期の途中で開く臨時株主総会の議事録|開く理由ごとの書き分け


この記事のポイント
- ✓臨時株主総会議事録の書き方を
- ✓開く理由ごとに整理した
- ✓解散という場面別に議案の文例と登記の期限
事業年度の途中で会社の何かを変えることになったとき、必要になるのが臨時株主総会だ。本店を移す、事業の目的を足す、役員が辞める。どれも法務局への届け出とセットになっていて、その根拠として臨時株主総会議事録を添える。この記事では、臨時株主総会をどういうときに開くのか、議事録の骨格はどうなるのかを示したうえで、開く理由ごとに議案の書き方と、登記の期限や費用を並べる。定時株主総会との違いも整理する。
臨時株主総会は「必要が生じたときに開く総会」
株主総会には2種類ある。
株主総会には「定時」と「臨時」の2種類があり、それぞれ「定時株主総会議事録」「臨時株主総会議事録」のように区別されます。 出典: corporate.ai-con.lawyer
定時株主総会は毎事業年度の終了後に必ず開く。一方、臨時株主総会は「必要がある場合には、いつでも招集することができる」と会社法に書かれている。開く義務はなく、必要が生じたときだけ開く。条文はe-Gov法令検索で読める。
では、どんなときに必要が生じるのか。実務でいちばん多いのは、登記簿の内容を変えるときだ。
臨時株主総会は、定時株主総会以外のタイミングで株式会社の重要事項を決議するために開催され、実務では登記手続きとセットで発生することが多い手続きです。その際に必ず必要になるのが「臨時株主総会議事録」で、会社法上の作成義務があるだけでなく、決議内容を証明して登記申請を通すための最重要書類にもなります。 出典: ueno.law
議事録という書類の性質を考えると、この位置づけは腑に落ちる。登記簿は国が管理する公的な記録で、誰でも手数料を払えば内容を見られる。その記録を書き換える以上、根拠となる決定があったことを示す書類が要る。臨時株主総会議事録はそのために使われる。
なお、議事録の骨格そのものは定時と共通だ。含めるべき項目も、押印のルールも、保存の期間も同じになる。違うのは表題と議案の中身だけだと考えてよい。
臨時株主総会議事録のひな形
法務局が公開している商業・法人登記の申請書様式には、商号変更の記載例に臨時株主総会議事録の例が載っている。これを土台に骨格を示す。空欄の記号はテンプレートを示す印で、実際には自社の情報を入れる。
臨時株主総会議事録
令和◯年◯月◯日午前◯時◯分から、当会社の本店において臨時株主総会を開催した。
株主の総数 ◯名
発行済株式の総数 ◯◯◯株
議決権を行使することができる株主の数 ◯名
議決権を行使することができる株主の議決権の数 ◯◯◯個
出席株主数(委任状による者を含む) ◯名
出席株主の議決権の数 ◯◯◯個
出席取締役 ◯◯◯◯(議長兼議事録作成者)
以上のとおり総株主の議決権の過半数に相当する株式を有する株主が出席したので、
本会は適法に成立した。
よって、取締役◯◯◯◯は議長席に着き、開会を宣し、直ちに下記議案を付議したところ、
満場一致の決議をもって原案どおり可決確定した。
議案 ◯◯◯◯の件
(ここに決めた内容を書く)
議長は以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、午前◯時◯分閉会した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長兼議事録作成者が記名押印する。
令和◯年◯月◯日
◯◯株式会社 臨時株主総会
代表取締役 ◯◯◯◯ 印
定時株主総会のひな形と見比べると、構造がずっと簡素であることが分かる。決算の承認や事業報告がないので、開会、議案、閉会という3つの塊だけで完結する。
もっとも、特筆すべき議事の経緯や質疑が存在せず、決議事項について単に承認決議がなされただけの総会においては、臨時株主総会議事録のテンプレートのように、簡易に記載することもできます。 出典: komon-lawyer.jp
簡易に書いてよいというのは、内容を削ってよいという意味ではない。法律が求める項目は入れたうえで、議事の経過をあらすじで済ませてよいということだ。含める項目は、開いた日時と場所、議事の経過の要領とその結果、決まった場面で述べられた意見の概要、出席した取締役などの氏名、議長の氏名、議事録を作った取締役の氏名の6つになる。
ここからは、開く理由ごとに議案の書き方を見ていく。
議事録に入れる6項目は、法務省令が決めている
何を書けば議事録として通るのかは、会社法施行規則が定めている。臨時でも定時でも同じ内容だ。
二 株主総会の議事の経過の要領及びその結果 五 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名 六 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 出典: laws.e-gov.go.jp
残りは、開催された日時と場所、出席した取締役や監査役などの氏名、そして法律が特に記録を求めている場面で述べられた意見の概要だ。最後の1つは、監査役が辞任する際の意見や、会計参与が計算書類について述べた説明などが対象になる。通常の議案しか扱わない総会では出てこない。
日時と場所の欄で気をつけたいのは、会場にいない人が参加した場合の書き方だ。施行規則は、その場所にいない取締役や株主が出席したときは、出席の方法まで書くよう求めている。電話やオンラインの会議で参加した人がいるなら、「取締役◯◯はウェブ会議システムにより出席した」のように残す。書き漏らすと、その人が出席していたことが読み取れない議事録になる。
「議事の経過の要領」は、発言を一言一句書き起こすことではない。何が議案として出され、どういう説明があり、どう決まったかが追えれば足りる。逆に、議案の表題と決議の結果だけを並べて経過が一行もない議事録は、この条件を満たしていない。
議事録を作った取締役の氏名を書く欄は、ひな形では末尾の署名部分と重なることが多い。議長と別の人が作った場合は、両方の名前が出る形になる。ひとり会社では同じ名前が2か所に並ぶが、それで問題はない。
商号を変えるとき
会社の名前を変える場合、変えるのは定款だ。定款とは会社の基本的な決まりを書いた文書のことで、商号は必ずそこに書かれている。定款を変えるには株主総会の決議が要る。
議案は「定款変更の件」として立て、定款の何条をどう変えるかを具体的に書く。法務局の記載例では、次の形になっている。
議案 定款変更の件
1 定款第1条を次のとおり変更すること。
(商号)
第1条 当会社は、商号を◯◯商事株式会社と称する。
変更後の条文を丸ごと書き写す点が要点だ。「商号を変更する」とだけ書いた議事録では、変更後の名前が特定できないため、登記の根拠にならない。
定款の変更は、通常の議案より重い決議が求められる。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要る。これを特別決議と呼ぶ。議事録の冒頭に書いた出席株主の議決権の数が、この条件を満たしているかを確認したい。
登記の登録免許税は3万円だ。収入印紙か領収証書で納める。
商号を変える前に必ずやっておきたいのが、同じ商号かつ同じ本店の会社が既に存在しないかの調査だ。存在する場合は登記ができない。調査は本店を管轄する登記所で無料でできる。定款を変える決議をしたあとで登記できないと分かると、決議をやり直すことになる。
事業の目的を変える、足すとき
新しい事業を始めるとき、登記簿の「目的」欄にその事業が入っていなければ、追加する。許認可を取る場面や、金融機関と取引を始める場面で、目的欄に該当する記載があるかを見られることがある。
こちらも定款の変更にあたるので、議案は「定款変更の件」として立て、変更後の目的をすべて書き並べる。1つ足すだけの場合でも、既存の目的を含めた全文を書き直す形が一般的だ。番号が振り直されるためで、追加分だけを書くと登記の記載と食い合わなくなる。
決議は商号変更と同じく特別決議で、登録免許税も3万円だ。商号と目的を同時に変える場合、登記の区分としては同じ枠に入るため、費用がまとめられることがある。同時に変える予定があるなら、1回の総会で両方を決議し、1件の登記として申請するほうが費用と手間の両方で有利になる。
目的を書くときは、実際にやる事業を具体的に書く。抽象的すぎる表現は、許認可の審査で「該当する事業の記載がない」と判断される余地を残す。逆に細かく書きすぎると、事業を少し広げるたびに変更登記が必要になる。末尾に「前各号に附帯関連する一切の事業」と入れるのは、この幅を持たせるための実務的な工夫だ。
本店を移すとき
本店の移転は、定款を変える必要があるかどうかで手続きが変わる。
定款に本店の所在地を「東京都渋谷区」のように市区町村までしか書いていない場合、同じ区内での移転なら定款の変更は要らない。取締役会を置いていない会社では取締役の決定、置いている会社では取締役会の決議で移転先と時期を決める。この場合、株主総会は開かなくてよい。
定款に番地まで書いている場合、または別の市区町村へ移る場合は、定款の変更が必要になる。そのため臨時株主総会を開き、特別決議で定款を変更したうえで、具体的な移転先と移転の日を決める。
登録免許税は、同じ登記所の管轄内での移転なら3万円だ。管轄が変わる移転では、移転前の管轄と移転後の管轄の両方に申請する形になるため、費用も期間も増える。
見落とされやすいのが、本店を移したあとの手続きだ。法務局の登記だけで終わりではなく、税務署や都道府県、市区町村への届け出、年金事務所への届け出なども続く。議事録を作って登記を申請した時点で安心せず、届け出先の一覧を先に作っておくと漏れにくい。
役員を期の途中で入れ替えるとき
任期の満了を待たずに取締役が辞める、あるいは新しい取締役を迎えるときも、臨時株主総会を開く。
新しく取締役を選ぶ議案は「取締役選任の件」として立て、選ばれた人の氏名を書く。ここで議事録に「被選任者は席上その就任を承諾した」と書いておけば、就任承諾書を別に作らずに済む。その場合、登記申請書に「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する」と書き添える。
取締役の選任は通常の決議、つまり普通決議で足りる。一方、取締役を任期の途中で辞めさせる解任は、選任より重い扱いになる場面があるため、決議の要件を確認したうえで進めたい。
辞任の場合は株主総会の決議そのものが要らない。辞任は本人の意思で成立するので、辞任届を受け取れば足りる。ただし、辞任によって取締役が法律や定款で定めた人数を下回るなら、後任を選ぶ決議が必要になる。
新しく取締役に就任する人については、就任を承諾したことを示す書類に押した印鑑の証明書か、本人確認ができる公的な証明書のどちらかを添える。代表取締役が変わり、それを株主総会で決めた場合は、議長と出席取締役が議事録に押した印について、市区町村長が作った印鑑証明書を添えることになる。ただし、その印が前の代表取締役が法務局に届け出ている印と同じであれば添付は要らない。
登録免許税は、資本金の額が1億円を超える会社で3万円、1億円以下の会社で1万円だ。
増資するとき
新しく株式を発行して資本金を増やす場合も、臨時株主総会が絡む。株式の譲渡に会社の承認が要る非公開会社では、募集する株式の数、払い込む金額、払込みの期日といった条件を株主総会の特別決議で決めるのが基本の形になる。条件の細部を取締役に任せる方法もあるが、その場合も枠を決めるのは総会だ。
議案には、募集する株式の数、1株あたりいくらで払い込むか、払込みの期日または期間、増える資本金の額を書く。金額と株数がそろっていないと、あとから作る資本金の額の計上に関する証明書と食い違う。
登録免許税は、ほかの変更登記と計算方法が違う。増えた資本金の額に1000分の7を掛けた額で、その額が3万円に満たないときは3万円になる。100円未満の端数は切り捨てる。たとえば資本金を300万円増やすなら、計算上は2万1千円だが、下限に届かないので3万円を納めることになる。
添付書類は、株主総会議事録と株主リストのほか、払込みがあったことを証する書面、資本金の額の計上に関する証明書などが加わる。書類の数が多く、様式も細かいので、法務局の記載例を開きながら1つずつ埋めていくのが確実だ。
1回の総会で複数の議案を決めると、費用はこう足される
臨時株主総会は必要が生じたときに開くものだから、1回で複数の変更をまとめて決める場面が多い。このとき登録免許税がどう計算されるかは、登記の区分が同じかどうかで決まる。国税庁の税額表では、会社の商業登記が次のように区分されている。
| 登記の区分 | 登録免許税 |
|---|---|
| 登記事項の変更、消滅または廃止 | 1件につき3万円 |
| 本店または支店の移転 | 1箇所につき3万円 |
| 取締役、代表取締役、監査役等に関する事項の変更 | 1件につき3万円(資本金1億円以下は1万円) |
| 資本金の増加 | 増加額の1000分の7(3万円未満のときは3万円) |
| 支店の設置 | 1箇所につき6万円 |
この区分は、国税庁が公開している登録免許税の税額表で確認できる。
同じ区分に入る変更をまとめれば1件分で足りる。商号と目的を同時に変える場合、どちらも登記事項の変更なので合わせて3万円だ。一方、区分が違う変更は別々に足される。資本金1,000万円の会社を前提に、組み合わせごとの金額を並べると次のようになる。
・商号の変更と目的の変更を同時に決める … 3万円 ・商号の変更と取締役の交代を同時に決める … 3万円と1万円で合計4万円 ・商号の変更と本店の移転を同時に決める(管轄は同じ) … 3万円と3万円で合計6万円 ・目的の変更と300万円の増資を同時に決める … 3万円と3万円で合計6万円
ここに実費が乗る。登記が終わったあとに取る登記事項証明書は、書面で請求すると1通600円、オンラインで請求して郵送なら520円、オンラインで請求して窓口で受け取るなら490円だ。会社の印鑑証明書は書面請求で500円、オンライン請求で郵送なら450円、窓口受け取りなら420円になる。いずれも法務省が公開している手数料の一覧に載っている金額で、令和7年4月1日から適用されている。
つまり、商号と目的をまとめて変えるだけなら、自分で申請する場合の現金の支出は3万円と証明書代で足りる。逆に、本店の移転を別の日に分けて決議すると、同じ内容でも3万円多く払うことになる。変更の予定が複数あるなら、決議の日をそろえられないかを先に検討したい。
出席していない株主がいるときの書き方
株主が複数いる会社では、全員がその場にそろうとは限らない。欠席した株主がいる総会の議事録は、書き方に注意が要る。
委任状で議決権を行使した株主は、出席株主として扱う。ひな形の「出席株主数(委任状による者を含む)」という欄はこのためにある。委任状の原本は、議事録と一緒に保管しておく。
書面や電子データで議決権を行使できる仕組みを入れている会社では、その分も含めて議決権の数を集計する。ひとり会社や株主が数名の会社でこの仕組みを入れていることは少ないが、入れている場合は招集通知の短縮が使えなくなる点も合わせて確認したい。
欠席した株主がいて、かつ賛成と反対が分かれた場合は、「満場異議なく」という書き方はできない。賛成した議決権の数を書くか、「出席株主の議決権の3分の2以上の賛成により可決した」のように、必要な条件を満たしたことが読み取れる形にする。
反対した株主の発言を議事録に書くかどうかは、会社の判断になる。法律が記録を求めているのは決まった場面の意見だけで、一般の反対意見まで書く義務はない。ただし、あとで決議の有効性が争われる可能性がある場面では、どういう議論を経て決まったかを残しておくほうが、会社を守る材料になる。
会社をたたむとき
事業をやめて会社を清算する場合も、臨時株主総会を開く。議案は「解散及び清算人選任の件」として立て、解散する日と、清算の手続きを進める清算人を誰にするかを決める。
解散は特別決議で決める。登録免許税は、解散の登記と清算人選任の登記を合わせて3万9千円だ。解散の分が3万円、清算人選任の分が9千円という内訳になる。
解散を決議したあとは、債権者に向けた公告や、財産の整理、税務の申告が続く。清算が結了したら、またその旨の登記をする。議事録としては、解散の決議、清算に関する決算報告の承認と、複数回作ることになる。
会社をたたむ判断は経営上の重い判断であり、税務の扱いも個別性が高い。実際に進める前に税務署か税理士に相談したうえで、順番を組み立てるのが安全だ。
普通決議と特別決議の見分け方
臨時株主総会の議案は、必要な賛成の量によって2種類に分かれる。ここを取り違えると、議事録の数字と結論がかみ合わなくなる。
普通決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決まる。取締役や監査役の選任、役員報酬の決定などがこちらに入る。定款で出席の条件を3分の1以上まで緩めている会社も多い。
特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要る。定款の変更、資本金の額の減少、事業の重要な一部の譲渡、解散、合併といった、会社の形そのものに関わる議案がこちらだ。
見分けるときの目安として、「定款を変えることになるか」を先に考えると整理しやすい。商号の変更、目的の変更、本店の所在地を定款レベルで変える移転は、いずれも定款の変更なので特別決議になる。
株主がひとりの会社では、どちらであっても議決権の100%が賛成するので、結果は変わらない。それでも議事録の書き方は区別しておきたい。決議の種類を意識せずに書いた議事録は、株主が増えたときにそのまま使えなくなる。
招集の手続きと、省略できる場面
臨時株主総会も、原則としては招集の通知を出して開く。期限は総会の日の2週間前までが原則で、株式の譲渡に会社の承認が要る非公開会社であれば1週間前までに短縮される。取締役会を置いていない非公開会社は、定款でこれより短い期間を定めることもできる。
ただし、臨時株主総会は急に必要が生じることが多く、通知の期間を待てない場面もある。株主が全員そろって同意すれば、招集の手続きを省略して総会を開ける。ひとり会社や家族だけの会社ではこの形が実態に合う。この場合、議事録に「株主全員の同意があったので招集手続きを省略し」といった一文を入れておくと、通知の記録がない理由が読み手に伝わる。
さらに進んで、会議自体を開かない方法もある。取締役または株主が議案を提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面または電子データで同意すれば、その提案を可決する決議があったものとみなされる。この方法で決めた場合、議事録に書く項目が変わる。開催の日時や場所、議事の経過は存在しないので、決議があったとみなされた事項の内容、提案をした人の氏名または名称、決議があったとみなされた日、議事録を作った取締役の氏名の4点を書く。
集めた同意書そのものも、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く必要がある。議事録を作ったから同意書は捨ててよいということにはならない。
押印は要るのか、電子で作ってよいのか
議事録に判子を押すかどうかは、場面で答えが変わる。
会社法は株主総会の議事録について、作成することと備え置くことを求めているだけで、押印を義務づけていない。取締役会の議事録は出席した取締役と監査役の署名または記名押印が条文に書かれているが、株主総会の議事録にはその定めがない。したがって、社内に保管するだけの議事録であれば、押印がなくても議事録として成り立つ。
変わるのは、登記の添付書面として法務局に出す場合だ。商業登記規則は、株主総会の決議で代表取締役を定めた場合について、次のように定めている。
代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。 ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。 一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑 出典: laws.e-gov.go.jp
印鑑証明書を添えるということは、その印を議事録に押しておく必要があるという意味になる。つまり、代表取締役を株主総会で選んだときは、議長と出席した取締役が個人の実印を議事録に押し、その印鑑証明書を添える。ただし、押した印が前の代表取締役が法務局に届け出ている印と同じなら、証明書は要らない。
商号の変更や目的の変更のように、代表取締役が関わらない議案だけを扱った議事録では、この条件は出てこない。それでも、法務局の記載例が押印のある形で作られているので、実務では議長と出席取締役が記名押印する形に合わせておくほうが窓口でのやり取りが減る。
電子データで作ることも認められている。施行規則は、議事録を書面または電磁的記録で作成すると定めている。電子データで作る場合は、署名や記名押印の代わりになる措置、つまり電子署名が必要になる。登記の申請も、法務省の登記申請システムを使えばオンラインで完結する。ただし、電子署名の用意にかかる手間と、年に1回か2回しか使わない頻度を比べると、小さな会社では紙で作って窓口か郵送で出すほうが早いことも多い。どちらが向くかは、申請の回数で決めるのが現実的だ。
登記に添える書類と、申請の期限
議事録を作ったら、登記の申請に進む。添える書類は議案によって変わるが、株主総会の決議で決めた事項を登記する場合、共通して必要になるのが株主リストだ。
株主リストは、議決権の多い上位10名の株主か、議決権の割合を上から足して3分の2に達するまでの株主か、少ないほうについて、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合を並べ、代表者が証明する書類だ。書式とExcelの記載例は法務省のページから入手できる。会議を開かずに全株主の同意で決めた場合も、添付の対象に入る。
申請の期限は、登記すべき事項が発生してから2週間以内だ。臨時株主総会の日、または決議があったとみなされた日が起算点になる。遅れても申請自体は受け付けられるが、代表者に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性がある。
作った議事録は、総会の日から10年間、本店に備え置く。支店があるなら写しを5年間その支店に置くが、電子データで作っていて支店で閲覧請求に応じられる措置をとっているなら不要だ。臨時株主総会は年に何度も開くことがあるので、定時のファイルとは分けず、日付順に1つのファイルへ綴じていくほうが探しやすい。
税務の側からも書類の保存が求められる。国税庁の帳簿書類等の保存期間によれば、法人は帳簿と取引に関する書類を確定申告書の提出期限の翌日から7年間、欠損金が生じた事業年度については10年間保存することになっている。
決議はしたのに登記が要らない議案
臨時株主総会で決めたことのすべてが登記簿に出るわけではない。決議は要るが登記は不要という組み合わせがあり、ここを取り違えると、要らない申請を用意したり、逆に必要な届け出を落としたりする。
事業年度を変える場合は、定款を変えるので特別決議が必要だ。しかし事業年度は登記簿に載っていないので、登記の申請は発生しない。代わりに、税務署と都道府県、市区町村へ異動の届出を出す。定款を変えたことを示す議事録は、社内に保管したうえで、届出の際に写しを求められることがある。
役員報酬の総額を決める決議も、登記とは無関係だ。取締役の報酬は定款に定めがなければ株主総会で決めることになっていて、その記録が議事録に残る。金額を決めた議事録は税務の場面で根拠として見られるので、登記が要らないからといって作らずに済ませることはできない。
株式の譲渡を承認する決議も、登記簿には出ない。株主が誰であるかは登記事項ではないためだ。変わるのは株主名簿で、こちらは会社が自分で管理する。次に登記の申請をするときに添える株主リストの中身が変わるので、名簿を直しておかないと、あとで数字が合わなくなる。
逆に、株主総会を開いていないのに登記が要る場面もある。定款に本店の所在地を市区町村までしか書いていない会社が同じ区内で移転する場合は、取締役の決定で足りるが、登記は必要だ。支店を設けるときも同じで、決定は取締役会または取締役が行い、登記だけが発生する。
決議が要るのか、登記が要るのか、届出が要るのか。この3つを別の列として紙に並べてから動くと、順番を間違えにくい。
つまずきやすい5つ
同じ場面で繰り返し起きる取り違えを並べる。
1つめは、定款の変更後の条文を書き写していない議事録だ。「商号を株式会社◯◯に変更する」とだけ書いて条文を丸ごと書いていないと、登記の根拠として弱くなる。法務局の記載例が条文の形で書かれているのは、そこに理由がある。
2つめは、決議の種類の取り違えだ。定款を変える議案は特別決議で、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要る。議事録に「出席株主の議決権の過半数の賛成により可決」と書いてしまうと、条件を満たしていない議事録になる。株主がひとりなら結果は同じでも、文言は正しい側に合わせる。
3つめは、日付の食い違いだ。議事録の日付、就任承諾書の日付、効力が発生する日の3つがずれていると、登記の審査で止まる。同じ日にそろえられるものはそろえ、あえてずらす場合はその理由が議事録から読み取れるようにする。
4つめは、株主リストの作り忘れだ。株主総会の決議で決めた事項を登記する場合は、ほぼ必ず添付を求められる。議事録だけを持っていくと、その場で書くことになる。議決権の割合の計算も必要なので、事前に作っておくほうが早い。
5つめは、会議を開かずに全員の同意で決めた場合の書き方だ。この方法では開催の日時や場所、議事の経過が存在しないので、通常のひな形をそのまま使うと事実と合わない議事録になる。決議があったとみなされた事項の内容、提案した人の氏名、みなされた日、作成した取締役の氏名の4点に書き換える。集めた同意書も10年間の保存が必要で、議事録があるから捨ててよいことにはならない。
変更を決めたら、書類の連鎖を先に洗い出す
在宅で働く人や小さな会社を長く見てきた立場から言うと、臨時株主総会が絡む手続きでつまずく原因は、書類の書き方そのものより「次に何が来るかを知らないこと」にある。
本店を移すと決めたとき、実際に必要なのは議事録と登記だけではない。税務署、都道府県、市区町村、年金事務所への届け出が続き、取引先への通知、印刷物や名刺の作り直し、金融機関の住所変更まで連鎖する。商号を変えれば、契約書の名義、請求書の様式、ドメインやメールアドレスの扱いまで波及する。
運営者として見てきた限りでは、この連鎖を先に紙に書き出してから決議日を決める人は、ほとんど手戻りをしない。逆に、登記が終わってから「あれも変えなければ」と気づく人は、同じ期間に何度も同じ相手へ連絡することになる。議事録の日付は、連鎖の起点になる日付でもある。
文書まわりの型を身につけたい人には、文書の構成や通知文の作法を扱うビジネス文書検定の学習範囲が実務のチェックリストとして使える。取引先への変更通知のような場面で、そのまま役に立つ。
手続きや事務を自分で抱えきれないときは、外に出す選択肢がある。文書の作成や編集を仕事にしている人の単価の目安は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認でき、依頼するときの予算感を作る材料になる。システムの内製や委託を考えているならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になる。
どんな業務が在宅で受け渡しされているかを把握しておくと、自社のどこを切り出せるかの判断がしやすい。開発の委託はアプリケーション開発のお仕事、業務の進め方そのものの相談はAIコンサル・業務活用支援のお仕事、集客やセキュリティを含む領域はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事が入口になる。技術系の委託先を見極めたいなら、ネットワークの基礎を問うCCNA(シスコ技術者認定)の出題範囲に目を通しておくと提案書を読み解ける。
外注するときは、支払いと契約の条件も一緒に整えておきたい。発注書に何を書くべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにまとめてある。支払いでもめた場合の進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が実務的だ。決算や税務の相談相手を探しているなら会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も、その分野の専門家の働き方を知る材料になる。
20年この市場を見てきて確かなのは、中間業者を挟まない直接の取引では、同じ予算でも依頼側はより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなるということだ。手数料0%という条件の値打ちは、金額の多寡よりも、双方が納得して関係を長く続けやすいという質にある。会社の変更を都度きちんと記録している会社は、その関係を支える信用の土台も同時に積み上げている。
よくある質問
Q. 臨時株主総会はどんなときに開きますか?
必要が生じたときにいつでも開けます。実務で多いのは登記簿の内容を変えるときで、商号の変更、事業目的の追加、本店の移転、期の途中での役員交代、解散などが典型です。定時株主総会と違って開く義務はなく、必要がない年は1度も開かない会社もあります。
Q. 定時株主総会議事録と書き方はどう違いますか?
骨格は同じです。含める項目も押印のルールも保存期間も共通で、違うのは表題と議案の中身だけです。臨時では決算の承認や事業報告がないため、開会、議案、閉会という3つの塊で完結し、定時より簡素になります。表題は「臨時株主総会議事録」とし、回数は入れないのが通例です。
Q. 定款変更を伴う議案は決議の要件が違いますか?
違います。商号の変更、目的の変更、本店の所在地を定款レベルで変える移転などは定款の変更にあたり、特別決議が必要です。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります。取締役の選任などは普通決議で足ります。
Q. 急な決定で招集通知の期間が足りないときはどうしますか?
株主が全員そろって同意すれば、招集の手続きを省略して総会を開けます。さらに、議案について議決権を行使できる株主の全員が書面または電子データで同意すれば、会議自体を開かずに決議があったものとみなす方法もあります。この場合は議事録の記載項目が変わり、同意書も10年間保存します。
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編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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