重任登記にかかる費用|資本金1億円以下かどうかで変わる

前田 壮一
前田 壮一
重任登記にかかる費用|資本金1億円以下かどうかで変わる

この記事のポイント

  • 重任登記費用は登録免許税と専門家報酬の2階建てです
  • 登録免許税は資本金1億円以下なら1万円
  • 司法書士に頼んだ場合の相場

会社を作って何年か経つと、税理士や取引銀行から「そろそろ重任登記が必要では」と言われることがあります。重任登記費用がいくらかかるのかを先に知っておきたい、という理由でこのページにたどり着いた方が多いはずです。結論から書きます。重任登記でかかるお金は、法務局に納める登録免許税と、手続きを人に頼むかどうかで決まる報酬の2階建てです。登録免許税は資本金の額で1万円3万円のどちらかに決まり、そこに書類の実費が数百円から数千円乗ります。自分で出すなら1万円台で終わる会社が大半です。

重任という言葉自体があまり日常で使われないので、まずそこから整理します。重任とは、役員の任期が切れたときに、同じ人がもう一度その役職に就くことです。社長も役員も顔ぶれも何ひとつ変わっていないのに、登記だけはやり直す必要がある。この「何も変わっていないのに費用が発生する」という感覚のずれが、重任登記が後回しにされやすい最大の理由になっています。

重任登記費用は「税金」と「頼む相手への報酬」の2つに分かれる

費用の話を分かりにくくしているのは、金額の性質が違うものを1つの言葉でまとめて呼んでいるからです。分けて考えると一気に簡単になります。

1つ目は登録免許税です。これは国に納める税金で、登記を申請するときに必ず払います。金額は法律で決まっていて、値引きも交渉もありません。誰が申請しても同じ額です。

2つ目は報酬です。司法書士に手続きをまるごと任せるならその報酬、書類作成のウェブサービスを使うならその利用料が該当します。ここは自由価格なので、事務所やサービスによって幅があります。そして、自分で書類を作って自分で法務局に出すなら、この2つ目はゼロになります。

3つ目として、小さな実費があります。登記事項証明書を取る手数料、印鑑証明書の発行手数料、郵送するなら送料、収入印紙を買う手間といったものです。金額としては数百円から数千円の世界ですが、見積もりを比べるときに「その事務所の金額に実費が含まれているのか」を確認しないと、あとで足し算が合わなくなります。

この3つのうち、金額が大きく、しかも自分の意思で変えられるのは2つ目だけです。逆に言えば、重任登記費用を下げたいと考えたとき、検討する余地があるのは「誰に頼むか」の一点に絞られます。1つ目の登録免許税は資本金の額で機械的に決まるため、手続きの工夫では1円も動きません。

登録免許税は1万円か3万円。分かれ目は資本金1億円

登録免許税の額は国税庁が税額表として公表しています。役員に関する登記の欄には、次のように書かれています。

取締役または代表取締役もしくは監査役等に関する事項の変更の登記 申請件数 1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円) 出典: nta.go.jp

読み方のポイントは3つあります。

第一に、基準は資本金の額であって、売上でも利益でも従業員数でもありません。中小企業の大半は資本金が1億円以下なので、実際に適用されるのは1万円のほうです。資本金100万円の会社も、資本金9,000万円の会社も、同じ1万円です。

第二に、「1件につき」という数え方です。役員が5人いて全員が重任したとしても、1回の申請でまとめて出せば登録免許税は1件分で済みます。人数分を掛け算する必要はありません。法務局が公開している役員全員が重任する場合の申請書の記載例でも、登録免許税の欄は「金3万円(又は1万円)」と1件分だけが書かれています。

第三に、取締役の変更と監査役の変更は同じ区分にまとめられています。取締役と監査役が同じタイミングで重任するなら、これも1件です。ただし、同じ申請書に「本店移転」のような別区分の登記を混ぜると、その分の税金は別に積み上がります。本店移転は1か所につき3万円、支店の設置は1か所につき6万円と、区分ごとに単価が決まっているためです。

納め方は、収入印紙を台紙に貼るか、領収証書で納めるかのどちらかです。法務局の記載例には「収入印紙又は領収証書で納付します」と明記されています。オンラインで申請するなら電子納付も使えます。収入印紙は郵便局や法務局内の印紙売場で買えますが、1万円の印紙は小さな郵便局に在庫がないことがあるので、申請日の前に確保しておくと当日あわてずに済みます。

自分で申請したときの総額はいくらになるか

専門家に頼まず自分で出した場合、財布から出ていくお金は次のようになります。

登録免許税が1万円。これが金額の9割以上を占めます。

登記事項証明書の取得手数料。手続きの前後で現在の登記内容を確認したり、銀行に提出したりするために取ることが多い書類です。法務局の手数料表によると、窓口や郵送で紙の請求をすると1通600円、オンラインで請求して郵送してもらうと520円、オンラインで請求して窓口で受け取ると490円です。同じ書類でも請求のしかたで100円以上変わります。

印鑑証明書。重任だけで役員の顔ぶれが変わらないケースでは、原則として添付は不要です。必要になるのは新しく就任する人が混ざる場合なので、純粋な重任なら発行手数料はかかりません。市区町村で取る個人の印鑑証明書は自治体ごとの手数料になり、法務局で取る会社の印鑑証明書は書面請求で500円です。

郵送で申請する場合の送料。書留や簡易書留で送る会社が多く、往復で1,000円前後を見込んでおけば足ります。法務局の窓口まで行けるなら交通費だけです。

合計すると、自分で申請する会社の実質的な負担は1万円から1万2,000円程度に収まります。この金額感を知らないまま「登記にはお金がかかる」という漠然とした印象で先延ばしにしてしまうのが、いちばんもったいないパターンです。

司法書士に頼むと総額はいくらになるか

手間を買いたい、あるいは書類の正しさに自信がない場合は司法書士に依頼することになります。報酬は自由価格なので事務所ごとに違いますが、相場としてはおおむね次の水準が紹介されています。

日本全国の平均額としては3万円前後となっています。実際にいくつかの司法書士事務所のWebサイトで調べてみると2〜3万円程度の報酬額となることが多いようです。これに登録免許税や諸費用を合計すると、役員重任の登記申請を司法書士に依頼する際の総額としては3〜6万円前後となることが多いようです。 出典: corporate.ai-con.lawyer

つまり、自分でやれば1万円台、頼めば3万円から6万円台。差額は2万円から5万円程度ということになります。この差額を高いと見るか安いと見るかは、会社の状況によって答えが変わります。

依頼する価値が高いのは、次のような会社です。役員の入れ替わりが同時に起きている、前回の登記から何年も空いていて任期の計算が怪しい、定款を作り替えていて任期の定めが現在どうなっているか分からない、複数の登記事項をまとめて直す必要がある。こういうケースでは、書類の組み合わせを一つ間違えるだけで法務局から補正の連絡が来て、平日の昼間に何度も往復することになります。日中に本業を止められないなら、報酬は時間を買う費用として合理的です。

逆に、役員が1人か2人で、顔ぶれがまったく変わらず、定款の任期の定めもはっきりしている会社なら、自分で出す難易度は高くありません。法務局のサイトには「役員の全員が重任」のケースの申請書ひな形と記載例が用途別に用意されていて、どの書類を何通つけるかまで書かれています。会社の状況に近いひな形を選んで、社名と日付を埋めていく作業に近い感覚です。

なお、依頼するときは見積もりの内訳を必ず確認してください。「3万円」と書かれていても、それが報酬だけなのか、登録免許税込みなのかで実際の支払額は倍近く変わります。書類の取り寄せ代行や郵送費が別立てになっている事務所もあります。

書類作成サービスという中間の選択肢

司法書士に全部任せるか、ゼロから自分でやるか。この二択の間に、書類だけを作ってくれるウェブサービスという道があります。必要事項を画面に入力すると申請書と議事録の一式が出てきて、法務局への提出は自分で行うという仕組みです。

役員変更登記(重任登記)にはさまざまな費用がかかります。依頼先によっても金額は異なるため、見積もりだけでもそこそこの手間がかかる可能性があります。GVA 法人登記なら、必要事項をブラウザから入力することで必要書類を作成し、自分で申請できます。特にダウンロードプランなら1万円前後(登録免許税は除く)と安価に登記書類を作成し自分で申請できます。 出典: corporate.ai-con.lawyer

この方式を選ぶと、総額はおおむね2万円台。全部任せるより安く、完全に自力でやるより書類ミスの不安が小さいという位置づけになります。ただし、法務局とのやり取りは自分で行うため、補正を求められたときに対応するのは会社側です。この点は理解したうえで選んでください。

どの方法を選んでも登録免許税の額は変わりません。1万円は必ずかかる前提で、その上に「いくら払って、どこまで手間を減らすか」を決める。この順番で考えると迷いにくくなります。

オンライン申請にすると、費用と手間はどう変わるか

登記の申請は、紙を法務局に持ち込む方法と、オンラインで送る方法のどちらでも受け付けられています。費用の観点で違いが出るのは次の3点です。

第一に、登録免許税の納め方です。紙で出す場合は収入印紙を買って台紙に貼りますが、オンライン申請では電子納付が使えます。インターネットバンキングやペイジー対応のATMから納めるかたちになるため、印紙を買いに行く時間がなくなります。金額そのものは変わりません。

第二に、証明書の取得費用です。手続きの前に現在の登記内容を確認する場面では、オンラインで請求したほうが1通あたり80円から110円安くなります。1通だけならわずかな差ですが、銀行や取引先の提出用に何通も取る会社では効いてきます。

第三に、移動と郵送のコストです。法務局が近くにない会社ほど、往復の交通費や書留の送料が積み上がります。オンライン申請にすればここがまるごと消えます。一方で、初めて使う場合は申請用総合ソフトの導入と電子証明書の準備が必要になり、その初期の手間は決して小さくありません。年に何度も登記をする会社でなければ、最初の1回は紙で出して、次回以降を検討するという順番でも実害はありません。

費用を3つのケースで並べると、判断しやすくなります。資本金500万円の会社が役員1人で、自分で書類を作って窓口に持ち込むケースでは、登録免許税1万円に証明書600円を足して約1万600円。同じ会社が書類作成サービスを使って自分で提出するケースでは、利用料を加えて2万円台の前半。司法書士にすべて任せるケースでは、報酬と実費を合わせて3万円から6万円。この幅の中で、どこに時間を使いたいかを決めることになります。

忘れたときに増える費用のほうが大きい

重任登記の費用を語るうえで、いちばん見落とされやすいのが「やらなかった場合の費用」です。

会社法では、登記すべき事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならないと定められています。役員の任期が満了して同じ人が選び直されたなら、それも変更にあたります。そして、この登記を怠ったときは100万円以下の過料に処すると法律に書かれています。過料は罰金とは違い前科にはなりませんが、会社ではなく代表者個人に通知が届くお金です。

もっとも、期限を1日過ぎた瞬間に上限額が科されるわけではありません。実務での肌感覚としては、次のように説明されています。

ただし、実際に期限を過ぎてすぐに100万円以下の過料に処されたケースはほとんど存在しません。期限から半年以上経過しても変更登記を行っていない場合に、数万円から十数万円の過料に処されるケースが多い印象です。 出典: ginza-plus.net

ここが重要な比較になります。自分で申請すれば1万円台で終わる手続きを放置した結果、数万円から十数万円を支払うことになる。しかも過料を払っても登記義務が消えるわけではないので、あらためて登録免許税を納めて申請し直すことになります。安く済ませる方法を探すより、期限内に出すことのほうがはるかに効きます。

さらに重い話もあります。会社法には休眠会社のみなし解散という仕組みがあり、会社に関する登記が最後にあった日から12年が経過した株式会社は、法務大臣の官報公告に対して届出をしないと、2か月の期間が満了した時点で解散したものとみなされます。取締役の任期が最長10年であることを考えると、重任登記を2回続けて忘れれば、この12年に届いてしまう計算になります。実際に解散扱いになると、会社を復活させる手続きに別の登記費用が発生します。

任期を10年に延ばすと費用は下がるのか

重任登記費用を減らす方法として必ず話題に出るのが、役員の任期を延ばす選択です。

会社法では、取締役の任期は選ばれてから2年以内に終わる事業年度のうち最後のものについての定時株主総会が終わるときまで、と決められています。ただし、株式の譲渡に会社の承認が必要な会社、つまり株式を自由に売買できないようにしてある非公開会社であれば、定款で最長10年まで延ばすことができます。監査役は原則4年で、こちらも非公開会社なら定款で10年まで延ばせます。

単純計算をすると、任期2年の会社は10年間で5回の重任登記が必要になり、登録免許税だけで5万円。任期10年にすれば1回で済むので1万円。差は4万円です。司法書士に毎回頼んでいるなら、差はさらに広がります。

ただし、任期を延ばすことには逆方向のコストもあります。任期の途中で役員に辞めてもらう場合、正当な理由なく解任すると残りの任期分の報酬相当額を損害として請求されることがあります。任期が10年ある状態での解任は、その請求額が大きくなりやすいということです。共同経営で始めた会社や、外部から役員を迎えた会社では、任期を短めに保っておくほうが身動きが取りやすい場面があります。

もう一つの注意点として、任期が長いと「次はいつだったか」を全員が忘れます。2年ごとなら決算のリズムに乗せやすいのですが、10年後の予定をきちんと管理できている会社は多くありません。任期を延ばすなら、定款を変えると同時に、次の満了年を定款のコピーと一緒に保管し、カレンダーに入れておく運用までをセットにしてください。延ばすこと自体が目的になると、結果としてみなし解散に近づきます。

どちらが正解かは会社の事情によります。役員が創業者1人だけで、当面その体制を変える予定がないなら、任期を長くして手間と費用を減らす判断は合理的です。複数人で経営していて将来の入れ替わりが見込まれるなら、短めにしておくほうが安全です。この判断は登記の技術論ではなく経営の話なので、顧問税理士や司法書士に会社の実情を伝えて相談したほうが確実です。

費用を無駄にしないために、申請前に確かめること

同じ1万円を払うなら、一度で通したいところです。差し戻しを防ぐために、申請の前に次の点を確認してください。

定款の任期の定めを実際に読む。多くの会社は設立時の定款をそのまま使っていますが、途中で変更している場合もあります。何年と書いてあるかを目で見て確認するのが出発点です。

登記事項証明書で、前回いつ誰が就任したことになっているかを確認する。任期の起算点はここです。記憶や社内の書類ではなく、登記されている内容が基準になります。

株主総会の日付と、議事録の記載を合わせる。重任の登記では、株主総会議事録と株主リストが基本の添付書類になります。取締役会がある会社なら、代表取締役を選び直した取締役会議事録も必要です。日付が定款の定めと矛盾していると、そこで止まります。

監査役がいる会社は、監査の範囲を会計に関するものに限る定款の定めがあるかどうかを確認する。この定めがある会社が初めて監査役の重任登記をするときは、その旨も一緒に登記することになっていて、定款などの書面を添える必要があります。

代表者の自宅住所を登記簿に出したくない場合は、このタイミングで検討する。会社の代表者の住所のうち市区町村より細かい部分を登記事項証明書に表示しない措置があり、住所に変更がない重任の登記と一緒に申し出ることもできます。ただし、この措置を使うと登記事項証明書で代表者の住所を証明できなくなるため、融資や不動産取引で別の書類を求められることがあります。法務省も申出の前に慎重な検討を求めています。

提出先の法務局を間違えない。商業登記は本店を管轄する法務局が窓口です。近いという理由だけで別の庁に持ち込むと受け付けられません。

合同会社なら、この費用そのものが発生しない

費用を比べるうえで知っておくと効くのが、会社の形による違いです。重任登記という手続きは、そもそも株式会社の事情から生まれています。

会社法は、持分会社の社員について任期を一切定めていません。合同会社の業務を執行する社員や代表社員には、何年で任期が切れるという概念がないのです。任期が切れないので、任期満了に伴って選び直す場面も生まれず、重任登記そのものが発生しません。

株式会社の場合、非公開会社でも任期は最長10年です。つまり会社が続くかぎり、10年ごとに必ず登記の機会が回ってきます。任期を2年のままにしている会社なら2年ごとです。

生涯の費用で並べると差が見えます。20年続ける会社で、自分で申請する前提で計算します。

会社の形と任期 20年間の重任登記の回数 登録免許税の合計
株式会社 任期2年 10回 10万円
株式会社 任期10年 2回 2万円
合同会社 0回 0円

もちろん、合同会社にも登記が必要な場面はあります。社員が加入したり退社したり、代表社員が代わったりすれば、その都度の変更登記が必要です。無くなるのは「顔ぶれが変わっていないのに定期的に発生する登記」だけです。

すでに株式会社を作っている会社が、この費用のために合同会社へ組織を変える意味はほとんどありません。組織変更の手続きには官報での公告や登記が必要で、重任登記の何倍もの費用と手間がかかります。この比較が効いてくるのは、これから法人を作る人や、2社目を作る人が形を選ぶ場面です。

消費税と、経費にするタイミングで間違えやすいところ

見積もりを比べるときに金額がずれる原因の多くは、消費税の扱いです。

登録免許税は、国に納める税金です。物やサービスを買った対価ではないので、消費税はかかりません。1万円は1万円のままです。印紙を買うときも、印紙の売りさばきは消費税がかからない取引として扱われています。

一方、司法書士の報酬はサービスの対価なので消費税がかかります。「報酬2万円」と書かれた見積もりが税抜きなら、実際の支払いは2万2,000円です。ここに登録免許税1万円が乗るので、総額は3万2,000円になります。

つまり見積もりを比べるときに確認すべきなのは、次の2点です。

・その金額は税込みか税抜きか ・その金額に登録免許税が含まれているか

この2つが違うだけで、同じ内容の見積もりが2万円から3万2,000円まで見え方が変わります。片方が税抜きで登録免許税を含まず、もう片方が税込みで含んでいると、安いほうを選んだつもりで高いほうを選ぶことになります。

経費にするタイミングも決めておきます。収入印紙を先に買っておいた場合、買った時点ではまだ何にも使っていないので、申請に使った時点で費用にするのが素直な整理です。期末に印紙が手元に残っているなら、それは貯蔵品として資産に残ります。決算月に登記をまたぐ会社では、ここで数万円が期をまたぎます。

司法書士に頼んだ場合の仕訳は、次の形になります。

・租税公課 10,000円 / 現金 10,000円(重任登記の登録免許税) ・支払手数料 30,000円 / 現金 27,958円 および 預り金 2,042円(司法書士報酬と源泉徴収分)

報酬が3万円なら、3万円から1万円を引いた2万円に10.21パーセントを掛けた2,042円を差し引いて支払います。差し引いた分は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます。実際の処理は会社の状況で変わる部分があるので、迷うところは税務署か顧問税理士に確認してください。

見積もりを取るときに聞いておく5つ

司法書士や書類作成サービスを比べるとき、金額だけを並べても判断できません。同じ条件に揃えるために、次の5つを聞いておきます。

1つ目は、提示された金額に登録免許税が含まれているかどうか。含まれていないほうが多いので、必ず確認します。

2つ目は、税込みか税抜きか。ウェブサイトの表示は税抜きのことがあります。

3つ目は、登記事項証明書の取得や郵送の実費が別立てかどうか。数百円から数千円の差ですが、内訳が分からないと足し算が合いません。

4つ目は、補正が出たときに誰が対応するのか。書類作成だけのサービスでは、法務局とのやり取りは会社側の仕事になります。平日の日中に動ける人がいるかどうかで、この一点の重みが変わります。

5つ目は、登記が終わったあとに何を渡してもらえるのか。完了後の登記事項証明書を何通取ってくれるのか、新しい定款や議事録の控えを整えてくれるのかで、その後の手間が違います。

この5つを同じ表に書き込んで比べると、3万円と5万円の見積もりの中身が実は近かった、あるいは逆に大きく違った、ということが見えてきます。金額の桁が小さい手続きなので、比べること自体に時間をかけすぎないのも大事です。

一度の手続きを「会社の棚卸し」に変える

20年にわたって在宅ワークと業務委託の仲介の現場を見てきた立場から言えば、法人を持っている人ほど、こうした数年に一度の手続きを単なる出費として処理しがちです。しかし実際には、重任登記のタイミングは会社の状態を点検する数少ない機会になります。

登記事項証明書を取れば、いま登記されている事業の目的が今の仕事と合っているかが分かります。設立時に書いた目的のままで、実際の売上は別の分野から立っている会社は珍しくありません。目的が実態と合っていないと、取引先の与信審査や補助金の申請で説明を求められることがあります。どうせ1万円を払って法務局と向き合うなら、変えるべき登記事項がほかにないかを同時に洗い出したほうが、1回あたりの費用対効果は上がります。

同じ観点で見ておきたいのが、受け取る側の手取りの話です。法人を作った理由の多くは、取引の信用と税務上の扱いにあります。ところが、仕事の入口を仲介手数料の高い経路に依存したままだと、法人にして得た分が手数料で相殺されてしまいます。長く続いている人ほど、単発の案件を拾い続けるのではなく、直接やり取りできる関係を少しずつ増やして、同じ売上でも手元に残る額を厚くしていく方向に時間を使っています。手数料0%の直接取引が効いてくるのは、金額そのものよりも、この「手取りの質」の部分です。依頼する側から見ても、中間マージンが乗らなければ同じ予算でより多く頼めます。双方が得をする構造なので、続く関係になりやすいわけです。

費用の判断材料になる、社外の相場データ

重任登記の費用そのものは1万円台から6万円台という狭い範囲に収まりますが、この判断を「自分の時間の単価」と並べて考えると、答えが出しやすくなります。書類を自分で作る時間を仮に4時間と見積もったとき、その4時間で本業からどれだけ生み出せるかと比べればよいからです。

職種ごとの単価の目安は、在宅ワークの仲介サイトが公開している相場データから確認できます。開発系の仕事の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっていて、案件の規模別にどの程度の金額が動いているかが分かります。文章を書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。時間単価が高い職種ほど、手続きを外注して本業に時間を回したほうが結果的に得をする計算になりやすい傾向があります。

法人として受ける仕事の幅を広げたい場合は、伸びている分野を見ておくと判断しやすくなります。企業のAI導入を支援する仕事の内容と必要なスキルはAIコンサル・業務活用支援のお仕事で整理されていて、法人でなければ受けにくい規模の案件が増えている分野でもあります。セキュリティやマーケティングを含めた広めの分野を見たいならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、受託開発の実務を知りたいならアプリケーション開発のお仕事が入口になります。

書類仕事そのものの精度を上げたいなら、実務で使える資格もあります。議事録や申請書のような定型文書の作り方を体系的に学べるビジネス文書検定は、登記に限らず法人の事務全般で効いてきます。インフラ系の案件を取りにいくならCCNA(シスコ技術者認定)のような技術資格が発注側の判断材料になります。

法人の運営で費用が問題になる場面は、登記だけではありません。取引先から報酬が支払われないときにいくらかかるのかを知っておきたいなら未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が、発注書や契約書で最初に押さえるべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストがそれぞれ具体的にまとめています。会計の専門家が自分の資格を法人の仕事に使う場合の考え方は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】で触れられています。

重任登記費用の最終的な答えをもう一度まとめておくと、資本金1億円以下の会社が自分で申請するなら1万円台、司法書士に任せるなら3万円から6万円台、書類作成サービスなら2万円台が目安になります。そして、この金額を大きく上回るのは、忘れて放置したときの過料と、みなし解散から復活させる手間です。金額の差よりも、期限を守れる体制をどう作るかのほうが、長い目で見た費用を決めます。

よくある質問

Q. 重任登記の登録免許税はいくらですか?

国税庁の税額表では、取締役や代表取締役、監査役に関する事項の変更の登記は申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社については1万円と定められています。中小企業の大半は1億円以下なので1万円です。役員が何人重任しても、1回の申請にまとめれば1件分で済みます。

Q. 司法書士に頼まず自分で申請できますか?

できます。法務局のサイトには役員全員が重任する場合の申請書ひな形と記載例が用途別に公開されており、添付書類の種類と通数まで書かれています。役員の顔ぶれが変わらず、定款の任期の定めがはっきりしている会社なら難易度は高くありません。総額は1万円から1万2,000円程度に収まります。

Q. 重任登記を忘れるとどうなりますか?

会社法では変更の登記を2週間以内にすべきと定められ、怠ったときは100万円以下の過料に処すとされています。実務では半年以上の放置で数万円から十数万円になる例が多いと説明されています。さらに、最後の登記から12年が経過すると休眠会社として解散したものとみなされる仕組みもあります。

Q. 任期を10年に延ばせば費用は減りますか?

株式の譲渡に会社の承認が必要な非公開会社であれば、定款で取締役の任期を最長10年まで延ばせます。10年間で5回だった登記が1回になるので登録免許税は4万円減る計算です。ただし任期途中の解任で損害賠償の対象になりやすくなる点と、10年後の期限を忘れやすい点は別に管理が必要です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月16日最終更新:2026年9月20日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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