チームでメールを共有するツールの選び方と、転送や共有アドレスとの違い


この記事のポイント
- ✓メール共有ツールを検討しているチーム向けに
- ✓Googleグループの共同トレイとの違いを整理し
- ✓メールワイズやyaritoriなど専用ツールの料金の目安と選び方
メール共有ツールを調べ始めるのは、たいてい何かが起きたあとです。同じお客様に2人が別々に返信してしまった。誰も返していない問い合わせが1週間後に見つかった。担当者が休んだ日に、その人の受信箱にしか経緯が残っていなかった。チームでメールを扱うと、こうした事故はほぼ必ずどこかで起きます。
ただ、いきなり専用のツールを契約する必要があるとは限りません。メールの転送、共有アドレスのパスワード共有、Gmailの委任、Googleグループの共同トレイなど、追加の費用をかけずに始められる方法もあります。この記事では、それぞれの方法で何ができて何ができないのかを整理し、専用のメール共有ツールに移るべき合図と、選ぶときに見る項目を順に解説します。
メール共有ツールが必要になる背景
問い合わせや注文、取引先とのやり取りを複数人で扱う職場は、規模にかかわらず増えています。小さな会社では、代表のアドレスと「info@」のような窓口のアドレスに届くメールを、2人から5人程度で手分けして処理しているのが一般的な姿です。
この運用で問題になるのは、メールという仕組みが本来「1人が受け取って1人が返す」ことを前提に作られている点です。受信箱は個人のもので、誰が読んだか、誰が返信したか、いまどの段階かという情報は、メールそのものには付いていません。人数が増えるほど、この「誰が」「どこまで」が見えないことによる事故が増えます。
代表的な事故は次の4つです。
・二重返信:同じ問い合わせに2人が返信し、内容が食い違う
・返信漏れ:全員が「誰かが返しただろう」と思って放置する
・属人化:担当者の受信箱にしか経緯が残らず、休みや退職で引き継げない
・誤送信:宛先や添付ファイルを間違えたまま送ってしまう
メール共有ツールは、この4つを仕組みで防ぐための道具です。受信したメールを1か所に集め、担当者と対応状況を付け、返信の記録を残します。ツールによっては、送信前に上長の確認を挟む機能や、同じメールを別の人が開いていると知らせる機能もあります。
逆にいえば、4つの事故がまだ起きていない、または起きても影響が小さい職場では、専用ツールは過剰になりがちです。まずは自分たちがどの事故に困っているのかを特定することが、ツール選びの出発点になります。
方法1:メールの転送で共有する
最も手軽なのは、窓口のアドレスに届いたメールを、担当者全員の個人のアドレスへ自動で転送する方法です。メールサーバーやメールソフトの設定だけで始められ、追加の費用もかかりません。
転送で解決できるのは「誰も気づかない」という問題です。全員の受信箱に届くので、見落としは減ります。
一方で、転送では「誰が対応するか」が決まりません。全員に同じメールが届くため、むしろ二重返信が起こりやすくなります。返信も、各自の個人のアドレスから送られることが多く、お客様から見ると返信元が毎回違う、という状態になります。お客様が返信の返信をすると、そのメールは返信した担当者の個人の受信箱にしか届かず、ほかのメンバーからは見えなくなります。
転送が向いているのは、次のような場面です。
・問い合わせの件数が少なく、担当がほぼ1人に決まっている
・ほかのメンバーは「念のため目を通す」程度でよい
・返信は必ず決まった1人が行うルールにできる
担当が2人以上になり、返信を分担し始めた時点で、転送だけの運用は限界を迎えます。転送のまま続ける場合は、返信するときに必ず窓口のアドレスを差出人にする設定を全員がしておく、返信したらほかのメンバーにも写しを送る、といったルールで補う必要があります。
方法2:共有アドレスにチーム全員でログインする
次によく使われるのが、窓口のアドレスのアカウントに、チーム全員が同じIDとパスワードでログインする方法です。全員が同じ受信箱を見るので、返信の記録も1か所に残り、差出人もそろいます。
この方法は、転送の弱点である「返信が個人の受信箱に散らばる」問題を解決します。既読や未読の状態も共有されるため、誰かが開いたメールは既読になります。
ただし、ここにも弱点があります。既読になっていても、その人が返信まで済ませたのか、読んだだけなのかは分かりません。フォルダやラベルで「対応中」「完了」を分ける運用を決めても、更新を忘れると実態とずれます。
もっと大きな問題は、安全面です。同じパスワードを複数人で使うと、誰がいつ何をしたかの記録が残りません。退職者が出るたびにパスワードを変え、残ったメンバー全員に新しいパスワードを伝え直す必要もあります。2段階認証を設定している場合は、確認コードを受け取る端末が1人に偏り、その人がいないとログインできない、ということも起こります。
安全面を考えると、アカウントを複数人で共有するより、後で紹介するGmailの委任やGoogleグループの機能のように、1人ずつが自分のアカウントで入れる仕組みを使うほうが適しています。共有アドレスへの同時ログインは、少人数で一時的にしのぐ方法と考えておくのが無難です。
方法3:Gmailの委任機能を使う
Gmailには、自分のアカウントへのアクセス権を別の人に与える委任という機能があります。Googleの公式ヘルプによると、代理人に指定された人は、アカウントの所有者に代わってメールを閲覧、送信、削除できます。
1 人以上の代理人に自分の Gmail アカウントへのアクセス権を付与できます。代理人とは、アカウント所有者に代わってアカウント内のメールを閲覧、送信、削除できるユーザーのことです。代理人があなたのアカウントからメールを送信すると、代理人のメールアドレスが表示されます。 出典: Gmail ヘルプ
同じヘルプには、追加できる代理人の数は、個人用の@gmail.comアカウントで最大10人、仕事用や学校用のアカウントで最大1,000人と書かれています。パスワードを共有せずに、自分のGoogleアカウントから窓口の受信箱を開けるので、共有アドレスへの同時ログインより安全に運用できます。
委任の弱点は、担当や対応状況を付ける仕組みが用意されていない点です。受信箱を複数人で見られるようになるだけで、「この問い合わせは誰が持っているか」は、ラベルやスター、別の表で管理する必要があります。また、委任されたアカウントでは、スマート作成やスマートリプライ、スペルと文法のチェックなど、いくつかの機能が使えないと公式ヘルプに書かれています。
委任が向いているのは、秘書やアシスタントが上司の受信箱を代わりに整理する場合や、2人から3人の小さなチームで窓口の受信箱を見る場合です。担当の割り当てまで必要になったら、次のGoogleグループの共同トレイか、専用のツールを検討します。
方法4:Googleグループの共同トレイを使う
Google Workspaceを使っている職場なら、Googleグループの共同トレイという機能も選択肢になります。グループのアドレス(たとえばsupport@)に届いたメールを、メンバー全員が同じ場所で見て、会話ごとに担当者を割り当てられる仕組みです。
Googleの公式ヘルプによると、共同トレイでは次のことができます。
・会話を自分やほかのメンバーに割り当てる(割り当てられた人には自動でメール通知が届く)
・割り当て先で会話を絞り込む(自分に割り当て済み、誰かに割り当て済み、未割り当て)
・会話に「完了」「対応不要」「別の会話との重複」のマークを付ける
・未解決の会話だけを表示する
・ラベルで会話を分類する
担当の割り当てと解決のマークがあるため、転送や委任と比べると、メール共有ツールにかなり近い運用ができます。追加の費用がかからない点も魅力です。
一方で、利用にはグループのオーナーやマネージャーが共同トレイの機能を有効にし、メンバーに適切な権限を設定する必要があります。仕事用や学校用のアカウントでGoogleグループが使えない場合は、管理者にビジネス向けGoogleグループを有効にしてもらう必要がある、とも書かれています。返信の文面のひな形、送信前の承認、対応時間の集計といった機能は、専用のメール共有ツールのほうが充実しているのが一般的です。
Google Workspaceを使っていて、担当の割り当てと完了の管理ができれば足りるチームは、専用ツールを契約する前に共同トレイを試してみる価値があります。
Microsoft 365を使っている場合の共有メールボックス
会社のメールがMicrosoft 365の場合は、共有メールボックスという仕組みが用意されています。Microsoftの公式ドキュメントによると、会社の代表アドレスやサポート窓口のアドレスのように、複数の人が同じメールボックスにアクセスする必要がある場合に使うもので、適切なアクセス許可を持つ人は、共有メールボックスの名義でメールを送れます。
公式ドキュメントに書かれている主な条件は次のとおりです。
・共有メールボックスには、ライセンスを割り当てずに最大50GBのデータを保存できる
・共有メールボックスを使う人は、それぞれExchange Onlineのライセンスを持っている必要がある
・社外の人(Gmailのアカウントを持つ人など)にはアクセス権を与えられない
・共有メールボックスのアカウントに直接サインインする使い方は想定されておらず、サインインはブロックしたままにする
・同時に使えるのは最大25人までで、それを超える場合はMicrosoft 365グループを使う
・メンバーがメッセージを削除できないようにする設定はない
共有メールボックスの利点は、パスワードを共有せずに、各自が自分のアカウントから窓口のメールを読み書きできる点です。差出人も窓口の名前にそろいます。一方で、Gmailの委任と同じく、担当の割り当てや対応状況を付ける専用の仕組みはなく、フォルダやカテゴリを使った手作業の運用になります。
Microsoft 365を使っていて、まずはパスワードの共有をやめたい、差出人をそろえたいという段階なら、共有メールボックスから始めるのが自然です。担当の割り当てや二重返信の防止が必要になった段階で、専用ツールを検討します。
メール共有で起きやすい事故と、その防ぎ方
方法を選ぶ前に、よくある事故の具体的な形と、それぞれに効く対策を整理しておきます。自分たちのチームで起きていることと照らし合わせると、どの方法が必要かが見えやすくなります。
1つ目は、お客様からの再問い合わせが別の担当に届く事故です。最初の問い合わせにAさんが返信し、お客様がその返信に対して追加で質問したとき、転送の運用ではAさんの個人の受信箱にだけ届きます。Aさんが休んでいると、誰も気づきません。対策は、返信の差出人を必ず窓口のアドレスにし、お客様からの返信も窓口に戻ってくる形にすることです。委任、共同トレイ、共有メールボックス、専用ツールのいずれでも、この形にできます。
2つ目は、同じ問い合わせに2人が返信する事故です。朝一番に新着のメールを見た2人が、それぞれ「自分が返そう」と思って返信を書き始める形が典型です。対策は、返信を書き始める前に担当を自分に割り当てる、というルールを徹底することです。割り当ての機能がない方法では、ラベルを付ける、表に名前を書くといった操作で代わりにしますが、操作の遅れで事故が起きやすくなります。
3つ目は、宛先や添付の誤りです。似た名前のお客様に別の人あての見積書を送ってしまう、といった事故です。対策は、送信前に別の人が確認する流れを作ることで、専用ツールの承認機能が最も確実です。費用をかけない方法では、添付ファイルを送るメールだけは送信前に隣の人に見てもらう、といった運用で補います。
4つ目は、退職や異動のときの引き継ぎ漏れです。担当者の個人の受信箱にだけ経緯が残っていると、引き継ぎのたびに抜けが出ます。対策は、窓口のメールを個人の受信箱に持ち込まない運用にすることです。
費用をかけない方法と専用ツールの違いを比較する
ここまでに紹介した方法のうち代表的な4つと、専用のメール共有ツールの違いを表で整理します。Microsoft 365の共有メールボックスは、運用の形がGmailの委任に近いと考えてください。
| 方法 | 費用 | 担当の割り当て | 対応状況の管理 | 返信の記録 | 安全面 |
|---|---|---|---|---|---|
| 転送 | かからない | できない | できない | 個人の受信箱に分散 | 個人のアドレスに情報が広がる |
| 共有アドレスに同時ログイン | かからない | できない | ラベルなどで手作業 | 1か所に残る | パスワード共有で記録が残らない |
| Gmailの委任 | かからない | できない | ラベルなどで手作業 | 1か所に残る | パスワードを共有しない |
| Googleグループの共同トレイ | Workspaceの範囲内 | できる | 完了・対応不要・重複 | グループに残る | 権限を設定して運用 |
| 専用のメール共有ツール | 1人あたりの月額が多い | できる | 細かく設定できる | 一元管理 | 権限、承認、操作の記録 |
表を見ると分かるとおり、費用をかけない方法でも、担当の割り当てまでは共同トレイで届きます。専用ツールとの差が出るのは、対応状況を細かく分けたい場合、返信の文面のひな形を共有したい場合、送信前に別の人の確認を挟みたい場合、対応の件数や時間を集計したい場合です。
どの方法を選ぶかは、困っている事故の種類で決めるのが近道です。見落としだけなら転送、返信の記録を1か所にまとめたいなら委任、二重返信と返信漏れを防ぎたいなら共同トレイか専用ツール、誤送信を防ぎたいなら承認機能のある専用ツール、という対応関係になります。
専用のメール共有ツールでできること
専用のメール共有ツールは、メールの受信箱を「チームの作業の一覧」として扱えるように作られています。製品によって細部は違いますが、多くの製品に共通する機能は次のとおりです。
1つ目は、対応状況の管理です。受信したメールに「新着」「対応中」「確認待ち」「完了」などの状態を付け、状態ごとに一覧を切り替えられます。
2つ目は、担当者の割り当てと二重対応の防止です。メールごとに担当者を決められ、別の人が同じメールを開いている、または返信を書いていることを画面上で知らせる機能を持つ製品もあります。
3つ目は、返信のひな形です。よく使う文面を共有のひな形として保存し、誰が返信しても同じ品質の文面を送れます。
4つ目は、送信前の承認です。新人が書いた返信を、送信前に先輩が確認してから送る流れを作れます。誤送信の防止にも効きます。
5つ目は、顧客ごとの履歴です。同じお客様とのやり取りを時系列で並べて表示し、過去の経緯をすぐに確認できます。
6つ目は、集計です。問い合わせの件数、返信までにかかった時間、担当者ごとの対応件数などを集計し、業務の偏りを把握できます。
こうした機能は、問い合わせの件数が多い職場や、対応の品質をそろえたい職場では大きな効果があります。一方で、機能が多い分、導入時の設定と、チームが使い方に慣れるまでの時間がかかります。導入前に、どの機能を使うかを絞り込んでおくと、移行がスムーズに進みます。
主なメール共有ツールの料金の目安
専用のメール共有ツールの料金は、多くが1ユーザーあたりの月額で決まります。代表的な製品を、各社の公式ページで確かめた範囲で紹介します。
サイボウズのメールワイズは、公式の費用ページによると、クラウド版のスタンダードコースが1ユーザーあたり月額600円(税抜)、プレミアムコースが1ユーザーあたり月額1,800円(税抜)で、どちらも5ユーザーから契約できます。スタンダードコースでは登録できるメールアドレスが10個まで、プレミアムコースでは11個以上です。30日間の無料お試しがあります。なお、比較記事の中には1ユーザーあたり月額500円と紹介しているものがありますが、公式ページは2024年10月1日以降の新価格体系として600円を記載しています。
Onebox社のyaritoriは、公式の料金ページによると1ユーザーあたり月額1,980円からで、初期費用は0円、最低契約期間はなく、2人から利用できます。料金はメールアドレスの数や使う機能で変わり、詳しい料金表は資料で案内されています。7日間の無料トライアルがあります。比較記事でも同じ価格帯で紹介されています。
「yaritori」は、2020年に創業したスタートアップ企業のOnebox社が提供する、1ユーザーあたり月額1,980円から利用できるメール共有システムです。 出典: maildealer.jp
公式の料金をもとに単純に計算すると、メールワイズのスタンダードコースを最低の5人で契約した場合は、1か月あたり3,000円(税抜)、年間で36,000円(税抜)です。yaritoriを最低の2人で使う場合は、1か月あたり3,960円からになります。実際の金額はメールアドレスの数や使う機能、オプションで変わるため、ここでの計算は比べるときの目安と考えてください。
料金を比べるときは、1ユーザーあたりの金額だけでなく、最低契約人数を確かめます。5人から契約できる製品を3人で使うと、実際には5人分の費用がかかります。メールアドレスの数、保存容量、オプションの有無でも総額は変わります。料金は改定されることがあるため、契約する前に必ず各社の料金ページを開いて、その日時点の記載を確かめてください。
メール共有ツールを選ぶときに見る6つの項目
専用ツールを比べるときは、機能の数より、自分たちの困りごとに効く機能があるかを見ます。次の6つを順に確かめると、候補を絞り込みやすくなります。
1つ目は、最低契約人数と1人あたりの料金です。少人数のチームでは、最低契約人数が総額を大きく左右します。
2つ目は、扱えるメールアドレスの数です。窓口のアドレスが部署ごとに複数ある場合、1つの契約でいくつまで扱えるかを確かめます。
3つ目は、二重対応の防止の仕組みです。担当の割り当てだけでなく、ほかの人が対応中であることが画面に表示されるか、返信を書き始めた時点で知らせるかなど、製品によって防ぎ方が違います。
4つ目は、承認と権限です。新人の返信を確認してから送る流れが必要か、閲覧だけの権限が必要かを確認します。
5つ目は、ほかの道具との連携です。顧客管理の道具、チャット、問い合わせフォームと連携できるかどうかで、転記の手間が変わります。
6つ目は、無料のお試しの期間と範囲です。実際のメールを流して、チームの全員が数日使ってみないと、使い勝手は分かりません。お試しの期間中に、最も忙しい日を含めて試せるように日程を組みます。
この6つのうち、上位2つの困りごとを解決できる製品に絞り、お試しで比べるのが現実的です。すべての項目で満点の製品を探すと、比較だけで時間が過ぎていきます。
導入前に決めておく運用のルール
どの方法やツールを選んでも、運用のルールが決まっていなければ事故は減りません。導入の前に、次の4つを決めておきます。
1つ目は、担当の決め方です。届いた順に交代で受け持つのか、内容の種類で分けるのか、手の空いた人が引き受けるのか。引き受ける場合は、引き受けた時点で自分に割り当てる操作を必ず行う、というところまで決めます。
2つ目は、対応状況の区切りです。「新着」「対応中」「お客様の返事待ち」「完了」の4つ程度に絞ります。区切りを細かくしすぎると、どれに当たるか迷う時間が増え、更新されなくなります。
3つ目は、返信までの目安の時間です。「1営業日以内に一次返信」のように決めておくと、優先順位を付けやすくなります。目安を過ぎたメールを毎朝確認する当番を決めておくと、返信漏れがさらに減ります。
4つ目は、返信の文面の基本形です。冒頭のあいさつ、署名、問い合わせ番号の書き方などをそろえ、ひな形として保存しておきます。
これらのルールは、紙1枚に収まる程度の分量で十分です。むしろ、長い手順書を作ると誰も読まなくなります。新しいメンバーが入ったときに、その1枚を見せれば運用が分かる、という状態を目指します。
小さく始めて切り替える手順
方法やツールを決めたら、いきなり全部のメールを移すのではなく、段階を分けて切り替えると混乱が少なくなります。目安として、次の順で進めます。
- 対象にするアドレスを1つに絞ります。最初は、件数が多く事故も起きている窓口のアドレス(info@やsupport@など)だけを対象にします。
- 2週間ほど、新しい方法と従来の方法を並行して使います。この間に、担当の割り当て、状況の更新、返信のひな形の使い方を全員が一度は経験するようにします。
- 並行期間の終わりに、チームで振り返りの時間を30分ほど取ります。使わなかった機能、迷った操作、ルールの抜けを洗い出し、運用のルールの紙1枚を書き直します。
- 従来の方法を止めます。転送の設定を解除する、共有アドレスのパスワードを変更して同時ログインをやめる、といった後片付けを忘れずに行います。
- 運用が落ち着いたら、ほかのアドレスや部署に広げます。
並行期間を設けるのは、新しい方法に慣れていないメンバーがいても、メールを取りこぼさないためです。ただし、並行期間が長すぎると、どちらで対応したかが分からなくなり、かえって二重返信が増えます。期間は2週間から1か月程度に区切り、終わりの日を最初に決めておきます。
専用ツールの無料お試しは7日間や30日間と期間が限られているため、お試しを始める前に、対象のアドレスと試す人、確かめたい項目を決めておくと、期間を無駄にせずに済みます。
安全面で確かめておくこと
メールには、お客様の氏名や連絡先、取引の内容など、外に漏れては困る情報が多く含まれます。共有の方法を変えるときは、便利さだけでなく安全面も確かめておきます。
確かめたいのは、誰が何を見られるかを人ごとに設定できるか、操作の記録が残るか、退職者のアクセスをすぐに止められるか、の3点です。パスワードを共有する運用では、この3点のどれも満たせません。委任や共有メールボックス、共同トレイ、専用ツールでは、各自が自分のアカウントでアクセスするため、アクセスを止めるのは1人分の設定で済みます。
専用ツールを選ぶ場合は、ログインできる場所を会社のネットワークに限る機能や、2段階認証の有無も確認します。在宅勤務のメンバーがいる場合は、自宅からのアクセスをどう扱うかも決めておきます。
問い合わせの入口をフォームにまとめるという選択肢
メールの共有に悩んでいるチームの中には、問い合わせの多くがWebサイトの問い合わせフォームから届いている、というところも少なくありません。フォームの送信内容がメールで通知され、そのメールをチームで共有しようとして、二重返信や返信漏れが起きている形です。
この場合、メールを共有する道具を探す前に、問い合わせを受け付ける段階で担当と状況を管理する、という考え方もあります。届いた問い合わせをフォームの側で一覧にし、1件ずつ担当者と状況を付け、そこから返信する形にすれば、メールの受信箱を共有する必要そのものが小さくなります。
候補の1つとして、Halict(ハリクト)があります。フォームで受け付けた問い合わせに担当者とステージ(未対応、対応中など)を割り当て、回答の画面から個別にメールを送り、ステージの変更やメールの送信を対応履歴として時系列で残すフォームのサービスです。公式サイトの記載では、料金は使う人数で決まり、フォームの数と回答の数はどのプランでも無制限です。フリープランは0円でメンバー1人まで、有料プランは税抜の月額でスターター2,980円(メンバー3人まで)、チーム7,800円(10人まで)などがあり、メールのひな形と一斉メールはチームプランから使えます。
ただし、Halictはフォームで受け付けた問い合わせを扱う道具で、取引先とのふだんのメールのやり取りまでを1つの受信箱で共有するものではありません。取引先とのメールが中心のチームは、ここまでに紹介したメール共有の方法やツールのほうが合っています。
Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
メール対応の仕組みづくりを仕事にする人へ
チームのメール対応を整える仕事は、社内の担当者だけでなく、外部の人に頼まれることも増えています。問い合わせの一次対応を在宅で請け負う仕事、メール共有ツールの初期設定やひな形づくりを手伝う仕事、問い合わせの件数を集計して改善を提案する仕事などです。
フリーランスや在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、こうした仕事で長く頼まれ続ける人は、ツールの操作に詳しい人というより、依頼する側の困りごとを最初に聞き出せる人です。二重返信に困っているのか、返信漏れに困っているのか、引き継ぎに困っているのか。そこを特定してから方法を提案するので、無理に高機能なツールを勧めることがなく、依頼する側の信頼を得やすい傾向があります。仲介の手数料がかからない直接のやり取りなら、同じ予算で依頼する側はより丁寧な支援を頼め、受ける側の手取りも厚くなります。
問い合わせの一次対応やメール対応を在宅で請け負う仕事に関心がある人は、カスタマーサポート・事務全般のお仕事で、仕事の中身と求められる力を確認できます。メールの振り分けや定型の返信を自動化する方向に進みたい人は、RPA・業務自動化ツールのお仕事が参考になります。ツールの連携や仕組みを自分で作る仕事の報酬の目安は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。返信のひな形やお客様向けの案内文を整える仕事は、文章の仕事とも重なります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場も、文章を書く仕事の相場を知る手がかりになります。
よくある質問
Q. メール共有ツールを使わずにチームでメールを共有する方法はありますか?
あります。窓口のアドレスから全員への自動転送、Gmailの委任機能、Google Workspaceを使っている場合はGoogleグループの共同トレイが代表的です。共同トレイでは会話ごとに担当者を割り当て、完了や対応不要のマークを付けられます。ただし返信のひな形や送信前の承認、対応時間の集計が必要なら、専用のメール共有ツールが向いています。
Q. 共有アドレスに全員で同じパスワードでログインする運用は問題がありますか?
返信の記録が1か所に残る利点はありますが、誰がいつ何をしたかが記録に残らず、退職者が出るたびにパスワードを変えて全員に伝え直す必要があります。2段階認証の確認コードが1人の端末に偏る問題もあります。Gmailであれば、パスワードを共有せずに受信箱を開ける委任機能を使うほうが安全に運用できます。
Q. メール共有ツールの料金の目安はどのくらいですか?
多くは1ユーザーあたりの月額で決まります。公式ページによると、メールワイズのクラウド版スタンダードコースは1ユーザーあたり月額600円(税抜)で5ユーザーから、yaritoriは1ユーザーあたり月額1,980円からで2人から利用できます。最低契約人数やメールアドレスの数でも総額が変わるため、契約前に各社の料金ページで確認してください。
Q. メール共有ツールを導入する前に決めておくべきことは?
担当の決め方、対応状況の区切り、返信までの目安の時間、返信の文面の基本形の4つです。状況の区切りは「新着」「対応中」「お客様の返事待ち」「完了」程度に絞ると更新が続きます。ルールは紙1枚に収まる分量にし、新しいメンバーが入ったときにそれを見れば運用が分かる状態にしておくと定着しやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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