株主が自分ひとりの株主総会の議事録|開いたことにしてよい範囲


この記事のポイント
- ✓株主が自分ひとりの会社でも株主総会議事録は必要になる
- ✓ひとりで会議を開かずに済ませる方法
- ✓そのときに議事録へ書く項目
ひとりで会社を作った人が最初に戸惑うのが、この書類だ。株主は自分ひとり、役員も自分ひとり。それなのに株主総会の議事録を作れと言われる。自分に向かって議案を提案し、自分がそれに賛成したと書くのか。そんな疑問を持つのは自然なことだ。まず安心してほしいのは、実際にひとりで会議室に座って議事進行をする必要はない、という点である。会社法は、集まらずに決めて記録だけを残す道をちゃんと用意している。この記事では、株主が自分ひとりの会社で議事録が要る理由、ひとりで開かずに済ませる手順、そのときに書く項目、そして作った紙をいつまで持っておくのかまでを、条文の記載に沿って順に整理する。
株主がひとりでも、記録を残す義務は消えない
最初に押さえておきたいのは、株主が何人いるかと、記録を残す義務があるかどうかは別の話だということだ。会社法は、株主総会の議事については法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならない、と定めている。ここに「株主が2人以上いる場合に限る」といった例外は書かれていない。
そもそも株式会社は、お金を出す人(株主)と会社を動かす人(取締役)を分けて考える仕組みだ。ひとりで作った会社では、その2つの役割を同じ人が兼ねているだけで、役割そのものが消えたわけではない。だから「出資者としての自分が、経営者としての自分に何を承認したのか」を紙にしておく必要がある。
この紙がないと、実際に困る場面がいくつかある。
・役員の任期が来て重任の登記をするとき、選任を決めた株主総会の議事録を法務局に出す ・本店を移したり、事業目的を足したりする定款変更をするとき、同じく議事録が要る ・金融機関から借り入れをするとき、決算書とあわせて提出を求められることがある ・税務調査で役員報酬の金額の根拠を聞かれたとき、決めた日付と金額を示す材料になる
登記に必要な場面では、議事録が無いと手続きそのものが進まない。あわてて過去にさかのぼって作ることになるが、日付をさかのぼって作った紙は整合性が取りにくく、結局は余計な手間になる。年に1度の決算のタイミングで一緒に作っておくのが、いちばん楽な進め方だ。
ひとりで会議を開く必要はない。使える道は3つある
では、ひとりで議事進行をするのか。しなくてよい。会社法には、実際の開催を省く仕組みが複数ある。
1つ目は、招集の手続きを省いて開く形だ。 会社法は、株主の全員の同意があるときは招集の手続を経ることなく株主総会を開催できる、と定めている。株主が自分ひとりなら、自分が同意すれば条件を満たす。つまり招集通知を自分宛てに出す必要はない。これを使うと「開いたことは開いた。ただし通知の手続きは飛ばした」という形になる。
2つ目は、そもそも開かない形だ。 こちらが決議の省略と呼ばれるもので、条文はこう書いている。
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。 出典: laws.e-gov.go.jp
議決権を持つ株主の全員が書面か電子データで同意すれば、決議があったものとみなされる。株主が自分ひとりなら、自分が同意書に署名すればそれで要件を満たす。会議は開かない。日時も場所も存在しない。
3つ目は、報告を省く形だ。 決算の内容を株主総会に報告する場面について、会社法は、取締役が株主の全員に報告すべき事項を通知し、報告を要しないことについて株主の全員が書面または電磁的記録で同意したときは、報告があったものとみなす、と定めている。
ひとり会社で実務上いちばん使いやすいのは2つ目の決議の省略だ。会議の日時と場所を考える必要がなく、同意書と議事録の2枚で完結する。ただし後で触れるとおり、この形を選ぶと議事録に書く項目が変わる。ここを取り違えると、形の整わない紙ができあがる。
開かずに決めたときの議事録に書く項目
決議の省略を使った場合、議事録の中身は通常の会議とは別物になる。会社法施行規則は、決議があったものとみなされた場合の議事録の内容として、次の4つを挙げている。
| 書く項目 | 補足 |
|---|---|
| 決議があったものとみなされた事項の内容 | 何が決まったか。議案の本文をそのまま書く |
| その提案をした者の氏名または名称 | 取締役が提案したなら取締役の氏名 |
| 決議があったものとみなされた日 | 同意の意思表示が揃った日 |
| 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 | 作成した取締役の氏名 |
逆に言えば、開催した日時や場所、議長の氏名、出席者の氏名は書かない。開いていないのだから当然だ。ところが世の中に出回っている雛形の多くは会議を開いた前提で作られているため、そこへ決議の省略の文言を混ぜ込んでしまい、「開催場所は本店会議室」と書いてあるのに「決議があったものとみなされた」とも書いてある、という矛盾した紙ができあがる。どちらの形で行くかを先に決めて、その形に合った項目だけを書く。
実際の書き方は次のようになる。
株主総会議事録
1 株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
第1号議案 第〇期計算書類承認の件
第〇期(令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで)の
貸借対照表および損益計算書を承認する。
第2号議案 取締役の報酬額決定の件
取締役の報酬額を年額〇〇〇万円以内とする。
2 上記事項の提案をした者 取締役 〇〇〇〇
3 株主総会の決議があったものとみなされた日
令和〇年〇月〇日
4 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
取締役 〇〇〇〇
上記のとおり、会社法第319条第1項の規定により株主総会の決議が
あったものとみなされたので、本議事録を作成する。
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇
取締役 〇〇〇〇 印
この議事録と対になるのが、株主としての自分が同意したことを示す書面だ。「株主総会決議の省略に関する同意書」といった表題で、提案の内容と、それに同意する旨、同意した日付、株主の氏名と保有株式数を書いて署名押印する。提案書と同意書を1枚にまとめた「提案書兼同意書」という形もよく使われる。
そして大事なのは、この同意書を捨てないことだ。会社法は、決議があったものとみなされた日から10年間、その書面または電磁的記録を本店に備え置かなければならないと定めている。議事録だけを残して同意書を処分すると、決議の省略が成立したことを示す材料が無くなる。
同意書は議事録とセットで作る
決議の省略を選んだとき、議事録だけでは形が完成しない。「株主の全員が書面または電磁的記録で同意した」という事実を示す紙が別に要る。ここを飛ばして議事録だけ作ってしまうケースが本当に多い。
同意書の書き方に法律上の決まった様式はないが、次の要素が入っていれば要件を示せる。
・提案された議案の内容(議事録に書いた内容と一字一句そろえる) ・その提案に同意する旨の文言 ・同意した日付 ・株主の氏名と、保有している株式の数
提案書と同意書を分けて2枚作る方法と、1枚にまとめる方法がある。ひとり会社では1枚にまとめたほうが管理しやすい。
株主総会の決議の省略に関する提案書兼同意書
株式会社〇〇〇〇 御中
下記の事項について、会社法第319条第1項の規定に基づき提案し、
株主として下記のとおり同意します。
【提案者】 取締役 〇〇〇〇
【提案日】 令和〇年〇月〇日
【提案の内容】
第1号議案 第〇期計算書類承認の件
第〇期(令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで)の
貸借対照表および損益計算書を承認する。
上記提案に同意します。
令和〇年〇月〇日
株主 〇〇〇〇 印
保有株式数 〇〇株(議決権の個数 〇〇個)
同じ人が提案者と株主の両方の欄に名前を書くことになる。これが最初は落ち着かないが、出資者としての立場と経営者としての立場が別ものであることを紙の上で示している、と考えれば筋は通っている。
作った同意書は、議事録と同じファイルに綴じて本店に置く。会社法が定める備え置きの対象は議事録だけでなく、この同意の書面または電磁的記録も含まれている。片方だけ保存して片方を捨てる、という運用をしないよう気をつけたい。
実際に開く形を選んだときの書き方
決議の省略ではなく、開催した形で残したい場合もある。たとえば取引先や金融機関に提出する書類として、会議を開いた体裁のほうが通りがよいと考える場合だ。この形を選んだときに書く項目は、施行規則の別の項に並んでいる。
・株主総会が開催された日時および場所(その場にいない取締役や株主が出席したときは、その出席の方法も書く) ・株主総会の議事の経過の要領およびその結果 ・一定の規定により株主総会で述べられた意見や発言があるときは、その概要 ・株主総会に出席した取締役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名 ・議長がいるときは議長の氏名 ・議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
ひとり会社の場合、実務ではこうなる。
第〇期定時株主総会議事録
1 開催日時 令和〇年〇月〇日 午前10時00分
2 開催場所 当会社本店(東京都〇〇区〇〇1丁目1番1号)
3 議決権を行使することができる株主の総数 1名
その議決権の個数 〇〇個
出席株主数 1名
その議決権の個数 〇〇個
4 出席取締役 〇〇〇〇(議長兼議事録作成者)
本総会は、株主全員の同意があったため、招集手続を経ることなく
開催された。
議長は開会を宣し、上記のとおり定足数を満たす出席があったため
本総会は適法に成立した旨を述べた。
第1号議案 第〇期計算書類承認の件
議長は、第〇期の貸借対照表および損益計算書を提出し、その内容を
説明したうえで承認を求めたところ、出席株主の議決権の全数の賛成
により承認可決された。
以上をもって本総会の議案の審議を終了したので、議長は午前10時
20分閉会を宣した。
上記の決議を明確にするため、本議事録を作成する。
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇 第〇期定時株主総会
議長兼議事録作成者 取締役 〇〇〇〇 印
冒頭に「株主全員の同意があったため、招集手続を経ることなく開催された」と書いているのがポイントだ。この一行があると、招集通知を出していないことが法律の条文に沿った省略であることが読み取れる。書き忘れると、通知を出し忘れたまま開いた総会に見えてしまう。
なお、株主総会の議事録には、取締役会の議事録と違って法律上の署名押印の義務はない。それでも実務では押印するのが通例で、登記の添付書類として使う場合には求められる形式が決まっていることもある。登記を伴う議案を入れるときは、管轄の法務局か司法書士に事前に確認しておくと安全だ。商業登記の申請書の様式や添付書類の考え方は法務省のサイトから法務局の案内をたどると確認できる。
定時株主総会の時期と、日付の決め方
もうひとつ、ひとり会社でつまずきやすいのが日付だ。
会社法は、定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない、と定めている。「終了後3か月以内」という文言は会社法には書かれていないが、実務では決算から3か月以内に行うのが通例になっている。理由は2つある。ひとつは、法人税の申告期限が原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内であること。もうひとつは、株主が多い会社で議決権を行使できる人を確定させるための基準日という制度があり、その基準日から権利を行使できる期間が3か月以内と定められていることだ。株主が自分ひとりなら基準日を定める必要はないが、慣行として3か月以内に済ませておくのが無難である。
決算が3月末の会社なら、5月に法人税の申告があり、その前後で定時株主総会の議事録を作る。この流れに乗せておくと、毎年同じ時期に同じ作業をすればよくなる。
決議の省略を選んだ場合の日付は、同意の意思表示が揃った日になる。会社法には、定時株主総会の目的である事項のすべてについて決議があったものとみなされた場合には、その時に定時株主総会が終結したものとみなす、という定めもある。つまり同意が揃った日が、その年の定時株主総会が終わった日になる。
役員の任期の計算にも、この日付が効いてくる。取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、とされているが、株式の譲渡に会社の承認が必要な会社では定款で最長10年まで延ばせる。任期の満了日を計算するとき、起点になるのは定時株主総会の終結の日だ。議事録の日付がいい加減だと、任期の計算も狂う。役員変更の登記を忘れると過料の対象になるので、ここは正確に書いておきたい。
ひとり会社でも毎年出てくる議案
議事録を作ると言われても、何を議案にすればよいのか分からない、という声も多い。ひとりで会社を回していると、決めるべきことは頭の中で完結してしまうからだ。実際に議事録に残すことになる議案は、だいたい次のものに集約される。
| 議案 | 頻度 | 補足 |
|---|---|---|
| 計算書類の承認 | 毎年 | 決算の貸借対照表と損益計算書を承認する |
| 取締役の報酬額の決定 | 変更のある年 | 総額の上限を決める。変えない年は取り直さなくてよい |
| 取締役の選任(重任) | 任期満了の年 | 登記が必要。議事録が添付書類になる |
| 定款の変更 | 必要が生じたとき | 事業目的の追加、本店移転、商号変更など |
| 剰余金の配当 | 配当する年 | ひとり会社では実施しないことも多い |
このうち毎年必ず出てくるのは計算書類の承認だ。決算が確定したら、それを株主として承認する。税理士に決算を任せている場合でも、承認する主体は株主であり、その記録を作る責任は会社にある。税理士が議事録まで作ってくれるかどうかは契約の範囲によるので、決算の打ち合わせのときに確認しておくとよい。
役員報酬の総額を決める議案は、金額を変えない限り毎年取り直す必要はない。ただし、増やすときは先に決議が要る。決めてから払うのが順序で、払ってから議事録の日付をさかのぼらせるのは避けたい。税務上の扱いにも関わるため、金額を動かすかどうかは、決算から3か月以内という期限を意識して早めに判断しておきたい。
役員の選任は、任期が満了する年に必ず出てくる。株式の譲渡に会社の承認が必要な会社では、定款で取締役の任期を最長10年まで延ばせる。設立時に10年にしているケースが多く、そうすると10年に1度しか登場しないため、うっかり忘れやすい議案でもある。登記を怠ると過料の対象になるので、設立時の定款を開いて任期が何年になっているかを確認し、満了の年をカレンダーに入れておくことを勧めたい。
書き始める前に開いておく3つの書類
議事録の雛形を探す前に、手元に揃えておきたい書類が3つある。この3つを見ないまま書き始めると、事実と食い違う紙ができあがる。
1つ目は定款だ。 設立のときに公証役場で認証を受けた、会社の基本ルールを書いた文書である。ここには取締役の任期、取締役会を置くかどうか、株式の譲渡に会社の承認が要るかどうか、決算期がいつか、といった、議事録の書き方を左右する情報がすべて書かれている。電子定款で作った場合はPDFで手元にあるはずだが、設立を専門家に任せた人は自分で持っていないこともある。依頼先に控えがあるので、この機会に取り寄せておきたい。
2つ目は登記事項証明書だ。 法務局で取得できる、会社の現在の登記内容を証明する書類である。取締役会設置会社かどうか、役員が誰でいつ就任したか、本店がどこか、といった外から見える事実が載っている。定款と登記が食い違っている会社も実際にある。たとえば定款では取締役3名と書いてあるのに、登記上は1名しかいない、といった状態だ。議事録を作る前にこの2つを突き合わせておくと、後から登記が通らないという事態を避けられる。
3つ目は株主名簿だ。 誰が何株持っているかを記録した帳簿で、会社が作って備え置く義務がある。ひとり会社では「全部自分のものだから作っていない」というケースが少なくないが、議事録には議決権の個数を書くことになるので、発行済株式総数と自分の持ち株数は把握しておく必要がある。登記事項証明書に発行済株式の総数が載っているので、そこから確認できる。
この3つを開いて、発行済株式総数、自分の持ち株数、取締役の氏名と任期、決算期を紙に書き出しておく。そこまでやれば、あとは雛形の空欄を埋めるだけの作業になる。毎年ここから始めるのは手間なので、1度書き出したメモをそのまま保存しておき、翌年は差分だけ確認する形にすると早い。
保管の期限と、怠ったときのペナルティ
作った紙をどこに、いつまで置いておくのか。会社法は次のように定めている。
| 書類 | 保管期間 | 保管場所 |
|---|---|---|
| 株主総会議事録 | 株主総会の日から10年間 | 本店 |
| 株主総会議事録の写し | 株主総会の日から5年間 | 支店 |
| 決議の省略の同意書 | みなされた日から10年間 | 本店 |
支店がなければ、本店に10年間置いておけばよい。電子データで作っている場合も、10年後に読み出せる形で保存しておく必要がある。クラウド上のフォルダに入れておくのは構わないが、サービスを解約したら消えるような置き方は避けたい。紙で印刷して1冊のファイルに綴じ、あわせてPDFでも保存しておくのが現実的だ。
備え置きを怠った場合、会社法は100万円以下の過料に処する、と定めている。議事録に記載すべき事項を書かなかったときや、虚偽の記載をしたときも同じ条文の対象になっている。過料は刑罰ではないので前科はつかないが、裁判所から通知が届けば支払う義務が生じる。ひとり会社だから見られていない、と考えて記録を作らないのは、法律の建て付けとしては通らない。
書類の形式や保存の考え方を体系的に学んでおきたい人には、ビジネス文書検定の学習範囲が下敷きとして使える。文書の構成、日付の書き方、保存年限の考え方といった、会社の紙仕事に共通する基礎がひととおり入っている。
ひとり会社でよくある勘違い
相談として実際に多い誤解を、いくつか挙げておく。
「株主が自分だけだから議事録は要らない」。 要る。会社法に人数による免除の定めはない。登記や融資の場面で必ず求められる。
「合同会社なら株主総会も議事録も不要」。 合同会社には株主総会という機関がないので株主総会議事録は作らないが、社員(出資者のこと)の同意が必要な事項については同意書を残す。定款変更や業務執行社員の変更では、総社員の同意書が登記の添付書類になる。考え方は株式会社と同じで、誰が何にいつ同意したかを紙にする。
「決議の省略を使うには定款に定めが要る」。 株主総会の決議の省略には定款の定めは要らない。定めが必要なのは取締役会の決議の省略のほうだ。この2つは条文が違うので混同しやすい。
「書面決議という名前だから、必ず紙でなければならない」。 条文は書面または電磁的記録と書いている。電子データでの同意も認められている。ただし電子で残す場合は、誰がいつ同意したのかが後から確認できる状態にしておく必要がある。メール本文だけで済ませると、10年後に取り出せるかが怪しくなる。
「毎年同じ内容なら使い回してよい」。 内容が同じでも、日付と対象の事業年度は毎年変わる。雛形を使い回すこと自体は問題ないが、前年の日付が残ったままの議事録は実際によく見かける。差し替える箇所をあらかじめ目立たせた雛形を作っておくと事故が減る。
「あとでまとめて作ればよい」。 登記や融資の場面で必要になったときにまとめて作ろうとすると、過去の事実と日付を突き合わせる作業が発生する。決算書の数字、役員の就任日、報酬を変えた月。どれも記憶だけでは埋められない。決算の作業と同じ時期に、その年の分だけを作るほうが結局は早い。作業時間としては、雛形が手元にあれば30分程度で終わる分量だ。
「専門家に頼まないと作れない」。 定款変更や組織再編のように判断の難しい議案が絡むなら専門家に相談したほうがよいが、計算書類の承認のような毎年の定型議案は、条文が求める項目を埋めるだけの作業になる。登記を伴う議案かどうかで、専門家に頼む範囲を切り分けると費用も抑えられる。
書類まわりを外に出すという選び方
ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の視点で書いておく。
ひとりで法人を作った人の時間の使い方を見ていると、事業そのものより、こうした書類と手続きに削られている割合が想像以上に大きい。議事録、登記、請求書、経費の整理、社会保険の届出。ひとつずつは30分の作業でも、調べる時間を足すと半日が消える。そして調べた知識は1年後には忘れている。
長く続いている個人事業主や法人代表に共通しているのは、この種の作業を全部自分で抱え込んでいない点だ。定型の書類作成や記帳のような、手順が決まっていて判断の余地が少ない仕事は、外部に切り出せる。業務委託でこうした事務を請け負う人は増えていて、仕事の性質も「指示された作業をこなす」から「任せておけば社内の紙が回る」という関係に変わってきている。運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続く受け手ほど、単発の作業量ではなく、この安心感を作ることに時間を使っている。
そして、仲介手数料が乗らない直接のやり取りには、単純だが効く利点がある。同じ予算で依頼する側はより多くを頼めるし、受ける側は手数料0%のぶん手取りが厚くなる。金額の大小ではなく、取り分の質の話だ。会社を作った直後の売上が小さい時期ほど、この差は効いてくる。
外部に仕事を頼む側として相場を把握しておきたい人、あるいは受け手として単価の目安を知りたい人は、職種別のデータを先に見ておくと判断が早くなる。文書作成や編集の仕事については著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、開発寄りの仕事についてはソフトウェア作成者の年収・単価相場に、職種ごとの水準がまとまっている。
社内の作業をどう切り出して外に出すかという設計そのものを相談したい場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事に、業務の棚卸しから自動化までを請け負う仕事の中身が整理されている。システムの開発を伴う場合はアプリケーション開発のお仕事も参考になる。
外部に発注する側に回ったときの注意点としては、発注書と契約書に何を書くべきかを整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが実務の目安になる。報酬の支払いでもめたときの回収手段については未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に、費用感と手順がまとまっている。
株主が自分ひとりの会社の議事録は、突き詰めれば「いつ、何を決めたか」を未来の自分と第三者に伝えるための紙だ。形式に完璧を求めるより、毎年決まった時期に、決まった項目を埋めて、10年しまっておく。その習慣のほうが、立派な雛形を1度だけ作ることよりも価値がある。
よくある質問
Q. 株主が自分ひとりでも株主総会議事録は必要?
必要になる。会社法は株主総会の議事について議事録を作成しなければならないと定めており、株主の人数による例外はない。役員の重任登記や定款変更の登記では法務局への添付書類になり、融資や税務調査の場面でも提出を求められることがある。
Q. ひとりで会議を開いた形にしないといけない?
その必要はない。議決権を持つ株主の全員が書面または電磁的記録で同意すれば決議があったものとみなされる、という仕組みが会社法にある。株主が自分ひとりなら自分の同意書で要件を満たす。この形を使うと開催日時や場所は議事録に書かない。
Q. 決議の省略を使うには定款に定めが要る?
株主総会の決議の省略には定款の定めは不要で、条文の要件を満たせば使える。定款の定めが必要なのは取締役会の決議の省略のほうなので、この2つは混同しやすい。自社の定款に取締役会の決議の省略の条文があるかどうかは別途確認しておきたい。
Q. 議事録はいつまで保管する?
株主総会議事録は株主総会の日から10年間、本店に備え置くことが定められている。決議の省略を使った場合の同意書も、みなされた日から10年間の備え置きが必要になる。備え置きを怠った場合は100万円以下の過料に処される可能性がある。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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