印鑑カードとは|作り方となくしたときの手続き

丸山 桃子
丸山 桃子
印鑑カードとは|作り方となくしたときの手続き

この記事のポイント

  • ✓法人の印鑑カードとは何か
  • ✓なくしたときはどうするのかを法務局と法務省の公表資料で確認して整理しました
  • ✓無料で即日受け取れる条件

会社を作ったあと、机の引き出しから出てきた緑色の小さなカードを見て「これは何だろう」と思った人は少なくありません。逆に、法人口座を開こうとして「印鑑証明書を持ってきてください」と言われ、登記所に行ったところで初めて印鑑カードの存在を知る人もいます。

印鑑カードは、会社の実印が本物であることを証明してもらうための鍵です。このカードがないと、会社の印鑑証明書は1通も出してもらえません。会社の実印そのものを持っていっても、代表者が運転免許証を見せても、代わりにはなりません。ここでは、印鑑カードがどういうものか、どう作るのか、なくしたらどうするのかを、法務局と法務省が公開している資料で確かめた内容だけで整理します。

印鑑カードは、会社の実印を証明してもらうための鍵

法人の印鑑証明書は、登記所が「この印影は、この会社が届け出ている実印のものです」と証明する書類です。この証明を請求できるのは、原則として会社の代表者だけです。法務省の商業・法人登記Q&Aは、次のように説明しています。

印鑑証明書については、会社代表者本人しか請求することができません(ただし、代理人による請求は可能です。)。 取得の方法としては、(1)所定の手数料額に相当する収入印紙(登記印紙も使用可能)を貼付した交付申請書及び会社代表者に対して法務局が交付している印鑑カードを登記所に持参又は送付する方法のほか、(2)手数料を納付して、オンラインによって請求する方法があります。 出典: moj.go.jp

会社の登記事項証明書は誰でも取れます。取引先の会社の登記事項証明書を取って中身を確かめることもできます。ところが印鑑証明書だけは違う扱いになっていて、その線を引いているのが印鑑カードです。

つまりこのカードは、単なる整理用の番号札ではなく、本人確認そのものを担っています。持っている人が誰であれ、そのカードで印鑑証明書を請求できてしまう。この性質を先に理解しておくと、あとの保管の話が腑に落ちます。

大きさは名刺より少し小さく、財布に入る程度です。表面には印鑑カード番号が印字されています。この番号は印鑑証明書を請求するときに申請書へ書き写すので、カードを持たずに申請書だけ埋めることはできません。

登記が終わっても、自動では届かない

ここが一番多い勘違いです。会社の設立登記が完了しても、印鑑カードは郵送で届きません。

会社の実印を登記所に届け出ること(印鑑の提出)と、印鑑カードの交付を受けることは、別々の手続きです。設立の登記申請と同時に印鑑届書を出した会社でも、印鑑カードは自分から申請しない限り作られません。「登記が終わったのだからそのうち届くはず」と待っていても、何も届かないまま日が過ぎます。

設立を司法書士に頼んだ場合は、司法書士がまとめて申請してカードを受け取り、書類一式と一緒に引き渡していることが多くあります。登記事項証明書や定款の控えが入った封筒の中に、緑色のカードが紛れていることがよくあるので、まずそこを探してみてください。

もう1つ、そもそも会社の実印を提出していないというパターンもあります。法務省のQ&Aは「登記の申請をオンラインで行う場合、登記所への印鑑の提出は任意です」と説明しています。オンラインで設立登記をした会社では、印鑑を出していない状態があり得ます。その場合は、印鑑カードの前に印鑑届書を出すところから始めることになります。

作り方は、申請書1枚を出すだけ

印鑑カードを作るのに必要なのは、印鑑カード交付申請書という用紙1枚です。法務局のサイトから様式と記載例をダウンロードでき、窓口にも備え付けられています。

書く内容は次のとおりです。提出する登記所の名前と申請日、商号・名称、本店・主たる事務所、印鑑を提出した人の資格と氏名と生年月日、会社法人等番号、そして申請する人の住所とフリガナと氏名と連絡先の電話番号です。

資格の欄は、代表取締役、取締役、代表社員、代表理事、理事、支配人のなかから選びます。株式会社なら代表取締役、合同会社なら代表社員、一般社団法人なら代表理事というように、法人の種類で呼び方が変わります。

用紙の左側には押印欄があります。記載例の注記にはこう書かれています。

(注1) 押印欄には,登記所に提出した印鑑を押印してください。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

ここに押すのは会社の実印です。代表者個人の実印ではありません。個人の印鑑証明書を添える必要もありません。この点が、あとで出てくる印鑑届書や改印届書との大きな違いで、印鑑カードの申請が軽い手続きで済む理由でもあります。

連絡先の電話番号は、勤務先、自宅、携帯番号のどれかにチェックを入れて書きます。記載に不備があったときに連絡が来るので、日中つながる番号にしてください。

費用はかかりません。印鑑証明書交付申請書には収入印紙を貼る縦長の欄がありますが、印鑑カード交付申請書にはその欄そのものがありません。何度作り直しても、金銭的な負担は発生しないということです。

出す場所と、受け取れるまでの時間

提出先は、会社の本店(主たる事務所)を管轄する登記所です。ここは間違えやすいところなので、はっきり書いておきます。

印鑑証明書そのものは、商業・法人登記情報交換システムによって全国どこの登記所でも取れます。本店が北海道にあっても、東京の登記所で請求できます。ところが印鑑に関する届出だけは別扱いで、法務局は「印鑑に関する届出は、会社・法人が登記されている登記所に提出してください」と案内しています。印鑑カードの交付申請も、この印鑑に関する届出に含まれます。

つまり、証明書を取るのはどこでもよくて、カードを作るのは本店の管轄だけ、という組み合わせです。本店から離れた場所で働いている代表者は、カードを作るときだけ管轄まで行くか、郵送で申請することになります。

受け取れるまでの時間は短くて済みます。法務局のページには、この手続きの標準処理期間が「申請書の提出から即日」と記載されています。窓口が混んでいなければ、その場でカードが交付されます。カードを受け取ったら、続けて印鑑証明書交付申請書を出せるので、1回の来庁で証明書まで手に入ります。

窓口の時間には注意してください。法務局が案内している受付時間は、祝日と年末年始を除く月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分までですが、法務省は令和6年1月4日から登記所の窓口における対応時間を9時から17時までとする運用を開始していると案内しています。午前9時から午後5時の間に行く前提で予定を組んでください。

会社の実印をまだ出していないなら、そこから始める

印鑑カードの申請書には会社の実印を押す欄があります。ということは、その実印が登記所に届け出てあることが前提です。届け出ていなければ、印鑑届書を出すところから始めます。

法務省のQ&Aによれば、印鑑の提出には2つの方法があります。1つは、印鑑届書と会社の代表者個人の印鑑証明書を書面で管轄の登記所に持参または送付する方法。もう1つは、専用の様式で作成して電子署名を付けた印鑑届書のデータをオンラインで提出する方法です。ただしオンラインでの提出は、オンラインによる登記申請と同時に行う場合に限られます。設立が済んだあとで印鑑だけを届け出るなら、紙で出すことになります。

このとき用意するものは3つです。会社の実印、代表者個人が市区町村に登録している実印、そして市区町村長が作成した代表者個人の印鑑証明書です。個人の印鑑証明書には作成後3か月以内という条件が付きます。

会社の実印そのものにも決まりがあります。法務省は、提出する印鑑は辺の長さが1センチメートルの正方形に収まるものであってはならず、辺の長さが3センチメートルの正方形に収まらないものであってもならないと説明しています(商業登記規則第9条第3項)。加えて、印鑑は照合に適するものでなければならないとされています(同条第4項)。小さすぎても大きすぎてもだめで、輪郭が欠けていたり文字が読み取れなかったりするものもだめ、という意味です。

はんこ屋で法人用として売られているものは、たいていこの範囲に収まっています。ネット通販で安く買ったものや、デザインを凝らしすぎたものは、照合に向かないと判断されることがあります。届出が通らなければ印鑑カードも作れないので、最初の1本は標準的なものを選ぶのが安全です。

設立登記と同時に印鑑を届け出る場合は、登記申請書に添付した個人の印鑑証明書を援用するというチェックを入れて1通で済ませられます。これは登記と同時のときに限られる扱いなので、あとから印鑑届書だけを単独で出すなら、個人の印鑑証明書を新しく取ることになります。

印鑑カード番号と会社法人等番号は別のもの

申請書を書き始めてから手が止まる原因の大半が、この2つの番号です。似た場所に書く欄があるので混同されますが、まったく別のものです。

印鑑カード番号は、印鑑カードの表面に印字されている番号です。カードを見れば書けます。裏を返せば、カードがなければこの欄は埋まりません。印鑑証明書交付申請書にも、印鑑・印鑑カード廃止届書にも書く欄があります。

会社法人等番号は、登記されている会社を識別するための12桁の番号です。会社の登記事項証明書に記載されています。印鑑カード交付申請書にも書く欄があるので、カードを作る段階では登記事項証明書か、設立時に受け取った書類から拾ってくることになります。

さらに紛らわしいのが、国税庁が公表している法人番号です。こちらは13桁で、誰でも検索できる公開情報です。会社法人等番号の頭に1桁足したものが法人番号という関係にありますが、登記所に出す申請書に書くのは会社法人等番号のほうです。13桁を書いてしまうと窓口で直すことになります。

この3つは、一度どこかに控えておけば二度と調べ直さずに済みます。印鑑カードの表面を撮影した画像と、登記事項証明書のコピーを共有ドライブに置いておけば十分です。

代理人に頼むときは委任状が要る

印鑑カードの交付申請は、代表者本人でなくても出せます。ただし委任状が必要です。

法務局は、代理人が印鑑カード交付申請、印鑑(改印)届、印鑑・印鑑カード廃止届をする場合には委任状が必要だと案内しており、それぞれの様式の下半分に委任状の欄が印刷されています。委任状を別紙で用意する必要はなく、同じ用紙の中で完結します。

委任状の欄には、代理人となる人の住所と氏名、そして委任する日付、委任する人の住所と氏名を書き、登記所に届け出た印鑑(会社の実印)を押します。申請人の欄では「代理人」にチェックを入れ、代理人の住所と氏名を書きます。

ここで取り違えやすいのが、印鑑証明書のほうは逆だという点です。印鑑証明書交付申請書の記載例には「※代理人の場合でも委任状は必要ありません」と印刷されています。カードを作るときは委任状が要り、カードができたあとの証明書請求には委任状が要らない。この違いを覚えておかないと、窓口で書き直すことになります。

理由は考えてみれば単純で、証明書の請求は印鑑カードを持っていること自体が権限の証拠になるのに対し、カードを作る場面ではまだそのカードが存在しないからです。だから会社の実印と委任状で代用しているわけです。

なくしたときは、廃止と交付を同じ日に出す

印鑑カードをなくしたときの手順は、法務省のQ&Aにはっきり書かれています。

印鑑カードを紛失した場合には、当該印鑑カードの廃止の届出及び新たな印鑑カードの交付の請求をすることができます。印鑑カードの廃止については、登記所に提出した印鑑を押印した「印鑑カード廃止届書」を、また、印鑑カードの交付の請求については、登記所に提出した印鑑を押印した「印鑑カード交付申請書」を本店所在地を管轄している登記所に提出していただく必要があります。 出典: moj.go.jp

要するに、古いカードを無効にする届出と、新しいカードをもらう申請の2枚を、同じ日に一緒に出せばよいということです。どちらにも押すのは会社の実印です。会社の実印さえ手元にあれば、半日で元の状態に戻せます。

廃止に使う様式の正式な名前は「印鑑・印鑑カード廃止届書」です。この用紙には、何を廃止するのかを選ぶチェック欄が3つあります。「印鑑の廃止届出」「印鑑カードの廃止届出」「印鑑及び印鑑カードの廃止届出」の3つです。

カードだけをなくしたなら、選ぶのは真ん中の「印鑑カードの廃止届出」です。ここを誤って「印鑑及び印鑑カードの廃止届出」にしてしまうと、会社の実印の登録まで消えます。そうなると改印届書からやり直しになり、代表者個人の印鑑証明書まで必要になります。チェックを入れる前に、1行ずつ読んでください。

同じ用紙には、カードを廃止する理由を選ぶ欄もあります。選択肢は「亡失(なくなった)」「汚損(著しく汚れた)」「き損(破損した)」「その他」の4つです。どこにあるか分からないだけなら亡失、財布の中で割れたならき損を選びます。

磁気不良で読めなくなっただけなら、別の様式がある

見た目はきれいなのに、窓口で「このカードは読み取れません」と言われることがあります。磁気不良です。

この場合には、法務局が「印鑑カード受領書」という別の様式を用意しています。ページには「磁気不良により再交付を求める場合に限る」という注記が付いています。なくしたわけではないので廃止の届出とは扱いが違い、この受領書で再交付を受ける形になります。

カードは財布の中で他のカードや磁石と一緒にしていると、磁気が弱ることがあります。スマートフォンのケースに挟んで持ち歩くのも避けたほうがよい使い方です。読めなくなったと気づいたら、カードそのものを持って窓口で相談してください。自己判断で亡失の届出を出すより、状況を伝えて正しい様式を教えてもらうほうが早く済みます。

会社の実印を変えるときは、引き継ぐかどうかを選ぶ

会社の実印を作り直す、あるいは実印をなくして新しいものを届け出るという場面では、「印鑑(改印)届書」という用紙を使います。

この用紙には、他の様式には無いチェック欄が1つあります。「印鑑カードは引き継がない」と「印鑑カードを引き継ぐ」のどちらかを選ぶ欄です。

引き継ぐを選べば、今持っているカードをそのまま使い続けられます。実印だけを変えて、カードは同じものを使う形です。引き継がないを選ぶと、そのカードは使えなくなるので、印鑑カード交付申請書を一緒に出して新しいカードをもらうことになります。カードもなくしている場合は引き継ぎようがないので、こちらを選びます。

改印届書には、他の様式より重い条件が付いています。押すのは代表者個人が市区町村に登録している印鑑で、あわせてその印鑑についての市区町村長が作成した印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)を添える必要があります。会社の実印を差し替えるという重い変更なので、代表者本人であることを個人の印鑑証明書で確かめる仕組みです。

カードだけの再交付には個人の印鑑証明書が要らないのに、改印には要る。この差が、かかる日数を分けます。個人の印鑑証明書は市区町村の窓口か、マイナンバーカードを使ってコンビニの端末で取れます。窓口が開いている時間に合わせる必要があるので、半日から1日を見ておいてください。

この用紙には前任者の氏名を書く欄もあります。代表者が交代して新しい代表取締役が自分の印鑑を届け出る場合に使う欄で、分かる場合に記載します。

誰が持つかを決めておく

印鑑カードの保管は、実印と同じ重さで考える必要があります。理由は最初に書いたとおりで、印鑑証明書の請求に委任状が要らないからです。

カードを持っている人は、申請書と収入印紙さえあれば、その会社の印鑑証明書を何通でも取れます。印鑑証明書は会社の実印を証明する書類なので、悪用されれば契約や登記に使われかねません。総務の引き出しに入れっぱなしにしている会社は珍しくありませんが、実印を引き出しに入れっぱなしにするのと同じことだと考えてください。

実務として効く決め事は3つです。

1つ目、保管場所を1か所に固定すること。会社の実印、印鑑カード、代表者個人の実印の3点は、置き場所を分けたうえで、それぞれどこにあるかを紙1枚に書いておきます。

2つ目、持ち出したら記録すること。誰が、いつ、何のために持ち出して、いつ戻したかを1行書くだけで、紛失したときの捜索範囲が一気に狭まります。

3つ目、カード番号を控えておくこと。カードの表面を1枚撮影して会社の共有ドライブに置いておけば、番号を確かめるためにカードを探す必要がなくなります。紛失の届出でも番号を書く欄があるので、控えがあると手続きが速く進みます。

顧問の税理士や司法書士にカードを預けている会社もあります。手続きを任せているなら合理的な判断ですが、預けた記録を残し、必要がなくなったら返してもらう運用にしてください。担当者の交代や契約の終了のタイミングで所在が分からなくなる事例が起きやすい部分です。

会社の実印と印鑑カードの両方をなくした場合

一番重い状況がこれです。法務省のQ&Aは、この場合を2つに分けて説明しています。

新しい印鑑をすぐに用意できる場合は、印鑑の変更(改印)の届出と、印鑑カードの廃止の届出と、新しい印鑑カードの交付の請求を同時に行えます。用意するのは、新しく提出する印鑑と代表者個人が市区町村に登録した印鑑を押した改印届書、その個人の印鑑を証明する市区町村長作成の印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)、同じく個人の印鑑を押した印鑑・印鑑カード廃止届書、そして新しく登記所に提出した印鑑を押した印鑑カード交付申請書です。これらをまとめて本店所在地を管轄する登記所に出します。

新しい印鑑をすぐに用意できない場合は、印鑑の廃止の届出と印鑑カードの廃止の届出だけを先にできます。悪用されるおそれがあるなら、まず無効にしておくという考え方です。ただし、法令により登記の申請をする際には申請書または委任状に押印する人が登記所に印鑑を提出しなければならないとされているので、印鑑を出していない状態では紙で登記の申請ができなくなります。実印が無い期間は、登記に関わる手続きが止まると考えてください。

実印だけをなくしてカードは手元にある場合は、改印の届出をします。ここでカードを引き継ぐかどうかを選べるので、引き継ぐを選べばカードはそのまま使えます。

いずれの場合も、窓口に行く前に管轄の登記所に電話で状況を伝えておくと確実です。様式の組み合わせが状況ごとに変わるうえ、押す印鑑が会社のものか個人のものかも様式ごとに違うので、その場で聞きながら書くより事前に整理しておくほうが早く済みます。

支配人がいる会社では、印鑑が複数になることがある

印鑑カード交付申請書の資格の欄には、代表取締役や代表社員に並んで「支配人」という選択肢があります。ここに気づいて疑問に思う人がいるので、触れておきます。

支配人は、会社に代わって営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持つ人として登記される立場です。支配人を置いている会社では、支配人自身の印鑑を登記所に提出することができ、その場合は支配人用の印鑑カードが別に交付されます。印鑑証明書も、代表取締役のものと支配人のものが別々に発行されます。

印鑑証明書交付申請書には「支配人・参事等を置いた営業所又は事務所」を書く欄もあります。支配人のいない会社では空欄のままで構いません。

実際に支配人を登記している会社は多くありませんが、支店を独立して運営している会社や、特定の事業について責任者に権限を持たせている会社では使われています。自社に支配人がいるかどうかは、登記事項証明書を見れば分かります。

カードが要らない請求方法もある

印鑑カードを物理的に持たずに印鑑証明書を受け取る道が、1つだけあります。オンライン請求です。

法務省のページには、オンラインで印鑑証明書を請求する場合、印鑑カードの送付は必要ないと書かれています。ただし受け取り方法として「窓口受領」を選んだ場合は、受け取る際に印鑑カードを窓口に持参して提示する必要があります。カードを使わずに済ませたいなら、受け取り方法を「郵送」にする必要があります。

この経路を使うには電子証明書が要ります。請求データに電子署名を付ける必要があるからです。使えるのは、法務局が発行する商業登記電子証明書、マイナンバーカードに入っている公的個人認証サービスの電子証明書、法務省が認めている民間の認証サービスの電子証明書です。

手数料は、郵送で受け取る場合が1通450円、窓口で受け取る場合が1通420円です。窓口や郵送で紙の申請書を出す場合の1通500円より安くなります。

とはいえ、初回の設定には手間がかかります。急いで印鑑証明書が要る場面なら、カードを再交付してもらうほうが速いことがほとんどです。拠点が分散していて物理的なカードの受け渡しが面倒という会社や、カードを繰り返しなくしている会社では、先に電子証明書をそろえておく価値があります。

登記の手続き中は証明書が出ない

もう1つ、日程を組むときに効く制約があります。登記の申請中は証明書が発行されないことです。

法務局は、会社・法人の登記申請を行って登記手続が完了するまでの間、原則としてその会社の登記事項証明書と印鑑証明書は発行されず、再び発行できるようになるのは登記手続が完了したときだと案内しています。設立の直後、役員を変更した直後、本店を移した直後は、この期間に入ります。

いつ手に入るようになるかの目安は登記完了予定日で、申請した登記所を管轄する法務局のサイトに掲載されています。混み具合で変わるので、必ずその登記所の予定日を見てください。

印鑑カードの交付申請も、設立の登記が完了してからでないとできません。設立の申請と同時に出すことはできないので、登記完了を待つ必要があります。契約の締結日や口座開設の予定を先に決めてしまうと、印鑑証明書が間に合わないという事故が起きます。登記を出す前に、完了予定日を確かめて予定を組んでください。

事務の型を早く決めた人ほど、仕事が止まらない

ここまでが手続きの話です。最後に、運営する側から見てきたことを書きます。

フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、法人を作ったばかりの人がつまずくのは、知識の量ではなく段取りです。印鑑カードの場所が分からないまま依頼が来て、探して、見つからなくて、登記所に行って、また行って、というやり方をしていると、着手が毎回1週間遅れます。発注する側から見れば、腕の良し悪しの前に「この人は止まらない」と思えるかどうかで次の声がかかるかが決まります。

カードの置き場所を決めて、番号を控えて、印鑑証明書を必要な分だけ先に取っておく。かかる時間は合計で30分ほどです。この30分を惜しむと、あとで半日を何度も失います。

運営者として見てきた限りでは、手取りの厚さを決めているのは、請求書に書く金額そのものより、間に何社入っているかです。仲介の手数料が0%の直接取引なら、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側は同じ仕事でも手元に残る額が厚くなります。両方が得をする形なので、契約書も印鑑証明書のやり取りも直接発生します。事務を自分で回せることが、そのまま受けられる仕事の幅になるという意味です。

法人として契約する側に回ると、どの分野が動いているかも見えてきます。企業の生成AI導入や業務の組み直しを支援するAIコンサル・業務活用支援のお仕事は契約の単位が大きく、法人同士の取引になりやすい領域です。広告運用から情報セキュリティまでを含むAI・マーケティング・セキュリティのお仕事も継続契約が中心で、書類のやり取りが定期的に発生します。受託開発の進め方を知りたいならアプリケーション開発のお仕事が参考になります。

法人にするかどうかを迷っている段階なら、報酬の水準から逆算するのが現実的です。地域差まで含めたソフトウェア作成者の年収・単価相場や、文章まわりの仕事をまとめた著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、どのくらいの売上から法人化の手間に見合うかの目安が立ちます。

書類の体裁そのものが信用になる段階に入ったなら、社外文書の型を体系的に扱うビジネス文書検定が効いてきます。相手の情報システム部門と話す機会が増えるなら、基礎を証明できるCCNA(シスコ技術者認定)があると初動が変わります。契約後の守りについては、発注書と契約書に何を書くべきかをフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで確認しておくと、実印を押す前の判断がしやすくなります。

印鑑カードは、なくしても作り直せます。かかるのは会社の実印と、管轄の登記所に行く半日だけです。ただし必要になった当日に見つからないことが一番痛いので、置き場所だけは今日のうちに確かめておいてください。個別の事情で扱いが変わる部分は、管轄の登記所か司法書士に確認してください。

よくある質問

Q. 印鑑カードは会社を作ると自動的に送られてきますか?

送られてきません。会社の実印を登記所に届け出ることと、印鑑カードの交付を受けることは別の手続きで、印鑑カード交付申請書を出さない限り作られません。設立を司法書士に頼んだ場合は、司法書士が代わりに受け取って書類一式と一緒に渡していることが多いので、まず設立時の封筒を探してみてください。

Q. 印鑑カードを作るのにいくらかかりますか?

手数料はかかりません。印鑑証明書交付申請書には収入印紙を貼る欄がありますが、印鑑カード交付申請書にはその欄そのものがありません。なくして再交付を受ける場合も無料です。法務局が示す標準処理期間は提出から即日なので、窓口が混んでいなければその場で受け取れます。

Q. 印鑑カードをなくしたら、どうすればよいですか?

本店を管轄する登記所に、印鑑・印鑑カード廃止届書と印鑑カード交付申請書を一緒に出します。どちらにも会社の実印を押します。廃止届書のチェック欄では「印鑑カードの廃止届出」を選んでください。誤って「印鑑及び印鑑カードの廃止届出」を選ぶと会社の実印の登録まで消え、改印届からやり直しになります。

Q. 印鑑カードは誰でも使えてしまうのですか?

印鑑証明書の交付申請は代理人でも委任状なしでできるため、カードを持っている人は申請書と収入印紙があれば何通でも取得できます。会社の実印と同じ重さで保管し、置き場所を固定して、持ち出したら記録を残す運用にしてください。カード番号を控えておくと、紛失時の届出も早く進みます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月26日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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