬語と謙譲語の取り違えや、二重敬語は、読み手に違和感を与えます。ビジネスの礼状と私的な礼状では、ふさわしい言葉の硬さも変わります。
3つ目は、聞き取る力です。依頼主の多くは、何を書けばよいかが分からない状態で相談してきます。相手とはどこで知り合ったのか、何をしてもらったのか、そのとき何を感じたのか。こうした具体的な出来事を引き出せるかどうかで、文面の温度が決まります。
4つ目は、清書まで引き受けるなら、読みやすく整った字です。達筆である必要はありませんが、文字の大きさがそろい、行がまっすぐで、楷書で丁寧に書けることが求められます。
身につけ方としては、文例集を1冊手元に置いて、場面ごとの型を写して覚えるのが近道です。そのうえで、自分の知り合いへのお礼状を実際に書いてみると、型を当てはめるだけでは足りない部分が見えてきます。
ビジネス文書の書き方を体系立てて学びたい人は、検定を目標にする方法もあります。ビジネス文書検定のページでは、社内外の文書の書式や表現の基礎を問う検定の内容をまとめています。取得していなくても仕事はできますが、自己紹介の欄に書けると、依頼主が判断する材料のひとつになります。
ペン字や書道の経験がある人は、清書の見本を数点用意しておくと、それだけで信頼の度合いが変わります。
道具については、清書を引き受けるなら、にじみにくい便箋と封筒、黒の筆ペンと万年筆、下敷きにする罫線入りの用紙をそろえておくと、多くの依頼に対応できます。文面づくりだけなら、手紙の文例集と敬語の辞典、表記を確かめるための国語辞典があれば十分です。高価な道具から入る必要はなく、依頼の傾向が見えてから少しずつ買いそろえていけば、始めるときの負担を小さく抑えられます。
依頼を受ける場所
ここが、この記事でいちばん知りたいところだと思います。お礼状の代筆の依頼は、主に5つの場所から生まれます。
1つ目は、クラウドソーシングです。企業や個人が仕事を募集し、受ける側が応募する仕組みです。「お礼状」「挨拶状」「手紙 作成」「文章 代行」といった言葉で探すと、法人の御礼状や挨拶状の募集が見つかります。最初は実績がゼロなので、短い案件で評価を積み上げることから始めます。
2つ目は、スキルを出品するマーケットです。こちらは受ける側が「お礼状の文面を作ります」「手書きでお礼状を清書します」とメニューを出し、依頼主が選んで申し込む形です。料金表と見本を自分で用意できるので、得意な場面をはっきり打ち出せます。
3つ目は、自分のウェブサイトやSNSです。見本と料金、依頼の流れを1ページにまとめておくと、検索から直接相談が届くことがあります。集客には時間がかかりますが、手数料がかからず、リピートの依頼主と直接つながれる点が大きな利点です。
4つ目は、地域のつながりです。印刷店、ギフト店、葬儀社、結婚式場などは、お礼状や挨拶状を必要とする客と日常的に接しています。手書きの宛名書きや挨拶状の文面づくりを外注先として引き受ける形で、まとまった依頼につながることがあります。
5つ目は、在宅ワークの求人サイトです。文章作成や事務代行の募集の中に、礼状や挨拶状の作成を含む仕事が出てきます。継続の依頼につながりやすいので、単発の仕事と並べて探しておくと安定しやすくなります。
最初の1件をどこで取るかは、自分の強みで決めます。文面づくりが得意ならクラウドソーシングとスキルマーケット、字が得意なら見本を見せやすいスキルマーケットと地域のつながり、という選び方が自然です。
依頼を受けてから納品までの流れ
受ける側が手順を決めておくと、依頼主は安心し、自分も手戻りを減らせます。一般的な流れは次のとおりです。
最初に、ヒアリングをします。聞いておきたい項目は、送る相手の名前と肩書き、依頼主との関係、お礼の対象になった出来事、送る時期、手紙の長さ、縦書きか横書きか、はがきか便箋か、依頼主の名前の書き方です。法人の依頼なら、会社名と部署名、役職名の正式な表記も確認します。聞き漏らしを防ぐために、質問項目を一覧にした用紙を用意しておくと便利です。
次に、下書きを作ります。下書きでは、型に沿って全体を組み立てたうえで、ヒアリングで聞いた具体的な出来事を本題に入れます。「先日はありがとうございました」だけでは、誰に出しても同じ文面になります。「お忙しい中、展示会の会場まで足を運んでいただき」のように、相手がしてくれたことを具体的に書くと、受け取った側に気持ちが伝わります。
3つ目に、依頼主に確認してもらいます。修正の回数をあらかじめ決めておくと、やりとりが際限なく続くのを防げます。2回までは料金に含める、といった決め方が一般的です。
4つ目に、清書をする場合は、書き始める前に相手の名前と敬称、依頼主の名前を、確定した文面と1文字ずつ突き合わせます。書き損じに備えて、便箋やはがきは予備を用意しておきます。
最後に、納品です。データで渡すなら、そのまま印刷できる形式で渡します。手書きの現物を渡すなら、折り目や汚れがないように梱包し、追跡できる方法で送ると安心です。投函まで引き受ける場合は、投函日を依頼主に知らせておきます。
代筆で守るべき注意点
お礼状の代筆は、依頼主の名前で手紙を出す仕事です。だからこそ、守るべき約束がいくつかあります。
1つ目は、名義の扱いです。代筆した手紙の差出人は、あくまで依頼主です。代筆者の名前を書き添えることは通常ありません。一方で、家族が代わりに書く場合には、夫の名前の左下に小さく「内」と添える、上司の手紙を部下が代わりに書く場合に「代」と添える、といった習慣があります。どの書き方にするかは、依頼主と相談して決めます。
2つ目は、個人情報の扱いです。ヒアリングでは、相手の住所や名前、依頼主の家族の事情など、外に出してはいけない情報を預かります。受け取った資料の保存場所を決め、納品後に不要になったものは削除する、手書きの下書きは細かく裁断して処分する、といった扱いを自分のルールとして決めておきましょう。法人の依頼では、秘密を守る約束の書面を交わすこともあります。
3つ目は、引き受けてはいけない文書があることです。役所に提出する書類や、権利や義務に関わる書面の作成を、報酬を得て他人のために代わりに作ることは、行政書士や弁護士といった資格者の業務にあたる場合があります。お礼状や挨拶状とは性質が違うので、相手への請求や抗議の文書、契約に関わる書面などを頼まれたときは、受ける前に専門家の窓口に確認する、または断るのが安全です。
4つ目は、相手を誤解させる内容を書かないことです。依頼主が実際にはしていないことを、したかのように書く依頼は断ります。お礼状は気持ちを伝える手紙で、事実を飾るための道具ではありません。
5つ目は、納期の約束です。お礼状は出す時期に意味があります。お祝いやお見舞いへのお礼は、受け取ってから早めに出すのが礼儀とされています。受ける側が遅れると、依頼主の印象まで損ないます。引き受ける前に、自分の手が空いているかを確かめてから返事をしましょう。
選ばれる代筆者になるための工夫
依頼主は、似たような代筆者が並ぶ中から1人を選びます。選ばれるための工夫は、特別な才能よりも、見せ方と段取りにあります。
まず、見本を用意します。結婚祝いのお返し、会葬御礼、取引先への御礼など、場面ごとに数点ずつ見本の文面を作っておきます。清書を引き受けるなら、実際に手で書いたものを写真に撮って並べます。依頼主は、見本を見て「この雰囲気で頼みたい」と判断します。
次に、料金表と納期をはっきり示します。何が料金に含まれ、何が追加になるのか、何日で納品できるのかが分からないと、依頼主は相談すること自体をためらいます。修正の回数や、紙代・切手代の扱いも書いておきましょう。
3つ目に、得意な場面を絞ります。「何でも書けます」より、「冠婚葬祭のお礼状と挨拶状が専門です」「法人の御礼状を手書きで大量に引き受けます」のように、得意を言い切るほうが、探している人の目に留まります。
4つ目に、返信を早くします。お礼状を頼む人は、出す時期が迫っていることが多く、最初に丁寧に返事をくれた人に依頼する傾向があります。
5つ目に、リピートにつながる工夫をします。法人の依頼主なら、季節の挨拶状の時期に「今年もお手伝いできます」と一言連絡するだけで、次の依頼につながることがあります。個人の依頼主でも、香典返しの挨拶状を頼んだ人が、一周忌の案内状を頼んでくることがあります。
場面別に押さえておきたい文面の型と言葉の選び方
依頼の多い場面ごとに、気をつける点を整理しておきます。見本を作るときの下敷きにもなります。
結婚祝いへのお礼状では、お祝いの品や言葉への感謝に加えて、新しい生活の様子をひとこと添えると温かみが出ます。避けたいのは、別れや繰り返しを連想させる言葉です。「重ね重ね」「たびたび」「切れる」「終わる」といった表現は、結婚に関わる手紙では使わないのが一般的です。
出産祝いへのお礼状では、子どもの名前と読み方、生まれた日、元気に過ごしている様子を入れます。依頼主に確認せずに名前の漢字を書くと、取り返しのつかない誤りになるので、ヒアリングで必ず書面の形で受け取ります。
香典返しや会葬御礼の挨拶状は、作法の違いがもっとも大きい場面です。宗教や地域によって言い回しが変わり、句読点を打たない書き方を選ぶこともあります。「重ねて」「再び」のように不幸が続くことを連想させる言葉は避けます。依頼主の宗派や、四十九日などの時期を聞いてから書き始めましょう。
取引先への御礼状は、簡潔さが大事です。何に対するお礼なのかを最初の段落で明らかにし、今後の取引への期待を添えて結びます。会社名や役職名は、名刺や公式サイトで正式な表記を確認してから書きます。株式会社が前に付くか後ろに付くかの取り違えは、ビジネスの手紙でもっとも多い誤りのひとつです。
退職する人が恩師や上司に宛てる手紙では、具体的な思い出を1つ選んで書くと、型どおりの文章から抜け出せます。どの出来事を選ぶかは、ヒアリングで依頼主に複数挙げてもらい、相手にとっても印象に残っていそうなものを一緒に選びます。
こうした場面ごとの注意点を、自分用の確認表にまとめておくと、文面を書き終えたあとの見直しが速くなり、誤りも減ります。
始めてから最初の3か月の進め方
最後に、何から手をつければよいかを時期ごとに並べます。
最初の1か月は、準備にあてます。場面別の見本を5点から10点作り、料金表と納期、修正の回数、個人情報の扱いを文章にします。ヒアリングの質問用紙もこの時期に作っておきます。家族や知人のお礼状を実際に書かせてもらい、1通にかかる時間を測っておくと、料金の根拠が自分の中ではっきりします。
2か月目は、最初の依頼を取りにいきます。クラウドソーシングで短い挨拶状や御礼状の募集に応募し、同時にスキルマーケットにメニューを出します。この段階では件数よりも、1件ずつ丁寧に仕上げて評価をもらうことを優先します。依頼主から感想をもらえたら、本人の了解を得たうえで紹介文に使わせてもらいましょう。
3か月目は、振り返りの時期です。どの場面の依頼が多かったか、どの作業に時間がかかったか、修正が多かったのはどんな依頼だったかを見直します。時間がかかりすぎている作業があれば料金を見直し、依頼の多い場面があれば見本を増やして得意分野として打ち出します。年末の挨拶状や年度末の退職の手紙など、依頼が集中する時期の前に告知を出す準備もこの時期に始めます。
3か月続けると、自分に向いている依頼の種類と、無理のない件数が見えてきます。そこから先は、得意な場面を深めるか、挨拶状や案内状など近い仕事へ広げるかを選んでいけばよいでしょう。
契約と報酬の受け取り、税金の線引き
仕事として続けるなら、お金と書類の扱いも最初に決めておきます。
法人から仕事を受ける場合、受ける側は「フリーランス」として法律で守られる立場にあります。厚生労働省は、令和6年11月1日に施行された法律について次のように説明しています。
個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられます。 出典: mhlw.go.jp
つまり、法人の発注者は、仕事の内容や報酬額、支払期日を受ける側に示さなければなりません。口約束で始めず、メッセージやメールで条件を残しておくことが、受ける側を守ります。この法律が対象にしているのは事業者からの発注で、個人の依頼主から受ける冠婚葬祭のお礼状などは当てはまりません。個人の依頼主との取引では、料金と納期、修正の回数を自分で文字にして残す習慣がいっそう大切です。報酬が支払われないときの対処は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で、請求の順番と費用の目安を整理しています。
税金については、会社員が副業で代筆をする場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。国税庁は、確定申告が必要な人の条件として次のように示しています。
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人 出典: nta.go.jp
ここでいう所得は、売上から紙代や筆記具、郵送費などの経費を引いた額です。なお、20万円以下でも住民税の申告は別に必要になる場合があるので、住んでいる市区町村に確認しましょう。事業として本格的に続けるなら、開業届と青色申告の承認申請を出しておくと、帳簿のつけ方に応じて最高65万円の控除が受けられます。どの所得区分にあたるかは、売上の規模や続け方で変わるので、迷ったら税務署に相談してください。
依頼主とのやりとりで起きやすいトラブルと防ぎ方
小さな仕事でも、行き違いは起きます。よくあるものと、その防ぎ方を挙げておきます。
1つ目は、修正が終わらないことです。依頼主が文面に納得しきれず、細かな言い回しの変更が何度も続くことがあります。防ぎ方は、最初に修正の回数を決めておくことと、下書きを出すときに「この文面で伝えたいこと」を1行で添えることです。狙いが共有できていると、修正の方向がぶれにくくなります。
2つ目は、支払いのタイミングをめぐる行き違いです。個人の依頼主とは、前払いにするか、下書きを確認してもらってから支払ってもらうかを最初に決めておきます。清書や郵送まで引き受けるときは、紙代や切手代を先にいただく形にすると、受ける側が立て替える負担を減らせます。
3つ目は、書き損じや配達の事故です。清書した手紙が郵送中に折れたり、相手の住所が古かったりすることがあります。住所は依頼主に最新のものを確認してもらい、書き直しが必要になった場合の扱いを料金表に書いておきます。
4つ目は、依頼の範囲が広がっていくことです。お礼状を頼まれたはずが、途中から挨拶状やメールの文面まで頼まれる、ということがあります。追加の依頼は、別の依頼として料金を示してから受けるのが、お互いのためです。
どのトラブルも、最初に文字で約束を残しておけば、多くは避けられます。
運営者の視点から見た、代筆の仕事が続く人の共通点
最後に、フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、文章系の小さな仕事が長く続く人の特徴を書いておきます。
運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、1通ごとの単価よりも「この人に頼めば楽」という関係づくりに時間を使っています。お礼状の代筆でいえば、ヒアリングの用紙を整えておく、前回の依頼主の好みを記録しておく、季節の行事の前に声をかける、といった地味な積み重ねです。依頼主にとって、毎回一から説明しなくて済む相手は貴重で、多少料金が高くても頼み続けます。
もうひとつ、仲介の手数料が少ない取引ほど、双方に余裕が生まれるという実感があります。同じ予算で依頼主はもう1通頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%で直接やりとりできる場は、単価の低い仕事ほど効いてきます。
文章を書く仕事全体の収入の幅は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で公的な統計をもとに確認できます。お礼状の代筆を入り口に、挨拶状やスピーチ原稿、ウェブの文章へと広げていく人は多く、文字単価の上げ方はWebライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップが参考になります。また、生成AIで下書きを作る依頼主が増えているため、AIが作った文面を相手に合わせて整える仕事も生まれています。業務へのAIの取り入れ方を支援する仕事はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介しています。
お礼状の代筆は、1通の手紙で依頼主と相手の関係を支える仕事です。見本と料金表を用意し、最初の1件を丁寧に仕上げるところから始めてみてください。
よくある質問
Q. お礼状の代筆を仕事にするのに資格は必要ですか?
必須の資格はありません。文面づくりなら手紙の型と敬語の知識、清書まで引き受けるなら読みやすく整った字があれば始められます。ビジネス文書検定やペン字の経験は、依頼主が判断する材料として自己紹介に書けます。ただし、役所に出す書類や権利に関わる書面の作成は資格者の業務にあたる場合があるため、受ける前に確認してください。
Q. お礼状の代筆は1通いくらで受けるのが相場ですか?
個人が受ける場合は1通あたり1,000〜2,000円、代筆サービスの会社では1,000〜5,000円程度が相場として紹介されています。ゼロから文面を起こす場合や毛筆の清書、急ぎの納品は手間が増えるので、作業ごとに料金を分けて示すと無理なく続けられます。
Q. 代筆した手紙に代筆者の名前を書く必要はありますか?
通常は書きません。差出人はあくまで依頼主です。家族が代わりに書く場合に「内」、部下が上司の代わりに書く場合に「代」と添える習慣もあるので、どの書き方にするかは依頼主と相談して決めます。
Q. 副業でお礼状の代筆をしたら確定申告は必要ですか?
会社員の場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。所得は売上から紙代や郵送費などの経費を引いた額です。20万円以下でも住民税の申告が必要になる場合があるので、住んでいる市区町村に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







