法人の印鑑登録|印鑑届書の書き方


この記事のポイント
- ✓印鑑届書の記入欄ごとに解説
- ✓添付する個人の印鑑証明書
- ✓印鑑カードの受け取り方
会社をつくると決めて書類を集めはじめた段階で、多くの人が最初につまずくのが「法人印鑑登録」です。個人の印鑑登録と同じ感覚で市役所に行ってしまう人がいますが、会社の印鑑を登録する先は市区町村ではなく法務局(登記所)です。しかも、登録に使う「印鑑届書」は1枚の紙なのに、押す印鑑が2種類あり、添付書類が別に要り、代理人に頼むかどうかで押印の場所まで変わります。この記事では、法務省と法務局が公開している様式・記載例・Q&Aをもとに、印鑑届書のどの欄に何を書くのか、どこでつまずくのかを、専門用語を避けて順番に整理します。
会社の印鑑と個人の印鑑は、登録する窓口も、証明書を出す機関も、まったく別の仕組みで動いています。ここを分けて理解するところが出発点になります。
法人の印鑑登録は「必ずやるもの」から「必要なときにやるもの」に変わった
まず前提を1つ更新しておきます。かつては会社の登記を申請するなら印鑑の提出が事実上の必須でしたが、今は申請方法によって扱いが分かれます。法務省の商業・法人登記Q&Aは、この点をはっきり書いています。
登記の申請をオンラインで行う場合、登記所への印鑑の提出は任意です。代表者の印鑑証明書が必要などの理由がある場合には、登記所に印鑑を提出する必要があります。 一方、登記申請において申請書又は委任状が書面である場合、その前提として、あらかじめ登記所に会社・法人の印鑑を提出した上で、当該申請書又は委任状にその印鑑を押印する必要があります(商業登記規則第35条の2)。 出典: moj.go.jp
言い換えると、こうなります。紙の申請書を法務局に出すなら、印鑑の提出は前提条件です。全部オンラインで完結させるなら、印鑑を出すかどうかは会社の判断になります。この任意化は2021年2月15日から始まった取り扱いで、法務省は「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について」というページでその経緯を説明しています。
では、任意なら出さなくていいのか。実務では、多くの会社が結局出しています。理由は印鑑証明書です。会社の印鑑証明書は、法務局に印鑑を提出している会社にしか発行されません。そして会社の印鑑証明書を求められる場面は、法人口座の開設、不動産の賃貸借契約、自動車の登録、補助金や助成金の申請、金融機関からの借入、取引先の与信審査と、創業1年目でも普通に出てきます。印鑑を出していないと、そのたびに「うちは電子証明書で対応しています」と説明して回ることになります。相手が電子証明書での本人確認に対応していなければ、そこで話が止まります。
つまり、印鑑登録をするかどうかは「法律上必要か」ではなく「取引先と金融機関が求めてくるか」で決まります。設立して最初の半年で3回も印鑑証明書を求められたという話は珍しくありません。迷うなら出しておくのが無難です。出しても年会費のような維持コストはかかりませんし、不要になれば廃止の届出で取り下げられます。
もう1点、順番の話をしておきます。印鑑の提出は、会社の設立登記と同時に行ってかまいません。法務省のQ&Aにも「印鑑の提出は、登記申請と同時に行っても差し支えありません」と明記されています。むしろ同時に出すほうが、後述する個人の印鑑証明書を1通で済ませられるので得です。設立登記の申請書に印鑑届書をホチキスで留めずに同封するのが一般的な出し方です。
登録できる印鑑には、法令で決まった大きさがある
会社の実印として登録する印鑑は、デザインや材質は自由ですが、大きさだけは法令で枠が決まっています。法務局が配布している印鑑届書の記載例には、注意書きとしてこう印刷されています。
(注1) 印鑑の大きさは,辺の長さが1㎝を超え,3㎝以内の正方形の中に収まるものでなければなりません。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
法令のもとになっている条文は商業登記規則第9条第3項で、そこでは「辺の長さが1センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが3センチメートルの正方形に収まらないものであってはならない」と二重否定で書かれています。読み替えると、1辺1cmの正方形には収まらず、1辺3cmの正方形には収まる大きさ、ということです。同じ規則の第9条第4項には、印鑑は照合に適するものでなければならないという条件も置かれています。市販の法人実印は直径18mm前後が主流で、これは枠の中にきれいに収まります。一方で、個人用の小さな認印を流用しようとすると下限に引っかかることがあります。
「照合に適するもの」という条件も軽く見ないでください。登記所は、後から提出される書類の印影と、登録された印影を目で見比べて同じかどうかを判断します。そのため、輪郭が欠けている印鑑、ゴム製で押すたびに形が変わる印鑑、文字が細かすぎてつぶれる印鑑は受け付けられないことがあります。スタンプ台式のいわゆるシヤチハタ型が使えないと言われるのは、この「照合に適するか」の条件にかかるためです。
実際に発注するときの中身にも触れておきます。法人の印鑑は「実印(代表者印)」「銀行印」「角印(社印)」の3本セットで売られていることが多く、価格帯は素材によって5,000円前後から3万円程度まで幅があります。登記所に提出するのはこのうち実印だけです。ただし、実印は外に持ち出す機会が少ないほうが安全なので、日常の請求書に押す角印と、銀行の届出印は最初から分けておくほうが管理が楽になります。設立直後は本数を減らしてコストを抑えたくなりますが、実印1本を全部に使い回すと、紛失したときの影響範囲が一気に広がります。
素材は柘(つげ)、黒水牛、チタンなどがあり、耐久性はチタンが群を抜いています。ただし登記所の審査は素材を見ません。見るのは大きさと印影の鮮明さだけです。ネット通販で注文する場合、納品まで3日から1週間程度かかることがあるので、登記の予定日から逆算して先に発注しておきます。印鑑が間に合わないという理由で設立日がずれるのは、いちばんもったいない足踏みです。
印鑑届書に書く欄を、上から順に埋めていく
法務局が配布している印鑑届書の様式と記載例は、「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式」のページからダウンロードできます。株式会社、持分会社、一般社団法人、NPO法人など、法人の種類ごとに記載例が用意されているので、自分の会社の形に合うものを選びます。
用紙の上半分は、会社そのものの情報です。
商号・名称には、登記する会社名を登記簿どおりに書きます。「株式会社」を前に付けるか後ろに付けるかも含めて、定款と1文字もずらさないことが条件です。定款とは、会社の決まりを書いた文書のことで、設立時に作って公証人の認証を受けるものです。
本店・主たる事務所には、登記する住所を書きます。ここも登記申請書と同じ表記にそろえます。「一丁目1番1号」と「1-1-1」のように書き方が混在すると、確認の連絡が来ることがあります。
資格の欄には、代表取締役、取締役、代表理事などの選択肢が印刷されているので、当てはまるものを丸で囲みます。合同会社なら代表社員です。選択肢にないときは、空欄の括弧に書き入れます。
氏名と生年月日は、印鑑を提出する人、つまり代表者本人のものです。ここは会社の情報ではないので間違えやすい欄です。生年月日は元号か西暦かを丸で囲む形式になっています。
会社法人等番号は、すでに登記がある会社なら12桁の番号を書きます。設立と同時に印鑑を出す場合、その時点ではまだ番号が付いていないので記載不要です。記載例にも「新設の際は記載不要です」と注記があります。
左側の大きな枠が提出する印鑑の押印欄です。ここに会社の実印を押します。記載例の注意書きは「届出印は鮮明に押印してください」とだけ書いていますが、これが実は最大の関門です。かすれ、にじみ、欠けがあると受け付けられません。朱肉をしっかり付けて、下に紙を数枚敷き、まっすぐ体重をかけて押します。1回で決まらないときのために、届書の様式を3枚ほど余分に印刷しておくと安心です。押し直しや上から重ね押しをした印影は、照合に使えません。
印鑑カードを引き継ぐかどうかのチェック欄
用紙の中ほどに、少し分かりにくいチェック欄があります。「印鑑カードは引き継がない」「印鑑カードを引き継ぐ」の2択です。
これは代表者が交代するときの話です。前の代表者が持っていた印鑑カードを、新しい代表者がそのまま使い続けるかどうかを選びます。引き継ぐ場合は、その印鑑カード番号と前任者の氏名を書きます。引き継がない場合は、新しい代表者が改めて印鑑カードの交付を申請することになります。
新しく会社をつくる場面では、引き継ぐべき前任者が存在しないので、「引き継がない」にチェックします。会社設立の記事なのにこの欄の説明が抜けていることが多いのですが、空欄のまま出すと窓口で止まります。どちらかには必ず印を付けます。
届出人の欄と、押す印鑑が切り替わるポイント
用紙の下半分が、この届書のいちばんの要所です。「届出人」として「印鑑提出者本人」と「代理人」のどちらかを選びます。ここで、押す印鑑の種類が切り替わります。
本人が出す場合は、本人の住所・氏名を書き、市区町村に登録済みの個人の実印を押します。会社の印鑑ではありません。上の押印欄に会社の実印、下に代表者個人の実印。1枚の紙に別々の印鑑を押すので、ここで取り違える人が非常に多いです。
代理人が出す場合は、代理人の住所・氏名を書きますが、代理人は押印しません。記載例にも「※代理人は押印不要」とはっきり書かれています。その代わり、用紙の中にある委任状の欄を埋め、そこに本人が市区町村に登録済みの個人の実印を押します。つまり、代理人に頼む場合でも、本人の実印を押す作業は本人がやる必要があります。印鑑を渡して丸投げはできません。
委任状の欄には、委任する内容を選ぶチェックボックスが2つあります。「印鑑(改印)の届出」と「添付書面の原本還付請求及び受領」です。原本還付とは、添付した書類の原本を返してもらうことです。代理人に原本を受け取って帰ってきてほしいなら、こちらにもチェックを入れます。片方しかチェックしていないために、原本を後日取りに行く羽目になった、という手戻りはよくあります。
もう1つ、見落とすと登記そのものが止まる注意書きがあります。記載例の注3は、本人の住所・氏名が登記簿上の代表者の住所・氏名と一致しない場合には、代表者の住所または氏名の変更の登記をする必要がある、と書いています。引っ越したのに登記を直していない、結婚して姓が変わったのに届けていない、というケースがこれに当たります。印鑑届書だけ直しても通りません。
添付する「個人の印鑑証明書」と、1通で済ませる方法
印鑑届書には、添付書類が1点あります。市区町村長が作成した、代表者個人の印鑑証明書です。有効期限にあたる条件があり、記載例には「作成後3か月以内」と明記されています。古いものは使えません。
この個人の印鑑証明書は、住んでいる市区町村の窓口、または印鑑登録証(カード)やマイナンバーカードを使ってコンビニの端末で取得します。手数料は自治体によって異なり、おおむね200円から450円程度の範囲です。正確な金額と必要書類は、住んでいる市区町村のページで確認してください。個人の印鑑登録そのものをまだしていない場合は、先にその手続きが必要になるので、日程に1日余裕を見ておきます。
ここで使える節約の仕組みが「援用」です。印鑑届書の下部に、「市区町村長作成の印鑑証明書は、登記申請書に添付のものを援用する。」というチェック欄があります。会社の設立登記の申請書にも、代表取締役の個人の印鑑証明書を添付します。同じ書類を2通用意するのは無駄なので、登記申請書に付けた1通を印鑑届書のほうでも使いますという意思表示が、このチェックです。
ただし条件があります。記載例の注4には、援用できるのは「登記の申請と同時に印鑑を届け出た場合に限る」と書かれています。設立登記が終わったあとに、印鑑届書だけを単独で出す場合は援用できず、新しく1通取り直す必要があります。このためにも、印鑑の提出は設立登記と同時に行うのが合理的です。
出す先と、受け取れるまでの時間
印鑑に関する届出は、どこの法務局でもよいわけではありません。法務局のページには、印鑑に関する届出は「会社・法人が登記されている登記所」に提出してください、と書かれています。本店の住所を管轄する登記所です。管轄は法務局の「管轄のご案内」で調べられます。
一方で、いったん登録が済んだあとの印鑑証明書の取得は、扱いが違います。こちらは商業・法人登記情報交換システムによって、どの登記所でも取得できます。本店が地方にある会社の担当者が、出張先の都市部の法務局で印鑑証明書を取る、という使い方ができます。届出は管轄の登記所、証明書はどこでも。この違いを覚えておくと動きやすくなります。
受付時間は、法務局のページに記載があります。国民の祝日に関する法律に規定する休日および年末年始の休日を除く月曜日から金曜日までの、午前8時30分から午後5時15分までです。土日は開いていません。郵送で出すこともできます。
もう1つ、日程を組むうえで知っておくべき制約があります。法務局の案内には、会社・法人の登記申請を行って登記手続が完了するまでの間は、原則としてその会社の登記事項証明書・印鑑証明書は発行されないと書かれています。つまり、設立登記を出した直後に印鑑証明書を取りに行っても出ません。登記が完了する目安は「登記完了予定日」として各法務局のホームページに掲示されており、時期や管轄によって変わります。法人口座の開設予約を先に入れてしまうと、書類が間に合わない事故が起きます。登記完了予定日を先に見てから予定を組んでください。
印鑑を登録したあと、印鑑カードをもらうまでが1セット
印鑑届書を出して登録が済んでも、それだけでは印鑑証明書は取れません。もう1段階、印鑑カードの交付を受ける必要があります。
印鑑カードは、名刺よりひと回り小さいプラスチックのカードで、会社の印鑑証明書を請求するときの鍵になります。申請には「印鑑カード交付申請書」を使います。これも法務局のページから様式と記載例がダウンロードできます。
記入する内容は印鑑届書と似ていますが、押す印鑑が違います。印鑑カード交付申請書の押印欄には、登記所に提出した印鑑(会社の実印)を押します。個人の実印ではありません。記載例の注1にも「押印欄には、登記所に提出した印鑑を押印してください」と書かれています。
連絡先の電話番号を書く欄があり、勤務先・自宅・携帯番号から選ぶようになっています。ここは日中つながる番号を書いてください。書類に不備があったときの連絡がここに来ます。
印鑑カードの交付そのものには、収入印紙を貼る欄がありません。法務省が公表している登記手数料の一覧にも、印鑑カードの項目はありません。手数料がかかるのは、カードを使って印鑑証明書を発行してもらうときです。
法務局のページによれば、証明書等の交付申請の標準処理期間は「申請書の提出から即日」とされています。印鑑届書と印鑑カード交付申請書を一緒に持っていけば、登記が完了している会社なら、その日のうちに印鑑カードを受け取って印鑑証明書まで取得できるケースが多くなります。
印鑑証明書の手数料は2025年4月に変わった
会社の印鑑証明書を取るときの手数料は、法務省が「登記手数料について」のページで公表しています。2025年4月1日から改定された現在の金額は次のとおりです。
| 請求の方法 | 印鑑証明書 | 登記事項証明書 |
|---|---|---|
| 窓口・郵送での書面請求 | 500円 | 600円 |
| オンライン請求・郵送で受け取り | 450円 | 520円 |
| オンライン請求・窓口で受け取り | 420円 | 490円 |
窓口で請求する場合は、手数料の額に相当する収入印紙を交付申請書に貼って納めます。登記印紙も使えます。収入印紙は法務局の中か、近くの郵便局で買えます。割印をしてしまうと使えなくなるので、貼るだけにしておきます。
ここで注意が要るのは、オンライン請求の条件です。法務省のページによると、印鑑証明書をオンラインで請求するには、請求する人の電子証明書が必要です。しかも「申請人による請求、代理人による請求のいずれの場合にも、申請人の電子証明書が必要となる」とされています。税理士や司法書士に頼む場合でも、会社側の電子証明書が要るということです。電子証明書を持っていない会社にとっては、オンラインのほうが安いとしても、すぐには選べない選択肢です。
会社の登記事項証明書は誰でも取得できますが、印鑑証明書はそうではありません。法務省のQ&Aは「印鑑証明書については、会社代表者本人しか請求することができません(ただし、代理人による請求は可能です。)」と書いています。他社の印鑑証明書を勝手に取ることはできない仕組みです。
登録したあとに起きること、起きたら困ること
印鑑を登録すると、その後いくつかの届出が発生します。
印鑑を変えたいとき(改印)は、印鑑届書と同じ用紙を使います。用紙の表題が「印鑑(改印)届書」となっているのはこのためです。新しい印鑑を押し、代表者個人の実印を押し、作成後3か月以内の個人の印鑑証明書を添えて出します。
印鑑や印鑑カードをなくしたときは、法務省のQ&Aが3つのパターンに分けて手順を示しています。印鑑と印鑑カードの両方をなくした場合、印鑑だけなくした場合、印鑑カードだけなくした場合です。
印鑑カードだけをなくした場合は、比較的単純です。Q&Aはこう説明しています。
印鑑カードを紛失した場合には、当該印鑑カードの廃止の届出及び新たな印鑑カードの交付の請求をすることができます。印鑑カードの廃止については、登記所に提出した印鑑を押印した「印鑑カード廃止届書」を、また、印鑑カードの交付の請求については、登記所に提出した印鑑を押印した「印鑑カード交付申請書」を本店所在地を管轄している登記所に提出していただく必要があります。 出典: moj.go.jp
会社の実印が手元にあれば、廃止と再交付を同じ日に済ませられます。一方、印鑑そのものをなくすと重くなります。新しい印鑑を用意して改印の届出をすることになり、代表者個人の印鑑証明書がまた必要です。手元に新しい印鑑がすぐ用意できない場合は、いったん印鑑の廃止だけを届け出ることもできますが、その状態では書面での登記申請ができなくなります。
印鑑・印鑑カード廃止届書には、カードを廃止する理由を選ぶ欄があります。「亡失(なくなった)」「汚損(著しく汚れた)」「き損(破損した)」「その他」の4つです。財布ごと落とした、洗濯機で回してしまった、といった事情はこのいずれかに収まります。
オンラインで印鑑を出すときの、意外に細かい条件
紙を使わずに印鑑を提出する道もあります。ただし条件がかなり限定的です。法務省の案内によれば、オンラインによる印鑑の提出は、オンラインによる登記申請と同時に行う場合に限られます。印鑑の提出だけを単独でオンラインで行うことはできません。
さらに、印鑑届書の作り方にも指定があります。法務省が示しているポイントは次の3つです。1cmごとの目盛りが付いた専用の様式を印刷して使うこと(拡大・縮小印刷はしない)、物体による印章を用いて印影が鮮明になるよう押印すること、原寸大かつ照合に適する程度の解像度(600dpi程度)でスキャンしてPDFデータにすること。
つまり、オンライン提出といっても、紙に押して、正確な倍率でスキャンする工程は残ります。印影を画像編集ソフトで作ることは想定されていません。様式を開くときはAdobe Acrobat Readerを使うようにとの指定もあり、ブラウザで開くと印刷サイズが狂う可能性があると注意されています。書面申請やQRコード付き書面申請の場合、あるいは代理人による申請で委任状を紙で持参・送付する場合は、従来どおり紙での提出が必要です。
手続きを止めないための、事前の並べ方
ここまでの内容を、実際に動く順番に並べ直します。
1つ目、会社の実印を発注します。1辺1cm超3cm以内という条件を満たすサイズを選びます。納期を見て、設立予定日から逆算します。
2つ目、代表者個人の印鑑登録が済んでいるか確認します。済んでいなければ市区町村で登録します。
3つ目、個人の印鑑証明書を取ります。作成後3か月以内という条件があるので、取るタイミングは早すぎないようにします。
4つ目、印鑑届書を法務局のページからダウンロードし、会社の実印と代表者個人の実印を押して記入します。予備の用紙を数枚印刷しておきます。
5つ目、設立登記の申請と同時に、印鑑届書を提出します。個人の印鑑証明書の援用にチェックを入れれば1通で足ります。
6つ目、登記完了予定日を確認し、完了後に印鑑カード交付申請書を提出してカードを受け取ります。
7つ目、印鑑カードを使って印鑑証明書を請求します。ここで初めて、法人口座の開設などに進めます。
書類そのものは難しくありませんが、「どの印鑑をどこに押すか」と「いつ何が発行されるか」の2点でつまずきます。この2つだけ間違えなければ、専門家に頼まなくても自分で通せる手続きです。
この手続きが、独立したばかりの人の時間をどれだけ削るか
運営者として在宅ワークと業務委託の市場を20年以上見てきた立場から言うと、法人成りしたばかりの人がいちばん消耗するのは、税務でも営業でもなく、この種の「窓口と様式の手続き」です。1件あたりの難易度は高くないのに、平日の日中にしか動けず、1つ間違えるとやり直しになり、やり直しのたびに半日が消えます。
そして削られた半日は、そのまま請求できる仕事の時間から引かれます。ここに気づいていない人が多い。たとえばソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、時間単価に換算したときの水準が具体的な金額で分かります。半日の手戻りが何に相当するかを、その数字に当てはめて考えると、予備の用紙を3枚印刷しておくことや、登記完了予定日を先に確認することの価値がはっきりします。文章系の仕事でも事情は同じで、著述家,記者,編集者の年収・単価相場の水準を基準にすれば、手続きの空振りが何本分の原稿に当たるかが見えてきます。
長く続いている人ほど、この手の手続きを「1回で通す」ことに執着します。段取りを紙に書き出し、必要書類を先に全部そろえ、窓口に行く回数を1回に圧縮する。逆に、うまくいかない人は「とりあえず行ってから聞けばいい」と考えて、3回窓口に通うことになります。準備にかける30分が、往復の3時間を消してくれます。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、法人成りした直後に案件の質が変わる人と変わらない人がいます。差が出るのは、法人化そのものではなく、法人になったことで受けられるようになった取引の窓口を実際に叩いたかどうかです。会社の印鑑証明書が出せる状態になると、個人事業では出せなかった相手と契約できるようになります。中間に何社も入らない直接取引であれば、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%という条件の価値は、金額の多寡よりも、この「同じ仕事で手元に残る量が違う」という質の部分にあります。印鑑登録は、その入口の鍵を1本増やす作業だと考えると、面倒さの見え方が少し変わるはずです。
登録後に広がる仕事の受け方を、データで確かめる
会社として動き出したあと、どの領域で仕事を受けるかを考える材料も置いておきます。
法人格があることが効きやすいのは、相手側の社内規程で法人としか契約できないと決まっている案件です。この傾向は分野によって差があり、企業の基幹システムや業務改善に関わる領域で強く出ます。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、業務フローの棚卸しから導入支援までを担う仕事の中身と求められる経験が整理されています。導入の前段階で契約主体を問われることが多い分野です。
同じく、情報を扱う責任が重い領域も法人が有利に働きます。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事には、セキュリティや広告運用のように、秘密保持契約(NDA)と賠償責任の話が最初に来る仕事が並んでいます。契約書に押す印鑑が会社の実印になると、相手の稟議が通りやすくなる場面があります。開発の受託ならアプリケーション開発のお仕事にある職種の幅を見ておくと、自分の技術が法人としてどの規模の案件まで届くかの見当が付きます。
資格の扱いも、法人になると少し変わります。個人の看板で仕事を取っていたときは資格が信用の代わりになりますが、会社として提案書を出すなら、書類そのものの体裁が信用に直結します。ビジネス文書検定は、見積書・報告書・社外文書の型を体系的に扱う資格で、法人間の書面のやり取りが増える段階で効いてきます。技術系の案件で相手の情報システム部門と話す場面が増えるなら、CCNA(シスコ技術者認定)のようにネットワークの基礎を証明できるものがあると、打ち合わせの初速が変わります。
契約の守りについても、法人になったからといって自動的に強くなるわけではありません。報酬が支払われないときの回収手段や、費用の見積もりは、事前に把握しておく領域です。未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】では、支払督促という手続きの流れと、弁護士に依頼した場合の費用構造が具体的に整理されています。また、発注書や契約書に何を書いておくべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形でまとまっており、会社の実印を押す前に確認しておく価値があります。会計の専門性を軸に法人化を考えているなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に、資格を持つ人が組織の外でどう仕事を組み立てているかの例が載っています。
印鑑届書は1枚の紙です。けれども、その1枚を通すために、印鑑の大きさ、押す印鑑の種類、添付書類の有効期間、提出先、登記完了のタイミングという5つの条件がそろう必要があります。法務局が様式と記載例を無料で公開している以上、そこを直接見て埋めるのがいちばん確実です。書き方に迷ったら、本店所在地を管轄する登記所に相談できます(予約制の場合があります)。税務や法務の個別の判断が絡む部分は、金額や事情によって扱いが変わるので、税務署や司法書士、税理士に確認してください。
よくある質問
Q. 法人の印鑑登録は、どこの窓口でできますか?
会社の本店所在地を管轄する法務局(登記所)です。個人の印鑑登録と違い、市区町村の窓口では受け付けていません。管轄は法務局の「管轄のご案内」で調べられます。なお、登録後に印鑑証明書を取るときは、商業・法人登記情報交換システムにより全国どの登記所でも請求できます。届出は管轄の登記所、証明書はどこでも、と覚えると間違えません。
Q. 印鑑届書に押す印鑑は、会社の実印だけですか?
2種類押します。上の押印欄には会社の実印を、下の届出人欄には代表者個人が市区町村に登録している実印を押します。代理人が提出する場合は代理人の押印は不要で、代わりに用紙の中の委任状欄に本人が個人の実印を押します。あわせて、市区町村長が作成した作成後3か月以内の個人の印鑑証明書を添付します。
Q. オンラインで登記するなら、印鑑登録はしなくてよいですか?
法律上は任意です。ただし会社の印鑑証明書は、法務局に印鑑を提出している会社にしか発行されません。法人口座の開設、不動産の賃貸借、自動車の登録、借入などで印鑑証明書を求められる場面は多いため、実務では提出しておくほうが動きやすくなります。維持費はかからず、不要になれば廃止の届出で取り下げられます。
Q. 印鑑登録をした当日に、印鑑証明書は受け取れますか?
登記がすでに完了している会社であれば、印鑑カード交付申請書を同時に出すことで、その日のうちにカードを受け取って印鑑証明書まで取得できる場合があります。証明書の交付申請の標準処理期間は提出から即日とされています。ただし設立登記の申請直後は、登記手続が完了するまで証明書が発行されないため、登記完了予定日を先に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







