代理の人に印鑑証明書を取ってきてもらう方法

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
代理の人に印鑑証明書を取ってきてもらう方法

この記事のポイント

  • ✓法人の印鑑証明書を代理の人に取ってきてもらう方法を整理しました
  • ✓窓口なら委任状は不要で印鑑カードだけで足りること
  • ✓逆に委任状が必要になる3つの手続き

結論から書きます。法人の印鑑証明書は、代表者以外の人が窓口に行っても取れます。しかも委任状は要りません。必要なのは印鑑カードと、申請書と、手数料ぶんの収入印紙だけです。

個人の印鑑登録証明書のイメージで「委任状を書かないと」と身構える人が多いのですが、法人の場合は仕組みが違います。本人確認の役目を、委任状ではなく印鑑カードが担っているからです。その代わり、カードが無ければ代表者本人が行っても取れません。

ここでは窓口・郵送・オンラインの3つで代理の扱いがどう変わるかと、逆に委任状が必要になる手続きを、法務局と法務省が公表している資料で確かめた内容だけで整理します。

窓口で取るなら、委任状は不要

法務局が配っている「印鑑証明書交付申請書」の記載例を見ると、下のほうに「窓口に来られた人(申請人)」という欄があります。ここに「印鑑提出者本人」と「代理人」のチェック欄が並んでいて、代理人の場合は住所とフリガナと氏名を書く、という作りです。

そしてその欄のすぐ下に、この書類でいちばん大事な一文が印刷されています。「※代理人の場合でも委任状は必要ありません」。様式そのものに書かれているので、窓口で議論になることもありません。

委任状が要らない代わりに、法務局は別の条件を挙げています。

申請書を作成して、下記の提出先に提出してください。印鑑証明書の交付の申請には印鑑カードをも提出してください。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

印鑑カードの提出が条件だということです。これは省令でも定められていて、印鑑の証明の申請書を提出する場合には印鑑カードを提示しなければならないとされています(商業登記規則第22条第2項)。

正直なところ、この仕組みは合理的です。委任状は偽造しようと思えばできますが、印鑑カードは1社に1枚しか存在せず、会社の中で管理されているものです。カードを持っている時点で、会社の内部の人間である蓋然性が高い。だから委任状を重ねて求めていない、という設計になっています。

代理の人に渡すもの、伝えること

会社の総務担当や家族に頼む場合、渡すものと伝えることを整理しておきます。

渡すものは2つです。印鑑カード、そして手数料ぶんの現金または収入印紙。会社の実印は渡す必要がありません。印鑑証明書の申請書には押印欄そのものが無いからです。ここを勘違いして実印まで持ち出させると、リスクだけが増えます。

伝えることは4つです。会社の商号、本店の住所、印鑑を届け出た人の資格と氏名、そしてその人の生年月日。申請書にこの4点を書く欄があります。生年月日まで要るのは、同姓同名の代表者を区別するためです。代表者の生年月日を総務担当が覚えているとは限らないので、メモにして渡してください。

印鑑カード番号は、カードの表面に印字されているので伝える必要はありません。何通取るかだけは、先に決めておいてください。請求通数を書く欄があり、あとから1通足すには同じ手続きをもう一度することになります。

申請書には、誰の名前をどこに書くのか

代理の人が書く申請書で、名前を書く欄が2か所あることに戸惑う人がいます。整理すると次のとおりです。

上のほうにある「印鑑提出者」の欄には、代表者の資格と氏名と生年月日を書きます。ここは代理の人の名前ではありません。誰の印鑑の証明書がほしいのか、を特定する欄だからです。

下のほうにある「窓口に来られた人(申請人)」の欄で代理人にレ点を入れ、そこに代理の人自身の住所とフリガナと氏名を書きます。押印は不要です。

商号と本店の住所は、登記されているとおりに書きます。ふだんの略記ではなく、「一丁目1番1号」のような正式な表記です。心配なら、登記事項証明書のコピーを1枚持たせておくと、窓口で照らし合わせながら書けます。

申請書の用紙は窓口にも備え付けてありますが、法務局のサイトからPDFとExcelの様式と記載例が手に入ります。社内で印刷して、商号と本店だけ先に埋めたものを用意しておけば、代理の人は残りを書くだけで済みます。

手数料はいくら渡せばよいか

手数料は令和7年4月1日から変わっています。現在の金額は次のとおりです。

印鑑証明書は、窓口や郵送で紙の申請書を出す書面請求が1通500円。オンラインで請求して郵送で受け取る場合が450円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合が420円です。

登記事項証明書も一緒に取るなら、書面請求で1通600円、オンライン請求で郵送受取が520円、オンライン請求で窓口受取が490円が加わります。銀行や取引先からは両方まとめて求められることが多いので、はじめから2種類ぶんを計算しておいてください。

窓口での納め方は収入印紙です。省令でも、手数料の納付は収入印紙を申請書に貼ってしなければならないと定められています(商業登記規則第28条第1項)。登記所の中か近くに印紙を売っている窓口があるので、現金を渡しておけば現地で買えます。ただし、印紙を汚したり、うっかり割印を押してしまうと使えなくなります。「貼るだけで、何も押さないで」とひとこと伝えておくと確実です。

全国どこの登記所でも取れる。ただし例外がある

代理の人に頼むとき、地味に効いてくるのがこの点です。

法務局は、商業・法人登記情報交換システムにより、登記所であればどこでも他の登記所管轄の会社・法人の登記事項証明書及び印鑑証明書を取得できると案内しています。本店が札幌でも、東京にいる担当者が東京の登記所で会社の印鑑証明書を取れるということです。印鑑カードさえ手元にあれば、場所の制約はほとんどありません。

一方で、同じ案内に「印鑑に関する届出は、会社・法人が登記されている登記所に提出してください」という条件も並んでいます。証明書をもらうのは全国どこでもよいが、印鑑を届け出たり、印鑑カードを作ったりするのは本店の管轄だけ、という分け方です。この差を知らずに遠い登記所へ行かせると、手ぶらで帰ってくることになります。

受け取り場所については、登記所のほかに法務局証明サービスセンターの窓口も使えます。オンラインで請求した証明書を最寄りのセンターで受け取ることもできるので、本店の近くに登記所が無い会社ほど選択肢が広がります。

そもそも請求できるのは、印鑑を提出した人だけ

代理の話をする前提として、法人の印鑑証明書が誰でも取れる書類ではないことを押さえておきます。

商業登記法は、印鑑を登記所に提出した者が手数料を納付してその印鑑の証明書の交付を請求できる、と定めています(第12条第1項)。登記事項証明書は誰でも取れますが、印鑑証明書は違います。取引先の会社の印鑑証明書を勝手に取ることはできません。

ここで言う代理人は、あくまで「請求できる人の手足として窓口に行く人」です。権利が代理人に移るわけではないので、会社と無関係な第三者にカードを預けて取らせる、という使い方は想定されていません。この点は、カードの管理の話につながります。

印鑑カードが条件であることは、省令にも書かれている

窓口で「委任状は無くていいのか」と念を押されたときに示せるよう、根拠を確かめておきます。商業登記規則は、印鑑の証明の請求について次のように定めています。

印鑑の証明の申請書には、請求の目的として、被証明事項を記載し、証明を請求する印鑑を特定しなければならない。この場合においては、第九条第二項及び第九条の四第二項の規定を準用する。 2 前項の申請書を提出する場合には、印鑑カードを提示しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

ここで求められているのは2つだけです。申請書に被証明事項、つまり商号・本店・資格・氏名・生年月日を書いて印鑑を特定すること。そして印鑑カードを提示すること。委任状という語はどこにも出てきません。

同じ省令の別のところでは、印鑑の提出や印鑑カードの交付申請を代理人が行う場合について「その権限を証する書面を添付しなければならない」と定めています(第9条の6第2項)。つまり、委任状が要る手続きと要らない手続きが、条文の上でもはっきり分かれているということです。

窓口で押し問答になることはまずありませんが、社内で「委任状を作らなくて本当に大丈夫か」と止められたときは、申請書の記載例に印刷された一文を見せるのが最短です。

委任状が必要になるのは、この3つ

印鑑証明書の請求では要らない委任状が、必要になる手続きがあります。法務局は次のように整理しています。

代理人が印鑑カード交付申請、印鑑(改印)届又は印鑑・印鑑カード廃止届をする場合には、委任状が必要です(下記の様式には、委任状欄があります。)。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

1つめが印鑑カードの交付申請。2つめが印鑑の届出と改印の届出。3つめが印鑑と印鑑カードの廃止の届出です。

共通しているのは、いずれも印鑑そのものの状態を動かす手続きだという点です。証明書を1通もらうのと、会社の実印を差し替えるのとでは、間違いが起きたときの被害がまるで違います。だから後者には委任状を求めている、という理解でおおむね合っています。

委任状は別紙を用意する必要がありません。どの様式にも委任状の欄が組み込まれています。

印鑑カードを代理の人に作ってもらうときの書き方

会社を作ったばかりで印鑑カードがまだ無い、という場合は、先にカードを作るところから始まります。これを代理の人に頼むなら、委任状の書き方に注意が必要です。

印鑑カード交付申請書の上部には、登記所に提出した印鑑を押す欄があります。様式の注記でも「押印欄には、登記所に提出した印鑑を押印してください」と指定されています。印鑑証明書の申請書には押印欄が無いのに、カードの申請書にはある。ここが取り違えやすいところです。

申請人の欄で代理人にレ点を入れ、代理人の住所と氏名と連絡先を書きます。そのうえで、下半分の委任状に「私は、(住所)(氏名)を代理人と定め、印鑑カードの交付申請及び受領の権限を委任します」という文の空欄を埋め、日付と代表者の住所と氏名を書いて、ここにも登記所に提出した印鑑を押します。

つまり、カードを作る手続きでは会社の実印が2か所に必要です。代理の人に会社の実印を持たせることになるので、可能であれば代表者が押した書類を渡して、代理の人は提出だけを担当する形にしてください。押印済みの申請書なら、道中で実印そのものを持ち歩かずに済みます。

カードの交付に手数料はかかりません。法務局が示している標準処理期間も「申請書の提出から即日」なので、窓口に出せばその場で渡されます。同じ日に印鑑証明書まで請求できるため、初回の外出は1回で足ります。

郵送で頼むときは、カードが会社を離れる

窓口に行く時間が取れないとき、郵送で請求する方法があります。申請書と収入印紙と返信用封筒を同封して送る形です。

問題は、このとき印鑑カードも同封しなければならないことです。法務局も「印鑑証明書の送付を請求する場合であっても、印鑑カードの提出が必要です」と明記しています。郵送は代理というより、会社そのものが窓口に行かない方法ですが、カードが数日間、会社の外に出ることになります。

書留などの追跡できる方法で送るのが前提です。普通郵便で送って行方が分からなくなると、廃止届と再交付申請からやり直すことになります。

郵送のもう1つの難点は日数です。往復の郵送に加えて、登記所での処理の時間がかかります。契約の期限が決まっている場面では、窓口に行ってもらうかオンラインを選ぶほうが読みやすいです。

オンラインでは、逆に委任状が必要になる

窓口と郵送では委任状が不要なのに、オンラインの代理請求では委任状が必要になります。この逆転がいちばん混乱するところです。

法務省は、オンライン請求の準備について次のように説明しています。

オンラインによる印鑑証明書の交付を請求する場合には、インターネットが利用できるパソコンのほかに、請求書情報及び添付書面情報に電子署名を付すための電子証明書をあらかじめ取得しておく必要があります。 特に、申請人による請求、代理人による請求のいずれの場合にも、申請人の電子証明書が必要となることに留意してください。 出典: moj.go.jp

代理人が請求する場合、請求書のデータには代理人が電子署名を付け、それとは別に委任状のデータを作って代表者が電子署名を付けます。つまり代表者と代理人の両方が電子証明書を持っていないと成立しません。紙の委任状を写真に撮って貼る、という運用は認められていません。

使える電子証明書は、法務局が発行する商業登記電子証明書、マイナンバーカードに入っている公的個人認証サービスの電子証明書、それに法務省が個別に認めている民間の認証サービスの電子証明書です。

実務で考えると、代表者が電子証明書を用意できるなら、代理人を立てずに本人名義で請求してしまうほうが早いことが多いです。オンラインの代理の仕組みが生きるのは、司法書士などの専門家に継続して頼んでいる場合や、代表者が海外にいて紙のやり取りができない場合に限られます。総務の担当者が代わりに取りに行くだけなら、印鑑カードを持って窓口に行く方法のほうが圧倒的に軽い手続きです。

本人が請求して、受取人だけ別の人にする方法

あまり知られていない選択肢を1つ挙げておきます。

法務省は、オンライン請求について「本人が請求する場合でも、本人以外の宛先に送付すること又は本人以外を受取人とすることができます」と案内しています。

つまり、代表者が自分の電子証明書で請求して、送付先を事務所の住所や担当者宛てにする、あるいは受取人を担当者にして最寄りの登記所で受け取らせる、という組み立てができます。委任状のデータを作る必要がなく、代理人側の電子証明書も要りません。

代表者がマイナンバーカードを持っていて、電子署名の暗証番号を覚えているなら、この方法がいちばん手数が少なくなります。手数料も窓口より安く、郵送受取で450円、窓口受取で420円です。

オンラインの利用時間は、平日の8時30分から23時まで、休日は8時30分から18時までです。ただし平日の17時15分以降と休日に送ったデータは、翌業務日に受け付けられます。金曜の夜に送っても受付は月曜になるので、急ぐときはこの1日を計算に入れてください。

登記の手続き中は、誰が行っても出ない

代理の人を行かせたのに手ぶらで帰ってきた、という事故のうち、印鑑カードの忘れ物と並んで多いのがこれです。

法務局は、会社・法人の登記申請を行って登記手続が完了するまでの間、原則としてその会社・法人の登記事項証明書と印鑑証明書は発行されないと案内しています。再び発行できるようになるのは、登記所における手続が完了したときです。

役員の変更や本店の移転を申請した直後に、銀行から印鑑証明書を求められる。この組み合わせは実際によく起きます。目安になる「登記完了予定日」は、申請した登記所を管轄する法務局のサイトで公開されています。証明書が要る予定があるなら、登記の申請日をずらすか、申請の前に必要な通数を取っておくほうが確実です。

なお、管轄をまたぐ本店移転の場合や、補正があった場合は、この予定日どおりに進まないことがあります。期限が決まっている取引を抱えているなら、余裕をもって組んでください。

印鑑カードを人に預けるリスクをどう抑えるか

ここまで書いてきたとおり、法人の印鑑証明書は印鑑カード1枚で取れてしまいます。裏を返すと、カードを持っている人は誰でも会社の印鑑証明書を取れるということです。

印鑑証明書そのものは、それだけで契約ができる書類ではありません。しかし会社の実印を押した書類と組み合わされると、かなりのことができてしまいます。実印とカードを同じ引き出しに入れている会社は多いので、まずそこを分けるのが第一歩です。

運用としては、カードを渡した日と返却された日を記録しておくだけでも違います。紛失に気づくのが早くなりますし、誰が持ち出したかが残ります。大げさな仕組みは要りません。共有のカレンダーに1行書くだけで足ります。

万一カードを紛失したときは、印鑑・印鑑カード廃止届書を本店の管轄する登記所に出して、そのカードを無効にします。そのうえで新しい交付申請をします。省令では、この廃止の届出をするときに印鑑カードを提示すれば押印を要しないとされていますが、紛失した場合はカードを出せないので、登記所に提出した印鑑を押して届け出ることになります。

手ぶらで帰ってくる原因は、だいたい5つに絞れる

代理の人を送り出したのに証明書が取れなかった、という事例を並べると、原因はおおむね次のどれかです。出発前に読み上げておくだけで、往復の無駄が減ります。

1つめが印鑑カードの忘れ物です。会社の実印を持って行っても、代表者の運転免許証を見せても、カードの代わりにはなりません。財布に入れたつもりで机に置いてきた、という形が最も多いです。

2つめが登記の手続き中だった、という場合です。役員変更や本店移転を申請した直後は、完了まで証明書が出ません。申請を出したのが自分ではない場合、代理の人はその事情を知らないまま窓口に行くことになります。

3つめが生年月日を知らなかった、という形です。申請書に代表者の生年月日を書く欄があります。窓口で電話をかけて聞くことになり、その場で解決はしますが時間を食います。

4つめが本店の表記の間違いです。登記されている住所と違う書き方をすると、窓口で書き直しになります。登記事項証明書のコピーを持たせておけば防げます。

5つめが手数料の不足です。印鑑証明書と登記事項証明書の両方を求められていたのに、印鑑証明書ぶんの金額しか渡していなかった、という形です。多めに渡しておけば済みます。

このうち1つめと2つめは、現地では解決しません。残りの3つは時間の損で済みます。出発前に印鑑カードの実物を目で確認し、登記の申請中でないかを確かめる。この2つだけは省かないでください。

受け取った証明書は、その場で3点だけ確かめる

代理の人が持ち帰った証明書を受け取ったら、封を切ってから次の3点を見てください。

1つめが証明書の種類です。印鑑証明書と登記事項証明書は見た目が似ているため、窓口で片方しか受け取っていないことがあります。印鑑証明書には印影が印刷されているので、すぐ見分けが付きます。

2つめが通数です。請求通数の欄に書いた数と、手元の枚数が合っているかを数えます。

3つめが証明日です。提出先が「発行から3か月以内」といった条件を付けている場合、この日付から数えます。取ってきてもらった日と証明日がずれることは通常ありませんが、郵送やオンラインを経由した場合は数日ずれることがあります。

会社の商号や本店に誤りがあることはまずありません。登記の内容をそのまま印字したものだからです。もし違っていたら、それは証明書の誤りではなく、登記簿の記載が実態と合っていないということになります。その場合は変更の登記から片付けることになります。

専門家に頼んでいる場合は、また別の段取りになる

設立や変更の登記を司法書士に頼んでいる会社は、印鑑証明書の取得もあわせて頼んでいることが多いです。この場合の扱いを整理しておきます。

法務局は、会社・法人に関する登記の申請手続を代理して行う専門家は司法書士である、と案内しています。登記の代理と、その過程で必要になる証明書の取得は一体で頼めます。

ただし、印鑑証明書の請求そのものに委任状が要らない点は、専門家に頼む場合も同じです。司法書士に印鑑カードを預けて窓口で取ってもらう、という形が実務では多く使われています。カードを預ける以上は、預けた日と返却の日を記録しておくのが安全です。

オンラインで頼む場合は前述のとおり委任状のデータが必要になり、代表者側にも電子証明書が要ります。継続的に登記を頼んでいるなら、商業登記電子証明書を取得しておくと、以後のやり取りが紙を介さずに済むようになります。取得は管轄の登記所の窓口のほか、オンラインでも請求できます。

なお、登記の申請や証明書の取得を、資格の無い第三者に報酬を払って継続的に依頼することには法律上の制限があります。社員や家族が手伝う範囲と、業として請け負う範囲は別の話です。外部に頼むなら司法書士に頼むのが確実で、判断に迷う場合は管轄の登記所か司法書士会に確かめてください。

何通必要かを、頼む前に決めておく

最後に、実務でいちばん効く段取りを書いておきます。

印鑑証明書は原本を提出させる場面がほとんどです。法人口座の開設、事務所の賃貸借契約、自動車の登録、官公庁の入札参加資格の申請、補助金の申請。それぞれに1通ずつ要ります。

有効期限は書類そのものには書かれていませんが、提出先の側が「発行から3か月以内」といった条件を付けているのが通例です。使う予定が2か月先なら、今まとめて取っても間に合いません。

現実的なのは、直近1か月で使う予定の数に予備を1通足す、という決め方です。使わなかったぶんは期限が来れば捨てるだけなので、代理の人に2往復させるよりは安く付きます。1通500円の書類のために担当者を半日動かすほうが、よほど高くつきます。

そして、頼むときは口頭で済ませないでください。商号、本店、代表者の資格と氏名と生年月日、必要な通数、一緒に取る登記事項証明書の有無。この6項目を1枚のメモにして、印鑑カードと一緒に渡す。これだけで、窓口からの電話がほぼ無くなります。

事務の段取りが、そのまま仕事の速さになる

ここからは、業務委託や在宅で働く人の視点で考えます。

法人を作ると、この手の書類のやり取りが仕事の一部になります。印鑑証明書を取りに行く半日は、売上を生まない時間です。1人で法人を回している場合は、その半日が丸ごと稼働から消えます。だからこそ、誰かに頼める手続きは頼める形にしておく価値があります。窓口の請求に委任状が要らないのは、その意味で使える仕組みです。

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、長く仕事が続く人ほど、こうした事務を後回しにしません。依頼が来てから書類を集め始めるのではなく、受ける前提で印鑑カードの置き場所を決め、通数を確保し、電子証明書を取っておく。発注する側から見れば「この人に任せると止まらない」という評価になり、次の依頼につながります。腕は良いのに着手が毎回1週間遅れる人は、理由が事務の段取りにあると気づかれないまま、声がかからなくなっていきます。

もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、手取りの厚さを決めるのは表に出る単価そのものより、間に何社入っているかです。仲介手数料が0%の直接取引なら、発注する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側は同じ仕事でも手取りが厚くなります。双方が得をする代わりに、契約書や印鑑証明書のやり取りも自分の手元で発生します。事務を自分で回せることが、そのまま受けられる仕事の幅になるわけです。

どの分野で法人としての取引が動いているかは、仕事の種類ごとの解説が手がかりになります。企業の生成AI導入や業務の見直しを支援するAIコンサル・業務活用支援のお仕事は契約の単位が大きく、法人同士の取引になりやすい分野です。広告運用から情報セキュリティまでを含むAI・マーケティング・セキュリティのお仕事も継続契約が中心で、書類のやり取りが定期的に発生します。受託開発の進め方を知りたいなら、企画から実装までを説明したアプリケーション開発のお仕事が参考になります。

法人にするかどうか迷っているなら、報酬の水準から逆算するのが現実的です。地域差まで含めたソフトウェア作成者の年収・単価相場や、文章まわりの仕事をまとめた著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、どのくらいの売上から法人化の手間に見合うかの目安が立ちます。

書類の不備そのものを減らしたいなら、書き方を体系立てて学ぶ手もあります。申請書や契約書の型を扱うビジネス文書検定は、登記所や銀行に出す書類の差し戻しを減らすのに直結します。技術側で法人として案件を受けるなら、ネットワークの基礎を示せるCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、初めての取引先に対する安心材料になります。

取引が始まったあとの守りも決めておいてください。報酬が支払われないときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に、発注書や契約書で外してはいけない項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにまとまっています。会社の数字まわりをどこまで自分で見るかの線引きは、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が参考になります。

代理の人に頼むなら、渡すのは印鑑カードと手数料、伝えるのは商号と本店と代表者の3点。会社の実印は渡さない。この形を社内の標準にしてください。

よくある質問

Q. 法人の印鑑証明書を代理人が取るとき、委任状は必要ですか?

窓口で請求する場合は不要です。法務局が配っている印鑑証明書交付申請書の記載例にも「代理人の場合でも委任状は必要ありません」と印刷されています。委任状の代わりに印鑑カードの提出が条件になっているので、カードを持たせることのほうが重要です。

Q. 代理人に会社の実印を持たせる必要はありますか?

印鑑証明書の請求だけなら不要です。申請書に押印欄そのものがありません。会社の実印が必要になるのは印鑑カードの交付申請や改印の届出のときで、この場合は代表者が押した書類を用意して、代理人には提出だけを頼むのが安全です。

Q. オンラインで代理人に請求してもらうことはできますか?

できますが、窓口と違って委任状が必要になります。請求書のデータに代理人が電子署名を付け、委任状のデータに代表者が電子署名を付けるため、双方が電子証明書を持っている必要があります。代表者が電子証明書を持っているなら、本人名義で請求して受取人だけ別の人にするほうが手数は少なくなります。

Q. 代理人に渡す手数料はいくら用意すればよいですか?

窓口で紙の申請書を出す場合、印鑑証明書は1通500円です。登記事項証明書も一緒に取るなら1通600円が加わります。窓口では収入印紙で納めるので、登記所の近くで買える金額の現金を渡してください。印紙に割印を押すと使えなくなるので、貼るだけにするよう伝えておくと確実です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月29日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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